説明

車両の後部車体構造

【課題】燃料タンクを適正に配設するとともに、車室の後方に設けられた荷室の有効利用を図る。
【解決手段】車室後部のフロアパネル上に後席シート2が設けられた車両において、この後席シート2の後方には、フロアパネル面の後部が上方に段上げされることにより略平坦面からなるキックアップ部26が形成され、このキックアップ部26の下方で、かつ左右の後輪31間に燃料タンク34が支持され、この燃料タンク34の上面が、上記後席シート2の設置部に位置するフロアパネル面よりも上方に配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロア面の上方に後席シートが設けられるとともに、車体フロアの下方に燃料タンクが配設された車両の後部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体後部にスペアタイヤパンを有する荷台が配設された車両において、車室と荷台とを仕切るように設置された車室後壁よりも前方側に燃料タンクが配設されるとともに、この燃料タンクへ燃料を供給するための燃料パイプ(燃料注入管)の開口端部を覆う燃料リッドが、上記後壁よりも後方側に配設された車両の車体構造が知られている。
【0003】
また、近年における道路環境の整備や、タイヤ技術の進歩等に伴ってタイヤのパンク発生機会が極端に少なくなるとともに、女性ドライバーおよび高齢者ドライバーが増加すること等に起因して煩雑なスペアタイヤの交換作業が敬遠される傾向がある。このため、下記特許文献2に示されるように、運転席の下方に偏平形状の燃料タンクを配設した自動車の燃料タンク配設構造において、後部荷室に設けられていたスペアタイヤパンを省略することにより、後部荷室の有効利用を図ることが行われている。
【特許文献1】特開平11−99837号公報
【特許文献2】特開2006−188209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているように、車室と荷台とを仕切るように設置された車室後壁よりも前方側に燃料タンクを配設した場合には、この燃料タンクの設置部と車体後端部との間に充分な距離を確保することにより、後突時に車体後部から入力された衝突荷重が上記燃料タンクの設置部に及ぶのを抑制して燃料タンクを効果的に保護できるという利点がある。しかし、上記のように車室後壁よりも前方側であって後席シートの下方に燃料タンクを配設した場合には、この燃料タンクを充分に確保するためにその上下寸法を大きくすると、車体フロア面が上方に位置することとなるため、車室の低床化を図ることができないという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に示されるように、後部荷室に設けられていたスペアタイヤパンを省略した場合には、後席シートの後方に位置するリヤフロア部を平坦面に形成して後部荷室に対する荷物の出し入れを容易化できる等の利点がある。上記のように運転席の下方に偏平形状の燃料タンクを配設するように構成した場合には、車室のフロア部を下方に位置させて低床化を図りつつ、燃料タンクの容量を充分に確保できるが、燃料タンクの上下寸法が小さくなって燃料タンクの強度を充分に確保することが困難であるという問題があった。さらに、燃料タンク内の燃料をエンジンに供給する燃料供給手段や、燃料タンク内に燃料残量を検出する燃料計を適正に設置することができないことに起因して、燃料の供給性能が悪化するとともに、燃料残量の検出精度が低下し易い等の問題がある。
【0006】
なお、エンジン等の重量部材が配設された前部車体との重量バランスを考慮すると、後部車体内のなるべく後方側に燃料タンクを位置させることが望まれるが、上記特許文献1,2に開示されているように、車室内に設置された乗員用シートの下方に燃料タンクを配設した場合には、車体の重量バランスを充分に向上させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、燃料タンクを適正に配設することができるとともに、車室の後方に設けられた荷室の有効利用を図ることができる車両の後部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室後部のフロアパネル上に後席シートが設けられた車両において、この後席シートの後方には、フロアパネル面の後部が上方に段上げされることにより略平坦面からなるキックアップ部が形成され、このキックアップ部の下方で、かつ左右の後輪間に燃料タンクが支持され、この燃料タンクの上面が、上記後席シートの設置部に位置するフロアパネル面よりも上方に配設されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の後部車体構造において、上記燃料タンクの後端部