説明

走行環境認識装置および車両制御装置

【課題】 道路形状を精度よく予測できる走行環境認識装置および車両制御装置を提供する。
【解決手段】 車両制御装置は、自車前方走行路の状態を検出する走行路状態検出部9と、走行路状態検出部9の検出結果から少なくとも走行路上の物体の存在を認識する物体認識部10と、物体認識部10の認識結果に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測する道路形状予測部8と、自車の走行軌跡を予測する走行軌跡予測部2と、道路形状予測部8により予測された道路の道路端と走行軌跡予測部2により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部3と、交点演算部3により演算された交点を目標地点(衝突点)として車両の速度を制御する車両制御部5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行環境認識装置および車両制御装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両制御装置では、ナビゲーションシステムの地図データベースから取得したノード点列から前方カーブの曲率を算出し、算出したカーブ曲率に応じた速度制御を行っている。この技術に関係する一例は、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】社団法人自動車技術会 学術講演会前刷集No.54-08(P9-12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナビゲーションシステムに依存することなく道路形状を精度よく予測して欲しいとのニーズがある。
本発明の目的は、道路形状を精度よく予測できる走行環境認識装置および車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、走行路上の物体を検出して認識すると共に、認識結果に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測し、検出結果と予測結果とに基づいて自車前方走行路の道路形状を決定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、道路形状を精度よく予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両のシステム構成図である。
【図2】ステレオカメラの撮像原理を示す説明図である。
【図3】実施例1の車両制御装置の制御ブロック図である。
【図4】実施例1の車両制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の検出精度判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】白線検出点数に応じた信頼度係数の算出方法を示す図である。
【図7】白線検出点列が構成する回帰曲線の相関係数に応じた信頼度係数の算出方法を示す図である。
【図8】白線検出点列の高さのばらつきの大小に応じた信頼度係数の算出方法を示す図である。
【図9】非検出区間の白線の曲率補完方法を示す図である。
【図10】非検出区間の白線の直線補完方法を示す図である。
【図11】道路形状推定処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】ステップS31の白線補完処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】衝突点の算出方法を示す図である。
【図14】衝突点の算出方法を示す図である。
【図15】衝突点算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】白線データが3次元空間上の位置情報を持つことを利用した道路形状の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の車両制御装置を実現するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施例は多くのニーズに適用できるように検討されており、道路形状の予測精度を高めることは検討されたニーズの1つである。以下の実施例では、車両の制御精度を向上できるとのニーズにも適用している。
【実施例1】
【0009】
[全体構成]
図1は、実施例1の車両のシステム構成図である。
実施例1の車両は、ブレーキ装置としてブレーキ・バイ・ワイヤ(以下、BBW)システムを備える。コントロールユニットECUには、マスタシリンダ圧センサ101からのマスタシリンダ圧とブレーキペダルストロークセンサ102からのブレーキペダルストロークとが入力される。コントロールユニットCPUは、マスタシリンダ圧とブレーキペダルストロークとに基づき、各輪FL〜RRの目標液圧P*(FL〜RR)を演算し、油圧制御装置CUを制御する。液圧コントロールユニットHUは、油圧制御装置CUの動作に応じてマスタシリンダM/Cから各車輪FL,FR,RL,RRのホイルシリンダW/Cへブレーキ液を供給する。
【0010】
コントロールユニットECUは、ステレオカメラを構成する2つのカメラ103,104からの撮像画像と、ハンドル角センサ105からのハンドル角度と、車速センサ106からの車両速度(以下、車速)と、アクセル開度センサ107からのアクセル開度と、ヨーレートセンサ108からのヨーレートとが入力される。コントロールユニットECUは、カメラ103,104により検出された自車前方走行路の撮像画像から、自車前方走行路の道路形状を検出および予測し、自車前方走行路の道路形状と自車の走行状態とに基づいて、速度制御および乗員への警告を行う。
実施例1では、速度制御として、BBWシステムおよびエンジンEのエンジンブレーキを利用したブレーキ制御(減速制御)を実施する。また、警告としては、ディスプレイDSPによる表示およびスピーカSPKによる警報発令を実施する。
【0011】
図2は、ステレオカメラの撮像原理を示す説明図である。ステレオカメラでは、2つのカメラ103,104で同一計測点を撮像した際に、2つの撮像画像に生じる視差(見え方の違い)を用いて、三角測量の原理で計測点までの距離を求めることができる。例えば、カメラ103,104のレンズから計測点までの距離をZ[mm]、カメラ103,104間の距離をb[mm]、レンズの焦点距離をf[mm]、視差をδ[mm]とすると、計測点までの距離Z[mm]は下記の式(1)で求めることができる。
Z=(b×f)/δ …(1)
【0012】
[車両制御装置の構成]
