車両用無段変速機の制御装置
【課題】変速時の運転性能の悪化を抑制する。
【解決手段】無段変速機構20と、副変速機構30と、を備える車両用無段変速機4の制御装置であって、車両の運転状態に基づいて達成すべき無段変速機構20及び副変速機構30の全体の変速比を到達変速比として設定する到達変速比設定手段と、全体の変速比が到達変速比に所定の過渡応答で追従するように無段変速機構20及び副変速機構30を制御する変速制御手段と、アップシフト中に、全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生するか否かを判定する停滞判定手段(S34,S62)と、停滞期間が発生すると判定したときに、副変速機構30がイナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する短縮制御手段(S3,S6)と、を備える。
【解決手段】無段変速機構20と、副変速機構30と、を備える車両用無段変速機4の制御装置であって、車両の運転状態に基づいて達成すべき無段変速機構20及び副変速機構30の全体の変速比を到達変速比として設定する到達変速比設定手段と、全体の変速比が到達変速比に所定の過渡応答で追従するように無段変速機構20及び副変速機構30を制御する変速制御手段と、アップシフト中に、全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生するか否かを判定する停滞判定手段(S34,S62)と、停滞期間が発生すると判定したときに、副変速機構30がイナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する短縮制御手段(S3,S6)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用無段変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用無段変速機の制御装置として、無段変速機構の他に複数のギヤ段に切り換えられる副変速機構を備え、車両の運転状態に応じて無段変速機構及び副変速機構を制御して、無段変速機構及び副変速機構の全体の変速比を目標とする到達変速比に制御するものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−79554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両用無段変速機の制御装置では、副変速機構の変速比変化が始まる前に無段変速機構が最High変速比に到達してしまうと、副変速機構の変速比変化が始まるまでは全体の変速比(エンジン回転速度)が変化しない状態が続くことなる。そうすると、変速中に滑らかにエンジン回転速度が変化しないので運転性能が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、副変速機構の変速比変化が始まる前に無段変速機構が最High変速比に到達したときの運転性能の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、変速比を無段階に変更することができる無段変速機構と、無段変速機構に対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段とこの第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを含み、複数の摩擦締結要素を選択的に締結又は解放することで前記第1変速段と前記第2変速段とを切り換える副変速機構と、を備える車両用無段変速機の制御装置である。本発明による車両用無段変速機の制御装置は、車両の運転状態に基づいて達成すべき無段変速機構及び副変速機構の全体の変速比を到達変速比として設定し、全体の変速比が到達変速比に所定の過渡応答で追従するように無段変速機構及び副変速機構を制御する。そして、アップシフト中に、全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生するか否かを判定し、停滞期間が発生すると判定したときに、副変速機構がイナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、副変速機構の変速比変化が始まる前に無段変速機構が最High変速比に到達する可能性がある場合、すなわち全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生すると判定した場合は、変速開始から副変速機構の変速比変化が始まるイナーシャフェーズまでの時間を短縮する。これにより、仮に停滞期間が発生してもその発生時間を短くすることができるので、運転性能の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】変速機コントローラの内部構成を示した図である。
【図3】変速機の変速マップの一例を示した図である。
【図4】第1実施形態による変速制御プログラムの内容を示したフローチャートである。
【図5】準備フェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【図6】トルクフェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【図7】条件式(1)及び(2)について説明する図である。
【図8】第1実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図9】第1実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図10】第1実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図11】第2実施形態による変速制御プログラムの内容を示したフローチャートである。
【図12】第2実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図13】足戻しアップシフト中に停滞期間が発生した場合の比較例のタイムチャートである。
【図14】足離しアップシフト中に停滞期間が発生した場合の比較例のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比を意味し、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比を意味する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態による無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下「変速機」という。)4、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられる。
【0011】
また、車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12と、が設けられる。油圧制御回路11と変速機コントローラ12とが変速制御手段を構成する。
【0012】
各構成について説明すると、変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下「バリエータ」という。)20と、バリエータ20の後段かつバリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30と、を備える。「後段に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路において副変速機構30がバリエータ20よりも駆動輪7側に設けられるという意味である。また、「直列に設けられる」とは同動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、本実施形態のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速機構や動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0013】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23と、を備える。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bと、を備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0014】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)と、を備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。本実施形態では、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0015】
変速機コントローラ12は、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125と、から構成される。
【0016】
入力インターフェース123には、スロットル開度センサ41、回転速度センサ42、車速センサ43、油温センサ44及、インヒビタスイッチ45及びアクセルストロークセンサ46の出力信号などが入力される。スロットル開度センサ41は、エンジン1のスロットルバルブの開度(以下「スロットル開度」という。)TVOを検出する。回転速度センサ42は、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下「プライマリ回転速度」という。)Npriを検出する。車速センサ43は、車両の走行速度(以下「車速」という。)VSPを検出する。油温センサ44は、変速機4の油温を検出する。インヒビタスイッチ45は、セレクトレバーの位置を検出する。アクセルストロークセンサ46は、アクセルペダルの踏込量APOを検出する。
【0017】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラムと、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(図4)と、が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成する。そして、生成した変速制御信号を出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0018】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0019】
図3は変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。
【0020】
