補助動力装置付き二輪車
【課題】加速度センサを用いることなく適切な駆動力によるクルーズ走行を可能とする補助動力装置付き二輪車を提供する。
【解決手段】制御部46は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速MTが保持または漸減されるように駆動モータ24を駆動するクルーズ走行を実行すると共に、車速センサ37により検知される現在車速Vと目標車速MTとの対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じてクルーズ走行中に目標車速MTの更新を行う。目標車速の更新は、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速MT1に対して現在車速Vが所定値以上減少すると、現在車速Vを新たな目標車速MT2,3とすることで実行される。一方、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速MT3に対して現在車速Vが所定値以上増加すると、現在車速Vより所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速MT4,5とする。
【解決手段】制御部46は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速MTが保持または漸減されるように駆動モータ24を駆動するクルーズ走行を実行すると共に、車速センサ37により検知される現在車速Vと目標車速MTとの対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じてクルーズ走行中に目標車速MTの更新を行う。目標車速の更新は、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速MT1に対して現在車速Vが所定値以上減少すると、現在車速Vを新たな目標車速MT2,3とすることで実行される。一方、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速MT3に対して現在車速Vが所定値以上増加すると、現在車速Vより所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速MT4,5とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助動力装置付き二輪車に係り、特に、人力によるペダル踏力の変化に対応して補助動力源の出力を制御する補助動力装置付き二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の駆動力制御において、スロットル開度や車速のほか、車両が走行している路面の勾配を考慮して、駆動輪に伝達する駆動力を決定する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、下り坂を走行中にスロットル開度がゼロとされた場合でも、平坦地を走行中にスロットル開度がゼロとされた場合と同様の減速度が得られるように、路面の勾配に応じて目標減速度を算出する制御が開示されている。この特許文献1に記載された車両では、加速度センサを用いて路面の勾配を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人力によるペダル踏力に応じて電動モータによる補助動力を印加するようにした補助動力装置付き二輪車、いわゆるアシスト自転車が知られている。通常、このような車両では、ペダル踏力が印加されている間のみ補助動力を供給するように構成されている。しかしながら、乗員がペダル操作を停止しても所定速度を保つように駆動力の印加を継続する「クルーズ走行」の機能が要求された場合には、クルーズ走行中に車両が上りまたは下り勾配にさしかかっても、平坦路での走行フィーリングとの差異が大きくならないように駆動力を制御することが望ましい。
【0006】
このとき、特許文献1に記載された技術のように、加速度センサを用いて路面の勾配を検知する方式を適用しようとすると、余剰スペースの少ない二輪車において、取り付けスペースの確保や構造の複雑化、部品点数の増加等の課題が生じることとなる。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、加速度センサを用いることなく適切な駆動力によるクルーズ走行を可能とする補助動力装置付き二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ペダル踏力が入力されるクランク軸(21)と、前記クランク軸(21)に入力されたペダル踏力を後輪(WR)に伝達する動力伝達機構(K)と、前記動力伝達機構(K)に含まれ、前記ペダル(22a)の正転方向の駆動力のみを伝達するワンウェイクラッチ(105)と、前記ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構(70)と、前記後輪(WR)に補助動力を印加する駆動モータ(24)と、前記二輪車(1)の車速を検知する車速センサ(37)と、前記ペダル踏力の大きさに基づいて前記駆動モータ(24)の出力を算出する制御部(46)とを有する補助動力装置付き二輪車において、前記制御部(46)は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速(MT)が保持または漸減されるように前記駆動モータ(24)を駆動するクルーズ走行を実行すると共に、前記車速センサ(37)により検知される現在車速(V)と前記目標車速(MT)との対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じて前記クルーズ走行中に前記目標車速(MT)の更新を行う点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記目標車速(MT)の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT1)に対して現在車速が所定値以上減少すると、現在車速(V)を新たな目標車速(MT2,MT3)に置き換えることで実行される点に第2の特徴がある。
【0010】
また、前記目標車速の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT3)に対して現在車速(V)が所定値以上増加すると、現在車速(V)より所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速(MT4)に置き換えることで実行される点に第3の特徴がある。
【0011】
また、前記制御部(46)は、前記クルーズ走行中に、現在車速(V)が所定のクルーズ閾値(S2)を下回ると、駆動モータ(24)による補助動力の供給を停止する点に第4の特徴がある。
【0012】
また、前記制御部(46)は、前記現在車速(V)が前記クルーズ閾値(S2)より大きい所定のアラーム閾値(SV1)を下回ると、警告手段(159)を作動させる点に第5の特徴がある。
【0013】
また、前記警告手段は、警告灯(159)である点に第6の特徴がある。
【0014】
また、前記警告手段は、音または振動を発する機器である点に第7の特徴がある。
【0015】
さらに、前記動力伝達機構(K)は、前記クランク軸(21)に入力された踏力を前記クランク軸(21)から第1ワンウェイクラッチ(105)を介して後輪(WR)伝達する第1動力伝達機構(K1)と、前記駆動モータ(24)の回転駆動力を第2ワンウェイクラッチ(106)を介して前記後輪(WR)に伝達する第2動力伝達機構(K2)とを含む点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0016】
第1の特徴によれば、制御部は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速が保持または漸減されるように駆動モータを駆動するクルーズ走行を実行すると共に、車速センサにより検知される現在車速と目標車速との対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じてクルーズ走行中に目標車速の更新を行うので、加速度センサ等を用いることなく路面の勾配状態を判定して、路面の勾配状態に応じたクルーズ走行中の駆動力制御を実行することができる。
【0017】
第2の特徴によれば、目標車速の更新は、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速に対して現在車速が所定値以上減少すると、現在車速を新たな目標車速に置き換えることで実行されるので、平坦な路面と同様のクルーズ走行ができない上り勾配の路面から、平坦な路面に戻った際に、現在車速と目標車速とが大きく離れてしまうことを防ぐことが可能となる。これにより、上り坂から平坦な路面に戻った後にモータ駆動力を素早く低減させて、平坦路での加速期間を短くすることが可能となる。
【0018】
第3の特徴によれば、目標車速の更新は、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速に対して現在車速が所定値以上増加すると、現在車速より所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速に置き換えることで実行されるので、下り勾配の路面から平坦な路面に移行した際に、現在車速と目標車速とが大きく離れてしまうことを防ぐことが可能となる。これにより、平坦な路面に戻った後にモータ駆動力を素早く復帰させることが可能となる。
【0019】
第4の特徴によれば、制御部は、クルーズ走行中に、現在車速が所定のクルーズ閾値を下回ると、駆動モータによる補助動力の供給を停止するので、二輪車の車速が所定車速を下回ることに応じて速やかにクルーズ制御を終了し、バッテリ電力を節約することができる。
【0020】
第5の特徴によれば、制御部は、現在車速がクルーズ閾値より大きい所定のアラーム閾値を下回ると警告手段を作動させるので、車速が低下してクルーズ走行の下限車速に近づいたことを乗員に報知し、ペダル操作を促すことが可能となる。これにより、ペダル操作が早く再開される可能性を高め、バッテリの消耗を抑えることができる。
【0021】
第6の特徴によれば、警告手段は警告灯であるので、乗員の視覚に訴えてペダル操作を効果的に要求することができる。
【0022】
第7の特徴によれば、前記警告手段は、音または振動を発する機器であるので、乗員の聴覚または触覚に訴えてペダル操作を効果的に要求することができる。例えば、乗員の耳元に配置されたスピーカや、ハンドルグリップやシート等に取り付けられた振動発生器を警告手段とすることで、警告の効果を高めることができる。
【0023】
第8の特徴によれば、動力伝達機構は、クランク軸に入力された踏力をクランク軸から第1ワンウェイクラッチを介して後輪に伝達する第1動力伝達機構と、駆動モータの回転駆動力を第2ワンウェイクラッチを介して後輪に伝達する第2動力伝達機構とを含むので、人力動力系と電力動力系の2系統を並列配置する補助動力装置付き二輪車において、路面の登坂状態を考慮したクルーズ走行制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る補助動力装置付き二輪車の側面図である。
【図2】二輪車の車体フレームの拡大側面図である。
【図3】パワーユニットの拡大側面図である。
【図4】後輪の車軸の周囲の構成を示す斜視図である。
【図5】動力伝達機構の全体構成を示す上面断面図である。
【図6】動力伝達機構のクランク軸側の構成を示す拡大断面図である。
【図7】動力伝達機構の車軸側の構成を示す拡大断面図である。
【図8】ペダル踏力検知機構の構成を示す拡大断面図である。
【図9】本実施形態に係る二輪車の制御システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本実施形態に係る二輪車の動力伝達機構の全体構成の模式図である。
【図11】ペダル踏力と補助動力との関係を示すグラフである。
【図12】アシストを開始する踏力と車速との関係を示すグラフである。
【図13】負荷トルクとペダル回転数との関係を示すグラフである。
【図14】駆動モータのアシスト制御方法を示すグラフである。
【図15】クルーズ走行制御の詳細を示すタイムチャートである。
【図16】クルーズ走行制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る負荷印加装置を適用した補助動力装置付き二輪車1の側面図である。また、図2は、補助動力装置付き二輪車1(以下、単に二輪車と示すこともある)の車体フレーム2の側面図である。二輪車1は、自転車と同様のペダルを有し、人力によるペダル踏力に応じて、駆動モータ24による補助動力を後輪WRに印加するようにした、いわゆる電動アシスト機能付きの二輪車である。
【0026】
二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ5と、該ヘッドパイプ5から後方下方に延在するメインフレーム3と、該メインフレーム3の後部に接合されて上方に延在するシートチューブ4と、メインフレーム3の後部に配設される左右一対のチェーンステー19と、シートチューブ4の上部に接合されて後方下方に延在すると共にチェーンステー19の後端と接合される左右一対のシートステー18とからなる。
【0027】
