説明

超微小油球体を用いての局部用及び経皮用投与システム

【課題】皮膚又は粘膜を通して薬物を効率的に投与するための製薬用及び化粧用組成物の提供。
【解決手段】第1の成分として中鎖トリグリセリド油、植物油、動物油、鉱油などの油性液体、第2の成分としてリン脂質などの乳化剤、及び非イオン性アルキレンオキシドなどの非イオン性界面活性剤を含有し、約0.05〜0.5μmのサブミクロンサイズの液滴を有する組成物であり、場合によっては、さらに水性成分、分散増強剤、粘度増強剤、皮膚浸透増強剤などをさらに含有してもよい組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラッグデリバリ(投与)の分野、特にサブミクロン(超微小)の油球の形でさまざまな製薬用又は化粧用の作用物質の革新的な無刺激性の局所的組成物を塗布することによる皮ふ又は粘膜を通しての患者に対するこれらの作用物質の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
皮ふに対する、そして皮ふを介する全身的な薬剤のデリバリは、角質層という自然のバリヤによって妨げられる。クリームやローションは、皮ふに薬剤及び化粧品をデリバリ(送出し)するための古典的な賦形剤である。これらの調製物は、水中に油球が分散されている半固形の2相性調製物である。これらの球の液滴サイズは、従来の薬剤として市販されている半固形のクリーム及びローションにおいては関心事ではなかった。市販されているほとんどの薬用クリームは、5〜50ミクロンのサイズをもつ油球を含んでいる。例えば、VOLTAREN EMULGELは、顕微鏡及び光子相関分光学(Coulter N4MD)の両方の方法で確認されているように、5ミクロン以上の液滴サイズを有する。
【0003】
さらに、科学文献は、局所的に塗布される乳剤の内部油相の液滴サイズについて扱っていない。局所用クリーム又はローションの投薬形態に言及しているわずかなケースにおいて、指示されている液滴のサイズは数ミクロンから数ナミクロンの範囲内である。例えば米国特許4529,601号は、他の方法では達成できない優れた局所麻酔効果を生み出すといわれているリドカイン及びテトラカインの共融混合物に関するものである。
【0004】
EP0063870 は、MCT 油及びカルボキシビニル重合体との組合せにおける抗炎症性物質の優れた抗炎症活性と高い安全性について特許請求している。ここでも、液滴サイズは強調されていない。
EP0433132 は、精油の取込みを目的とした小胞の美容用局所施用について開示している。この特許出願に従うと、精油のさまざまのサイズの小さい液滴を形成させることも可能である。
【0005】
上述のケースは、一般に油性液滴の直径が1ミクロンをはるかに超えている古典的なマクロ乳剤の局所的使用に関する数多くの特許の一例である。同様に、調合薬の皮内浸透の増強を目的としてリポソーム調製物を利用する広範な先行技術も存在する(Egbaria & Weiner, Adv.Grug Delivery Rev.5,287 (1990)) 、しかしながら、これらの構造は水相を包み込む脂質2層構造体であることから、安定したリポソームを処方する上での固有の問題点が存在する。
【0006】
古典的な乳剤及びリポソームの両方と全く異なるものであるもう1つのタイプの薬剤担体は、通常熱力学的に安定し透明でしかも一貫して200 nm未満の粒子をもつミクロ乳剤である。(Rosans, H.L., Carallo, J.L. 及びLyons, G. B.Microemulsion Systems,第24巻、第16章、H.L.Rosano and M.Clause eds. Marcel Dekker, Inc., N.Y. (1987),P271) 。しかしながらミクロ乳剤は、脂質に対して大きな割合の界面活性剤を含んでおり、従って、過敏という問題が予想されることから皮ふへの塗布には適していない。
【0007】
EP0506197 は、ナノ粒子のサイズが50〜1000nmの間である乳化剤と少なくとも1つの脂質のナノ粒子の水性懸濁液を開示している。しかしながらここで用いられている脂質は、固形脂質か又は固形脂質の混合物のいずれかである。
【0008】
薬剤の局所的かつ経皮的な投薬及びデリバリの分野では、DMSO及びアゾンといったような薬剤の浸透の化学的増強剤を提供する上で多大な努力が払われてきた。これらの物質の多くは過敏をひき起こし、又その毒性のため望ましいものではない。従って、水性分数として提供されたとき、局所的又は経皮的使用のため皮ふを通して可溶性の低い薬剤を効果的に輸送できるようにするか又はそれを容易にするような方法及び賦形剤に対する必要性がいまだに残っている。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、単独で又は水性媒質内に分散された状態で油性賦形剤を伴う薬剤のサブミクロンサイズの液滴を含む調合薬又は化粧品の局所的塗布用の組成物に関する。液滴サイズは、1ミクロン未満であり、好ましくは約0.05〜0.5 ミクロンの範囲内にある。半固形状態は、クリームとして使用する場合に皮ふ上への投薬形態の実践的適用にとって有利である。
【0010】
特定的に言うと、サブミクロンサイズの液滴には、約0.5 〜30%の油性液体を含む第1の成分、約0.1 〜10%の乳化剤の第2の成分、そして約0.05〜5%の非イオン性界面活性剤が含まれている。これらの液滴は、乳剤の連続相を形成する水性成分の中に懸濁されている。組成物は、より大きいサイズの液滴をもつ類似の組成物に比較して増強された局所的及び/又は経皮的全身性効果を提供する。約0.1 〜0.3 μmの間の範囲内の平均液滴サイズが好ましい。
【0011】
第1の成分は標準的に、約5〜20%の量で存在し、約8〜12個の炭素の鎖の長さをもつ中鎖トリグリセリド油、植物油、鉱油、動物性油、その合成誘導体、又はその混合物といった油性液体を含んでいる。粘性組成物を形成するためには、油性液体は約20〜30%の量で存在していてよい。代替的には、ゲル化剤または増稠剤といった単数又は複数のアシュバンドを含み入れて、組成物の粘度を増大させクリームを形成することもできる。
【0012】
乳化剤は、約0.2 〜5%の量のリン脂質化合物又はリン脂質の混合物、例えばレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン又はその混合物である。界面活性剤は、約0.2 〜5%の量で、エトキシル化アルコール又はエステル化合物といった単数又は複数のヒドロキシル基を含む有機化合物の非イオン性アルキレンオキシド凝縮物であってよい。
【0013】