この変速マップ上では変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとに基づき決定される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比vRatioに副変速機構30の変速比を掛けて得られる全体の変速比、以下「スルー変速比」という。)Ratioを表している。
【0021】
この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、スロットル開度TVO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はスロットル開度TVOに応じて選択される変速線に従って行われる。図4には簡単のため、全負荷線(スロットル開度TVO=8/8のときの変速線)、パーシャル線(スロットル開度TVO=4/8のときの変速線)、コースト線(スロットル開度TVO=0のときの変速線)のみが示されている。
【0022】
変速機4が低速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる低速モード最High線との間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。
【0023】
一方、変速機4が高速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる高速モード最High線との間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0024】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である低速モードレシオ範囲と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である高速モードレシオ範囲とが部分的に重複する。つまり、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にあるときは、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0025】
また、この変速マップでは副変速機構30の変速を行うモード切換変速線(副変速機構30の1−2変速線)が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下「モード切換変速比」という。)mRatioは低速モード最High変速比と等しい値に設定される。そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合にモード切換変速を行う。
【0026】
モード切換変速時には、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比が変化する方向と逆の方向に変更する。
【0027】
具体的には、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも大きい状態から小さい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(副変速機構1−2変速)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比大側に変更する。
【0028】
逆に、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも小さい状態から大きい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(副変速機構2−1変速)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比小側に変更する。
【0029】
モード切換変速時にバリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比変化と逆の方向に変化させるのは、モード切換変速中にスルー変速比Ratioに段差が生じないようにするためである。
【0030】
このように本実施形態では、副変速機構30の変速比変化に合わせてバリエータ20の変速比を変化させ、スルー変速比に段差が生じないように副変速機構30の変速比変化の完了と略同時にバリエータ20の変速比変化を終了させる協調変速を実施している。
【0031】
ところで、変速機4によって行われる変速には、パワーON状態で行われる変速と、パワーOFF状態で行われる変速と、が存在する。
【0032】
パワーON状態で行われる変速とは、アクセルペダルが踏み込まれている状態、すなわち変速機4の入力トルクが正トルク(変速機4の入力側が駆動側となるトルク)の状態で行われるアップシフト及びダウンシフトのことである。パワーOFF状態で行われる変速とは、アクセルペダルが踏み込まれていない状態、すなわち変速機4の入力トルクが負トルク(変速機4の出力側が駆動側となるトルク)の状態で行われるアップシフト及びダウンシフトのことである。
【0033】
この中でも、踏み込んでいたアクセルペダルから完全に足を離したとき、すなわちアクセルペダル踏込量APOが所定の踏込量APO1からゼロに変化したときに行われるパワーOFF状態でのアップシフト(以下「足離しアップシフト」という。)や、踏み込んでいたアクセルペダルから足を戻したとき、すなわちアクセルペダル踏込量APOが所定の踏込量APO1からAPO2(APO1>APO2)に変化したときに行われるパワーON状態でのアップシフト(以下「足戻しアップシフト」という。)は、到達スルー変速比(現在の車速VSP及びアクセルペダル踏込量APOで達成すべきスルー変速比)DRatioの変化が特に大きくなる。そうすると、アップシフト中にエンジン回転速度が同じ回転速度のまま一時的に変化しなくなる停滞期間が発生することがある。以下、この問題点について図13及び図14を参照して説明する。
【0034】
図13は、足戻しアップシフト中に停滞期間が発生した場合のタイムチャートを本実施形態との比較例として示したものである。図14は、足離しアップシフト中に停滞期間が発生した場合のタイムチャートを本実施形態との比較例として示したものである。
【0035】
本実施形態では、スルー変速比Ratioを、到達スルー変速DRatioに向けて、所定の過渡応答(例えば一次応答)で変化させる。つまり、スルー変速比Ratioを所定の過渡応答で到達スルー変速DRatioに向けて変化させるための目標スルー変速比Ratio0を設定し、スルー変速比Ratioを目標スルー変速比Ratio0に制御する。そして、目標スルー変速比Ratio0を副変速機構30の変速比で割ってバリエータ20の目標変速比(以下「バリエータ目標変速比」という。)vRatio0を演算し、バリエータ20の変速比vRatioがバリエータ目標変速比vRatio0になるようにバリエータ20を制御する。
【0036】
そのため、副変速機構30の変速比が変化するイナーシャフェーズが開始されるまでは、バリエータ20の変速比vRatioのみを変化させてスルー変速比Ratioを目標スルー変速比Ratio0に制御することになる。したがって、図13及び図14に示すように、イナーシャフェーズが開始される前にバリエータ20の変速比vRatioがバリエータ20の最High変速比(以下「バリエータ最High変速比」という。)に到達してしまうと、イナーシャフェーズが開始されるまでスルー変速比Ratioが変化しない状態になってしまう(図中破線で囲った部分参照)。
【0037】
そうすると、エンジン回転速度は変速機4の出力回転速度にスルー変速比Ratioを掛けたものなので、アップシフト中であるにもかかわらずエンジン回転速度が変化しない停滞期間が生じることになる。その結果、変速時における滑らかな回転変化が損なわれて運転性能が悪化する。また、変速機4の出力回転速度が高い(車速が高い)とエンジン回転速度が高い状態で停滞期間が生じることになるので燃費も悪化する。
【0038】
そこで本実施形態では、変速開始からイナーシャフェーズまでに要する時間を短縮することで、停滞期間が生じたときの運転性能及び燃費への影響を抑制する。
【0039】
図4は、本実施形態による変速制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら変速機コントローラ12が実行する変速制御の具体的内容について説明する。
【0040】
ステップS1において、変速機コントローラ12は、モード切換を伴うアップシフトを実施するかを判断する。具体的にはスルー変速比Ratio、到達スルー変速比DRatio及びモード切換変速比mRatioに基づいて判断する。変速機コントローラ12は、モード切換を伴うアップシフトを実施する場合はステップS2に処理を移行し、そうでなければ今回の処理を終了する。
【0041】
ステップS2において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ中かを判断する。具体的には、アップシフト開始からの経過時間が準備フェーズ終了時間に達しているかを判断する。変速機コントローラ12は、準備フェーズ中であればステップS3に処理を移行し、そうでなければステップS4に処理を移行する。
【0042】
ステップS3において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮処理を実施する。具体的な内容については図5を参照して後述する。
【0043】
ステップS4において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグf1を0にセットする。
【0044】
ステップS5において、変速機コントローラ12は、イナーシャフェーズ前のトルクフェーズ中かを判断する。変速機コントローラ12は、イナーシャフェーズ前のトルクフェーズ中であればステップS6に処理を移行し、そうでなければ今回の処理を終了する。
【0045】
ステップS6において、変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮処理を実施する。具体的な内容については図6を参照して後述する。
【0046】
図5は、準備フェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【0047】
ステップS31において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグが1にセットされているかを判断する。変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグf1が0にセットされていればステップS32に処理を移行する。一方で準備フェーズ短縮禁止フラグf1が1にセットされていれば今回の処理を終了する。
【0048】
ステップS32において、変速機コントローラ12は、プリチャージが終了しているかを判断する。変速機コントローラ12は、プリチャージが終了していなければステップS33に処理を移行する。一方でプリチャージが終了していればステップS34に処理を移行する。
【0049】
