説明

表面実装型圧電発振器およびその特性測定方法

【課題】 本発明は、小型化・低背化に対応させながらベースの機械的強度を低下させることがないより信頼性の高い表面実装型圧電発振器およびその特性測定方法を提供する。
【解決手段】 圧電振動素子3と集積回路素子2を収納するセラミック多層基板からなる絶縁性のベース1と気密封止する蓋4とを有し、前記ベースは側壁部と収納部を有しており各素子と接続されるメタライズ配線と端子電極が形成された表面実装型圧電発振器であって、前記圧電振動素子の励振電極に接続された少なくとも一対の圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bと圧電振動素子測定用端子16a,16bを具備しており、前記圧電振動素子測定端子は、前記圧電振動素子測定用メタライズ配線の一部の厚肉部分が前記ベースの側壁部の上下中央部分でキャスタレーションを介在しない状態で露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性のベース上に圧電振動素子と集積回路素子が実装された表面実装型圧電発振器に関するものであって、特に表面実装型圧電発振器のパッケージ構造を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動板等の圧電振動素子を用いた圧電発振器は、安定して精度の高い発振周波数を得ることができるため、電子機器等の基準周波数源として多種の分野で使用されている。表面実装型圧電発振器では、絶縁性のベースとしてセラミック多層基板を用い、当該ベースの収納部に発振回路用の集積回路素子を配置するとともに、当該集積回路素子の上方に水晶振動板を支持固定し、蓋により気密封止を行ったものである。このような構成は集積回路素子のカスタム化により比較的部品点数が少なく、シンプルな構成であり、低コスト化に寄与している。
【0003】
このような圧電発振器においてはパッケージを気密封止した後、圧電振動素子単独の特性については外部から測定するために、特許文献1〜3に示すように、セラミックベースに圧電振動素子の入出電極を直接パッケージ外部に導出する構成が考えられている。つまり圧電振動素子単体の入出電極と接続されるようにセラミックベースにメタライズ配線パターンを形成し、当該メタライズ配線パターンをセラミックベースの側端部の一部に形成されたキャスタレーション部分に引き出すことで測定端子を構成している。このように構成された圧電発振器の測定端子と圧電振動素子特性測定装置のコンタクトプローブとを接触した状態で計測することで、他の回路部品が介在しない発振回路全体としての特性ではなく、圧電振動素子の特性を測定することができる。
【特許文献1】実開平4−5712号公報
【特許文献2】実開平5−65110号公報
【特許文献3】特開2004−214799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電子機器の小型化がすすんでおり、この小型化にともない上記したような表面実装型圧電発振器も小型化が進められている。しかしながら、上述のようなセラミックベースからなる圧電発振器に形成される測定端子は、セラミックベースの外部へ露出する配線パターンの形成をより確実にするために、セラミックベースにキャスタレーションを形成するとともにこのキャスタレーションの内壁部分に沿ってメタライズ形成することが一般的な構成となっている。このようなキャスタレーションをセラミックベースに形成することは表面実装型圧電発振器の小型化の阻害要因となるばかりか、セラミックベースの収納部のスペース確保の観点から制限を与えるようになっている。さらに前記キャスタレーションの形成領域の機械的強度も低下するため、封止時の熱的歪みや応力によりセラミックベースに対してクラックが発生することもあった。
【0005】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、小型化・低背化に対応させながらベースの機械的強度を低下させることがないより信頼性の高い表面実装型圧電発振器およびその特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の特許請求項1に示すように、圧電振動素子と、集積回路素子と、セラミック多層基板により側壁部と収納部が形成され前記各素子と接続されるメタライズ配線と端子電極が形成された絶縁性のベースと、前記各素子が収納されたベースを気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電発振器であって、前記圧電振動素子の励振電極に接続された少なくとも一対の圧電振動素子測定用メタライズ配線と、当該圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層の一部が前記ベースの側壁部の上下中央付近でキャスタレーションを介在しない状態で露出して構成された圧電振動素子測定用端子を具備しており、前記圧電振動素子測定端子のメタライズ層は他の圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層より厚肉部分が構成されてなることを特徴とする。
