説明

車両の前部構造

【課題】本発明は、衝突を受けた場合に、フロントフードパネルの衝撃吸収性を高めるとともに、エンジンルーム内の補機部品を保護することを目的としている。
【解決手段】このため、車両前部にフロントバンパと左右一対のヘッドランプを配設し、後方にダッシュパネルで車室と区画され、上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、エンジンルームの車両前面部にヘッドランプ間を車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、エンジンルームにパワートレインを出力軸が車両幅方向に向くように搭載し、パワートレイン上方の空間に各種補機部品を配設した車両の前部構造において、フードメンバを車両上下方向でヘッドランプ頂部に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で補機部品上面をフードメンバ上面から水平方向に延びる仮想水平線と略同一か、それより低い位置に配置し、仮想水平線より上方に衝撃吸収空間を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の前部構造に係り、特に車両のエンジンルームの上方を覆うフロントフードパネルに衝撃を受けた際のフロントフードパネルの衝撃吸収性の向上やエンジンルーム内の補機部品の保護を図る車両の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両は前部に衝撃を受けた場合に、この衝撃を吸収し易い構造であることが求められている。
車両の前部にはフロントバンパやヘッドランプが配置され、これらの後方に車室とダッシュパネルとで区画されるエンジンルームが形成されている。
エンジンルームは車両幅方向両側をフェンダパネルに覆われるとともに、車両の上方をフロントフードパネルに覆われている。
また、前記エンジンルームの車両前面部には、ヘッドランプの間を車両幅方向に延び、中央部にフードロック装置が取り付けられるフードメンバを配設している。
【0003】
一方、前記エンジンルームには、エンジンと変速機とを連結したパワートレインを、その出力軸が車両幅方向に向くように搭載する。
そして、このパワートレインの上方の空間にはエンジンの吸気部品、電装部品等のパワートレイン用の各種補機部品を配設している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−258773号公報
【特許文献2】特開2005−247028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の車両の前部構造において、車両の前部に衝撃を受けた場合に、フードメンバを大きく変形できる構造にすれば衝撃吸収性を高めることができる。
しかし、従来の車両の前部構造においては、フードメンバがヘッドランプの頂部近傍の比較的高い位置に配設されるとともに、エンジンルーム内に配置される各種補機部品が車両上下方向でフードメンバより上方に突出する位置に配設されている。
この結果、フードメンバ及び各種補機部品によってフロントフードパネルの変形が抑えられて衝撃吸収性が低下するという不都合がある。
また、また、フロントフードパネルが衝撃によって変形した場合、各種補機部品に影響を与えるという不都合がある。
【0006】
この発明の目的は、エンジンルームの上方を覆う車両のフロントフードパネルが衝撃を受けた場合に、フロントフードパネルの衝撃吸収性を高めるとともに、エンジンルーム内の補機部品を保護する車両の前部構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、車両の前部にフロントバンパと左右一対のヘッドランプを配設し、これらの後方にダッシュパネルで車室と区画されるとともに車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、このエンジンルームの車両前面部に前記ヘッドランプの間を車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、前記エンジンルームにエンジンと変速機を連結したパワートレインを、その出力軸が車両幅方向に向くように搭載し、前記パワートレインの上方の空間に各種補機部品を配設した車両の前部構造において、前記フードメンバを、車両上下方向で前記ヘッドランプの頂部に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で前記補機部品の上面を、前記フードメンバの上面から水平方向に延びる仮想水平線と略同一か、それより低い位置に配置し、この仮想水平線より上方に衝撃吸収空間を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、車両の前部に車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、前記フロントフードパネルの後端にこのフロントフードパネルから車両上方に立ち上がるフロントウィンドを配設した車両の前部構造において、前記車両を側面から視た場合、前記フロントフードパネルと前記フロントウィンドの交点Sで前記フロントウィンドに接する接線を第1接線とし、前記フロントフードパネルを第1接線よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を前記第1接線を越えて車両後方側に延びるよう形成したことを特徴とする。
【0009】
