説明

車両

【課題】エアコンのいずれかの吹き出し口が閉じられた場合でも、車両室内の空気の循環を維持し、ハイブリッドバッテリの冷却効率を維持する。
【解決手段】いずれかの吹き出し口12のダンパ10d又はルーバー14が閉じられた場合、閉じられていない吹き出し口12の冷却風の吹き出し方向を天井方向に向けるようにルーバー14を駆動制御する。また、バッテリ30が複数の電池スタック32で構成され、独立した吸気口20から空気を取り込んで冷却する場合、それぞれの吸気口付近の空気の温度のバラツキを少なくするために、吹き出し方向を上向きに変更するのに加え、左右方向の向きも変更するようにルーバー14を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両室内に連通する空気導入口から導入された空気を用いて車両に搭載される蓄電体を冷却する冷却手段を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両などの後部座席の後方などに備えられる走行用モータの駆動電源であるバッテリを冷却するために、車両室内の空気を吸気装置により吸気してバッテリを強制的に冷却するバッテリの冷却装置が提案されている。特許文献1から3には、このようなバッテリの冷却装置が記載されている。
【0003】
図8は、上記のような車両室内の空気を取り込んでバッテリの冷却を行う機構を有する車両の模式図を示す。
【0004】
エアコン10などから供給された車両室内2の空気は、吸気ファン24の駆動により、後部座席42後方のリアシェルフ2aに車両室内2に対して開口した吸気口20を介して冷気導入ダクト22a内に吸気される。冷気導入ダクト22a内に吸気された空気は、後部座席42とトランクルーム46との間に配置されたバッテリ収容筐体22に導かれ、冷気導入ダクト22a側から排気ダクト22b側に向けてバッテリ収容筐体22内を流れる気流によってバッテリ30を強制冷却する。このような冷却機構によって、充放電により高温となるバッテリ30を適正な使用温度に維持することができる。バッテリ30の温度が適正な使用温度で維持されれば、電池寿命の長期化および電池出力の安定化を図ることができる。
【0005】
また、通常、エアコン10は、車両室内2前方のインストルメント・パネル(又は、ダッシュボード。以下、「インパネ」とする。)の中央および左右脇などに、冷却風の吹き出し口12を複数個備えている。これらの吹き出し口12は、吹き出される冷却風によって車両室内2を温度の偏りなく均等に冷却できるように、配置される位置や数などが決められている。
【0006】
従って、このような吹き出し口12から吹き出される冷却風によって、車両室内2の前後方向そして左右方向の温度に偏りが生じないように空気調節を行うことが可能となっている。そして、このエアコン10によって供給された車両室内2の空気を利用してバッテリ30を冷却することにより、安定した冷却効果を得ることができる。
【特許文献1】特開2004−220799号公報
【特許文献2】特開2004−136767号公報
【特許文献3】特開2006−188182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、エアコン10が供給する冷却風によって、車両室内2の温度は一定に維持されており、そのような冷却風を取り込んでバッテリ30に吹き付けることにより、バッテリ30を安定して冷却することができる。
【0008】
しかし、上記のようにインパネに複数配置されている吹き出し口12のうち、いずれかの吹き出し口が閉じられてしまうと、車両室内2における冷却風の供給に偏りが生じ、車両室内2の温度にも偏りが生じてしまう。そうすると、結果として車両室内2の後方に設けられた吸気口20付近の温度も上昇してしまう場合があり、常時、安定してバッテリを冷却することができなくなるという問題がある。
【0009】
この問題について、図8及び図2に基づいてより詳しく説明する。図2は、図8に示した車両室内2の空気を取り込んでバッテリ30の冷却を行うハイブリッド自動車の上面図である。この車両1は、車両前方側に運転席40Rと助手席40Lが配置され、その後ろに後部座席42が配置されている。また、車両前方のインパネ44には、エアコンの複数の吹き出し口12(12A〜12D)が設けられている。エアコンの吹き出し口12は運転席40Rの右側前方に配置される右吹出し口12Aと中央部に2か所配置される中央吹出し口12B、12C、そして、助手席40Lの左側前方に配置される左吹出し口12Dの4つが配置されている。