【0007】
上記構成により、一対のコンタクトプローブを有する圧電振動素子特性測定装置を用いた際に、当該一対のコンタクトプローブを圧電振動素子測定端子のメタライズ層の厚肉部分に対して接触させることで、お互いの接続が確実に行えるため、圧電振動素子の特性の測定が確実に実施できる。
【0008】
前記圧電振動素子測定端子が形成されたベースの側壁部にはキャスタレーションがなく、ベースの側壁部の幅をキャスタレーションで縮小されることもなくなるので、前記ベースの機械的強度を低下させることなく、ベースの収納部のスペースをより最大限に確保することができる。このためベースを蓋で気密封止する際の熱的歪みや応力によりベースに対してクラックが発生することがなく、表面実装型圧電発振器の小型化を妨げることもない。より大きな圧電振動素子を収納することができるようになるので、圧電振動素子の低周波化や特性の向上が行える。
【0009】
前記圧電振動素子測定端子が前記ベースの側壁部の上下中央付近で形成されていることにより、上部で蓋の封止材やベースの接合領域との短絡を防止するとともに、下部においては実装基板上の導体との短絡を防止するという利点を有している。
【0010】
また、本発明の特許請求項2に示すように、上述の構成に加え、前記圧電振動素子測定端子としてベースの側壁部で露出されたメタライズ層の厚みが端部より中央部で厚く形成されてなることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、積層されるセラミック多層基板が圧電振動素子測定端子のメタライズ層の厚肉部分とメタライズ配線の存在しない部分とで厚み差が急激に生じることによる悪影響がなくなる。つまり、メタライズ配線による急激な厚み差を生じたままセラミック多層基板を積層して一体焼成すると、この部分でのベースの側壁部の機械的強度が低下し、気密性が低下することがあるが、前記圧電振動素子測定端子としてベースの側壁部で露出されたメタライズ層の厚みが端部より中央部で厚くなるように形成することで、パッケージとして強度や気密性が低下することのないより信頼性の高い、小型化が容易な表面実装型圧電発振器を提供することができる。なお、前記圧電振動素子測定端子としてベースの側壁部で露出されたメタライズ層の厚みが端部より中央部で厚く形成するには、上下で幅寸法や面積の異なるメタライズ配線層を少なくとも2層以上に積層するとよい。
【0012】
また、本発明の特許請求項3に示すように、上述の構成に加え、前記ベースは平面視長方形であり、ベース側壁部の中央部分で一対の対向する前記圧電振動素子測定端子が形成されてなることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、一対のコンタクトプローブを有する圧電振動素子特性測定装置を用いた際に、当該一対のコンタクトプローブをベースの対向する側壁部に挟み込む形で、圧電振動素子測定端子のメタライズ層の厚肉部分へ接触させることで、お互いの接続がより確実となり、圧電振動素子の特性の測定が確実に実施できる構成となる。また、圧電振動素子測定端子を側壁部の中央部分に形成することにより、上下方向においては上部で蓋の封止材やベースの接合領域との短絡を防止するとともに、下部においては実装基板上の導体との短絡を防止するという利点を有している。横方向においてはベースの端部に形成される他の端子電極との短絡を防止するとともに、他の端子電極の配線を妨げることがない位置に形成することができるという利点を有している。
【0014】
また、本発明の特許請求項4に示すように、上述の構成に加え、前記絶縁性のベースと蓋は金属ろう材により封止してもよく、ベースを蓋で気密封止する際の局所的な熱的歪みや応力によりベースに対してクラックが発生することがなく、表面実装型圧電発振器の小型化に好ましい形態となる。また、ベースの接合領域に凹凸部分が生じるようなことがあっても、金属ろう材によりベースの接合領域の凹凸部分を吸収して気密性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明の特許請求項5に示すように、上述のような表面実装型圧電発振器の特性測定方法としては、圧電振動素子と、集積回路素子と、セラミック多層基板により側壁部と収納部が形成され前記各素子と接続されるメタライズ配線と端子電極が形成された絶縁性のベースと、前記各素子が収納されたベースを気密封止する蓋とを有するとともに、前記圧電振動素子の励振電極に接続された少なくとも一対の圧電振動素子測定用メタライズ配線と、当該圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層の一部が前記ベースの側壁部の上下中央付近でキャスタレーションを介在しない状態で露出して構成された圧電振動素子測定用端子を具備しており、前記圧電振動素子測定端子のメタライズ層は他の圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層より厚肉部分が構成されてなる表面実装型圧電発振器の特性測定方法であって、コンタクト部にエッジ構成のコンタクトプローブを有する圧電振動素子特性測定装置を用い、当該一対のコンタクトプローブのエッジ部を前記一対の圧電振動素子測定端子の厚肉部分に対して押しつけた状態で、表面実装型圧電発振器内の圧電振動素子の特性を測定することを特徴とする。
