説明

車両室内における音声再生制御装置

【課題】FIRフィルタを用いて車両室内での音声再生において定位制御および空間制御を行う場合に、各制御の切替時に音声の再生ができない状態を回避する。
【解決手段】車両に設けられた室内に音声を再生する音声再生制御装置であって、音声信号に対して定位制御処理および空間制御処理をする独立したFIRフィルタを備え、何れかのFIRフィルタによってフィルタリングされた音声信号が選択され、音声が再生されるときは、該選択の前に選択されるFIRフィルタ用のフィルタ係数を予め設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内におけるオーディオや搭乗者への通知音等の音声再生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内において音声を再生させる際に定位制御を行う技術として、2スピーカーシステムでFIRフィルタに頭部伝達関数に対応するフィルタ係数を設定し、畳み込み演算を行う技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。また、該室内において空間制御を行う技術として、FIRフィルタを利用して残響音を付加する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。この技術においては、FIRフィルタを利用することで緻密な初期反射音や残響音を形成することが可能である。
【0003】
また、車両室内において定位制御と空間制御を行い、車両室内の広さやスピーカの配置、聴取位置等に応じて、音場をより好適なものとする技術が公開されている(例えば、特許文献3を参照。)。この技術においては、車室内の広さおよびスピーカ配置が一義的に決められた仮想車室内を定義し、仮想車室内の仮想車室内基準線における聴取環境と、対象車室内の対象車室内基準線における聴取環境とが同等となるように、空間制御を行う。その後、定位制御によって求められた、仮想車室内の各スピーカから出力される各音響信号の遅延時間および減衰量と、対象車室内の対応する各スピーカから出力される各音響信号の遅延時間および減衰量とを同等にすることで対象車室内の定位制御を行う。
【特許文献1】特開平10−23600号公報
【特許文献2】実開平6−26399号公報
【特許文献3】特開2003−274495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両室内での音声再生において定位制御および空間制御を行う場合、FIRフィルタが有用である。そして、このFIRフィルタを定位制御および空間制御に用いる場合、それぞれの制御に応じたフィルタ係数をFIRフィルタに設定する必要がある。従って、一台のFIRフィルタで定位制御および空間制御を行おうとすると、各制御毎にFIRフィルタを排他的に使用する必要があり、且つ実行する制御に応じたフィルタ係数を逐次FIRフィルタに設定する必要がある。その結果、車両室内で定位制御および空間制御を切り替えて行おうとする場合、FIRフィルタへのフィルタ係数設定に時間を要し、制御を切り替えた直後に音声を再生できない状態が存在する虞がある。
【0005】
本発明では、上記した問題に鑑み、FIRフィルタを用いて車両室内での音声再生において定位制御および空間制御を行う場合に、各制御の切替時に音声が直ちに再生できない状態を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記した課題を解決するために、車両室内における音声再生制御装置で、定位制御用のFIRフィルタと空間制御用のFIRフィルタを独立して設け、何れかの制御を切り替えて実行する場合、その切替の前に各制御に対応したFIRフィルタに適宜フィルタ係数を予め設定しておくこととした。このようにすることで、各制御に切り替えた後には該制御に応じたFIRフィルタにフィルタ係数が既に設定されていることになるため、該制御の切替直後、音声を直ちに再生することが可能となる。
【0007】
詳細には、本発明は、車両に設けられた室内に音声を再生する音声再生制御装置であって、音声信号を定位制御用FIRフィルタによって畳み込み演算する第一フィルタ手段と、所定の方向からの前記車両の搭乗者への頭部伝達関数に対応する前記定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定する第一フィルタ係数設定手段と、空間制御用FIRフィルタによって、音声信号に残響音信号を付加する第二フィルタ手段と、前記残響音信号に対応する前記空間制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定する第二フィルタ係数設定手段と、前記第一フィルタ手段によって出力された音声信号または前記第二フィルタ手段によって出力された音声信号の何れかを選択的に出力音声信号として出力する音声信号選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の音声再生制御装置では、音声信号は第一フィルタ手段もしくは第二フィルタ手段によってフィルタ処理される。ここで、それぞれのフィルタ手段に入力される音声信号は、同一の音声信号であってもよく、また独立した別々の音声信号であってもよい。
【0009】
先ず、第一フィルタ手段によって、音声信号に対して定位制御が行われるべく畳み込み演算が実行される。このとき、第一フィルタ手段においては、定位制御用FIRフィルタが利用され、そのフィルタ係数の設定は第一フィルタ係数設定手段によって行われる。このフィルタ係数は、上記の頭部伝達関数に対応した係数であり、上記の所定の方向とは、定位制御において音像を定位させたい、搭乗者から見た相対的な方向である。
