説明

車両用表示装置

【課題】 運転者に対して車両前方における走路を含む走路周辺の情報を容易に認識させることが可能な車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 地図情報記憶手段13に格納された三次元情報からなる地図情報に基づいて車両Aに搭載されるコンバイナFに走路形状Rと車両Aの進路を指示する指標部Pとを投影する表示器2を備え、走路形状Rと指標部Pを外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段Cと、撮像手段Cによる撮像情報のうち走路形状Rの背景に対応する背景部Bが走路形状Rと指標部Pに付加されてなる表示像Lを表示器2によってコンバイナFに投影させる制御手段15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるコンバイナに走路形状を投影する表示手段を備えた車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用表示装置として種々の情報を表示像として投影して表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置が提案されており、例えば下記特許文献1に開示されている。かかる車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、バックライトを備えた液晶表示素子から発せられる表示光(表示像)を、車両の運転席前方となるダッシュボード上に専用(個別)に設けられるコンバイナに投影し、虚像を表示するものである。前述した車両用ヘッドアップディスプレイ装置によれば、車速情報等を前記虚像として表示することが可能となり、運転者は、その視点方向に前記虚像を視認することができる。
【特許文献1】特開平8−268114号公報
【0003】
一方、車両運転者の視点から見た車両前方の走路形状を表す走路形状表示を前記虚像として表示する車両用表示装置も知られている(例えば下記特許文献2参照)。かかる車両用表示装置によれば、運転者は、天候条件、走路のカーブ、周辺車両及び建物等の影響で、実際の前記走路形状を目視し難い場合であっても、コンバイナに投影される前記走路形状表示から実際の前記走路形状を把握することができる。
【特許文献2】特開2000−211452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2に記載の車両用表示装置を特許文献1に記載の車両用表示装置に適用すれば、運転者は、その視点方向に虚像である走路形状を視認することができることになる。しかしながら、この場合、前記走路形状については車両運転者に対して効果的に表現できるものの、コンバイナには前記走路形状が表示像として表現されているに過ぎないため、運転者に対して車両前方における走路形状を含む走路周辺の情報量が十分なものではなく、車両用情報表示装置として走路周辺の情報量が欠如してしまうという問題があり、更なる改良の余地が残されていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、運転者に対して車両前方における走路を含む走路周辺の情報を容易に認識させることが可能な車両用表示装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、地図情報記憶手段に格納された三次元情報からなる地図情報に基づいて車両に搭載されるコンバイナに走路形状と前記車両の進路を指示する指標部とを投影する表示手段を備え、前記走路形状と前記指標部を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像情報のうち前記走路形状の背景に対応する背景部が前記走路形状と前記指標部に付加されてなる表示像を前記表示手段によって前記コンバイナに投影させる制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0006】
また本発明は、地図情報記憶手段に格納された三次元情報からなる地図情報に基づいて車両に搭載されるコンバイナに走路形状と前記車両の停止位置を示す停止位置表示部とを投影する表示手段を備え、前記走路形状と前記停止位置表示部を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像情報のうち前記走路形状の背景に対応する背景部が前記走路形状と前記停止位置表示部に付加されてなる表示像を前記表示手段によって前記コンバイナに投影させる制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記車両の現在位置を検出する位置検出手段を設け、