説明

車両用制御装置

【課題】本発明は、車体の振動を抑える電動アクチュエータに大きな回生電力が発生しても部品の破損を防ぎつつ、当該電動アクチュエータの作動が停止しても乗り心地の悪化を抑制することができる、車両用制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】車体の振動を抑える電動アクチュエータ4と、前記車体に設けられた座席の振動を抑える電動アクチュエータ9と、電動アクチュエータ4と電動アクチュエータ9のいずれかを駆動可能な駆動装置11と、電動アクチュエータ4の回生電力によって駆動装置11が破損するか否かを判断する判断手段10と、電動アクチュエータ4の回生電力が駆動装置11に伝達することを遮断する遮断手段とを備え、駆動装置11が破損しないと判断された場合、駆動装置11によって電動アクチュエータ4が駆動され、駆動装置11が破損すると判断された場合、駆動装置11によって電動アクチュエータ9が駆動される、車両用制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の振動を抑える電動アクチュエータと座席の振動を抑える電動アクチュエータとを備える、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動アクチュエータを備えたサスペンションシステムにおいて、コイルの回生制動力をアブゾーバの減衰力として利用することにより、消費電力を低減しつつ車体を適切に制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−161881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車体の振動を抑える電動アクチュエータに発生する回生電力は路面状態によって大きく異なるため、上述の従来技術では、想定される最大の回生電力が発生しても破損しないような部品を事前に選定しなければならなかった。また、当該電動アクチュエータの作動が停止することにより減衰力の制御ができなくなると、乗り心地が悪化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、車体の振動を抑える電動アクチュエータに大きな回生電力が発生しても部品の破損を防ぎつつ、当該電動アクチュエータの作動が停止しても乗り心地の悪化を抑制することができる、車両用制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用制御装置は、
車体の振動を抑える第1の電動アクチュエータと、
前記車体に設けられた座席の振動を抑える第2の電動アクチュエータと、
前記第1の電動アクチュエータと前記第2の電動アクチュエータのいずれかを駆動可能な駆動装置と、
前記第1の電動アクチュエータの回生電力によって前記駆動装置が破損するか否かを判断する判断手段と、
前記第1の電動アクチュエータの回生電力が前記駆動装置に伝達することを遮断する遮断手段とを備え、
前記判断手段によって前記駆動装置が破損しないと判断された場合、前記回生電力が前記駆動装置に伝達することが前記遮断手段によって遮断されずに、前記駆動装置によって前記第1の電動アクチュエータが駆動され、
前記判断手段によって前記駆動装置が破損すると判断された場合、前記回生電力が前記駆動装置に伝達することが前記遮断手段によって遮断されて、前記駆動装置によって前記第2の電動アクチュエータが駆動される、ことを特徴とする、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体の振動を抑える電動アクチュエータに大きな回生電力が発生しても部品の破損を防ぎつつ、当該電動アクチュエータの作動が停止しても乗り心地の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る車両用制御装置の実施形態である車両懸架装置100の構成図である。
【図2】車両用懸架装置100を含むサスペンションシステム500の構成図である。
【図3】車両懸架装置100の動作の流れを表すフローチャートである。
【図4】回生保護モードの期間を示した図である。
【図5】電磁アクチュエータ4が停止している状態での車両懸架装置100の動作の流れを表すフローチャートである。
【図6】サスペンションシステムが停止時のシート90のアクティブ制御を示した図である。