【0010】
次に、第二フィルタ手段によって、音声信号に対して空間制御が行われるべく残響音信号の付加が実行される。このとき、第二フィルタ手段においては、空間制御用FIRフィルタが利用され、そのフィルタ係数の設定は第二フィルタ係数設定手段によって行われる。
【0011】
このように本発明に係る音声再生制御装置には、定位制御を専ら行う定位制御用FIRフィルタと空間制御を専ら行う空間制御用FIRフィルタが設けられている。そして、該音声再生制御装置へ最終的に出力される音声信号は、音声信号選択手段によって選択される。即ち、該音声再生制御装置においては、音声信号選択手段によって、定位制御用FIRフィルタを介して得られる畳み込み演算後の音声信号か空間制御用FIRフィルタを介して得られる残響音付加後の音声信号の何れかが選択されて、出力される。
【0012】
つまり、既に定位制御用にフィルタ係数が設定されている定位制御用FIRフィルタと既に空間制御用にフィルタ係数が設定されている空間制御用FIRフィルタとを切り替えることで、一つのFIRフィルタにおいて定位制御と空間制御とを切り替えて行う場合よりも、制御切替後に目的のフィルタ処理が施された音声をより速やかに再生することが可能となる。
【0013】
また、上記の音声再生制御装置において、前記音声信号選択手段によって前記第一フィルタ手段からの音声信号が選択されるときは、該選択の前に前記第一フィルタ係数設定手段によって前記定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定し、該音声信号選択手段によって前記第二フィルタ手段からの音声信号が選択されるときは、該選択の前に前記第二フィルタ係数設定手段によって前記空間制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定制御手段を、更に備えるようにしてもよい。即ち、音声信号選択手段によって音声信号が選択されるとき、フィルタ係数設定制御手段による制御が行われる。
【0014】
先ず、音声信号選択手段によって第一フィルタ手段からの音声信号が選択されるとき、換言すると、音声再生制御装置において空間制御から定位制御に切り替えられる前に、切替後の定位制御に応じたフィルタ係数を定位制御用FIRフィルタに設定する。従って、音声再生制御装置において定位制御が行われるようになる時点では、既に定位制御用FI
Rフィルタには好適なフィルタ係数が設定されていることになるため、定位制御切替直後から直ちに音声を再生することが可能となる。
【0015】
次に、音声信号選択手段によって第二フィルタ手段からの音声信号が選択されるとき、換言すると、音声再生制御装置において定位制御から空間制御に切り替えられる前に、切替後の空間制御に応じたフィルタ係数を空間制御用FIRフィルタに設定する。従って、音声再生制御装置において空間制御が行われるようになる時点では、既に空間制御用FIRフィルタには好適なフィルタ係数が設定されていることになるため、空間制御切替直後から直ちに音声を再生することが可能となる。
【0016】
ここで、上記の車両室内における音声再生制御装置において、前記定位制御用FIRフィルタは、複数の領域に分割され、前記第一フィルタ係数設定手段は、前記各領域にそれぞれ異なる方向からの前記搭乗者への頭部伝達関数に対応するフィルタ係数を設定するようにしてもよい。
【0017】
定位制御を行う場合、音像を定位させたい位置に応じた頭部伝達関数に合わせて定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定する必要がある。そこで、定位制御用FIRフィルタを複数の領域に分割し、各領域に予め定位させたい位置に応じた頭部伝達関数に適合したフィルタ係数を設定しておき、定位制御を行うとき、その音像の定位位置に応じていずれかの領域を選択することで、フィルタ係数の設定に要する時間を短縮することが可能となる。また、定位制御を実行している最中に音像の定位位置を変更したいとき、定位制御用FIRフィルタの領域を切り替えるだけでよいので、より迅速な定位位置の変更が可能となる。
【0018】
また、前記空間制御用FIRフィルタは、複数の領域に分割され、前記第二フィルタ係数設定手段は、前記各領域にそれぞれ異なるパターンの残響音信号に対応するフィルタ係数を設定するようにしてもよい。
【0019】
空間制御を行う場合、付加させたい残響音に合わせた空間制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定する必要がある。そこで、空間制御用FIRフィルタを複数の領域に分割し、各領域に予め付加させたい残響音のパターンに適合したフィルタ係数を設定しておき、空間制御を行うとき、その残響音に応じていずれかの領域を選択することで、フィルタ係数の設定に要する時間を短縮することが可能となる。また、空間制御を実行している最中に残響音のパターンを変更したいとき、空間制御用FIRフィルタの領域を切り替えるだけでよいので、より迅速な残響音のパターンの変更が可能となる。
【0020】
上述までの車両室内における音声再生制御装置において、前記第一フィルタ手段によって出力された音声信号および/または前記第二フィルタ手段によって出力された音声信号を所定時間、遅延させる遅延処理手段を、更に備えるようにしてもよい。
【0021】
第一フィルタ手段においては定位制御のために定位制御用FIRフィルタが利用されており、第二フィルタ手段においては空間制御のために空間制御用FIRフィルタが利用されている。これらのFIRフィルタでは、音声信号の特性によってはFIRフィルタからの出力を遅れさせるのが好ましい場合がある。例えば、音声再生制御装置で音声を再生させる場合、搭乗者に対して複数音源から同時に音声を出力するのが好ましいときがある。そのような場合、各音源の音声信号をFIRフィルタで順次フィルタリングすると、各音声信号の出力されるタイミングがフィルタリングに要する時間分だけずれる。そこで、このような場合には、遅延処理手段によって各音声信号の出力タイミングを調整する。
