説明

車両のフロントエンドモジュール構造

【課題】ラッチ機構を車両外部から不正操作することによってフロントフードが開けられることによる車両盗難を防止すること。
【解決手段】車両前後方向に延設されたサイドフレームMの前端部に取付けられ、少なくともラジエータコア61を支持する樹脂製のフロントエンドモジュール枠体11と、フロントエンドモジュール枠体11の上部に装着され、フロントフードFを閉状態にロックするラッチ機構40と、ラッチ機構40に連結され、ラッチ機構40を車室側からアンロック作動させるためのラッチケーブル50と、ラッチ機構40が外部から不正操作されることを防止すべくフロントエンドモジュール枠体11に一体に設けられた不正操作規制部21,30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードルームの前端部に取り付けられ、ラジエータやラジエータファン、フロントフードのラッチ機構等を支持する車両のフロントエンドモジュールに関し、特に車室外からのラッチ機構の不正操作を防止することで盗難防止を図るものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフードルーム内前端部には、ラジエータコアやラジエータファンが収納されており、それらを支持するサポート部材が設けられている(例えば、特許文献1〜2参照)。このサポート部材にラジエータコア等と共にラッチ機構を一体的に支持し、フードルーム内に取り付けるための車両のフロントエンドモジュールが開発されつつある。
【特許文献1】特開2005−254874号公報
【特許文献2】特開2005−161979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来のフロントエンドモジュール構造では、次のような問題があった。フロントフードと車両本体との隙間から指や道具を入れてラッチケーブルを引っ張ってラッチ機構を操作し、フロントフードを開けられる虞があった。また、フードルームの下側より腕を入れてフードルーム内部からラッチ機構を操作してフロントフードを開けられる否定虞もある。フードルームのフロントフードが開けられるとバッテリ端子を外し、イモビライザ(盗難防止装置)を作動させないようにして車両を盗難される可能性があった。
【0004】
そこで本発明は、ラッチ機構の車両外部からの不正操作によってフロントフードが開けられることによる車両盗難を防止することができる車両のフロントエンドモジュール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する第1の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、車両の左右両側部において、車両前後方向に延設されたサイドフレームの前端部に取付けられ、少なくともラジエータコアを支持する樹脂製のフロントエンドモジュール枠体と、前記フロントエンドモジュール枠体の上部に装着され、フロントフードを閉状態にロックするラッチ機構と、前記ラッチ機構に連結され、前記ラッチ機構を車室側からアンロック作動させるためのラッチケーブルと、前記ラッチ機構が外部から不正操作されることを防止すべく前記フロントエンドモジュール枠体に一体に設けられた不正操作規制部とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記の課題を解決する第2の発明(請求項2に対応)に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、前記第1の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造において、前記不正操作規制部は、前記ラッチ機構に隣接して前記フロントエンドモジュール枠体の上面から突出され、前記ラッチケーブルを車両前方側から覆うと共に前記フロントエンドモジュールと前記フロントフードとの隙間を塞ぐ第1邪魔板部を有することを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決する第3の発明(請求項3に対応)に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、前記第1の発明又は第2の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造において、前記第1邪魔板部は、その後面に前記ラッチケーブルを保持する爪部を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決する第4の発明(請求項4に対応)に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、前記第1の発明乃至第3の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造において、前記不正操作規制部は、前記ラッチ機構を車両後方側から覆う第2邪魔板部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、フロントエンドモジュール枠体上部にラッチ機構の不正操作を防止する不正操作規制部を備えたので、ラッチ機構の車両外部からの不正操作によってフロントフードが開けられることによる車両盗難を防止することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、不正操作規制部がラッチケーブルを車両前方側から覆いフロントエンドモジュールとフロントフードとの隙間を塞ぐ第1邪魔板部を備えているので、ラッチケーブルをフロントフードと車両本体との隙間から手や道具を入れて不正操作をすることを確実に防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ラッチケーブルが邪魔板部の後面に保持されることで、ラッチケーブルを隠すことができ、不正操作の防止効果がより確実となる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、不正操作規制部がラッチ機構を車両後方側から覆う第2邪魔板部を備えているので、ラッチ機構をフロントフード内部から不正操作することを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造の一実施形態について、図1から図5を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る車両のフロントエンドモジュール10が組み込まれた自動車のフードルームRの要部を前方から示す斜視図、図2は、フードルームRの要部を後方から示す斜視図、図3は車両用フロントエンドモジュール10の要部を拡大して示す斜視図、図4は車両用フロントエンドモジュール10に組み込まれたラッチ機構40を示す斜視図、図5は車両用フロントエンドモジュール10に組み込まれたラッチケーブルを示す斜視図である。なお、これらの図中二点鎖線Bはフロントバンパ、Fはフロントフード、図中実線Mはサイドフレーム、Nはバンパリンフォースを示している。
