説明

表示装置

【課題】極めて簡単な構成にも拘わらず、半導体層への光照射を低減し、オフ電流の発生の抑制を図った薄膜トランジスタを具備する表示装置の提供。
【解決手段】画像表示部が形成された基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置であって、
前記薄膜トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極を被って形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上であって前記ゲート電極に重畳して形成される半導体層と、
前記半導体層上に形成され互いに対向して配置された一対の電極と、
を備え、
前記半導体層は、平面的に観た場合、前記ゲート電極の形成領域内に配置され、前記ゲート電極側から、結晶性半導体層および非晶質半導体層の順次積層体から構成され、
前記ゲート電極は、少なくとも前記半導体層と対向する領域において、光透過率が0.3%以下となる膜厚で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に、表示部を備える基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば液晶表示装置(パネル)は、液晶を挟持して対向配置された一対の基板を外囲器とし、この外囲器内には、該液晶を一構成要素とする多数の画素がマトリックス状に配置されて構成される画像表示部を備える。
【0003】
そして、画像表示部の各画素は、いわゆるアクティブ・マトリックス方式によって駆動されるのが通常となっている。すなわち、行方向に配置される複数の画素からなる画素群を順次選択し、その選択のタイミングに合わせ、列方向に配置される各画素に共通に接続されたドレイン信号線を通して映像信号を供給するようになっている。この場合、画素群のそれぞれの選択は、当該画素群を構成する各画素に形成される薄膜トランジスタを共通に接続されたゲート信号線を通して供給する走査信号によってオンさせることによって行っている。
【0004】
また、このような液晶表示装置は、画像表示部が形成された基板上において、前記画像表示部の周辺に、各ゲート信号線に走査信号を供給するための走査信号駆動回路や、各ドレイン信号線に映像信号を供給するための映像信号駆動回路が形成され、それぞれの駆動回路には、画素内に形成される前記薄膜トランジスタと並行して形成される多数の薄膜トランジスタを備えるものが広く知られている。
【0005】
そして、これら薄膜トランジスタは、いわゆるMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造からなり、パネルの各基板のうちバックライトと対向する基板の液晶側の面にいわゆるボトムゲート型として構成するものが知られている。ボトムゲート型の薄膜トランジスタは、そのゲート電極が半導体層よりも基板側に位置づけて構成され、前記半導体層に光が照射された場合に特性変化が生じてしまうことに鑑み、前記基板を通して照射されるバックライトからの光を前記ゲート電極によって遮光できるようになっている。
【0006】
また、近年、前記薄膜トランジスタにおいて、半導体層が、ゲート電極側から微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を順次積層させた2層構造としたものが知られるに至っている。(下記特許文献1参照)微結晶シリコン層はアモルファスシリコン層に熱処理を施すことによって形成することができる。このような薄膜トランジスタは、半導体層がアモルファスシリコン層のみで形成された薄膜トランジスタよりも、電界効果移動度を高くすることができる。また、初期特性の一つであるいわゆるS値(スイングファクタ)を小さくできるとともに、しきい値電圧の径時的な変動を小さく抑えることができる効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−167051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、下記特許文献1で示す薄膜トランジスタは、微結晶シリコン層をゲート電極で遮光しきれていない。また、仮に上述したようにゲート電極によってバックライトからの光を遮光する構成としても、オフ電流が増大してしまう不都合が生じた。尚、オフ電流とは、薄膜トランジスタのスイッチング特性をオフにする制御電圧がゲート電極に印加されている状態でも、薄膜トランジスタのソース、ドレイン間に流れてしまう電流のことをいう。
【0009】