図3は、実施例1の車両制御装置の制御ブロック図であり、この車両制御装置は、一部の構成を除き、コントロールユニットECUのCPUによって実行されるプログラムである。
実施例1の車両制御装置は、走行環境認識装置1と、走行軌跡予測部2と、交点演算部3と、加速意思検出部4と、車両制御部5とを備える。
走行環境認識装置1は、自車前方の白線または道路脇の物体を検出して存在を認識する道路状態認識部6と、道路状態認識部6の認識結果の信頼度を決定する信頼度決定部7と、信頼度決定部7により決定された道路状態認識部6の認識結果の信頼度が低い場合、道路状態認識部6の情報に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測する道路形状予測部8とを備える。
道路状態認識部6は、走行路状態検出部9と、物体認識部10とを備える。走行路状態検出部9は、上述のステレオカメラ(カメラ103,104)であり、自車前方走行路の状態を検出する。この道路状態認識部6は、撮像画像に基づいて車両の減速対象を検出する減速対象検出部11を備える。減速対象は、カーブ、交差点、障害物等である。
【0013】
物体認識部10は、走行路状態検出部9の検出結果から走行路上の物体(白線、ガードレール、標識等)の存在を認識する。
信頼度決定部7は、物体認識部10の認識結果の信頼性の高さである信頼度を決定する。
道路形状予測部8は、物体認識部10の認識結果および信頼度決定部7により決定した信頼度に基づいて自車前方走行路を予測する。
走行軌跡予測部2は、車速、ハンドル角度およびヨーレートに基づいて自車の走行軌跡を予測する。
交点演算部2は、道路形状予測部8により予測された道路端と走行軌跡予測部2により予測された自車の走行軌跡との交点(衝突点)を演算する。
加速意思検出部4は、アクセル開度に基づいてドライバの加速意思を検出する。加速意思検出部4は、アクセル開度が所定値以上の場合、加速意思有りと判定する。
車両制御部5は、交点演算部3により演算された交点を目標地点とする減速制御やドライバへの警告等の車両制御を実施する。このとき、加速意思検出部4によりドライバの加速意思が検出された場合には、減速制御を実施せず、ドライバの加速意思を優先する。
【0014】
[車両制御処理]
図4は、実施例1の車両制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、イグニッションスイッチのONを開始トリガとして開始し、イグニッションスイッチのOFFまで繰り返し実行される。
ステップS1では、イグニッションスイッチON時における車両の初期化処理を行うと共に、初期化フラグをセット(ON)し、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、システムの起動スイッチ109がONであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS1へ移行する。起動スイッチ109は、ドライバにより操作され、自車前方走行路の道路形状に応じて本ブレーキ制御を実行するか否かを選択するためのスイッチである。
ステップS3では、初期化フラグがセットされているか否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS6へ移行する。
【0015】
ステップS4では、車両制御装置の初期化処理を実施し、ステップS5へ移行する。ここでは、メモリ内に確保された画像記録用の画像メモリ領域、処理プロセスで使用するワークメモリ内に確保された閾値等の変数、検出物体情報などの記録領域を初期化する。
ステップS5では、初期化フラグをクリア(OFF)し、ステップS6へ移行する。
ステップS6では、物体認識部10において、カメラ103,104の撮像画像に基づいて白線を検出する白線検出処理を実施し、ステップS6へ移行する。なお、白線検出処理の詳細については後述する。
ステップS7では、白線検出処理により白線が検出されたか否かを判定する。YESの場合にはステップS8へ移行し、NOの場合にはステップS10へ移行する。
ステップS8では、信頼度決定部7において、白線検出の信頼度を演算し、信頼度が所定の信頼度以上である白線を検出された白線とする検出精度判定処理を実施し、ステップS9へ移行する。なお、検出精度判定処理の詳細については後述する。
ステップS9では、道路形状予測部8において、検出された白線から道路形状が推定可能であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS12へ移行し、NOの場合にはステップS10へ移行する。
ステップS10では、物体認識部10において、カメラ103,104の撮像画像に基づいて走行路に存在する駐車車両、先行車、縁石、樹木、ガードレール、標識等の立体物を検出する立体物検出処理を実施し、ステップS11へ移行する。
ステップS11では、物体認識部10において、立体物検出処理により検出された立体物の中から、縁石、ガードレール、標識等の固定物を選択(抽出)する、言い換えると、検出された立体物の中から道路形状の予測に寄与しにくい駐車車両、先行車および歩行者等を除外する立体物選択処理を実施し、ステップS12へ移行する。
【0016】
ステップS12では、道路形状予測部8において、白線、または、白線および立体物に基づいて、自車前方走行路の道路形状を推定する道路形状推定処理を実施し、ステップS13へ移行する。なお、道路形状推定処理の詳細については後述する。
ステップS13では、交点演算部3において、道路形状推定処理により推定された道路領域について、予測した自車の走行軌跡と道路端との衝突点を算出する衝突点算出処理を実施し、ステップS14へ移行する。なお、衝突点算出処理の詳細については後述する。
ステップS14では、車両制御部5において、自車前方走行路にカーブがある場合や減速対象検出部11により障害物が検出された場合、これらをディスプレイDSPに出力すると共にドライバに対し警告を行う結果出力処理を実施し、ステップS15へ移行する。なお、結果出力処理の詳細については後述する。
ステップS15では、車両制御部5において、交点演算部3により算出された衝突点や減速対象検出部11により検出された障害物に応じて車両を減速させるブレーキ制御処理を実施し、ステップS2へ移行する。なお、ブレーキ制御処理の詳細については後述する。
【0017】
以下、ステップS6の白線検出処理、ステップS8の検出精度判定処理、ステップS12の道路形状推定処理、ステップS13の衝突点算出処理、ステップS14の結果出力処理、ステップS15のブレーキ制御処理を詳細に説明する。
(白線検出処理)
