説明

表面評価装置

【課題】ワーク表面等の微小凹凸の密集度合を定量的に評価することができる表面評価装置を提供する。
【解決手段】シリンダボア2表面の凹凸データに基づいてシリンダボア2表面を評価する表面評価装置20において、前記シリンダボア2表面の凹凸データをフーリエ変換して周波数スペクトルを求める手段と、前記周波数スペクトルから所定のしきい値に基づいて周波数成分を抽出する手段と、前記抽出された周波数成分を逆フーリエ変換して凹凸データに復元する手段と、前記復元された凹凸データから所定のしきい値に基づいて凹凸座標データを抽出する手段と、前記凹凸座標データより座標の数と座標値の分散を求める手段と、前記座標値の分散よりシリンダボア2表面品質を評価する手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク表面の凹凸状態を定量的に評価する表面評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のシリンダボアにおけるホーニング加工後の表面状態はエンジンの焼付きやピストンとのフリクションと密接に関係しているため、エンジンにとって重要な品質評価項目となっている。
【0003】
シリンダボアの表面状態を評価する手段としてはSUMP等による転写画像を用いた目視評価やRz(十点平均粗さ)、Ra(中心線平均粗さ)等の2次元粗さ計測結果が用いられているが、前者は評価結果の再現性が乏しく、後者は得られる情報が線情報であり、前述のエンジン性能を評価する指標としては精度が不十分であるという課題がある。
【0004】
また、近年、面レベルで加工面の粗さを計測することが可能な3次元粗さ(形状)計測機等の普及もみられるが、コストが高い、計測所要時間が長い、センサヘッドをボア内に挿入できない等の課題を有しており、ボア表面の品質評価への本格的な適用については見通しがついていない状況にある。つまり、ボア表面の品質を多次元で捉え、迅速に評価できる技術が必要とされている。
【0005】
また、ホーニング加工後におけるシリンダボア表面の状態の検査においては、近年では検査効率の向上のために、画像診断が利用されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、シリンダブロックボア内周面のクロスハッチ(螺旋条痕)のダイヤ目、及び、周方向のボーリング目の粗残りを、ボア表面に照射したレーザスリット光の反射映像を2値化処理することにより検査する旨が記載されている。
【0007】
特許文献2には、ボア表面画像をフーリエ変換し、そのパワースペクトル(周波数スペクトルともいう)内の低パワー値座標の数をカウントすることで、ボア表面の平滑状態を定量評価する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−346320号公報
【特許文献2】特許第4103534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置においては、粗さ判定のための画像処理プロセスに2値化処理を使用している。そのため、粗さ判定結果の精度が低い。
【0010】
また、特許文献2に記載の評価装置においては、パワースペクトルから抽出された座標の数のみを判定しているが、座標の数のみの判定では、バリ等が加工面に均一に存在しているのか、部分的に集中して存在しているのかが不明である。すなわち、ワーク表面の微小凹凸の密集度合を評価することができない。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ワーク表面等の微小凹凸の密集度合を定量的に評価することができる表面評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1においては、
ワーク表面の凹凸データに基づいてワーク表面を評価する表面評価装置において、
前記ワーク表面の凹凸データをフーリエ変換して周波数スペクトルを求める手段と、
前記周波数スペクトルから所定のしきい値に基づいて周波数成分を抽出する手段と、
前記抽出された周波数成分を逆フーリエ変換して凹凸データに復元する手段と、
前記復元された凹凸データから所定のしきい値に基づいて凹凸座標データを抽出する手段と、
前記凹凸座標データより座標の数と座標値の分散を求める手段と、
前記座標値の分散よりワーク表面品質を評価する手段と、
を有する表面評価装置である。
【0014】
請求項2においては、