【図7】本発明に係る車両用制御装置の実施形態である車両懸架装置200の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。図1は、本発明に係る車両用制御装置の実施形態である車両用懸架装置100の構成図である。図2は、車両用懸架装置100を含むサスペンションシステム500の構成図である。サスペンションシステム500は、路面からの入力によるエネルギーを、電磁アクチュエータ4(4a,4b,4c,4d)のコイルによって発生する回生電力に変換する機構を備える。車両用懸架装置100は、車体50の振動を抑える電磁アクチュエータ4と、車体50の車室内に設けられたシート90の振動を抑える電磁アクチュエータ9と、電磁アクチュエータ4と電磁アクチュエータ9のいずれか一方を駆動可能な駆動装置であるEDU(Electronic Drive Unit)11と、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力によってEDU11が破損するか否かを判断するECU(Electronic Control Unit)10と、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することを遮断する遮断手段である切替機構20とを備える。
【0010】
ECU10によってEDU11が破損しないと判断された場合、EDU11の接続先が切替機構20によって電磁アクチュエータ4に切り替えられて、EDU11によって(電磁アクチュエータ9が駆動されずに)電磁アクチュエータ4が駆動される。一方、ECU10によってEDU11が破損すると判断された場合、EDU11の接続先が切替機構20によって電磁アクチュエータ9に切り替えられることにより電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することが遮断されて、EDU11によって(電磁アクチュエータ4が駆動されずに)電磁アクチュエータ9が駆動される。
【0011】
したがって、車両用懸架装置100によれば、大きな路面入力が予測される際に電磁アクチュエータ4に発生する回生エネルギーがEDU11に伝達することを切替機構20の切替動作によって防止することができるため、EDU11の破損を防止することができる。そして、切替機構20の切替動作によって、EDU11が電磁アクチュエータ4を駆動することができないために、車体50の振動を抑えることができなくても、EDU11がシート90の振動を抑えるように電磁アクチュエータ9を駆動することができるので、操縦安定性と乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0012】
以下、各構成について詳細説明する。
【0013】
図2に示したサスペンションシステム200において、1(1a,1b,1c,1d)は、各輪に接続されたばね上Gセンサ、2(2a,2b,2c,2d)は各輪に接続されたばね下Gセンサ、3(3a,3b,3c,3d)は、各輪に接続された車高センサ、4(4a,4b,4c,4d)は、各輪に接続された電磁アクチュエータである。
【0014】
右前輪51a側の車体50の取り付け部位に、ばね上Gセンサ1a,ばね下Gセンサ2a,車高センサ3a,電磁アクチュエータ4aが設置されている。左前輪51b側の車体50の取り付け部位に、ばね上Gセンサ1b,ばね下Gセンサ1b,車高センサ3b,電磁アクチュエータ4bが設置されている。右後輪51c側の車体50の取り付け部位に、ばね上Gセンサ1c,ばね下Gセンサ1c,車高センサ3c,電磁アクチュエータ4cが設置されている。左後輪51d側の車体50の取り付け部位に、ばね上Gセンサ1d,ばね下Gセンサ1d,車高センサ3d,電磁アクチュエータ4dが設置されている。
【0015】
ばね上Gセンサ1とばね下Gセンサ2は、車体50の加速度を検知する。「ばね上」とは、電磁アクチュエータ4に構成されるばねにより支えられる車体側部材の位置をいい、「ばね下」とは、電磁アクチュエータ4に構成されるばねにより支えられていない車輪側部材の位置をいう。
【0016】
車高センサ3は、車体50の上下方向の位置(車高)を検出する。電磁アクチュエータ4は、車体50の振動を抑える電動アクチュエータである。各電磁アクチュエータ4は、電動のモータ14及びモータ14の回転を検出するレゾルバなどを有するショックアブゾーバ、ばね下をばね上に弾性的に支持するばね(コイルスプリング)とを備える。また、各電磁アクチュエータ4は、モータ14の温度を検出するサーミスタ、モータ14の通電を遮断可能なモータリレーなどを備えていてもよい。電磁アクチュエータ4の作動によって車高が微調整されることにより、車体50の振動が抑えられる。すなわち、ECU10とEDU11によってモータ14が適切に回転駆動されることにより、車体50に取り付けられたモータ14に対して、上下方向に可動する可動部が上方向又は下方向に動くことによって、車体50の振動を抑えることができる。なお、電磁アクチュエータ4の構造は、モータ14に回生電力が発生するものであれば、特に限定されない。例えば、電磁アクチュエータ4として、リニアモータを使用してもよい。
【0017】
車高スイッチ5及び走行モードスイッチ6は、車室内に設けられ、乗員の操作入力に応じた信号を出力する。乗員のスイッチ操作によって、車高スイッチ5から、車高の調整を指示する信号が出力され、走行モードスイッチ6から、サスペンションの硬さの調整を指示する信号が出力される。
