説明

車両状態判定装置

【課題】車両の走行状態とレーン区画線を考慮して、車両がオンロード状態又はオフロード状態にあるかを判定する車両状態判定装置を提供する。
【解決手段】後方カメラ3によって撮像された画像からレーン区画線を検出する(S2、S3)とともに、車両2が走行するレーンを特定し(S4)、道路の最も左側のレーンを走行する車両が車両の左側にある路面に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S6:YES)、又は道路の最も右側のレーンを走行する車両が車両の右側にある路面に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S7:YES)に、車両2が車道外側線を超えてオンロード状態からオフロード状態になったと判定する(S10)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両がオンロード状態又はオフロード状態のいずれにあるかを判定する車両状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより車両の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体またはネットワークを通じて取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。更に、かかるナビゲーション装置では、取得した地図データに基づく地図画像をモニタ画面に描画するとともに地図画像上の所定箇所に車両マーク(自車マーク)を重ねて描画することにより、車両の現在位置をユーザに報知する。そして、車両が移動すると、車両の現在位置が変化に従い画面の車両マークを移動したり、或いは車両マークは画面中央等の所定位置に固定しつつ地図画像をスクロールする。
【0003】
ここで、車両の現在位置を検出する為に用いられるGPSでは、車両の現在位置(緯度・経度)を正確に検出することが困難であり、実際の車両の現在位置と検出された現在位置とに誤差が生じる可能性があった。従って、車両が道路上を走っていても、GPSで検出した自車の現在位置上に地図データの道路が存在しない場合も生じる。そのような場合には近くの道路へと車両の現在位置を引き込むマップマッチングを行うことにより、検出の誤差を修正していた。
【0004】
しかしながら、そのような修正を行うこととすると、例えば車両が道路を外れて地図データとしては登録されていない林道や駐車場内を走行する場合に、地図データとして登録されている近くの道路に現在位置が引き込まれてしまうという誤ったマップマッチングが行われてしまう虞がある。そこで、従来では、そのような誤ったマップマッチングを防ぐために、車両が道路を走行するオンロード状態にあるか、車両が道路以外を走行するオフロード状態にあるかを判定する判定処理が行われていた。例えば、特開2006−177862号公報には道路の路側帯部を車両が跨いだか否かを判定し、跨いだと判定されたことを条件に車両がオンロード状態にあった場合にはオフロード状態に移行したと判定し、車両がオフロード状態にあった場合にはオンロード状態に移行したと判定するオン/オフロード判定装置について記載されている。
【特許文献1】特開2006−177862号公報(第7−8頁、図11〜図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1に記載されたオン/オフロード判定装置では、カメラで撮像した画像の画像認識を行い、撮像された画像中の白線の位置のみに基づいて車両がオンロード状態からオフロード状態へと移行したこと、及び車両がオフロード状態からオンロード状態へと移行したことを判定している。従って、白線の見え方によっては誤って車両がオフロード状態又はオンロード状態にあることを判定してしまう場合がある。
【0006】
具体的には、複数レーンからなる道路を車両が走行する場合であって、一のレーンから他のレーンへと車線変更を行う場合に、移動するレーン間に形成された白線を車両が跨ぐこととなるが、その際に道路の路側帯部を車両が跨いだと誤認識されてしまう。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両の走行状態とレーン区画線を考慮して、車両がオンロード状態又はオフロード状態にあるかを正確に判定することが可能な車両状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に車両状態判定装置は、路面に形成されたレーンを区画するレーン区画線を検出する区画線検出手段と、区画線検出手段によって検出されたレーン区画線を車両が跨いだか否か判定する跨ぎ判定手段と、複数レーンから構成される道路を車両が走行する場合に、車両が走行するレーンを特定するレーン特定手段と、前記跨ぎ判定手段によって前記区画線を跨いだと判定された場合に、前記レーン特定手段によって特定されたレーンに基づいて車両がオフロード状態又はオンロード状態のいずれかにあるかを判定するオフロード判定手段と、を有することを特徴とする。