第1の成分は、数多くの形態のうちのいずれの形態ででも有効成分を含むことができる。単純化のため、有効成分は、その他の油性液体が必要とされないか又は混合されうるように、基本的に水不溶性の油性液体の形をしていてよい。代替的には、有効成分は、上述の油性液体の1つの中に部分的に又は完全に溶解したか又は分散した、固形でかつ基本的に水不溶性又はわずかに水溶性の物質として存在することができる。このような混合物又は分散のためには、有効成分は、0.05〜2.5 %の量で存在しうる。
【0014】
有効成分は、以下のもののうちの単数又は複数のものであると考えられる。すなわち、ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬、抗生物質、精神安定剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬、抗ウィルス薬、消毒薬、抗乾癬薬又は局所麻酔剤である。特定的には、有効成分はグロトリマゾール、ビフォナゾール、テトラサイクリン、ミコナゾール、トリアムシノロン、アンフオテリシンB、ゲンタマイシン、ヒドロコルチゾン、ヨードクスリシジン、ジフェンヒドラミン、ミノクシジル、リドカイン、テトラカイン及びクリンダマイシンである。
【0015】
組成物は、同様に、その物質性を促進するのに充分な量の分散増強剤又は、組成物に対し半固形形状を付与するのに充分な量の粘度増強剤を含むことができる。好ましい粘度増強剤は、生理学的に受容可能な高分子量の化合物である。さらに、組成物を局所的に皮ふに塗布した後皮ふを通ってのその浸透を増強するため充分な量で皮ふ浸透増強剤が付加されていてもよい。
【0016】
本発明は同様に、上述の組成物の1つを処方すること及びこの組成物を患者の皮ふに局所的に塗布することを含む、増強された局所的及び/又は経皮性全身的効果を得るための方法において、組成物がさらに大きい液滴をもつ同じ組成物に比べて増強された局所的及び/又は経皮性全身的効果を提供する方法にも関する。この方法においては、有効成分は、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、ケトチフェン、フェニトイン、フェノチアジン、シクロスポリン、シフェノキシレート、ジクロフェナック、デキサメタゾン、プロスタグランジン、ニフェジピン、ニトログリセリン、アトロピン、ベラパミル、フェンタニル、親油性ペプチド又はミコナゾールであってよい。
【0017】
この方法を皮ふ状態の治療に用いる場合、有効成分は、ビタミンA、ビタミンE、レチノイド、カロチン又は過酸化ベンゾイルであることが考えられ、これはアトピー性皮ふ炎、乾癬、アクネ(座瘡)及びその他のタイプの皮ふ炎又はウィルス、真菌又は細菌による皮ふ感染を含む皮ふ科的状態及び疾患を緩和、低減または予防するために塗布される。
【0018】
本発明は同様に、上述の組成物の1つを局所的に塗布することにより局所的炎症反応を誘発する調合薬により生成される局所的過敏を低減させるための方法にも関する。有効成分の選択に応じて、局所麻酔又は無感覚を達成するため、又は全身的無感覚を提供するためにこの方法を利用することができる。
同様に、ステロイド、ニコチン、ニトログリセリンなどといった有効成分を投与するために、閉鎖包帯又は粘着性パッチなどの用品を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に従うと、単独の水不溶性の液体薬剤又は化粧活性をもつ物質、又は水性媒質中の油性賦形剤及び/又は溶剤を伴う薬剤又は化粧活性をもつ物質のサブミクロン液滴の形で、製薬用及び化粧用組成物が提供される。これらの組成物は、局所的塗布に際しての経皮浸透及び局所的又は経皮的効果を促進する。有利には、皮ふ浸透増強剤として作用する化学的実体を、活性増強のため上述のものに付加することができる。かくして、このような化学的増強剤をこのようなサブミクロン油球と組合わせて使用している間の薬理学的効果は、それらのいずれかを単独で使用した場合よりも大きいものとなる。
【0020】
先行技術とは対照的に、本発明は、リポソームを型脂質小胞の既知の技術及び界面活性剤又は合成乳化剤が組成物の大きい割合を構成しているマクロ乳剤の既知の技術とは物理的にも化学的にも異なっているサブミクロン範囲の平均直径をもつ油球に関するものである。化学的組成に関していうと、粒子は古典的乳剤と幾分か類似しているが、本発明の細分された粒状性のため、著しく増強された皮ふ浸透が達成される。従って我々は、これらの液滴をサブミクロン乳剤油球と呼ぶことにした。
【0021】
懸濁液を形成するべく固体又は液体粒子として水性媒質の中に不溶性薬剤又は化粧活性ある物質を分散させることができる。本発明の一態様は、室温で液体であり望ましい液滴サイズ範囲をもつ水不溶性の液滴として分散させることのできる薬剤又は化粧活性のある物質に関する。そうでなければ、室温で固定で粉末又は結晶の形をしている薬剤又は化粧品にとって、油との混合が、水性懸濁状態の油性液滴を得るために予め必要とされる1段階である。
【0022】
乳剤というのは、水中油(「O/W」)型の分散であり、マクロ乳剤またはミクロ乳剤のいずれかとして定義づけできる。マクロ乳剤というのは、0.5 〜100 μmの油滴サイズをもつ濁ったどんよりした組成物であり、一般に熱力学的に不安定である。これに比べて、ミクロ乳剤は、0.005 〜0.5 μmの液滴サイズをもつ半透明乃至は透明の組成物であり、熱力学体に安定し、一般に自己乳化作用をもつ。例えば、Friberg et al. (1987) のミクロ乳剤の構造と力学、CRC Press Inc., Boca Raton, FL, P154を参照のこと。同様に、ミクロ乳剤を生成するのに必要とされる油に対する界面活性剤の割合は一般にマクロ乳剤の場合よりもはるかに高い。
【0023】
「サブミクロン」という語は、ここでは約0.05〜0.5 μm好ましくは約0.1 〜0.3 μmのサイズを意味するものとして使用される。従って、これらのサイズのサブミクロン液滴は、約0.5 μm以上の液滴サイズをもつ古典的なマクロ乳剤のものよりも小さいが、一般に、実践的な目的で約0.1 μm未満の液滴サイズを有する古典的なミクロ乳剤のものよりも大きいものとなる。
これらのサブミクロン液滴は、例えば0.45μm及び/又は0.22μmのフィルター内でのろ過により容易に殺菌でき、長期保存においてさらに安定しており、オートクレーブ内での殺菌により良く耐えることができる。
【0024】
水中油型乳剤は、コロイド粒子が乳化剤又は表面活性剤又は界面活性剤の界面薄膜によりとり囲まれた油性コアを有する状態での、水性媒質中の液滴又はコロイド粒子の分散である。本発明の明確に理解できるようにするため、以下の用語を使用する:すなわち