【0018】
ECU10は、車高スイッチ5及び走行モードスイッチ6からの指示信号に従い、ばね上Gセンサ1、ばね下Gセンサ2、車高センサ3、レゾルバなどのアナログ又はデジタルの信号に基づいて、電磁アクチュエータ4のモータ14の駆動によって車体20の振動が減衰するように、モータ14を駆動するEDU11を、EDU11a,11b,11c,11d毎に独立に制御する。
【0019】
EDU11aは、右前輪51a側の電磁アクチュエータ4aのモータ14を駆動し、EDU11bは、左前輪51b側の電磁アクチュエータ4bのモータ14を駆動し、EDU11cは、右後輪51c側の電磁アクチュエータ4cのモータ14を駆動し、EDU11dは、左後輪51d側の電磁アクチュエータ4dのモータ14を駆動する。ECU10と各EDU11は、CAN等の通信ライン15によって互いに接続されている。
【0020】
路面の凸凹等による各車輪51の上下動によって各電磁アクチュエータ4のモータ14が回される際に発生する回生制動力が、車体50の振動を減衰させる減衰力として利用される。ECU10は、モータ14が回されることによる電磁誘導によって生じた電流と逆向きの電流がモータ14に流れるようにEDU11を制御することによって、ばね上とばね下との間の減衰力を調整する。
【0021】
DC−DCコンバータ31は、トランスやスイッチングレギュレータ等の電圧変換制御回路部を備え、モータ14に電流を流すためのEDU11の動作電源電圧として、ハイブリッド用高電圧バッテリ32の電圧を降圧変換した電圧を生成する。この降圧電圧が、EDU11内のスイッチング素子SW1〜6の電源電圧(ドレイン−ソース間電圧もしくはコレクタ−エミッタ間の電圧)に相当する。もちろん、EDU11の動作電源電圧として、DC−DCコンバータ31によって生成された電圧を使用せずに、補機用バッテリ33の電圧を使用するようにしてもよい。
【0022】
一方、図1に示した車両用懸架装置100において、EDU11は、IGBT,MOSFET,バイポーラトランジスタ等の半導体から構成されるスイッチング素子SW1〜6を有する駆動素子部12と、駆動素子部12内の各スイッチング素子SWをオン/オフさせるためのプリドライブ信号を出力する駆動回路13とを備える、インバータである。図1に示したEDU11は、図2に示したEDU11a〜11dの中のいずれかであればよい。
【0023】
EDU11は、ECU10が出力する三相(U,V,W)の駆動信号(PWM信号)に従い各スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、直流電力を交流電力に変換して、電磁アクチュエータ4に構成されるモータ14と電磁アクチュエータ9に構成されるモータ19のいずれか一方を駆動する。
【0024】
電磁アクチュエータ9は、車体50のシート90の振動を抑える減衰力を発生させる電動アクチュエータである。電磁アクチュエータ9は、電動のモータ19を備える。電磁アクチュエータ9の作動によってシート90の上下方向の位置が微調整されることにより、シート90の振動が抑えられる。すなわち、ECU10とEDU11によってモータ19が適切に回転駆動されることにより、車体50に取り付けられたモータ19に対して、上下方向に可動する可動部が上方向又は下方向に動くことによって、シート90の振動を抑えることができる。なお、電磁アクチュエータ9の構造は、EDU11の駆動構成によって駆動可能なものであって、シート90をアクティブに車体50に対して上下方向に移動させることが可能な可動部を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電磁アクチュエータ9として、リニアモータを使用してもよい。
【0025】
電磁アクチュエータ9は、シート90の下に設けられ、シート90と車体50との間に架設されている。図1では、一つのシート90の下に設けられている一つの電磁アクチュエータ9を代表的に示しているが、各シート下に電磁アクチュエータ9が設けられていてもよい。各EDU11が自身の搭載位置から一番近い位置に搭載された電磁アクチュエータ9を独立に駆動する構成を採用することによって、EDU11と電磁アクチュエータ9との間の配線を短くすることができる。例えば、運転席が車両の右側にある場合、EDU11aが運転席の下に設置された電磁アクチュエータ9のモータ19を駆動し、EDU11bが助手席の下に設置された電磁アクチュエータ9のモータ19を駆動してもよい。後部座席についても同様である。また、車両懸架用の電磁アクチュエータ4のモータ14を駆動するために必要な駆動電力は、シート用の電磁アクチュエータ9のモータ19を駆動するために必要な駆動電力に比べて大きいため、一つのEDU11が、複数の電磁アクチュエータ9のモータ19を駆動してもよい。
【0026】