が後輪の後端部よりも車体の前方側に配設されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の後部車体構造において、車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のリヤサイドメンバと、このリヤサイドメンバにより支持された左右一対のサスペンションアームと、左右のサスペンションアームを連結するトーションビームとを有し、このトーションビームの後方側で燃料タンクが支持されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、燃料タンクの後方に排気用の消音器が配設されるとともに、この消音器を車両の後突時に燃料タンクの下方側に案内する案内部を備えたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、車幅方向に延びるクロスメンバが燃料タンクの前後にそれぞれ配設されるとともに、このクロスメンバに燃料タンクが支持されたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、後席シートのシートバックを起立状態の使用位置からシートクッション上に折り畳んだ格納位置へと傾動可能に支持する傾動支持機構と、上記後席シートのシートクッションを昇降可能に支持する昇降支持機構とを備えたものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、車体外面に設けられた燃料注入口から注入された燃料を燃料タンクに供給する燃料注入管と、燃料タンク内の空気を上記燃料注入口の近傍に放出する空気放出管とを有し、これらの燃料注入管および空気放出管が燃料タンクから略鉛直に延びるように設置されたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、上記後席シートの後方に形成されたキックアップ部の下方に燃料タンクを配設したため、この後席シートの下方に燃料タンクを配設した場合に比べ、この燃料タンクが配設された後部車体と、エンジン等の重量部材が配設された前部車体との重量バランスを効果的に向上できるとともに、上記キックアップ部からなる後部荷室の底部を略平坦面に形成して後部荷室を有効に利用できるという利点がある。しかも、上記後席シートが配設されるフロアパネル面を車体の下方側に位置させて車室内部を効果的に低床化しつつ、上記燃料タンクの上下寸法を充分に確保して、その強度を充分に確保することができ、かつ燃料タンク内に燃料供給手段を適正に設置することにより、燃料の供給性能が悪化するのを効果的に防止できるとともに、燃料タンク内に配設されたフロート等を有する燃料計によって燃料の残留量を精度よく検出できる等の利点がある。
【0016】
請求項2に係る発明では、燃料タンクの後端部を後輪の後端部よりも車体の前方側に配設したため、車両の後突時に入力された衝突荷重を上記後輪の設置部において効果的に支持することにより、燃料タンクが衝突荷重の影響を受けて損傷するという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0017】
請求項3に係る発明では、車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のリヤサイドメンバと、このリヤサイドメンバにより支持された左右一対のサスペンションアームと、この両サスペンションアームを連結するトーションビームとを有する車両において、このトーションビームの後方側で燃料タンクを支持するように構成したため、上記サスペンションアーム、トーションビームおよびリヤサイドメンバの間に形成された空間部を利用して燃料タンクを適正に配設することができるとともに、車両の後突時に入力された衝突荷重を上記リヤサイドメンバにおいて効果的に支持することにより、上記後輪の設置部に入力される衝撃荷重を効果的に低減することができる。しかも、上記後輪に荷重が入力された場合においても、上記トーションビームがクロスメンバと同様の役割を果たして車体後部に剛性を効果的に向上させることができるため、燃料タンクが衝突荷重の影響を受けるのを、より効果的に防止できるという利点がある。
【0018】
請求項4に係る発明では、燃料タンクの後方に排気用の消音器を配設するとともに、この消音器を車両の後突時に燃料タンクの下方側に案内する案内部を設けたため、上記のように燃料タンクの後方側に上記消音器を配設したにも拘わらず、車両の後突時に入力される衝突荷重に応じて上記消音器が車体の前方側に押動された場合に、この消音器が燃料タンクに対して強固に押し付けられるのを防止して、この燃料タンクを効果的に保護できるという利点がある。
【0019】