本発明者等は、この原因を追及した結果、次のようなことが判明した。まず、薄膜トランジスタの半導体層を微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層の積層構造とした場合、該薄膜トランジスタのゲート電極は、その膜厚を比較的薄く形成するようにしていた。前記微結晶シリコンの形成において、アモルファスシリコンを加熱する加熱工程が必要になるが、この熱が前記ゲート電極を通じて放熱されるのを抑制するためである。前記微結晶シリコンの形成のために加えた熱が放熱されると、アモルファスシリコンが十分に微結晶化されなくなってしまう。よって、ゲート電極がたとえばMoWで構成されている場合、その膜厚は約50nmとしていた。
【0010】
一方、このような構成の薄膜トランジスタは、その半導体層内での光電変換効率が大幅に向上してしまうことが確認された。半導体層への光の入射によって、アモルファスシリコン層内では長波長の光によっても電子−正孔対の充分な発生がなされるとともに、微結晶シリコン層内では発生した電子−正孔対の充分な分離がなされ、これら分離された電子は一方の電極へ、正孔は他方の電極へ導かれるようになってしまうからである。
【0011】
このことから、基板を通したバックライトからの光は、薄膜トランジスタのゲート電極を僅かながら透過し、薄膜トランジスタの半導体層へ入射し、上述したメカニズムによる光電変換によって、該薄膜トランジスタにオフ電流が生じてしまうことになる。ちなみに、ゲート電極が、たとえばMoWで構成され、膜厚が約50nmの場合、該ゲート電極の光透過率は約1%である。
【0012】
本発明の目的は、極めて簡単な構成にも拘わらず、光照射の低減によるオフ電流の発生の抑制を図った薄膜トランジスタを備える表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の表示装置では、その薄膜トランジスタのゲート電極の膜厚を比較的大きくすることによって該ゲート電極の遮光効果を向上させ、オフ電流の発生の抑制を図るようにしたものである。
【0014】
本発明の構成は、たとえば、以下のようなものとすることができる。
【0015】
(1)本発明の表示装置は、画像表示部が形成された基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置であって、
前記薄膜トランジスタは、ゲート電極と、前記ゲート電極を被って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上であって前記ゲート電極に重畳して形成される島状の半導体層と、前記半導体層上に形成され互いに対向して配置された一対の電極と、を備え、
前記半導体層は、平面的に観た場合、前記ゲート電極の形成領域内に配置され、前記ゲート電極側から、結晶性半導体層および非晶質半導体層の順次積層体から構成され、
前記ゲート電極は、少なくとも前記半導体層と対向する領域において、光透過率が0.3%以下となる膜厚で形成されていることを特徴する。
【0016】
(2)本発明の表示装置は、(1)において、前記結晶性半導体層は微結晶半導体層であることを特徴とする。
【0017】
(3)本発明の表示装置は、(1)において、前記結晶性半導体層は多結晶半導体層であることを特徴とする。
【0018】
(4)本発明の表示装置は、(1)において、前記ゲート電極は、前記半導体層と対向する領域における厚さが、前記半導体層と対向する領域以外の領域における厚さよりも大きいことを特徴とする。
【0019】
(5)本発明の表示装置は、(1)において、前記結晶性半導体層は、前記ゲート絶縁膜の反対側の表面と前記表面と交差する側壁面とを有し、前記表面と前記側壁面とは、前記非晶質半導体層で被われていることを特徴とする。
【0020】
(6)本発明の表示装置は、(1)において、前記ゲート電極はMoW合金で形成され、前記結晶性半導体層は微結晶シリコンで形成され、前記非晶質半導体層はアモルファスシリコンで形成され、前記ゲート電極の前記膜厚は、75nm以上150nm以下であることを特徴とする。
【0021】
(7)本発明の表示装置は、(1)において、前記薄膜トランジスタは、画像表示部を構成する画素内に形成される薄膜トランジスタであることを特徴とする。
【0022】
(8)本発明の表示装置は、(1)において、前記薄膜トランジスタは、画像表示部の周辺の回路内に形成される薄膜トランジスタであることを特徴とする。
【0023】
(9)本発明の表示装置は、(1)において、液晶表示装置であることを特徴とする。
【0024】
(10)本発明の表示装置は、(1)において、有機EL表示装置であることを特徴とする。
【0025】
なお、上記した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、上記した構成以外の本発明の構成の例は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0026】