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された前記車両の現在位置データと前記地図情報とに基づいて前記車両の前方側の走路形状を前記表示像の一部として前記コンバイナに投影させてなることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記撮像手段は、運転者の視野範囲外を撮像可能に設けられ、前記制御手段は、前記視野範囲外に対応する前記走路形状と前記背景部とを前記表示像の一部として前記コンバイナに投影させてなることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記指標部は、前記走路形状に表示された矢印図形からなることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記停止位置表示部は、前記走路形状に表示されたライン状の停止線からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、運転者に対して車両前方における走路を含む走路周辺の情報を容易に認識させることが可能な車両用表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の車両用表示装置を車両用ヘッドアップディスプレイ装置に適用したものを例に挙げ添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1,図2において、1は表示ユニットであり、車両Aのダッシュボード内に配設される。表示ユニット1が投射する表示像Lは、フロントガラスW面に貼り付けられたコンバイナFにより運転者の視点Dの方向に反射され、虚像Vとして表示される。前記運転者は虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。また、車両Aには、フロントガラスWを介して外界(車外)の景色を撮像する撮像手段Cが搭載されている。
【0014】
2は表示器(表示手段)であり、この表示器2はTFT型の液晶表示素子及びバックライト手段からなるものである。3は回路基板であり、この回路基板3上に表示器2が搭載されている。4は反射鏡であり、この反射鏡4は表示器2が発した表示像LをフロントガラスWにおけるコンバイナF側に反射させる。反射鏡4の反射面4aは凹面になっており、表示器2からの表示像Lを拡大してコンバイナFに投射することができる。5は反射鏡4を保持する保持部材であり、反射鏡4は保持部材5に両面粘着テープ等により接着されている。なお、表示器2は、液晶表示素子を備える構成に限定されるものではなく、例えば自発光型表示素子である有機ELパネルを備える構成であってもよい。
【0015】
6は例えば略箱型形状に形成された遮光性合成樹脂からなるハウジングであり、このハウジング6内には、表示器2,回路基板3,反射鏡4等が収容される。また、ハウジング6には反射鏡4の配設位置の上部(フロントガラスW側)を開口する開口部6aが設けられる。そして、ハウジング6には、開口部6aを塞ぐように透光性の合成樹脂材(例えばアクリル樹脂)からなる透光性カバー7が配設されている。この遮光性カバー7は略湾曲形状に形成され、表示像LをフロントガラスW側に通過させるものである。なお、図1中、6bはハウジング6空洞内に向けて延在する遮光壁であり、この遮光壁6bは、太陽光等の外光が表示器2に入射し虚像Vが見えにくくなる現象(ウォッシュアウト)を防止する機能を有している。
【0016】
図3は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的な構成を示すブロック図である。車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、車両Aに搭載され、速度センサ(車速検出手段)10と、GPS(Global Positioning System)装置11と、ジャイロセンサ12と、記憶媒体(地図情報記憶手段)13と、操作手段14と、撮像手段Cと、制御手段15と、表示駆動回路16と、表示器2とから主に構成されている。
【0017】
速度センサ10は、車両Aの走行速度を検出するためのもので、車速に応じた信号を制御手段15に出力する。
【0018】
GPS装置11は、自車位置(車両Aの現在位置)を求めるための装置であり、GPS用受信アンテナや増幅回路を備え、前記受信アンテナで受信した人工衛星からの位置情報である送信電波を高周波信号として増幅してなる信号を制御手段15に出力する。
【0019】
ジャイロセンサ12は、車両Aの車体向き(進行方向)を検出するためのものであり、車両Aの方向変化に応じた信号を制御手段15へ出力する。ジャイロセンサ12からの信号は、GPS装置11が人工衛星からの送信電波を受信できない場合など、速度センサ10の速度信号とともに、自車位置を算出するために使用される。