【0010】
エアコン10を作動させている場合には、通常これらの4つの吹出し口12A〜12Dからおおよそ同量の空気が吹き出され、車両室内2の前方から後方への空気の流れが左右方向に渡ってばらつきなく提供される。これにより、車両室内2を温度の偏りが生じることなく冷却することができる。
【0011】
しかし、上記4つの吹出し口12A〜12Dは、空気の吹き出しを止めるために、通常、吹き出し口12内の分岐ダクト10e(図8参照)に設けられたダンパ10d(図8参照)を開閉ダイヤル15を操作して開閉することにより、吹出し口12を閉じることができるようになっている。そのため、例えば、助手席側の左吹出し口12Dのダンパ10dが、乗員の操作により閉じられた場合、左吹出し口12Dからはエアコン10の冷却風が吹き出されなくなり、残りの吹出し口12A〜12Cからのみ冷却風が吹き出されることになる。
【0012】
その場合、図2において、車両室内2の運転席40R側においては、車両前方から後方に向けてエアコン10の冷却風が流れるが、助手席40L側においては、前方から後方への空気の流れが少なくなる。
【0013】
これにより、車両室内2の温度が不均一になり、結果として吸気口20付近の温度が上昇してしまう場合がある。吸気口20付近の温度が上昇すると、吸気ファン24により吸気口20を介して取り込まれた冷却風を利用したバッテリ30の冷却効率も低下してしまい、安定した冷却が行えない。
【0014】
さらに、ハイブリッド車両の中には、搭載されるバッテリ30が複数の電池スタックで構成される形式のものがある。図7は、3つの電池スタック32R、32C、32Lにより構成されたバッテリ30を有する車両1の平面図を示す。
【0015】
この複数の電池スタック32R、32C、32Lを有する車両は、それぞれの電池スタックごとに冷却機構が形成されて、それぞれが独立して冷却されるように構成されている。つまり、図8に示す吸気口20、冷気導入ダクト22a、吸気ファン24、バッテリ収容筐体22、排気ダクト22bおよびバッテリ30が、車両1の左右方向に3つ並んで配置されるように構成される。従って、右側の電池スタック32Rは車両右側に設けられた吸気口20Rから吸気された空気により冷却され、中央の電池スタック32Cは吸気口20Cから吸気された空気により冷却され、左側の電池スタック32Lは吸気口20Lから吸気された空気により冷却される。
【0016】
従って、各電池スタック32は、それぞれに対応する吸気口20L、20C、20Rが配置された付近の空気を取り込んで冷却されることになる。つまり、例えば、右側の電池スタック32Rであれば、車両室内2の右側後方付近から取り込まれた空気により冷却されることになり、中央の電池スタック32Cは、車両室内2の中央後方付近から取り込まれた空気により冷却される。
【0017】
このように複数の電池スタック32を有し、各電池スタックが別々の吸気口20から取り込まれた車両室内2の空気により冷却される構造の車両の場合に、前述のように吹き出し口12のいずれかが閉じられてしまうと、吸気口20L、20C、20Rに吸気される空気の温度に差が生じ、電池スタック32の温度にばらつきが生じる。
【0018】
例えば、助手席側の左吹出し口12Dが乗員により閉じられた場合、車両室内2の左側は、車両前方から後方に向けた冷却風の流れが減少する。これによって、冷却風の流れが減少する車両室内2の左側は、冷却風が吹き出されている車両中央より右側に比べて温度が上昇しやすくなり、バッテリ30を冷却するための吸気口20Lが設けられている車両室内2の後方左側の温度も上昇してしまう。
【0019】
そうすると、車両室内2後方の吸気口20付近において、左側の吸気口20Lから取り込まれる空気と、中央の吸気口20Cあるいは右側の吸気口20Rから取り込まれる空気とでは温度差が生じる。そして、バッテリ収容筐体22において電池スタック32に吹き付けられる空気の流量が等量であれば、電池スタック32の冷却効率にも差が生じることとなる。つまり、冷却風の流れの少ない左側の吸気口20Lから取り込まれた空気により冷却される電池スタック32Lは、その他の電池スタック32C、32Rに比べて冷却効率が低下し、温度が上昇しやすくなり、各電池スタック32間で温度のばらつきが生じてしまう。