尚、ここで「レーン区画線」とは、車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線、車道幅員の変更、路上障害物の接近、路上駐車場、導流帯等の路面標示をいう。
また、「オフロード状態」とは、道路以外の領域を車両が走行する状態をいい、「オンロード状態」とは、道路内の領域を車両が走行する状態をいう。
【0009】
また、請求項2に係る車両状態判定装置は、請求項1に記載の車両状態判定装置において、前記オフロード判定手段は、前記車両が前記道路の最も左側のレーンを走行し、且つ車両の左側に形成された前記レーン区画線を跨いだ場合に車両がオフロード状態にあると判定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る車両状態判定装置は、請求項1に記載の車両状態判定装置において、前記オフロード判定手段は、前記車両が前記道路の最も右側のレーンを走行し、且つ車両の右側に形成された前記レーン区画線を跨いだ場合に車両がオフロード状態にあると判定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る車両状態判定装置は、路面に形成されたレーンを区画するレーン区画線を検出する区画線検出手段と、区画線検出手段によって検出されたレーン区画線を車両が跨いだか否か判定する跨ぎ判定手段と、前記レーン区画線の種別を検出する区画線種別検出手段と、前記跨ぎ判定手段によって前記レーン区画線を跨いだと判定された場合に、前記車両が跨いだレーン区画線の種別に基づいて車両がオフロード状態又はオンロード状態のいずれかにあるかを判定するオフロード判定手段と、を有することを特徴とする。
尚、ここで「レーン区画線の種別」とは、レーン区画線の指示内容(車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線、車道幅員の変更、路上障害物の接近、路上駐車場、導流帯)の他、線の形状(実線、破線)、線の配置、線の太さ等をいう。
【0012】
更に、請求項5に係る車両状態判定装置は、請求項4に記載の車両状態判定装置において、前記オフロード判定手段は、前記車両が跨いだレーン区画線が実線である場合に車両がオフロード状態にあると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1の車両状態判定装置では、路面に形成されたレーン区画線を車両が跨いだと判定された場合に、車両が走行するレーンに基づいて車両がオフロード状態又はオンロード状態のいずれかにあるかを判定するので、車両の走行状態と車両周囲にあるレーン区画線を用いてオンロード状態かオフロード状態であるかを正確に判定することが可能となる。そして、ナビゲーション装置に適用すれば、マップマッチング処理による位置補正を実施しながらも、正確な車両位置を検出でき、適切な案内を行うことができる。
【0014】
また、請求項2の車両状態判定装置では、道路の最も左側のレーンを走行する車両が車両の左側にある路面に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合に、車両がオフロード状態にあると判定するので、車両がレーン区画線を跨いだタイミングで車両が左側に位置する車道外側線を超えてオンロード状態からオフロード状態へと移行したことを正確に判定することが可能となる。
【0015】
また、請求項3の車両状態判定装置では、道路の最も右側のレーンを走行する車両が車両の右側にある路面に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合に、車両がオフロード状態にあると判定するので、車両がレーン区画線を跨いだタイミングで車両が右側に位置する車道外側線を超えてオンロード状態からオフロード状態へと移行したことを正確に判定することが可能となる。
【0016】
また、請求項4の車両状態判定装置では、路面に形成されたレーン区画線を車両が跨いだと判定された場合に、車両が跨いだレーン区画線の種別に基づいて車両がオフロード状態又はオンロード状態のいずれかにあるかを判定するので、車両の走行状態と車両周囲にあるレーン区画線を用いてオンロード状態かオフロード状態であるかを正確に判定することが可能となる。そして、ナビゲーション装置に適用すれば、マップマッチング処理による位置補正を実施しながらも、正確な車両位置を検出でき、適切な案内を行うことができる。
【0017】
更に、請求項5の車両状態判定装置では、車両が実線のレーン区画線を跨いだと判定された場合に、車両がオフロード状態にあると判定するので、車両がレーン区画線を跨いだタイミングで車両が車道外側線を超えてオンロード状態からオフロード状態へと移行したことを正確に判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両状態判定装置について具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、第1実施形態に係る車両状態判定装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る車両状態判定装置1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る車両状態判定装置1は、車両2に対して設置された後方カメラ3、ナビゲーション装置4等で構成されている。