【0022】
また、音声信号の出力タイミングを目的とするタイミングとするために、遅延処理手段
によって音声信号を遅延させてもよい。従って、上記の所定時間とは、フィルタリングされた音声信号の音声再生制御装置への出力タイミングを目的のタイミングとするために調整される時間である。
【0023】
また、上記の音声再生制御装置において、前記音声信号は、前記車両に対する方向に関する情報を前記搭乗者に通知するための情報通知用信号であって、前記情報通知用信号が含む方向に関する情報が変化する場合、該変化後の方向を予測する方向予測手段を更に備え、前記第一フィルタ係数設定手段は、前記方向予測手段によって予測された変化後の方向に応じた頭部伝達関数に対応するフィルタ係数を前記定位制御用FIRフィルタに設定し、前記フィルタ係数設定制御手段は、前記音声信号選択手段によって前記情報通知用信号が選択されるとき、該選択の前に前記第一フィルタ係数設定手段によって前記定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定するようにしてもよい。
【0024】
該音声信号は、車両の搭乗者に、該車両に対する何らかの方向に関する情報を通知するための音声信号である。この方向に関する情報には、車両に対して何らかの物体が接近するときのその接近方向や、車両自身が進もうとする進行方向等、車両と何らかの関係を有する方向に関する情報が含まれる。
【0025】
そして、この情報通知用信号は、その方向に関する情報をより的確に搭乗者に知らせるべく第一フィルタ手段によって定位制御される。例えば、「右」に関する情報を搭乗者に通知する場合には、その通知音の音像が搭乗者の右側に定位するように定位制御が行われる。そして、この情報通知用信号に含まれる方向に関する情報が変化する場合、その変化方向を方向予測手段が予測し、フィルタ係数設定制御手段が、第一フィルタ係数設定手段を介して、その予測された方向に応じた頭部伝達関数に対応するフィルタ係数を定位制御用FIRフィルタに予め設定する。このようにすることで、音声信号選択手段によって定位制御された情報通知用信号が選択されると、その情報通知用信号が有する方向に関する情報に適合した定位位置に通知音を定位させた状態で、直ちに音声を再生することが可能となる。
【0026】
ここで、前記車両に対して接近する物体を検出する接近検出手段を、更に備える場合、前記情報通知用信号は、前記接近検出手段によって検出される前記車両へ接近する物体の接近方向に関する情報を前記搭乗者に通知する信号であってもよい。即ち、音声信号選択手段によって定位制御された情報通知用信号が選択されると、該物体の接近方向に準じた方向に、該物体の接近を知らせる通知音の音像が定位され、直ちに再生され得る。
【0027】
また、前記車両のナビゲーションを行うナビゲーション手段を、更に備える場合、前記情報通知用信号は、前記ナビゲーション手段によって指示される前記車両の進行方向または前記ナビゲーション手段によって指示される該車両の周囲環境物の存在方向に関する情報を前記搭乗者に通知する信号であってもよい。即ち、音声信号選択手段によって定位制御された情報通知用信号が選択されると、車両の進行方向または車両から見た周囲環境物の存在方向に、それらを知らせる通知音の音像が定位され、直ちに再生され得る。
【発明の効果】
【0028】
FIRフィルタを用いて車両室内での音声再生において定位制御および空間制御を行う場合に、各制御の切替時に音声が直ちに再生できない状態を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ここで発明に係る車両室内における音声再生制御装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明が適用される音声再生制御装置1が搭載される車両2の概略図である。車両2には室内空間3が設けられ、そこには車両2の操縦者4を含む搭乗者が滞在可能である。ここで、車両2の前方及び後方には音声再生制御装置1から出力された音声信号を音声に変換するスピーカ5a〜5hが設けられている。具体的には、車両2の前方左側には前方左側スピーカ5aおよび操縦者4の前方左側には前方左側補助スピーカ5cが、車両2の前方右側には前方右側スピーカ5bおよび操縦者4の前方右側には前方右側補助スピーカ5dが設けられている。更に、車両2の後方左側には後方左側スピーカ5eおよび操縦者4の後方左側には後方左側補助スピーカ5gが、車両2の後方右側には後方右側スピーカ5fおよび操縦者4の後方右側には後方右側補助スピーカ5hが設けられている。
【0031】
また、車両2の外側周囲には、車両2に対して外部から接近してくる物体を検出する接近センサ6a〜6hが設けられている。具体的には、車両2に対して斜め左前方向から接近してくる物体を検出する斜め左前方向接近センサ6a、車両2に対して前(正面)方向から接近してくる物体を検出する前方向接近センサ6b、車両2に対して斜め右前方向から接近してくる物体を検出する斜め右前方向接近センサ6c、車両2に対して左方向から接近してくる物体を検出する左方向接近センサ6d、車両2に対して右方向から接近してくる物体を検出する右方向接近センサ6e、車両2に対して斜め左後ろ方向から接近してくる物体を検出する斜め左後ろ方向接近センサ6f、車両2に対して後ろ(背面)方向から接近してくる物体を検出する後ろ方向接近センサ6g、車両2に対して斜め右後ろ方向から接近してくる物体を検出する斜め右後ろ方向接近センサ6hが、それぞれ設けられている。