【0020】
記憶媒体13は、CD−ROM、DVD−ROMあるいはハードディスク等によって構成され、地図データ及び走路形状を示すための三次元の座標情報(三次元情報)からなるデジタルマップデータ(地図情報)が記憶されており、前記デジタルマップデータは、制御手段15による後述する描画処理を行う際に使用される。なお、前記デジタルマップデータは、走路の形状を示す走路形状データ,前記走路の所定位置における高さを示す高さデータ,前記走路の左右の傾きを示す傾きデータ,前記走路の曲率を示す曲率データ等を有している。
【0021】
操作手段14は、選択スイッチや決定スイッチ等の複数の操作部を有するものであり、後述する走路形状画像(前記走路の各三次元の座標情報を描画処理したもの)等の表示形態または表示設定を切り換えるためのものである。また、運転者は、前記表示設定として、前記走路形状画像の表示または非表示の選択、あるいは前記走路形状画像を表示する際の各設定値等を、操作手段14を操作することによって、表示器2による表示内容を任意に設定することができる。
【0022】
撮像手段Cは、CCDやCMOS等の撮像素子を有するカメラまたは暗視用のカメラを適用でき、車両Aの前方側を撮像可能に設けられており、所定時間毎の画像を撮像情報として制御手段15に出力するものである。この場合、撮像手段Cは、フロントガラスWと前記運転者との間における車両A内に配設され、運転者が目視可能な車両Aの前方側領域(視野範囲内領域)と前記視野範囲内領域よりも前方側である運転者の目視困難な視野範囲外領域とを撮像可能に設けられている。例えば、撮像手段Cは、夜間あるいは濃霧や吹雪等の悪天候時において車両Aに搭載されるヘッドランプ等の光源に照らされる外界の景色(前記視野範囲内領域)と、前記視野範囲内領域よりさらに前方側となる前記光源によって照らされにくい領域であって前記運転者の目視困難な外界の景色(前記視野範囲外領域)とをフロントガラスWを介して撮像できるような向きに設置される。なお撮像手段Cは、車両A内ではなく、車両Aの外部、例えば車両Aの先端側に取り付けることも可能である。
【0023】
制御手段15は、マイクロコンピュータを適用でき、処理動作のプログラムが記憶されたROMと、演算値を一時的に記憶するRAMと、予め設定される各種設定値を記憶するEEPROMと、前記プログラムを実行するためのCPUと、入出力インターフェイス回路とから主に構成される。前記入出力インターフェイス回路は、速度センサ10、GPS装置11、ジャイロセンサ12、記憶媒体13、操作手段14、撮像手段Cや、後述する表示駆動回路16に対してそれぞれ電気的な接続関係をなすための回路である。制御手段15は、各機構(速度センサ10,GPS装置11,ジャイロセンサ12,記憶媒体13,操作手段14,撮像手段C)からの入力及び前記プログラムに基づいて、後述する表示駆動回路16に制御信号を出力し、表示器2に所望の表示を促すものである。
【0024】
表示駆動回路16は、表示器2に表示用の信号を与えるための回路であり、ICまたはLSIにて構成される。表示駆動回路16は、制御手段15からの信号に基づいて所定の表示を行うように表示器2を駆動制御するものである。
【0025】
表示器2は、TFT型の液晶表示素子及びバックライト手段からなり、表示像Lを発するように表示駆動回路16により駆動制御される。表示器2は、表示駆動回路16によって、前記走路形状画像等の所望の表示形態を表示像LとしてコンバイナFに投影するものである。
【0026】
以上の構成によって、制御手段15は、速度センサ10、GPS装置11、ジャイロセンサ12から構成される位置検出手段17の信号に基づいて、車両位置座標及び車両Aの向きを算出し、この車両Aの前方側(進行方向側)に対応する走路形状を、記憶媒体13に格納された前記デジタルマップデータに基づいて、表示駆動回路16を介して表示器2に投影表示させることができる。また、撮像手段Cによって、外界の景色(車両Aの前方側の景色)を撮像情報として得ることができる。
【0027】
次に、制御手段15による表示像Lの描画に関して、図4,図5を用いて説明する。
【0028】
図4は、制御手段15による処理を示すものである。また図5は、夜間や悪天候時において車両Aの前方側(進行方向側)の走路形状を表示像Lとして、表示ユニット1にてコンバイナFに投影して表示する表示画面の一例を示すものである。
【0029】
制御手段15は、位置検出手段17からの信号や撮像手段Cからの撮像情報がそれぞれ入力される(ステップS1)。この際、制御手段15は、撮像手段Cからの撮像情報において、前記視野範囲内領域における画像と前記視野範囲外領域における画像を抽出して読み取る。
【0030】