EDU11の駆動対象は、詳細は後述するが、切替機構20の切替動作によって、電磁アクチュエータ4と電磁アクチュエータ9のどちらか一方が選択される。したがって、電磁アクチュエータ4に接続されたEDU11は、電磁アクチュエータ4を駆動することができるが、電磁アクチュエータ9を駆動することができない。逆に、電磁アクチュエータ9に接続されたEDU11は、電磁アクチュエータ9を駆動することができるが、電磁アクチュエータ4を駆動することができない。
【0027】
EDU11のスイッチング素子SW1,3,5は、電源電圧に短絡するハイサイドのスイッチング素子であり、スイッチング素子SW2,4,6は、グランド(基準電位)に短絡するローサイドのスイッチング素子である。各スイッチング素子SW1〜6には、ダイオードが並列に接続(又は、内蔵)される。各ダイオードD1〜6は、グランドから電源電圧への方向(エミッタからコレクタへの方向)を順方向とする(電源電圧側がカソードとなる)。
【0028】
スイッチング素子SW1とSW2との接続点は、ハーネス22aを介して、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)のU相コイルとV相コイルの接続点に接続される。スイッチング素子SW3とSW4との接続点は、ハーネス22bを介して、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)のU相コイルとW相コイルの接続点に接続される。スイッチング素子SW5とSW6との接続点は、ハーネス22cを介して、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)のV相コイルとW相コイルの接続点に接続される。
【0029】
ECU10は、EDU11に送出する三相の駆動信号を出力する三相駆動回路と、中央演算処理装置などを有するマイクロコンピュータを備える制御ユニットである。ECU10のマイクロコンピュータは、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)に内蔵されるモータの三相の状態を取得し、EDU11の駆動素子部12の6つのスイッチング素子SW1〜6の通電パターンを決める。ECU10のマイクロコンピュータは、その三相駆動回路を介して、その通電パターンに従って定められた三相の駆動信号をEDU11の駆動回路13に出力する。その結果、駆動回路13は三相の駆動信号に従って6つのスイッチング素子SW1〜6を駆動し、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)に内蔵されるモータを回転させる。例えば、ECU10のマイクロコンピュータは、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)に内蔵されるモータに流れる電流を検出する電流センサから出力される電流検出信号に基づいて、検出された電流値とその電流方向を取得することによって、電磁アクチュエータ4(又は、電磁アクチュエータ9)に内蔵されるモータのロータの電気的な位置(電気角)を検出し、その電気角に基づいて三相の駆動信号を出力する。
【0030】
また、ECU10は、電磁アクチュエータ4のモータ14により発生する回生電力によって、EDU11が破損するか否かを判断する判断手段である。すなわち、ECU10は、電磁アクチュエータ4のモータ14に発生する回生電力によるEDU11の破損が予測されるか否かを判断する判断手段(予測手段)である。ECU10は、発生が予想される回生電力によってEDU11が破損しないと判断した場合には、EDU11の接続先を電磁アクチュエータ4に切り替えて、EDU11の駆動対象を電磁アクチュエータ4に設定する。一方、ECU10は、発生が予想される回生電力によってEDU11が破損すると判断した場合には、EDU11の接続先を電磁アクチュエータ9に切り替えて、EDU11の駆動対象を電磁アクチュエータ9に設定する。
【0031】
つまり、EDU11は、回生電力によるEDU11の破損がECU10によって予測されない場合、電磁アクチュエータ4を駆動し、回生電力によるEDU11の破損がECU10によって予測される場合、電磁アクチュエータ9を駆動する。
【0032】
また、電磁アクチュエータ9のモータ19にも回生電力が発生する場合、電磁アクチュエータ9のモータ19に発生する回生電力によるEDU11の破損を防ぐため、電磁アクチュエータ9のモータ19に発生する最大の回生電力は、電磁アクチュエータ4のモータ14に発生する最大の回生電力に比べて、小さい。
【0033】
このように、EDU11を破損させる程度の回生電力が電磁アクチュエータ4のモータ14に発生する前にEDU11の接続先を電磁アクチュエータ4から電磁アクチュエータ9に切り替えることによって、EDU11を破損させる程度の回生電力が発生しても、EDU11が破損することを未然に防ぎつつ、電磁アクチュエータ4を駆動する代わりに電磁アクチュエータ9を駆動することによって乗り心地の良さを確保することができる。EDU11の接続先の切り替えは、切替機構20によって行われる。