【0032】
ここで、図2に基づいて音声再生制御装置1の概略構成を示す。音声再生制御装置1は、ナビゲーション装置10、ヘッドユニット20、制御部30、アンプ40とから構成される。ナビゲーション装置10は車両2のナビゲーションを行う装置であり、ナビゲーション情報を表示する表示部を有している。この表示部でのナビゲーション情報の表示に合わせて、操縦者4にナビゲーション情報を音声で伝える。このナビゲーション情報の音声については、音声信号がナビゲーション装置10から図2中の信号線L1に沿って制御部30に出力されるとともに、この音声信号に対していわゆる音像の定位制御が行われるべく定位制御用信号がナビゲーション装置10から図2中の信号線L2に沿って制御部30に出力される。該音声信号に対する定位制御については、後述する。
【0033】
また、ナビゲーション装置10には、上述した各接近センサ6a〜6hが電気的に接続されており、車両2に対して外部のどの方向から物体が接近しているが伝えられる。そして、この外部からの物体の接近情報に基づいて、ナビゲーション装置10は、制御部30に、物体接近の情報に関する音声信号と、該音声信号用の定位制御用信号を伝える。この物体接近の情報通知に関しても詳細は後述する。
【0034】
ヘッドユニット20は、車両室内3においてDVD(デジタルバーサタイルディスク)等を再生する装置であり、ナビゲーション装置10の有する上記表示部に画像情報を表示するとともに、該画像情報の表示に合わせて、操縦者4に音声を伝える。この画像情報に伴う音声については、音声信号がヘッドユニット20から図2中の信号線L3に沿って制御部30に出力されるとともに、この音声信号に対して残響音の付加を行ういわゆる空間制御が行われるべく空間制御用信号がヘッドユニット20から図2中の信号線L4に沿って制御部30に出力される。該音声信号に対する空間制御については、後述する。
【0035】
次に、制御部30における信号処理について説明する。信号線L1に沿って制御部30に入力された音声信号は、先ずA/Dコンバータ31でデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された音声信号は、FIRフィルタ32によって定位制御が施さ
れる。このFIRフィルタ32は、信号線L2に沿って制御部30中のマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という。)37に入力された定位制御用信号に従って、そのフィルタ係数が設定される。即ち、音声信号に対応する音像が、定位制御用信号に従った所定の位置に定位するべく、FIRフィルタ32のフィルタ係数が設定される。
【0036】
例えば、定位制御用信号が操縦者4の右側の近距離に音像を定位するという信号である場合には、スピーカ5c及び5d、または5g及び5hの出力による音像の定位位置が操縦者4の右側の近距離となるべく、各スピーカの該定位位置から操縦者4までの頭部伝達関数に対応したフィルタ係数が、マイコン37によってFIRフィルタ32に設定される。その結果、FIRフィルタ32によってデジタル信号はフィルタ係数に応じた畳み込み演算されることで、定位制御が行われる。そして、定位制御が行われた音声信号は、D/Aコンバータ33によってアナログ信号に変換される。
【0037】
ここで、信号線L1に沿って制御部30に音声信号を入力する処理が本発明に係る第一音声信号入力手段に該当し、FIRフィルタ32による畳み込み演算、即ち定位制御が本発明に係る第一フィルタ手段に該当し、マイコン37によるFIRフィルタ32のフィルタ係数の設定処理が本発明に係る第一フィルタ係数設定手段に該当する。
【0038】
また、信号線L3に沿って制御部30に入力された音声信号は、先ずA/Dコンバータ34でデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された音声信号は、FIRフィルタ35によって空間制御が施される。このFIRフィルタ34は、信号線L4に沿ってマイコン37に入力された空間制御用信号に従って、そのフィルタ係数が設定される。即ち、音声信号に対応して空間制御用信号に従った残響音が付加されるべく、FIRフィルタ35のフィルタ係数が設定される。
【0039】
例えば、コンサートホール、ライブハウス、教会、スタジアムのようにそれぞれ音の拡がり感が異なる場所の残響音のうちいずれかが選択されたことが、空間制御用信号によって伝えられると、その選択された音の拡がり感に応じた残響音が付加されるフィルタ係数が、マイコン37によってFIRフィルタ35に設定される。その結果、FIRフィルタ35によってデジタル信号に空間制御が施される。そして、空間制御が行われた音声信号は、D/Aコンバータ36によってアナログ信号に変換される。
【0040】
ここで、信号線L3に沿って制御部30に音声信号を入力する処理が本発明に係る第二音声信号入力手段に該当し、FIRフィルタ35による残響音の付加、即ち空間制御が本発明に係る第二フィルタ手段に該当し、マイコン37によるFIRフィルタ35のフィルタ係数の設定処理が本発明に係る第二フィルタ係数設定手段に該当する。
【0041】
本発明に係る音声再生制御装置1は、上述したように、音声信号の定位制御用のFIRフィルタ32と音声信号の空間制御用のFIRフィルタ35との、それぞれ独立したFIRフィルタを有している。そして、それぞれのFIRフィルタにマイコン37によって、各フィルタ行われる信号処理(定位制御または空間制御)に適したフィルタ係数が設定される。ここで、FIRフィルタ32とFIRフィルタ35によってフィルタリングされた音声信号は、セレクタ38によって何れか一方が選択されて、アンプ40に出力される。アンプ40では選択された信号が増幅されて、スピーカスピーカ5c及び5d、または5g及び5hに出力され、車両室内3に音声が再生される。