更に、車両の前部に車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、このエンジンルームの前部に車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、前記フロントフードパネルの後端にこのフロントフードパネルから車両上方に立ち上がるフロントウィンドを配設した車両の前部構造において、前記車両を側面から視た場合、前記フロントウィンドと前記フードメンバとの両方に接する接線を第2接線とし、前記フロントフードパネルを第2接線よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を前記第2接線を越えて車両後方側に延びるよう形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、車両の前部にフロントバンパと左右一対のヘッドランプを配設し、これらの後方にダッシュパネルで車室と区画されるとともに車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、エンジンルームの車両前面部にヘッドランプの間を車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、エンジンルームにエンジンと変速機を連結したパワートレインを、その出力軸が車両幅方向に向くように搭載し、パワートレインの上方の空間に各種補機部品を配設した車両の前部構造において、フードメンバを、車両上下方向でヘッドランプの頂部に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で補機部品の上面を、フードメンバの上面から水平方向に延びる仮想水平線と略同一か、それより低い位置に配置し、この仮想水平線より上方に衝撃吸収空間を形成したので、フードメンバからダッシュパネルに至るエンジンルームの車両前後方向の略全域で、フードパネルの下方に、従来より大きな衝撃吸収空間を形成できる。
従って、フロントフードパネルに衝撃を受けた場合に、フロントフードパネルがフードメンバや各種補機部品に抑制されることなく十分に変形して衝撃を吸収できるとともに、エンジンルーム内の各種補機部品を保護することできる。
【0011】
また、車両の前部に車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、フロントフードパネルの後端にフロントフードパネルから車両上方に立ち上がるフロントウィンドを配設した車両の前部構造において、車両を側面から視た場合、フロントフードパネルとフロントウィンドの交点Sでフロントウィンドに接する接線を第1接線とし、フロントフードパネルを第1接線よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を第1接線を越えて車両後方側に延びるよう形成したので、第1接線よりも車両後方側に衝撃吸収空間を確保し、フロントフードパネルの一部が第1接線よりも車両上方に突出している。
従って、フロントフードパネルが車両前方上部から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0012】
更に、車両の前部に車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、エンジンルームの前部に車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、フロントフードパネルの後端にこのフロントフードパネルから車両上方に立ち上がるフロントウィンドを配設した車両の前部構造において、車両を側面から視た場合、フロントウィンドとフードメンバとの両方に接する接線を第2接線とし、フロントフードパネルを第2接線よりも車両前方側に突出させる一方、フロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を第2接線を越えて車両後方側に延びるよう形成したので、第2接線よりも車両後方側に衝撃吸収空間を確保し、フロントフードパネルの一部が第2接線よりも車両上方側に突出している。
従って、フロントフードパネルが衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上述の如く発明したことにより、車両の前部構造において、フードメンバを、車両上下方向でヘッドランプの頂部に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で補機部品の上面を、フードメンバの上面から水平方向に延びる仮想水平線と略同一か、それより低い位置に配置し、この仮想水平線より上方に衝撃吸収空間を形成する。
そして、フードメンバからダッシュパネルに至るエンジンルームの車両前後方向の略全域で、フードパネルの下方に、従来より大きな衝撃吸収空間を形成する。
このとき、フロントフードパネルに衝撃を受けた場合には、フロントフードパネルがフードメンバや各種補機部品に抑制されることなく十分に変形して衝撃を吸収するとともに、エンジンルーム内の各種補機部品を保護する。
【0014】
また、車両の前部構造において、車両を側面から視た場合、フロントフードパネルとフロントウィンドの交点Sでフロントウィンドに接する接線を第1接線とし、フロントフードパネルを第1接線よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を第1接線を越えて車両後方側に延びるよう形成する。
そして、第1接線よりも車両後方側に衝撃吸収空間を確保し、フロントフードパネルの一部が第1接線よりも車両上方に突出し、フロントフードパネルが車両前方上部から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高める。
【0015】