ヘッドパイプ5には、左右一対のフロントフォーク9を支持するステムシャフト(不図示)が回動自在に軸支されており、該ステムシャフトの上部には、左右一対のハンドルバー6が取り付けられている。ハンドルバー6の車幅方向の両端部には、ハンドルグリップ7およびブレーキレバー8がそれぞれ取り付けられており、フロントフォーク9の下端部には、車軸10を介して前輪WFが回転自在に軸支されている。前輪WFのドラム式ブレーキ11は、揺動アーム12の作動に伴って制動力を生じる。この揺動アーム12は、車幅方向右側のブレーキレバー8に連結された不図示のワイヤによって駆動される。
【0028】
ヘッドパイプ5の前方には、ライトステー14を介してヘッドライト15が取り付けられている。フロントフォーク9の上部には、フロントフェンダ13が取り付けられている。メインフレーム3は中空構造とされており、その内部には、補助動力源および制御システムに電力を供給する第1バッテリB1および第2バッテリB2が収納されている。
【0029】
メインフレーム3の後部で車体中央には、人力駆動系の機構と電力駆動系の機構とを一体に構成したパワーユニットPが取り付けられている。クランク軸21の車幅方向両端部には、乗員が踏む足乗せ部分を回転自在に軸支するクランクアーム22が固定されている。クランク軸21には、第1駆動側スプロケット20が固定されており、該第1駆動側スプロケット20に第1ドライブチェーン23が巻き掛けられて、人力動力伝達機構が構成されている。また、補助動力源としての駆動モータ24の出力軸には、第2駆動側スプロケット25が固定されており、該第2駆動側スプロケット25に第2ドライブチェーン28が巻き掛けられて電気動力伝達機構が構成されている。
【0030】
チェーンステー19の後端部には、車軸30を介して後輪WRが回転自在に軸支されている。車軸30には、第1ドライブチェーン23を介して後輪WRに人力駆動力を伝達する第1従動側スプロケット101と、第2ドライブチェーン28を介して後輪WRに電気駆動力を伝達する第2従動側スプロケット102とが軸支されている。チェーンステー19の後端部には、第1ドライブチェーン23のテンショナ29が取り付けられている。
【0031】
パワーユニットPとシートステー18との間には、駆動モータ24の出力を制御するモータドライバとしてのPDU(パワードライブユニット)39が配設されている。パワーユニットPの下部には、サイドスタンド40が取り付けられている。
【0032】
円筒状のシートチューブ4には、その上方から、シート17を支持するシートピラー16が挿入固定されている。シートステー18には、左右一対のウインカ装置38が取り付けられており、後輪WRの上方を覆うリヤフェンダ34には、尾灯装置35が取り付けられている。リヤフェンダ34には、左右一対の支持ステー33が設けられている。
【0033】
シートステー18の車軸30寄りの位置には、車体後方側に伸びる取付ステー41が設けられている。この取付ステー41には、後輪WRの回転速度を検知する車速センサ37を保持するホルダ36が固定されている。後輪WRのドラム式ブレーキ95(図5参照)を作動させる揺動アーム32は、車幅方向左側のブレーキレバー8に連動するワイヤ(不図示)に連結されている。
【0034】
駆動モータ24の後方下方には、負荷印加装置としての負荷印加用モータ60が配設されている。本実施形態では、負荷印加用モータ60の出力軸62(図3参照)に固定された負荷印加用スプロケット61が、前記第1ドライブチェーン23の下側かつ内周側に噛合するように構成されている。
【0035】
図2は、車体フレーム2の側面図である。また、図3は、パワーユニットPの拡大側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。ヘッドパイプ5の前面部には、ライトステー14を取り付けるためのボス5aが設けられている。メインフレーム3は、第1バッテリB1および第2バッテリB2(図1参照)の収納を可能とする中空の箱形構造とされている。メインフレーム3の後端部には、シートパイプ4を結合するための延出部3aが設けられている。
【0036】
シートパイプ4の下部とチェーンステー19の前端部との間には、パワーユニットPの輪郭に沿った形状を有するユニットケース42が結合されている。パワーユニットPは、ユニットケース42の前後に形成された取付部44およびメインフレーム3の後端に形成された取付部48を用いて、車体フレーム2に吊り下げられるように固定される。
【0037】
ユニットケース42の上面側には、PDU39の後部を支持するための取付ステー43が設けられている。この取付ステー43の配置および形状により、PDU39は、車体前方側が直接ユニットケース42に接触する一方、車体後方側は宙に浮いた状態で固定される。これにより、PDU39の駆動時の発熱は、走行風およびユニットケース42への熱伝導によって効率よく冷却されることとなる。
【0038】
左右一対のシートステー18およびチェーンステー19の後端部は、それぞれ、車軸30の貫通孔47が形成された板状のリヤエンド27に接合されている。チェーンステー19の後端近傍には、第1ドライブチェーン23のテンショナ29を取り付ける台座19aが形成されており、シートステー18には、ウインカ装置38(図1参照)を取り付けるためのウインカステー18aが設けられている。
【0039】
図3を参照して、PDU39の外枠には、取付ステー43の後方側で下方に延出するサブステー45が設けられている。サブステー45には、車速やペダル踏力等に基づいて駆動モータ24の出力の算出等を行う制御部としてのMCU46が取り付けられている。このようなMCU46の配置構造によれば、ユニットケース42とPDU39との間の隙間にMCU46を効率よく配置し、かつMCU46の周囲の風通しをよくして冷却効果を高めることが可能となる。
【0040】
車体フレーム2へのユニットケースPの懸架作業は、前記取付部44,48(図2参照)にマウントシャフト44a,48aを貫通させることで実行される。また、駆動モータ24の出力軸25aは、パワーユニットPを車体フレーム2に懸架した状態において、クランク軸21とほぼ同じ高さで車体後方側に位置するように構成されている。
【0041】
図4は、後輪WRの車軸30の周囲の構成を示す斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。車軸30は、車幅方向左側にナット頭を有すると共に車体右側に向けて貫通するアクスルシャフトである。車軸30のナット頭とリヤエンド27との間には、車体右側と同様に、チェーン引き金具50および支持ステー33の下端部が挟まれている。テンショナ29は、2つのローラを支持する支持板49を台座19a(図2参照)に取り付けることでチェーンステー19に固定されている。チェーンステー19の上部には、第1,第2ドライブチェーン23,28を覆うチェーンカバー54が設けられている。
【0042】
車速センサ37は、2本のネジ37aによってホルダ36に固定されている。ホルダ36は、2本のネジ41aによって取付ステー41に固定されており、取付ステー41は、シートステー18に溶着されている。車速センサ37は、後輪WRと一体に回転するパルスリング51に形成された貫通孔52の通過を検知することによって、二輪車1の車速を検知するように構成されている。パルスリング51は、後輪WRのスポーク(不図示)を取り付けるハブフランジ53の車幅方向左側に取り付けられている。
【0043】
図5は、動力伝達機構Kの全体構成を示す上面断面図である。また、図6はクランク軸21側の構成を示す拡大断面図であり、図7は車軸30側の構成を示す拡大断面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。動力伝達機構Kは、乗員によるペダル踏力を後輪WRに伝える第1動力伝達機構K1と、駆動モータ24の回転駆動力を後輪WRに伝達する第2動力伝達機構K2とからなる。
【0044】
クランク軸21には、第1駆動側スプロケット20が固定された支持部71が支持されており、乗員がペダルを漕ぐと、第1駆動側スプロケット20に巻き掛けられた第1ドライブチェーン23を介して、その踏力が第1従動側スプロケット101に伝達される。支持部71の車幅方向内側でパワーユニットPのケース内部には、ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構70が設けられている。
【0045】
負荷印加用モータ60の出力軸62に固定された負荷印加用スプロケット61は、第1ドライブチェーン23の内周側に噛合している。負荷印加用モータ60は、第1動力伝達機構Kにおいて、第1ワンウェイクラッチ105の上流側に配設されており、必要に応じて、第1ドライブチェーン23の正転方向の回転を妨げる方向の負荷動力を与えるように構成されている。
【0046】
一方、クランク軸21の車体後方に配設された駆動モータ24の出力軸25aに固定された第2駆動側スプロケット25は、第2ドライブチェーン28に噛合しており、必要に応じて、駆動モータ24による電気駆動力を第2従動側スプロケット102に伝達するように構成されている。
【0047】
第2駆動側スプロケット101,102と後輪ハブ94との間には、ワンウェイクラッチ機構100が設けられている。本実施形態に係るワンウェイクラッチ機構100は、第1駆動側スプロケット101と車軸30との間に配設される第1ワンウェイクラッチ105(図7参照)と、第2従動側スプロケット102と車軸30との間に配設される第2ワンウェイクラッチ106(図7参照)とからなり、いずれも、二輪車1を前進させる方向の回転駆動力のみを後輪ハブ94に伝達するように構成されている。なお、後輪ハブ94の内部には、ドラム式ブレーキ95(図7参照)が内蔵されている。
【0048】
図6を参照して、まずペダル踏力検知機構70の構造を説明する。本実施形態に係るペダル踏力検知機構70は、クランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に生じる相対力を検知するものである。より具体的には、クランク軸21と第1駆動スプロケット20との間に生じる相対力(ねじり力)を、カム機構によってクランク軸21の軸方向の押圧力に変換し、この押圧力によって油圧ピストンを押して生じた油圧を油圧センサで検知することにより、ペダル踏力の検知を行う。
【0049】
ペダル踏力検知機構70において、ねじり力を軸方向の押圧力に変換する機構は、主に、第1駆動側スプロケット20の支持部71と一体回転するハブ217と、クランク軸21に回転不能かつ摺動可能に支持されたカムリング75と、ハブ217とカムリング75との間に配設される複数の鋼球73,74とからなる。クランク軸21の回転駆動力は、カムリング75から鋼球73,74を介してハブ217に伝達される。
【0050】
ハブ217とカムリング75の対向面には、それぞれ、鋼球73,74が嵌る略半球状の凹部が形成されている。この凹部は、その底部近傍では鋼球73,74と同形状の部分球面である一方、縁の近傍では部分球面から接線方向に離れて広がる面を有している。これにより、ハブ217とカムリング75との間に相対力が作用すると、ハブ217とカムリング75との回転方向の位置がずれると共に、凹部の縁の面が鋼球73,74に乗り上げようとする。その結果、ハブ217に対してカムリング75を図示右方向に離間させる力、すなわち、カムリング75を図示右方向に押圧する力が生じる。
【0051】
カムリング75の図示右方向には、本体77に収められて軸方向に摺動可能な円環状の油圧ピストン76が配置されている。ペダル踏力は、この油圧ピストン76が図示右方向に押されることで生じる油圧に基づいて検知される。
【0052】
パワーユニットPは、右ケース80a、中ケース80b、左ケース80cからなるケース80を有する。ケース80の内部には、主に、ペダル踏力検知機構70、クランク軸21、駆動モータ24、回転軸83、出力軸25aが収納されている。クランク軸21は、右ケース80Cに嵌合された軸受79と、左ケース80Cに嵌合されてハブ217と接する軸受72とによって軸支されている。図示右側の軸受21の車幅方向内側には、クランク軸21の回転速度を検知するためのマグネット78が配設されている。
【0053】
駆動モータ24は、中ケース80bに固定されたインナステータ87と、複数の磁石88が取り付けられたアウタロータ86と、該アウタロータ86に固定される回転軸83とからなる。回転軸83は、右ケース80aに嵌合された軸受82と、左ケース80cに嵌合された軸受85とによって軸支されている。回転軸83には第1減速ギヤ84が形成されており、該第1減速ギヤ84には、出力軸25aに固定された第2減速ギヤ92が噛合している。出力軸25aは、中ケース80bに嵌合された軸受89と左ケースに嵌合された軸受91とによって軸支されている。第2駆動側スプロケット25は、ロックナット93を用いて回転軸25aに固定されている。
【0054】
図7を参照して、後輪ハブ94は、車軸30に対して軸受111,112によって回転自在に軸支されている。後輪ハブ94は、ワンウェイクラッチ機構100のインナリング109にスプライン嵌合されている。インナリング109は、車軸30に対して2つのニードルローラベアリング107,108によって回転自在に軸支されている。
【0055】