上述した表示装置によれば、極めて簡単な構成にも拘わらず、半導体層への光照射を低減し、オフ電流の発生の抑制を図った、電界効果移動度の高い薄膜トランジスタを具備させることができる。
【0027】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の表示装置の実施例1に備えられる薄膜トランジスタの断面図である。
【図2】本発明の表示装置の実施例1の概略を示す平面図である。
【図3】本発明の表示装置の実施例1の画素を示す構成図である。
【図4】本発明の表示装置の実施例1に備えられる薄膜トランジスタのオフ電流に関する特性を示したグラフである。
【図5】本発明の表示装置の実施例2に備えられる薄膜トランジスタの断面図である。
【図6】本発明の表示装置の実施例3に備えられる薄膜トランジスタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。なお、各図および各実施例において、同一または類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【実施例1】
【0030】
(全体構成)
図2は、本発明の表示装置の実施例1を液晶表示装置を例に挙げて示した平面図である。
【0031】
図2において、液晶表示装置は、観察者側に配置される液晶表示パネルPNLとこの液晶表示パネルPNLの背面に配置されるバックライトBLとで構成されている。
【0032】
液晶表示パネルPNLは、たとえばガラスからなる矩形状の基板SUB1および基板SUB2によって外囲器を構成するようになっている。基板SUB1および基板SUB2との間には液晶(図示せず)が挟持され、この液晶は、基板SUB1と基板SUB2を固定するシール材SLによって封入されている。該シール材SLによって液晶が封入された領域は画像表示領域ARを構成するようになっている。この画像表示領域ARは複数の画素がマトリックス状に配置された領域となっている。
【0033】
前記基板SUB1の下側辺部は、基板SUB2から露出する部分を有し、この部分には、外部から信号を入力させるフレキシブル基板FPCの一端が接続されるようになっている。また、前記基板SUB1上において、フレキシブル基板FPCと基板SUB2の間の領域にはチップからなる半導体装置SCNが搭載されている。この半導体装置SCNは、基板SUB1上に形成された配線WL1を介して前記フレキシブル基板FPCからの各信号が入力されるようになっている。
【0034】
また、シール材SLと前記画像表示領域ARの間の領域であって、該画像表示領域ARのたとえば図中左側の領域には走査信号駆動回路V、図中下側の領域にはRGBスイッチング回路RGBSが形成されている。これら走査信号駆動回路V、およびRGBスイッチング回路RGBSには、それぞれ、基板SUB1上に形成された配線WL2、WL3を介して、前記半導体装置SCNから信号が供給されるようになっている。走査信号駆動回路Vは後述する複数のゲート信号線GLに走査信号を順次供給するための回路からなり、RGBスイッチング回路RGBSは後述する複数のドレイン信号線DLに供給する映像信号を赤色用、緑色用、および青色用ごとに時系列的に切り替える回路からなっている。
【0035】
ここで、前記走査信号駆動回路VおよびRGBスイッチング回路RGBSは、画像表示領域AR内の画素の形成と並行して基板SUB1上に形成される回路であり、それぞれ複数の薄膜トランジスタ(図示せず)を備えて構成されるようになっている。
【0036】
画像表示領域ARには、ゲート信号線GL、ドレイン信号線DL、およびコモン信号線CLが形成されている。前記ゲート信号線GLは、図中x方向に延在しy方向に並設され、それらの左側端は、前記走査信号駆動回路Vに接続されている。前記ドレイン信号線DLは、図中y方向に延在しx方向に並設され、それらの下端は、前記RGBスイッチング回路RGBSに接続されている。前記コモン信号線CLは、隣接するゲート信号線GLの間に該ゲート信号線GLと並行に形成され、その一端(たとえば図中右側端)は共通に接続され、前記半導体装置SCNから基準信号(映像信号に対して基準となる信号)が供給されるようになっている。
【0037】
隣接する一対のゲート信号線GLと隣接する一対のドレイン信号線DLとで囲まれる領域(たとえば図中点線枠A'内)は画素領域に相当するようになっている。画素は、図中実線枠Aにおける拡大図に示すように、ゲート信号線GLからの走査信号によってオンされる薄膜トランジスタTFTと、このオンされた薄膜トランジスタTFTを介してドレイン信号線DLからの映像信号が供給される画素電極PXと、前記コモン信号線CLに接続されて基準信号が供給される対向電極CTを備えて構成されている。これら画素電極PXと対向電極CTとの間には、基板SUB1の面に平行な成分を有する電界が発生し、この電界によって液晶の分子を駆動させるようになっている。このような液晶表示装置は、いわゆる広視野角表示ができるものとして知られ、このような液晶への電界の印加の特異性から、IPS方式、あるいは横電界方式と称されている。しかし、本発明は、このような横電界方式に限らず、いわゆる縦電界方式と称される液晶表示装置にも適用することができる。
