説明

車両用駆動システム

【課題】 省保守かつ、電源のない走行場所を走行することのできる車両用駆動システムを提供することである。
【解決手段】 少なくとも一つの実施形態の車両用駆動システムは、回転力を生成するエンジン1と、エンジン1と接続され、エンジン1からの回転力により回転する誘導機2と、誘導機2と接続され、誘導機2の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータ3と、PWMコンバータ4と接続され、PWMコンバータ4より生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータ6と、PWMインバータ6と接続され、PWMインバータ6より生成される交流電力を回転力として回転する電動機7と、PWMコンバータ3とPWMインバータ6の間に接続され、充電を行うことが可能なフィルタコンデンサ5と、PWMコンバータ3とPWMインバータ6の間に接続され、フィルタコンデンサ5の電圧を検出する電圧センサ4を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
架線等の電力供給源がない場所を走行するため車両は、車両内に電源装置、電力変換装置、電動機を装備し、電源装置から供給される電力を電力変換装置によって電動機の駆動用電力に変換し、変換された電力により電動機が動作し、車両の走行が可能となる駆動システムを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−209969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力の供給源をバッテリとしている車両用の駆動システムでは、バッテリのメンテナンスを行うことが必要であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、省保守かつ、電源のない走行場所を走行することのできる車両用駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の車両用駆動システムは、回転力を生成するエンジンと、エンジンと接続され、エンジンからの回転力により回転する誘導機と、誘導機と接続され、前記誘導機の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータと、PWMコンバータと接続され、PWMコンバータより生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、PWMインバータと接続され、前記PWMインバータより生成される交流電力を回転力として回転する電動機と、PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、充電を行うことが可能なフィルタコンデンサと、PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧センサを有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図。
【図2】第2の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図。
【図3】第3の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図。
【図4】第4の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の駆動用システムを図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図1は、第1の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図である。
【0010】
(構成)
図1に示すように本実施形態の車両用駆動システムは、エンジン1、誘導機2、PWMコンバータ3、電圧センサ4、フィルタコンデンサ5、PWMインバータ6、電動機7、制御部10、電圧検出部11、比較部12、エンジン回転数指令部13で構成される。
エンジン1は、誘導機2の回転子と接続される。誘導機2の固定子巻線はPWMコンバータ3と接続される。PWMコンバータ3は、フィルタコンデンサ5を介してPWMインバータ6と接続される。PWMインバータ6は、電動機7と接続される。電圧センサ4はフィルタ5に並列に接続される。電圧センサ4と接続される制御部10は、電圧検出部11、比較部12、エンジン回転数指令部13を有している。
【0011】
制御部10内では、電圧検出部11が電圧センサ4と比較部12と接続する。比較部12は、電圧検出部11とエンジン回転数指令部13と接続する。エンジン回転数指令部13は、比較部12とエンジン1と接続する。
【0012】
(作用)
車両が走行する場合は、通常エンジン1で回転力を得て、その回転力で誘導機2の回転子を回転させる。誘導機2を回転させて、PWMコンバータ3を運転することで、回生電力が発生し、フィルタコンデンサ5が充電される。フィルタコンデンサ5の充電が終了すると、PWMコンバータ3からPWMインバータ6へフィルタコンデンサ5を介して直流電力が供給され、供給された直流電力をPWMインバータ6で交流電力に変換し、電動機3に電力を供給することで車両が走行する。このような誘導機2を発電機として利用するには、フィルタコンデンサ5の電圧をPWMコンバータ3が規定値以上に常時確保することが必要になる。
【0013】
フィルタコンデンサ5の電圧を規定値以上にするため誘導機2の回転子の残留磁束を利用する。残留磁束で誘導機2の回転子を回転させることで、誘導機2の固定子に誘起電圧が発生して、誘導機2よりPWMコンバータ3を介してフィルタコンデンサ5の充電をすることが可能となる。これによりフィルタコンデンサ5の電圧がある規定値以上にまで確保され、誘導機2を発電機として使用することが可能となる。残留磁束を利用することで新たに回路を追加することなく、フィルタコンデンサ5に充電することができる。
【0014】
上記のように誘導機2を発電機として使用することが可能となると、制御部10によりフィルタコンデンサ5の電圧を制御する。電圧センサ4により検出される電圧が電圧検出部11に入力される。電圧検出部11に入力された電圧は、電圧値(I)として電圧検出部11から比較部12へ入力される。比較部12に入力された電圧値(I)は、比較部12で予め設定されている指令値(Α)と比較される。指令値(Α)は、駆動システム全体が動作可能なフィルタコンデンサの電圧値を示している。そのため、比較部12での電圧値(I)>指令値(Α)と判定され、その比較結果が比較部12よりエンジン回転数指令部13へ入力された場合は、フィルタコンデンサ5の電圧が駆動システム全体の稼動に十分な値を確保できているとし、エンジンの回転数が抑制するように制御する。また、比較部12での電圧値(I)<指令値(Α)と判定され、その比較結果が比較部12よりエンジン回転数指令部13へ入力された場合は、エンジンの回転数を上げるように制御する。
【0015】