【0034】
切替機構20は、EDU11の接続先を選択的に切り替える切替手段であるが、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することを遮断する遮断手段でもある。切替機構20は、EDU11と電磁アクチュエータ4との間に設けられる。切替機構20の具体例として、リレーが挙げられる。切替機構20は、スイッチング素子SW1とSW2との接続点とU相コイルとV相コイルとの接続点を結ぶハーネス22aに設けられた切替部20aと、スイッチング素子SW3とSW4との接続点とU相コイルとW相コイルとの接続点を結ぶハーネス22bに設けられた切替部20bと、スイッチング素子SW5とSW6との接続点とV相コイルとW相コイルとの接続点を結ぶハーネス22cに設けられた切替部20cとを有する。
【0035】
また、車両用懸架装置100は、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することを遮断する遮断手段として、短絡機構26を備えてもよい。短絡機構26は、ハーネス22aとハーネス22bとの間を短絡可能な短絡部26aと、ハーネス22bとハーネス22cとの間を短絡可能な短絡部26bとを有する。短絡部26aは、モータ19とハーネス22a,22bとの接続点に対してモータ14側の位置で、ハーネス22aとハーネス22bとの間を短絡する。短絡部26bは、モータ19とハーネス22b,22cとの接続点に対してモータ14側の位置で、ハーネス22bとハーネス22cとの間を短絡する。短絡部26a及び短絡部26bによってハーネス同士が短絡することによって、回生ブレーキによる車体50の振動を減衰させる減衰力を発生させることができると同時に、モータ14に発生した回生電力がEDU11に伝達することを遮断することができる。
【0036】
また、EDU11のローサイドのスイッチング素子SW2,4,6を、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することを遮断する遮断手段として機能させることもできる。スイッチング素子SW2,4,6を全てオンにすることによって、ハーネス22a,22b,22cはグランドに短絡されるので、モータ14に発生した回生電力がハーネス22a,22b,22cを介してEDU11に伝達することを遮断することができる。
【0037】
電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することを遮断するための遮断動作(すなわち、切替機構20の切替動作、短絡機構26の短絡動作、スイッチング素子SW2,4,6のオン動作)は、ECU10によって制御される。
【0038】
図3は、車両用懸架装置100の動作の流れを表すフローチャートである。ECU10は、回生電力の発生によりEDU11が破損するか否かを予測するために必要な情報(回生電力破壊予測情報)を入手する(ステップ10)。
【0039】
ECU10は、回生電力破壊予測情報として、例えば、車両の進行方向の路面の起伏情報を入手する。路面の起伏情報は、例えば、道路に関する詳細なデータを含んだ地図情報、路面状況を撮影した画像情報、路面状況を検出可能なミリ波レーダーによって、取得することができる。この起伏情報は、路面の起伏の状態を特定可能なデータである。ECU10は、例えば、ナビゲーション装置等の記憶装置に予め格納された地図情報に基づいて、車両の進行方向の路面に関する起伏情報を入手してもよいし、車外カメラ等によって撮影した画像情報に基づいて、車両の進行方向の路面に関する起伏情報を入手してもよいし、ミリ波レーダーによる検出データに基づいて、車両の進行方向の路面に関する起伏情報を入手してもよい。
【0040】
ECU10は、車両の進行方向の路面に関する起伏情報に基づいて、モータ14に発生する回生電力の大きさを予測する。ECU10は、起伏情報によって特定される路面の起伏状態に応じて回生電力の大きさを演算する。路面の起伏が大きいほど大きな回生電力が発生する。
【0041】
また、ECU10は、回生電力破壊予測情報として、例えば、モータ14に発生した回生電力が印加される部位の状態情報を入手する。モータ14に発生した回生電力が印加される部位の状態情報として、例えば、回生電力によって最も破損しやすい最弱部(例えば、スイッチング素子SW)の温度情報や、スイッチング素子SWの電圧情報などが挙げられる。ECU10は、モータ14に発生した回生電力が印加される部位の状態情報に基づいて、当該部位がモータ14に発生した回生電力によって破損するか否かを予測する。ECU10は、例えば、当該部位の温度が所定値以上あれば、当該部位の破損が予測されると判断し、スイッチング素子SWの電圧が所定値以上あれば、当該部位の破損が予測されると判断する。