ステップS33において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ終了時間を通常目標時間に設定する。
【0050】
ステップS34において、変速機コントローラ12は、停滞条件が成立しているかを判断する。具体的には、以下の条件式(1)及び(2)が成立しているかを判断してアップシフト中に停滞期間が生じる可能性があるかを判断する。この条件式についての説明は、図7を参照して後述する。変速機コントローラ12は、停滞条件が成立していればステップS35に処理を移行し、そうでなければステップS37に処理を移行する。
【0051】
スルー変速比<(停滞変速比+第1所定値) …(1)
到達スルー変速比<(停滞変速比−第2所定値) …(2)
但し、停滞変速比=バリエータ最High変速比×副変速機構の第1変速段変速比
【0052】
ステップS35において、変速機コントローラ12は、スタンバイ圧を通常時のスタンバイ圧(以下「通常スタンバイ圧」という。)よりも高い短縮スタンバイ圧に設定する。
【0053】
ステップS36において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ終了時間を通常終了時間よりも短い短縮終了時間に設定する。
【0054】
ステップS37において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグf1を1にセットする。
【0055】
図6は、トルクフェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【0056】
ステップS61において、変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮禁止フラグf2が1にセットされているかを判断する。変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮禁止フラグf2が0にセットされていればステップS62に処理を移行する。一方でトルクフェーズ短縮禁止フラグf2が1にセットされていれば今回の処理を終了する。
【0057】
ステップS62において、変速機コントローラ12は、停滞条件が成立しているかを判断する。具体的には、前述した条件式(1)及び(2)が成立しているかを判断する。変速機コントローラ12は、停滞条件が成立していればステップS63に処理を移行し、そうでなければステップS64に処理を移行する。
【0058】
ステップS63において、変速機コントローラ12は、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を通常の油圧変化速度(以下「通常油圧変化速度」という。)よりも早い短縮油圧変化速度で変化させる。
【0059】
ステップS64において、変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮禁止フラグf2を1にセットする。
【0060】
ステップS65において、変速機コントローラ12は、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を短縮油圧変化速度で変化させる。
【0061】
図7(A)及び図7(B)は、それぞれアクセルペダル踏込量が低下して到達スルー変速比がアップシフト側に変化し、所定の過渡応答でスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御しているときのタイムチャートである。これを参照して前述した条件式(1)及び(2)について説明する。
【0062】
条件式(1)は、スルー変速比が第1閾値(停滞変速比+第1所定値)より小さいかを判断する。これは、仮に停滞が発生する場合には、停滞期間に入るまでの時間的余裕がどれほどあるかを判断するものである。スルー変速比が第1閾値より小さくなれば、停滞期間に入るまでにあまり時間が残されていないと判断できる。
【0063】
条件式(2)は、到達スルー変速比が第2閾値(停滞変速比−第2所定値)より小さいかを判断する。これは、停滞変速比と到達スルー変速比との差がどれほどあるかを判断するものである。到達スルー変速比が第2閾値よりも小さければ、スルー変速比が比較的大きい状態、すなわちエンジン回転速度が高い状態で停滞が起こるため燃費が悪化する。
【0064】
図7(A)の場合、時刻t51で到達スルー変速比がアップシフト側に変化した段階で到達スルー変速比が第2閾値を下回り条件式(2)が満たされ、時刻t52でスルー変速比が第1閾値を下回った段階で条件式(1)が満たされる。
【0065】
図7(B)の場合、時刻t61で到達スルー変速比がアップシフト側に変化しても到達スルー変速比が第2閾値を下回っていないので条件式(2)が満たされることはない。
【0066】
図8は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足戻しアップシフトがされた場合に準備フェーズ及びトルクフェーズをそれぞれ短縮するときのタイムチャートである。
【0067】
時刻t11で、アクセルペダルから足が戻されて到達スルー変速比がアップシフト側に変化すると、足戻しアップシフトが開始される。足戻しアップシフトはパワーON状態で行われるアップシフトなので、副変速機構30は、準備フェーズ、トルクフェーズ、イナーシャフェーズ及び終了フェーズを経て低速モードから高速モードへの切り換えを終了する。
【0068】
準備フェーズは、副変速機構30の変速段を変更するための準備をするフェーズである。具体的には、副変速機構30の解放側の摩擦締結要素の油圧を解放初期圧まで低下させ、締結側の摩擦締結要素の目標油圧を所定時間プリチャージ圧に保持した後にスタンバイ圧(締結初期圧)まで低下させる。解放初期圧とは、解放側の摩擦締結要素(1−2変速の場合はLowブレーキ32)のトルク容量を、解放側の摩擦締結要素が滑り出す容量にする油圧値のことである。スタンバイ圧とは、締結側の摩擦締結要素(1−2変速の場合はHighクラッチ33)のトルク容量を、締結側の摩擦締結要素をトルク伝達可能な容量にする油圧値のことである。
【0069】
イナーシャフェーズは、摩擦締結要素の油圧を制御して、副変速機構30の入力回軸転速度を変速前の回転速度から変速後の回転速度へ変化させるフェーズである。
【0070】
トルクフェーズは、副変速機構30の入力トルクの受け持ちを解放側の摩擦締結要素から締結側の摩擦締結要素へ移行させるフェーズである。具体的には、解放側の摩擦締結要素の油圧をゼロに向けて低下させる一方で、締結側の摩擦締結要素の油圧をスタンバイ圧から増加させる。
【0071】
終了フェーズは、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大油圧まで上昇させて、締結側の摩擦締結要素を完全締結させるフェーズである。
【0072】
時刻t12で、締結側の摩擦締結要素の目標油圧を所定時間プリチャージ圧に保持するプリチャージが終了すると、その時点で停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t12の時点で、スルー変速比Ratioが第1閾値より小さく、かつ、到達スルー変速比DRatioが第2閾値より小さいので停滞判定条件が成立している。よって、スタンバイ圧を短縮スタンバイ圧に設定し、準備フェーズ終了時間を通常終了時間から短縮終了時間に変更する。これにより準備フェーズの実施時間を短縮する。
【0073】
なお、プリチャージ終了時点で停滞判定条件が成立していなければ、それ以降に停滞判定条件が成立しても締結側摩擦締結要素の油圧は通常スタンバイ圧のままとし、準備フェーズ終了時間も通常終了時間のままとなる。これは、途中で締結側摩擦締結要素の油圧を通常スタンバイ圧から短縮スタンバイ圧に上げると、締結側摩擦締結要素のストローク完了のタイミングが不確定になり、準備フェーズをどれだけ短縮させればいいのかが分からなくなる。そうすると、準備フェーズの時間が短すぎた場合には、締結側摩擦締結要素の油圧が十分でなく、トルクフェーズ初期に締結側摩擦締結要素で応答遅れが生じる可能性がある。また、準備フェーズの時間が長すぎた場合には、締結側摩擦締結要素の油圧が通常時よりも高い短縮スタンバイ圧になっているので、その分伝達トルクが変動してトルクフェーズ初期にショックが生じる可能性がある。
【0074】
時刻t13で、バリエータ20の変速比vRatioが最High変速比に到達すると、スルー変速比Ratioが変化しない(エンジン回転速度が変化しない)停滞期間に入る。
【0075】
時刻t14で、変速開始(時刻t11)からの時間が短縮終了時間に到達すると準備フェーズを終了してトルクフェーズを開始する。トルクフェーズが開始されると、その時点で再び停滞判定条件が成立しているかを判断する。ここでは、停滞判定条件が成立しているので、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を通常の油圧変化速度よりも早い短縮油圧変化速度で変化させる。これによりトルクフェーズの実施時間を短縮する。
【0076】
時刻t15で、副変速機構30の変速比変化が始まるイナーシャフェーズに入ると、副変速機構の変速比変化に伴ってスルー変速比Ratioも変化し、停滞期間が終了する。
【0077】
図9は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足戻しアップシフトがされたときにトルクフェーズのみを短縮する場合のタイムチャートである。
【0078】
時刻t21で、足戻しアップシフトが開始されると、副変速機構30は、準備フェーズ、トルクフェーズ、イナーシャフェーズ及び終了フェーズを経て低速モードから高速モードへの切り換えを終了する。
【0079】
時刻t22で、プリチャージが終了すると、その時点で停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t22の時点で、スルー変速比Ratioが第1閾値よりも大きいので停滞判定条件が成立していない。よって、締結側摩擦締結要素の油圧を通常スタンバイ圧に設定し、準備フェーズ終了時間も通常終了時間のままとする。
【0080】
時刻t23で、バリエータ20の変速比vRatioが最High変速比に到達すると、スルー変速比Ratioが変化しない停滞期間に入る。
【0081】
時刻t24で、変速開始(時刻t21)からの時間が通常終了時間に到達するとトルクフェーズが開始される。トルクフェーズが開始されると、その時点で再び停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t24の時点では、スルー変速比Ratioが第1閾値より小さく、かつ、到達スルー変速比DRatioが第2閾値より小さいので停滞判定条件が成立している。よって、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を通常の油圧変化速度よりも早い短縮油圧変化速度で変化させる。これによりトルクフェーズの実施時間を短縮する。