【0016】
上記特性測定方法により、ライン状に形成される圧電振動素子測定端子に対して、コンタクトプローブのエッジ部をより確実な状態で接触させることができ、お互いの接続がさらに確実に行えるため、圧電振動素子の特性の測定がより確実に実施できる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明は、小型化・低背化に対応させながらベースの機械的強度と気密性を低下させることがなく、圧電振動素子の特性の測定がより確実に実施できるより信頼性の高い表面実装型圧電発振器およびその特性測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による好ましい実施形態につき表面実装型水晶発振器(表面実装型圧電発振器)を例にとり図面とともに説明する。図1は本発明の実施形態を示す圧電振動素子を搭載し蓋を封止する前のベースの平面図、図2は図1の底面図、図3は図1の蓋を封止した状態の側面図、図4は図1の蓋を封止した状態のA−A線に沿った断面図である。また図5は本発明の実施形態にかかる表面実装型水晶発振器の特性測定工程を示した概略斜視図であり、図6は図5の平面図である。
【0019】
表面実装型水晶発振器6は、上部が開口した凹部を有する絶縁性のセラミックベース1(以下、ベースと称する)と、当該ベースの中に収納される集積回路素子2と、同じく当該ベース中の上部に収納される圧電振動素子3と、ベースの開口部に接合される蓋4とからなる。この表面実装型水晶発振器では、ベース1と蓋4とが後述する金属ろう材5を用いて加熱溶融接合されて気密封止され、表面実装型水晶発振器6が構成されている。以下、この表面実装型水晶発振器6の各構成について説明する。
【0020】
ベース1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板の底部11と、この底部11上に積層したセラミック材料の平面視枠形状の堤部12,13とから構成され、断面でみて凹形の収納部10を有する箱状体に形成されている。収納部10は第1の収納部10a(下部収納部)と第2の収納部10b(上部収納部)からなり、それぞれ集積回路素子2と圧電振動素子3が収納される。
【0021】
前記収納部10の周囲には堤部(側壁部)12,13が形成されており、堤部13の上面(端面)は平坦であり、後述する蓋4との接合領域(金属膜)11aである。この接合領域11aは、タングステンあるいはモリブデン等のメタライズ材料からなるメタライズ層と、このメタライズ層に積層されたニッケル層と、このニッケル層に積層された金層とから構成される。タングステンあるいはモリブデンは厚膜印刷技術を活用してメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、メタライズ層上にニッケル層、金層の順でメッキ形成される。
【0022】
ベース1の外周壁の四隅には上下方向に伸長する複数のキャスタレーションが形成されている。当該キャスタレーションはベースの外周壁に対して円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成である。なお、前記接合領域11aはベースの堤部12,13を上下に貫通接続する図示しない導電ビアやキャスタレーションなどにより、ベース底面側に形成された端子電極の一部に電気的に導出されている。当該端子電極をアース接続することにより、後述する金属製の蓋が接合領域11a、導電ビアやキャスタレーションなどを介して接地され、表面実装型水晶発振器の電磁気的なシールド効果を得ることができる。なお、前述のとおり、当該導電ビアは周知のセラミック積層技術により形成することができる。
【0023】
ベース1内部において、下方面には前記堤部(側壁部)12により構成され、集積回路素子2を収納する第1の収納部10aが形成され、当該第1の収納部の底面から上部に突出し、後述する圧電振動素子の端部を保持する保持台10cと、前記第1の収納部を介して前記保持台と対向位置する枕部10dが形成されている。また前記第1の収納部10aの上方には前記堤部(側壁部)13により構成された第2の収納部10bが形成されている。
【0024】
前記第1の収納部10aの底面には、後述する集積回路素子2と接続される複数の第1の配線パターン(一部のみ図示)12が並んで形成されている。これらの第1の配線パターン12の一部はキャスタレーションを介して引き出され、最終的に端子電極14a,14b,14c,14dへと導かれるように構成され、これら端子電極14a,14b,14c,14dから外部部品や外部機器と接続される。