【0019】
後方カメラ3は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両2の後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、走行時に車両2の進行方向と逆方向となる車両後方を撮像し、後述のように車両2の周囲の路面上に形成されたレーンを区画するレーン区画線等の路面標示を検出する。そして、検出されたレーン区画線に基づいて車両2が道路内の領域を走行するオンロード状態か、道路以外の領域(例えば駐車場)を走行するオフロード状態かが後述のように判定される。尚、レーン区画線としては、車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線、車道幅員の変更、路上障害物の接近、路上駐車場、導流帯等がある。
【0020】
また、ナビゲーション装置4は、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)6と、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイ7と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ8と、車両2の現在地と進行方向を地図上で特定する現在地検出部9と、地図に関する地図データが記憶されたデータ記録部10と、情報センタ等と通信を行う為の通信装置11とから構成されている。
【0021】
ナビゲーションECU(区画線検出手段、跨ぎ判定手段、レーン特定手段、オフロード判定手段、区画線種別検出手段)6は、通常の経路探索及び経路案内の処理の他に、レーン区画線を検出するレーン区画線検出処理、レーン区画線を跨いだか否か判定する跨ぎ判定処理、車両2が走行するレーンを特定するレーン特定処理、車両がオフロード状態又はオンロード状態にあるかを判定するオフロード判定処理、レーン区画線の種別(実線、破線)を検出する区画線種別検出処理等を行う電子制御ユニットである。尚、ナビゲーションECU6の詳細な構成については後述する。
【0022】
次に、第1実施形態に係る車両状態判定装置1の制御系に係る構成について特にナビゲーション装置4を中心にして図2に基づき説明する。図2は第1実施形態に係る車両状態判定装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
図2において、車両状態判定装置1の制御系は、ナビゲーション装置4と、車両ECU5を基本にして構成され、各制御手段に対して所定の周辺機器が接続されている。
【0023】
以下に、ナビゲーション装置4を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出部9は、GPS31、地磁気センサ32、ジャイロセンサ33、ステアリングセンサ34、距離センサ35、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位、所定地点からの走行距離等を検出することが可能となっている。
【0024】
具体的には、GPS31は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出し、地磁気センサ32は、地磁気を測定することによって自車方位を検出する。
【0025】
そして、ジャイロセンサ33は自車の旋回角を検出する。ここで、ジャイロセンサ33としては、例えば、ガスレートジャイロ、振動ジャイロ等が使用される。また、ジャイロセンサ33によって検出された旋回角を積分することにより、自車方位を検出することができる。
【0026】
また、ステアリングセンサ34は自車の舵(だ)角を検出する。ここで、ステアリングセンサ34としては、例えば、ステアリングホイール(図示せず)の回転部に取り付けられた光学的な回転センサ、回転抵抗センサ、車輪に取り付けられた角度センサ等が使用される。
【0027】
更に、距離センサ35はエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて、移動速度(積算移動距離)を検出する。
【0028】
また、データ記録部10は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された所定のプログラム、地図データ等の経路案内及び地図表示に必要な情報が格納された地図情報DB41等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。そして、地図情報DB41は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ42、ノード点に関するノードデータ43、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等から構成されている。
【0029】
