説明

表面実装水晶発振器

【課題】樹脂封止による耐衝撃性や防水特性を確保しつつ、放熱特性を向上させることができる表面実装水晶発振器を提供する。
【解決手段】本発明の表面実装水晶発振器は、凹部13、14が形成された容器本体1と、容器本体1の凹部13内に収納された水晶片3と、水晶片3と電気的に接続され、かつ凹部14内に収納されたICチップ2とを有する。凹部14内のICチップ2は封止樹脂20により密封封止されており、封止樹脂20の表面にはICチップ2で生じた熱を外部に放熱するための放熱部材21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装用の水晶発振器(以下、「表面実装水晶発振器」と呼ぶ。)は、小型、軽量であることから、例えば携帯型の電子機器に、周波数や時間の基準源として内蔵される。
【0003】
特許文献1には、積層セラミックからなる凹部を有する容器本体にICチップを超音波熱圧着によって固着し、水晶片とともに一体化したタイプの表面実装水晶発振器が開示されている。特許文献1に開示された表面実装水晶発振器では、容器本体の凹部内に収納されたICチップは一部のみが樹脂封止されている。
【0004】
これに対して、ICチップの全体を樹脂で封止した表面実装水晶発振器についても知られている。このような表面実装水晶発振器の表面実装水晶発振器の断面図を図3に、また、図3に示す表面実装水晶発振器の平面図を図4にそれぞれ示す。
【0005】
H型構造を有する表面実装水晶発振器は、容器本体100にICチップ102及び水晶片103を収容して一体化してなるものである。
【0006】
容器本体100は底壁層101aと枠壁層101bとの積層セラミックからなり、図3に示すH型構造は、底壁層101aの両主面側に枠壁層101bを設けることで両主面側に凹部が形成されている。
【0007】
ICチップ102は、超音波熱圧着によって、容器本体100の一主面側の底壁層101a(凹部内底面)の回路端子106に位置決めして固着される。ICチップ102の一主面にはバンプ107が設けられており、ICチップ102の他主面側から超音波による振動を加えながら加熱して圧着される。また、ICチップ102は、その全体が底壁層101a及び枠壁層101bにより形成された凹部内にて樹脂120により封止されている。
【0008】
水晶片103は、その一端部両側が、例えば熱硬化型の導電性接着剤108によって、他主面側の底壁層101a上に形成された保持端子112に固着されている。
【0009】
また、ICチップ102が搭載された側の枠壁層101b上には実装端子109が形成されている。実装端子109は、ICチップ102の端子と電気的に接続されている。また、水晶片103が収納された側の凹部を形成する枠壁層101bの上面には溶接用の金属リング117が設けられている。水晶片103の収容される凹部の開口面は、例えばシーム溶接によって金属リング117に対して金属カバー110が接合されることで密閉される。また、水晶片103の保持端子112はビアホール111によってICチップ102と電気的に接続されている。
【特許文献1】特開2007−208568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
容器本体内に収納されたICチップの全体を樹脂で封止することで耐衝撃性や防水特性を向上させることができる。しかしながら、ICチップ全体を樹脂で封止した場合、ICチップの一部のみを樹脂で封止した場合に比べICチップで生じた熱を外部に効率的に放熱させることが困難となる。外部に放熱できなかった熱は、底壁層、枠壁層、あるいはビアホール等を通じて水晶片の温度を上昇させてしまい、所望の周波数特性を得ることができなくなる場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、樹脂封止による耐衝撃性や防水特性を確保しつつ、放熱特性を向上させることができる表面実装水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明の表面実装水晶発振器は、凹部が形成された容器本体と、容器本体内に収納された水晶片と、水晶片と電気的に接続され、かつ凹部内に収納された電子部品と、凹部内の電子部品を密封封止する封止樹脂と、封止樹脂の表面に設けられた放熱部材と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂封止による耐衝撃性や防水特性を確保しつつ、放熱特を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に本実施形態のH型構造を有する表面実装水晶発振器の一例の断面図を、図2に図1に示す表面実装水晶発振器の平面図をそれぞれ示す。
【0015】
本実施形態の表面実装水晶発振器は、容器本体1にICチップ2及び水晶片3を収容して一体化してなる。
【0016】
容器本体1は底壁層1aと枠壁層1bとの積層セラミックからなり、H型構造となっている。底壁層1aの一主面側1a1の凹部13内には水晶片3が収納され、他主面側1a2の凹部14内にはICチップ2が収納されている。H型構造とは、底壁層1aの両主面側1a1、1a2に枠壁層1bを設けて凹部13、14を形成することで容器本体1の断面形状がH字形状となった構造をいう。
【0017】
水晶片3は、水晶片3の一端部両側が、例えば熱硬化型の導電性接着剤8によって、一主面側1a1の底壁層1a上に形成された保持端子12に固着されている。水晶片3が収納された凹部13を形成する枠壁層1bの上面には溶接用の金属リング17が設けられている。凹部13の開口面は、例えばシーム溶接によって金属リング17に対して金属カバー10が接合されることで密閉される。金属カバー10と金属リング17との接合には、AuSn、AuGe、AuSi等の共晶合金を用いることができる。
【0018】