請求項5に係る発明では、車幅方向に延びるクロスメンバを燃料タンクの前後にそれぞれ配設するとともに、このクロスメンバに燃料タンクを支持したため、このクロスメンバにより燃料タンクの設置部を効果的に保護できるとともに、この燃料タンクの取付作業を容易化できるという利点がある。
【0020】
請求項6に係る発明では、後席シートのシートバックを起立状態の使用位置からシートクッション上に折り畳んだ格納位置へと傾動可能に支持する傾動支持機構と、上記後席シートのシートクッションを昇降可能に支持する昇降支持機構とを設けたため、後席シートの不使用時に上記シートクッションおよびシートバックをコンパクト化して格納することができるとともに、上記シートバックの背面を荷物等の載置面として利用することができる。しかも、後部荷室の底面を構成するキックアップ部を大きく上方に嵩上げする等の手段を講じることなく、上記後席シートの後方に長い前後寸法を有するフラットな荷物載置面を形成することにより、上記後部荷室を有効に利用できるとともに、この後部荷室に対する荷物の出し入れを容易化できる等の利点がある。
【0021】
請求項7に係る発明では、後席シートの後方に形成されたキックアップ部の下方に燃料タンクを配設して、この燃料タンクを車体の後方側に位置させるように構成したため、車体の後部外面に設けられた燃料注入口から注入された燃料を燃料タンクに供給する燃料注入管と、燃料タンク内の空気を上記燃料注入口の近傍に放出する空気放出管とを、燃料タンクから略鉛直に延びるように設置することが可能であり、これによって上記燃料供給管および空気放出管の設置長さを最小限に設定し、その設置コストを効果的に低減できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1〜図3は、本発明に係る車両の後部車体構造の実施形態を示している。この車両には、その車室前部に運転席および助手席からなる前席シート1が配設されるとともに、その後方側に、後席シート2と、後部荷室3とが順次配設されている。
【0023】
上記前席シート1は、車室の前部フロアパネル4上に設けられたシートレール5に沿って前後移動可能に支持されたシートクッション6と、このシートクッション6の後端部に設置されるとともに、リクライニング機構7により傾動可能に支持されたシートバック8とを有している。
【0024】
上記前部フロアパネル4の車幅方向中央部には、車体の前後方向に延びるフロアトンネル部9が上方に膨出するように形成されるとともに、このフロアトンネル部9内を通って車体の後方側に延びるように排気管10が配設されている。また、上記前部フロアパネル4の下面には、車室の底面部を補強する左右一対のサイドメンバ11,11が溶接接合される等により固定されている。
【0025】
上記前部フロアパネル4の後方部、つまり車室後部には、第1段部12を介して上記前部フロアパネル4よりも所定距離だけ上方に段上げされた第1キックアップ部13が設置され、この第1キックアップ13上にシートクッション14およびシートバック15を有する後席シート2が設置されている。この後席シート2のシートクッション14およびシートバック15は、上記第1キックアップ部13上に設置された左右一対の支持プレート16に、それぞれ上下方向に延びる前側リンク17および後側リンク18を介して支持されている。
【0026】
上記前側リンク17は、その上端部がシートクッション14の前部側面に支軸19を介して枢支されるとともに、前側リンク17の下端部が上記支持プレート16の前方部に支軸20を介して枢支されている。また、上記後側リンク18は、その上端部がシートバック15の下方部側面に図略の締結部材等を介して固定されるとともに、後側リンク18の下端部が上記支持プレート16の後方部に支軸21を介して枢支されている。
【0027】
上記シートクッション14の後方部側面には、連結リンク24が締結部材を介して固定されている。この連結リンク24は、その後方部が上記シートクッション14との固定部から上部後方に湾曲するように延びるとともに、後端部が上記後側リンク18の上端部に支軸23を介して枢支され、この支軸23および上記支持プレート16等により、後席シート2のシートバック15を起立状態の使用位置からシートクッション14上に折り畳んだ格納位置へと傾動可能に支持する傾動支持機構が構成されている。
【0028】
また、上記支持プレート16には、後側リンク18の下端部を保持することにより、この後側リンク18が支軸21を支点に回動するのを規制するロック装置(図示せず)が設けられ、これらによって上記後席シートのシートクッションを昇降可能に支持する昇降支持機構が構成されている。すなわち、後席シート2の使用時には、上記ロック装置を介して後側リンク18の回動変位が規制されることにより、図1に示すように、上記シートバック15がシートクッション14の後端部から上方に起立した使用位置に保持されるとともに、上記シートクッション14が支持プレート16に対して所定距離だけ上方に離間した上昇位置に保持されている。