このように駆動システムが動作可能になるフィルタコンデンサ5の最低限の電圧を確保することで、誘導機2で発生する電力を電動機7に供給し、車両が走行できるようにする。
【0016】
(効果)
以上述べた実施形態の車両用の駆動システムによれば、エンジンにより車両を駆動させ、誘導機2によりコンバータ動作を確保することにより、省保守かつ、電源のない走行場所を走行することのできる車両用駆動システムを提供することが可能となる。
【0017】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図2は、第2の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図である。尚、図1と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0018】
本実施形態は、第1の実施形態とは、非常用電源22とDC/DCコンバータ21が接続されている点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0019】
(構成)
図2に示すように、フィルタコンデンサ5とPWMインバータ6の間には、DC/DCコンバータ21を介して非常用電源22が接続される。
【0020】
(作用)
誘導機2の残留磁束がフィルタコンデンサ5を充電するのに十分でない場合、DC/DCコンバータ21を介してフィルタコンデンサ22を充電する。非常用電源22を電源とし、フィルタコンデンサ22を充電することで、誘導機2を発電機として使用することが可能となる。
【0021】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態の車両用の駆動システムによれば、エンジンにより車両を駆動させ、誘導機2によりコンバータ動作を確保することにより、省保守かつ、電源のない走行場所を走行することのできる車両用駆動システムを提供することが可能となる。
【0022】
また、誘導機2の残留磁束が小さく、フィルタコンデンサ5の電圧が十分に確保できない場合において、非常用電源22からの電力供給により電動機7を駆動システムを動作させるために十分な電圧となるまで印加することが可能である。
【0023】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図3は、第3の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図である。尚、図1乃至2と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0024】
本実施形態は、第2の実施形態とは、第1ギア31、発電機32、整流器33を有している点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0025】
(構成)
図3に示すように、エンジン1には第1ギア31が接続される。エンジン1と第1ギア31の接続部と反対側で、第1ギア31と誘導機2と発電機32が接続される。誘導機2側の接続関係は、第1の実施形態と同様である。
【0026】
発電機32は、第1ギア31の接続部の反対側に、整流器33が接続される。また、整流器33はフィルタコンデンサ5とPWMインバータ6の間に接続される。
【0027】
(作用)
誘導機2の残留磁束が小さく、第1の実施形態の制御部10によりフィルタコンデンサ5を充電するのに十分でないと判定された場合、エンジン1を稼動させる。エンジン1を稼動させると、第1ギア31が回転するため、発電機32が回転する。発電機32が回転すると、交流電力が発生する。発電機32より発生した交流電力は、整流器33で整流され、フィルタコンデンサ5へ供給される。フィルタコンデンサ5が十分に充電されると、駆動システム全体が動作するようになる。
【0028】
また、本実施形態の発電機32と整流器33の間に、発電機32の出力電圧の調整のためにトランスを介してもよい。
【0029】
また、本実施形態は誘導機32からの供給電力を交流としたが、直流発電機を適用することも可能であり、その場合は、発電機32の代わりにDC/DCコンバータ等を設置し、PWMインバータ6へ入力する直流電力を生成することも可能である。
【0030】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態の車両用の駆動システムによれば、エンジンにより車両を駆動させ、誘導機2によりコンバータ動作を行うことにより、省保守かつ、電源のない走行場所を走行することのできる車両用駆動システムを提供することが可能となる。
【0031】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図4は、第4の実施形態の車両用駆動システムの全体構成を示す図である。尚、図1乃至3と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0032】
本実施形態は、第1の実施形態とは、第1ギア41と第2ギア42が接続している点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0033】
(構成)
図4に示すように、エンジン1と誘導機2の間に第1ギアが接続される。また、電動機7がPWMインバータ6と接続される反対側には第2ギア42が接続される。また第1ギア41と第2ギア42は接続される。
【0034】
(作用)
誘導機2の残留磁束が小さく、第1の実施形態の制御部10によりフィルタコンデンサ5を充電するのに十分でないと判定された場合、エンジン1を稼動させる。エンジン1を稼動させると、第2ギア41が回転する。第2ギアの回転することで、回転力が第3ギア42に伝わり、第3ギア42が回転する。第3ギア42が回転すると、その回転力により電動機7が回転する。電動機7が回転すると、その回転力により交流電力が発生し、PWMインバータ6へ電力が供給される。電動機7の交流電力はPWMインバータ6で直流電力に変換され、フィルタコンデンサ5に供給され、フィルタコンデンサ5が充電される。フィルタコンデンサ5が十分に充電されると、駆動システム全体が動作するようになる。
【0035】
つまり、フィルタコンデンサ5が誘導機2の残留磁束で十分に充電されない場合でも、機械的な接続のみで、フィルタコンデンサの充電を行うことが可能である。
【0036】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態の車両用の駆動システムによれば、エンジンにより車両を駆動させ、誘導機2によりコンバータ動作を確保することにより、省保守かつ、電源のない走行場所を走行することのできる車両用駆動システムを提供することが可能となる
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
2 誘導機
3 PWMコンバータ
4 電圧センサ
5 フィルタコンデンサ
6 PWMインバータ
7 電動機
10 制御部
11 電圧検出部
12 比較部
13 エンジン回転数指令部
21 DC/DCコンバータ
22 電源装置
31 第1ギア