ICチップ2は、少なくとも発振回路を集積化しており、ICチップ2の一面(以下、回路機能面と呼ぶ。)にはIC端子が形成されている。また、ICチップ2は、水晶片3の温度特性に対して温度補償を行うための温度補償機構を有する。この温度補償機構は、ICチップ2と水晶片3とが熱的に平衡な状態にて適切な温度補償が行えるように設定されている。ICチップ2は、超音波熱圧着によって、底壁層1aの回路端子6に位置決めして固着される。ICチップ2の一主面2aにはバンプ7が設けられており、ICチップ2の他主面2b側から超音波による振動を加えながら加熱して圧着される。
【0019】
ICチップ2が搭載された側の枠壁層1b上には実装端子9が形成されている。実装端子9は、ICチップ2の端子と電気的に接続されている。また、水晶片3の保持端子12はビアホール11によってICチップ2と電気的に接続されている。
【0020】
また、ICチップ2は凹部14内にて封止樹脂20により密封封止されている。封止樹脂20はICチップ2の他主面2bを覆うように凹部14内に充填されている。すなわち、封止樹脂20はICチップ2の全体を密封封止するように凹部14内に充填されている。凹部14に充填された封止樹脂20の表面には、ICチップ2で生じた熱を外気に放熱するための放熱部材21が設けられている。放熱部材21は封止樹脂20が硬化する前に封止樹脂20上に搭載され、封止樹脂20が硬化することで封止樹脂20に接合される。なお、放熱部材21は封止樹脂20が硬化した後に樹脂20に接着剤を用いて接着するものであってもよい。放熱部材21には、ICチップ2で生じた熱を効率よく放熱するために、表面積ができるだけ大きいものが好ましく、例えば網目状の金属網を用いることができる。また、放熱部材21として表面に凹凸が形成された金属シート等も適用可能である。放熱部材21の材質は、熱伝導率の高い金属が好適であり、例えば銅やアルミニウムを用いることができる。放熱部材21の平面寸法(La21×Lb21)は、放熱効率を高めるためできるだけ大きくするのが好適であるが、ICチップ2の平面寸法(La2×Lb2)より大きく、かつICチップ2が搭載された凹部14の開口寸法(La14×Lb14)よりも小さくするのがより好ましい。放熱部材21の平面寸法を凹部の開口寸法よりも小さくすることで、表面実装水晶発振器を不図示の基板に実装する際、放熱部材21が邪魔にならずに済むからである。
【0021】
ICチップ2の全体を封止樹脂20で封止すると耐衝撃性や防水特性は良好となる一方、放熱はされにくい構造となる。このため、ICチップ2で生じた熱は、水晶片3の温度を上昇させることとなる。すなわち、ICチップ2で生じた熱は、バンプ7、回路端子6、ビアホール11、保持端子12、導電性接着剤8を介して水晶片3に伝わる。また、ICチップ2で生じた熱は、バンプ7、回路端子6、底壁層1a、保持端子12、導電性接着剤8を介しても水晶片3に伝わる。さらには、ICチップ2で生じた熱が底壁層1a及び枠壁層1bに伝わることで水晶片3を収納している凹部内の温度を上昇させる。
【0022】
しかしながら、本実施形態の表面実装水晶発振器は、ICチップ2で生じた熱は、封止樹脂20を通じて放熱部材21へと伝達され、放熱部材21の表面から外部の大気へと放熱される。このため、水晶片3の温度の上昇を抑制することができ、よって、水晶片3の所望の周波数特性を得ることができる。また、本実施形態の表面実装水晶発振器は、封止樹脂20にてICチップ2を密封しているため、外部からの衝撃、水分等からICチップ2を良好に保護することができる。つまり、本実施形態の表面実装水晶発振器は、十分な耐衝撃性、防水特性を具備しつつ、放熱特性も高められている。
【0023】
なお、上記実施形態では、他主面側1a2には電子部品としてICチップ2のみが搭載されているが、必要に応じて、コンデンサ等のチップ素子を含む電子部品が搭載されていても良い。
【0024】
以上、本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の平面図である。
【図3】一従来例における表面実装水晶発振器の断面図である。
【図4】一従来例における表面実装水晶発振器の平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 容器本体
1a 底壁層
1b 枠壁層
1a1 一主面側
1a2 他主面側
2 ICチップ
2a 一主面
2b 他主面
3 水晶片
6 回路端子
7 バンプ
8 導電性接着剤
9 実装端子
10 金属カバー
11 ビアホール
12 保持端子
17 金属リング
20 封止樹脂
21 放熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された容器本体と、
前記容器本体内に収納された水晶片と、
前記水晶片と電気的に接続され、かつ前記凹部内に収納された電子部品と、
前記凹部内の前記電子部品を密封封止する封止樹脂と、
前記封止樹脂の表面に設けられた放熱部材と、を有する表面実装水晶発振器。
【請求項2】
前記放熱部材は、金属網からなる請求項1に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項3】
前記放熱部材は、表面に凹凸が形成された金属シートからなる請求項1に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項4】
前記放熱部材の平面寸法は、前記電子部品の平面寸法よりも大きく、かつ前記凹部の開口寸法よりも小さい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項5】
前記電子部品はICチップである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−119013(P2010−119013A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292139(P2008−292139)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】