【0015】
フロントエンドモジュール10は、バンパリンフォースNの後方で車両の左右両側部において前後方向に延設されるサイドフレームMの前端部に、その側部をボルト等により固定されて支持され、フードルームR内の前端に配置されている。
【0016】
フロントエンドモジュール10は、樹脂製のフロントエンドモジュール枠体11を備えており、このフロントエンドモジュール枠体11にコンデンサ60、ラジエータコア61、ラジエータファン62等が一体的に取り付けられている。
【0017】
フロントエンドモジュール枠体11の上部には、フロントフードFをロックするためのラッチ機構40が取り付けられている。ラッチ機構40は、フロントエンドモジュール枠体11上面略中央部のラッチ機構取付部20にラッチ機構40のロックを解除する操作レバー41が車両前方側にくるように固定されている。このラッチ機構40には、ラッチ機構40を車室(不図示)側からアンロック操作するためのラッチケーブル50が連結されており、ラッチケーブル50はフロントエンドモジュール枠体11上部に保持されている。
【0018】
また、フロントエンドモジュール枠体11上部のラッチ機構40に隣接する位置には、フロントエンドモジュール枠体11上面から上方に突出される板状の第1邪魔板部30が一体に設けられている。第1邪魔板部30は、ラッチケーブル50の車両前方側に配置されてラッチケーブル50の前方を覆うと共にフロントフードFとフロントエンドモジュール10との隙間を塞ぐように車幅方向に延設されている。第1邪魔板部30の後面側には爪部31が形成されており、この爪部31によってラッチケーブル50が第1邪魔板部30後面に保持される構成となっている。
【0019】
また、ラッチ機構取付部20は、フロントエンドモジュール枠体11に一体に設けられて斜め上前方に突出される第2邪魔板部21を有している。第2邪魔板部21は、ラッチ機構40を車両後方側から覆うように構成されており、この第2邪魔板部21の前面側にラッチ機構40がボルト等により固定されている。第2邪魔板部21には、フロントフードFのストライカ(不図示)が挿入される切欠部22が形成されており、ストライカはラッチ機構40に係合することとなる。
【0020】
なお、本実施例の第1邪魔板部30および第2邪魔板部21が課題を解決するための手段に記載する不正操作規制部である。
【0021】
このように構成された車両のフロントエンドモジュール10構造では、フードルームRの下側より腕を入れ、フードルームR内部からラッチ機構40を操作しようとしても、第2邪魔板部21によりラッチ機構40が覆われているので、触われず不正操作できない。このため、ラッチ機構40が直接操作されることによりフロントフードFを開けられることを防止できる。また、フロントフードFとフロントバンパBとの隙間から指や道具等を入れてラッチケーブル50を引っ張ってラッチ機構40を操作しようとしても、ラッチケーブル50の前方側に第1邪魔板部30が設けられてラッチケーブル50が隠されるので、ラッチケーブル50を不正操作することができない。このため、ラッチケーブル50を引っ張りラッチ機構40が操作されることによりフロントフードFを開けられることを防止できる。
【0022】
上述したように、本実施の形態に係る車両用フロントエンドモジュール10構造によれば、第1邪魔板部30、第2邪魔板部21の不正操作によりフードルームRのフロントフードFを開けられることを防止することができ、車両盗難を未然に防ぐことができる。
【0023】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用フロントエンドモジュールが組み込まれたエンジンルームの要部を示す斜視図。
【図2】同フードルームRの要部を後方から示す斜視図
【図3】同フロントエンドモジュールの要部を拡大して示す斜視図。
【図4】同フロントエンドモジュールに組み込まれたラッチ機構を示す斜視図。
【図5】同フロントエンドモジュールに組み込まれたラッチケーブルを示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
10…フロントエンドモジュール、11…フロントエンドモジュール枠体、20…ラッチ機構取付部、21…第2邪魔板部(不正防止規制部)、、30…第1邪魔板部(不正防止規制部)、31…爪部、40…ラッチ機構、41…操作レバー、50…ラッチケーブル、61…ラジエータコア、R…フードルーム、F…フロントフード、M…サイドフレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右両側部において車両前後方向に延設されたサイドフレームの前端部に取付けられ、少なくともラジエータコアを支持する樹脂製のフロントエンドモジュール枠体と、
前記フロントエンドモジュール枠体の上部に装着され、フロントフードを閉状態にロックするラッチ機構と、
前記ラッチ機構に連結され、前記ラッチ機構を車室側からアンロック作動させるためのラッチケーブルと、
前記ラッチ機構が外部から不正操作されることを防止すべく前記フロントエンドモジュール枠体に一体に設けられた不正操作規制部とを備えることを特徴とする車両のフロントエンドモジュール構造。
【請求項2】
前記不正操作規制部は、前記ラッチ機構に隣接して前記フロントエンドモジュール枠体の上面から突出され、前記ラッチケーブルを車両前方側から覆うと共に前記フロントエンドモジュールと前記フロントフードとの隙間を塞ぐ第1邪魔板部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両のフロントエンドモジュール構造。
【請求項3】
前記第1邪魔板部は、その後面に前記ラッチケーブルを保持する爪部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のフロントエンドモジュール構造。
【請求項4】
前記不正操作規制部は、前記ラッチ機構を車両後方側から覆う第2邪魔板部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の車両用フロントエンドモジュール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−106329(P2007−106329A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300861(P2005−300861)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】