第1ワンウェイクラッチ105の外周側には、第1従動側スプロケット101が取り付けられたアウタ101aが係合し、一方、第2ワンウェイクラッチ106の外周側には、アウタ部材が一体形成された第2従動側スプロケット102が係合している。本実施形態では、第1ワンウェイクラッチ105にラチェット式が適用され、一方、第2ワンウェイクラッチ106には「ころ」式(アウタリングとインナリングとの間に形成されたテーパ溝にころが嵌ることで両者を結合する方式)が適用されている。アウタ101aと車軸30との間には、ダストシール103および円筒状のカラー104が配設されている。
【0056】
上記したワンウェイクラッチ機構100によれば、乗員がペダルを漕ぐことによる人力駆動力は、第1従動側スプロケット20から第1ワンウェイクラッチ105を介して、インナリング109および後輪ハブ94に伝達され、他方、駆動モータ24による電気駆動力は、第2従動側スプロケット102から第2ワンウェイクラッチ106を介してインナリング109および後輪ハブ94に伝達され、複雑な断接機構を用いることなく、人力による後輪WRの駆動、電力による後輪WRの駆動、人力および電力の合力による後輪WRの駆動が可能になる。また、駆動モータ24の作動状態に関わらず、クランク軸21が停止した状態での惰性走行ができるようになる。
【0057】
図8は、ペダル踏力検知機構70の構成を示す拡大断面図である。この図では、図6に示した断面とは異なる断面を示している。クランク軸21の左方には、スリーブ216が固定されている。カムリング75は、スリーブ216の外周部にスプライン嵌合されることで、クランク軸21に対して回転不能かつ軸方向に摺動可能に支持されている。支持部71と一体回転するハブ217は、スリーブ216と相対回転可能に支持されている。
【0058】
本体77は、共に円環状とされるカムリング75および抑えリング209の間に挟まれるように配設されている。スリーブ216は、本体77の中央に形成された貫通孔に対し、所定の隙間を有して相互回転可能に貫通している。抑えリング209は、抑えプレート207および留めピン208を用いてスリーブ216に固定されている。本体77と抑えリング209との間には、円環状のスラストニードルベアリング210が配設されている。これと同様に、カムリング75と油圧ピストン76との間には、円環状のスラストニードルベアリング214が配設されている。
【0059】
油圧ピストン76の内周側および外周側には、オイルシール211,213がそれぞれ取り付けられている。油圧ピストン76は、クランク軸21と同心の環状シリンダ212に挿入されている。環状シリンダ212の底部には、油圧ピストン76を常に図示左方向に付勢する環状の皿ばね206が配設されている。環状シリンダ212の底部は、本体77に設けられたオイル溜め202および圧力センサ218によって閉塞される圧力検知空間219と連通している。これにより、乗員がペダルを漕ぐことでクランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に相対力が生じると、油圧ピストン67が図示右方に押圧されて圧力検知空間219に満たされたオイルの圧力が高まることとなる。この圧力上昇は、油圧センサ218によって検知される。
【0060】
環状シリンダ212とオイル溜め202との間には、チェックボール205を有する逆止弁203が配設されている。オイル溜め202の上部には、パッキン201を介して蓋200が取り付けられている。本体77は、オイル通路に混入した空気が抜けやすいように、オイル溜め202を車体上側に向けて配設されている。右ケース80aの内部には、ホールIC等によってマグネット78の通過状態に基づくクランク軸21の回転速度を検知するクランク軸回転速度センサ26が配設されている。
【0061】
図9は、本実施形態に係る二輪車の制御システムの構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。制御部としてのMCU46は、各種センサ出力に基づいて駆動モータ24の出力の算出を実行するほか、第1,第2バッテリB1,B2の状態の検知、各種センサの状態の検知等を行う。MCU46には、シート17への乗員の着座を検知するシートスイッチ158、サイドスタンド40の格納状態を検知するサイドスタンドスイッチ157、前後ブレーキレバー8の揺動に連動する前後ブレーキスイッチ155,156、クランク軸回転速度センサ26、ペダル踏力を検知する油圧センサ218、車速センサ37、バッテリ温度センサ168からの情報が入力される。また、MCU46には、乗員に各種警告を発する警告灯159が接続されている。
【0062】
MCU46は、例えば、乗員がシート17に着座し、かつサイドスタンド40が格納されているときに所定のペダル踏力が入力されると、ペダル踏力および車速に応じた補助動力を算出し、CAN通信線167を介してPDU39に駆動モータ24の駆動指令を発する。また、MCU46は、走行中の車速やペダル踏力の変化に応じて駆動モータ24の出力を調整したり、補助動力の供給中にブレーキスイッチ155,156の作動が検知されると、駆動モータ24への電力供給を停止する制御等も可能とする。
【0063】
PDU39には、ブレーカ169を介して直列接続された第1,第2バッテリB1,B2(例えば、26V/6Ah×2)から供給される主電源(例えば、48V)が入力されると共に、リレー165およびヒューズ166を介して、車載バッテリB1,B2の出力をDC/DCコンバータ164で降圧されたPDU用の制御電源(例えば、24V/1.2Ah)が入力されている。PDU39は、MCU46からの駆動指令に基づいて駆動モータ24に駆動電流を供給する。駆動モータ24には、その回転角度を検知する回転角度センサ152が近接配置されている。また、PDU39には、負荷印加手段としての負荷印加用モータ60が接続されている。
【0064】
第1,第2バッテリB1,B2には、前記したバッテリ温度センサ168およびブレーカ169が設けられている。車載バッテリB1,B2の出力は、PDU39への供給経路とは異なる経路において、制御システムの主電源(例えば、12V/16.7Ah)を得るためにDC/DCコンバータ160で降圧される。この主電源は、メインスイッチ161、メインリレー162およびヒューズ163を介して、MCU46のほか、ヘッドライト15、各種スイッチ類、尾灯装置35、ウインカ装置等の補機類153に供給される。
【0065】
図10は、本実施形態に係る二輪車の動力伝達機構の全体構成の模式図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。前記したように、ペダル22aに加えられた踏力は、クランクアーム22→クランク軸21→第1駆動側スプロケット20→第1ドライブチェーン23→第1従動側スプロケット101→第1ワンウェイクラッチ105→後輪WRの順で伝達される。この一連の伝達機構が第1動力伝達機構K1となる。
【0066】
一方、駆動モータ24の回転駆動力は、回転軸83→第1減速ギヤ84→第2減速ギヤ92→出力軸25a→第2駆動側スプロケット25→第2ドライブチェーン28→第2従動側スプロケット102→第2ワンウェイクラッチ106→後輪WRの順で伝達される。この一連の伝達機構が第2動力伝達機構K2となる。
【0067】
本実施形態では、検知されたペダル踏力が所定値を超えると、駆動モータ24によって後輪WRに補助動力を供給するように構成されている。具体的には、図11に示すように、ペダル踏力がアシスト開始閾値PT1を超えると、アシスト最大値AT1を上限として、ペダル踏力に比例して増加する補助動力を印加する。また、本実施形態において、アシスト開始閾値PT1は、車速に応じて変化するように設定されている。
【0068】
図12は、アシストを開始する踏力と車速との関係を示すグラフである。本実施形態ででは、アシスト開始のトリガとなるペダル踏力のアシスト開始閾値PTが、速度上昇に伴って徐々に減少し、所定速度(例えば、約12km/h)を超えると一定値(例えば、約2.5kgf)となるように設定されている。この設定によれば、発進時にごくわずかな踏力でアシストが開始されてしまったり、また、速度が上昇しても大きなペダル踏力を入力しないとアシストが行われないといった現象が発生することがなく、通常の自転車と同様な自然な乗車フィーリングを得ることが可能となる。
【0069】
ところで、本実施形態に係る二輪車1において、乗員が通常の速度でペダルを漕いでも後輪WRに回転駆動力が伝達されない(第1ワンウェイクラッチ105が接続されない)ほどの高い速度で走行している間は、乗員がペダルを踏んでもクランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に相対力が発生せず、ペダル踏力を検知できないという現象が発生する。このとき、乗員に対しては、ペダルの空回り感を与えることとなる。
【0070】
前記した負荷印加装置としての負荷印加用モータ60は、上記したような状態に対処するために設けられている。本実施形態に係る負荷印加用モータ60によれば、通常であればペダルの空回りが生じる高速走行時においても、第1ドライブチェーン23に逆転方向の負荷を与えることで、ペダル操作に対する負荷を発生させることが可能となる。負荷印加用モータ60は、負荷を与える必要が生じた時だけ、励磁状態を切り換えて負荷運転制御を行い、通常時には負荷が生じない無負荷運転とすることが可能に構成されている。
【0071】
図13は、負荷印加用モータ60によって与える負荷トルクとペダル回転数との関係を示すグラフである。本実施形態では、車速が所定値を超えた状態で、ペダル回転速度がペダル空回り閾値PN1を超えると、負荷最大値HT1を上限として、ペダル回転数の大きさに比例して増加する負荷を印加するように構成されている。これにより、高速走行時においてもペダルの空回り感が生じることがなく、かつペダル踏力の検知が可能となる。なお、負荷を印加するタイミングやその大きさは種々の変更が可能であり、例えば、上限値を設けずに車速の増加に伴って増加させるようにしてもよい。
【0072】
そして、ペダル踏力に対する負荷印加制御は、第1ドライブチェーン23を逆転させる方向に負荷印加用モータ60を回転させるように電力を供給するほか、負荷印加用モータ60を発電機として駆動して回生発電に伴う負荷を生じさせることで行ってもよい。この構成によれば、人力によって発電された電力で第1,第2バッテリB1,B2を充電することができ、高速走行時における消費電力を抑えることが可能となる。
【0073】
図14は、本実施形態に係る駆動モータ24のアシスト制御方法を示すグラフである。本実施形態に係る二輪車1では、通常のアシスト自転車のように、所定値を超えたペダル踏力が入力されている間のみ補助動力を供給するのではなく、ペダル踏力の山と山とをつなぐように補助動力を供給する「踏力保持制御」が可能に構成されている。
【0074】
クランク軸21は、ペダルが左右交互に踏まれることで回転するため、ペダル踏力検知機構70によって検知されるペダル踏力の波形は、図示するように、山と谷とが周期的に繰り返される形状となる。本実施形態では、先に入力されたペダル踏力のピーク値を、次にペダル踏力のピーク値が検知されるまで保持するように補助動力を供給することで、ペダル踏力波形の山と山とをつなぐような制御が行われる。
【0075】
図14において、時刻t1では、先に入力されたペダル踏力(波形A)がピーク値を越えて下がり始めたことが検知され、この波形Aのピーク値を保つための補助動力F1の供給が開始される。次に、時刻t2では、次に入力されたペダル踏力(波形B)がピーク値を越えて下がり始めたことが検知され、この波形Bのピーク値を保つための補助動力F2の供給が開始される。
【0076】
本実施形態において、この踏力保持制御は、ペダル踏力(例えば、21kgf)が所定値を超えるような登坂路および平地での加速時に実行される。また、踏力保持制御は、乗員によるブレーキ操作等が行われるまで同じ大きさの補助動力を供給する「クルーズ走行」制御と同時適用するほか、補助動力の大きさを一定とせずに、供給開始時の大きさから漸減させる「準クルーズ走行」制御と同時適用することが可能である。さらに、ペダル踏力が所定値(例えば、1.5kgf)以下の状態でクランク軸21が所定回数回転(例えば、4回転)すると、補助動力の供給を停止するように構成することもできる。
【0077】
図15は、上記した準クルーズ走行(以下、単にクルーズ走行と示すこともある)制御の詳細を示すタイムチャートである。このタイムチャートでは、上から順に、制御部46によって設定される目標車速MT、車速センサ37で検知される二輪車1の現在車速V、駆動モータ24のアシスト出力(正転方向で0〜100%)、路面の勾配状態をそれぞれ示している。
【0078】
本実施形態に係る補助動力付き二輪車は、クルーズ走行中に上り坂または下り坂にさしかかると、勾配状態の変化に応じた駆動力制御が実行可能である。具体的には、クルーズ走行中に、現在車速が所定値以上減少すると路面が上り坂になったと判定して目標車速の更新を行い、一方、クルーズ走行中に現在車速が目標車速より所定値以上増加すると路面が下り坂になったと判定して目標車速の更新を行うように構成されている。これにより、路面の勾配を検知するために加速度センサ等を用いることなく、車速センサ37の出力値に基づいて勾配状態を判定し、路面勾配に合わせた適切な駆動力制御が可能となる。
【0079】
図15を参照して、時刻t0では、ペダル踏力に応じた所定のモータ駆動力により、現在車速V1でクルーズ走行中である。本実施形態では、車速を徐々に減少させる「準クルーズ走行」が適用されており、目標車速MTは、時刻t0での目標車速MT1から一定の減速率R1で低下(例えば、−0.1km/h/sec)するように設定されている。駆動モータ24は、この減速度R1を維持するために出力20%で駆動されている。