【0025】
前記保持台10cの上面101cには、後述する圧電振動素子3と接続される一対の第2の配線パターン13a,13bが形成されている。この第2の配線パターン13a,13bは保持台10cに形成された導電ビアVにより前記第1の配線パターン12の一部と接続されている。このような構成のベースは周知のセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成され、前記各配線パターンは前述の接合領域11a形成と同様にタングステンあるいはモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0026】
また、前記第2の配線パターン13a,13bに接続された少なくとも一対の圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bと圧電振動素子測定用端子16a,16bとが前記堤部(側壁部)12の上面に沿って形成されている。この時前記圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bは前記堤部(側壁部)12に内在する位置に形成し、圧電振動素子測定用端子16a,16bとして前記堤部(側壁部)12の外部にメタライズ層の一部が露出するように形成している。前記圧電振動素子測定用端子16aは圧電振動素子測定用メタライズ配線15aを介して前記第2の配線パターン13aと接続され、前記圧電振動素子測定用端子16bは圧電振動素子測定用メタライズ配線15bを介して前記第2の配線パターン13bと接続されている。つまり圧電振動素子測定用端子16aは前記第2の配線パターン13aを介して圧電振動素子3の励振電極31と接続され、圧電振動素子測定用端子16bは前記第2の配線パターン13bを介して圧電振動素子3の励振電極32と接続されることで、これら一対の圧電振動素子測定用端子16aと圧電振動素子測定用端子16bに対して、圧電振動素子特性装置のコンタクトプローブを接触することで圧電振動素子単独の特性を測定することができるように構成されている。
【0027】
本発明では、図1、図3、図4に示すように、外部に露出する前記圧電振動素子測定用端子16a,16bの少なくとも一部のメタライズ層の厚みが、前記圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bのメタライズ層の厚みよりも厚肉となる厚肉部分が構成されている。また当該圧電振動素子測定用端子16a,16bは前記圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bによりそれぞれ引き出され、ベース両端部の長辺中央部分の堤部(側壁部)12でキャスタレーションを介在しない状態で対向して外部に露出している。つまり圧電振動素子測定端子16a,16bは圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bのメタライズ層の一部が前記ベース1の長辺堤部(長辺側壁部)の中央部分でキャスタレーションを介在しない状態で露出して構成され、前記圧電振動素子測定端子15a,15bのメタライズ層は他の圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bのメタライズ層より厚肉部分が構成されている。
【0028】
前記圧電振動素子測定用端子のメタライズ層のうち161a,161bは厚肉部分となっており、本形態では前記圧電振動素子測定端子16a,16bとしてベース1の堤部(側壁部)で露出されたメタライズ層の厚みが端部より中央部で厚くなるように、圧電振動素子測定端子の下層のメタライズ層162a,162bに対して、露出幅を小さくした上層のメタライズ層161a,161bを積層している。なお前記圧電振動素子測定用端子16a,16bのメタライズ層の厚みをより増大させる場合には積層するメタライズ層の積層を2層以上形成するとよく、このようなメタライズ層の厚肉部分の厚みとしては、10〜30μ程度が望ましい。このような厚みの異なるメタライズ層の構成は、スクリーン印刷技術により形成することができる。
【0029】
なお、上記実施例では、ベース1の堤部(側壁部)で外部に露出する前記圧電振動素子測定用端子16a,16bがベース1の長辺堤部(長辺側壁部)の中央部分でお互いに対向して露出しているが、ベース1の長辺堤部(長辺側壁部)の上下左右の端部でない中央付近に露出形成すればよい。またベース1の短辺堤部(短辺側壁部)の中央付近でお互いに対向して露出してもよく、ベース1の長辺堤部(長辺側壁部)、あるいは短辺堤部(短辺側壁部)の少なくとも1つの中央付近で並列して露出するように構成してもよい。
【0030】
前記下部収納部に搭載される集積回路素子2は、圧電振動素子3とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、その一面には接続端子21(一部のみ図示)が複数形成されている。当該集積回路素子2は、例えば金などの金属バンプCを介して、集積回路素子の複数の接続端子21と前記ベースに形成された複数の第1の配線パターン12とを例えばFCBにより接続される。