「水相」−液滴又はコロイド粒子が中で分散される水溶液のことを言う。
「油相」−液滴又はコロイド粒子の油性コアのことを言う。
「両親媒性相」−液滴又はコロイド粒子の油相をとり囲む乳化剤及び界面活性剤の界面薄膜のことを言う。
【0025】
本発明においては、油は、植物油、鉱油、中鎖トリグリセリド(MCT)油、すなわち炭水化物鎖が8個乃至12個の炭素を有しているトリグリセリド油、又はこのような油のうちの2つ又は3つのものの組合せであってよい。MCT 油は植物油の1成分とみなすことができるものの、これは、当該液滴内で使用するための好ましい油としての、その特殊な有用性のため、ここでは別途識別されている。さらに、MCT 油は市販されているものである。このようなMCT 油の例としては、TCR (脂肪酸の約95%が8個又は10個の炭素を有するトリグリセリドの混合物に対する、フランスのSociete Industrielle-des Oleagineaux の商品名)及びMIGLYOL810又は812 (グリセリン及びカプリル酸及びカプリン酸の混合トリエステルに対するスェーデンのDynamit Nobel 社の商品名)がある。
【0026】
植物油の例としては、大豆油、綿実油、ゴマ油及びひまし油が含まれる。鉱油は、天然の炭化水素又はその合成類似物であると考えられる。オレイン酸及びリノール酸、オレイルアルコールといった脂肪アルコール、モノオレイン酸ソルビタン及びモノー、ジー又はトリーパルミチン酸スクロースといった脂肪エステルを油成分として使用することができるが、これらはその他の上述の油ほど好ましいものではない。賦形剤油は又、動物性のものであってもよいし、或いは又、受容可能なその合成の代用物であってもよい。
【0027】
両親媒性相は、乳化剤及び界面活性剤を含む。好ましい乳化剤には、リン脂質化合物又はリン酸脂質混合物が含まれる。適切な成分には、レシチン、MONTANOL-68 、約70%のホスファチジルコリン、12%のホスファチジルエタノールアミン及び約15%のその他のリン脂質の混合物であるEPICURON120 (Lucas Meyer、ドイツ) ;約60%のホスファチジルコリン、18%のフオスファチジルエタノールアミン及び12%のその他のリン脂質を混合物であるOVOTHIN160 (LucasMeyer,ドイツ);精製リン脂質混合物;約80%のホスファチジルコリン、8%のホスファチジルエタノールアミン、3.6 %の無極性脂質及び約2%のスフィンゴミエリンを含むリン脂質混合物であるLIPOID E-75 又はLIPOID E-80 (Lipoid,ドイツ)が含まれる。精製された卵黄リン脂質、大豆油リン脂質又はその他の精製リン脂質混合物がこの成分として有用である。このリストは代表的なものであり、当業者には既知のその他のリン脂質材料も使用できることから:制限的な意味をもつものではない。
【0028】
選択された界面活性剤は、好ましくは過敏を最小限におさえるべく非イオン性ものでなくてはならず、当業者であれば、この目的のため特定の界面活性剤を日常的に選択するべく試験を行なうことができる。一般に、界面活性剤は単数又は複数のヒドロキシル基を含む有機化合物の非イオン性アルキレンオキシド凝縮物である。例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化アルコール又はそのエステル化合物又は混合物が一般に利用可能であり、当業者にとって既知のものである。
【0029】
適切な界面活性剤としては、TYLOXAPOL;POLOXAMER4070;POLOXAMER188;POLYOXYL40ステアリン酸塩;EMULFOR EL-620, POLYSORBATE80;及びPOLYSORBATE20 ならびにTWEEN (ICI American Inc., Wilmington,Delaware U.S.A.);PLURONIC F-68 (ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンの共重合体に対するドイツLudwigshafenのBAS 不在の商品名) という商品名で販売されているさまざまな化合物があるが、これらに制限されるわけではない。ここではPLURONIC F-68 及びPOLOXAMER188が好まれる。TYLOXAPOL 及びTWEEN も人体への使用のためにFDA により承認されていることから、同様に好ましいものである。
【0030】
水性成分は、乳剤の連続相であり、水、食塩水又は等張でかつpH制御された調製物を生み出すことのできるその他のあらゆる適当な水溶液でありうる。
【0031】
さらに、本発明の組成物は、防腐剤及び酸化防止剤といった従来の添加剤を含むこともできる。代表的な防腐剤としてはチメロサール、クロロブタノール及びメチル、エチル、プロピル又はブチルパラペンが含まれる。好ましい油相酸化防止剤は、α−トコフェロール又はコハク酸α−トコフェノールである。水相は同様にエチレンシアミンテトラ酢酸「EDTA」といったポリアミンカルボキシル酸又は薬学的に受容可能なその塩のキレート化剤又は酸化防止剤を含むことができる。
【0032】
薬剤、化粧品又は有効成分は、単独で又は油性賦形剤と共に、水性媒質内での望ましいサイズ範囲内の分散性を可能にするため充分な量の界面活性剤及び/又は分散及び懸濁剤と混合される。界面活性剤は、安定したサビミクロンのサイズ範囲の液滴の形で、水性媒質中での液滴の適切な分散性及び安定性を可能にする薬学的に受容可能なあらゆる界面活性剤でありうる。薬剤は、油性賦形剤と共に又は油性賦形剤を伴わずに、界面活性剤を含みうる水溶液と勢いよく混合され、薬剤及び賦形剤のサブミクロン液滴という結果をもたらす必要とあらば、望まれる液滴サイズを達成するため、高せん断ミキサー及び高圧ホモジナイザーを利用する。望ましいサブミクロン液滴サイズを達成するための代替的方法としては音波処理がある。
【0033】
皮ふに対するサブミクロン液滴のきわめて効率の良いデリバリは、半固形である投薬形態によって得られる。半固形組成物を製造するためには、数多くの方法を適用することができる。;すなわち、カルボポルといったゲル化剤を付加し一定のpHに調整すること、ポリビニルピロリドン(PVP)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC) 重合体又はセトステアリルアルコール又は、剛化;固化又は水性分散の粘度を望ましい粘稠度レベルまで増大させうるその他のワックスの付加などである。製剤の粘度を増大させるために、ヒュームドシリカ(AEROSIL 又はCABOSIL)、アルミナ、粘土又はその他の類似のコロイド粒子といった無機増稠剤を使用することが可能である。同様に、より高い粘度の組成物を達成するため開示された範囲の上限の油濃度を使用することも可能である。しかしながら、30%以上の油の使用は、望ましい液滴サイズを達成する上で問題をひき起こす。