次に、制御手段15は、ステップS1にて入力した位置検出手段17からの信号に基づいて、車両位置座標及び車両Aの進行方向を算出する(ステップS2)。この場合、制御手段15は、GPS装置11,速度センサ10,ジャイロセンサ12によって車両位置座標を算出する。例えば制御手段15は、GPS装置11を用いて時間によって変化する車両Aの位置データと地図データとをマッピング処理することによって、車両Aの車両位置座標を算出することができる。また制御手段15は、速度センサ10やジャイロセンサ12からの信号に基づいて、車両Aの進む方向(移動幅)や車体の傾き方向が求まる。
【0031】
次に、制御手段15は、車両位置座標に応じて視点座標を設定し、車両Aの進行方向に基づいて表示方向を設定する(ステップS3)。この場合、視点座標は、例えば車両位置座標よりも15メートル高い位置に設定され、表示方向は、車両Aの進行方向と同じ方向に設定される。
【0032】
次に、制御手段15は、記憶媒体13に格納されたデジタルマップデータにおいて、視点座標及び表示方向に基づいて選択される三次元の座標情報を演算することによって走路形状Rを描画処理する(ステップS4)。この場合、視点座標から表示方向側に例えば800メートル以内の三次元の座標情報について演算し、走路形状Rが表示されるように描画処理する。また、制御手段15は、ステップS1にて撮像情報から抽出された前記視野範囲内、外領域の画像のうち走路形状Rの背景(外界景色)に対応する部分を背景部Bとして設定して描画処理する。例えば、制御手段15は、視点座標から表示方向側に300メートル以内の領域に表示される走路形状Rの背景であって前記視野範囲内領域に対応する第1の背景部B1と、この第1の背景部B1よりも前方側となる領域に表示される走路形状Rの背景であって前記視野範囲外領域に対応する第2の背景部B2とからなる背景部Bを走路形状Rの背景として描画処理する。
【0033】
また、制御手段15は、前記描画処理された走路形状Rを走路形状画像として、さらに前記描画処理された背景部Bを外界景色画像として表示器2に表示させるように促す信号を表示駆動回路16に出力する(ステップS5)。
【0034】
前述の処理を繰り返すことによって、車両Aが走行する度に更新される視点座標と三次元の座標情報とに基づいた走路形状Rとこの走路形状Rに対応するように付加された背景部Bとからなる表示像LがコンバイナFに投影されるようになっている。例えば、図5に示すような表示像LをコンバイナFに投影することができる。
【0035】
ここで制御手段15は、ステップS4の描画処理を行う際に、前記デジタルマップデータに基づいて図5に示すような車両Aの進むべき進路を指示する指標部Pが走路形状R,背景部Bとともに表示されるように描画処理される。具体的には、制御手段15は、車両Aを所定方向に案内(誘導)するための所定幅を有する矢印図形(矢印マーク)からなる指標部Pを走路形状Rに重ねて表示させる。例えば本実施形態では、運転者に対し、走路形状Rにおいて次の十字路の交差点を左折するように指示する略「L」字状の矢印マークからなる指標部Pを前記交差点の手前略100メートルの位置に表示させる。なお、前記交差点は、十字路に限らずT字路やY字路等であってもよい。
【0036】
従って、運転者は、その視点Dの位置から目視困難な箇所(前記視野範囲外領域)に交差点が存在する場合であっても、前記交差点周囲の走路形状Rや背景部B、及び前記交差点通過後に車両Aの進むべき進路を指示するように前記交差点手前の走路形状R上に表示された指標部Pを視認することによって、車両Aの進路における走路の注意すべき形状(走路の高低差やカーブ形状等)を予め把握することができる。
【0037】
また制御手段15は、ステップS4の描画処理を行う際に、前記デジタルマップデータに基づいて図5に示すような十字路の交差点内進入前において車両Aを一時停止させるためのライン状の停止線からなる停止位置表示部Sが走路形状R,背景部B,指標部Pとともに表示されるように描画処理される。例えば本実施形態では、制御手段15は、横棒形状図形からなる停止位置表示部Sを走路形状Rにおける交差点の手前略20メートルの位置に表示させる。なお、この場合、停止位置表示部Sは、十字路交差点に連なる4つの走路にそれぞれ表示されている。
【0038】
従って、運転者は、その視点Dの位置から目視困難な箇所に交差点が存在する場合であっても、前記交差点周囲の走路形状Rや背景部B、及び車両Aの一時停止すべき位置を指示するように前記交差点手前の走路形状R上に表示された停止位置表示部Sを視認することによって、車両Aの進行方向における走路の注意すべき形状(走路の高低差やカーブ形状等)や車両Aの一時停止すべき位置情報を予め把握することができる。
【0039】