更に、車両の前部構造において、車両を側面から視た場合、フロントウィンドとフードメンバとの両方に接する接線を第2接線とし、フロントフードパネルを第2接線よりも車両前方側に突出させる一方、フロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を第2接線を越えて車両後方側に延びるよう形成する。
そして、第2接線よりも車両後方側に衝撃吸収空間を確保し、フロントフードパネルの一部が第2接線よりも車両上方側に突出し、フロントフードパネルが衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高める。
【実施例】
【0016】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0017】
図1〜図4はこの発明の実施例を示すものである。
図1〜図4において、1は車両である。
この車両1は、図1及び図3、図4に示す如く、前部にフロントバンパ2と左右一対のヘッドランプ3L、3Rとを配設する。
そして、これらのフロントバンパ2とヘッドランプ3L、3Rとの後方をダッシュパネル4で車室5と区画されるとともに、車両1の上方をフロントフードパネル6に覆われるエンジンルーム7を形成する。
【0018】
このとき、前記車両1のフロントバンパ2に、図1及び図4に示す如く、上方からインタークーラ用開口部8と、上段開口部9と、下段開口部10とを順次形成する。
そして、前記インタークーラ用開口部8は、図4に示す如く、車両幅方向の中心から左側のヘッドランプ3L側に偏倚した位置に形成する。
これにより、前記インタークーラ用開口部8によって、前記エンジンルーム7内の後述するインタークーラ32への走行風である冷却風の取り込みが可能となる。
また、前記上段開口部9は、図4に示す如く、上縁が水平方向に延びる一方、下縁が車両下方に突出する円弧状をなす半円形状に形成する。
これにより、前記上段開口部9によって、前記エンジンルーム7内の後述するラジエータ12への走行風である冷却風の取り込みが可能となる。
更に、前記下段開口部10は、図4に示す如く、角部に丸みを有する長方形状に形成するとともに、所定間隔毎に水平方向に延びる複数本の水平部材11を設ける。
これにより、前記下段開口部10によって、前記エンジンルーム7内のラジエータ12への走行風である冷却風の取り込みが可能となるとともに、前記水平部材11によって、前記フロントバンパ2の剛性の確保に寄与できる。
【0019】
また、前記フロントバンパ2の後部、かつ後述するフードメンバ14の下部には、図1及び図3に示す如く、ラジエータ12とこのラジエータ12よりも車両後方に位置するラジエータファン13とを配設する。
このとき、ラジエータ12とラジエータファン13とは、図1に示す如く、前記フロントバンパ2に形成される上段開口部9及び下段開口部10の後方部位に配設されることとなる。
これにより、上段開口部9及び下段開口部10から流入した走行風である冷却風をラジエータ12とラジエータファン13とに確実に送ることができる。
【0020】
前記エンジンルーム7の車両前面部に、図1及び図3、図4に示す如く、前記ヘッドランプ3L、3Rの間を車両幅方向に延びるフードメンバ14を配設する。
一方、前記エンジンルーム7には、図1及び図3、図4に示す如く、エンジン15と変速機16を連結したパワートレイン17を、その出力軸17aが車両幅方向に向くように搭載する。つまり、エンジン15を横置き型とする。
そして、前記パワートレイン17の上方の空間18に各種補機部品19を配設する。
【0021】
更に、前記フードメンバ14を、図1に示す如く、車両上下方向で前記ヘッドランプ3L、3Rの頂部20に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で前記補機部品19の上面を、前記フードメンバ14の上面から水平方向に延びる仮想水平線21と略同一か、それより低い位置に配置する。
これにより、図1に示す如く、フードメンバ14から前記ダッシュパネル4に至るエンジンルーム7の車両前後方向の略全域で、前記フロントフードパネル6の下方かつ仮想水平面の上方に従来と比べて大きな衝撃吸収空間22を形成することができる。
従って、フロントフードパネル6が衝撃を受けた場合に、フロントフードパネル6をフードメンバ14や各種補機部品19に抑制されずに十分に変形させて衝撃吸収性を高めることができる。
また、前記補機部品19とフロントフードパネル6との衝突を防止して補機部品19を保護することができる。
【0022】
また、前記補機部品19は、前記パワートレイン17の上部に取り付けられる吸気部品23と、前記車両1に取り付けられる電装部品24とを含み、これらを車両幅方向に並べるとともにその上面が略面一になるように車両上下方向で位置決めする。
つまり、前記エンジン15と変速機16を連結したパワートレイン17の車両前側上部に、図3に示す如く、ターボチャージャ25や排気マニホルドの排気マニホルドカバー26、リザーブタンク27を配設するとともに、前記パワートレイン17の上部に、図1及び図3に示す如く、ヘッドカバー28や前記車両1の右側方向に開口する吸気口29を有する吸気ダクト30、エアクリーナ31、インタークーラ32、バッテリ33を配設し、前記パワートレイン17の車両後側上部には、図1及び図3に示す如く、スロットルボディ34や吸気マニホルド35、ブレーキ関連部品であるブレーキブースタ36を配設する。
追記すれば、前記インタークーラ32においては、図1に示す如く、前記インタークーラ用開口部8とインタークーラ32とを連絡する第1〜第3ダクト37、38、39を設けるとともに、インタークーラ出口ホース40を設け、第1及び第2ダクト37、38が前記パワートレイン17の車両前側上部に位置し、第3ダクト39が前記パワートレイン17の上部に位置し、インタークーラ出口ホース40が前記パワートレイン17の車両後側上部に位置する。