【0034】
皮ふを通しての有効成分の浸透を増強させるために製剤の中に化学的皮ふ浸透増強剤を内含させることもできる。この点に関しては、DMSO、デシルメチルスルフォキシド、N−ドデシルピロリドン、デカノール、ドデカノール、オレイン酸などの有機酸を用いることができる。化学的増強剤及びサブミクロン液滴の組合せを用いて達成される全体的な薬理学的効果は、いずれか一方の成分を単独で用いた場合よりも大きいものである。
【0035】
本発明は、適切な界面活性剤又は乳化剤の助けをかりて、水相中に分散された独特の実体の不溶性集合体であるサブミクロン球(又は液滴)を提供する。乳化剤及び界面活性剤は、液滴のまわりに保護層を形成しかくして水中の油相の効果的な分散及び懸濁を可能にする。この層は、界面活性剤の力で極性をもつ単層である。この液滴は、生きた細胞壁を形成する2層構造体と似た2層構造体が全く形成されていないことから、小胞でもリポソームでもない。ミセルも形成され得、又存在しているが、公式中の界面活性剤及び不溶性物質のきわめて小さい分画しか説明し得ず、通常不溶性物質及び界面活性剤又は分散剤の合計質量の約1%未満という無視できるほどの量である。
【0036】
実施された実験及び光子相関分光法(Coulter N4MD) 及びレーザー回析(Coulter LS130)を用いた測定により、本発明の組成物中の液滴サイズが約0.02〜0.5 ミクロンのサイズ範囲内にあることがわかった。好ましくは、サイズ範囲は主として0.1 〜0.3 ミクロン(すなわち100 〜300 nm)の範囲内にある。
有効成分の固有の活性に応じて、その量は各々の特定の薬剤について調整されなくてはならない。
【0037】
局所的又は全身的効果を得るための局所的塗布用の本発明に従った組成物は、例えば有効成分として、ステロイド又は非ステロイド系抗炎症薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウィルス薬、抗ヒスタミン薬、抗腫瘍薬又は局所麻酔剤を含む。特定的な例としては、クロトリマゾール、ビフオナゾール、テトラサイクリン、ミコナゾール、トリアムシノロン、アンフオテリシン、ゲンタマイシン、ヒドロコルチゾン、ヨードクスリジン、シフエンヒドラミン、ミノクシジル、リドカイン、テトラカイン及びクリンダマイシンがある。
【0038】
全身性効果のためには、次のカテュリの薬剤が適切である:睡眠薬、鎮静剤、抗不安薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗炎症薬、抗真菌薬、プロスタノイド、プロスタノイド作動薬、プロスタノイド拮抗薬、鎮痛薬、ホルモン及びビタミン。特定の例としては、親油性ペプチド、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、フェノチアジン、シクロスポリン、ジフェノキシレート、フィソチグミン、タクリン、シクロフェナック、デキサメタゾン、プロスタグランジン、ニフェジピン、ニトログリセリン、アトロピン、ベラパミル、フェンタニル、親油性ペプチド、ケトチフェン、フェニトイン、ミコナゾール及びケトコナゾールがある。
【0039】
化粧用効果のためには、有効成分は例えば、ビタミンA、ビタミンE、エイコサペンタエン酸といった多価不飽和脂肪酸、レチノイド、カロチン、及び過酸化ベンゾイルなどでありうる。
粘性組成物の代わりに、本発明の液滴は、液滴、有効成分及び上に組成物を保持するためのサポートを含む1つの用品によって局所的及び経皮的に塗布されうる。このサポートには、患者の皮ふにこの用品を保持するための接着剤が含まれている。エストラジオール、ニコチン又はニトログリセリンといったステロイドを含む広範な有効成分を、一般に閉鎖包帯又は粘着性パッチの形をとることになるこの用品によって投与することが可能である。
【0040】
以下の記述においては、濃度は、全組成物の100 単位体積あたりの成分の重量濃度を表わす%によって示される。表示されている全ての濃度は、各々単独で成り立っており、累積的なものでないということを理解すべきである。しかしながら、当業者は、成分の濃度の間には何らかの依存性がある。例えば油の濃度が高くなればなるほど一般に高い濃度の乳化剤及び界面活性剤が必要とされることになる、ということを理解するはずである。
【0041】
本発明の組成物中で使用される乳剤は、約0.5 〜30%の油、約0.1 〜10%の乳化剤そして約0.05〜5%の界面活性剤を含むことができる。一般に、排水性相の濃度すなわち油相と両親媒性相の組合せ濃度を増大させると、組成物の粘度が増大する。粘性組成物を得るためには、油の濃度は約20〜30%にまで増大させることができる。前述のとおり、粘度を増大させるためのもう1つの方法は、カルボポール (Carbopol) などの薬学的に受容可能なゲル化剤又は増稠剤を付加することにある。これらの粘性組成物は、クリーム又は軟こうとして有用である。
【0042】
成分の好ましい濃度は、以下のとおりである:すなわち、約5〜20%の油;約0.2 〜5%、特に好ましくは約0.2 〜1%の乳化剤;約0.2 〜5%、特に好ましくは約0.2 〜1%の界面活性剤。粘性組成物については、約0.2 〜15%のゲル化剤又は増稠剤を含み入れることができる。
【0043】
薬剤又は化粧用作用物質(有効成分)は、組成物の約0.05〜5重量%好ましくは約0.1 〜2.5 %の量で存在する。有効成分は、それが親水性であるか疎水性であるかに応じて、油相又は水性成分の中に物理的に存在することになる。同様に、これらの組成物のpHは、有効成分の安定性に適した範囲内、ただし皮ふとの相容性のためわずかに酸性てあるか又はできるかぎり中性に近くになくてはならない。
本発明は、厳密に制限的な意味のないものとみなされるべき上述の例を参照しながら説明されている。
【実施例】
【0044】
複数の試験システムにおいて、標準的なクリーム製剤及び市販の調製物と比べて、サブミクロンサイズの液滴から成る乳剤の形で投与される薬剤の増強された局所的及び経皮的効果が、立証された。モルモットにおけるカラゲナンにより誘発された足の浮腫を利用して、抗炎症剤がテストされた。鎮静作用を表わす挙動試験を用いて、モルモットにおいて精神安定剤を評価した。さまざまな調製物の塗布の後の局所的知覚の喪失を基にして健康な人間のボランティアにおいて局所麻酔剤をテストした。
【0045】