また、ナビゲーションECU6は、ナビゲーション装置4の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPUの他に、CPUが各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAMや、制御用のプログラムのほか、目的地までの経路の探索、探索した誘導経路の案内を行う経路案内処理プログラム、後方カメラ3で撮像した画像に基づいて車両2がオンロード状態又はオフロード状態のいずれにあるかを判定するオフロード判定処理プログラム(図3参照)が記録されたROM等の内部記憶装置を備えている。尚、前記RAM、ROM等としては半導体メモリ、磁気コア等が使用される。そして、演算装置及び制御装置としては、CPUに代えてMPU等を使用することも可能である。
【0030】
また、ナビゲーションECU6には、GUI制御部51、ロケーション部52、経路探索・案内処理部53、オフロード判定部を備え、後方カメラ3、現在地検出部9、データ記録部10及び各周辺機器から取得した情報に基づいて、各種制御を行う。
【0031】
ここで、GUI制御部51は、地図DB41から読み出した地図データとロケーション部52によって検出された自車の現在位置とに基づいて自車周囲の適当な地図画像を液晶ディスプレイ7に表示させるとともに、経路の案内が必要な場合には地図画像に対してアイコンや案内画面、探索経路等を合成して液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、ロケーション部52は、現在地検出部9から供給される各情報に基づいて、車両2の現在の絶対位置(緯度・経度)を検出する。
また、経路探索・案内処理部53は、目的地が設定された場合においてデータ記録部10に記憶されたノード点データや探索データに基づいて現在地から目的地までの経路探索を行うとともに、設定された誘導経路に従って液晶ディスプレイ7やスピーカ8を用いて経路の案内を行う。
更に、オフロード判定部54は、後方カメラ3で撮像した画像に基づいて車両がレーン区画線を跨いだと判定した場合に、車両2の走行するレーン位置やレーン区画線の種別から車両がオンロード状態を継続しているか、又はオフロード状態へと移行したかを判定する。
【0032】
また、前記ナビゲーションECU6には、液晶ディスプレイ7、スピーカ8、通信装置11等の各周辺装置が電気的に接続されている。
【0033】
液晶ディスプレイ7には、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。尚、液晶ディスプレイ7の代わりに、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ等を使用したり、車両のフロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を使用することも可能である。
【0034】
また、スピーカ8は、ナビゲーションECU6からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスを出力する。ここで、案内される音声ガイダンスとしては、例えば、「200m先の交差点を右折してください。」や「この先の国道○○号線が渋滞しています。」等がある。
【0035】
そして、通信装置11は、情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報、サービスエリアの混雑状況等の各情報から成る交通情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するビーコンレシーバである。また、通信装置11としては、LAN、WAN、イントラネット、携帯電話回線網、電話回線網、公衆通信回線網、専用通信回線網、インターネット等の通信回線網等の通信系において通信を可能とするネットワーク機器であっても良い。
【0036】
続いて、前記構成を有する本実施形態に係る車両状態判定装置1のナビゲーションECU6が実行するオフロード判定処理プログラムについて図3に基づき説明する。図3は本実施形態に係る車両状態判定装置1におけるオフロード判定処理プログラムのフローチャートである。ここで、オフロード判定処理プログラムは、車両2が路面を走行する際において後方カメラ3により撮像した撮像画像からレーン区画線を検出するとともに、検出したレーン区画線から車両がオンロード状態かオフロード状態かを判定するものである。尚、以下の図3にフローチャートで示されるプログラムはナビゲーションECU6が備えているROMやRAMに記憶されており、CPUにより所定時間間隔(例えば200ms毎)で繰り返し実行される。
【0037】
オフロード判定処理では、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、ナビゲーションECU6は現在地検出部9によって検出した車両2の現在地情報と地図情報DB41に記録されたリンクデータ42に基づいて、車両2が現在走行する道路のレーン数を検出する。
【0038】