【0042】
また、ECU10は、回生電力破壊予測情報として、例えば、モータ14の回転速度に関する回転速度情報を入手する。ECU10は、モータ14の回線速度に応じて回生電力の大きさを演算する。回転速度が大きいほど大きな回生電力が発生する。
【0043】
ECU10は、回生電力破壊予測情報によって予測された結果に基づいて、回生保護モードへの移行が必要か否かを判断する(ステップ12)。ECU10は、回生保護モードへの移行が必要ないと判断した場合、制御モードを通常モードに設定し、EDU11によって電磁アクチュエータ4を駆動することにより車体50の振動を抑える通常制御を実施する(ステップ20)。ECU10は、制御モードを通常モードに設定して通常制御を実施する場合、EDU11の接続先を切替機構20によって電磁アクチュエータ4に切り替えて、EDU11の駆動対象を電磁アクチュエータ4に設定する。
【0044】
一方、ECU10は、回生保護モードへの移行が必要ありと判断した場合、制御モードを回生保護モードに設定し、モータ14に発生した回生電力がEDU11に伝達することを遮断する保護制御を実施する(ステップ14)。
【0045】
ECU10は、制御モードを回生保護モードに設定して保護制御を実施する場合、例えば、EDU11の接続先を切替機構20によって電磁アクチュエータ9に切り替える(ステップ14(a))。これにより、回生電力によってEDU11が破損することを未然に防ぐことができる。ここで、モータ14の回転数が上昇するにつれて回生電力は大きくなる特性がある。そのため、EDU11とモータ14との間の通電を回生電力が大きいまま切替機構20によって遮断すると、アークの発生によって切替機構20の接点溶着や切替機構20自体及びその周辺部の破損が生じるおそれもあるので、ECU10は、そのような遮断による悪影響が起こらない回生状態で、切替機構20の切替動作(回生電力の遮断動作)をさせる。
【0046】
また、ECU10は、制御モードを回生保護モードに設定して保護制御を実施する場合、例えば、短絡機構26を短絡動作させることによって、三相を全て短絡する(ステップ14(a))。これにより、回生電力によってEDU11が破損することを未然に防ぐことができる。
【0047】
また、ECU10は、制御モードを回生保護モードに設定して保護制御を実施する場合、例えば、スイッチング素子SW2,4,6のオンの要否を判断し、その判断結果に基づいて、スイッチング素子SW2,4,6が全てオンするようにEDU11を制御する(ステップ14(c))。これにより、回生電力によってEDU11が破損することを未然に防ぐことができる。
【0048】
そして、ECU10は、通常モードへの移行が可能か否かを判定するための情報(通常モード復帰判定情報)を入手する(ステップ16)。通常モード復帰判定情報は、例えば、上述の回生電力破壊予測情報であればよい。ECU10は、通常モード復帰判定情報に基づいて、通常モードに復帰可能か否かを判断する(ステップ18)。ECU10は、通常モードに復帰可能と判断した場合、制御モードを通常モードに設定して、上述の通常制御を実施する(ステップ20)。一方、ECU10は、通常モードに復帰不能と判断した場合、制御モードを回生保護モードに設定したまま、入手した通常モード復帰判定情報に基づくステップ18の判断を繰り返す。
【0049】
図4は、回生保護モードの期間を示した図である。回生保護モードの期間は、入手された回生電力破壊予測情報に応じて変動する。
【0050】
図4(a)において、ECU10は、回生電力破壊予測情報に基づいて、検出されたスイッチング素子SWの電圧が予め設定された回生保護モードへの移行電圧に到達した時点t1で、制御モードを回生保護モードに設定する。そして、ECU10は、回生電力破壊予測情報に基づいて、検出されたスイッチング素子SWの電圧が予め設定された通常モードへの復帰電圧に到達した時点t2で、制御モードを通常モードに設定する。
【0051】
図4(b)において、ECU10は、回生電力破壊予測情報に基づいて、検出されたモータ14の回転速度が予め設定された回生保護モードへの移行回転速度に到達した時点t3で、制御モードを回生保護モードに設定する。そして、ECU10は、回生電力破壊予測情報に基づいて、到達時点t3を起点に予め設定された一定時間経過時t4に、検出されたモータ14の回転速度が予め設定された回生保護モードへの移行回転速度以下の場合に、制御モードを通常モードに設定する。
【0052】
図5は、電磁アクチュエータ4が停止している状態での車両懸架装置100の動作の流れを表すフローチャートである。EDU11の接続先が切替機構20によって電磁アクチュエータ9に切り替えられた場合(図3のステップ14(a))、電磁アクチュエータ4がEDU11によって駆動不能であることによる乗り心地の悪化を防ぐため、電磁アクチュエータ4の停止時の補完機能が必要である。