【0082】
時刻t25で、副変速機構30の変速比変化が始まるイナーシャフェーズに入ると、副変速機構の変速比変化に伴ってスルー変速比Ratioも変化し、停滞期間が終了する。
【0083】
図10は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足離しアップシフトがされたときのタイムチャートである。
【0084】
時刻t31で、アクセルペダルから足が離されて到達スルー変速比がアップシフト側に変化すると、足離しアップシフトが開始される。足離しアップシフトはパワーOFF状態で行われるアップシフトなので、副変速機構30は、準備フェーズ、イナーシャフェーズ、トルクフェーズ及び終了フェーズを経て低速モードから高速モードへの切り換えを終了する。
【0085】
時刻t32で、プリチャージが終了すると、その時点で停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t12の時点で、スルー変速比Ratioが第1閾値より小さく、かつ、到達スルー変速比DRatioが第2閾値より小さいので停滞判定条件が成立している。よって、スタンバイ圧を短縮スタンバイ圧に設定し、準備フェーズ終了時間を通常終了時間から短縮終了時間に変更する。これにより準備フェーズの実施時間を短縮する。
【0086】
時刻t33で、バリエータ20の変速比vRatioが最High変速比に到達すると、スルー変速比Ratioが変化しない停滞期間に入る。
【0087】
時刻t34で、変速開始(時刻t31)からの時間が短縮終了時間に到達するとイナーシャフェーズが開始される。イナーシャフェーズが開始されると、副変速機構30の変速比変化が始まってスルー変速比Ratioも変化し、停滞期間が終了する。
【0088】
以上説明した本実施形態によれば、モード切換を伴うアップシフトにおいて、停滞判定条件が成立したときは、副変速機構30の準備フェーズ及びトルクフェーズの一方又は双方の実施期間を短縮させた。これにより、変速開始からイナーシャフェーズまでに要する時間を短縮することができるので、停滞期間を短縮することができる。これにより、アップシフト中にエンジン回転速度を滑らかに低下させることができ、運転性能の悪化を抑制できる。また、停滞期間が長く続くことによる燃費の悪化も抑制できる。
【0089】
また、準備フェーズを短縮するときには、スタンバイ圧を通常よりも高い短縮スタンバイ圧に設定することとした。これにより、準備フェーズを短縮した場合であっても締結側摩擦締結要素のストロークを完了させることができ、その後のトルクフェーズで締結側摩擦締結要素のトルク容量を確保することができる。
【0090】
なお、準備フェーズを短縮する方法としては、プリチャージの時間を長くするか、プリチャージ圧を高くすることも考えられる。しかしながら、そうするとばらつきによってはプリチャージ中に締結側摩擦締結要素のストロークが完了する可能性があり、インターロックが発生して運転性能が悪化することがある。したがって、準備フェーズを短縮するためにプリチャージの時間等を変更することは好ましくない。
【0091】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、スルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御するときの過渡応答の時間を長くする(時定数を大きくする)点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0092】
図11は、本実施形態による変速制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら変速機コントローラ12が実行する変速制御の具体的内容について説明する。
【0093】
ステップS1からステップS6については第1実施形態と同様の処理を実施しているのでここでは説明を省略する。
【0094】
ステップS21において、変速機コントローラ12は、停滞判定条件が成立しているかを判断する。具体的には、前述した条件式(1)及び(2)が成立しているかを判断する。変速機コントローラ12は、条件式(1)及び(2)が成立していればステップS22に処理を移行し、そうでなければステップS2に処理を移行する。
【0095】
ステップS22において、変速機コントローラ12は、スルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御するときの過渡応答の時間を通常時と比べて長くする。具体的には、過渡応答の時定数を大きくして、スルー変速比Ratioが到達スルー変速比DRatioに到達するまでの時間を通常時よりも長くする。
【0096】
図12は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足戻しアップシフトがされた場合に準備フェーズ及びトルクフェーズをそれぞれ短縮しつつ、スルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御するときの過渡応答の時間を長くしたときのタイムチャートである。
【0097】
時刻t41で、アクセルペダルから足が戻されて到達スルー変速比DRatioがアップシフト側に変化すると、足戻しアップシフトを開始し、同時に停滞条件が成立しているかを判断する。ここでは、停滞条件が成立している場合を想定しているので、通常よりも過渡応答の時間を長くしてスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御する。
【0098】
これにより、バリエータ変速比vRatioが最High変速比に到達するまでに要する時間(時刻t41から時刻t42までの期間)が通常時と比べて長くなる。そのため、バリエータ変速比vRatioが最High変速比に到達してからイナーシャフェーズが開始されるまでの時間(時刻t42から時刻t43までの期間)が短くなり停滞期間を短くすることができる。したがって、変速時における滑らかな回転変化が損なわれるのを抑制でき、運転性能の悪化を抑制できる。そして、準備フェーズ及びトルクフェーズの実施期間を短縮すればより顕著にその効果を得ることができる。
【0099】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0100】
例えば上記各実施形態では、スルー変速比Ratioを基準に停滞判定を実施したが、プライマリ回転速度Npriを基準にして以下の条件式(3)及び(4)によって停滞判定を実施してもよい。
【0101】
プライマリ回転速度<(停滞回転速度+第3所定値) …(3)
到達プライマリ回転速度<(停滞回転速度−第4所定値) …(4)
但し、停滞回転速度=変速機出力回転×バリエータ最High変速比×副変速機構の第1変速段の変速比
【0102】
また、第1所定値及び第2所定値を一定の値としていたが、車速や油温、アクセルペダル踏込量に応じて可変としてもよい。
【0103】
また、副変速機構30は前進用の変速段として1速と2速の2段を有する変速機構としたが、副変速機構30を前進用の変速段として3段以上の変速段を有する変速機構としてもよい。
【0104】
また、副変速機構30をラビニョウ型遊星歯車機構を用いて構成したが、このような構成に限定されない。例えば、副変速機構30は、通常の遊星歯車機構と摩擦締結要素を組み合わせて構成してもよいし、あるいは、ギヤ比の異なる複数の歯車列で構成される複数の動力伝達経路と、これら動力伝達経路を切り換える摩擦締結要素とによって構成してもよい。
【0105】
また、プーリ21、22の可動円錐板を軸方向に変位させるアクチュエータとして油圧シリンダ23a、23bを備えているが、アクチュエータは油圧で駆動されるものに限らず電気的に駆動されるものあってもよい。
【0106】
また、モード切換変速比を低速モード最High変速比と等しい値に設定しているが、ここでいう「等しい」には略等しい場合も含まれ、そのような場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0107】
また、上述の説明においては、無段変速機構としてベルト及びプーリを使用するいわゆるベルト式無段変速機構を例示して説明したが、これには限定されない。たとえばチェーン及びプーリを使用するいわゆるチェーン式無段変速機構や、パワーローラ及び入出力ディスクを使用するいわゆるトロイダル式無段変速機構であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
4 無段変速機(車両用無段変速機)
20 ベルト式無段変速機構(無段変速機構)
30 副変速機構
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用無段変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用無段変速機の制御装置として、無段変速機構の他に複数のギヤ段に切り換えられる副変速機構を備え、車両の運転状態に応じて無段変速機構及び副変速機構を制御して、無段変速機構及び副変速機構の全体の変速比を目標とする到達変速比に制御するものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−79554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両用無段変速機の制御装置では、副変速機構の変速比変化が始まる前に無段変速機構が最High変速比に到達してしまうと、副変速機構の変速比変化が始まるまでは全体の変速比(エンジン回転速度)が変化しない状態が続くことなる。そうすると、変速中に滑らかにエンジン回転速度が変化しないので運転性能が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、副変速機構の変速比変化が始まる前に無段変速機構が最High変速比に到達したときの運転性能の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、変速比を無段階に変更することができる無段変速機構と、無段変速機構に対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段とこの第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを含み、複数の摩擦締結要素を選択的に締結又は解放することで前記第1変速段と前記第2変速段とを切り換える副変速機構と、を備える車両用無段変速機の制御装置である。本発明による車両用無段変速機の制御装置は、車両の運転状態に基づいて達成すべき無段変速機構及び副変速機構の全体の変速比を到達変速比として設定し、全体の変速比が到達変速比に所定の過渡応答で追従するように無段変速機構及び副変速機構を制御する。そして、アップシフト中に、全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生するか否かを判定し、停滞期間が発生すると判定したときに、副変速機構がイナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、副変速機構の変速比変化が始まる前に無段変速機構が最High変速比に到達する可能性がある場合、すなわち全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生すると判定した場合は、変速開始から副変速機構の変速比変化が始まるイナーシャフェーズまでの時間を短縮する。これにより、仮に停滞期間が発生してもその発生時間を短くすることができるので、運転性能の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】変速機コントローラの内部構成を示した図である。