【0038】
バックライトBLは、液晶表示パネルPNLの少なくとも画像表示領域ARと対向する面光源を備えたものとして構成されている。このようなバックライトBLは、たとえば、液晶表示パネルPNLと平行して配置される導光板と、この導光板のたとえば一辺における側壁面に配置された光源によって構成されている。光源としては冷陰極線管あるいは発光ダイオード等が用いられる。光源の光が導光板内に入射された後、導光板内で反射等が繰り返され、導光板の液晶表示パネルPNLと対向する面から出射されるようになっている。
【0039】
(画素の構成)
図3(a)、(b)は、基板SUB1の液晶側の面に形成された画素の構成を示す図で、図2に示す実線丸枠Aにおける部分の構成を示している。図3(a)は平面図を、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線における断面図を示している。
【0040】
まず、基板SUB1の液晶側の面に、図中x方向に延在されy方向に並設されるゲート信号線GLが形成されている。基板SUB1の表面には、ゲート信号線GLをも被って絶縁膜GIが形成され、この絶縁膜GIは後述の薄膜トランジスタTFTの形成領域においてゲート絶縁膜として機能するようになっている。
【0041】
ゲート絶縁膜GIの表面であってゲート信号線GLの一部に重畳する薄膜トランジスタTFTの形成領域に、半導体層SCLが島状に形成されている。前記薄膜トランジスタTFTは、前記半導体層SCLの表面に、互いに対向配置されたドレイン電極DT、ソース電極STが形成されることにより、ゲート信号線GLの一部をゲート電極とするいわゆるボトムゲート構造のMIS(Metal Insulator Semiconductor)型トランジスタが構成されるようになる。なお、この薄膜トランジスタTFTの構成は後に詳述する。
【0042】
前記基板SUB1の表面には図中y方向に延在しx方向に並設されるドレイン信号線DLが形成され、このドレイン信号線DLの一部を前記半導体層SCLの表面に延在させることにより、該延在部を薄膜トランジスタTFTのドレイン電極DTとするようになっている。また、ドレイン信号線DLの形成の際に、薄膜トランジスタTFTのソース電極STが形成され、このソース電極STは半導体層SCLの形成領域を超えて画素領域側に延在するパッド部PDを具備して構成されている。このパッド部PDは後述の画素電極PXと電気的に接続される部分として構成される。
【0043】
前記基板SUB1の表面にはドレイン信号線DL等をも被って保護膜PASが形成されている。この保護膜PASは薄膜トランジスタTFTの液晶との直接の接触を回避するための膜からなり、たとえば、無機絶縁膜からなる保護膜PAS1および有機絶縁膜からなる保護膜PAS2の積層構造から構成される。保護膜PAS2において有機絶縁膜を用いたのはたとえば保護膜PASの表面を平坦化する効果を奏するためである。
【0044】
絶縁膜PASの表面であって隣接する一対のゲート信号線GLの間には、該ゲート信号線GLの走行方向に沿って形成されるコモン信号線CLが形成されている。このコモン信号線CLは図中x方向に並設される各画素領域のほぼ全域を被って形成され、各画素領域における対向電極CTを兼備した構成となっている。このコモン信号線CL(対向電極CT)は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透光性導電膜から構成されている。
【0045】
基板SUB1の表面には、コモン信号線CL(対向電極CT)をも被って
無機絶縁膜からなる絶縁膜LIが形成され、この絶縁膜LIの上面には各画素領域に画素電極PXが形成されている。絶縁膜LIは画素電極PXと後述の対向電極CTとの層間を図る層間絶縁膜としての機能を有する。画素電極PXは、たとえば図中y方向に延在されx方向に並設された複数(図ではたとえば3個)の線状の電極からなり、これら各電極は、前記薄膜トランジスタTFT側の端部において互いに接続された接続部JNを備えている。画素電極PXは、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透光性導電膜から構成されている。画素電極PXの接続部JNの一部は、層間絶縁膜LIおよび絶縁膜PASに形成されたスルーホールTHを通して前記ソース電極STのパッド部PDに電気的に接続されるようになっている。また、この場合において、コモン信号線CL(対向電極CT)において、予め、前記スルーホールTHとほぼ同軸で該スルーホールTHよりも充分に径の大きな開口OPが形成され、前記画素電極PXが対向電極CTと電気的にショートしてしまうのを回避させている。