なお、前記吸気部品23は、吸気口29を有する吸気ダクト30やエアクリーナ31、インタークーラ32、スロットルボディ34、吸気マニホルド35、第1〜第3ダクト37、38、39、インタークーラ出口ホース40からなる。
また、前記電装部品24は、バッテリ33からなる。
そして、前記吸気部品23と電装部品24とを含む前記補機部品19を、図3に示す如く、これらを車両幅方向に並べるとともに、図1に示す如く、その上面が前記仮想水平線21と例えば略面一になるように車両上下方向で位置決めするものである。
これにより、前記エンジンルーム7を平面から視た場合に、大きな面積を占有する前記吸気部品23と電装部品24とを車両幅方向に並べ、その上面が前記仮想水平線21と例えば略面一になるように車両上下方向で位置決めしたことによって、エンジンルーム7の車両幅方向の全域に亘って均一な衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6が衝撃を受けた場合に衝撃吸収性を高めることができる。
【0023】
更に、前記補機部品19は前記ダッシュパネル4に取り付けられるブレーキブースタ36を含み、このブレーキブースタ36の本体部36aを、その上面が前記吸気部品23と略面一になるよう車両前上下方向で位置決めする。
すなわち、図3に示す如く、前記エンジンルーム7を平面から視た場合に、前記ブレーキブースタ36をエンジンルーム7の右奥部である右側の車両後方部位に配設し、図1に示す如く、前記ブレーキブースタ36の本体部36a上面が前記吸気部品23と略面一、つまり、前記仮想水平線21と略面一になるように車両上下方向で位置決めするものである。
これにより、前記ダッシュパネル4に取り付けられるブレーキブースタ36の本体部36a上方に亘って衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6が衝撃を受けた場合に衝撃吸収性を高めることができる。
【0024】
更にまた、前記車両1の前部に車両1の上方をフロントフードパネル6に覆われるエンジンルーム7を形成し、前記フロントフードパネル6の後端にこのフロントフードパネル6から車両上方に立ち上がるフロントウィンド41を配設した車両1の前部構造において、図2に示す如く、前記車両1を側面から視た場合、前記フロントフードパネル6と前記フロントウィンド41の交点Sで前記フロントウィンド41に接する接線を第1接線42とし、前記フロントフードパネル6を第1接線42よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネル6の下方に形成される衝撃吸収空間22を前記第1接線42を越えて車両後方側に延びるよう形成する。
すなわち、前記第1接線42は、図2に示す如く、フロントウィンドの交点Sで前記フロントウィンドに接するとともに前記ヘッドランプ3L、3Rの前輪側外周プロフィルと略接する。
そして、前記フロントフードパネル6を第1接線42よりも車両前方側に突出させ、この第1接線42よりも車両後方側に前記衝撃吸収空間22を存在させるものである。
これにより、前記第1接線42よりも車両後方側に衝撃吸収空間22を確保し、図2から明らかなように、前記フロントフードパネル6の一部が前記第1接線42よりも車両上方に突出していることにより、前記フロントフードパネル6が車両前方上部の図2の白抜き矢印A方向から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0025】
また、前記車両1の前部に車両1の上方をフロントフードパネル6に覆われるエンジンルーム7を形成し、このエンジンルーム7の前部に車両幅方向に延びるフードメンバ14を配設する一方、前記フロントフードパネル6の後端にこのフロントフードパネル6から車両上方に立ち上がるフロントウィンド41を配設した車両1の前部構造において、図2に示す如く、前記車両1を側面から視た場合、前記フロントウィンド41と前記フードメンバ14との両方に接する接線を第2接線43とし、前記フロントフードパネル6を第2接線43よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネル6の下方に形成される衝撃吸収空間22を前記第2接線43を越えて車両後方側に延びるよう形成する。
すなわち、第2接線43は、図2に示す如く、車両側面視で円弧上をなすフロントウィンド41の中間部に接するとともに前記フードメンバ14の上部に接する接線である。
そして、前記フロントフードパネル6を第2接線43よりも車両前方側に突出させ、この第2接線43よりも車両後方側に前記衝撃吸収空間22を存在させるものである。
これにより、前記第2接線43よりも車両後方側に衝撃吸収空間22を確保し、図2から明らかなように、前記フロントフードパネル6の一部が前記第2接線43よりも車両上方側に突出していることにより、前記フロントフードパネル6が図2の白抜き矢印A方向から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0026】
更に、前記車両1の前部構造において、図2に示す如く、車両側面視で前記車両1の前側ドア44のベルトライン45を延長して線分46とした際に、前記フロントフードパネル6の一部が線分46よりも車両上方側に突出し、前記交点Sよりも車両後方側に衝撃吸収空間22を存在させる。