【図3】変速機の変速マップの一例を示した図である。
【図4】第1実施形態による変速制御プログラムの内容を示したフローチャートである。
【図5】準備フェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【図6】トルクフェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【図7】条件式(1)及び(2)について説明する図である。
【図8】第1実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図9】第1実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図10】第1実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図11】第2実施形態による変速制御プログラムの内容を示したフローチャートである。
【図12】第2実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートである。
【図13】足戻しアップシフト中に停滞期間が発生した場合の比較例のタイムチャートである。
【図14】足離しアップシフト中に停滞期間が発生した場合の比較例のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比を意味し、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比を意味する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態による無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下「変速機」という。)4、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられる。
【0011】
また、車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12と、が設けられる。油圧制御回路11と変速機コントローラ12とが変速制御手段を構成する。
【0012】
各構成について説明すると、変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下「バリエータ」という。)20と、バリエータ20の後段かつバリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30と、を備える。「後段に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路において副変速機構30がバリエータ20よりも駆動輪7側に設けられるという意味である。また、「直列に設けられる」とは同動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、本実施形態のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速機構や動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0013】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23と、を備える。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bと、を備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0014】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)と、を備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。本実施形態では、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0015】
変速機コントローラ12は、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125と、から構成される。
【0016】
入力インターフェース123には、スロットル開度センサ41、回転速度センサ42、車速センサ43、油温センサ44及、インヒビタスイッチ45及びアクセルストロークセンサ46の出力信号などが入力される。スロットル開度センサ41は、エンジン1のスロットルバルブの開度(以下「スロットル開度」という。)TVOを検出する。回転速度センサ42は、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下「プライマリ回転速度」という。)Npriを検出する。車速センサ43は、車両の走行速度(以下「車速」という。)VSPを検出する。油温センサ44は、変速機4の油温を検出する。インヒビタスイッチ45は、セレクトレバーの位置を検出する。アクセルストロークセンサ46は、アクセルペダルの踏込量APOを検出する。
【0017】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラムと、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(図4)と、が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成する。そして、生成した変速制御信号を出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0018】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0019】
図3は変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。
【0020】
この変速マップ上では変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとに基づき決定される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比vRatioに副変速機構30の変速比を掛けて得られる全体の変速比、以下「スルー変速比」という。)Ratioを表している。
【0021】
この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、スロットル開度TVO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はスロットル開度TVOに応じて選択される変速線に従って行われる。図4には簡単のため、全負荷線(スロットル開度TVO=8/8のときの変速線)、パーシャル線(スロットル開度TVO=4/8のときの変速線)、コースト線(スロットル開度TVO=0のときの変速線)のみが示されている。
【0022】
変速機4が低速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる低速モード最High線との間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。
【0023】
一方、変速機4が高速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる高速モード最High線との間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0024】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である低速モードレシオ範囲と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である高速モードレシオ範囲とが部分的に重複する。つまり、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にあるときは、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0025】
また、この変速マップでは副変速機構30の変速を行うモード切換変速線(副変速機構30の1−2変速線)が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下「モード切換変速比」という。)mRatioは低速モード最High変速比と等しい値に設定される。そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合にモード切換変速を行う。
【0026】
モード切換変速時には、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比が変化する方向と逆の方向に変更する。
【0027】
具体的には、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも大きい状態から小さい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(副変速機構1−2変速)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比大側に変更する。
【0028】
逆に、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも小さい状態から大きい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(副変速機構2−1変速)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比小側に変更する。
【0029】
モード切換変速時にバリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比変化と逆の方向に変化させるのは、モード切換変速中にスルー変速比Ratioに段差が生じないようにするためである。