白線検出処理では、カメラ103,104の撮像画像に基づいて走行路に塗られた白線を検出する。白線としては、自車の走行車線と隣接車線とを区分する区画線、自車の走行車線の中央線等を検出する。ここで、カメラ103,104の撮像画像から白線を検出する方法は、既知の様々な手法のうちいずれを用いてもよい。なお、走行路に塗られた線は白色に限らず、例えば、橙色等があるが、実施例1では、説明の便宜上、走行路に塗られた線を「白線」と称して説明する。
画像上で検出された白線は、カメラ103,104により得られた距離情報を重畳することで、3次元空間上の位置情報を持つ白線データとなる。これにより、路面勾配の推定が可能となる。
【0018】
(検出精度判定処理)
検出精度判定処理では、白線検出処理により白線と判断された領域の連続性や滑らかさ、白線と判断された領域と路面との境界の明瞭度、路面と判断される領域からのずれ、その他の要因により、当該領域の全体もしくは一部の白線としての信頼度を演算する。そして、白線が検出された領域のうち信頼度が所定の信頼度以上となる領域のみを道路形状の予測に用いる白線データとする。
例えば、画像上から白線と判断された領域が3次元空間上の路面と推定される領域に対して不自然な位置に存在する場合、当該領域を白線データから除外することで、白線認識精度を高めることができる。また、カメラ103,104から得られた距離情報から、距離情報が線状に分布している領域を抽出するなどして路面の白線と思われる領域を抽出することによっても白線認識精度を高めることができる。
【0019】
図5は、実施例1の検出精度判定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS21では、現在より1つ遠方(前方)側の白線候補点を白線候補点列に組み入れ、ステップS22へ移行する。
ステップS22では、白線情報が検出された点の数(密度)に応じて信頼度係数(信頼度係数加算値)を算出し、ステップS23へ移行する。例えば、図6(a)の例では、右側の白線検出点の数が左側の白線検出点の数よりも多いため、右側の検出精度が左側の検出精度よりも高いと判断し、右側の白線検出点の信頼度係数加算値を左側の信頼度係数加算値よりも高く設定(図6(b))。
ステップS23では、白線情報が検出された点列が構成する回帰直線もしくは回帰曲線の相関係数に応じて信頼度係数(信頼度係数加算値)を算出すると共に、ステップS22で算出した信頼度係数加算値と合計し、ステップS24へ移行する。例えば、図7(a)の例では、右側回帰曲線に対する右側の白線検出点の分散が、左側回帰曲線に対する左側の白線検出点の分散よりも小さい、すなわち、右側の白線検出点が左側の白線検出点よりも回帰曲線によりマッチしているため、右側の白線検出精度が左側の検出精度よりも高いと判断し、右側の白線検出点の信頼度係数加算値を左側の白線検出点の信頼度係数加算値よりも高く設定する(図7(b))。
【0020】
ステップS24では、白線情報が検出された点列の高さのばらつきの大小により信頼度係数(信頼度係数加算値)を算出すると共に、ステップS23で算出した信頼度係数加算値と合計して最終的な信頼度係数を算出し、ステップS25へ移行する。例えば、図8(a)の例では、右側の白線検出点の高さのばらつきが左側の白線検出点の高さばらつきよりも小さいため、右側の白線検出精度が左側の白線検出精度よりも高いと判断し、右側の白線検出点の信頼度係数加算値を左側の白線検出点の信頼度係数加算値よりも高く設定する(図8(b))。
ステップS25では、ステップS24で算出した信頼度係数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS26へ移行し、NOの場合にはステップS27へ移行する。
ステップS26では、最後に組み入れた白線候補点(同一制御周期のステップS21で組み入れた白線候補点)を白線データとして採用し、ステップS21へ移行する。
ステップS27では、最後に組み入れた白線候補点を白線データから除外し、ステップS21へ移行する。
図5のフローチャートでは、信頼度係数が閾値を下回るまで、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25→ステップS26へと進む流れを繰り返すことで、現在よりも1つ遠方側の白線候補点を白線候補点列に組み入れて行き、信頼度係数が閾値を下回ったとき、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25→ステップS27へと進み、最後に組み入れた白線候補点を白線データとして不採用とする。よって、白線データは、信頼度係数が閾値以上を維持するときの白線候補点列から構成されることとなる。言い換えると、白線データは、信頼性の低い白線検出点を除外した信頼性の高い白線検出点列のみで構成される。
【0021】
(道路形状推定処理)
道路形状推定処理では、遠方で白線が検出されなかった区間(白線データが得られなかった区間であり、以下、非検出区間ともいう。)の白線データを、近傍の白線が検出された区間(白線データが得られた区間であり、以下、検出区間ともいう。)の白線データに基づいて補完し、補完した白線データや立体物に基づいて自車前方走行路の道路形状(道路領域)を推定する。ここで、白線を左右片側のみ検出している場合は、現在もしくは直近過去に白線が両側共検出されている領域の情報から車線幅を推定し、これにより検出されてない白線位置を推定できる。
白線データの補完は、ブレーキ制御処理に用いる衝突点となる位置まで行えば充分である。しかし、衝突点は補完後(実際に白線を延長した後)でなければ算出できないため、白線をどこまで延長すればよいのかを衝突点の算出前から判断するのは困難である。このため、実施例1では、制御上、現在の段階ではカーブの存在を認識しなくてもよいと判断できるほどの距離を固定値もしくは車速に応じた値として与えておき、その距離まで延長する。
【0022】
補完の方法としては、図9に示すように、検出区間内で最遠方の部分の白線の曲率を算出し、当該曲率を用いて非検出区間の白線を補完する方法を用いることができる。ここで、曲線は検出区間の最末端部のものをそのまま用いてもよいし、検出区間の曲率を複数箇所算出し、末端部を加重して平均するようにしてもよく、特に限定しない。
または、曲率の算出に代えて、検出区間の形状に合致する曲線の方程式を算出し、この方程式によって与えられる曲線に基づいて延長してもよい。ここで、曲線を与える方程式は多項式でもよいし、特に限定しない。
また、道路の曲線は直線から緩和曲線を経て円弧に至る形状として構成されていることを前提として、検出区間を直線から緩和曲線に変化した部分とみなして緩和曲線を表す形状に当てはめ、非検出区間を当該緩和曲線の延長として補完してもよい。曲線を当てはめる方法は、得られた白線データを座標上に投影し、当該座標空間上に描かれる曲線を表す数式について当該白線データに最も合致する係数の組み合わせを最小二乗法により算出するものとする。緩和曲線として、クロソイド曲線、3次曲線、サイン半波長低減曲線を用いてもよいが、これらに限定するものではない。