前記ワーク表面は、内燃機関のシリンダボア表面である表面評価装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワーク表面の凹凸状態を評価するに際し、微小凹凸の密集度合の重み付けが付加され、評価結果の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面評価装置の概略構成を示す模式図。
【図2】実施形態に係る表面評価装置に適用する表面評価方法を説明する説明図であり、(a)はボア表面凹凸データを示す図、(b)は周波数スペクトルを示す図、(c)はボア表面凹凸データ(高周波成分のみ)を示す図。
【図3】図2(a)におけるA−A矢視断面図。
【図4】ボア表面の良否判定のフローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0018】
以下に、本発明の表面評価装置の一実施形態として、ワーク表面の表面加工品質の評価を行う表面評価装置について、図を用いて説明する。本実施形態においては、評価対象のワーク表面として、内燃機関のシリンダブロック1におけるシリンダボア2表面を例として挙げて説明する。
【0019】
表面評価装置20は、シリンダボア2内周表面の凹凸状態に係る凹凸データに基づいてシリンダボア2内周表面を評価する装置であり、図1に示すように、シリンダボア2の内周表面を撮像する撮像手段3と、当該撮像手段3から出力される撮像信号に基づき、シリンダボア2内周表面の凹凸状態の評価を行うコンピュータ5とを備える。具体的には、表面評価装置20は、シリンダボア2内周表面における凹凸成分のうちバリ相当の成分を抽出し、当該バリ相当成分について良否判定を行う装置である。
【0020】
撮像手段3は、シリンダボア2内に挿通し、シリンダボア2の内周表面を撮像するCCDカメラと、当該CCDカメラをシリンダボア2の高さ方向に往復駆動させるとともに、CCDカメラをシリンダボア2の中心軸回りに回転駆動させる駆動手段とから構成される。撮像手段3が有するCCDカメラ及び駆動手段は、コンピュータ5からの指令に応じて動作が制御される。撮像手段3は、駆動手段によりCCDカメラを所定のパターンで回転駆動及びシリンダボア2の高さ方向に往復駆動させることによりシリンダボア2内周面の所定の検査範囲の画像信号を取得することができる。CCDカメラで得られた画像信号は、コンピュータ5により、前記所定のパターンに従って合成されることにより、シリンダボア2内周面の検査範囲全体を表す1枚の解析画像として作成される。撮像手段3は、データ転送部4を介してコンピュータ5に接続されている。
【0021】
コンピュータ5は、ワーク表面の評価に係る処理、データ解析に係る各種処理を実行するCPU、各種ワーク表面評価・解析処理用のプログラムが記憶され、且つ上記撮像信号等の解析処理に必要な情報を記憶する記憶手段、撮像手段3により撮像したシリンダボア2内周面の画像や解析結果、評価結果等を出力するモニター等の出力手段6を備えている。また、コンピュータ5には、撮像手段3から出力された撮像信号を前記データ転送部4を介して入力する入力ポート、及び撮像手段3のCCDカメラや駆動装置を制御するために指令信号を出力する出力ポートが設けられている。
【0022】
データ解析部7は、解析画像である凹凸データに対して所定の解析処理を実行するための手段であり、コンピュータ5にプログラムを実行させることによりシリンダボア2の内周表面の品質評価を行うための各解析処理を行うことができる。具体的には、データ解析部7は、シリンダボア2内周表面の凹凸データをフーリエ変換して周波数スペクトル(パワースペクトルともいう)を求める手段である周波数スペクトル演算部、当該周波数スペクトル演算部にて得られる周波数スペクトルから所定のしきい値に基づいて周波数成分を抽出する手段である周波数成分抽出演算部、当該周波数成分抽出演算部にて抽出された周波数成分データを逆フーリエ変換して凹凸データに復元する手段である復元演算部、当該復元演算部にて復元された凹凸データから所定のしきい値に基づいて凹凸データの座標である凹凸座標データを抽出する手段である座標抽出演算部、当該座標抽出演算部にて抽出された凹凸座標データより座標の数と座標値の分散を求める手段である座標演算部、当該座標演算部の演算結果である座標数と座標値の分散に基づきシリンダボア2内周表面品質の評価の判定を行う手段である評価演算部、当該評価演算部の結果を表示する表示部、により構成されるとともに、各演算部の演算機能をプログラムにより実行可能とするものである。
【0023】