【0053】
ECU10は、サスペンションシステムの作動/非作動を表す状態情報を入手する(ステップ30)。すなわち、ECU10は、制御モードが、EDU11が電磁アクチュエータ4を駆動する状態を表す通常モードであるのか、EDU11が電磁アクチュエータ9を駆動する状態を表す保護モードであるのかを判断するための情報を入手すればよい。
【0054】
ECU10は、サスペンションシステムが作動中と判断した場合(ステップ32,No)、制御モードを通常モードに設定し、上述の通常制御を実施する(ステップ42)。
【0055】
一方、ECU10は、サスペンションシステムが非作動と判断した場合(ステップ32,Yes)、制御モードを乗り心地バックアップモードに設定する(ステップ34)。ECU10は、制御モードが乗り心地バックアップモードに設定されている場合、ばね上Gセンサ1、ばね下Gセンサ2、車高センサ3、車速センサなどのセンサからの入力信号に基づいて、シート90が電磁アクチュエータ9によって上下動するようにモータ19を駆動するEDU11を制御する。
【0056】
この際、図6に示されるように、ECU10は、ばね上Gセンサ1、ばね下Gセンサ2、車高センサ3等のセンサによって検出された路面からの入力を打ち消す方向に電磁アクチュエータ9によってシート90を上下動させるアクティブ制御を行うことによって、車体50の振動を抑制可能な電磁アクチュエータ4の駆動ができないことによる乗り心地の低下を抑えることができる(ステップ36)。すなわち、EDU11を破損させる回生電力の発生が予測されたことによりサスペンションシステムが停止していても、路面からの入力を打ち消す方向にシート90を上下方向にスライド制御することによって、乗り心地を確保することができる。
【0057】
そして、ECU10は、サスペンションシステムの作動/非作動を表す状態情報を入手する(ステップ38)。すなわち、ECU10は、通常モードへの復帰が可能か否かを判断するための情報を入手すればよい。ECU10は、通常モードに復帰可能と判断した場合、制御モードを通常モードに設定して、上述の通常制御を実施する(ステップ42)。一方、ECU10は、通常モードに復帰不能と判断した場合、制御モードを乗り心地バックアップモードに設定したまま、入手した通常モード復帰判定情報に基づくステップ40の判断を繰り返す。
【0058】
したがって、上述の実施例によれば、車体の振動を抑える電磁アクチュエータに大きな回生電力が発生しても、当該電磁アクチュエータを駆動する駆動装置の破損を防ぎつつ、当該電磁アクチュエータの作動が停止しても乗り心地が低下することを抑えることができる。
【0059】
また、路面入力などによって電磁アクチュエータが高速で駆動された場合、大きな回生電力が発生するが、路面状態によって発生する電力は大きく異なる。大きな電力が発生する場面は非常にまれであるにもかかわらず、信頼性確保の観点から、最大電力時にも部品が破損しないように部品選定する必要があり、車両に搭載するには非現実的なサイズになってしまう。しかしながら、上述の実施例によれば、適切なサイズの部品選定を行うことができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
図7は、本発明に係る車両用制御装置の実施形態である車両懸架装置200の構成図である。車両懸架装置200の構成については、図1に示した車両懸架装置100と同様の構成には同様の符号を付して、その説明を省略する。車両懸架装置200は、車体50の振動を抑える電磁アクチュエータ4と、車体50の車室内に設けられたシート90の振動を抑える電磁アクチュエータ9と、電磁アクチュエータ4と電磁アクチュエータ9のいずれか一方を駆動可能な駆動装置であるEDU11と、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力によってEDU11が破損するか否かを判断するECU10と、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することを遮断する遮断手段である遮断機構23と、EDU11の接続先を電磁アクチュエータ4と電磁アクチュエータ9のいずれかに切り替える切替手段である切替機構21とを備える。
【0062】
遮断機構23は、スイッチング素子SW1とSW2との接続点とU相コイルとV相コイルとの接続点とを遮断する遮断部23aと、スイッチング素子SW3とSW4との接続点とU相コイルとW相コイルとの接続点とを遮断する遮断部23bと、スイッチング素子SW5とSW6との接続点とV相コイルとW相コイルとの接続点とを遮断する遮断部23cとを有する。遮断機構23の遮断動作(すなわち、遮断部23a,23b,23cのオフ動作)が行われることにより、電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することが遮断される。