これにより、交点Sよりも車両後方側に衝撃吸収空間22を確保し、図2から明らかなように、前記フロントフードパネル6の一部が前記線分46よりも車両上方側に突出していることにより、前記フロントフードパネル6が図2の白抜き矢印A方向から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0027】
なお、図1において、符号47は前記ダッシュパネル4の上方に設けられるカウリングトップパネル、48はカウリングフロントパネル、49は前記エンジンルーム7の仮想水平線21の上方に存在させた衝撃吸収空間22の変形ストロークである。
図2において、50は地面である。
図3及び図4において、51L、51Rは左右一対のヘッドランプ3L、3Rの外側部位に夫々配設され、前記エンジンルーム7の車両幅方向両側を覆うフェンダパネルである。
図4において、6aは前記フロントフードパネル6の先端部である。
【0028】
これにより、前記フードメンバ14を車両上下方向で前記ヘッドランプ3L、3Rの頂部20に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で前記補機部品19の上面を、前記フードメンバ14の上面から水平方向に延びる仮想水平線21と略同一か、それより低い位置に配置し、この仮想水平線21より上方に衝撃吸収空間22を形成することによって、フードメンバ14から前記ダッシュパネル4に至るエンジンルーム7の車両前後方向の略全域で、前記フロントフードパネル6の下方かつ仮想水平面の上方に従来と比べて大きな衝撃吸収空間22を形成することができる。
また、フロントフードパネル6が衝撃を受けた場合に、フロントフードパネル6をフードメンバ14や各種補機部品19に抑制されずに十分に変形させて衝撃吸収性を高めることができる。
更に、フロントフードパネル6が衝撃で変形しても各種補機部品19に影響を与えない構造として各種補機部品19を保護することができる。
【0029】
また、前記補機部品19は、前記パワートレイン17の上部に取り付けられる吸気部品23と、前記車両1に取り付けられる電装部品24とを含み、これらを車両幅方向に並べるとともにその上面が略面一になるように車両上下方向で位置決めすることにより、前記エンジンルーム7を平面から視た場合に、大きな面積を占有する前記吸気部品23と電装部品24とを車両幅方向に並べ、その上面が前記仮想水平線21と例えば略面一になるように車両上下方向で位置決めしたことによって、エンジンルーム7の車両幅方向の全域に亘って均一な衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6が衝撃を受けた場合に衝撃吸収性を高めることができる。
【0030】
更に、前記補機部品19は前記ダッシュパネル4に取り付けられるブレーキブースタ36を含み、このブレーキブースタ36の本体部36aを、その上面が前記吸気部品23と略面一になるよう車両前上下方向で位置決めすることにより、前記ダッシュパネル4に取り付けられるブレーキブースタ36の本体部36a上方に亘って衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6が衝撃を受けた場合に衝撃吸収性を高めることができる。
【0031】
更にまた、前記車両1の前部に車両1の上方をフロントフードパネル6に覆われるエンジンルーム7を形成し、前記フロントフードパネル6の後端にこのフロントフードパネル6から車両上方に立ち上がるフロントウィンド41を配設した車両1の前部構造において、前記車両1を側面から視た場合、前記フロントフードパネル6と前記フロントウィンド41の交点Sで前記フロントウィンド41に接する接線を第1接線42とし、前記フロントフードパネル6を第1接線42よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネル6の下方に形成される衝撃吸収空間22を前記第1接線42を越えて車両後方側に延びるよう形成したことにより、前記第1接線42よりも車両後方側に衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6の一部が前記第1接線42よりも車両上方に突出している。
従って、前記フロントフードパネル6が車両前方上部の図2の白抜き矢印A方向から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0032】
また、前記車両1の前部に車両1の上方をフロントフードパネル6に覆われるエンジンルーム7を形成し、このエンジンルーム7の前部に車両幅方向に延びるフードメンバ14を配設する一方、前記フロントフードパネル6の後端にこのフロントフードパネル6から車両上方に立ち上がるフロントウィンド41を配設した車両1の前部構造において、前記車両1を側面から視た場合、前記フロントウィンド41と前記フードメンバ14との両方に接する接線を第2接線43とし、前記フロントフードパネル6を第2接線43よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネル6の下方に形成される衝撃吸収空間22を前記第2接線43を越えて車両後方側に延びるよう形成したことにより、前記第2接線43よりも車両後方側に衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6の一部が前記第2接線43よりも車両上方側に突出している。
従って、前記フロントフードパネル6が図2の白抜き矢印A方向から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0033】