【0030】
このように本実施形態では、副変速機構30の変速比変化に合わせてバリエータ20の変速比を変化させ、スルー変速比に段差が生じないように副変速機構30の変速比変化の完了と略同時にバリエータ20の変速比変化を終了させる協調変速を実施している。
【0031】
ところで、変速機4によって行われる変速には、パワーON状態で行われる変速と、パワーOFF状態で行われる変速と、が存在する。
【0032】
パワーON状態で行われる変速とは、アクセルペダルが踏み込まれている状態、すなわち変速機4の入力トルクが正トルク(変速機4の入力側が駆動側となるトルク)の状態で行われるアップシフト及びダウンシフトのことである。パワーOFF状態で行われる変速とは、アクセルペダルが踏み込まれていない状態、すなわち変速機4の入力トルクが負トルク(変速機4の出力側が駆動側となるトルク)の状態で行われるアップシフト及びダウンシフトのことである。
【0033】
この中でも、踏み込んでいたアクセルペダルから完全に足を離したとき、すなわちアクセルペダル踏込量APOが所定の踏込量APO1からゼロに変化したときに行われるパワーOFF状態でのアップシフト(以下「足離しアップシフト」という。)や、踏み込んでいたアクセルペダルから足を戻したとき、すなわちアクセルペダル踏込量APOが所定の踏込量APO1からAPO2(APO1>APO2)に変化したときに行われるパワーON状態でのアップシフト(以下「足戻しアップシフト」という。)は、到達スルー変速比(現在の車速VSP及びアクセルペダル踏込量APOで達成すべきスルー変速比)DRatioの変化が特に大きくなる。そうすると、アップシフト中にエンジン回転速度が同じ回転速度のまま一時的に変化しなくなる停滞期間が発生することがある。以下、この問題点について図13及び図14を参照して説明する。
【0034】
図13は、足戻しアップシフト中に停滞期間が発生した場合のタイムチャートを本実施形態との比較例として示したものである。図14は、足離しアップシフト中に停滞期間が発生した場合のタイムチャートを本実施形態との比較例として示したものである。
【0035】
本実施形態では、スルー変速比Ratioを、到達スルー変速DRatioに向けて、所定の過渡応答(例えば一次応答)で変化させる。つまり、スルー変速比Ratioを所定の過渡応答で到達スルー変速DRatioに向けて変化させるための目標スルー変速比Ratio0を設定し、スルー変速比Ratioを目標スルー変速比Ratio0に制御する。そして、目標スルー変速比Ratio0を副変速機構30の変速比で割ってバリエータ20の目標変速比(以下「バリエータ目標変速比」という。)vRatio0を演算し、バリエータ20の変速比vRatioがバリエータ目標変速比vRatio0になるようにバリエータ20を制御する。
【0036】
そのため、副変速機構30の変速比が変化するイナーシャフェーズが開始されるまでは、バリエータ20の変速比vRatioのみを変化させてスルー変速比Ratioを目標スルー変速比Ratio0に制御することになる。したがって、図13及び図14に示すように、イナーシャフェーズが開始される前にバリエータ20の変速比vRatioがバリエータ20の最High変速比(以下「バリエータ最High変速比」という。)に到達してしまうと、イナーシャフェーズが開始されるまでスルー変速比Ratioが変化しない状態になってしまう(図中破線で囲った部分参照)。
【0037】
そうすると、エンジン回転速度は変速機4の出力回転速度にスルー変速比Ratioを掛けたものなので、アップシフト中であるにもかかわらずエンジン回転速度が変化しない停滞期間が生じることになる。その結果、変速時における滑らかな回転変化が損なわれて運転性能が悪化する。また、変速機4の出力回転速度が高い(車速が高い)とエンジン回転速度が高い状態で停滞期間が生じることになるので燃費も悪化する。
【0038】
そこで本実施形態では、変速開始からイナーシャフェーズまでに要する時間を短縮することで、停滞期間が生じたときの運転性能及び燃費への影響を抑制する。
【0039】
図4は、本実施形態による変速制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら変速機コントローラ12が実行する変速制御の具体的内容について説明する。
【0040】
ステップS1において、変速機コントローラ12は、モード切換を伴うアップシフトを実施するかを判断する。具体的にはスルー変速比Ratio、到達スルー変速比DRatio及びモード切換変速比mRatioに基づいて判断する。変速機コントローラ12は、モード切換を伴うアップシフトを実施する場合はステップS2に処理を移行し、そうでなければ今回の処理を終了する。
【0041】
ステップS2において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ中かを判断する。具体的には、アップシフト開始からの経過時間が準備フェーズ終了時間に達しているかを判断する。変速機コントローラ12は、準備フェーズ中であればステップS3に処理を移行し、そうでなければステップS4に処理を移行する。
【0042】
ステップS3において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮処理を実施する。具体的な内容については図5を参照して後述する。
【0043】
ステップS4において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグf1を0にセットする。
【0044】
ステップS5において、変速機コントローラ12は、イナーシャフェーズ前のトルクフェーズ中かを判断する。変速機コントローラ12は、イナーシャフェーズ前のトルクフェーズ中であればステップS6に処理を移行し、そうでなければ今回の処理を終了する。
【0045】
ステップS6において、変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮処理を実施する。具体的な内容については図6を参照して後述する。
【0046】
図5は、準備フェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【0047】
ステップS31において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグが1にセットされているかを判断する。変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグf1が0にセットされていればステップS32に処理を移行する。一方で準備フェーズ短縮禁止フラグf1が1にセットされていれば今回の処理を終了する。
【0048】
ステップS32において、変速機コントローラ12は、プリチャージが終了しているかを判断する。変速機コントローラ12は、プリチャージが終了していなければステップS33に処理を移行する。一方でプリチャージが終了していればステップS34に処理を移行する。
【0049】
ステップS33において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ終了時間を通常目標時間に設定する。
【0050】
ステップS34において、変速機コントローラ12は、停滞条件が成立しているかを判断する。具体的には、以下の条件式(1)及び(2)が成立しているかを判断してアップシフト中に停滞期間が生じる可能性があるかを判断する。この条件式についての説明は、図7を参照して後述する。変速機コントローラ12は、停滞条件が成立していればステップS35に処理を移行し、そうでなければステップS37に処理を移行する。
【0051】
スルー変速比<(停滞変速比+第1所定値) …(1)
到達スルー変速比<(停滞変速比−第2所定値) …(2)
但し、停滞変速比=バリエータ最High変速比×副変速機構の第1変速段変速比
【0052】
ステップS35において、変速機コントローラ12は、スタンバイ圧を通常時のスタンバイ圧(以下「通常スタンバイ圧」という。)よりも高い短縮スタンバイ圧に設定する。
【0053】
ステップS36において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ終了時間を通常終了時間よりも短い短縮終了時間に設定する。
【0054】
ステップS37において、変速機コントローラ12は、準備フェーズ短縮禁止フラグf1を1にセットする。
【0055】
図6は、トルクフェーズ短縮処理について説明するフローチャートである。
【0056】
ステップS61において、変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮禁止フラグf2が1にセットされているかを判断する。変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮禁止フラグf2が0にセットされていればステップS62に処理を移行する。一方でトルクフェーズ短縮禁止フラグf2が1にセットされていれば今回の処理を終了する。
【0057】
ステップS62において、変速機コントローラ12は、停滞条件が成立しているかを判断する。具体的には、前述した条件式(1)及び(2)が成立しているかを判断する。変速機コントローラ12は、停滞条件が成立していればステップS63に処理を移行し、そうでなければステップS64に処理を移行する。
【0058】
ステップS63において、変速機コントローラ12は、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を通常の油圧変化速度(以下「通常油圧変化速度」という。)よりも早い短縮油圧変化速度で変化させる。
【0059】
ステップS64において、変速機コントローラ12は、トルクフェーズ短縮禁止フラグf2を1にセットする。
【0060】
ステップS65において、変速機コントローラ12は、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を短縮油圧変化速度で変化させる。
【0061】
図7(A)及び図7(B)は、それぞれアクセルペダル踏込量が低下して到達スルー変速比がアップシフト側に変化し、所定の過渡応答でスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御しているときのタイムチャートである。これを参照して前述した条件式(1)及び(2)について説明する。
【0062】
条件式(1)は、スルー変速比が第1閾値(停滞変速比+第1所定値)より小さいかを判断する。これは、仮に停滞が発生する場合には、停滞期間に入るまでの時間的余裕がどれほどあるかを判断するものである。スルー変速比が第1閾値より小さくなれば、停滞期間に入るまでにあまり時間が残されていないと判断できる。
【0063】
条件式(2)は、到達スルー変速比が第2閾値(停滞変速比−第2所定値)より小さいかを判断する。これは、停滞変速比と到達スルー変速比との差がどれほどあるかを判断するものである。到達スルー変速比が第2閾値よりも小さければ、スルー変速比が比較的大きい状態、すなわちエンジン回転速度が高い状態で停滞が起こるため燃費が悪化する。