【0046】
(薄膜トランジスタの構成)
図1は、前記薄膜トランジスタTFTの詳細な構成を示す断面図で、図3(b)の一点鎖線枠Bにおける拡大図となっている。
【0047】
図1において、基板SUB1の表面にゲート電極GTが形成されている。このゲート電極GTは、ゲート信号線GLの一部の領域に相当し、該ゲート信号線GLとともに、たとえばMoW、Ti、Al等の金属の導電膜によって形成されている。
【0048】
前記ゲート電極GT(この実施例1の場合はゲート信号線GLも)は、その厚さWが所定値以上となるように構成されている。この場合のゲート電極GTの厚さWは、たとえばMoW、Ti、Al等の材料によって異なり、結果として光透過率が0.3%以下となるように設定されている。これにより、ゲート電極GTの遮光効率を向上させた構成としている。ゲート電極GTの材料をたとえばMoWとした場合に、従来では、微結晶半導体層μCSの形成の際に加える熱がゲート電極GTによって放熱されてしまうのを抑制する目的から、その膜厚が50nm程度(この場合の光透過率は1%)となっていたのに対し、本実施例の場合には、その値よりも大きな厚さで設定されるようになっている。
【0049】
ゲート電極GTは、平面的に観て、後述の半導体層SCLの形成領域をはみ出すような大きさで形成されている。ゲート電極GTによってバックライトBL(図中下側に配置されている)からの光を遮光させる機能をもたせるためである。ゲート電極GTをも被って基板SUB1の表面には絶縁膜GIが形成され、この絶縁膜GIはゲート絶縁膜として機能するようになっている。絶縁膜GIの上面には、島状に形成された半導体層SCLが形成されている。この半導体層SCLは前記ゲート電極GTと重畳するようにして形成され、平面的に観て、前記ゲート電極GTからはみ出すことなく形成されている。そして、この半導体層SCLは、ゲート電極GT側から、たとえば微結晶シリコンからなる微結晶半導体層μCSとたとえばアモルファスシリコンからなる非晶質半導体層ASの順次積層体から構成されている。
【0050】
半導体層SCLの表面には、ドレイン電極DTおよびソース電極STが形成されている。ドレイン電極DTとソース電極STは、半導体層SCL上において、相互に対向して配置され、半導体層SCLの側壁面に沿って該半導体層SCLの形成領域外にまで延在されている。ドレイン電極DTはドレイン信号線DLに接続され、ソース電極STはパッド部PDと接続されていることは上述した通りである。また、半導体層SCLの表面において、ドレイン電極DTとの界面、およびソース電極STとの界面には、それぞれ、非晶質半導体層ASにたとえばn型の高濃度不純物をドープさせたコンタクト層CNが形成されている。前記コンタクト層CNは、半導体層SCLの形成の際に、該半導体層SCLの上面に高濃度不純物層を形成しておき、パターン化されたドレイン電極DTおよびソース電極STを形成した後に、該ドレイン電極DTおよびソース電極STをマスクとし、このマスクから露出された前記高濃度不純物層をエッチングすることによって形成されるようになっている。この場合、高濃度不純物層の残留物によって、ドレイン電極DTとソース電極STとの短絡を回避するため、ドレイン電極DTおよびソース電極STから露出された半導体層SCLの表面は、コンタクト層CNとの界面よりも深くなるようにエッチングされる。
【0051】
このような構成からなる薄膜トランジスタTFTは、その半導体層SCLにおいて、微結晶半導体層μCSと非晶質半導体層ASの順次積層体から構成されているため、光電変換効率が高くなって構成されることになる。すなわち、半導体層SCLへの光の入射によって、非晶質半導体層AS内では長波長の光によっても電子−正孔対の充分な発生がなされるとともに、微結晶半導体層μCS内では発生した電子−正孔対の充分な分離がなされ、これら分離された電子は一方の電極へ、正孔は他方の電極へ導かれる現象が生じてしまうからである。
【0052】
しかし、このように光電変換効率の高い半導体層SCLが用いられていても、ゲート電極GTは、上述したように、光透過率が0.3%以下となる膜厚で形成されているため、たとえば、基板SUB1を通して入射されるバックライトBLからの光は、前記ゲート電極GTによってほぼ完全に遮光され、上述した光電変換による弊害を回避することができるようになる。
【0053】