【0042】
このセレクタ38は、ナビゲーション装置10またはヘッドユニット20からの出力に基づいて、FIRフィルタ32によってフィルタリングされた音声信号を選択するか、またはFIR35によってフィルタリングされた音声信号を選択する。例えば、操縦者4が、ナビゲーション装置10によって車両のナビゲーションを行うときは、セレクタ38は
FIRフィルタ32によってフィルタリングされた音声信号を選択し、または操縦者4がヘッドユニット20に搭載されたDVDを使用するときは、セレクタ38はFIRフィルタ35によってフィルタリングされた音声信号を選択する。
【0043】
ここで、セレクタ38が何れかのFIRフィルタでフィルタリングされた音声信号を選択するとき、その選択の前に、マイコン37は選択される方のFIRフィルタのフィルタ係数を予め設定しておく。このマイコン37によるフィルタ係数の予めの設定が、本発明に係るフィルタ係数設定制御手段に該当する。従って、セレクタ38による選択が行われたときには既に選択された方のFIRフィルタにはフィルタ係数が設定されているため、ナビゲーション装置10またはヘッドユニット20から入力された信号に対して、それぞれのFIRフィルタによって定位制御または空間制御が施された音声信号を、直ちに車両室内3に再生することが可能となる。
【0044】
図3、4、5に基づいて、音声再生制御装置1で行われる音声再生の制御(以下、「音声再生制御」という。)について説明する。尚、図3に示す音声再生制御は、マイコン37によって一定のサイクルで繰り返し実行されるルーチンである。
【0045】
先ず、S101では、マイコン37に対して、定位制御から空間制御への制御モードの切替もしくは空間制御から定位制御への制御モードの切替が要求されたか否かが判定される。例えば、操縦者4からの要求によりヘッドユニット20でDVDを再生している状態においてナビゲーション装置10で車両2のナビゲーションを行うようにしたり、またはその逆の要求等が制御モードの切替の一例として挙げられる。制御モードの切替要求があると判定されるとS102へ進み、制御モードの切替要求がないと判定されると本制御を終了する。
【0046】
S102では、S101の判定の基礎となった切替後の制御に対応したFIRフィルタのフィルタ係数を設定すべく、該FIRフィルタのゲイン調整が行われる。ここで、定位制御を行うFIRフィルタ32は、図4(a)に示す構成を有する。FIRフィルタ32は八個の領域50〜57に分割されており、各領域に各方位から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数が設定されている。具体的には、車両2の斜め左前方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域50に、車両2の正面方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域51に、車両2の斜め右前方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域52に、車両2の左方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域53に、車両2の右方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域54に、車両2の斜め左後ろ方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域55に、車両2の後ろ方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域56に、車両2の斜め右後ろ方向から操縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数は領域57に、それぞれ予め設定されている。そして、各領域に、それぞれに対応したゲイン乗算器60〜67が設けられ、各領域においてフィルタリングされた音声信号にゲインを乗ずる。その後、各ゲイン乗算器でゲインが乗ざれた音声信号は足し合わされ、遅延処理部68にて遅延処理が行われる。この遅延処理については、後述する。
【0047】
また、空間制御を行うFIRフィルタ35は、図4(b)に示す構成を有する。FIRフィルタ35は2個の領域70、71に分割されており、各領域にパターンの異なる残響音に対応したフィルタ係数が設定されている。具体的には、コンサートホールの残響音(パターン1)に対応したフィルタ係数は領域70に、ライブハウスの残響音(パターン2)に対応したフィルタ係数は領域71に、それぞれ予め設定されている。そして、各領域に、それぞれに対応したゲイン乗算器72、73が設けられ、各領域においてフィルタリングされた音声信号にゲインを乗ずる。その後、各ゲイン乗算器でゲインが乗ざれた音声
信号は足し合わされ、遅延処理部74にて遅延処理が行われる。この遅延処理については、後述する。
【0048】
従って、S102では、定位制御および空間制御の何れかにおいて、ゲイン乗算器のゲインを調整することで、必要とするフィルタ係数をFIRフィルタ32もしくはFIRフィルタ35のフィルタ係数として設定することになる。S102の処理が終了すると、S103へ進む。
【0049】
S103では、定位制御が行われる場合は遅延処理部68によって、空間制御が行われる場合は遅延処理部74によって、遅延処理が実行される。遅延処理部68および遅延処理部74によって行われる遅延処理は、実質的に同一である。本実施例では、図5に基づいて、該遅延処理について説明する。
【0050】