以下に、利用したシステムとテストした製剤で得た結果をまとめた。以下のケースは、厳密に制限的意味のないものとして、一例としてみなされるべきものである。
【0046】
例1
以下のようにしてジアゼパムサブミクロンクリーム調製物を作った:すなわち、 0.5gのジアゼパムを9gの中鎖トリグリセリド(MCT) 油及び1gのレシチンと、均質な油相が達成されるまで混合する。次に、まず最初に磁気撹拌器で混合して次に高せん断ミキサー(Polytron K3000) を用いて20000RPMで5分間混合することにより、メチル及びプロピルパラベンの混合物0.1 gとPLURONICF-68を2g含む水相90mlの中に油相を分散させ、乳剤を形成させる。高圧ホモジナイザ(APV-Gaulin) の中で45〜55℃で6分間800 バールで (約10サイクル) 、乳剤のさらなる処理を行なう。その後、乳剤を室温まで冷却させ、平均液滴サイズを測定したところ120 ナノメートルであり非常に狭い分布を有し、1ミクロン以上の液滴は全く(0.5%未満) 検出されなかった。最終濃度0.3 %になるまでCARBOPOLを付加する。最終的に、水酸化ナトリウムを用いてpHを7まで上げ、半固形のサブミクロン液滴調製物が達成される。
【0047】
例2
6gのMCT 油及び3gのオレイン酸を用いて、例1をくり返し行なった。平均液滴サイズは150 ナノメートルであることがわかった。
【0048】
例3:(比較用)
液滴サイズを減少させる手順無しで、例2と同じ要領で製剤を作った。最終液滴サイズは5〜50ミクロンの間であった。
【0049】
例4:(比較)
以下のとおり、従来のジアゼパムクリームを調製した:ジアゼパム0.5 g、MCT 油9g、乳化用ワックス9g、熱湯81ml。古典的技術を使用してワックスを融解させ、油と薬剤を付加し、次に勢いよく撹拌しながら熱湯を付加した。クリームの平均液滴サイズは5〜50ミクロンであった。
【0050】
例5
最初の4例の局所的に塗布されたジアゼパムクリームの全身的安定効果を調査し、以下のとおり、ジアゼパムの全身的投与と比較した。
【0051】
材料及び方法
体重約250 gの雄及び雌のモルモットの体毛をクリーム塗布の24時間前にそり落とした。以下の製剤を塗布した:(a)ジアゼパム0.5 %−小液滴(例1);(b)ジアゼパム0.5 %−オレイン酸を伴う小液滴(例2);(c)ジアゼパム0.5 %−オレイン酸を伴う大液滴(例3);(d)ジアゼパム0.5 %、大きい液滴サイズの従来のクリームの形 (例4)。そり落とした部域すなわち各モルモットの約20cm2 の部域に各製剤を5グラムずつ塗布した。
【0052】
市販の非経口調製物も対照として以下のように使用した:(e)ジアゼパム5mg/ml(2ml入りバイアル、10mg/kgを筋内投与、及び(f)同じ調製物を皮下投与(10mg/kg)。
塗布又は注射の後の臨床的外観を検査し記録した。効果の開始及び終止時間を記録した。
【0053】
鎮静レベルを示す3つの基本的挙動試験を使用した。
(a)立直り反射:動物をあおむけにして置き、正常位に戻るのにかかる時間を記録した。3つの鎮静レベルが評点される:すなわち、低(1点)、一動物は直ちに正常位に戻る;中(2点)−正常位に戻るのに最高30秒を必要とする;重症−澡(3点)−正常位に立ち直るのに30秒以上を必要とする。
(b)ステップテスト:前足を階段上に置いた状態で、5cmの高さの階段に動物を置く。この位置を変えるための時間的間隔を各々の動物について測定した。ここでも立直り反射の評点に用いたものと同じ時間的経過を使用した。
【0054】
(c)動物を後足で立たせ、前足をそのオリの上面(高さ20cm)に置いた。この位置を変えるための時間的間隔を各動物について測定した。上述のものと同じ評点方法をここでも用いた。
(d)この研究についての鎮静状態を示すべく各動物について点数統計を計算した。
【0055】
結果は表1に示されている。局所的に塗布されたジアゼパムは、サブミクロンの液滴の形でデリバリされたときにきわめて効果的であることがわかった。全身性様の効果をこの調製物で達成することができるものの、大きい液滴の製剤形態での同一用量は効果をもたらさなかった。同様に、製剤内にオレイン酸を内含させると、活性の開始のための時間及び持続時間が縮減される。
【0056】
【表1】

【0057】
例6
PLURONIC F-68 の代わりにTWEEN-80を用いて例1をくり返し行なった。平均液滴サイズは170 ナノメートルであり、例1のものと実質的に等価の増強された精神安定効果が検出された。
【0058】
例7
PLURONIC F-68 の代わりにEMULFOR EL-620を用いて、例1をくり返し行なった。平均液滴サイズは100 ナノメートルであることがわかり、活性は例1のものに匹敵するものであった。
【0059】
例8
製剤に20gのMCT 油が含まれていた点を除いて例1を再びくり返した。平均液滴サイズは210 ナノメートルであることがわかったが、活性は、比較例4に比べて著しく増大し、例1のものと同じ位良かった。
【0060】
例9
20gのMCT 油及び1gのジアゼパムを使用した点を除いて、例1をくり返した。平均液滴サイズは250 ナノメートルであり、調製物は、比較例4のものに比べ増大した活性を示し、これは少なくとも例1のものと同じ位優れていた。
【0061】
例10
例1を再びくり返したが1gのオレイン酸を内含させた。平均液滴サイズは100 ナノメートルであり、組成物は例1のものと同じ位活性であることがわかった。
【0062】
例11
レシチンの代りにTWEEN-65を用いて例1をくり返した。平均液滴サイズは250 ナノメートルであることがわかり、製剤は例4のものよりもはるかに活性であった(35点)。
【0063】
例12
レシチンの代りにMONTANOL-68 を用いて例1をくり返し行なった。平均液滴サイズは300 ナノメートルであることがわかり、製剤は例4のものよりもはるかに活性であった(100点)。
【0064】
例13
MCT 油の代りに大豆油を用いて例1をくり返した。平均液滴サイズは180 ナノメートルであることがわかり、製剤は例1のものと同じ位活性であった(45点)。
【0065】
例14
酸化防止剤としてα−トコフェロールを付加して、例1をくり返した。平均液滴サイズは100 ナノメートルであることがわかり、製剤は例1のものと同じ位活性であった。この製剤は同様に、ニフェジピンといった酸化に敏感な薬剤を投与するのに適していることがわかった。
【0066】
例15〜16
CARBOPOLの代わりにそれぞれAEROSIL シリカ及びヒドロキシプロピルセルロース2gを含み入れ、pHを5.5 に調整して、例1を再びくり返した。各々の例についての平均溶液サイズは180ナノメートルであることがわかり、組成物は例1と同じ位活性であることがわかった。