【0029】
そして、上記シートクッション14またはシートバック15の所定部位には、上記ロック装置のギア機構等と連係された図略の操作レバーが設けられ、この操作レバーが乗員によって操作されるのに応じ、上記ロック装置による後側リンク18のロックが解除されるように構成されている。この後側リンク18のロックが解除された状態で、上記シートバック15を前方に押圧するように力が加えられると、このシートバック15と上記後側リンク18とが一体となって前方に回動変位するとともに、連結リンク24が前方かつ下方に揺動変位する。
【0030】
上記のようにして上記後席シート2の不使用時には、図3に示すように、上記前側リンク17が前方に回動変位してシートクッション14が前方かつ下方に沈み込むとともに、このシートクッション14上にシートバック15が倒伏した格納位置に変位することにより、このシートバック15の背面により、下記第2キックアップ部26からなる後部荷室3のフロア面、つまり下記第2キックアップ部26の上面と連続した荷物載置面が形成されるようになっている。
【0031】
すなわち、上記第1キックアップ部13の後方側には、斜め方向に延びる段上げ部25を介して上記第1キックアップ部13よりも所定距離だけ上方に段上げされることにより、上記後席シート2が設置されたフロアパネル面、つまり上記前部フロアパネル4の上面よりも所定距離だけ上方に位置する第2キックアップ部26が形成されている。この第2キックアップ部26が車体の後端部に至るまで略水平に延設されることにより、上記格納位置にあるシートバック15の背面に連続した略平坦面からなる後部荷室3の底面が形成されている。
【0032】
上記第1キックアップ部13および第2キックアップ部26の下面には、その左右両側辺部を補強する左右一対のリヤサイドメンバ27,27が車体の前後方向に延びるように接合され、このリヤサイドメンバ27,27の前部下面に、左右一対のサスペンションアーム28,28の前端部が枢支されている。図4に示すように、上記サスペンションアーム28,28と、両アーム28,28を連結するトーションビーム29と、上記サスペンションアーム28,28の後端部を懸架する左右一対のリヤショックアブソーバ30とにより、左右の後輪31,31を支持するサスペンションメンバが構成されている。
【0033】
上記第2キックアップ部26の下面には、トーションビーム29のやや後方側かつ上方側において左右のリヤサイドメンバ27,27を互いに連結するクロスメンバ32と、その後方側に配設されて左右のリヤサイドメンバ27,27を互いに連結するクロスメンバ33とが接合されている。そして、図2および図5に示すように、上記前後のクロスメンバ32,33の間に、燃料タンク34が設置された状態で、左右一対の支持ベルト35,35により両クロスメンバ32,33に支持されている。この燃料タンク34は、その上面が第2キックアップ部26の下面に沿って配設されることにより、上記後席シート2の設置部に位置するフロアパネル面(前部フロアパネル4の上面)よりも上方に位置し、かつ左右の後輪31,31間において、上記トーションビーム29の後方側で支持されるようになっている。
【0034】
図2に示すように、燃料タンク34の側方部を通ってその後方に上記排気管10が導出されるとともに、この排気管10に設けられた排気用の消音器36が、上記燃料タンク34の後方側において車幅方向に延びるように配設されている。また、図5等に示すように、上記燃料タンク34の後面には、前下がりの傾斜面37が形成され、この傾斜面37により、車両の後突時に上記消音器36を燃料タンク34の下方側に案内する案内部が構成されている。
【0035】
上記燃料タンク34の後部側面には、図6に示すように、車体外面に設けられた燃料注入口39から注入された燃料を燃料タンク34に供給する燃料注入管40と、燃料タンク34内の空気を上記燃料注入口39の近傍に放出する空気放出管41との下端部が接続され、これらの燃料注入管40および空気放出管41が略鉛直に延びるように設置されている。
【0036】
上記のように車室後部の第1キックアップ部13からなるフロアパネル上に後席シート2が設けられた車両において、この後席シート2の後方に、フロアパネル面の後部を上方に段上げすることにより略平坦面からなる第2キックアップ部26を形成し、この第2キックアップ部26の下方で、かつ左右の後輪31,31間に燃料タンク34を支持し、この燃料タンク34の上面を、上記後席シート2の設置部に位置する第1キックアップ部13よりも上方に配設したため、燃料タンク34を適正に配設できるとともに、車室の後方に設けられた後部荷室3を有効に利用できるという利点がある。