【0063】
切替機構21は、EDU11と遮断機構23との間のハーネス上の点と電磁アクチュエータ9との間に設けられる。切替機構21の具体例として、リレーが挙げられる。切替機構21は、スイッチング素子SW1とSW2との接続点とU相コイルとV相コイルとの接続点を結ぶハーネス22aに設けられた切替部21aと、スイッチング素子SW3とSW4との接続点とU相コイルとW相コイルとの接続点を結ぶハーネス22bに設けられた切替部21bと、スイッチング素子SW5とSW6との接続点とV相コイルとW相コイルとの接続点を結ぶハーネス22cに設けられた切替部21cとを有する。切替機構21のオフ動作(すなわち、切替部21a,21b,21cのオフ動作)が行われることによりEDU11の接続先が電磁アクチュエータ4に切り替えられ、切替機構21のオン動作(すなわち、切替部21a,21b,21cのオン動作)が行われることによりEDU11の接続先が電磁アクチュエータ9に切り替えられる。
【0064】
ECU10によってEDU11が破損しないと判断された場合、EDU11の接続先が切替機構21によって電磁アクチュエータ4に切り替えられて、EDU11によって(電磁アクチュエータ9が駆動されずに)電磁アクチュエータ4が駆動される。一方、ECU10によってEDU11が破損すると判断された場合、EDU11の接続先が切替機構21によって電磁アクチュエータ9に切り替えられるとともに電磁アクチュエータ4に発生する回生電力がEDU11に伝達することが遮断機構23によって遮断されて、EDU11によって(電磁アクチュエータ4が駆動されずに)電磁アクチュエータ9が駆動される。
【0065】
したがって、車両用懸架装置200によれば、大きな路面入力が予測される際に電磁アクチュエータ4に発生する回生エネルギーがEDU11に伝達することを遮断機構23の遮断動作によって防止することができるため、EDU11の破損を防止することができる。そして、切替機構21の切替動作によって、EDU11が電磁アクチュエータ4を駆動することができないために、車体50の振動を抑えることができなくても、EDU11がシート90の振動を抑えるように電磁アクチュエータ9を駆動することができるので、操縦安定性と乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0066】
また、上述の実施例では、シートの振動を抑制可能なシステムを例に挙げて本発明に係る車両用制御装置とその制御方法について説明したが、シート用の電動アクチュエータに限定することなく、乗り心地を改善するための電動アクチュエータを制御する制御装置とその制御方法に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 ばね上Gセンサ
2 ばね下Gセンサ
3 車高センサ
4 車両懸架用アクチュエータ
5 車高スイッチ
6 走行モードスイッチ
7 ステアバス
8 制駆動バス
9 シート用アクチュエータ
10 ECU
11 EDU
12 駆動素子部
13 駆動回路
14 サスペンション用モータ
15 L/CAN
19 シート用モータ
20,21 切替機構
22 ハーネス
23 遮断機構
26 短絡機構
31 DC−DCコンバータ
32 ハイブリッド用バッテリ
33 補機用バッテリ
90 シート
50 車体
51 車輪
SW1〜6 スイッチング素子
100 車両用懸架装置
500 サスペンションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の振動を抑える第1の電動アクチュエータと、
前記車体に設けられた座席の振動を抑える第2の電動アクチュエータと、
前記第1の電動アクチュエータと前記第2の電動アクチュエータのいずれかを駆動可能な駆動装置と、
前記第1の電動アクチュエータの回生電力によって前記駆動装置が破損するか否かを判断する判断手段と、
前記第1の電動アクチュエータの回生電力が前記駆動装置に伝達することを遮断する遮断手段とを備え、
前記判断手段によって前記駆動装置が破損しないと判断された場合、前記回生電力が前記駆動装置に伝達することが前記遮断手段によって遮断されずに、前記駆動装置によって前記第1の電動アクチュエータが駆動され、
前記判断手段によって前記駆動装置が破損すると判断された場合、前記回生電力が前記駆動装置に伝達することが前記遮断手段によって遮断されて、前記駆動装置によって前記第2の電動アクチュエータが駆動される、ことを特徴とする、車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241308(P2010−241308A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93343(P2009−93343)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】