本実施例では、音声信号のサンプリング周波数を44.1kHzとする。図5には、音声信号のモデル図が示されている。該音声信号は、タップ数nの左方向の信号に、タップ数nの右方向の信号がつながっている。ここで、左方向の音声信号がFIRフィルタ32またはFIRフィルタ35でフィルタリングされた後に、右方向の音声信号がフィルタリングされる。このとき、アンプ40への信号出力は左方向と右方向を同時に行うのが好ましい。そこで、先にフィルタリングされる左方向の音声信号をそのフィルタリングに要する時間分だけ遅延させて、右方向の音声信号と同時にアンプ40に出力する。本実施例では、上述のサンプリング周波数に従うと、遅延処理における左方向の信号の遅延時間は、22.67μs×n(タップ数)とし、右方向の信号の遅延時間を0sとすればよい。
【0051】
尚、遅延処理部68または74の遅延処理は、上述のように左右方向の信号を同時にアンプ40に出力することだけを目的とするのではなく、各FIRフィルタによってフィルタリングされた音声信号を、目的とするタイミングでアンプ40に出力するために遅延処理を行うことも可能である。
S103における遅延処理が終了すると、S104へ進む。
【0052】
S104では、セレクタ38によって、切替要求に従った制御モードに対応したFIRフィルタによるフィルタリング、即ち定位制御または空間制御の何れかが選択される。S104の処理後、本制御を終了する。
【0053】
本制御によると、セレクタ38によって、定位制御から空間制御に切り替えられる前に、または空間制御から定位制御に切り替えられる前に、切替後の制御に対応したFIRフィルタのフィルタ係数が予め設定されている。従って、セレクタ38による切替直後から音声を車両室内3に再生することが可能となる。また、図4のように各FIRフィルタを複数の領域に分割し、予め様々なフィルタ係数を設定しておくことで、ゲイン乗算器のゲイン値を調整するだけで、各FIRフィルタのフィルタ係数を調整することが可能となる。
【0054】
次に、図1および図6に示すように、車両2には、該車両に外部から接近する物体を検知する接近センサ6a〜6hが設けられている。これらの接近センサからの出力に基づいて、ナビゲーション装置10が物体の接近を通知するが、その際に該通知音に対して定位制御が施される。この際のFIRフィルタ32のフィルタ係数の設定に関する制御(以下、「方向情報通知制御」という。)について、図6、7、8に基づいて説明する。尚、この方向情報通知制御は、マイコン37によって実行されるルーチンである。
【0055】
図7に示す方向情報通知制御において、先ずS201では、図8(a)に示すように、FIRフィルタ32に分割して設けられた各領域に設定されている、各接近センサから操
縦者4に向かう頭部伝達関数に対応したフィルタ係数を、遠方からの頭部伝達係数に対応するFar係数に設定する。即ち、図6(a)に示すように、車両2の遠方に物体が存在する場合を想定して、これらの状態に対応したFar係数を設定する。これにより、この時点で、セレクタ38によって定位制御が選択されるときであって、物体の接近を知らせる通知音を車両室内3に再生するとき、該物体が遠方に存在することを定位制御を介して音像がその遠方に定位しているように通知音を直ちに再生することが可能となる。S201の処理が終了すると、S202へ進む。
【0056】
S202では、外部からの物体が車両2に接近する方向を予測する。図6(b)に示すように外部からの物体7が車両2にどの方向から近づき、どのようにその接近方向が変化していくかを、接近センサ6a〜6hの検出値に基づいて予測する。S202の処理が終了すると、S203へ進む。
【0057】
S203では、S202での予測結果に基づいて、物体7が今後接近する可能性の高い車両2の部位(以下、「接近部」という。)と、物体7が今後接近する可能性が低い車両2の部位(以下、「非接近部」という。)が、それぞれ優先順位を付けて3箇所ずつ決定される。本実施例においては、車両2に対して物体7が左斜め前から図6(b)に示す矢印の方向に接近している。そこで、S203では、接近部の第一候補として接近センサ6aが決定され、非接近部の第一候補としてその対角に位置する接近センサ6hが決定される。尚、図6(b)において、接近部は黒丸で、非接近部は黒三角の記号で表されている。
【0058】
次に、物体7の移動方向から、接近部の第二候補として接近センサ6bが決定され、非接近部の第二候補としてその対角に位置する接近センサ6gが決定される。更に、接近部の第三候補として接近センサ6dが決定され、非接近部の第三候補としてその対角に位置する接近センサ6eが決定される。S203の処理が終了すると、S204へ進む。
【0059】
S204では、S203で決定された接近部と非接近部とに基づいて、図8(a)に示すFIRフィルタ32のフィルタ係数の一部が、近距離からの頭部伝達関数であるNear係数に変更される。具体的には、先ず、最も物体7が接近する可能性が低い部位である接近センサ6hの方向から操縦者4への遠方からの頭部伝達関数に対応するフィルタ係数(Far係数)を、最も物体7が接近する可能性が高い部位である接近センサ6aの方向から操縦者4への近距離からの頭部伝達関数に対応するフィルタ係数(Near係数)に置き換える。これは、図8(b)の(1)で示される領域におけるフィルタ係数の設定である。
【0060】
次に、二番目に物体7が接近する可能性が低い部位である接近センサ6gの方向から操縦者4への遠方からの頭部伝達関数に対応するフィルタ係数(Far係数)を、二番目に物体7が接近する可能性が高い部位である接近センサ6bの方向から操縦者4への近距離からの頭部伝達関数に対応するフィルタ係数(Near係数)に置き換える。これは、図8(b)の(2)で示される領域におけるフィルタ係数の設定である。
【0061】
