説明

表面実装用の水晶発振器

【課題】外部温度の影響を排除して、温度補償動作を確実にした表面実装発振器を提供する。
【解決手段】開口端面に封止用金属膜5dを有する凹状とした容器本体1に、少なくとも発振回路及び温度補償機構を有するICチップ3と水晶片2とを収容し、前記封止用金属膜5dと電気的に接続する金属カバー4を前記開口端面に接合して密閉封入した表面実装用の水晶発振器において、前記容器本体1の外底面には吸熱用金属膜11aが形成され、前記吸熱用金属膜11aは前記容器本体1の外側面に設けた伝熱用金属膜11bによって前記封止用金属膜5dと接続し、前記吸熱用金属膜11a及び前記伝熱用金属膜11bは表面に露出した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用の水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)を技術分野とし、特にICチップと水晶片との動作温度を接近させた表面実装発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装発振器は小型・軽量であることから、例えば携帯電話で代表される携帯型の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。このようなものの一つに、水晶片とICチップとを同一空間内に収容して密閉封入した表面実装発振器がある。
【0003】
(従来技術の一例)
第3図は一従来例を説明する表面実装発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は底
面図である。
【0004】
表面実装発振器は容器本体1に水晶片2とICチップ3とを収容し、金属カバー4を接合して密閉封入する。容器本体1は底壁1aと上下枠壁1(bc)とを備え、内壁段部を有する凹状とした積層セラミックからなる。容器本体1の内壁段部には水晶保持端子5aを、内底面には回路端子5bを、外底面には実装端子5cを、開口端面には封止用金属膜5dを有する。そして、例えば開口端面(枠壁上面)には溶接用の金属リング6が銀ロウによって接合する。
【0005】
これらは、先ず、図示しないシート状底壁及び上下枠壁に例えば印刷によってWやMoの下地電極を形成する。そして、これらを積層したシート状積層体を焼成する。次に、例えばシート状積層体の開口端面(枠壁上面)に金属リング6を銀ロウによって接合する。次に、シート状積層体の表面に露出した下地電極及び金属リング6上にNi及びAu膜を順次に電解メッキする。最後に、シート状積層体を個々の容器本体1に分割する。
【0006】
水晶片2は「第4図(a)」、厚みすべり振動姿態とした例えばATカットとし、両主面に励振電極7aを有して例えば一端部両側に引出電極7bを延出する。そして、引出電極7bの延出した水晶片2の一端部両側が内壁段部の水晶保持端子5aに導電性接着剤8によって固着され、電気的・機械的に接続する。
【0007】
ICチップ3は「第4図(b)」、少なくとも図示しない発振回路及び温度補償機構が集積化され、回路機能面(回路形成面)としての一主面にIC端子9を有する。そして、ICチップ3の一主面はバンプ10を用いた超音波熱圧着によって内底面の回路端子5bに固着し、電気的・機械的に接続する(所謂フリップチップボンディング)。金属カバー4は母材をコバールとして電界メッキによるNi膜を表面に有する。
【0008】
このようなものでは、第5図(曲線イ)に示したように、水晶振動子(ATカット)の周波数温度特性に依存した3次曲線となる周波数温度特性を有する。そして、ICチップ3に設けた温度補償機構によって、例えば発振回路内に挿入された電圧可変容量素子に温度補償電圧を印加する。これにより、水晶振動子から見た回路側の直列等価容量(負荷容量)を変化させて逆特性となる周波数電圧特性(第5図の曲線ロ)とし、周波数温度特性を補償(相殺)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−92203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装発振器では、電子機器のセット基板に搭載された後の動作中に温度補償動作が損なわれる問題があった。すなわち、表面実装発振器は他の回路ブロックを形成する電子部品とともにセット基板に搭載される。この場合、他の回路ブロック中におけるトランジスタ等の能動素子はON・OFF動作によって発熱及び発熱中断を繰り返す。そして、発熱及びその中断による熱は、例えばセット基板の配線パターンを経て表面実装発振器の底面側から、そして、電子機器内の雰囲気を経て表面実装発振器に伝熱される。
【0011】
これらにより、表面実装発振器の内部温度が揺らぎ、特に上面側(金属カバー4側)と下面側(容器本体1の底壁1a側)とでは温度差を生じる。したがって、例えば水晶振動子(水晶片2)の動作温度を、ICチップ3(温度補償機構)内の温度センサが確実に検出できず、温度補償動作が損なわれる問題があった。