【0080】
次に、時刻t10では、緩い上り勾配の路面にさしかかる。これに伴い、制御部46は、目標車速MTの減速率R1が維持されるように、駆動モータ24の出力を60%に増加させる。そして、時刻t11では、さらに路面の勾配が大きくなることに応じて、目標車速の減速率R1が維持されるように駆動モータ24の出力が100%に増加される。
【0081】
しかしながら、時刻t11でさしかかる上り坂では、勾配がきついため、駆動モータ24を100%の出力で駆動しても現在車速Vが減速率R1より大きな減速率R2で低下してしまう。そして、時刻t12では、現在車速Vが時刻t0での目標車速MT1より所定値以上減少する。これに伴って、制御部46は、目標車速をMT1より小さいMT2に変更する更新を行う(更新A)。この目標車速MTの更新は、例えば、現在車速Vが時刻t0での目標車速MT1より5%以上減少した場合に、現在車速Vを目標車速MTに置き換えることで行われる。
【0082】
次に、時刻t13では、さらに、車速Vが時刻t2で更新した目標車速MT2より5%以上減少したため、目標車速MT2を現在車速であるMT3に置き換える更新が行われる(更新B)。なお、時刻t12から時刻t13までの間の目標車速も、時刻t12で更新された目標車速MT2から減速率R1で低下するように設定される。
【0083】
次に、時刻t14では、車速Vがアラーム閾値SV1を下回る。このアラーム閾値SV1は、クルーズ走行の下限車速としてのクルーズ閾値SV2より少し大きい値に設定されている。そして、車速Vがアラーム閾値SV1を下回ることに伴い、制御部46は、二輪車1のインストルメントパネル等に設けられた警告灯159(図9参照)を点灯する(アラーム作動)。この警告灯159の点灯によれば、車速Vがクルーズ閾値SV2に近づいたことを乗員に報知し、二輪車1のペダルを漕ぐことを乗員に促すことができる。なお、警告灯159の警告に応じて乗員がペダルを漕いだ場合には、ペダル踏力に応じたモータ駆動力が出力されることとなる。
【0084】
時刻t15では、路面がきつい上り勾配から平地に戻る。本実施形態では、時刻t14でアラームが作動しても乗員によるペダル操作が行われなかったが、現在車速Vがクルーズ閾値SV2を下回る前に、きつい上り坂から平地走行に戻った状態を示している。この時刻t15で平地走行に戻った瞬間は、モータアシスト出力が100%であるため、二輪車1は加速を開始する。しかしながら、制御部46は、時刻t16おいて、車速Vが目標車速MT3から減速率R1で低下するようにモータアシスト出力を20%に低減するため、二輪車1が上り坂から平地に戻った際の車速Vの増加量はごくわずかとなる。
【0085】
上記したように、路面が上り坂から平地に戻った際の車速の増加が小さく抑えられることは、上り坂の途中で、時刻t12での更新Aおよび時刻t13での更新Bが行われたことによって、目標車速が現在車速に応じて大幅に低減されたことが大きく影響している。例えば、更新Aおよび更新Bが実行されない場合には、目標車速と現在車速との差が大きい状態のまま時刻t15で平地に移行することとなり、モータアシスト出力100%で加速する期間が長くなりやすい。これに対し、本実施形態では、現在車速の低下に応じた目標車速の更新を行うことにより、路面状況の変化に応じたモータアシスト出力の切り換えを素早く実行することを可能としている。
【0086】
次に、時刻t17では、路面が平地から下り坂にさしかかり、二輪車1は下り勾配による加速を開始する。これに伴い、制御部46は、目標車速MT3に対する減速率R1を維持するために駆動モータ24を駆動させる必要がなくなるため、モータアシスト出力を20%から0%に切り換える。そして、時刻t18では、現在車速Vが、時刻t13で更新した目標車速MT3より所定値以上大きくなるため、目標車速を現在車速より所定割合だけ小さいMT4とする更新が行われる(更新C)。この目標車速MTの更新は、例えば、車速Vが時刻t13での目標車速MT3より20%以上増加した場合に、現在の車速Vマイナス10%の値を目標車速MTに置き換えることによって実行される。その結果、時刻t18では、目標車速がMT3より少し大きいMT4へ更新される。
次に、時刻t19では、現在車速Vが、さらに時刻t18で更新した目標車速MT4より所定値以上大きくなるため、目標車速を現在車速より所定割合だけ小さいMT5とする更新が行われる(更新D)。
【0087】
時刻t20では、路面が下り坂から平地に戻る。この時刻t20で平地走行に戻った瞬間は、モータアシスト出力が0%であり、二輪車1は減速を開始する。しかしながら、制御部46は、車速Vが目標車速MT5から減速率R1で低下するように、時刻t21おいてモータアシスト出力を20%に復帰させるため、減速度R1より大きい減速率R3で減速する期間は、時刻20から時刻t21までのわずかな期間となる。
【0088】
なお、上記したように、路面が下り坂から平地に戻った際の車速の低減が小さく抑えられることは、下り坂の途中で、時刻t18における更新Cが行われ、さらに時刻t19における更新Dが行われることによって、目標車速が現在車速に応じて低減されたことが大きく影響している。例えば、設定C,Dが実行されない場合には、目標車速と現在車速との差が大きい状態のまま時刻t20で平地に移行するため、モータアシスト出力が0%から20%に復帰するまでの期間が長くなる。これに対し、本実施形態では、現在車速の増加に応じた目標車速の更新を行うことにより、路面状況の変化に応じたモータアシスト出力の切り換えを素早く実行することが可能となる。
【0089】
最後に、時刻t22では、車速Vがクルーズ閾値SV2を下回ることにより、クルーズ制御の終了条件が満たされ、目標車速が0(ゼロ)に切り換えられる(更新E)と共に、駆動モータ出力が0%となり、クルーズ制御が終了となる。
【0090】
なお、クルーズ制御中に、モータ駆動力によって維持されている車速を超えて車体を加速させるほどのペダル踏力が入力された場合には、新たに入力されたペダル踏力に対応した車速でのクルーズ制御を行わせることができる。
【0091】
また、車速Vがアラーム閾値SV1を下回って警告が実行されている間に、乗員がペダル踏力を入力した場合には、このペダル踏力に応じた補助動力が印加され、一方、ペダル踏力が印加されることなくクルーズ閾値SV2を下回った場合には、駆動モータ24の駆動が停止されることとなる。なお、車速Vがアラーム閾値SV1を下回った場合に実行される警告には、警告灯159の点灯や点滅のほか、ホーンやスピーカ等の作動や振動発生器等による種々の警告手段を用いることができる。
【0092】
図16は、クルーズ走行制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、クルーズ制御の実行中に適用され、かつ図15のタイムチャートに対応するものである。ステップS1では、現在車速が目標車速より5%以上減少したか否かが判定される。ステップS1で肯定判定されると、ステップS2に進み、現在車速を目標車速に設定する(図15における時刻t12の「更新A」および時刻t13の「更新B」に対応)。
【0093】
続くステップS3では、現在車速がアラーム閾値を下回ったか否かが判定され、肯定判定されるとステップS4に進む。ステップS4では、乗員にペダル操作を促すために、警告灯159の点滅等によるアラームが作動する(図15における時刻t14の「アラーム作動」に対応)。なお、ステップS1で否定判定されると、ステップS2〜S4をスキップしてステップS5に進み、また、ステップS3で否定判定されるとステップS4をスキップしてステップS5に進む。
【0094】
ステップS5では、現在車速が目標車速より20%以上増加したか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS6に進む。ステップS6では、現在車速マイナス10%を目標車速に設定する(図15における時刻t18の「更新C」および時刻t19の「更新D」に対応)。なお、ステップS5で否定判定されると、ステップS6をスキップしてステップS7に進む。
【0095】
ステップS7では、現在車速がクルーズ閾値を下回ったか否かが判定される。ステップS7で肯定判定されると、ステップS8に進んで駆動モータ24が停止され(図15の時刻t22の更新Eに対応)、一連の制御を終了する。なお、ステップS8で否定判定されると、ステップS1の判定に戻る。
【0096】
上記したように、本発明に係る補助動力付き二輪車のクルーズ制御によれば、傾斜センサを用いることなく、車速センサの出力値に基づいて、クルーズ走行中の路面の勾配変化に応じた駆動モータ出力の制御が可能となる。さらに、クルーズ走行中に現在車速が目標車速より5%以上減少すると現在車速を目標車速に設定するので、上り坂から平地に移行した際に現在車速と目標車速とが大きく離れた状態にあることがなくなり、上り坂から平地への移行後に加速を続けることを防ぐことが避けられ、スムーズにクルーズ走行に移行することができる。また、クルーズ走行中に現在車速が目標車速より20%以上増加すると現在車速マイナス10%を目標車速に設定するので、下り坂から平地に移行した際に現在車速と目標車速とが大きく離れた状態にあることがなくなり、下り坂から平地への移行後に減速を続けることが避けられて、スムーズにクルーズ走行に移行することができる。
【0097】
なお、二輪車の各部構造、クランク回転速度センサおよび車速センサの構造や配置、ペダル踏力検知機構の構造、人力動力伝達機構および電力動力伝達機構の構造、負荷印加用モータの構造や配置、負荷印加用モータの制御方法、クルーズ走行制御時および準クルーズ走行時のモータアシスト出力の大きさや、路面勾配に対するモータアシスト出力の設定、各目標車速の設定条件等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、平地走行においては、所定の車速を維持するクルーズ走行が実現されるように、減速度を伴わない目標車速の設定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…補助動力装置付き二輪車、2…車体フレーム、3…メインフレーム、21…クランク軸、22…クランクアーム、22a…ペダル、24…駆動モータ、23…第1ドライブチェーン、26…クランク軸回転速度センサ、28…第2ドライブチェーン、30…車軸、37…車速センサ、39…PDU(モータドライバ)、46…MCU(制御部)、60…負荷印加用モータ(負荷印加手段)、70…ペダル踏力検知機構、100…ワンウェイクラッチ機構、105…第1ワンウェイクラッチ、106…第2ワンウェイクラッチ、218…油圧センサ(ペダル踏力センサ)、B1,B2…第1,第2バッテリ、K…動力伝達機構、K1…第1動力伝達機構、K2…第2動力伝達機構、WR…後輪
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助動力装置付き二輪車に係り、特に、人力によるペダル踏力の変化に対応して補助動力源の出力を制御する補助動力装置付き二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の駆動力制御において、スロットル開度や車速のほか、車両が走行している路面の勾配を考慮して、駆動輪に伝達する駆動力を決定する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、下り坂を走行中にスロットル開度がゼロとされた場合でも、平坦地を走行中にスロットル開度がゼロとされた場合と同様の減速度が得られるように、路面の勾配に応じて目標減速度を算出する制御が開示されている。この特許文献1に記載された車両では、加速度センサを用いて路面の勾配を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人力によるペダル踏力に応じて電動モータによる補助動力を印加するようにした補助動力装置付き二輪車、いわゆるアシスト自転車が知られている。通常、このような車両では、ペダル踏力が印加されている間のみ補助動力を供給するように構成されている。しかしながら、乗員がペダル操作を停止しても所定速度を保つように駆動力の印加を継続する「クルーズ走行」の機能が要求された場合には、クルーズ走行中に車両が上りまたは下り勾配にさしかかっても、平坦路での走行フィーリングとの差異が大きくならないように駆動力を制御することが望ましい。
【0006】
このとき、特許文献1に記載された技術のように、加速度センサを用いて路面の勾配を検知する方式を適用しようとすると、余剰スペースの少ない二輪車において、取り付けスペースの確保や構造の複雑化、部品点数の増加等の課題が生じることとなる。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、加速度センサを用いることなく適切な駆動力によるクルーズ走行を可能とする補助動力装置付き二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ペダル踏力が入力されるクランク軸(21)と、前記クランク軸(21)に入力されたペダル踏力を後輪(WR)に伝達する動力伝達機構(K)と、前記動力伝達機構(K)に含まれ、前記ペダル(22a)の正転方向の駆動力のみを伝達するワンウェイクラッチ(105)と、前記ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構(70)と、前記後輪(WR)に補助動力を印加する駆動モータ(24)と、前記二輪車(1)の車速を検知する車速センサ(37)と、前記ペダル踏力の大きさに基づいて前記駆動モータ(24)の出力を算出する制御部(46)とを有する補助動力装置付き二輪車において、前記制御部(46)は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速(MT)が保持または漸減されるように前記駆動モータ(24)を駆動するクルーズ走行を実行すると共に、前記車速センサ(37)により検知される現在車速(V)と前記目標車速(MT)との対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じて前記クルーズ走行中に前記目標車速(MT)の更新を行う点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記目標車速(MT)の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT1)に対して現在車速が所定値以上減少すると、現在車速(V)を新たな目標車速(MT2,MT3)に置き換えることで実行される点に第2の特徴がある。