【0067】
例17
以下の要領でインドメタシンサブミクロンクリーム調製物を作った:インドメタシン0.5 g、MCT 油17g、レシチン0.89g、EMULFOR EL-620 1.6g、CARBOPOL 1.7g及び水78ml。例1の手順に従って130 ナノメートルの平均液滴サイズを得た。
【0068】
例18:(比較)
以下の要領で従来の大型液滴サイズのインドメタシンクリームを調製した;インドメタシン0.5 g、MCT 油15g、乳化用ワックス9g、水75ml。組成物を例2の通りに調製した。平均液滴サイズは5〜50μmであることがわかった。
【0069】
例19
例17−18の局所的に塗布されたインドメタシンクリームの局所的抗炎症効果を調査し、その抗炎症効果と全身的投与の関係について比較した。
動物及び材料
(a)モルモット(250g)
(b)サブミクロンクリーム形状のインドメタシン0.5 %(例17)、
(c)従来のクリーム形状のインドメタシン0.5 %(例18)、
(d)溶液状のインドメタシン0.5 %。
【0070】
研究手順
(a)全ての動物は後足に0.1 mlのカラゲナン0.1 %の注射を受けた。注射部域から測定値を読取り、これを最高5時間追加調査した。
(b)上述のクリームをカラゲナン投与部位に投与し、インドメタシン溶液をカラゲナン投与より15分前に筋内投与した。
(c)足の周囲を再び測定し、異なる処置についてサイズ変化を比較した。体積変化は、体積変動測定計(プレチスモメータ)(Ugo, Basel)により測定した。
【0071】
表2に示された結果は、サブミクロン液滴クリームの形でのインドメタシンの局所的塗布が、カラゲナン注射によってひき起こされた浮腫を軽減させる上で最も効果的であり、大きい液滴のインドメタシンクリーム又は同用量を筋内投与した場合よりもさらに効果的であったことを立証している。
【0072】
【表2】

【0073】
例20
以下の要領でリドカインサブミクロンクリーム調製物を作った;リドカイン4g、MCT 油6.5 mg、リシチン0.8 g、EMULFOREL-620 1.5g、水78ml及びCARBOPOL 1.7g。ここでも又、手順は例1及び17と同じであった。平均液滴サイズは160nm であることがわかった。
【0074】
例21:(比較)
リドカイン4g、MCT 油5.5 g、乳化用ワックス8g、石油14g、水69mlを用いることを除いて、例3にあるように、従来の大きい液滴サイズのリドカインクリームを調製した。平均液滴サイズは50ミクロン以上であった。
【0075】
例22
小さい液滴サイズの共融局所麻酔剤を以下の要領で調製した:2.2 gのリドカイン、2.2 gのテトラカイン、2gのPLURONICF-68、89gの水、及びカルボポル4.5 g。調製手順は、例1にあるとおりであり、pHは7.5 に調整され、平均液滴サイズは250 ナノメートルであることがわかった。
【0076】
例23:(比較)
従来の大きい液滴サイズの共融局所麻酔剤を以下のように調製した。液滴サイズを縮小させるための手順無しで、例22の場合と同じ製剤を調製した。最終的液滴サイズは20〜100 μmの間であることがわかった。
【0077】
例24
例20〜23の局所的に適用されるリドカインクリームの局所麻酔効果を調査し、比較した。4人の男性ボランティアの前腕に各々の調製物を塗布し、経時的な局所麻酔の度合を監視した。鋭い針を用いて穏やかに触れ、隣接する(未処置の)部域の感受性を塗布部位と比較して試験対象の調製物の有効性を見積った。ボランティアについて実験は盲目式のものであった。塗布部位での感受性に対し1〜4の強度点数が与えられ、平均投薬形態性能を計算した。結果は表3に示されている。
【0078】
【表3】

【0079】
これらのデータは、乳化用ワックスのレギュラークリーム(すなわち50ミクロン以上の液滴サイズをもつもの)の中又は油質基材の中の単独のリドカインが局所麻酔剤として有効でなかったことを示している。しかしながら、リドカインの小さい液滴サイズの調製物は、局所麻酔を提供し、非常に貧弱であったより大きな液滴サイズよりも優れた性能を示した。さらに、小さい液滴サイズの共融混合物は、同じ製剤で大きい液滴サイズの場合に比べ、表4に示すようにより優れた性能を示した。
【0080】
【表4】

【0081】
例25
以下の要領で、ジクロフェナックサブミクロンクリームを調製した:油相−ジクロフェナックジエチルアンモニウム12.2g、MCT 油170 g、LIPOID E-80 30g、コハク酸α−トコフェロール0.4 g、水相−EDTAニナトリウム塩1g、EMULFOR EL-620 25 g、グリセロール17.5g、防腐剤(メテル及びプロピルパラベン)0.5g、1000gに至るまでの逆浸透精製水。
【0082】
組成物を以下のとおりに調製した。まず、磁気撹拌器で5分間、次にひきつづき高速、高せん断ミキサー(Polytron K3000) で5分間3000RPM で、油相と水相を組合わせることにより、乳剤を調製した。得られた乳剤を、高圧ホモジナイザ (APV-Gaulin) により800バール (6分間、約10サイクル)で、45〜55℃で処理した。均質化の後、乳剤を室温まで冷却させ、粒度分布を決定し、次に乳剤を0.45ミクロンの孔径のフィルター(Uni modal) を通してろ過した。8サイクル/800 バール後のサイズは120 ±30nmでありろ過前のダストは2〜4%の範囲内にある。
【0083】
クリーム製剤形態を、次の要領で調製した;すなわち、乳剤1000gに対して、精製水中で予め膨潤させた50gの10%CARBOPOL940 を付加し、2〜3分間5〜10000RPMでPoly-tron K3000 装置を用いて徹底的に混合した。純粋トリエタノールアミンを、pHを6〜6.5 に調整するよう混合しながら滴下により付加した。同じ条件で最終的にPolytron K3000装置で混合すると、(1%のジクロフェナックナトリウムに等しい)1.16%のDiclofenac DEAを含むクリームが生成される。pH、粘度及び薬剤含有量の試験後、クリームをアルミニウムチューブに充てんする。
【0084】
例26
異なる液滴サイズの製剤中のジクロフェナックによる局所的浮腫の治療について評価した。カラゲナン足浮腫モデル(モルモット)を用いて標準的調製物に対してジクロフェナックのサブミクロン液滴を含む製剤(例25)を比較した。後足にカラゲナン(0.1%溶液0〜1ml)を注入した(時間=0で)。時間0での浮腫の出発サイズを100 %レベルとして考慮した。浮腫の表面をカラゲナン注入の直後に、試験用調製物で処理した:
【0085】