上記周波数スペクトル演算部では、解析画像である凹凸データ(図2(a)参照)に対して離散的な2次元フーリエ変換を実行し、この結果に基づき2次元もしくは3次元の周波数スペクトル画像を生成する(図2(b)に示す画像は3次元周波数スペクトル画像)。すなわち、周波数スペクトル演算部では、シリンダボア2内周面の画像である凹凸データを周波数空間でのスペクトル画像に変換する。図2(b)に示す3次元周波数スペクトル画像は、横軸及び縦軸をそれぞれx軸、y軸方向の空間周波数とした画像であり、高さ軸は各周波数成分(x、yに対応する空間周波数)におけるパワー値を示す。この周波数スペクトル画像の計算法自体は公知であり、例えば従来の手法(例えば、特許文献2に示した手法)を利用することができる。
【0024】
次に、上記表面評価装置20を用いたシリンダボア2内周の表面評価方法について具体的に説明する。ここでは、具体例として、ホーニング加工により生じたシリンダボア2内周表面のバリの状態を定量的に評価する方法について図2を用いて説明する。
【0025】
図3は、図2(a)におけるシリンダボア2内周表面近傍のA−A矢視一部断面図である。図3はホーニング加工により生じたシリンダボア2内周表面に形成されたホーニング加工溝(螺旋条痕)と複数のバリとを示したものである。図3に示すシリンダボア2の内周表面には、ほぼ一定間隔で規則的に表れる複数のホーニング加工溝に加え、図3においてピストン側に突出する複数のバリが存在している(図3の点線丸印部分)。図3に示すバリは、シリンダボア2内周表面におけるピストンとの摺動面に生じている。
【0026】
シリンダボア2表面の凹凸状態の評価では、先ず撮像手段3をシリンダブロック1が有するシリンダボア2に挿通し、シリンダボア2の内周表面の撮像が行われる。撮像は、CCDカメラをシリンダボア2の中心軸回りに回転させつつ、シリンダボア2の高さ方向に移動させて、シリンダボア2の内周表面の全体を周方向及び高さ方向に順次走査しながら行われる。そして、撮像手段3から出力される撮像信号は、データ転送部4、入力ポートを通じてコンピュータ5に入力される。
【0027】
コンピュータ5は、当該コンピュータ5が有するデータ解析部7に撮像信号が入力されると、その信号を処理して、シリンダボア2内周表面の凹凸データを生成して記憶手段に記憶する(データ解析部7の符号8)。
【0028】
図2(a)は、シリンダボア2内周表面の凹凸データの一例を示したものであり、当該凹凸データにおいては、x軸はシリンダボア2における上下高さ方向を示し、y軸はシリンダボア2における周方向を示し、図2(a)において上向き矢印は凹凸レベル(凹凸の高低レベル)を示している。また、図2(a)に示す凹凸データでは、異なる2つの方向(基本的に斜め方向)の、複数の周期的な螺旋条痕があることが確認できる。つまり、図2(a)に示す凹凸データによると、シリンダボア2内周表面にはいわゆるクロスハッチパターンの螺旋条痕が形成されていることがわかる。
なお、凹凸データとしては、シリンダボア2内周表面の凹凸状態を示すデータ(RGBデータ、3D形状計測データ等)であれば適用可能であり、本実施形態の如く、CCDカメラ等の撮像手段によって取得される凹凸データのみに限定するものではなく、例えば、3次元粗さ測定器やその他の表面形状測定器等を用いて取得されるワーク表面に係る凹凸データでもかまわない。
【0029】
そして、記憶手段に記憶されたシリンダボア2内周表面の凹凸データに対して2次元フーリエ変換処理を実行する(データ解析部7の符号9)ことにより、シリンダボア2内周表面の凹凸データによる周波数スペクトルが取得され、記憶手段に記憶される。
【0030】
図2(b)は、上記シリンダボア2内周表面の凹凸データを2次元フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示したものである。図2(b)のx軸及びy軸は、凹凸データにおけるx軸方向及びy軸方向の2次元フーリエ変換後の周波数成分をそれぞれ示している。そして、そうした周波数スペクトルのx−y座標上の各座標点には、シリンダボア2内周表面の周方向及び高さ方向における凹凸レベルの各周波数成分のパワー値(畳み込み積分値)がプロットされている。こうした周波数スペクトルでは、その第1象限及び第3象限、第2象限及び第4象限が、上記x−y座標の原点(周波数スペクトル原点)に対して点対称となっている。
【0031】
以上のようにしてシリンダボア2内周表面の凹凸データの周波数スペクトルを求めた後、コンピュータ5は、求めた周波数スペクトルを用いて周波数成分のフィルタリングを行う。すなわち、このフィルタリングでは、周波数スペクトルのパワー値にしきい値を設け(データ解析部7の符号10)、バリに相当する高周波成分のみを抽出する(データ解析部7の符号11)。