【0010】
また、前記目標車速の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT3)に対して現在車速(V)が所定値以上増加すると、現在車速(V)より所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速(MT4)に置き換えることで実行される点に第3の特徴がある。
【0011】
また、前記制御部(46)は、前記クルーズ走行中に、現在車速(V)が所定のクルーズ閾値(S2)を下回ると、駆動モータ(24)による補助動力の供給を停止する点に第4の特徴がある。
【0012】
また、前記制御部(46)は、前記現在車速(V)が前記クルーズ閾値(S2)より大きい所定のアラーム閾値(SV1)を下回ると、警告手段(159)を作動させる点に第5の特徴がある。
【0013】
また、前記警告手段は、警告灯(159)である点に第6の特徴がある。
【0014】
また、前記警告手段は、音または振動を発する機器である点に第7の特徴がある。
【0015】
さらに、前記動力伝達機構(K)は、前記クランク軸(21)に入力された踏力を前記クランク軸(21)から第1ワンウェイクラッチ(105)を介して後輪(WR)伝達する第1動力伝達機構(K1)と、前記駆動モータ(24)の回転駆動力を第2ワンウェイクラッチ(106)を介して前記後輪(WR)に伝達する第2動力伝達機構(K2)とを含む点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0016】
第1の特徴によれば、制御部は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速が保持または漸減されるように駆動モータを駆動するクルーズ走行を実行すると共に、車速センサにより検知される現在車速と目標車速との対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じてクルーズ走行中に目標車速の更新を行うので、加速度センサ等を用いることなく路面の勾配状態を判定して、路面の勾配状態に応じたクルーズ走行中の駆動力制御を実行することができる。
【0017】
第2の特徴によれば、目標車速の更新は、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速に対して現在車速が所定値以上減少すると、現在車速を新たな目標車速に置き換えることで実行されるので、平坦な路面と同様のクルーズ走行ができない上り勾配の路面から、平坦な路面に戻った際に、現在車速と目標車速とが大きく離れてしまうことを防ぐことが可能となる。これにより、上り坂から平坦な路面に戻った後にモータ駆動力を素早く低減させて、平坦路での加速期間を短くすることが可能となる。
【0018】
第3の特徴によれば、目標車速の更新は、クルーズ走行中に、先に設定された目標車速に対して現在車速が所定値以上増加すると、現在車速より所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速に置き換えることで実行されるので、下り勾配の路面から平坦な路面に移行した際に、現在車速と目標車速とが大きく離れてしまうことを防ぐことが可能となる。これにより、平坦な路面に戻った後にモータ駆動力を素早く復帰させることが可能となる。
【0019】
第4の特徴によれば、制御部は、クルーズ走行中に、現在車速が所定のクルーズ閾値を下回ると、駆動モータによる補助動力の供給を停止するので、二輪車の車速が所定車速を下回ることに応じて速やかにクルーズ制御を終了し、バッテリ電力を節約することができる。
【0020】
第5の特徴によれば、制御部は、現在車速がクルーズ閾値より大きい所定のアラーム閾値を下回ると警告手段を作動させるので、車速が低下してクルーズ走行の下限車速に近づいたことを乗員に報知し、ペダル操作を促すことが可能となる。これにより、ペダル操作が早く再開される可能性を高め、バッテリの消耗を抑えることができる。
【0021】
第6の特徴によれば、警告手段は警告灯であるので、乗員の視覚に訴えてペダル操作を効果的に要求することができる。
【0022】
第7の特徴によれば、前記警告手段は、音または振動を発する機器であるので、乗員の聴覚または触覚に訴えてペダル操作を効果的に要求することができる。例えば、乗員の耳元に配置されたスピーカや、ハンドルグリップやシート等に取り付けられた振動発生器を警告手段とすることで、警告の効果を高めることができる。
【0023】
第8の特徴によれば、動力伝達機構は、クランク軸に入力された踏力をクランク軸から第1ワンウェイクラッチを介して後輪に伝達する第1動力伝達機構と、駆動モータの回転駆動力を第2ワンウェイクラッチを介して後輪に伝達する第2動力伝達機構とを含むので、人力動力系と電力動力系の2系統を並列配置する補助動力装置付き二輪車において、路面の登坂状態を考慮したクルーズ走行制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る補助動力装置付き二輪車の側面図である。
【図2】二輪車の車体フレームの拡大側面図である。
【図3】パワーユニットの拡大側面図である。
【図4】後輪の車軸の周囲の構成を示す斜視図である。
【図5】動力伝達機構の全体構成を示す上面断面図である。
【図6】動力伝達機構のクランク軸側の構成を示す拡大断面図である。
【図7】動力伝達機構の車軸側の構成を示す拡大断面図である。
【図8】ペダル踏力検知機構の構成を示す拡大断面図である。
【図9】本実施形態に係る二輪車の制御システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本実施形態に係る二輪車の動力伝達機構の全体構成の模式図である。
【図11】ペダル踏力と補助動力との関係を示すグラフである。
【図12】アシストを開始する踏力と車速との関係を示すグラフである。
【図13】負荷トルクとペダル回転数との関係を示すグラフである。
【図14】駆動モータのアシスト制御方法を示すグラフである。
【図15】クルーズ走行制御の詳細を示すタイムチャートである。
【図16】クルーズ走行制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る負荷印加装置を適用した補助動力装置付き二輪車1の側面図である。また、図2は、補助動力装置付き二輪車1(以下、単に二輪車と示すこともある)の車体フレーム2の側面図である。二輪車1は、自転車と同様のペダルを有し、人力によるペダル踏力に応じて、駆動モータ24による補助動力を後輪WRに印加するようにした、いわゆる電動アシスト機能付きの二輪車である。
【0026】
二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ5と、該ヘッドパイプ5から後方下方に延在するメインフレーム3と、該メインフレーム3の後部に接合されて上方に延在するシートチューブ4と、メインフレーム3の後部に配設される左右一対のチェーンステー19と、シートチューブ4の上部に接合されて後方下方に延在すると共にチェーンステー19の後端と接合される左右一対のシートステー18とからなる。
【0027】
ヘッドパイプ5には、左右一対のフロントフォーク9を支持するステムシャフト(不図示)が回動自在に軸支されており、該ステムシャフトの上部には、左右一対のハンドルバー6が取り付けられている。ハンドルバー6の車幅方向の両端部には、ハンドルグリップ7およびブレーキレバー8がそれぞれ取り付けられており、フロントフォーク9の下端部には、車軸10を介して前輪WFが回転自在に軸支されている。前輪WFのドラム式ブレーキ11は、揺動アーム12の作動に伴って制動力を生じる。この揺動アーム12は、車幅方向右側のブレーキレバー8に連結された不図示のワイヤによって駆動される。
【0028】
ヘッドパイプ5の前方には、ライトステー14を介してヘッドライト15が取り付けられている。フロントフォーク9の上部には、フロントフェンダ13が取り付けられている。メインフレーム3は中空構造とされており、その内部には、補助動力源および制御システムに電力を供給する第1バッテリB1および第2バッテリB2が収納されている。
【0029】
メインフレーム3の後部で車体中央には、人力駆動系の機構と電力駆動系の機構とを一体に構成したパワーユニットPが取り付けられている。クランク軸21の車幅方向両端部には、乗員が踏む足乗せ部分を回転自在に軸支するクランクアーム22が固定されている。クランク軸21には、第1駆動側スプロケット20が固定されており、該第1駆動側スプロケット20に第1ドライブチェーン23が巻き掛けられて、人力動力伝達機構が構成されている。また、補助動力源としての駆動モータ24の出力軸には、第2駆動側スプロケット25が固定されており、該第2駆動側スプロケット25に第2ドライブチェーン28が巻き掛けられて電気動力伝達機構が構成されている。
【0030】
チェーンステー19の後端部には、車軸30を介して後輪WRが回転自在に軸支されている。車軸30には、第1ドライブチェーン23を介して後輪WRに人力駆動力を伝達する第1従動側スプロケット101と、第2ドライブチェーン28を介して後輪WRに電気駆動力を伝達する第2従動側スプロケット102とが軸支されている。チェーンステー19の後端部には、第1ドライブチェーン23のテンショナ29が取り付けられている。
【0031】
パワーユニットPとシートステー18との間には、駆動モータ24の出力を制御するモータドライバとしてのPDU(パワードライブユニット)39が配設されている。パワーユニットPの下部には、サイドスタンド40が取り付けられている。
【0032】
円筒状のシートチューブ4には、その上方から、シート17を支持するシートピラー16が挿入固定されている。シートステー18には、左右一対のウインカ装置38が取り付けられており、後輪WRの上方を覆うリヤフェンダ34には、尾灯装置35が取り付けられている。リヤフェンダ34には、左右一対の支持ステー33が設けられている。
【0033】
シートステー18の車軸30寄りの位置には、車体後方側に伸びる取付ステー41が設けられている。この取付ステー41には、後輪WRの回転速度を検知する車速センサ37を保持するホルダ36が固定されている。後輪WRのドラム式ブレーキ95(図5参照)を作動させる揺動アーム32は、車幅方向左側のブレーキレバー8に連動するワイヤ(不図示)に連結されている。
【0034】
駆動モータ24の後方下方には、負荷印加装置としての負荷印加用モータ60が配設されている。本実施形態では、負荷印加用モータ60の出力軸62(図3参照)に固定された負荷印加用スプロケット61が、前記第1ドライブチェーン23の下側かつ内周側に噛合するように構成されている。
【0035】
図2は、車体フレーム2の側面図である。また、図3は、パワーユニットPの拡大側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。ヘッドパイプ5の前面部には、ライトステー14を取り付けるためのボス5aが設けられている。メインフレーム3は、第1バッテリB1および第2バッテリB2(図1参照)の収納を可能とする中空の箱形構造とされている。メインフレーム3の後端部には、シートパイプ4を結合するための延出部3aが設けられている。
【0036】
シートパイプ4の下部とチェーンステー19の前端部との間には、パワーユニットPの輪郭に沿った形状を有するユニットケース42が結合されている。パワーユニットPは、ユニットケース42の前後に形成された取付部44およびメインフレーム3の後端に形成された取付部48を用いて、車体フレーム2に吊り下げられるように固定される。
【0037】
ユニットケース42の上面側には、PDU39の後部を支持するための取付ステー43が設けられている。この取付ステー43の配置および形状により、PDU39は、車体前方側が直接ユニットケース42に接触する一方、車体後方側は宙に浮いた状態で固定される。これにより、PDU39の駆動時の発熱は、走行風およびユニットケース42への熱伝導によって効率よく冷却されることとなる。
【0038】
左右一対のシートステー18およびチェーンステー19の後端部は、それぞれ、車軸30の貫通孔47が形成された板状のリヤエンド27に接合されている。チェーンステー19の後端近傍には、第1ドライブチェーン23のテンショナ29を取り付ける台座19aが形成されており、シートステー18には、ウインカ装置38(図1参照)を取り付けるためのウインカステー18aが設けられている。