更に、三番目に物体7が接近する可能性が低い部位である接近センサ6eの方向から操縦者4への遠方からの頭部伝達関数に対応するフィルタ係数(Far係数)を、二番目に物体7が接近する可能性が高い部位である接近センサ6dの方向から操縦者4への近距離からの頭部伝達関数に対応するフィルタ係数(Near係数)に置き換える。これは、図8(b)の(3)で示される領域におけるフィルタ係数の設定である。このように、一部の方向からのフィルタ係数を近距離からのフィルタ係数に置き換えた後、本制御を終了する。
【0062】
本制御によると、物体7の動きからその接近を知らせる可能性が高い順に、FIRフィルタ32のフィルタ係数が設定されるとともに、物体7の接近を知らせる可能性が低い順にFIRフィルタ32のフィルタ係数が消去される。従って、FIRフィルタ32のフィルタ係数のうち、使用可能性が高いフィルタ係数が図8に示すように設定される。その結果、セレクタ38によって、定位制御が選択されるときであって、物体7の接近を通知する通知音が、その音像が該接近方向に接近の程度に応じた距離感をもって定位されるとき、その定位制御に適合したフィルタ係数を予めFIRフィルタ32に設定しておくことが可能となる。よって、制御切替後、直ちに車両室内3に通知音を再生することが可能となる。
【0063】
また、操縦者4に対して方向に関する情報を通知する場合として、ナビゲーション装置10による車両2のナビゲーション処理が挙げられる。この場合、車両2が進むべき方向をナビゲーション装置10が操縦者4に通知するが、その通知音に対して定位制御を施すことで、車両2が進むべき方向に該通知音の音像を定位させて、操縦者4に車両2の進むべき方向をより感覚的に知らせることが可能となる。この際のFIRフィルタ32のフィルタ係数の設定に関する方向情報通知制御について、図9、10、11に基づいて説明する。
【0064】
図9に示す方向情報通知制御において、先ずS301では、ナビゲーション装置10によるナビゲーション処理が開始される。本実施例においては、図10に示すように、スタート地点から直進し、その後右折する。更に、直進し、左折した後に直進してゴール地点に向かう行程をナビゲーション装置10によって、ナビゲーションされる。S301の処理が終了すると、S302へ進む。
【0065】
S302では、ナビゲーション装置10によるナビゲーション処理に従って、車両2の進行方向が予測される。具体的には、図10に示す行程における右折地点Cの300m手前Aと左折地点Dの300m手前Bにおいて、車両2がそれぞれ右折することおよび左折することが予測される。S302の処理が終了すると、S303へ進む。
【0066】
S303では、S302で予測された進路方向に基づいて、FIRフィルタ32のフィルタ係数が設定される。具体的に、図11に基づいてフィルタ係数の設定について説明する。先ず、スタート直後は、FIRフィルタ32のフィルタ係数には、車両2の正面方向からの頭部伝達関数に応じたフィルタ係数が設定される。その後、右折地点手前のA地点で、該フィルタ係数を、車両2の右方向からの頭部伝達関数に応じたフィルタ係数に設定する。その後、右折完了後のC地点通過時に、再び、該フィルタ係数を、車両2の正面方向からの頭部伝達関数に応じたフィルタ係数に設定する。
【0067】
更に、左折地点手前のB地点で、該フィルタ係数を、車両2の左方向からの頭部伝達関数に応じたフィルタ係数に設定する。その後、左折完了後のD地点通過時に、再び、該フィルタ係数を、車両2の正面方向からの頭部伝達関数に応じたフィルタ係数に設定する。
S303の処理後、本制御を終了する。
【0068】
本制御によると、車両2の予測された進行方向に応じて、FIRフィルタ32のフィルタ係数が設定される。従って、セレクタ38によって定位制御が選択されたときであって、車両2の進行方向が操縦者4に通知されるとき、既にその進行方向に応じたフィルタ係数がFIRフィルタ32に設定されているので、定位制御への切替後、直ちに通知音を車両室内3に再生することが可能となる。また、フィルタ係数に正面方向からの頭部伝達関数に応じたフィルタ係数が設定されている場合は、該前方に存在する車両2の周囲の建物やランドマークを、ナビゲーション装置10によって操縦者4に通知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例に係る音声再生制御装置が搭載される車両の概略図である。
【図2】本発明の実施例に係る音声再生制御装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る音声再生制御装置において実行される、音声再生制御に関するフローチャートである。
【図4】本発明の実施例に係る音声再生制御装置を構成する定位制御用のFIRフィルタおよび空間制御用のFIRフィルタの概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る音声再生制御装置において、定位制御用のFIRフィルタまたは空間制御用のFIRフィルタによってフィルタリングされる音声信号のモデル図である。
【図6】本発明の実施例に係る音声再生制御装置において、車両に対して接近する物体を検知する接近センサの働きを示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る音声再生制御装置において実行される、方向情報通知制御に関する第一のフローチャートである。
【図8】図7に示す方向情報通知制御によって定位制御用のFIRフィルタに設定されるフィルタ係数を示すテーブルである。
【図9】本発明の実施例に係る音声再生制御装置において実行される、方向情報通知制御に関する第二のフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に係る音声再生制御装置において、車両のナビゲーション装置によってナビゲーションされる車両の行程を示す図である。