【0032】
次に、コンピュータ5は、抽出したバリに相当する高周波成分に対して逆フーリエ変換を実行する(データ解析部7の符号12)。この逆フーリエ変換によりバリに相当する高周波成分は凹凸データとして復元される(図2(c)参照)。したがって、以上の抽出処理を通じて、周波数スペクトル上で、バリに相当する成分に対応する座標点とバリに相当しない成分に対応する座標点とが分離されることとなる。そして、分離されたバリに相当する成分の周波数スペクトルをフーリエ逆変換すれば、バリに相当する成分についてのシリンダボア2内周表面における凹凸情報である凹凸データが得られる。
【0033】
次に、復元された凹凸データにおける凹凸レベルの所定のしきい値を設け(データ解析部7の符号13)、復元された凹凸データより凹凸レベルが所定のしきい値以上となる特定の座標(Xi、Yi)を抽出する(データ解析部7の符号14)。
【0034】
次に、抽出された特定の座標より、その座標数をカウントする(データ解析部7の符号15)とともにその座標値の分散を算出する(データ解析部7の符号16)。具体的には、特定の座標(Xi、Yi)における座標の数nと座標値の分散Sx、Syについて次式を用いて求め、バリの分散状態を評価する。
【0035】
【数1】

【0036】
バリの分散状態の評価法としては、例えば、抽出された座標の数が多く、分散が小さいほど、バリが集積していることを示している。シリンダボア2内周表面のホーニング加工品質としては、一般的に、大きな突起状のバリ等が少なく、かつバリが局所的に密集していないことが要求される。そこで、シリンダボア2内周面におけるバリの分散を上記式を用いた統計的手法によりバリの密集度合として算出することにより、当該密集度合をシリンダボア2内周面の良否を判定するための新たな評価基準として利用することが可能である。具体的には、内燃機関の製造ラインにおいてシリンダボア2の良否判定を行うに際し、シリンダボア2内周面において座標の数と座標値の分散についてそれぞれ予め品質の良否判定に用いるためのしきい値を設け(データ解析部7の符号17)、当該良否判定に用いるためのしきい値によりシリンダボア2の良否判定を行う(データ解析部7の符号18)。そして、当該良否判定の結果は、モニター等の出力手段6を介して出力される(データ解析部7の符号19)。
【0037】
このようにして、コンピュータ5のデータ解析部7は、高周波成分のみを抽出したシリンダボア2内周表面の凹凸データ(図2(c))において、凹凸レベルが一定値以上となる座標(Xi、Yi)の個数と座標値の分散からシリンダボア2内周表面のホーニング加工品質を評価する。
【0038】
すなわち、コンピュータ5は、図2(b)に示すように、凹凸データをフーリエ変換して作成された周波数スペクトルにて、バリ相当成分である高周波数成分を抽出し、当該抽出されたバリ相当成分である高周波数成分に対して2次元フーリエ逆変換を行うことで、シリンダボア2内周表面のバリ相当成分の凹凸情報である凹凸データが生成される。また、このバリ相当成分の凹凸データより所定のしきい値以上の特定の座標を抽出し、当該特定の座標に対して座標の数と座標の分散を算出することで、シリンダボア2内周表面におけるバリの分散状態(バリの密集度合)を評価することができる。
【0039】
次に、図4は、以上説明した本実施形態の表面評価装置20により実行される表面評価処理工程のフローチャートを示している。この処理は、コンピュータ5のデータ解析部7によって実行される。各処理工程を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
表面評価処理工程においては、予め品質判定しきい値を決定するためのしきい値決定工程と、内燃機関の製造ラインにおいてシリンダボア2の良否判定を行うための本測定を行う本測定工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
【0041】
しきい値決定工程は、表面評価装置20を用いて予め所定のワークに対して事前の表面評価を行ってシリンダボア2内周表面の良否判定を行うためのしきい値を決定する工程である。
【0042】