a)サブミクロン乳剤(90〜150nm の液滴) 中の1.16%のジクロフェナックジエチルアンモニア(1.0%のジクロフェナックナトリウムと等価)(例25)
b) VOLTAREN EMULGEL (Ciba-Geigy) −既知の活性をもつ基準組成物として、
c) 大きな液滴状 (5〜10μm)の1.16%のジクロフェナックジエチルアンモニア。
体積変動測定計(Ugo, Basel) を用いて体積変化を行ない、結果は図1に示されている。
【0086】
例27
以下の成分からピロキシカム小液滴クリームを調製した:ピロキシカム0.25g、 MCT油9.5 g、レシチン0.5 g、Tween-800.5 g、水38.4g、カルボポル0.2 g、トリエチルアミン0.2 g。例1にあるとおりに組成物を調製した。平均液滴サイズは127nm であることがわかった。
【0087】
例28:(比較)
従来のピロキシカム(大液滴)クリームを以下のように調製した:ピロキシカム0.178 g、MCT 油5g、セトステアリルアルコール2.7 g、ドデシル硫酸ナトリウム0.3 g、水27g。ドデシル硫酸ナトリウムとセトステアリルアルコールを一緒に融解させた後、MCT 油を付加した。ピロキシカムを準備した高温油相と混合させ、次に27mlの沸とう水を付加し、徹底的に混合した。室温まで冷却した後、クリームを得た。
【0088】
例29
異なる乳剤製剤中のピロキシカムによる局所的浮腫の治療について研究した。例26のカラゲナン足浮腫モデル(モルモット)を用いて、ピロキシカムのサブミクロン液滴(例27)を標準クリーム(例28)に比較した。図3に示されているように、例27のクリーム中のピロキシカムは、比較的低い抗炎症活性を示し、一方例26の製剤ははるかに効果的であることがわかった。
【0089】
例30
以下の成分から局所的ナプロキセンサブミクロンクリームを、以下の成分から調製した:ナプロキセン1g;Miglyol810 17g;LIPOID E-80 3g;コハク酸α−トコフェロール0.04g;EMULFOREL-620 2.5g;グリセロール1.75g;EDTA二水化ニナトリウム0.1g;CARBOPOL940 、0.5 g;トリエタノールアミン0.5 g;及び100 gになるまでの精製水。油相を形成するべく、完全に溶解するまで45℃で、ナプロキセン、MIGLYOL810, LIPOID E-80 及びコハク酸α−トコフェロールを混合した。
【0090】
水中でEMULFOR 、グリセロール及びEDTAを溶解させ、5分間約20000RPMで高せん断ミキサー(Polytron K3000)内で油相と徹底的に混合させて乳剤を形成させた。約100 〜150nm の液滴サイズまで8サイクル、800 バールで高圧ホモジナイザー (APV-Gaulin) の中で乳剤のさらなる処理を行なう。0.45ミクロンのフィルターを通してのろ過の後、予め膨潤させたゲルの形をしたCARBOPOL (水中10%) を付加し、5000RPM で2分間、Polytron装置内で混合した。最終pH5.5 〜6.5 に至るまでトリエタノールアミンを付加し、均質なクリームが得られるまでPolytron装置内で製剤を混合した。
【0091】
例31
異なる製剤形態でのナプロキセンによる局所的浮腫の処置について研究した。以下の製剤形態について例26及び29のカラゲナン足浮腫モデル(モルモット)を用いて標準クリームに対し、ナプロキセンのサブミクロン液滴(例30)を比較した:
a)局所的に塗布されるサブミクロン乳剤(例30と同様100 〜150nmの液滴) 中のナプロキセン。
b)局所的に塗布される従来のクリーム(20ミクロン以上の液滴)中のナプロキセン。
結果は図3に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、さまざまなジクロフェナッククリームでの治療中の経時的な浮腫に対する効果に関するグラフ表示である;
【図2】図2は、さまざまなジクロフェナッククリームでの治療中の経時的な相対的差異のグラフ表示である;そして
【図3】図3は、さまざまなナプロキセンクリームでの治療中の経時的な水腫に対する効果のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.5 〜30%の油性液体の第1の成分、約0.1 〜10%の乳化剤の第2の成分及び0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を含むサブミクロンサイズの液滴を含む調合薬又は化粧品の局所的塗布のための組成物において、この液滴が0.05〜0.5 μmの範囲内の平均液滴寸法を有する組成物であって、より大きなサイズの液滴をもつ同じ組成物に比較して増強された局所的及び/又は経皮性の全身的効果を提供する組成物。
【請求項2】
平均液滴サイズが約0.1 〜0.3 μmである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1の成分が約8〜12個の炭素という鎖の長さをもつ中鎖トリグリセリド油、植物油、鉱油、動物性油、その合成誘導体、又はその混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第1の成分が約20〜30%の量で存在して粘性組成物を形成する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
乳化剤がリン脂質化合物又はリン脂質の混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
リン脂質がレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン又はその混合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
乳化剤が約0.2 〜5%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤が、単数又は複数のヒドロキシル基を含む有機化合物の非イオン性アルキレンオキシド凝縮物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤がエトキシル化アルコール又はエステル化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤が約0.2 〜5%の量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
0.5 〜5%の量で有効成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