図4は、上述した構成の薄膜トランジスタTFTにおいて、ゲート電極GTの材料をMoWとし、その膜厚を100nmとした場合のオフ電流特性を示したグラフである。該グラフにおいて、横軸にはバックライトBLの輝度(cd/m2)をとり、縦軸にはオフ電流(pA)をとっている。
【0054】
図4において、曲線αは、上述した構成の薄膜トランジスタTFTであって、ゲート電極GTの材料をMoWとし、その膜厚を100nmとした場合のオフ電流特性である。また、比較のため、曲線βにおいて、上述した構成の薄膜トランジスタTFTであって、ゲート電極GTの材料をMoWとし、その膜厚を50nmとした場合のオフ電流特性を示している。さらに、図4では、曲線γにおいて、低温で形成できるポリシリコン(LTPS)を半導体層とする薄膜トランジスタであって、ゲート電極GTの材料をMoWとし、その膜厚を50nmとした場合のオフ電流特性も示している。
【0055】
図4から明らかとなるように、実施例1に示した薄膜トランジスタTFTは、そのゲート電極GTの充分な遮光性が確保され、バックライトBLの輝度が20000(cd/m2)にまで至っても、オフ電流をほぼ0(pA)に維持できることを示している。
【0056】
尚、上記の通り、光透過率が0.3%以下となる膜厚でゲート電極GTを形成すればオフ電流を大幅に低減できるが、ゲート電極GTの膜厚を厚くしすぎると、微結晶半導体層を形成する際にゲート電極GTの吸熱によって、十分に微結晶化された半導体層が得られなくなる。よって、ゲート電極GTの材料にMoWを用い、半導体層を微結晶シリコン層とアモルファスシリコン層とで形成した場合、ゲート電極GTの膜厚は、75nm以上150nm以下の厚さにすることが望ましい。
【実施例2】
【0057】
図5は、本発明の表示装置の実施例2を示す構成図で、図1に対応した図となっている。
【0058】
図5において、図1の場合と比較して異なる構成は、ゲート電極GTは、少なくとも半導体層SCL(微結晶半導体層μCS、非晶質半導体層AS)と対向する領域において、光透過率が0.3%以下となる膜厚Wで形成され、ゲート信号線DLを含むそれ以外の領域はそれよりも小さな膜厚wで形成するようにしたものである。半導体層SCLへの光照射を回避することによって本発明の課題を達成できることから、ゲート電極GTのうち必要最小限の領域のみに充分な遮光機能をもたせるようにしたものである。
【0059】
このことから、ゲート電極GTを二層構造によって形成することにより、図5に示したと同様の構成とするようにしてもよい。
【実施例3】
【0060】
図6は、本発明の表示装置の実施例3を示す構成図で、図1に対応した図となっている。
【0061】
図6において、図1の場合と比較して異なる構成は、微結晶半導体層μCSと非晶質半導体層ASとの順次積層体からなる半導体層SCLにおいて、微結晶半導体層μCSは比較的小さな面積で形成され、非晶質半導体層ASはその周辺において微結晶半導体層μCSよりも外方にはみ出して形成された構成となっていることにある。このような構成は、ドレイン電極DTおよびソース電極STの微結晶半導体層μCSとの直接の接触を回避した構成となっている。
【0062】
この場合にあっても、ゲート電極GTは、平面的に観て、半導体層SCL(非晶質半導体層AS)の形成領域をはみ出すような大きさで形成されている。ゲート電極GTによってバックライトBLからの光を遮光させる機能をもたせるためである。
【実施例4】
【0063】
上述した実施例では、薄膜トランジスタTFTの半導体層SCLは、微結晶半導体層μCSと非晶質半導体層ASとの順次積層体として構成したものである。しかし、微結晶半導体層μCSの代わりに、たとえばポリシリコンのような多結晶半導体層であっても、上述したような同様の課題を有する。このため、薄膜トランジスタTFTの半導体層SCLが、多結晶半導体層と非晶質半導体層ASとの順次積層体であってもよい。なお、この明細書では、微結晶半導体層および多結晶半導体層を結晶性半導体層と称する場合がある。
【実施例5】
【0064】
上述した実施例では、図1に示した薄膜トランジスタTFTは、画像表示部ARにおいて各画素に形成される薄膜トランジスタTFTについて説明したものである。
【0065】
しかし、図2に示したように、基板SUB1上に形成される走査信号駆動回路Vは複数の薄膜トランジスタを備えており、これら薄膜トランジスタにおいても図1に示した構成を採用することができる。したがって、走査信号駆動回路Vの薄膜トランジスタにも本発明を適用することができる。
【0066】
同様に、基板SUB1上に形成されるRGBスイッチング回路RGBSも複数の薄膜トランジスタを備えており、これら薄膜トランジスタにおいても図1に示した構成を採用することができる。したがって、RGBスイッチング回路RGBSの薄膜トランジスタにも本発明を適用することができる。
【0067】