【0012】
具体的には、セット基板の例えば配線パターンを経ての表面実装発振器に対する熱は、特に実装端子5cからIC端子を経てICチップ3に伝熱される。このため、ICチップ3内の温度センサは本来の内部温度以上の温度を検出する、即ち水晶振動子(水晶片2)の動作温度以上の温度を検出する。したがって、規定通りの温度補償電圧が供給されず、正常な温度補償動作が損なわれる。
【0013】
なお、表面実装発振器は電源投入時にはICチップ3の温度が急上昇して温度補償動作を損ねるが、時間の経過とともに表面実装発振器の内部温度は安定する。したがって、温度センサは時間の経過とともに水晶片2の動作温度を確実に検出し、上記問題がなければ、正常な温度補償動作を行う。
【0014】
(発明の目的)
本発明は外部温度の影響を排除して温度補償動作を確実にした表面実装発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、開口端面に封止用金属膜を有する凹状とした容器本体に、少なくとも発振回路及び温度補償機構を有するICチップと水晶片とを収容し、前記封止用金属膜と電気的に接続する金属カバーを前記開口端面に接合して密閉封入した表面実装用の水晶発振器において、前記容器本体の外底面には吸熱用金属膜が形成され、前記吸熱用金属膜は前記容器本体の外側面に設けた伝熱用金属膜によって前記封止用金属膜と接続し、前記吸熱用金属膜及び前記伝熱用金属膜は表面に露出した構成とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成であれば、容器本体の開口端面は金属カバーによって、外底面は吸熱用金属膜によって覆われ、両者は伝熱用金属膜によって熱的に結合する。したがって、外部温度に変化があっても、熱的に結合した金属カバーと吸熱用金属膜によって、表面実装発振器は両主面間でほぼ同一の温度分布とする。これにより、表面実装発振器の内部温度を安定にして、ICチップの温度補償機構内の温度センサは水晶振動子(水晶片)の動作温度を確実に検出する。
【0017】
そして、放熱用及び伝熱用金属膜は金属カバーとともにいずれも表面に露出するので、外部温度の変化に敏感に反応し、例えば幅広とした伝熱用金属膜によって熱的に結合する。したがって、表面実装発振器の両主面間(金属カバーと外底面との間)での熱伝導を良好にして温度差を小さくできる。これらから、表面実装発振器の温度補償動作を確実にする。
【0018】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記伝熱用金属膜は前記容器本体の4側面のいずれにも設ける。これにより、吸熱用金属膜と金属カバーとは万遍なく熱的に結合して請求項1の効果をさらに高める。
【0019】
同請求項3では、請求項1において、前記容器本体は内壁段部を有し、前記ICチップは前記容器本体の内底面にフリップチップボンディングによって固着し、前記水晶片は引出電極の延出した外周部が前記内壁段部に固着し、前記吸熱用金属膜は前記容器本体の外底面のアース端子とした実装端子に接続する。
【0020】
これにより、アース端子(実装端子)を経ての熱がICチップとともに金属カバーに伝熱される。したがって、容器本体の下面及び上面が同様の温度分布になるので、水晶振動子の動作温度とICチップ(温度補償機構)の温度センサによる検出温度が接近して良好な温度補償動作となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を説明する表面実装発振器の図で、同図(a)は同図(b)のA−A線での周回側面を含む模式的な正面図、同図(b)は底面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を説明する表面実装発振器の底面図である。
【図3】一従来例を説明する表面実装発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は底面図である。
【図4】一従来例を説明する図で、同図(a)は水晶片の平面図、同図(b)はICチップの一主面の図である。
【図5】一従来例を説明する周波数温度特性及び周波数電圧特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による表面実装発振器の第1実施形態を第1図(正面図及び底面図)によって説明する。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0023】
表面実装発振器は前述のように積層セラミックからなる凹状とした容器本体1の内底面にICチップ3をフリップチップボンディングよって、内壁段部に引出電極7bの延出した一端部両側を導電性接着剤8によって固着する(前第3図参照)。ICチップ3はここでも少なくとも発振回路と温度補償機構を有する。
【0024】