【0037】
すなわち、上記後席シート2の後方に形成された第2キックアップ部26の下方に燃料タンク34を配設したため、上記後席シート2の下方に燃料タンク34を配設した場合に比べ、この燃料タンク34が配設された後部車体と、エンジン等の重量部材が配設された前部車体との重量バランスを効果的に向上できるとともに、上記第2キックアップ部26からなる後部荷室3の底部を略平坦面に形成して後部荷室3を有効に利用できるという利点がある。しかも、上記後席シート2が配設されるフロアパネル面(第1キックアップ部13の上面)を車体の下方側に位置させて車室内部を効果的に低床化しつつ、上記燃料タンク34の上下寸法を充分に確保することができる。この燃料タンク34の上下寸法を大きくすることにより、その強度を充分に確保することができるとともに、燃料タンク34内に燃料供給手段を適正に設置することにより、燃料の供給性能が悪化するのを効果的に防止することができ、かつ燃料タンク34内に配設されたフロート等を有する燃料計によって燃料の残留量を精度よく検出できるという利点もある。
【0038】
また、上記実施形態に示すように、燃料タンク34の後端部を後輪31の後端部よりも車体の前方側に配設した場合には、車両の後突時に入力された衝突荷重を上記後輪31の設置部において効果的に支持することができるため、燃料タンク34が衝突荷重の影響を受けて損傷するという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0039】
特に、上記実施形態では、車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のリヤサイドメンバ27,27と、このリヤサイドメンバ27,27により支持された左右一対のサスペンションアーム28,28と、両サスペンションアーム28,28を連結するトーションビーム29とを有する車両において、このトーションビーム29の後方側で燃料タンク34を支持するように構成したため、後輪31を支持するサスペンションメンバと上記サスペンションアーム28,28との間に形成された空間部を利用して燃料タンク34を適正に配設することができる。そして、車両の後突時に入力された衝突荷重を上記リヤサイドメンバ27,27において効果的に支持することにより、上記後輪31の設置部に入力される衝撃荷重を効果的に低減することができる。しかも、上記後輪31に側突荷重等が入力された場合においても、上記トーションビーム29がクロスメンバと同様の役割を果たして車体後部の剛性を効果的に向上させることができるため、燃料タンク34が衝突荷重の影響を受けるのを、より効果的に防止できるという利点がある。
【0040】
また、上記実施形態に示すように、燃料タンク34の後方に排気用の消音器36を配設するとともに、燃料タンク34の後面に形成された前下がりの傾斜面37により、車両の後突時に上記消音器36を燃料タンク34の下方側に案内する案内部を構成したため、燃料タンク34の後方側に上記消音器36を配設したにも拘わらず、車両の後突時に入力される衝突荷重に応じて上記消音器36が車体の前方側に押動された場合に、上記燃料タンク34に消音器36が強固に押し付けられるのを防止して、燃料タンク34の損傷を効果的に防止できるという利点がある。
【0041】
なお、上記燃料タンク34に設けられた傾斜面37に代え、後方のクロスメンバ33等に取り付けられたガイド部材により、車両の後突時に上記消音器36を燃料タンクの下方側に案内する案内部を構成してもよい。このように構成した場合には、車両の後突時に入力される衝突荷重に応じて上記消音器36が燃料タンク34に干渉するのを確実に防止できるため、この燃料タンク34を、より効果的に保護できるという利点がある。
【0042】
上記実施形態では、車幅方向に延びるクロスメンバ32,33を燃料タンク34の前後にそれぞれ配設するとともに、このクロスメンバ32,33に燃料タンク34を支持したため、このクロスメンバ32,33により燃料タンク34の設置部を効果的に保護することができるとともに、この燃料タンク34の取付作業を容易に行うことができる。
【0043】
また、上記支持プレート16および支軸23等からなる傾動支持機構により、後席シート2のシートバック15を起立状態からシートクッション14上に折り畳んだ状態へと傾動可能に支持するとともに、上記前側リンク17、後側リンク18および連結リンク24等からなる昇降支持機構により、後席シート2のシートクッション14を昇降可能に支持した場合には、後席シート2の不使用時に上記シートクッション14およびシートバック15をコンパクト化して格納することができる。したがって、上記シートバック15の背面を荷物等の載置面として利用できるとともに、後部荷室3の底面を構成する第2キックアップ部26を上方に大きく嵩上げする等の手段を講じることなく、上記後席シート2の後方に長い前後寸法を有するフラットな荷物載置面を形成することにより、上記後部荷室3の有効利用を図ることができるとともに、この後部荷室3に対する荷物の出し入れを容易化できるという利点がある。