また、検出区間の白線形状を2次以上の多次元式その他の数式によって表される曲線に当てはめ、当該曲線を延長する形で非検出区間を補完してもよい。この場合、検出区間の末端部が円弧形状となっている場合は、検出区間において既に緩和曲線部を終了し円弧区間に進入しているものとみなし、当該末端部の曲率にてそのまま円弧形状で補完する。ここで、図10に示すように、検出区間末端部の傾きを保持しての直線補完としてもよい。直線補完を行う場合、上記曲線補完の場合と比較して、カーブが緩やかなものと見なされるため、このような信頼性が低い状況下において、カーブに基づくブレーキ制御や警報発令といった出力の誤作動を緩和できるという効果を奏する。
【0023】
一方、白線が現在の瞬時情報として全く検出されていない場合は、過去に検出された白線の情報から道路形状予測を行う。これは、車速や進行方向から、過去に得られた白線情報やそれに基づく道路形状予測情報が、自車から見て相対的にどの程度移動したかを推定し、その結果を現在の推定道路形状として出力するものである。過去に検出されていた白線の情報を用いることにより、一時的な検出不良状態に対して道路形状予測結果が極端に変動するのを防止できる。
さらに、白線が現在および直近過去において全く検出されていない場合であっても、道路形状予測を不能とするのではなく、立体物情報のみから道路形状予測を行う。このとき、現在もしくは直近過去において白線が検出されている場合においても、当該白線の信頼度が低い場合などに立体物情報を道路形状推定に用いる。
なお、路面に存在するテクスチャを検出することで路面位置を推定し、同様の平面上に存在する特徴点の分布を検索することで路面領域を特定するようにしてもよい。この場合、路面とみなされる高さと大きく異なる特徴点が存在する領域は路面領域外と判断することで、路面領域判定を補助できる。また、雪道のように道路形状を示す特徴量が乏しい場合の対策として、路端に設置されている矢羽根やスノーポールといった路端を明示する視線誘導柱を検出し、これにより道路形状を推定するようにしてもよい。
【0024】
図11は、道路形状推定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS21は、白線を検出したか否かを判定する。YESの場合にはステップS22へ移行し、NOの場合にはステップS23へ移行する。
ステップS22では、白線のみで道路形状が見えているか否かを判定する。YESの場合には本制御を終了し、NOの場合にはステップS28へ移行する。
ステップS23では、縁石・樹木等の路端構造物を検出したか否かを判定する。YESの場合にはステップS24へ移行し、NOの場合にはステップS26へ移行する。
ステップS24では、路端構造物を結ぶ形で路端線を設定し、ステップS25へ移行する。
ステップS25では、路端線から道路形状が見えているか否かを判定する。YESの場合には本制御を終了し、NOの場合にはステップS27へ移行する。
ステップS26では、道路形状検出不可と判定し、本制御を終了する。道路形状が検出不可である場合、車両制御部5は、ブレーキ制御を実行しない。なお、ディスプレイDSPやスピーカSPKにより道路形状が検出不可である旨をドライバへ通知してもよい。
【0025】
ステップS27では、検出されている路端線の情報から、検出されていない部分の路端線の形状を予測し、本制御を終了する。
ステップS28では、縁石・樹木等の路端構造物を検出したか否かを判定する。YESの場合にはステップS29へ移行し、NOの場合にはステップS31へ移行する。
ステップS29では、白線と路端構造物との横位置のずれを算出し、路端構造物から白線を補完し、ステップS30へ移行する。
ステップS30では、補完後の白線から道路形状が見えているか否かを判定する。YESの場合には本制御を終了し、NOの場合にはステップS31へ移行する。
ステップS31では、検出されている白線の情報から、検出されていない部分の白線の形状を予測し、本制御を終了する。
【0026】
白線を検出し、白線のみで道路形状が見えている場合には、図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22へと進む流れとなり、白線の補完は行われない。
白線を検出しているが、白線のみで道路形状が見えない場合には、路端構造物を検出しているときにはステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS29へと進み、路端構造物から白線を補完する。路端構造物を検出しないとき、および路端構造物から白線を補完しても道路形状が見えない場合には、ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS31、またはステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS29→ステップS30→ステップS31へと進み、検出されている白線の情報から、検出されていない部分の白線の形状を予測する。
一方、白線を検出せず、路端構造物を検出している場合には、図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS23→ステップS24へと進み、路端構造物を結ぶ形で路端線を設定する。この路端線から道路形状が見えない場合には、ステップS27へと進み、検出されている路端線の情報から、検出されていない部分の白線の形状を予測する。
【0027】
図12は、ステップS31の白線補完処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS41では、左右の白線のうち、より遠方まで検出できている側の白線を選択し、ステップS42へ移行する。
ステップS42では、ステップS31で選択された白線の端末部の曲率を算出し、ステップS43へ移行する。
ステップS43では、ステップS32で算出した曲率を用い、検出されていない部分の白線データを補完し、ステップS44へ移行する。
ステップS44では、遠方まで検出できていない側の白線を、他方の白線の位置から車線幅分ずらした位置に補完し、本制御を終了する。
なお、道路形状推定処理は、自車の予測走行軌跡と干渉する可能性が低いと考えられる領域については、CPUの演算負荷軽減のために行わないこととしてもよい。例えば、自車が直進の姿勢を保持している場合において、正面前方に道路端が存在する場合のみを抽出するようにし、それよりも手前の左右の道路端を推定することを省略してもよい。