【0039】
図3を参照して、PDU39の外枠には、取付ステー43の後方側で下方に延出するサブステー45が設けられている。サブステー45には、車速やペダル踏力等に基づいて駆動モータ24の出力の算出等を行う制御部としてのMCU46が取り付けられている。このようなMCU46の配置構造によれば、ユニットケース42とPDU39との間の隙間にMCU46を効率よく配置し、かつMCU46の周囲の風通しをよくして冷却効果を高めることが可能となる。
【0040】
車体フレーム2へのユニットケースPの懸架作業は、前記取付部44,48(図2参照)にマウントシャフト44a,48aを貫通させることで実行される。また、駆動モータ24の出力軸25aは、パワーユニットPを車体フレーム2に懸架した状態において、クランク軸21とほぼ同じ高さで車体後方側に位置するように構成されている。
【0041】
図4は、後輪WRの車軸30の周囲の構成を示す斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。車軸30は、車幅方向左側にナット頭を有すると共に車体右側に向けて貫通するアクスルシャフトである。車軸30のナット頭とリヤエンド27との間には、車体右側と同様に、チェーン引き金具50および支持ステー33の下端部が挟まれている。テンショナ29は、2つのローラを支持する支持板49を台座19a(図2参照)に取り付けることでチェーンステー19に固定されている。チェーンステー19の上部には、第1,第2ドライブチェーン23,28を覆うチェーンカバー54が設けられている。
【0042】
車速センサ37は、2本のネジ37aによってホルダ36に固定されている。ホルダ36は、2本のネジ41aによって取付ステー41に固定されており、取付ステー41は、シートステー18に溶着されている。車速センサ37は、後輪WRと一体に回転するパルスリング51に形成された貫通孔52の通過を検知することによって、二輪車1の車速を検知するように構成されている。パルスリング51は、後輪WRのスポーク(不図示)を取り付けるハブフランジ53の車幅方向左側に取り付けられている。
【0043】
図5は、動力伝達機構Kの全体構成を示す上面断面図である。また、図6はクランク軸21側の構成を示す拡大断面図であり、図7は車軸30側の構成を示す拡大断面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。動力伝達機構Kは、乗員によるペダル踏力を後輪WRに伝える第1動力伝達機構K1と、駆動モータ24の回転駆動力を後輪WRに伝達する第2動力伝達機構K2とからなる。
【0044】
クランク軸21には、第1駆動側スプロケット20が固定された支持部71が支持されており、乗員がペダルを漕ぐと、第1駆動側スプロケット20に巻き掛けられた第1ドライブチェーン23を介して、その踏力が第1従動側スプロケット101に伝達される。支持部71の車幅方向内側でパワーユニットPのケース内部には、ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構70が設けられている。
【0045】
負荷印加用モータ60の出力軸62に固定された負荷印加用スプロケット61は、第1ドライブチェーン23の内周側に噛合している。負荷印加用モータ60は、第1動力伝達機構Kにおいて、第1ワンウェイクラッチ105の上流側に配設されており、必要に応じて、第1ドライブチェーン23の正転方向の回転を妨げる方向の負荷動力を与えるように構成されている。
【0046】
一方、クランク軸21の車体後方に配設された駆動モータ24の出力軸25aに固定された第2駆動側スプロケット25は、第2ドライブチェーン28に噛合しており、必要に応じて、駆動モータ24による電気駆動力を第2従動側スプロケット102に伝達するように構成されている。
【0047】
第2駆動側スプロケット101,102と後輪ハブ94との間には、ワンウェイクラッチ機構100が設けられている。本実施形態に係るワンウェイクラッチ機構100は、第1駆動側スプロケット101と車軸30との間に配設される第1ワンウェイクラッチ105(図7参照)と、第2従動側スプロケット102と車軸30との間に配設される第2ワンウェイクラッチ106(図7参照)とからなり、いずれも、二輪車1を前進させる方向の回転駆動力のみを後輪ハブ94に伝達するように構成されている。なお、後輪ハブ94の内部には、ドラム式ブレーキ95(図7参照)が内蔵されている。
【0048】
図6を参照して、まずペダル踏力検知機構70の構造を説明する。本実施形態に係るペダル踏力検知機構70は、クランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に生じる相対力を検知するものである。より具体的には、クランク軸21と第1駆動スプロケット20との間に生じる相対力(ねじり力)を、カム機構によってクランク軸21の軸方向の押圧力に変換し、この押圧力によって油圧ピストンを押して生じた油圧を油圧センサで検知することにより、ペダル踏力の検知を行う。
【0049】
ペダル踏力検知機構70において、ねじり力を軸方向の押圧力に変換する機構は、主に、第1駆動側スプロケット20の支持部71と一体回転するハブ217と、クランク軸21に回転不能かつ摺動可能に支持されたカムリング75と、ハブ217とカムリング75との間に配設される複数の鋼球73,74とからなる。クランク軸21の回転駆動力は、カムリング75から鋼球73,74を介してハブ217に伝達される。
【0050】
ハブ217とカムリング75の対向面には、それぞれ、鋼球73,74が嵌る略半球状の凹部が形成されている。この凹部は、その底部近傍では鋼球73,74と同形状の部分球面である一方、縁の近傍では部分球面から接線方向に離れて広がる面を有している。これにより、ハブ217とカムリング75との間に相対力が作用すると、ハブ217とカムリング75との回転方向の位置がずれると共に、凹部の縁の面が鋼球73,74に乗り上げようとする。その結果、ハブ217に対してカムリング75を図示右方向に離間させる力、すなわち、カムリング75を図示右方向に押圧する力が生じる。
【0051】
カムリング75の図示右方向には、本体77に収められて軸方向に摺動可能な円環状の油圧ピストン76が配置されている。ペダル踏力は、この油圧ピストン76が図示右方向に押されることで生じる油圧に基づいて検知される。
【0052】
パワーユニットPは、右ケース80a、中ケース80b、左ケース80cからなるケース80を有する。ケース80の内部には、主に、ペダル踏力検知機構70、クランク軸21、駆動モータ24、回転軸83、出力軸25aが収納されている。クランク軸21は、右ケース80Cに嵌合された軸受79と、左ケース80Cに嵌合されてハブ217と接する軸受72とによって軸支されている。図示右側の軸受21の車幅方向内側には、クランク軸21の回転速度を検知するためのマグネット78が配設されている。
【0053】
駆動モータ24は、中ケース80bに固定されたインナステータ87と、複数の磁石88が取り付けられたアウタロータ86と、該アウタロータ86に固定される回転軸83とからなる。回転軸83は、右ケース80aに嵌合された軸受82と、左ケース80cに嵌合された軸受85とによって軸支されている。回転軸83には第1減速ギヤ84が形成されており、該第1減速ギヤ84には、出力軸25aに固定された第2減速ギヤ92が噛合している。出力軸25aは、中ケース80bに嵌合された軸受89と左ケースに嵌合された軸受91とによって軸支されている。第2駆動側スプロケット25は、ロックナット93を用いて回転軸25aに固定されている。
【0054】
図7を参照して、後輪ハブ94は、車軸30に対して軸受111,112によって回転自在に軸支されている。後輪ハブ94は、ワンウェイクラッチ機構100のインナリング109にスプライン嵌合されている。インナリング109は、車軸30に対して2つのニードルローラベアリング107,108によって回転自在に軸支されている。
【0055】
第1ワンウェイクラッチ105の外周側には、第1従動側スプロケット101が取り付けられたアウタ101aが係合し、一方、第2ワンウェイクラッチ106の外周側には、アウタ部材が一体形成された第2従動側スプロケット102が係合している。本実施形態では、第1ワンウェイクラッチ105にラチェット式が適用され、一方、第2ワンウェイクラッチ106には「ころ」式(アウタリングとインナリングとの間に形成されたテーパ溝にころが嵌ることで両者を結合する方式)が適用されている。アウタ101aと車軸30との間には、ダストシール103および円筒状のカラー104が配設されている。
【0056】
上記したワンウェイクラッチ機構100によれば、乗員がペダルを漕ぐことによる人力駆動力は、第1従動側スプロケット20から第1ワンウェイクラッチ105を介して、インナリング109および後輪ハブ94に伝達され、他方、駆動モータ24による電気駆動力は、第2従動側スプロケット102から第2ワンウェイクラッチ106を介してインナリング109および後輪ハブ94に伝達され、複雑な断接機構を用いることなく、人力による後輪WRの駆動、電力による後輪WRの駆動、人力および電力の合力による後輪WRの駆動が可能になる。また、駆動モータ24の作動状態に関わらず、クランク軸21が停止した状態での惰性走行ができるようになる。
【0057】
図8は、ペダル踏力検知機構70の構成を示す拡大断面図である。この図では、図6に示した断面とは異なる断面を示している。クランク軸21の左方には、スリーブ216が固定されている。カムリング75は、スリーブ216の外周部にスプライン嵌合されることで、クランク軸21に対して回転不能かつ軸方向に摺動可能に支持されている。支持部71と一体回転するハブ217は、スリーブ216と相対回転可能に支持されている。
【0058】
本体77は、共に円環状とされるカムリング75および抑えリング209の間に挟まれるように配設されている。スリーブ216は、本体77の中央に形成された貫通孔に対し、所定の隙間を有して相互回転可能に貫通している。抑えリング209は、抑えプレート207および留めピン208を用いてスリーブ216に固定されている。本体77と抑えリング209との間には、円環状のスラストニードルベアリング210が配設されている。これと同様に、カムリング75と油圧ピストン76との間には、円環状のスラストニードルベアリング214が配設されている。
【0059】
油圧ピストン76の内周側および外周側には、オイルシール211,213がそれぞれ取り付けられている。油圧ピストン76は、クランク軸21と同心の環状シリンダ212に挿入されている。環状シリンダ212の底部には、油圧ピストン76を常に図示左方向に付勢する環状の皿ばね206が配設されている。環状シリンダ212の底部は、本体77に設けられたオイル溜め202および圧力センサ218によって閉塞される圧力検知空間219と連通している。これにより、乗員がペダルを漕ぐことでクランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に相対力が生じると、油圧ピストン67が図示右方に押圧されて圧力検知空間219に満たされたオイルの圧力が高まることとなる。この圧力上昇は、油圧センサ218によって検知される。
【0060】
環状シリンダ212とオイル溜め202との間には、チェックボール205を有する逆止弁203が配設されている。オイル溜め202の上部には、パッキン201を介して蓋200が取り付けられている。本体77は、オイル通路に混入した空気が抜けやすいように、オイル溜め202を車体上側に向けて配設されている。右ケース80aの内部には、ホールIC等によってマグネット78の通過状態に基づくクランク軸21の回転速度を検知するクランク軸回転速度センサ26が配設されている。
【0061】
図9は、本実施形態に係る二輪車の制御システムの構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。制御部としてのMCU46は、各種センサ出力に基づいて駆動モータ24の出力の算出を実行するほか、第1,第2バッテリB1,B2の状態の検知、各種センサの状態の検知等を行う。MCU46には、シート17への乗員の着座を検知するシートスイッチ158、サイドスタンド40の格納状態を検知するサイドスタンドスイッチ157、前後ブレーキレバー8の揺動に連動する前後ブレーキスイッチ155,156、クランク軸回転速度センサ26、ペダル踏力を検知する油圧センサ218、車速センサ37、バッテリ温度センサ168からの情報が入力される。また、MCU46には、乗員に各種警告を発する警告灯159が接続されている。
【0062】
MCU46は、例えば、乗員がシート17に着座し、かつサイドスタンド40が格納されているときに所定のペダル踏力が入力されると、ペダル踏力および車速に応じた補助動力を算出し、CAN通信線167を介してPDU39に駆動モータ24の駆動指令を発する。また、MCU46は、走行中の車速やペダル踏力の変化に応じて駆動モータ24の出力を調整したり、補助動力の供給中にブレーキスイッチ155,156の作動が検知されると、駆動モータ24への電力供給を停止する制御等も可能とする。
【0063】