【0044】
さらに、上記のように後席シート2の後方に形成された第2キックアップ部26の下方に燃料タンク34を配設して、この燃料タンク34を車体の後方側に位置させるように構成したため、車体の後部外面に設けられた燃料注入口39から注入された燃料を燃料タンク34に供給する燃料注入管40と、燃料タンク34内の空気を上記燃料注入口39の近傍に放出する空気放出管41とを、燃料タンク34から略鉛直に延びるように設置することが可能であり、これによって上記燃料供給管40および空気放出管41の設置長さを最小限に設定して、その設置コストを効果的に低減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る車両の後部車体構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記後部車体構造の具体的機構成を示す底面図である。
【図3】後列シートの格納状態を示す説明図である。
【図4】後輪のサスペンションメンバの具体的構成を示す斜視図である。
【図5】燃料タンクの取付状態を示す側面断面図である。
【図6】燃料供給管および空気放出管の設置状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 後列シート
14 シートクッション
15 シートバック
16 支持プレート(傾動支持機構)
17 前側リンク(昇降支持機構)
18 後側リンク(昇降支持機構)
21 支軸(傾動支持機構)
24 連結リンク(昇降支持機構)
26 第2キックアップ部
27 リヤサイドメンバ
28 サスペンションアーム
29 トーションビーム
31 後輪
32,33 クロスメンバ
34 燃料タンク
36 消音器
37 案内面(案内部)
39 燃料注入口
40 燃料供給管
41 空気放出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室後部のフロアパネル上に後席シートが設けられた車両において、この後席シートの後方には、フロアパネル面の後部が上方に段上げされることにより略平坦面からなるキックアップ部が形成され、このキックアップ部の下方で、かつ左右の後輪間に燃料タンクが支持され、この燃料タンクの上面が、上記後席シートの設置部に位置するフロアパネル面よりも上方に配設されたことを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記燃料タンクの後端部が後輪の後端部よりも車体の前方側に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のリヤサイドメンバと、このリヤサイドメンバにより支持された左右一対のサスペンションアームと、左右のサスペンションアームを連結するトーションビームとを有し、このトーションビームの後方側で燃料タンクが支持されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
燃料タンクの後方に排気用の消音器が配設されるとともに、この消音器を車両の後突時に燃料タンクの下方側に案内する案内部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
車幅方向に延びるクロスメンバが燃料タンクの前後にそれぞれ配設されるとともに、このクロスメンバに燃料タンクが支持されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
後席シートのシートバックを起立状態の使用位置からシートクッション上に折り畳んだ格納位置へと傾動可能に支持する傾動支持機構と、上記後席シートのシートクッションを昇降可能に支持する昇降支持機構とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
車体外面に設けられた燃料注入口から注入された燃料を燃料タンクに供給する燃料注入管と、燃料タンク内の空気を上記燃料注入口の近傍に放出する空気放出管とを有し、これらの燃料注入管および空気放出管が燃料タンクから略鉛直に延びるように設置されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−227134(P2009−227134A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75917(P2008−75917)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】