【0031】
前記集積回路素子2の上方には所定の間隔を持って圧電振動素子3が搭載される。圧電振動素子3は例えば矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面に対向して一対の矩形状励振電極31,32と、この励振電極を前記ベースの保持台に形成された第2の配線パターン13と導通するための接続電極33,34と、励振電極を接続電極に導通させるための引出電極35,36が形成されている。
【0032】
なお、これらの電極は、例えば、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、クロムの上部電極層とから構成された積層薄膜、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、ニッケルの上部電極層とから構成された積層薄膜、あるいはクロムの下地電極層と、銀または金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。なお、クロムやニッケルの変わりにアルミの上部電極層、あるいは中間層が金の場合は銀の上部電極層を形成してもよい。
【0033】
圧電振動素子3とベース1との接合は、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電樹脂接着剤(導電性接合材)Sを用いている。図1に示すように、前記導電性樹脂接着剤Sは、前記第2の配線パターン13の上面に塗布されるとともに、前記導電性樹脂接着剤Sを前記圧電振動素子3と前記保持台10cの間に介在させ硬化させることで、お互いを電気的機械的に接合している。以上により、前記圧電振動素子3の一端部(自由端となる枕部10d側)をベース1の第1の収納部10aの底面から隙間を設けながら、前記圧電振動素子3の対向する他端部を前記ベースの保持台10cに接合して、片持ち保持される。
【0034】
ベース1を気密封止する蓋4は、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材(封止材)5が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、ニッケル層、金錫ろう層の順の多層構成であり、金錫ろう層がセラミックベースの金属層と接合される構成となる。金属製の蓋の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0035】
収納部10に集積回路素子2と圧電振動素子3が格納されたベース1の接合領域11aに対して前記金属製の蓋4にて被覆し、金属製の蓋4の封止材5とベースの接合領域11aを溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型水晶発振器6の完成となる。
【0036】
上記実施形態により、一対のコンタクトプローブを圧電振動素子測定用端子16a,16bのメタライズ層の厚肉部分である161a,161bに対して接触させることで、お互いの接続が確実に行えるため、圧電振動素子3の特性の測定が確実に実施できる。
【0037】
前記圧電振動素子測定端子16a,16bが形成されたベースの堤部(側壁部)12,13の部分にはキャスタレーションがなく、ベースの側壁部の幅をキャスタレーションで縮小されることもなくなるので、ベース1の機械的強度を低下させることなく、ベース1の収納部10のスペースをより最大限に確保することができる。このためベース1を蓋4で気密封止する際の熱的歪みや応力によりベース1に対してクラックが発生することがなく、表面実装型圧電発振器6の小型化を妨げることもない。より大きな圧電振動素子3を収納することができるようになるので、圧電振動素子3の低周波化や特性の向上が行える。特に本形態ではセラミック多層基板を小割り切断したり、当該セラミック多層基板の配線パターンを上下面へ引き回したり、はんだなどの外部回路基板と接合される導電性接合材のはい上がりを形成するのに必要なキャスタレーションをベースの外周四隅のみに形成しているので、上述した収納スペース10の縮小化やクラックの悪影響も受けにくい構成とすることができる。
【0038】
また、前記圧電振動素子測定端子16a,16bを構成する際に、ベースの側壁部で露出されたメタライズ層の厚みが端部より中央部の厚みを厚く形成することで、積層されるセラミック多層基板が圧電振動素子測定用メタライズ配線15a,15bの厚肉部分161a,161bとメタライズ配線の存在しない部分とで厚み差が急激に生じることがなくなり、パッケージとして強度や気密性が低下することのないより信頼性の高い、小型化が容易な表面実装型圧電発振器6を提供することができる。
【0039】