32 第2ギア
41 第3ギア
42 第2電動機
43 整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を生成するエンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジンからの回転力により回転する誘導機と
前記誘導機と接続され、前記誘導機の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータと、
前記PWMコンバータと接続され、前記PWMコンバータより生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、
前記PWMインバータと接続され、前記PWMインバータより生成される交流電力を回転力として回転する電動機と、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、充電を行うことが可能なフィルタコンデンサと、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧センサと、
を有する車両用駆動システム。
【請求項2】
回転力を生成するエンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジンからの回転力により回転する誘導機と
前記誘導機と接続され、前記誘導機の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータと、
前記PWMコンバータと接続され、前記PWMコンバータより生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、
前記PWMインバータと接続され、前記PWMインバータより生成される交流電力を回転力として回転する電動機と、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、充電を行うことが可能なフィルタコンデンサと、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧センサと、
前記エンジンと前記電圧センサと接続され、前記電圧センサから検出される電圧値に基づき、前記フィルタコンデンサの充電が規定値まで行われていないと判断されると場合は、前記エンジンの回転数を増大し、前記フィルタコンデンサの受電が規定値まで行われていると判断される場合には、前記エンジンの回転数を減少する制御部と、
を有する車両用駆動システム。
【請求項3】
回転力を生成するエンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジンからの回転力により回転する誘導機と
前記誘導機と接続され、前記誘導機の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータと、
前記PWMコンバータと接続され、前記PWMコンバータより生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、
前記PWMインバータと接続され、前記PWMインバータより生成される交流電力を回転力として回転する電動機と、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、充電を行うことが可能なフィルタコンデンサと、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧センサと、
前記フィルタコンデンサと前記PWMインバータの間に接続され、前記誘導機の残留磁束が不十分で前記フィルタコンデンサの充電が規定値まで行えない場合は、電力の供給源となる非常用電源と、
前記非常用電源と接続され、前記時常用電源からの直流電力を整流するDC/DCコンバータと、
を有する車両用駆動システム。
【請求項4】
回転力を生成するエンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジンからの回転力により回転する誘導機と
前記誘導機と接続され、前記誘導機の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータと、
前記PWMコンバータと接続され、前記PWMコンバータより生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、
前記PWMインバータと接続され、前記PWMインバータより生成される交流電力を回転力として回転する電動機と、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、充電を行うことが可能なフィルタコンデンサと、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧センサと、
前記フィルタコンデンサと前記PWMインバータの間に接続され、前記誘導機の残留磁束が不十分で前記フィルタコンデンサの充電が規定値まで行われない場合に、前記フィルタコンデンサの充電のための電力の供給源となる第2電動機と、
前記誘導機と前記第2電動機と前記エンジンの間に接続され、前記エンジンの回転力を前記第2電動機への回転力する第1ギアと、
を有する車両用駆動システム。
【請求項5】
回転力を生成するエンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジンからの回転力により回転する誘導機と
前記誘導機と接続され、前記誘導機の残留磁束により生成される交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータと、
前記PWMコンバータと接続され、前記PWMコンバータより生成される直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、
前記PWMインバータと接続され、前記PWMインバータより生成される交流電力を回転力として回転する電動機と、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記誘導器の残留磁束が不十分で充電を行うことが可能なフィルタコンデンサと、
前記PWMコンバータと前記PWMインバータの間に接続され、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧センサと、
前記エンジンと前記誘導機の間に接続され、前記エンジンの回転力を前記電動機側の回転力とする第2ギアと、
前記電動機と前記第2ギアと接続され、前記第2ギアからの回転力を受け、前記電動機を回転させる第3ギアと
を有する車両用駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61942(P2012−61942A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207203(P2010−207203)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】