しきい値決定工程では、先ずしきい値決定の基準となるマスタワークを選定し(S100)、撮像手段3により検査対象のシリンダボア2内周表面を撮影してシリンダボア2内周表面の凹凸データを取得する(S110)。次に、データ解析部7は、当該シリンダボア2表面の凹凸データに対して2次元フーリエ変換を実行し、この変換結果から周波数スペクトルを求める(S120)。次にバリ相当成分抽出のための所定のしきい値に基づきバリに相当する周波数成分を抽出する(S130)。次に抽出された周波数成分をフーリエ逆変換し、バリに相当する凹凸成分のみの凹凸データに復元する(S140)。次にしきい値に基づき凹凸データの座標を抽出する(S150)。続いて抽出された座標において、その座標の数とその座標値の分散を求める(S160)。そして、求めた座標の数と座標値の分散から所定の品質評価判定しきい値を決定する(S170)。決定された品質評価判定しきい値は、本測定工程で用いられ、ホーニング加工後のシリンダボア2内周表面のバリ検出や、その良否判定の際の評価基準値となる。
【0043】
本測定工程は、内燃機関の製造ラインにおけるワークの検査、すなわちホーニング加工後のシリンダボア2内周表面の良否判定を行うために適用される工程である。
【0044】
本測定工程では、先ず撮像手段3により検査対象のシリンダボア2内周表面を撮影してシリンダボア2内周表面の凹凸データを取得する(S210)。次に、データ解析部7は、当該シリンダボア2表面の凹凸データに対して2次元フーリエ変換を実行し、この変換結果から周波数スペクトルを求める(S220)。次にバリ相当成分抽出のための所定のしきい値に基づきバリに相当する周波数成分を抽出する(S230)。次に抽出された周波数成分をフーリエ逆変換し、バリに相当する凹凸成分のみの凹凸データに復元する(S240)。次にしきい値に基づき凹凸データの座標を抽出する(S250)。続いて抽出された座標において、その座標の数とその座標値の分散を求め(S260)、抽出された座標の数と座標値の分散がしきい値以下か否かを判定する(S270)。そして、データ解析部7は、前述したように、しきい値決定工程にて決定された品質評価判定しきい値を用いて、座標の数と座標値の分散が品質評価判定しきい値以下であれば(Yes)、シリンダボア2内周表面のバリの凹凸状態が良好であると判定し(OK判定)、座標の数と座標値の分散が品質評価判定しきい値以下でなければ(No)、シリンダボア2内周表面のバリの凹凸状態が不良であると判定する(NG判定)。
【0045】
以上により、本実施形態によれば、ホーニング加工後の内燃機関のシリンダボア2内周表面の加工品質を周波数解析により定量的に評価することができる。例えば、ボア表面の撮像データ(又は3D凹凸データ)を周波数変換することで得られる凹凸の周波数特性に基づいてホーニング加工により生じたシリンダボア2のバリの状態を定量的に、かつ簡易的に評価することができる。
【0046】
本発明によれば、ワーク表面の凹凸状態を評価するに際し、周波数スペクトルから抽出された座標の数のみを良否判定に適用するのでなく、さらにワーク表面における微小凹凸の密集度合の重み付けも良否判定に付加されるため、評価結果の信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0047】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
3 撮像手段
5 コンピュータ
7 データ解析部
20 表面評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク表面の凹凸データに基づいてワーク表面を評価する表面評価装置において、
前記ワーク表面の凹凸データをフーリエ変換して周波数スペクトルを求める手段と、
前記周波数スペクトルから所定のしきい値に基づいて周波数成分を抽出する手段と、
前記抽出された周波数成分を逆フーリエ変換して凹凸データに復元する手段と、
前記復元された凹凸データから所定のしきい値に基づいて凹凸座標データを抽出する手段と、
前記凹凸座標データより座標の数と座標値の分散を求める手段と、
前記座標値の分散よりワーク表面品質を評価する手段と、
を有することを特徴とする表面評価装置。
【請求項2】
前記ワーク表面は、内燃機関のシリンダボア表面であることを特徴とする請求項1に記載の表面評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−93200(P2012−93200A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240169(P2010−240169)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】