第1の成分が、基本的に水不溶性の油性液体の形の有効成分を含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
有効成分がもう1つの油性液体と共に存在している、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
第1の成分が、油性液体内に少なくとも部分的に溶解又は分散した、固形でかつ基本的に水不溶性又はわずかに水溶性の物質の形をした有効成分を含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
液滴が乳剤の油相を形成している状態で水中油型乳剤の連続相を形成する水性成分をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
組成物の均質性を促進するのに充分な量で分散増強剤をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
組成物に対し半固形の形状を付与するのに充分な量で粘度増強剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
粘度増強剤が、生理学的に受容可能な有機又は無機増稠剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
粘度増強剤が、高分子量の有機化合物を含む有機増稠剤であるか又はコロイド粒子を含む無機増稠剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が局所的に皮ふに塗布された後、皮ふを通しての組成物の浸透を増強するのに充分な量で皮ふ浸透増強剤をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
皮ふ浸透増強剤がDMSO、デシルメチルスルフオキシド、N−ドデシルピロリドン、デカノール、ドデカノール又は有機酸である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記活性成分が少なくとも1種の親油性ペプチドである、請求項11に記載の組成物。
【請求項23】
有効成分が少なくとも1つのステロイド、非ステロイド系抗炎症薬、抗生物質、精神安定剤、鎮静剤、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬、抗ウィルス薬、消毒薬、抗乾癬薬、免疫抑制剤、血管拡張剤、血管収縮剤又は局所麻酔剤である、請求項11に記載の組成物。
【請求項24】
有機成分がクロトリマゾール、ビフォナゾール、テトラサイクリン、ミコナゾール、トリアムシノロン、アンフォテリシンB、ゲンタマイシン、ヒドロコルチゾン、ヨードクスリジン、ジフェンヒドラミン、ミノクシジル、リドカイン、テトラカイン及びクリンダマイシンである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項11に記載の組成物を処方すること及び患者の皮ふにこの組成物を局所的に塗布することを含む、増強された局所的及び/又は経皮性の全身的効果のための方法において、組成物がより大きいサイズの液滴をもつ同じ組成物と比較して増強された局所的及び/又は経皮性の全身的効果を提供する方法。
【請求項26】
組成物を処方する前に、有効成分を親油性ペプチド、プロスタノイド、プロスタノイド作動薬、プロスタノイド拮抗薬、多価不飽和脂肪酸又は抗真菌剤となるよう選択することがさらに含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
組成物を処方する前に、有効成分をバルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、ケトチフェン、フェニトイン、フェノチアジン、シクロスポリン、フィトチグミン、タクリン、ジフェノキシレート、シクロフェナック、デキサメタゾン、プロスタグランジン、ニフェジピン、ニトログリセリン、アトロピン、ベラパミル、フェンタニル、ミコナゾール又はケトコナゾールとなるよう選択することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
有効成分がビタミンA、ビタミンE、エイコサペンタエン酸、レチノイド、カロチン又は過酸化ペンゾイルとなるよう選択することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
請求項11に記載の組成物を処方すること及びこの組成物を患者の皮ふに局所的に塗布することを含む、患者の皮ふの治療のための方法において、組成物が、アトピー性皮ふ炎、乾癬、アクネ(座瘡)及びその他のタイプの皮ふ炎又はウィルス、真菌又は細菌による皮ふ感染を緩和、減少又は予防するべく、さらに大きなサイズの液滴をもつ同じ組成物に比べて増強された局所的及び/又は経皮性の全身的効果を提供している、治療方法。
【請求項30】
請求項11に記載の組成物を処方すること及び患者の皮ふにこの組成物を局所的に塗布することを含む、局所的な炎症反応を誘発する調合薬によって生成される局所的過敏を低減させるための方法において、組成物が、さらに大きいサイズの液滴を有する同じ組成物に比べて増強された局所的及び/又は経皮性の全身的効果を提供している方法。
【請求項31】
請求項11に記載の組成物を処方すること及びこの組成物を患者に局所的に塗布することを含む、局所麻酔又は無痛覚を達成するため又は全身無痛覚を提供するための方法。
【請求項32】
請求項11に記載の組成物及び上に組成物を保持するためのサポートを含む、有効成分を局所的かつ経皮的に塗布するための用品において、このサポートには患者の皮ふに用品を固定するための接着剤が含まれている用品。
【請求項33】
有効成分がステロイド、ニコチン又はニトログリセリンである、請求項32に記載の用品。
【請求項34】
閉鎖包帯又は粘着性パッチの形をした請求項32に記載の用品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−8700(P2006−8700A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232365(P2005−232365)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【分割の表示】特願平5−516836の分割
【原出願日】平成5年3月25日(1993.3.25)
【出願人】(505261601)ファーモス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】