【0064】
図7(A)の場合、時刻t51で到達スルー変速比がアップシフト側に変化した段階で到達スルー変速比が第2閾値を下回り条件式(2)が満たされ、時刻t52でスルー変速比が第1閾値を下回った段階で条件式(1)が満たされる。
【0065】
図7(B)の場合、時刻t61で到達スルー変速比がアップシフト側に変化しても到達スルー変速比が第2閾値を下回っていないので条件式(2)が満たされることはない。
【0066】
図8は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足戻しアップシフトがされた場合に準備フェーズ及びトルクフェーズをそれぞれ短縮するときのタイムチャートである。
【0067】
時刻t11で、アクセルペダルから足が戻されて到達スルー変速比がアップシフト側に変化すると、足戻しアップシフトが開始される。足戻しアップシフトはパワーON状態で行われるアップシフトなので、副変速機構30は、準備フェーズ、トルクフェーズ、イナーシャフェーズ及び終了フェーズを経て低速モードから高速モードへの切り換えを終了する。
【0068】
準備フェーズは、副変速機構30の変速段を変更するための準備をするフェーズである。具体的には、副変速機構30の解放側の摩擦締結要素の油圧を解放初期圧まで低下させ、締結側の摩擦締結要素の目標油圧を所定時間プリチャージ圧に保持した後にスタンバイ圧(締結初期圧)まで低下させる。解放初期圧とは、解放側の摩擦締結要素(1−2変速の場合はLowブレーキ32)のトルク容量を、解放側の摩擦締結要素が滑り出す容量にする油圧値のことである。スタンバイ圧とは、締結側の摩擦締結要素(1−2変速の場合はHighクラッチ33)のトルク容量を、締結側の摩擦締結要素をトルク伝達可能な容量にする油圧値のことである。
【0069】
イナーシャフェーズは、摩擦締結要素の油圧を制御して、副変速機構30の入力回軸転速度を変速前の回転速度から変速後の回転速度へ変化させるフェーズである。
【0070】
トルクフェーズは、副変速機構30の入力トルクの受け持ちを解放側の摩擦締結要素から締結側の摩擦締結要素へ移行させるフェーズである。具体的には、解放側の摩擦締結要素の油圧をゼロに向けて低下させる一方で、締結側の摩擦締結要素の油圧をスタンバイ圧から増加させる。
【0071】
終了フェーズは、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大油圧まで上昇させて、締結側の摩擦締結要素を完全締結させるフェーズである。
【0072】
時刻t12で、締結側の摩擦締結要素の目標油圧を所定時間プリチャージ圧に保持するプリチャージが終了すると、その時点で停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t12の時点で、スルー変速比Ratioが第1閾値より小さく、かつ、到達スルー変速比DRatioが第2閾値より小さいので停滞判定条件が成立している。よって、スタンバイ圧を短縮スタンバイ圧に設定し、準備フェーズ終了時間を通常終了時間から短縮終了時間に変更する。これにより準備フェーズの実施時間を短縮する。
【0073】
なお、プリチャージ終了時点で停滞判定条件が成立していなければ、それ以降に停滞判定条件が成立しても締結側摩擦締結要素の油圧は通常スタンバイ圧のままとし、準備フェーズ終了時間も通常終了時間のままとなる。これは、途中で締結側摩擦締結要素の油圧を通常スタンバイ圧から短縮スタンバイ圧に上げると、締結側摩擦締結要素のストローク完了のタイミングが不確定になり、準備フェーズをどれだけ短縮させればいいのかが分からなくなる。そうすると、準備フェーズの時間が短すぎた場合には、締結側摩擦締結要素の油圧が十分でなく、トルクフェーズ初期に締結側摩擦締結要素で応答遅れが生じる可能性がある。また、準備フェーズの時間が長すぎた場合には、締結側摩擦締結要素の油圧が通常時よりも高い短縮スタンバイ圧になっているので、その分伝達トルクが変動してトルクフェーズ初期にショックが生じる可能性がある。
【0074】
時刻t13で、バリエータ20の変速比vRatioが最High変速比に到達すると、スルー変速比Ratioが変化しない(エンジン回転速度が変化しない)停滞期間に入る。
【0075】
時刻t14で、変速開始(時刻t11)からの時間が短縮終了時間に到達すると準備フェーズを終了してトルクフェーズを開始する。トルクフェーズが開始されると、その時点で再び停滞判定条件が成立しているかを判断する。ここでは、停滞判定条件が成立しているので、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を通常の油圧変化速度よりも早い短縮油圧変化速度で変化させる。これによりトルクフェーズの実施時間を短縮する。
【0076】
時刻t15で、副変速機構30の変速比変化が始まるイナーシャフェーズに入ると、副変速機構の変速比変化に伴ってスルー変速比Ratioも変化し、停滞期間が終了する。
【0077】
図9は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足戻しアップシフトがされたときにトルクフェーズのみを短縮する場合のタイムチャートである。
【0078】
時刻t21で、足戻しアップシフトが開始されると、副変速機構30は、準備フェーズ、トルクフェーズ、イナーシャフェーズ及び終了フェーズを経て低速モードから高速モードへの切り換えを終了する。
【0079】
時刻t22で、プリチャージが終了すると、その時点で停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t22の時点で、スルー変速比Ratioが第1閾値よりも大きいので停滞判定条件が成立していない。よって、締結側摩擦締結要素の油圧を通常スタンバイ圧に設定し、準備フェーズ終了時間も通常終了時間のままとする。
【0080】
時刻t23で、バリエータ20の変速比vRatioが最High変速比に到達すると、スルー変速比Ratioが変化しない停滞期間に入る。
【0081】
時刻t24で、変速開始(時刻t21)からの時間が通常終了時間に到達するとトルクフェーズが開始される。トルクフェーズが開始されると、その時点で再び停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t24の時点では、スルー変速比Ratioが第1閾値より小さく、かつ、到達スルー変速比DRatioが第2閾値より小さいので停滞判定条件が成立している。よって、解放側及び締結側の摩擦締結要素の油圧を通常の油圧変化速度よりも早い短縮油圧変化速度で変化させる。これによりトルクフェーズの実施時間を短縮する。
【0082】
時刻t25で、副変速機構30の変速比変化が始まるイナーシャフェーズに入ると、副変速機構の変速比変化に伴ってスルー変速比Ratioも変化し、停滞期間が終了する。
【0083】
図10は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足離しアップシフトがされたときのタイムチャートである。
【0084】
時刻t31で、アクセルペダルから足が離されて到達スルー変速比がアップシフト側に変化すると、足離しアップシフトが開始される。足離しアップシフトはパワーOFF状態で行われるアップシフトなので、副変速機構30は、準備フェーズ、イナーシャフェーズ、トルクフェーズ及び終了フェーズを経て低速モードから高速モードへの切り換えを終了する。
【0085】
時刻t32で、プリチャージが終了すると、その時点で停滞判定条件が成立しているかを判断する。時刻t12の時点で、スルー変速比Ratioが第1閾値より小さく、かつ、到達スルー変速比DRatioが第2閾値より小さいので停滞判定条件が成立している。よって、スタンバイ圧を短縮スタンバイ圧に設定し、準備フェーズ終了時間を通常終了時間から短縮終了時間に変更する。これにより準備フェーズの実施時間を短縮する。
【0086】
時刻t33で、バリエータ20の変速比vRatioが最High変速比に到達すると、スルー変速比Ratioが変化しない停滞期間に入る。
【0087】
時刻t34で、変速開始(時刻t31)からの時間が短縮終了時間に到達するとイナーシャフェーズが開始される。イナーシャフェーズが開始されると、副変速機構30の変速比変化が始まってスルー変速比Ratioも変化し、停滞期間が終了する。
【0088】
以上説明した本実施形態によれば、モード切換を伴うアップシフトにおいて、停滞判定条件が成立したときは、副変速機構30の準備フェーズ及びトルクフェーズの一方又は双方の実施期間を短縮させた。これにより、変速開始からイナーシャフェーズまでに要する時間を短縮することができるので、停滞期間を短縮することができる。これにより、アップシフト中にエンジン回転速度を滑らかに低下させることができ、運転性能の悪化を抑制できる。また、停滞期間が長く続くことによる燃費の悪化も抑制できる。
【0089】
また、準備フェーズを短縮するときには、スタンバイ圧を通常よりも高い短縮スタンバイ圧に設定することとした。これにより、準備フェーズを短縮した場合であっても締結側摩擦締結要素のストロークを完了させることができ、その後のトルクフェーズで締結側摩擦締結要素のトルク容量を確保することができる。
【0090】
なお、準備フェーズを短縮する方法としては、プリチャージの時間を長くするか、プリチャージ圧を高くすることも考えられる。しかしながら、そうするとばらつきによってはプリチャージ中に締結側摩擦締結要素のストロークが完了する可能性があり、インターロックが発生して運転性能が悪化することがある。したがって、準備フェーズを短縮するためにプリチャージの時間等を変更することは好ましくない。
【0091】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、スルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御するときの過渡応答の時間を長くする(時定数を大きくする)点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0092】
図11は、本実施形態による変速制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら変速機コントローラ12が実行する変速制御の具体的内容について説明する。
【0093】
ステップS1からステップS6については第1実施形態と同様の処理を実施しているのでここでは説明を省略する。
【0094】
ステップS21において、変速機コントローラ12は、停滞判定条件が成立しているかを判断する。具体的には、前述した条件式(1)及び(2)が成立しているかを判断する。変速機コントローラ12は、条件式(1)及び(2)が成立していればステップS22に処理を移行し、そうでなければステップS2に処理を移行する。
【0095】