【0028】
(衝突点算出処理)
衝突点算出処理では、道路形状予測処理により推定された道路領域について、図13に示すように自車が進行した際に道路領域端と衝突するまでの距離dと、当該衝突点までの自車の向きと道路領域端との成す角度θを算出する。このとき、自車の進行軌跡は直線としてもよく、または現在のハンドル角度、ヨーレートの一方または両方に基づいて算出した自車の予測旋回曲率に基づく進路としてもよい。また、算出した自車の予測旋回曲率が自車の現在速度その他の要因により危険であると判断される場合に、適宜、当該旋回曲率を修正した上で用いることとしてもよい。
これにより、車両がカーブと同じ方向に旋回している場合には、衝突するまでの距離が長くなることから、不必要な警報発令やブレーキ制御介入を抑制できる。一方、カーブと反対方向に旋回している場合には、早めにまたは強い警報発令やブレーキ制御介入を行うことができる。
【0029】
または、図14に示すように、自車の進行路として直進と左右方向にそれぞれ所定の旋回曲率として進行した場合の3種類について、それぞれ、道路領域端に衝突するまでの距離d1,d2,d3と、衝突点での自車の向きと道路形状端の成す角度θ1,θ2,θ3を算出し、3種類のうち最も距離が長くなるものを最終結果として選択するようにしてもよい。図14の例では、道路形状が右カーブであるため、右旋回軌跡を描く場合の領域端までの距離d3が最も長くなるため、d3を領域端までの距離dとして採用し、このときの軌跡と領域端の成す角度θ3を角度θとして採用する。
これにより、ドライバが現在の走行状態から通常行うと予測されるハンドル操作を加味した上でも警報発令もしくはブレーキ制御介入が必要な状態か否かを判断でき、不必要な警報発令やブレーキ制御介入を抑制できる。
なお、上記左右方向にそれぞれ一定の曲率として進行した場合を想定する際、当該曲率は常に一定としてもよいし、自車の現在またはその前後のハンドル角度やヨーレートに基づき算出したものとしてもよく、その他の方法で定めてもよい。
また、道路領域とは、基本的に自車が走行する車線を示す概念であるが、白線が検出されなかった場合における推定結果など、路面領域を示す概念として扱ってもよく、限定しない。
【0030】
図15は、衝突点算出処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS51では、自車位置をx方向(横方向、右方向を正)、z方向(前後方向、前方を正)の座標系の原点(0,0)とし、ステップS52へ移行する。
ステップS52では、左右白線のx座標を取得し、ステップS53へ移行する。
ステップS53では、左白線x座標がゼロ以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS54へ移行し、NOの場合にはステップS56へ移行する。
ステップS54では、左白線の前回座標観測点と今回座標観測点とを結ぶ線分の式を算出し、ステップS55へ移行する。
ステップS55では、ステップS54で算出した線分の傾きとx=0との交点のz座標を算出し、ステップS60へ移行する。
【0031】
ステップS56では、右白線x座標がゼロ以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS57へ移行し、NOの場合にはステップS59へ移行する。
ステップS57では、右白線の前回座標観測点と今回座標観測点とを結ぶ線分の式を算出し、ステップS58へ移行する。
ステップS58では、ステップS57で算出した線分の傾きとx=0との交点のz座標を算出し、ステップS60へ移行する。
ステップS59では、左右白線のx座標を観測すべきz座標を一定値加算し、ステップS52へ移行する。
ステップS60では、交点z座標=衝突点d、線分傾き=角度θとし、本制御を終了する。
【0032】
自車走行路前方に右カーブが存在する場合には、図15のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS53→ステップS54→ステップS55→ステップS60へと進み、左白線の前回座標観測点と今回座標観測点とを結ぶ線分とx=0、すなわち自車の進路上に設定した線分との交点を衝突点dとする。
一方、自車走行路前方に左カーブが存在する場合には、図15のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS53→ステップS56→ステップS57→ステップS58→ステップS60へと進み、右白線の前回座標観測点と今回座標観測点との交点を結ぶ線分と自車の進路上に設定した線分との交点を衝突点dとする。
なお、衝突点算出処理は、カメラ103,104の撮像画像から充分な道路形状情報が得られている場合には、CPUの演算負荷軽減のために省略してもよい。
【0033】
(結果出力処理)
結果出力処理では、道路形状推定結果の出力として自車進行路と道路領域端が衝突するまでの距離dおよび両者の成す角度θを出力する。
これにより、ドライバが目視によって通常行っている道路環境の把握とそれに基づく運転操作に合致した警報発令を行うことができ、当該警報発令がドライバへ与える違和感を軽減できる。
【0034】
(ブレーキ制御処理)
ブレーキ制御処理では、まず、道路形状に応じた衝突点の適正速度を算出する。例えば、カーブの場合であれば曲率に応じてあらかじめ適正車速を設定しておくことで、道路形状に合致した車速を得られる。適正車速の算出にあたっては、カーブの形状のみならず、対向車の有無やその速度および位置、前方を走行する車両(先行車)の有無やその速度および位置、道路の見通し状況、道路端を構成する物体の状況(草か縁石であるかなど道路端逸脱の可能性)等、さまざまな要素を加味して判断する。
続いて、適正車速を目標車速として現在の車速と比較し、現在の車速が目標車速よりも高ければBBWシステムやエンジンブレーキを利用したブレーキ制御を行う、またはドライバに速度超過を警告するメッセージや音声の出力を行う。ブレーキ制御と警告を同時に行ってもよい。上述したように、ドライバの加速意思が検出された場合、すなわち、ドライバがアクセルペダルAPを踏み込んでいる場合には、当該ブレーキ制御を実施せず、ドライバの加速意思を優先させるが、警告のみを行う構成としてもよい。
一方、目標車速が現在の車速よりも高い場合には、ドライバが加速操作を行った際に加速度を通常操作時よりも向上させたり、ドライバに安全に走行できる旨のインフォメーションを行ったりしてもよい。また、目標車速が現在の車速と同等以上の場合は、ドライバがアクセルペダルAPを離している状況下において、エンジンブレーキの作動を緩和することで、通常の走行状態よりも減速度を緩和する、または減速を行わないようにしてもよい。ここで、走行抵抗等に抗して車速を維持するために、適宜エンジンEの出力を向上させる操作を行ってもよい。