また、前記ベース1は平面視長方形であり、ベース堤部(側壁部)の中央部分で一対の対向する前記圧電振動素子測定端子16a,16bが形成することで、一対のコンタクトプローブを有する圧電振動素子特性測定装置を用いた際に、当該一対のコンタクトプローブをベース1の対向する長辺堤部(長辺側壁部)に挟み込む形で、圧電振動素子測定端子16a,16bのメタライズ層の厚肉部分へ接触させることで、お互いの接続がより確実となり、圧電振動素子2の特性の測定が確実に実施できる構成となる。また、前記圧電振動素子測定端子16a,16bが前記ベース1の堤部(側壁部)の中央部分で形成されていることにより、上下方向においては上部で蓋4の封止材41やベースの接合領域11aとの短絡を防止するとともに、下部においては実装基板上の導体との短絡を防止するという利点を有している。横方向においてはベース1の端部に形成される他の端子電極14a,14b,14c,14dとの短絡を防止するとともに、他の端子電極14a,14b,14c,14dの配線を妨げることがない位置に形成することができるという利点を有している。
【0040】
また、前記ベース1と蓋4は金属ろう材により気密封止しているので、局所的な熱的歪みや応力によりベース1に対してクラックが発生することがなく、表面実装型圧電発振器6の小型化に好ましい形態となる。
【0041】
本発明の実施形態で開示した上記圧電振動素子測定用端子16a,16bは一部に厚肉部分を有したライン状で構成されている。このため通常の面状の端子電極(例えば14a,14b,14c,14d等)とは異なり、コンタクトプローブを接触させて特性測定するためにより確実な接触状態とする必要がある場合がある。以下、より確実な接触状態とするための表面実装型水晶発振器における圧電振動素子の特性測定方法について、図5、図6とともに説明する。
【0042】
圧電振動素子特性測定装置として、例えばネットワークアナライザNを用いており、そのコンタクトプローブC1,C2としては、例えば銅材に金メッキされた材料からなり、接触部分が線接触されるように鋭利に尖らせたナイフエッジ状に構成したものである。このような圧電振動素子特性測定装置を用いて圧電振動素子3の特性を測定する場合は、上述のように気密封止された表面実装型水晶発振器6を図示しない治具により固定しておき、一対のコンタクトプローブC1,C2のナイフエッジ部をお互いに対向する位置から前記圧電振動素子測定用端子16a,16bの厚肉部分に対して押しつけた状態で接触させる。この時外部表面に露出した前記圧電振動素子測定用端子16a,16bの線方向に対して、前記ナイフエッジ状のコンタクトプローブC1,C2のエッジ方向を交差した状態で接触させるのが、接触不良をなくした確実な接続を実現するうえでより望ましい。この接触動作は手作業で行ってもよいし、自動機により行ってもよい。測定は例えばネットワークアナライザNを用いて伝送法により行い、例えばCI値、周波数,DLD特性を測定する。
【0043】
測定の結果、仕分け設定された基準に基づいて特性毎に分類されたり、あるいは所定基準の特性を満たしていない場合は、不良品として除外される。なお、表面実装型水晶発振器が温度補償型水晶発振器や電圧制御型水晶発振器等の付加機能を有する場合には、上記圧電振動素子測定値を参照して、内部に格納されたIC等の回路素子に対して外部からデータ書き込みを行い、適切な特性を有する表面実装水晶発振器を得ることも可能である。データの書き込みは前述の圧電振動素子測定用端子以外で外部に導出された所定の端子電極を介して行えばよい。
【0044】
上記特性測定方法により、ライン状に形成される圧電振動素子測定端子16a,16bに対して、コンタクトプローブC1,C2のナイフエッジ部をより確実な状態で接触させることができ、お互いの接続がさらに確実に行えるため、圧電振動素子3の特性の測定がより確実に実施できる。
【0045】
なお、上記した本実施例では、圧電振動素子としてATカット水晶振動板を用いているが、これに限定されるものでなく、音叉型水晶振動板であってもよい。また、圧電振動素子として水晶を材料としているが、これに限定されるものではなく、圧電セラミックスやLiNbO3等の圧電単結晶材料を用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動素子が適用可能である。また、圧電振動素子を片持ち保持するものを例にしているが、圧電振動素子の両端を保持する構成であってもよい。また導電性接合材として、シリコーン系の導電樹脂接着剤を例にしているが、他の導電性樹脂接着剤でもよく、金属バンプやメッキバンプのバンプ材、ろう材等を用いてもよい。
【0046】
また、本実施例では、圧電振動素子3と集積回路素子2とを用いているが、これに限定されるものではなく、圧電振動素子3の個数は任意に設定可能であり、さらに集積回路素子2に加えて他の回路部品を搭載してもよい。すなわち、用途にあわせてベースに搭載する部材を設定変更することができる。また、集積回路素子とベースとの電気的接続は、フリップチップボンディング工法に限らず、ワイヤボンディング工法などを採用してもよい。
【0047】