更に、前記車両1の前部構造において、車両側面視で前記車両1の前側ドア44のベルトライン45を延長して線分46とした際に、前記フロントフードパネル6の一部が線分46よりも車両上方側に突出し、前記交点Sよりも車両後方側に衝撃吸収空間22を存在させることにより、交点Sよりも車両後方側に衝撃吸収空間22を確保し、前記フロントフードパネル6の一部が前記線分46よりも車両上方側に突出していることにより、前記フロントフードパネル6が図2の白抜き矢印A方向から衝撃を受けた場合に、衝撃吸収性を高めることができる。
【0034】
更にまた、この発明の実施例においては、前記吸気部品23としてパワートレイン17の上部にエアクリーナ31と、このエアクリーナ31に吸気口29を介して外気を導入する吸気ダクト30とを配置し、吸気ダクト30の吸気口29を前記エンジンルーム7内に開口させたことにより、吸気部品23上方の空間18を大きくすることで、エンジンルーム7上方の暖められた外気を吸気口29に吸入し難くするという付随的効果も生じるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例を示す車両の前部の左側面図である。
【図2】車両の左側面図である。
【図3】車両の前部の平面図である。
【図4】車両の正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
2 フロントバンパ
3L、3R 左右一対のヘッドランプ
4 ダッシュパネル
5 車室
6 フロントフードパネル
7 エンジンルーム
8 インタークーラ用開口部
9 上段開口部
10 下段開口部
11 水平部材
12 ラジエータ
13 ラジエータファン
14 フードメンバ
17 パワートレイン
19 各種補機部品
20 頂部
21 仮想水平線
22 衝撃吸収空間
23 吸気部品
24 電装部品
28 ヘッドカバー
31 エアクリーナ
32 インタークーラ
33 バッテリ
34 スロットルボディ
35 吸気マニホルド
36 ブレーキブースタ
36a 本体部
41 フロントウィンド
S 交点
42 第1接線
43 第2接線
44 前側ドア
45 ベルトライン
46 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部にフロントバンパと左右一対のヘッドランプを配設し、これらの後方にダッシュパネルで車室と区画されるとともに車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、このエンジンルームの車両前面部に前記ヘッドランプの間を車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、前記エンジンルームにエンジンと変速機を連結したパワートレインを、その出力軸が車両幅方向に向くように搭載し、前記パワートレインの上方の空間に各種補機部品を配設した車両の前部構造において、前記フードメンバを、車両上下方向で前記ヘッドランプの頂部に対して低い位置に配設し、かつ車両上下方向で前記補機部品の上面を、前記フードメンバの上面から水平方向に延びる仮想水平線と略同一か、それより低い位置に配置し、この仮想水平線より上方に衝撃吸収空間を形成したことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
前記補機部品は、前記パワートレインの上部に取り付けられる吸気部品と、前記車両に取り付けられる電装部品とを含み、これらを車両幅方向に並べるとともにその上面が略面一になるように車両上下方向で位置決めしたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記補機部品は前記ダッシュパネルに取り付けられるブレーキブースタを含み、このブレーキブースタの本体部を、その上面が前記吸気部品と略面一になるよう車両前上下方向で位置決めしたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
車両の前部に車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、前記フロントフードパネルの後端にこのフロントフードパネルから車両上方に立ち上がるフロントウィンドを配設した車両の前部構造において、前記車両を側面から視た場合、前記フロントフードパネルと前記フロントウィンドの交点Sで前記フロントウィンドに接する接線を第1接線とし、前記フロントフードパネルを第1接線よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を前記第1接線を越えて車両後方側に延びるよう形成したことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項5】
車両の前部に車両の上方をフロントフードパネルに覆われるエンジンルームを形成し、このエンジンルームの前部に車両幅方向に延びるフードメンバを配設する一方、前記フロントフードパネルの後端にこのフロントフードパネルから車両上方に立ち上がるフロントウィンドを配設した車両の前部構造において、前記車両を側面から視た場合、前記フロントウィンドと前記フードメンバとの両方に接する接線を第2接線とし、前記フロントフードパネルを第2接線よりも車両前方側に突出させる一方、このフロントフードパネルの下方に形成される衝撃吸収空間を前記第2接線を越えて車両後方側に延びるよう形成したことを特徴とする車両の前部構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−191029(P2007−191029A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10700(P2006−10700)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】