この実施形態では、容器本体1の外底面には4角部の実装端子5cを除いて全面的に吸熱用金属膜11aが形成される。吸熱用金属膜11aは容器本体1の外側面に設けた伝熱用金属膜11bを経て開口端面の封止用金属膜5dに接続する。伝熱用金属膜11bは容器本体1の高さ方向を横断する各面に設けられた溝内表面に形成され、例えば外側面中の長辺には2本を、短辺には1本とする。
【0025】
これらは、前述のように、シート状底壁及び上下枠壁の状態でWやMoの印刷によって下地電極を形成する。但し、外側面の伝熱用金属膜11bはシート状底壁及び上下枠壁に設けた貫通孔にWやMoを流し込んで内周に付着させる。そして、これらの積層・焼成後に金属リング6を開口端面に接合し、表面に露出した下地電極及び金属リング6上にNi及びAu膜を電界メッキする(所謂スルーホール)。その後、個々の容器本体1に分割され、ICチップ3及び水晶片2が収容されて金属カバー4がシーム溶接によって金属リング6に接合する。
【0026】
このような構成であれば、発明の効果の欄でも記載するように、容器本体1の開口端面は封止用金属膜5d上の金属リング6に接合した金属カバー4によって、外底面は吸熱用金属膜11aによって覆われる。そして、金属カバー4と吸熱用金属膜11aとは伝熱用金属膜11b等によって熱的に結合する。
【0027】
したがって、セット基板に搭載された他の回路ブロックの発熱等による外部温度に変化があっても、熱的に結合した金属カバー4と吸熱用金属膜11aによって、表面実装発振器は両主面間でほぼ同一の温度分布とする。これにより、表面実装発振器の内部温度を安定にして、ICチップ3の温度補償機構内の温度センサは水晶振動子(水晶片2)の動作温度を確実に検出する。
【0028】
そして、放熱用及び伝熱用金属膜11(ab)は金属カバー4とともにいずれも表面に露出するので、外部温度の変化に敏感に反応し、例えば幅広とした伝熱用金属膜11bによって熱的に結合する。そして、伝熱用金属膜11bは容器本体1の4側面のいずれにも設ける。したがって、表面実装発振器の両主面間(金属カバー4と外底面との間)での熱伝導を良好にして温度差を小さくできる。これらから、表面実装発振器の温度補償動作を確実にする。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第2図(表面実装発振器の底面図)に示したように、吸熱用金属膜11aは実装端子5c中のアース端子5c(GND)に接続する。したがって、セット基板の配線パターンを経ての熱がアース端子5c(GND)を経て、吸熱用金属膜11aに直接的に伝熱される。そして、伝熱金属膜11b等を経て金属カバー4にも直接的に伝熱される。
【0030】
これにより、アース端子5c(GND)を経てICチップ3に加えられる熱が金属カバー4にも伝熱されて、容器本体1内の上下面での温度分布をさらに安定にする。したがって、ICチップ3の温度センサによる検出温度と水晶振動子の動作温度とは接近し、温度補償動作を確実にする。なお、ここでの長辺での伝熱用金属膜11bは1本とするが、必要に応じて複数本にできる。
【符号の説明】
【0031】
1 容器本体、2 水晶片、3 ICチップ、4 金属カバー、5a 水晶保持端子、5b 回路端子、5c 実装端子、5d 封止用金属膜、6 金属リング、7 励振及び引出電極、8 導電性接着剤、9 IC端子、10 バンプ、11a 吸熱用金属膜、11b 伝熱用金属膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端面に封止用金属膜を有する凹状とした容器本体に、少なくとも発振回路及び温度補償機構を有するICチップと水晶片とを収容し、前記封止用金属膜と電気的に接続する金属カバーを前記開口端面に接合して密閉封入した表面実装用の水晶発振器において、前記容器本体の外底面には吸熱用金属膜が形成され、前記吸熱用金属膜は前記容器本体の外側面に設けた伝熱用金属膜によって前記封止用金属膜と接続し、前記吸熱用金属膜及び前記伝熱用金属膜は表面に露出したことを特徴とする表面実装用の水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記伝熱用金属膜は前記容器本体の4側面のいずれにも設けた表面実装用の水晶発振器。
【請求項3】
請求項1において、前記容器本体は内壁段部を有し、前記ICチップは前記容器本体の内底面にフリップチップボンディングによって固着し、前記水晶片は引出電極の延出した外周部が前記内壁段部に固着し、前記吸熱用金属膜は前記容器本体の外底面のアース端子とした実装端子に接続する表面実装用の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−183331(P2010−183331A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24709(P2009−24709)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】