次に、S2では後方カメラ3で撮像した画像からレーン区画線の画像認識処理が行われる。そして、S3では前記S2の画像認識処理の結果に基づいてレーン区画線及びレーン区画線の種別を検出する。ここで、図4は車両2の左側の路面60に形成された車線境界線61と、右側の路面60に形成された車道中央線62との間を走行する車両2を示した俯瞰図、図5は図4の状態における車両2の後方カメラ3によって撮像された撮像画像63を示した模式図である。
【0039】
後方カメラ3は、車両2の後バンパー64付近から後方を撮像できるように光軸を水平から所定角度下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。そして、S2のレーン区画線の画像認識処理では、後方カメラ3によって撮像される車両2の後方環境の画像を取り込んで解析処理を行い、車両が走行する路面上に形成されたレーン区画線の境界線を特定するとともに、検出されたレーン区画線の種別を判定する。
具体的には、先ず、NTSCのようなアナログ通信手段や、i−linkのようなデジタル通信手段を用いて後方カメラ3で撮像した映像を入力し、jpeg、mpeg等のデジタル画像フォーマットに変換する。次に、レーン区画線が一般に白線又は黄線であることを用いて、撮像画像中のレーン区画線が描かれた路面と他の路面を輝度差に基づいて輝度補正を行う。その後、対象となるレーン区画線を画像から分離する2値化処理、歪みを補正する幾何学処理、画像の雑音を除去する平滑化処理等を行い、レーン区画線と他の路面との境界線を検出する。
その後、S3でナビゲーションECU6は、検出された境界線の形状から検出されたレーン区画線の位置や種別を特定する。例えば、図5に示す撮像画像63に対して認識処理を行った場合には、車両の左側の路面60に実線からなる車線境界線61が形成されていることが検出され、車両の右側の路面60に破線からなる車道中央線62が形成されていることが検出される。尚、上記S3が区画線検出手段及び区画線種別検出手段の処理に相当する。
【0040】
続いて、S4でナビゲーションECU6は、前記S1で検出されたレーン数と、前記S3で検出されたレーン区画線の配置、本数、種別に基づいて車両2が走行するレーンを特定する。尚、前記S4の処理は車両2が複数レーンから構成される道路を走行する場合にのみ行われる。また、上記S4がレーン特定手段の処理に相当する。
【0041】
そして、S5でナビゲーションECU6は、前記S3で検出されたレーン区画線の配置に基づいて、車両がレーン区画線を跨いだか否か判定する。ここで、本実施形態に係る車両状態判定装置1では、レーン区画線の消失点が撮像画像外へと移動した場合に、車両がレーン区画線を跨いだと判定する。
【0042】
以下に、図6及び図7を用いて前記S5のレーン区画線の跨ぎ判定処理について具体例を挙げて説明する。ここで、図6は路面70から駐車場71へと進入する車両2を示した俯瞰図、図7は図6の各(A)〜(C)の状態で車両2の後方カメラ3によって撮像された撮像画像72、73、74を示した模式図である。
【0043】
図6及び図7に示すように車両2が路面70を通常走行する状態(A)では、車両2の左側に形成されたレーン区画線である左車道外側線75と、車両2の右側に形成されたレーン区画線である右車道外側線76と車線境界線77がそれぞれ含まれる撮像画像72が後方カメラ3によって撮像される。その後、画像認識処理(S3)を行うことによって、左車道外側線75、右車道外側線76、車線境界線77がそれぞれ検出される(S4)。その際、左車道外側線75と右車道外側線76をそれぞれ延長した線が交差する消失点Sは図7に示すように撮像画像内に位置する。従って、(A)に示す車両2の状態では、S5の処理でレーン区画線を跨いでいないと判定される。
【0044】
また、図6及び図7に示すように車両2が路面70に隣接する駐車場71へと進入する為に左車道外側線75の跨ぎを開始した状態(B)では、撮像画像72と同じく車両2の左側に形成された左車道外側線75と、車両2の右側に形成された右車道外側線76と車線境界線77がそれぞれ含まれる撮像画像73が後方カメラ3によって撮像される。その後、画像認識処理(S3)を行うことによって、左車道外側線75、右車道外側線76、車線境界線77がそれぞれ検出される(S4)。その際、左車道外側線75と右車道外側線76をそれぞれ延長した線が交差する消失点Sは図7に示すように撮像画像内に位置する。従って、(B)に示す車両2の状態では、S5の処理でまだレーン区画線を跨いでいないと判定される。
【0045】
更に、図6及び図7に示すように車両2が路面70に隣接する駐車場71へと進入し、左車道外側線75の跨ぎを終了した状態(C)では、車両2が跨いだ左車道外側線75と、車両2の右側に形成された右車道外側線76と車線境界線77がそれぞれ含まれる撮像画像73が後方カメラ3によって撮像される。その後、画像認識処理(S3)を行うことによって、左車道外側線75、右車道外側線76、車線境界線77がそれぞれ検出される(S4)。その際、左車道外側線75と右車道外側線76をそれぞれ延長した線が交差する消失点Sは図7に示すように撮像画像外に位置する。従って、(C)に示す車両2の状態では、S5の処理でレーン区画線を跨いだと判定される。