【0035】
現在の車速V1を目標車速V2に遷移させるための目標減速度Gは、制御時間をtとして、下記の式(2)により得られる。
G=(V12−V22)/2t …(2)
ここで、制御時間tは、固定値としてもよいし、現在の車速V1と目標車速V2との差などの要素に応じて増減してもよい。また、安全性や乗り心地の観点から目標減速度の上限を設けてもよい。
なお、ブレーキ制御を行う場合、走行環境認識装置1により計測ないし推定された道路勾配状況に応じて、加減速度を増減させてもよい。
【0036】
図16は、白線データが3次元空間上の位置情報を持つことを利用した道路形状の判定処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS61では、白線が平面上で湾曲しているか否かを判定する。YESの場合にはステップS62へ移行し、NOの場合にはステップS63へ移行する。
ステップS62では、カーブと判定し、本制御を終了する。
ステップS63では、正面に水平でない領域を観測したか否かを判定する。YESの場合にはステップS64へ移行し、NOの場合にはステップS66へ移行する。
ステップS64では、水平でない領域が水平面との成す角度が一定以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS65へ移行し、NOの場合にはステップS67へ移行する。
ステップS65では、壁面と判定し、本制御を終了する。
ステップS66では、直線路と判定し、本制御を終了する。
ステップS67では、白線が水平でない領域上で湾曲しているか否かを判定する。YESの場合にはステップS68へ移行し、NOの場合にはステップS69へ移行する。
ステップS68では、バンク路と判定し、本制御を終了する。
ステップS69では、勾配路と判定し、本制御を終了する。
【0037】
次に、実施例1の走行環境認識装置1および車両制御装置の作用について説明する。
従来の車両制御装置としては、レーザレーダ等を用いて先行車の車速に合わせて自車の車速を制御するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が既に製品化されている。さらに最近では、上記非特許文献1にも開示されているように、ナビゲーションシステムのデータベースから取得したノード点列に基づいて自車前方のカーブを算出し、カーブで自動的に減速するACCも開発されている。
このように、自車の走行状態に加え、道路形状等の情報に基づくブレーキ制御や警報発令を実施するシステムでは、制御精度をナビゲーションシステムの地図データベースの情報に大きく依存する。このため、ノード点列から算出した曲線と実際の道路形状との誤差がある場合や、工事等により道路形状が変化している場合などには、ブレーキ制御や警報発令のタイミングが道路形状に応じた最適なタイミングと合致せず、ドライバに違和感を与える。このため、道路形状をリアルタイムかつ高精度に計測および推定する技術が求められている。
【0038】
これに対し、実施例1の車両制御装置では、ステレオカメラ(カメラ103,104)により得られた白線および立体物の位置情報から自車前方走行路の道路形状をリアルタイムに予測する走行環境認識装置1を備えるため道路形状に応じた最適なタイミングでブレーキ制御および警報発令を行うことができる。
さらに、ステレオカメラでは、道路の起伏、道路脇の立体物の種別や車線数等も識別可能な3次元情報が得られるため、道路形状を高精度に計測および推定でき、走行環境により適合したブレーキ制御を行うことができる。
また、走行環境認識装置1では、検出した白線検出点列から信頼度が低い白線検出点を除外し、信頼度が高い白線検出点列に基づいて信頼度が低い部分の白線を補完しているため、道路形状を高精度に予測できる。
【0039】
以下に、実施例1の走行環境認識装置1および車両制御装置の効果を列挙する。
(1) 車両制御装置は、自車前方走行路の状態を検出する走行路状態検出部9と、走行路状態検出部9の検出結果から少なくとも走行路上の物体の存在を認識する物体認識部10と、物体認識部10の認識結果に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測する道路形状予測部8と、自車の走行軌跡を予測する走行軌跡予測部2と、道路形状予測部8により予測された道路の道路端と走行軌跡予測部2により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部3と、交点演算部3により演算された交点を目標地点(衝突点)として車両の速度を制御する車両制御部5と、を備える。
すなわち、実施例1の車両制御装置では、走行路上の物体を検出して認識すると共に、認識結果に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測し、検出結果と予測結果とに基づいて自車前方走行路の道路形状を決定する。これにより、精度よく予測された道路形状に基づいて車両速度を制御できるため、高精度の車両制御を実現できる。
(2) 走行路状態検出部9は、2台のカメラ103,104を備えたステレオカメラであり、物体認識部10は、各カメラ103,104により撮影された撮像画像の視差δによって物体を認識する。
これにより、物体の3次元空間上の位置情報を認識できるため、坂路やバンク路等の路面勾配も考慮した車両制御を実現できる。
【0040】
(3) 走行路状態検出部9は、車両の減速対象を検出する減速対象検出部11を有し、車両制御部5は、減速対象検出部11により減速対象が検出された場合、現在の車両速度V1と目標地点の目標車速V2と制御時間tとから目標減速度Gを演算し、演算された目標減速度Gにより車両を自動的に減速させる減速制御を実施する。
これにより、高精度の減速制御を実現できる。
(4) ドライバの加速意思を検出する加速意思検出部4を備え、車両制御部5は、減速対象検出部11により減速対象が検出された場合であっても、加速意思検出部4によりドライバの加速意思が検出されたときには、減速制御を実施しない。
例えば、ドライバがアクセルペダルAPを踏んでいるときに車両を減速させた場合、ドライバに違和感を与える。そこで、ドライバに加速意思がある場合には、減速制御を実施しないことで、ドライバの意思に即した減速制御を実現できる。
(5) 物体認識部10の認識結果の信頼度を決定する信頼度決定部7を備え、道路形状予測部8は、信頼度決定部7により決定された信頼度係数が閾値以下の場合に、自車前方走行路の道路形状を予測する。
すなわち、認識結果の信頼度が高い場合には、道路形状の予測が不要であるため、この場合は道路形状の予測を行わないことで、演算負荷を軽減できる。