PDU39には、ブレーカ169を介して直列接続された第1,第2バッテリB1,B2(例えば、26V/6Ah×2)から供給される主電源(例えば、48V)が入力されると共に、リレー165およびヒューズ166を介して、車載バッテリB1,B2の出力をDC/DCコンバータ164で降圧されたPDU用の制御電源(例えば、24V/1.2Ah)が入力されている。PDU39は、MCU46からの駆動指令に基づいて駆動モータ24に駆動電流を供給する。駆動モータ24には、その回転角度を検知する回転角度センサ152が近接配置されている。また、PDU39には、負荷印加手段としての負荷印加用モータ60が接続されている。
【0064】
第1,第2バッテリB1,B2には、前記したバッテリ温度センサ168およびブレーカ169が設けられている。車載バッテリB1,B2の出力は、PDU39への供給経路とは異なる経路において、制御システムの主電源(例えば、12V/16.7Ah)を得るためにDC/DCコンバータ160で降圧される。この主電源は、メインスイッチ161、メインリレー162およびヒューズ163を介して、MCU46のほか、ヘッドライト15、各種スイッチ類、尾灯装置35、ウインカ装置等の補機類153に供給される。
【0065】
図10は、本実施形態に係る二輪車の動力伝達機構の全体構成の模式図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。前記したように、ペダル22aに加えられた踏力は、クランクアーム22→クランク軸21→第1駆動側スプロケット20→第1ドライブチェーン23→第1従動側スプロケット101→第1ワンウェイクラッチ105→後輪WRの順で伝達される。この一連の伝達機構が第1動力伝達機構K1となる。
【0066】
一方、駆動モータ24の回転駆動力は、回転軸83→第1減速ギヤ84→第2減速ギヤ92→出力軸25a→第2駆動側スプロケット25→第2ドライブチェーン28→第2従動側スプロケット102→第2ワンウェイクラッチ106→後輪WRの順で伝達される。この一連の伝達機構が第2動力伝達機構K2となる。
【0067】
本実施形態では、検知されたペダル踏力が所定値を超えると、駆動モータ24によって後輪WRに補助動力を供給するように構成されている。具体的には、図11に示すように、ペダル踏力がアシスト開始閾値PT1を超えると、アシスト最大値AT1を上限として、ペダル踏力に比例して増加する補助動力を印加する。また、本実施形態において、アシスト開始閾値PT1は、車速に応じて変化するように設定されている。
【0068】
図12は、アシストを開始する踏力と車速との関係を示すグラフである。本実施形態ででは、アシスト開始のトリガとなるペダル踏力のアシスト開始閾値PTが、速度上昇に伴って徐々に減少し、所定速度(例えば、約12km/h)を超えると一定値(例えば、約2.5kgf)となるように設定されている。この設定によれば、発進時にごくわずかな踏力でアシストが開始されてしまったり、また、速度が上昇しても大きなペダル踏力を入力しないとアシストが行われないといった現象が発生することがなく、通常の自転車と同様な自然な乗車フィーリングを得ることが可能となる。
【0069】
ところで、本実施形態に係る二輪車1において、乗員が通常の速度でペダルを漕いでも後輪WRに回転駆動力が伝達されない(第1ワンウェイクラッチ105が接続されない)ほどの高い速度で走行している間は、乗員がペダルを踏んでもクランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に相対力が発生せず、ペダル踏力を検知できないという現象が発生する。このとき、乗員に対しては、ペダルの空回り感を与えることとなる。
【0070】
前記した負荷印加装置としての負荷印加用モータ60は、上記したような状態に対処するために設けられている。本実施形態に係る負荷印加用モータ60によれば、通常であればペダルの空回りが生じる高速走行時においても、第1ドライブチェーン23に逆転方向の負荷を与えることで、ペダル操作に対する負荷を発生させることが可能となる。負荷印加用モータ60は、負荷を与える必要が生じた時だけ、励磁状態を切り換えて負荷運転制御を行い、通常時には負荷が生じない無負荷運転とすることが可能に構成されている。
【0071】
図13は、負荷印加用モータ60によって与える負荷トルクとペダル回転数との関係を示すグラフである。本実施形態では、車速が所定値を超えた状態で、ペダル回転速度がペダル空回り閾値PN1を超えると、負荷最大値HT1を上限として、ペダル回転数の大きさに比例して増加する負荷を印加するように構成されている。これにより、高速走行時においてもペダルの空回り感が生じることがなく、かつペダル踏力の検知が可能となる。なお、負荷を印加するタイミングやその大きさは種々の変更が可能であり、例えば、上限値を設けずに車速の増加に伴って増加させるようにしてもよい。
【0072】
そして、ペダル踏力に対する負荷印加制御は、第1ドライブチェーン23を逆転させる方向に負荷印加用モータ60を回転させるように電力を供給するほか、負荷印加用モータ60を発電機として駆動して回生発電に伴う負荷を生じさせることで行ってもよい。この構成によれば、人力によって発電された電力で第1,第2バッテリB1,B2を充電することができ、高速走行時における消費電力を抑えることが可能となる。
【0073】
図14は、本実施形態に係る駆動モータ24のアシスト制御方法を示すグラフである。本実施形態に係る二輪車1では、通常のアシスト自転車のように、所定値を超えたペダル踏力が入力されている間のみ補助動力を供給するのではなく、ペダル踏力の山と山とをつなぐように補助動力を供給する「踏力保持制御」が可能に構成されている。
【0074】
クランク軸21は、ペダルが左右交互に踏まれることで回転するため、ペダル踏力検知機構70によって検知されるペダル踏力の波形は、図示するように、山と谷とが周期的に繰り返される形状となる。本実施形態では、先に入力されたペダル踏力のピーク値を、次にペダル踏力のピーク値が検知されるまで保持するように補助動力を供給することで、ペダル踏力波形の山と山とをつなぐような制御が行われる。
【0075】
図14において、時刻t1では、先に入力されたペダル踏力(波形A)がピーク値を越えて下がり始めたことが検知され、この波形Aのピーク値を保つための補助動力F1の供給が開始される。次に、時刻t2では、次に入力されたペダル踏力(波形B)がピーク値を越えて下がり始めたことが検知され、この波形Bのピーク値を保つための補助動力F2の供給が開始される。
【0076】
本実施形態において、この踏力保持制御は、ペダル踏力(例えば、21kgf)が所定値を超えるような登坂路および平地での加速時に実行される。また、踏力保持制御は、乗員によるブレーキ操作等が行われるまで同じ大きさの補助動力を供給する「クルーズ走行」制御と同時適用するほか、補助動力の大きさを一定とせずに、供給開始時の大きさから漸減させる「準クルーズ走行」制御と同時適用することが可能である。さらに、ペダル踏力が所定値(例えば、1.5kgf)以下の状態でクランク軸21が所定回数回転(例えば、4回転)すると、補助動力の供給を停止するように構成することもできる。
【0077】
図15は、上記した準クルーズ走行(以下、単にクルーズ走行と示すこともある)制御の詳細を示すタイムチャートである。このタイムチャートでは、上から順に、制御部46によって設定される目標車速MT、車速センサ37で検知される二輪車1の現在車速V、駆動モータ24のアシスト出力(正転方向で0〜100%)、路面の勾配状態をそれぞれ示している。
【0078】
本実施形態に係る補助動力付き二輪車は、クルーズ走行中に上り坂または下り坂にさしかかると、勾配状態の変化に応じた駆動力制御が実行可能である。具体的には、クルーズ走行中に、現在車速が所定値以上減少すると路面が上り坂になったと判定して目標車速の更新を行い、一方、クルーズ走行中に現在車速が目標車速より所定値以上増加すると路面が下り坂になったと判定して目標車速の更新を行うように構成されている。これにより、路面の勾配を検知するために加速度センサ等を用いることなく、車速センサ37の出力値に基づいて勾配状態を判定し、路面勾配に合わせた適切な駆動力制御が可能となる。
【0079】
図15を参照して、時刻t0では、ペダル踏力に応じた所定のモータ駆動力により、現在車速V1でクルーズ走行中である。本実施形態では、車速を徐々に減少させる「準クルーズ走行」が適用されており、目標車速MTは、時刻t0での目標車速MT1から一定の減速率R1で低下(例えば、−0.1km/h/sec)するように設定されている。駆動モータ24は、この減速度R1を維持するために出力20%で駆動されている。
【0080】
次に、時刻t10では、緩い上り勾配の路面にさしかかる。これに伴い、制御部46は、目標車速MTの減速率R1が維持されるように、駆動モータ24の出力を60%に増加させる。そして、時刻t11では、さらに路面の勾配が大きくなることに応じて、目標車速の減速率R1が維持されるように駆動モータ24の出力が100%に増加される。
【0081】
しかしながら、時刻t11でさしかかる上り坂では、勾配がきついため、駆動モータ24を100%の出力で駆動しても現在車速Vが減速率R1より大きな減速率R2で低下してしまう。そして、時刻t12では、現在車速Vが時刻t0での目標車速MT1より所定値以上減少する。これに伴って、制御部46は、目標車速をMT1より小さいMT2に変更する更新を行う(更新A)。この目標車速MTの更新は、例えば、現在車速Vが時刻t0での目標車速MT1より5%以上減少した場合に、現在車速Vを目標車速MTに置き換えることで行われる。
【0082】
次に、時刻t13では、さらに、車速Vが時刻t2で更新した目標車速MT2より5%以上減少したため、目標車速MT2を現在車速であるMT3に置き換える更新が行われる(更新B)。なお、時刻t12から時刻t13までの間の目標車速も、時刻t12で更新された目標車速MT2から減速率R1で低下するように設定される。
【0083】
次に、時刻t14では、車速Vがアラーム閾値SV1を下回る。このアラーム閾値SV1は、クルーズ走行の下限車速としてのクルーズ閾値SV2より少し大きい値に設定されている。そして、車速Vがアラーム閾値SV1を下回ることに伴い、制御部46は、二輪車1のインストルメントパネル等に設けられた警告灯159(図9参照)を点灯する(アラーム作動)。この警告灯159の点灯によれば、車速Vがクルーズ閾値SV2に近づいたことを乗員に報知し、二輪車1のペダルを漕ぐことを乗員に促すことができる。なお、警告灯159の警告に応じて乗員がペダルを漕いだ場合には、ペダル踏力に応じたモータ駆動力が出力されることとなる。
【0084】
時刻t15では、路面がきつい上り勾配から平地に戻る。本実施形態では、時刻t14でアラームが作動しても乗員によるペダル操作が行われなかったが、現在車速Vがクルーズ閾値SV2を下回る前に、きつい上り坂から平地走行に戻った状態を示している。この時刻t15で平地走行に戻った瞬間は、モータアシスト出力が100%であるため、二輪車1は加速を開始する。しかしながら、制御部46は、時刻t16おいて、車速Vが目標車速MT3から減速率R1で低下するようにモータアシスト出力を20%に低減するため、二輪車1が上り坂から平地に戻った際の車速Vの増加量はごくわずかとなる。
【0085】
上記したように、路面が上り坂から平地に戻った際の車速の増加が小さく抑えられることは、上り坂の途中で、時刻t12での更新Aおよび時刻t13での更新Bが行われたことによって、目標車速が現在車速に応じて大幅に低減されたことが大きく影響している。例えば、更新Aおよび更新Bが実行されない場合には、目標車速と現在車速との差が大きい状態のまま時刻t15で平地に移行することとなり、モータアシスト出力100%で加速する期間が長くなりやすい。これに対し、本実施形態では、現在車速の低下に応じた目標車速の更新を行うことにより、路面状況の変化に応じたモータアシスト出力の切り換えを素早く実行することを可能としている。
【0086】
次に、時刻t17では、路面が平地から下り坂にさしかかり、二輪車1は下り勾配による加速を開始する。これに伴い、制御部46は、目標車速MT3に対する減速率R1を維持するために駆動モータ24を駆動させる必要がなくなるため、モータアシスト出力を20%から0%に切り換える。そして、時刻t18では、現在車速Vが、時刻t13で更新した目標車速MT3より所定値以上大きくなるため、目標車速を現在車速より所定割合だけ小さいMT4とする更新が行われる(更新C)。この目標車速MTの更新は、例えば、車速Vが時刻t13での目標車速MT3より20%以上増加した場合に、現在の車速Vマイナス10%の値を目標車速MTに置き換えることによって実行される。その結果、時刻t18では、目標車速がMT3より少し大きいMT4へ更新される。
次に、時刻t19では、現在車速Vが、さらに時刻t18で更新した目標車速MT4より所定値以上大きくなるため、目標車速を現在車速より所定割合だけ小さいMT5とする更新が行われる(更新D)。
【0087】
時刻t20では、路面が下り坂から平地に戻る。この時刻t20で平地走行に戻った瞬間は、モータアシスト出力が0%であり、二輪車1は減速を開始する。しかしながら、制御部46は、車速Vが目標車速MT5から減速率R1で低下するように、時刻t21おいてモータアシスト出力を20%に復帰させるため、減速度R1より大きい減速率R3で減速する期間は、時刻20から時刻t21までのわずかな期間となる。
【0088】