【0046】
そして、前記S5においてナビゲーションECU6がレーン区画線を跨いだと判定した場合(S5:YES)にはS6へと移行する。一方、ナビゲーションECU6がレーン区画線を跨いでいないと判定した場合(S5:NO)には、車両2が継続して道路上を走行するオンロード状態にあると判定し(S9)、当該オフロード判定処理プログラムを終了する。尚、上記S5が跨ぎ判定手段の処理に相当する。
【0047】
S6でナビゲーションECU6は、前記S4で特定された車両の走行するレーン位置が道路の最も左側(単一のレーンからなる道路を車両が走行している場合を含む)であって、車両2の左側に形成されたレーン区画線を跨いだか否か判定する。そして、車両の走行するレーン位置が道路の最も左側であって、且つ車両2の左側に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S6:YES)には、車両2は左側に形成されたレーン区画線を越えてオンロード状態からオフロード状態に移行したと判定される(S10)。一方、車両の走行するレーン位置が道路の最も左側のレーン以外のレーンであるか、又は最も左側のレーンであっても車両2の右側に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S6:NO)には、S7へと移行する。
【0048】
ここで、前記S6の判定処理について、図8に示す4レーンから構成される道路を車両が走行する場合を例に挙げて説明する。例えば、最も左側のレーン81を走行する車両82が、車両2の左側に形成されたレーン区画線83を跨いだ場合には、車両85が道路を外れて駐車場や施設内へと進入すると予測されるので、オフロード状態と判定する(S10)。
一方、レーン81以外のレーン(例えばレーン84)を走行する車両85が、車両2の左側に形成されたレーン区画線86を跨いだ場合には、車両85が左側のレーンに車線変更すると予測されるので、オンロード状態と判定する(S9)。
【0049】
続いて、S7でナビゲーションECU6は、前記S4で特定された車両の走行するレーン位置が道路の最も右側(単一のレーンからなる道路を車両が走行している場合を含む)であって、車両2の右側に形成されたレーン区画線を跨いだか否か判定する。そして、車両の走行するレーン位置が道路の最も右側であって、且つ車両2の右側に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S7:YES)には、車両2は右側に形成されたレーン区画線を越えてオンロード状態からオフロード状態に移行したと判定される(S10)。一方、車両の走行するレーン位置が道路の最も右側のレーン以外のレーンであるか、又は最も右側のレーンであっても車両2の左側に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S7:NO)には、S8へと移行する。
【0050】
S8でナビゲーションECU6は、前記S3で検出したレーン区画線の種別に基づいて、車両2が跨いだレーン区画線が実線であったか否かを判定する。そして、車両2が跨いだレーン区画線が実線であったと判定された場合(S8:YES)には、車両2が跨いだレーン区画線は車道外側線であると予測し、車両2はオンロード状態からオフロード状態に移行したと判定される(S10)。一方、車両2が跨いだレーン区画線が破線であったと判定された場合(S8:NO)には、車両2が跨いだレーン区画線は車線境界線であると予測し、車両2は継続して道路上を走行するオンロード状態であると判定される(S9)。その後、当該オフロード判定処理プログラムを終了する。尚、上記S6〜S10がオフロード判定手段の処理に相当する。
【0051】
そして、本実施形態に係る車両状態判定装置1では、上記オフロード判定処理プログラムで判定したオンロード状態又はオフロード状態の判定結果に基づいて、車両2の正確な地図上の位置を液晶ディスプレイ7に表示することが可能となる。また、車両2がオフロード状態にあるときにはオフロード状態に適したナビゲーションの案内やサービスを提供し、オンロード状態にあるときにはオンロード状態に適したナビゲーションの案内やサービスを提供することができる。
【0052】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る車両状態判定装置1では、後方カメラ3によって撮像された画像からレーン区画線を検出する(S2、S3)とともに、車両2が走行するレーンを特定し(S4)、道路の最も左側のレーンを走行する車両が車両の左側にある路面に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S6:YES)、又は道路の最も右側のレーンを走行する車両が車両の右側にある路面に形成されたレーン区画線を跨いだと判定された場合(S7:YES)に、車両2が車道外側線を超えてオンロード状態からオフロード状態になったと判定する(S10)ので、車両の走行状態と車両周囲にあるレーン区画線を用いてオンロード状態かオフロード状態であるかを正確に判定することが可能となる。そして、ナビゲーション装置4に適用することによって、マップマッチング処理による位置補正を実施しながらも、正確な車両位置を検出でき、適切な案内を行うことができる。