【0041】
(6) 道路形状予測部8は、信頼度係数が閾値以上の物体情報に基づいて道路形状を予測する。
つまり、信頼性の低い物体情報に基づいて道路形状を予測した場合、当該予測した道路形状と実際の道路形状とに乖離が生じる。そこで、信頼性の高い物体情報のみを用いて道路形状を予測することで、予測精度を高めることができる。
(7) 道路形状予測部8は、道路脇の立体物および白線に基づいて道路形状を予測する。すなわち、道路脇の立体物(縁石、樹木、ガードレール、標識等)は、通常、道路から一定の幅だけオフセットして道路と平行に配置されているため、これら道路脇の立体物から道路形状を予測することで、予測精度を高めることができる。
(8) 道路形状予測部8は、道路に塗られた白線の曲率に基づいて道路形状を予測する。
白線は道路に沿って塗られているため、白線の曲率を見ることで道路の曲率を把握でき、道路形状の予測精度を高めることができる。
【0042】
(9) 道路形状予測部8は、道路に塗られた白線の傾きに基づいて道路形状を予測する。
白線は道路に沿って塗られているため、白線の傾きを見ることで道路の傾きを把握でき、道路形状の予測精度を高めることができる。
(10) 道路形状予測部8は、進行方向前方の立体物までの距離を立体物と白線の情報に基づいて補正し、補正結果に基づいて道路形状を予測するため、道路形状を精度よく予測できる。
(11) 走行環境認識装置1は、自車前方走行路の白線または道路脇の物体を検出して存在を認識する道路状態認識部6と、道路状態認識部6の認識結果の信頼度を決定する信頼度決定部7と、信頼度決定部7により決定された信頼度が所定の信頼度以下の場合に、道路状態認識部6の情報に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測する道路形状予測部8と、を備える。
すなわち、走行路上の白線または道路脇の物体を検出して認識すると共に、信頼度の高い物体の認識結果に基づいて信頼度が低い部分の道路形状を予測するため、道路形状を精度よく予測できる。
【0043】
(12) 車両制御装置は、走行環境認識装置1と、自車の走行軌跡を予測する走行軌跡予測部2と、道路形状予測部8により予測された道路の道路端と走行軌跡予測部2により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部3と、交点演算部3により演算された交点を目標地点として車両の速度を制御する車両制御部5と、を備える。
これにより、精度よく予測された道路形状に基づいて車両速度を制御できるため、高精度の車両制御を実現できる。
(13) 走行環境認識装置1は、少なくとも自車前方走行路の白線を撮像するステレオカメラ(カメラ103,104)と、ステレオカメラにより撮像された白線の曲率または傾きに基づいて道路形状を予測する道路形状予測部8と、を備え、ステレオカメラにより撮像された画像と道路形状予測部8の予測結果とに基づいて道路形状を決定する。
これにより、白線の3次元空間上の位置情報に基づいて道路形状を決定できるため、坂路やバンク路等の路面勾配も考慮した車両制御を実現できる。
(14) 車両制御装置は、道路形状予測部8により予測された道路の道路端と走行軌跡予測部2により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部と、交点演算部3により演算された交点を目標地点として車両の速度を制御する車両制御部5と、を備え、道路形状予測部8は、車両の減速対象を検出する減速対象検出部11を有し、車両制御部5は、減速対象検出部11により減速対象が検出された場合、現在の車両速度V1と目標地点の目標車速V2と制御時間tとから目標減速度Gを演算し、演算された目標減速度Gにより車両を自動的に減速させる減速制御を実施する。
これにより、高精度の減速制御を実現できる。
【0044】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではない。
例えば、実施例1では、自車前方走行路の状態を検出する走行路状態検出部として、2つのカメラ103,104を用いた例を示したが、カメラ1つのみ、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサ等を用いた構成としてもよく、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサ等を組み合わせた構成としてもよい。例えば、単眼カメラとレーダレーザとを組み合わせ、単眼カメラで車線を検出し、レーザレーダで立体物を検出することで実施例1の走行路状態検出部と同等の構成となる。
【0045】
実施例1では、警告としてディスプレイDSPによる表示およびスピーカSPKによる警報発令を行う構成としたが、表示と警報はどちらか一方のみでもよい。なお、警告手段として、シートベルト、ブレーキペダルBP、アクセルペダルAP、ハンドル、シート等、乗員と接触する部位を振動させるアクチュエータを設けてもよい。
実施例1の車両では、カメラ103,104を車両前方に設置したが、車室前方のルームミラー近傍等に設置してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 走行環境認識装置
2 走行軌跡予測部
3 交点演算部
6 道路状態認識部
7 信頼度決定部
8 道路形状予測部
9 走行路状態検出部
10 物体認識部
103,104 カメラ(走行路状態検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方走行路の状態を検出する走行路状態検出部と、
前記走行路状態検出部の検出結果から少なくとも走行路上の物体の存在を認識する物体認識部と、
前記物体認識部の認識結果に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測する道路形状予測部と、
自車の走行軌跡を予測する走行軌跡予測部と、
前記道路形状予測部により予測された道路の道路端と前記走行軌跡予測部により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部と、
前記交点演算部により演算された交点を目標地点として車両の速度を制御する車両制御部と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記走行路状態検出部は、少なくとも2台のカメラを備えたステレオカメラであり、
前記物体認識部は、各カメラにより撮像された撮像画像の視差によって物体を認識することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記走行路状態検出部は、車両の減速対象を検出する減速対象検出部を有し、