ステップS22において、変速機コントローラ12は、スルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御するときの過渡応答の時間を通常時と比べて長くする。具体的には、過渡応答の時定数を大きくして、スルー変速比Ratioが到達スルー変速比DRatioに到達するまでの時間を通常時よりも長くする。
【0096】
図12は、本実施形態による変速制御の動作を説明するタイムチャートであり、足戻しアップシフトがされた場合に準備フェーズ及びトルクフェーズをそれぞれ短縮しつつ、スルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御するときの過渡応答の時間を長くしたときのタイムチャートである。
【0097】
時刻t41で、アクセルペダルから足が戻されて到達スルー変速比DRatioがアップシフト側に変化すると、足戻しアップシフトを開始し、同時に停滞条件が成立しているかを判断する。ここでは、停滞条件が成立している場合を想定しているので、通常よりも過渡応答の時間を長くしてスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioに向けて制御する。
【0098】
これにより、バリエータ変速比vRatioが最High変速比に到達するまでに要する時間(時刻t41から時刻t42までの期間)が通常時と比べて長くなる。そのため、バリエータ変速比vRatioが最High変速比に到達してからイナーシャフェーズが開始されるまでの時間(時刻t42から時刻t43までの期間)が短くなり停滞期間を短くすることができる。したがって、変速時における滑らかな回転変化が損なわれるのを抑制でき、運転性能の悪化を抑制できる。そして、準備フェーズ及びトルクフェーズの実施期間を短縮すればより顕著にその効果を得ることができる。
【0099】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0100】
例えば上記各実施形態では、スルー変速比Ratioを基準に停滞判定を実施したが、プライマリ回転速度Npriを基準にして以下の条件式(3)及び(4)によって停滞判定を実施してもよい。
【0101】
プライマリ回転速度<(停滞回転速度+第3所定値) …(3)
到達プライマリ回転速度<(停滞回転速度−第4所定値) …(4)
但し、停滞回転速度=変速機出力回転×バリエータ最High変速比×副変速機構の第1変速段の変速比
【0102】
また、第1所定値及び第2所定値を一定の値としていたが、車速や油温、アクセルペダル踏込量に応じて可変としてもよい。
【0103】
また、副変速機構30は前進用の変速段として1速と2速の2段を有する変速機構としたが、副変速機構30を前進用の変速段として3段以上の変速段を有する変速機構としてもよい。
【0104】
また、副変速機構30をラビニョウ型遊星歯車機構を用いて構成したが、このような構成に限定されない。例えば、副変速機構30は、通常の遊星歯車機構と摩擦締結要素を組み合わせて構成してもよいし、あるいは、ギヤ比の異なる複数の歯車列で構成される複数の動力伝達経路と、これら動力伝達経路を切り換える摩擦締結要素とによって構成してもよい。
【0105】
また、プーリ21、22の可動円錐板を軸方向に変位させるアクチュエータとして油圧シリンダ23a、23bを備えているが、アクチュエータは油圧で駆動されるものに限らず電気的に駆動されるものあってもよい。
【0106】
また、モード切換変速比を低速モード最High変速比と等しい値に設定しているが、ここでいう「等しい」には略等しい場合も含まれ、そのような場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0107】
また、上述の説明においては、無段変速機構としてベルト及びプーリを使用するいわゆるベルト式無段変速機構を例示して説明したが、これには限定されない。たとえばチェーン及びプーリを使用するいわゆるチェーン式無段変速機構や、パワーローラ及び入出力ディスクを使用するいわゆるトロイダル式無段変速機構であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
4 無段変速機(車両用無段変速機)
20 ベルト式無段変速機構(無段変速機構)
30 副変速機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速比を無段階に変更することができる無段変速機構と、
前記無段変速機構に対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段とこの第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを含み、複数の摩擦締結要素を選択的に締結又は解放することで前記第1変速段と前記第2変速段とを切り換える副変速機構と、
を備える車両用無段変速機の制御装置であって、
車両の運転状態に基づいて達成すべき前記無段変速機構及び前記副変速機構の全体の変速比を到達変速比として設定する到達変速比設定手段と、
前記全体の変速比が前記到変速比に所定の過渡応答で追従するように前記無段変速機構及び前記副変速機構を制御する変速制御手段と、
アップシフト中に、前記全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生するか否かを判定する停滞判定手段と、
前記停滞期間が発生すると判定したときに、前記副変速機構がイナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する短縮制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用無段変速機の制御装置。
【請求項2】
前記短縮制御手段は、
前記副変速機構のトルクフェーズにおいて、解放側摩擦締結要素及び締結側摩擦締結要素の供給油圧の変化速度を通常時よりも増大させることでトルクフェーズの実施期間を短縮し、イナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項3】
前記短縮制御手段は、
前記副変速機構の準備フェーズ終了時間を通常時よりも早くすることで準備フェーズの実施期間を短縮し、イナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項4】
前記副変速機構の準備フェーズ終了時間を通常時よりも早くするときは、準備フェーズ中に設定される締結側摩擦締結要素のスタンバイ圧を通常時よりも高くする
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項5】
前記停滞期間が発生すると判定したときは、前記過渡応答の時間を長くする
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1つに記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項6】
前記停滞判定手段は、
前記無段変速機構の最High変速比に前記副変速機構の前記第1変速段の変速比を掛けて求まる停滞変速比に第1所定値を足した第1閾値よりも前記全体の変速比が小さく、かつ、前記停滞変速比から第2所定値を引いた第2閾値よりも前記到達変速比が小さいときに停滞期間が発生すると判定する
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項1】
変速比を無段階に変更することができる無段変速機構と、
前記無段変速機構に対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段とこの第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを含み、複数の摩擦締結要素を選択的に締結又は解放することで前記第1変速段と前記第2変速段とを切り換える副変速機構と、
を備える車両用無段変速機の制御装置であって、
車両の運転状態に基づいて達成すべき前記無段変速機構及び前記副変速機構の全体の変速比を到達変速比として設定する到達変速比設定手段と、
前記全体の変速比が前記到変速比に所定の過渡応答で追従するように前記無段変速機構及び前記副変速機構を制御する変速制御手段と、
アップシフト中に、前記全体の変速比が変化しなくなる停滞期間が発生するか否かを判定する停滞判定手段と、
前記停滞期間が発生すると判定したときに、前記副変速機構がイナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する短縮制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用無段変速機の制御装置。
【請求項2】
前記短縮制御手段は、
前記副変速機構のトルクフェーズにおいて、解放側摩擦締結要素及び締結側摩擦締結要素の供給油圧の変化速度を通常時よりも増大させることでトルクフェーズの実施期間を短縮し、イナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項3】
前記短縮制御手段は、
前記副変速機構の準備フェーズ終了時間を通常時よりも早くすることで準備フェーズの実施期間を短縮し、イナーシャフェーズに入るまでの時間を短縮する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項4】
前記副変速機構の準備フェーズ終了時間を通常時よりも早くするときは、準備フェーズ中に設定される締結側摩擦締結要素のスタンバイ圧を通常時よりも高くする
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項5】
前記停滞期間が発生すると判定したときは、前記過渡応答の時間を長くする
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1つに記載の車両用無段変速機の制御装置。
【請求項6】
前記停滞判定手段は、
前記無段変速機構の最High変速比に前記副変速機構の前記第1変速段の変速比を掛けて求まる停滞変速比に第1所定値を足した第1閾値よりも前記全体の変速比が小さく、かつ、前記停滞変速比から第2所定値を引いた第2閾値よりも前記到達変速比が小さいときに停滞期間が発生すると判定する
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の車両用無段変速機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−21717(P2011−21717A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169161(P2009−169161)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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