また、車両2が実線のレーン区画線を跨いだと判定された場合(S8:YES)に、車両2が車道外側線を超えてオンロード状態からオフロード状態になったと判定する(S10)ので、車両の走行状態と車両周囲にあるレーン区画線を用いてオンロード状態かオフロード状態であるかを正確に判定することが可能となる。
【0053】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではレーン区画線を検出する手段として車両2の後方に配置した後方カメラで撮像した画像に対して画像認識処理を施すことにより検出していたが、後方カメラの替わりに車両の前方に配置した前方カメラを用いても良い。また、本実施形態で用いる後方カメラは、BGM(バック・ガイド・モニタ)画像を撮像する為のカメラを兼用するのが望ましい。
【0054】
また、本実施形態では車両2が跨いだレーン区画線が、実線か破線かに基づいてオフロード状態又はオンロード状態の判定を行うこととしているが、レーン区画線の指示内容(車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線、車道幅員の変更、路上障害物の接近、路上駐車場、導流帯)や線の配置、線の太さ等に基づいてオフロード状態又はオンロード状態の判定を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る車両状態判定装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る車両状態判定装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る車両状態判定装置におけるオフロード判定処理プログラムのフローチャートである。
【図4】車両の左側の路面に形成された車道外側線と、右側の路面に形成された車線境界線との間を走行する車両を示した俯瞰図である。
【図5】図4の状態における車両の後方カメラによって撮像された撮像画像を示した模式図である。
【図6】路面から駐車場へと進入する車両を示した俯瞰図である。
【図7】図6の各(A)〜(C)の状態で車両の後方カメラによって撮像された撮像画像を示した模式図である。
【図8】4レーンから構成される道路を走行する車両を示す俯瞰図である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両状態判定装置
2 車両
3 後方カメラ
6 ナビゲーションECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に形成されたレーンを区画するレーン区画線を検出する区画線検出手段と、
区画線検出手段によって検出されたレーン区画線を車両が跨いだか否か判定する跨ぎ判定手段と、
複数レーンから構成される道路を車両が走行する場合に、車両が走行するレーンを特定するレーン特定手段と、
前記跨ぎ判定手段によって前記区画線を跨いだと判定された場合に、前記レーン特定手段によって特定されたレーンに基づいて車両がオフロード状態又はオンロード状態のいずれかにあるかを判定するオフロード判定手段と、を有することを特徴とする車両状態判定装置。
【請求項2】
前記オフロード判定手段は、前記車両が前記道路の最も左側のレーンを走行し、且つ車両の左側に形成された前記レーン区画線を跨いだ場合に車両がオフロード状態にあると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両状態判定装置。
【請求項3】
前記オフロード判定手段は、前記車両が前記道路の最も右側のレーンを走行し、且つ車両の右側に形成された前記レーン区画線を跨いだ場合に車両がオフロード状態にあると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両状態判定装置。
【請求項4】
路面に形成されたレーンを区画するレーン区画線を検出する区画線検出手段と、
区画線検出手段によって検出されたレーン区画線を車両が跨いだか否か判定する跨ぎ判定手段と、
前記レーン区画線の種別を検出する区画線種別検出手段と、
前記跨ぎ判定手段によって前記レーン区画線を跨いだと判定された場合に、前記車両が跨いだレーン区画線の種別に基づいて車両がオフロード状態又はオンロード状態のいずれかにあるかを判定するオフロード判定手段と、を有することを特徴とする車両状態判定装置。
【請求項5】
前記オフロード判定手段は、前記車両が跨いだレーン区画線が実線である場合に車両がオフロード状態にあると判定することを特徴とする請求項4に記載の車両状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−2797(P2009−2797A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163998(P2007−163998)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】