なお、車両Aの位置が、交差点から所定距離以内となったときには、指標部Pまたは停止位置表示部Sを点滅表示させたり、スピーカやブザー等から発せられる音声、警告音を用いることで、運転者に注意を喚起するようにしてもよい。また、運転者が、指標部Pの誘導に従わずに車両Aを指標部Pとは異なる方向に走行させようとした場合、つまり制御手段15が運転者の所定操作により車両Aを指標部Pとは異なる方向に走行させようとする信号を検出した場合には、指標部Pの点滅表示、あるいは前記音声、警告音により運転者に注意を喚起するようにしてもよい。
【0040】
以上のように本実施形態では、地図情報記憶手段13に格納された三次元情報からなる前記デジタルマップデータに基づいて車両Aに搭載されるコンバイナFに走路形状Rと車両Aの進路を指示する指標部Pとを投影する表示器2を備え、走路形状Rと指標部Pを前記外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段Cと、撮像手段Cによる撮像情報のうち走路形状Rの背景に対応する背景部Bが走路形状Rと指標部Pに付加されてなる表示像Lを表示器2によってコンバイナFに投影させる制御手段15とを備えたものである。
【0041】
従って、運転者は、夜間や悪天候時に車両Aを運転している場合であっても、表示器2が投影する走路形状Rと背景部Bと指標部Pとからなる表示像Lを視認することによって、これから走行しようとする運転者の視野範囲外となる走路形状やその周囲の外界景色を瞬時に認識することが可能となる。このことは、運転者に対して車両Aの進路方向における走路の注意すべき形状(走路の高低差やカーブ形状等)を容易に把握させることできることを意味している。
【0042】
また本実施形態では、制御手段15は、走路形状Rに車両Aの停止位置を示す停止位置表示部Sを表示させることにより、運転者は、夜間や悪天候時に車両Aを運転している場合であっても、表示器2が投影する走路形状Rと背景部Bと指標部Pと停止位置表示部Sとからなる表示像L全体を視認することによって、これから走行しようとする運転者の視野範囲外となる走路形状やその周囲の外界景色に加えて車両Aの一時停止位置を瞬時に認識することが可能となる。このことは、運転者に対して車両Aの進路方向における走路の注意すべき形状(走路の高低差やカーブ形状等)や車両Aの一時停止すべき位置を容易に把握させることできることを意味している。
【0043】
また本実施形態では、指標部Pが所定幅を有する矢印マークからなる例について説明したが、車両Aの進路を表示できるものであれば指標部Pの形状は任意であり、例えば指標部Pを幅のない線状の矢印マークや矢印マークの先端に位置する三角形を削除した折れ線形状により形成してもよい。さらには矢印マークではなく「左折」や「TURN LEFT」のごとき文字表示により指標部Pを形成してもよいし、指標部Pを着色して表示してもよい。
【0044】
また本実施形態では、停止位置表示部Sが、ライン状の停止線からなる場合について説明したが、例えば停止位置表示部Sを一時停止標識からなる逆三角形状の停止表示マーク、あるいは「止まれ」や「STOP」のごとき文字表示としてもよい。また、停止位置表示部Sを指標部Pと同様に着色して表示するとも可能である。
【0045】
また本実施形態では、夜間あるいは濃霧や吹雪等の悪天候条件において運転者が目視で確認困難な車両Aの前方側の走路形状Rを容易に認識させるものであったが、本発明は夜間や悪天候時以外の場合においても適用可能である。例えば車両Aの前方側となる走路上に所定の障害物(他の車両や建物等)が存在していたり、走路が蛇行する山道やトンネル等を有する場合にあっては、本発明の技術思想を昼間、夜間ともに適用することが可能である。また、濃霧や吹雪等の悪天候条件下にあっては夜間だけではなく昼間においても本発明の技術思想を適用することができる。
【0046】
また本実施形態においては、指標部Pが交差点を左折するための矢印マークからなる例について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば車両Aが前記交差点で直進または右折する場合においては、指標部Pを直進指示用または右折指示用のマークとして表示可能であり、また走路にカーブが表示されている場合には、前記カーブの手前に前記カーブの曲率に対応した矢印マークからなる指標部Pを走路上に表示することが可能である。さらに、走路形状Rが車線変更可能な片側2車線を備えた走路からなる場合には、左折指示用の矢印マークからなる指標部Pを、右側車線から左側車線に車両Aを車線(進路)変更させる際の指標として走路上に表示させることも可能である。このことは、指標部Pを複数車線における車線変更用の矢印マークとして用いることを意味している。
【0047】