【図11】図9に示す方向情報通知制御よって定位制御用のFIRフィルタに設定されるフィルタ係数を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・音声再生制御装置
2・・・・車両
3・・・・車両室内
4・・・・搭乗者
5a〜5h・・・・スピーカ
6a〜6h・・・・接近センサ
7・・・・物体
10・・・・ナビゲーション装置
20・・・・ヘッドユニット
30・・・・制御部
32・・・・FIRフィルタ(定位制御用のFIRフィルタ)
35・・・・FIRフィルタ(空間制御用のFIRフィルタ)
37・・・・マイコン(マイクロコンピュータ)
38・・・・セパレータ
40・・・・アンプ
50〜57・・・・領域
60〜67・・・・ゲイン乗算器
68・・・・遅延処理部
70、71・・・・領域
72、73・・・・ゲイン乗算器
74・・・・遅延処理部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた室内に音声を再生する音声再生制御装置であって、
音声信号を定位制御用FIRフィルタによって畳み込み演算する第一フィルタ手段と、
所定の方向からの前記車両の搭乗者への頭部伝達関数に対応する前記定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定する第一フィルタ係数設定手段と、
空間制御用FIRフィルタによって、音声信号に残響音信号を付加する第二フィルタ手段と、
前記残響音信号に対応する前記空間制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定する第二フィルタ係数設定手段と、
前記第一フィルタ手段によって出力された音声信号または前記第二フィルタ手段によって出力された音声信号の何れかを選択的に出力音声信号として出力する音声信号選択手段と、
を備えることを特徴とする車両室内における音声再生制御装置。
【請求項2】
前記音声信号選択手段によって前記第一フィルタ手段からの音声信号が選択されるときは、該選択の前に前記第一フィルタ係数設定手段によって前記定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定し、該音声信号選択手段によって前記第二フィルタ手段からの音声信号が選択されるときは、該選択の前に前記第二フィルタ係数設定手段によって前記空間制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定制御手段を、更に備えることを特徴とする請求項1に記載の車両室内における音声再生制御装置。
【請求項3】
前記定位制御用FIRフィルタは、複数の領域に分割され、
前記第一フィルタ係数設定手段は、前記各領域にそれぞれ異なる方向からの前記搭乗者への頭部伝達関数に対応するフィルタ係数を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両室内における音声再生制御装置。
【請求項4】
前記空間制御用FIRフィルタは、複数の領域に分割され、
前記第二フィルタ係数設定手段は、前記各領域にそれぞれ異なるパターンの残響音信号に対応するフィルタ係数を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両室内における音声再生制御装置。
【請求項5】
前記第一フィルタ手段によって出力された音声信号および/または前記第二フィルタ手段によって出力された音声信号を所定時間、遅延させる遅延処理手段を、更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の車両室内における音声再生制御装置。
【請求項6】
前記音声信号は、前記車両に対する方向に関する情報を前記搭乗者に通知するための情報通知用信号であって、
前記情報通知用信号が含む方向に関する情報が変化する場合、該変化後の方向を予測する方向予測手段を更に備え、
前記第一フィルタ係数設定手段は、前記方向予測手段によって予測された変化後の方向に応じた頭部伝達関数に対応するフィルタ係数を前記定位制御用FIRフィルタに設定し、
前記フィルタ係数設定制御手段は、前記音声信号選択手段によって前記情報通知用信号が選択されるとき、該選択の前に前記第一フィルタ係数設定手段によって前記定位制御用FIRフィルタのフィルタ係数を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両室内における音声再生制御装置。
【請求項7】
前記車両に対して接近する物体を検出する接近検出手段を、更に備え、
前記情報通知用信号は、前記接近検出手段によって検出される前記車両へ接近する物体の接近方向に関する情報を前記搭乗者に通知する信号であることを特徴とする請求項6に記載の車両室内における音声再生制御装置。
【請求項8】
前記車両のナビゲーションを行うナビゲーション手段を、更に備え、
前記情報通知用信号は、前記ナビゲーション手段によって指示される前記車両の進行方向または前記ナビゲーション手段によって指示される該車両の周囲環境物の存在方向に関する情報を前記搭乗者に通知する信号であることを特徴とする請求項6に記載の車両室内における音声再生制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−340324(P2006−340324A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166143(P2005−166143)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】