なお、上記したように、路面が下り坂から平地に戻った際の車速の低減が小さく抑えられることは、下り坂の途中で、時刻t18における更新Cが行われ、さらに時刻t19における更新Dが行われることによって、目標車速が現在車速に応じて低減されたことが大きく影響している。例えば、設定C,Dが実行されない場合には、目標車速と現在車速との差が大きい状態のまま時刻t20で平地に移行するため、モータアシスト出力が0%から20%に復帰するまでの期間が長くなる。これに対し、本実施形態では、現在車速の増加に応じた目標車速の更新を行うことにより、路面状況の変化に応じたモータアシスト出力の切り換えを素早く実行することが可能となる。
【0089】
最後に、時刻t22では、車速Vがクルーズ閾値SV2を下回ることにより、クルーズ制御の終了条件が満たされ、目標車速が0(ゼロ)に切り換えられる(更新E)と共に、駆動モータ出力が0%となり、クルーズ制御が終了となる。
【0090】
なお、クルーズ制御中に、モータ駆動力によって維持されている車速を超えて車体を加速させるほどのペダル踏力が入力された場合には、新たに入力されたペダル踏力に対応した車速でのクルーズ制御を行わせることができる。
【0091】
また、車速Vがアラーム閾値SV1を下回って警告が実行されている間に、乗員がペダル踏力を入力した場合には、このペダル踏力に応じた補助動力が印加され、一方、ペダル踏力が印加されることなくクルーズ閾値SV2を下回った場合には、駆動モータ24の駆動が停止されることとなる。なお、車速Vがアラーム閾値SV1を下回った場合に実行される警告には、警告灯159の点灯や点滅のほか、ホーンやスピーカ等の作動や振動発生器等による種々の警告手段を用いることができる。
【0092】
図16は、クルーズ走行制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、クルーズ制御の実行中に適用され、かつ図15のタイムチャートに対応するものである。ステップS1では、現在車速が目標車速より5%以上減少したか否かが判定される。ステップS1で肯定判定されると、ステップS2に進み、現在車速を目標車速に設定する(図15における時刻t12の「更新A」および時刻t13の「更新B」に対応)。
【0093】
続くステップS3では、現在車速がアラーム閾値を下回ったか否かが判定され、肯定判定されるとステップS4に進む。ステップS4では、乗員にペダル操作を促すために、警告灯159の点滅等によるアラームが作動する(図15における時刻t14の「アラーム作動」に対応)。なお、ステップS1で否定判定されると、ステップS2〜S4をスキップしてステップS5に進み、また、ステップS3で否定判定されるとステップS4をスキップしてステップS5に進む。
【0094】
ステップS5では、現在車速が目標車速より20%以上増加したか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS6に進む。ステップS6では、現在車速マイナス10%を目標車速に設定する(図15における時刻t18の「更新C」および時刻t19の「更新D」に対応)。なお、ステップS5で否定判定されると、ステップS6をスキップしてステップS7に進む。
【0095】
ステップS7では、現在車速がクルーズ閾値を下回ったか否かが判定される。ステップS7で肯定判定されると、ステップS8に進んで駆動モータ24が停止され(図15の時刻t22の更新Eに対応)、一連の制御を終了する。なお、ステップS8で否定判定されると、ステップS1の判定に戻る。
【0096】
上記したように、本発明に係る補助動力付き二輪車のクルーズ制御によれば、傾斜センサを用いることなく、車速センサの出力値に基づいて、クルーズ走行中の路面の勾配変化に応じた駆動モータ出力の制御が可能となる。さらに、クルーズ走行中に現在車速が目標車速より5%以上減少すると現在車速を目標車速に設定するので、上り坂から平地に移行した際に現在車速と目標車速とが大きく離れた状態にあることがなくなり、上り坂から平地への移行後に加速を続けることを防ぐことが避けられ、スムーズにクルーズ走行に移行することができる。また、クルーズ走行中に現在車速が目標車速より20%以上増加すると現在車速マイナス10%を目標車速に設定するので、下り坂から平地に移行した際に現在車速と目標車速とが大きく離れた状態にあることがなくなり、下り坂から平地への移行後に減速を続けることが避けられて、スムーズにクルーズ走行に移行することができる。
【0097】
なお、二輪車の各部構造、クランク回転速度センサおよび車速センサの構造や配置、ペダル踏力検知機構の構造、人力動力伝達機構および電力動力伝達機構の構造、負荷印加用モータの構造や配置、負荷印加用モータの制御方法、クルーズ走行制御時および準クルーズ走行時のモータアシスト出力の大きさや、路面勾配に対するモータアシスト出力の設定、各目標車速の設定条件等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、平地走行においては、所定の車速を維持するクルーズ走行が実現されるように、減速度を伴わない目標車速の設定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…補助動力装置付き二輪車、2…車体フレーム、3…メインフレーム、21…クランク軸、22…クランクアーム、22a…ペダル、24…駆動モータ、23…第1ドライブチェーン、26…クランク軸回転速度センサ、28…第2ドライブチェーン、30…車軸、37…車速センサ、39…PDU(モータドライバ)、46…MCU(制御部)、60…負荷印加用モータ(負荷印加手段)、70…ペダル踏力検知機構、100…ワンウェイクラッチ機構、105…第1ワンウェイクラッチ、106…第2ワンウェイクラッチ、218…油圧センサ(ペダル踏力センサ)、B1,B2…第1,第2バッテリ、K…動力伝達機構、K1…第1動力伝達機構、K2…第2動力伝達機構、WR…後輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル踏力が入力されるクランク軸(21)と、
前記クランク軸(21)に入力されたペダル踏力を後輪(WR)に伝達する動力伝達機構(K)と、
前記動力伝達機構(K)に含まれ、前記ペダル(22a)の正転方向の駆動力のみを伝達するワンウェイクラッチ(105)と、
前記ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構(70)と、
前記後輪(WR)に補助動力を印加する駆動モータ(24)と、
前記二輪車(1)の車速を検知する車速センサ(37)と、
前記ペダル踏力の大きさに基づいて前記駆動モータ(24)の出力を算出する制御部(46)とを有する補助動力装置付き二輪車において、
前記制御部(46)は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速(MT)が保持または漸減されるように前記駆動モータ(24)を駆動するクルーズ走行を実行すると共に、前記車速センサ(37)により検知される現在車速(V)と前記目標車速(MT)との対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じて前記クルーズ走行中に前記目標車速(MT)の更新を行うことを特徴とする補助動力装置付き二輪車。
【請求項2】
前記目標車速(MT)の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT1)に対して現在車速が所定値以上減少すると、現在車速(V)を新たな目標車速(MT2,MT3)に置き換えることで実行されることを特徴とする請求項1に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項3】
前記目標車速(MT)の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT3)に対して現在車速(V)が所定値以上増加すると、現在車速(V)より所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速(MT4)に置き換えることで実行されることを特徴とする請求項1に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項4】
前記制御部(46)は、前記クルーズ走行中に、現在車速(V)が所定のクルーズ閾値(S2)を下回ると、駆動モータ(24)による補助動力の供給を停止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項5】
前記制御部(46)は、前記現在車速(V)が前記クルーズ閾値(S2)より大きい所定のアラーム閾値(SV1)を下回ると、警告手段(159)を作動させることを特徴とする請求項4に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項6】
前記警告手段は、警告灯(159)であることを特徴とする請求項5に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項7】
前記警告手段は、音または振動を発する機器であることを特徴とする請求項5に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項8】
前記動力伝達機構(K)は、前記クランク軸(21)に入力された踏力を前記クランク軸(21)から第1ワンウェイクラッチ(105)を介して後輪(WR)伝達する第1動力伝達機構(K1)と、前記駆動モータ(24)の回転駆動力を第2ワンウェイクラッチ(106)を介して前記後輪(WR)に伝達する第2動力伝達機構(K2)とを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項1】
ペダル踏力が入力されるクランク軸(21)と、
前記クランク軸(21)に入力されたペダル踏力を後輪(WR)に伝達する動力伝達機構(K)と、
前記動力伝達機構(K)に含まれ、前記ペダル(22a)の正転方向の駆動力のみを伝達するワンウェイクラッチ(105)と、
前記ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構(70)と、
前記後輪(WR)に補助動力を印加する駆動モータ(24)と、
前記二輪車(1)の車速を検知する車速センサ(37)と、
前記ペダル踏力の大きさに基づいて前記駆動モータ(24)の出力を算出する制御部(46)とを有する補助動力装置付き二輪車において、
前記制御部(46)は、検知されたペダル踏力のピーク値に対応する目標車速(MT)が保持または漸減されるように前記駆動モータ(24)を駆動するクルーズ走行を実行すると共に、前記車速センサ(37)により検知される現在車速(V)と前記目標車速(MT)との対応関係に基づいて路面の勾配状態を判定し、該勾配状態に応じて前記クルーズ走行中に前記目標車速(MT)の更新を行うことを特徴とする補助動力装置付き二輪車。
【請求項2】
前記目標車速(MT)の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT1)に対して現在車速が所定値以上減少すると、現在車速(V)を新たな目標車速(MT2,MT3)に置き換えることで実行されることを特徴とする請求項1に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項3】
前記目標車速(MT)の更新は、前記クルーズ走行中に、先に設定された目標車速(MT3)に対して現在車速(V)が所定値以上増加すると、現在車速(V)より所定割合だけ小さい車速を新たな目標車速(MT4)に置き換えることで実行されることを特徴とする請求項1に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項4】
前記制御部(46)は、前記クルーズ走行中に、現在車速(V)が所定のクルーズ閾値(S2)を下回ると、駆動モータ(24)による補助動力の供給を停止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項5】
前記制御部(46)は、前記現在車速(V)が前記クルーズ閾値(S2)より大きい所定のアラーム閾値(SV1)を下回ると、警告手段(159)を作動させることを特徴とする請求項4に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項6】
前記警告手段は、警告灯(159)であることを特徴とする請求項5に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項7】
前記警告手段は、音または振動を発する機器であることを特徴とする請求項5に記載の補助動力装置付き二輪車。
【請求項8】
前記動力伝達機構(K)は、前記クランク軸(21)に入力された踏力を前記クランク軸(21)から第1ワンウェイクラッチ(105)を介して後輪(WR)伝達する第1動力伝達機構(K1)と、前記駆動モータ(24)の回転駆動力を第2ワンウェイクラッチ(106)を介して前記後輪(WR)に伝達する第2動力伝達機構(K2)とを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の補助動力装置付き二輪車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−68244(P2011−68244A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220589(P2009−220589)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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