また本実施形態においては、表示器2からの表示像Lは、フロントガラスWに貼り付けられたコンバイナFに投影されるものであったが、本発明における投影部材はこれに限定されるものではなく、例えば車両のダッシュボード上に専用(個別)に設けられるコンバイナに表示器からの表示像を投影させるものであってもよい。
【0048】
なお、前述した実施形態の記憶媒体13ではなく、例えば記憶媒体として車両外に設けられるサーバーを適用し、無線通信によって前記サーバーに格納されるデジタルマップデータを適宜ダウンロードすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置の表示ユニットの断面図である。
【図2】同実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
【図3】同実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
【図4】同実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置の処理手順を示す図である。
【図5】同実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置の表示画像を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
2 表示器(表示手段)
13 記憶媒体(地図情報記憶手段)
15 制御手段
17 位置検出手段
A 車両
B 背景部
B1 第1の背景部
B2 第2の背景部
C 撮像手段
F コンバイナ
L 表示像
P 指標部
R 走路形状
S 停止位置表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報記憶手段に格納された三次元情報からなる地図情報に基づいて車両に搭載されるコンバイナに走路形状と前記車両の進路を指示する指標部とを投影する表示手段を備え、前記走路形状と前記指標部を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、
前記外界の景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像情報のうち前記走路形状の背景に対応する背景部が前記走路形状と前記指標部に付加されてなる表示像を前記表示手段によって前記コンバイナに投影させる制御手段と、を備えてなることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
地図情報記憶手段に格納された三次元情報からなる地図情報に基づいて車両に搭載されるコンバイナに走路形状と前記車両の停止位置を示す停止位置表示部とを投影する表示手段を備え、前記走路形状と前記停止位置表示部を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、
前記外界の景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像情報のうち前記走路形状の背景に対応する背景部が前記走路形状と前記停止位置表示部に付加されてなる表示像を前記表示手段によって前記コンバイナに投影させる制御手段と、を備えてなることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
前記車両の現在位置を検出する位置検出手段を設け、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された前記車両の現在位置データと前記地図情報とに基づいて前記車両の前方側の走路形状を前記表示像の一部として前記コンバイナに投影させてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、運転者の視野範囲外を撮像可能に設けられ、前記制御手段は、前記視野範囲外に対応する前記走路形状と前記背景部とを前記表示像の一部として前記コンバイナに投影させてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記指標部は、前記走路形状に表示された矢印図形からなることを特徴とする請求項1記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記停止位置表示部は、前記走路形状に表示されたライン状の停止線からなることを特徴とする請求項2記載の車両用表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−151215(P2006−151215A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345559(P2004−345559)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】