このことから、上述の走査信号駆動回路V、あるいはRGBスイッチング回路RGBSに限らず、表示部が形成された基板上に形成される他の薄膜トランジスタにも本発明を適用することができる。要は、画像表示部ARの周辺に形成される回路を構成する薄膜トランジスタに適用させることができる。
【実施例6】
【0068】
上述した実施例では、液晶表示装置について例を挙げて説明したものである。しかし、有機EL表示装置等の他の表示装置においても適用できる。有機EL表示装置にあってもその基板上に薄膜トランジスタが形成されているからである。
【0069】
以上、本発明を実施例を用いて説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、それぞれの実施例で説明した構成は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
PNL……液晶表示パネル、BL……バックライト、SUB1、SUB2……基板、AR……画像表示部、FPC……フレキシブル基板、SCN……半導体装置、SL……シール材、GL……ゲート信号線、DL……ドレイン信号線、CL……コモン信号線、TFT……薄膜トランジスタ、PX……画素電極、CT……対向電極、V……走査信号駆動回路、RGBS……RGBスイッチング回路、GT……ゲート電極、GI……絶縁膜、SCL……半導体層、μCS……微結晶半導体層、AS……非晶質半導体層、CN……コンタクト層、DT……ドレイン電極、ST……ソース電極、PD……パッド部、PAS……保護膜、PAS1……保護膜(無機絶縁膜)、PAS2……保護膜(有機絶縁膜)、LI……層間絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部が形成された基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置であって、
前記薄膜トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極を被って形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上であって前記ゲート電極に重畳して形成される島状の半導体層と、
前記半導体層上に形成され互いに対向して配置された一対の電極と、
を備え、
前記半導体層は、平面的に観た場合、前記ゲート電極の形成領域内に配置され、前記ゲート電極側から、結晶性半導体層および非晶質半導体層の順次積層体から構成され、
前記ゲート電極は、少なくとも前記半導体層と対向する領域において、光透過率が0.3%以下となる膜厚で形成されていることを特徴する表示装置。
【請求項2】
前記結晶性半導体層は微結晶半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記結晶性半導体層は多結晶半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ゲート電極は、前記半導体層と対向する領域における厚さが、前記半導体層と対向する領域以外の領域における厚さよりも大きいことを特徴とする請求項項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記結晶性半導体層は、前記ゲート絶縁膜の反対側の表面と前記表面と交差する側壁面とを有し、
前記表面と前記側壁面とは、前記非晶質半導体層で被われていることを特徴とする請求項項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ゲート電極はMoW合金で形成され、前記結晶性半導体層は微結晶シリコンで形成され、前記非晶質半導体層はアモルファスシリコンで形成され、
前記ゲート電極の前記膜厚は、75nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記薄膜トランジスタは、画像表示部を構成する画素内に形成される薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記薄膜トランジスタは、画像表示部の周辺の回路内に形成される薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
表示装置は有機EL表示装置であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−245480(P2010−245480A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95668(P2009−95668)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】