また、本実施例では、上記した金錫などによる金属ろう材封止を例にしたが、これに限定されるものではなく、シーム封止、ビーム封止(例えば、レーザビーム、電子ビーム)やガラス封止等でも適用することができる。
【0048】
また、本実施例では、ライン状に形成される圧電振動素子測定端子16a,16bに対してより確実な状態でコンタクトプローブを接触させるために、ナイフエッジ状のコンタクトプローブを例にしているが、他のエッジ構成のコンタクトプローブでもよい。さらに、エッジ構成のコンタクトプローブに限らず、異方導電性のシート状のコンタクトプローブを用いてもよい。
【0049】
なお、本発明は、その思想または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、表面実装型圧電振動発振器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態を示す圧電振動素子を搭載し蓋を封止する前のベースの平面図。
【図2】図1の底面図。
【図3】図1の蓋を封止した状態の側面図。
【図4】図1の蓋を封止した状態のA−A線に沿った断面図。
【図5】本発明の実施形態にかかる表面実装型水晶発振器の特性測定工程を示した概略斜視図。
【図6】図5の平面図。
【符号の説明】
【0052】
1 ベース
2 集積回路素子
3 圧電振動素子
4 蓋
5 金属ろう材(封止材)
S 導電樹脂接着剤(導電性接合材)
C 金属バンプ
V 導電ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、集積回路素子と、セラミック多層基板により側壁部と収納部が形成され前記各素子と接続されるメタライズ配線と端子電極が形成された絶縁性のベースと、前記各素子が収納されたベースを気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電発振器であって、
前記圧電振動素子の励振電極に接続された少なくとも一対の圧電振動素子測定用メタライズ配線と、当該圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層の一部が前記ベースの側壁部の上下中央付近でキャスタレーションを介在しない状態で露出して構成された圧電振動素子測定用端子を具備しており、
前記圧電振動素子測定端子のメタライズ層は他の圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層より厚肉部分が構成されてなることを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項2】
前記圧電振動素子測定端子としてベースの側壁部で露出されたメタライズ層の厚みが端部より中央部で厚く形成されてなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項3】
前記ベースは平面視長方形であり、ベース側壁部の中央部分で一対の対向する前記圧電振動素子測定端子が形成されてなることを特徴とする特許請求項1、または特許請求項2記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項4】
前記絶縁性のベースと蓋は金属ろう材により封止されてなることを特徴とする特許請求項1乃至3記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項5】
圧電振動素子と、集積回路素子と、セラミック多層基板により側壁部と収納部が形成され前記各素子と接続されるメタライズ配線と端子電極が形成された絶縁性のベースと、前記各素子が収納されたベースを気密封止する蓋とを有するとともに、前記圧電振動素子の励振電極に接続された少なくとも一対の圧電振動素子測定用メタライズ配線と、当該圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層の一部が前記ベースの側壁部の上下中央付近でキャスタレーションを介在しない状態で露出して構成された圧電振動素子測定用端子を具備しており、前記圧電振動素子測定端子のメタライズ層は他の圧電振動素子測定用メタライズ配線のメタライズ層より厚肉部分が構成されてなる表面実装型圧電発振器の特性測定方法であって、
コンタクト部にエッジ構成のコンタクトプローブを有する圧電振動素子特性測定装置を用い、当該一対のコンタクトプローブのエッジ部を前記一対の圧電振動素子測定端子の厚肉部分に対して押しつけた状態で、表面実装型圧電発振器内の圧電振動素子の特性を測定することを特徴とする表面実装型圧電発振器の特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−62959(P2010−62959A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227678(P2008−227678)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】