前記車両制御部は、前記減速対象検出部により減速対象が検出された場合、現在の車両速度と前記目標地点とから目標減速度を演算し、演算された目標減速度により車両を自動的に減速させる減速制御を実施することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御装置において、
ドライバの加速意思を検出する加速意思検出部を備え、
前記車両制御部は、前記減速対象検出部により減速対象が検出された場合であっても、前記加速意思検出部によりドライバの加速意思が検出されたときには、減速制御を実施しないことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記物体認識部の認識結果の信頼度を決定する信頼度決定部を備え、
前記道路形状予測部は、前記信頼度決定部により決定された信頼度が所定の信頼度よりも低い場合に、自車前方走行路の道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御装置において、
前記道路形状予測部は、所定の信頼度以上の物体情報に基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両制御装置において、
前記物体は走行路に塗られた白線であり、
前記道路形状予測部は、前記信頼度の高い白線の曲率に基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載の車両制御装置において、
前記物体は走行路に塗られた白線であり、
前記道路形状予測部は、前記信頼度の高い白線の傾きに基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載の車両制御装置において、
前記物体は道路脇の立体物および走行路に塗られた白線であり、
前記道路形状予測部は、前記道路脇の立体物および白線に基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両制御装置において、
前記道路形状予測部は、進行方向前方の立体物までの距離を立体物と白線の情報に基づいて補正し、補正結果に基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項11】
自車前方走行路の白線または道路脇の物体を検出して存在を認識する道路状態認識部と、
前記道路状態認識部の認識結果の信頼度を決定する信頼度決定部と、
前記信頼度決定部により決定された信頼度が所定の信頼度よりも低い場合に、前記道路状態認識部の情報に基づいて自車前方走行路の道路形状を予測する道路形状予測部と、
を備えたことを特徴とする走行環境認識装置。
【請求項12】
請求項11に記載の走行環境認識装置と、
自車の走行軌跡を予測する走行軌跡予測部と、
前記道路形状予測部により予測された道路の道路端と前記走行軌跡予測部により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部と、
前記交点演算部により演算された交点を目標地点として車両の速度を制御する車両制御部と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の車両制御装置において、
少なくとも2台のカメラを備えたステレオカメラを備え、
前記道路状態認識部は、各カメラが撮影した撮像画像の視差によって物体を認識することを特徴とする車両制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車両制御装置において、
前記道路状態認識部は、車両の減速対象を検出する減速対象検出部を有し、
前記車両制御部は、前記減速対象検出部により減速対象が検出された場合、現在の車両速度と前記目標地点とから目標減速度を演算し、演算された目標減速度により車両を自動的に減速させる減速制御を実施することを特徴とする車両制御装置。
【請求項15】
請求項14に記載の車両制御装置において、
ドライバの加速意思を検出する加速意思検出部を備え、
前記車両制御部は、前記減速対象検出部により減速対象が検出された場合であっても、前記加速意思検出部によりドライバの加速意思が検出されたときには、減速制御を実施しないことを特徴とする車両制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載の車両制御装置において、
前記道路形状予測部は、所定の信頼度以上の物体情報に基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項17】
請求項16に記載の車両制御装置において、
前記物体は走行路に塗られた白線であり、
前記道路形状予測部は、前記信頼度の高い白線の曲率または傾きに基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項18】
請求項11に記載の車両制御装置において、
前記物体は道路脇の立体物および走行路に塗られた白線であり、
前記道路形状予測部は、進行方向前方の立体物までの距離を立体物と白線の情報に基づいて補正し、補正結果に基づいて道路形状を予測することを特徴とする車両制御装置。
【請求項19】
少なくとも自車前方走行路の白線を撮像するステレオカメラと、
前記ステレオカメラにより撮像された白線の曲率または傾きに基づいて道路形状を予測する道路形状予測部と、
を備え、
前記ステレオカメラにより撮像された画像と前記道路形状予測部の予測結果とに基づいて道路形状を決定することを特徴とする走行環境認識装置。
【請求項20】
請求項19に記載の走行環境認識装置と、
前記道路形状予測部により予測された道路の道路端と前記走行軌跡予測部により予測された軌跡との交点を演算する交点演算部と、
前記交点演算部により演算された交点を目標地点として車両の速度を制御する車両制御部と、
を備え、
前記道路形状予測部は、車両の減速対象を検出する減速対象検出部を有し、
前記車両制御部は、前記減速対象検出部により減速対象が検出された場合、現在の車両速度と前記目標地点とから目標減速度を演算し、演算された目標減速度により車両を自動的に減速させる減速制御を実施することを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−221909(P2010−221909A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72618(P2009−72618)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】