【0020】
そこで、本願発明の第1の目的は、エアコンの複数の吹出し口のうち少なくとも一つの吹出し口が閉じられた場合でも、閉じられていないエアコンの吹出し口から吹き出される冷却風を有効に利用して、蓄電体の冷却効率を高めることにある。
【0021】
また、本願発明の第2の目的は、蓄電体を複数の電池スタックで構成し、各電池スタックに対し独立して車両室内の空気を取り込んで強制冷却する構成であっても、上記した第1の発明の目的と同様に、エアコンの複数の吹出し口のうち少なくとも一つの吹出し口が閉じられた場合でも、閉じられていないエアコンの吹出し口から吹き出される冷却風を有効に利用して、各電池スタックの冷却効率のバラツキを抑制することにある。
【0022】
本願発明の第3の目的は、エアコンの冷却風の吹き出し口の開閉状態に関わらず十分なバッテリ冷却能力を確保することにより、バッテリ出力が絞られて動力性能や燃費の低下を招くことのない車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本願発明の車両は、(1)車両室内に連通する空気導入口から導入された空気を用いて車両に搭載される蓄電体を冷却する冷却手段を備えた車両であって、車両室内に向けて冷却風を吹き出す複数の吹き出し口と、前記各吹き出し口に対応してそれぞれ設けられた吹き出し口開閉手段とを有し、前記吹き出し口開閉手段が開状態の吹き出し口から冷却風を吹き出す空気調節部と、前記各吹き出し口開閉手段の開閉状態を検知する開閉検知手段と、前記吹き出し口にそれぞれ設けられ、該吹き出し口から吹き出される冷却風の風向きを風向き調節アクチュエータの駆動により調節可能とする風向き調節手段と、前記開閉検知手段による開閉状態の検知に基づいて前記各風向き調節手段の前記風向き調節アクチュエータを制御する風向き調節制御手段と、を備え、前記風向き調節制御手段は、前記開閉検知手段の閉じ状態を検知すると、開状態にある前記吹き出し口に設けられた前記風向き調節手段の風向き方向を予め設定した方向に向くように前記風向き調節アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0024】
(2)(1)の構成において、前記空気導入口を前記車両室内の後方に設けると共に、前記複数の吹き出し口及び前記複数の風向き調節手段を前記車両室内の前方に設け、前記風向き調節制御手段は、予め設定した前記風向き調節手段の上下の風向き方向として、開状態にある吹き出し口の少なくとも一つまたは全ての前記風向き調節手段に対して前記車両室内の天井方向とすることができる。
【0025】
上下方向では天井方向に調節することで、前席、後席の乗員に吹き当たる冷却風を極力少なくして、車両室内の後方に吹き出し口からの冷却風を運ぶことができる。このため、車両室内の後方に配置した空気導入口には温度があまり上昇していない冷却能力の高い冷却風を十分な流量で供給でき、蓄電体の冷却効率を高めることができる。
【0026】
(3)(1)又は(2)の構成において、前記空気導入口を前記車両室内の後方に設けると共に、前記複数の吹き出し口及び前記複数の風向き調節手段を前記車両室内の前方に設け、前記風向き調節制御手段は、予め設定した前記風向き調節手段の左右の風向き方向として、開状態にある吹き出し口の少なくとも一つまたは全ての前記風向き調節手段に対して前記蓄電体冷却手段の前記空気導入口の方向とすることができる。
【0027】
(3)の構成によれば、吹き出し口から吹き出される冷却風の風向きを例えば上下方向だけではなく左右方向に調節することで、冷却風を直接吸気口に導くことができるため、十分な流量の冷却風を吸気口に供給し、全吹き出し口が開口している場合と同様に蓄電体を安定して冷却することができる。
【0028】
(4)(1)〜(3)の構成において、前記蓄電体の温度を検出するための蓄電体温度検出部を備え、前記風向き調節制御手段は、前記蓄電体の温度が所定温度を超えると前記風向き調節手段の風向き方向を予め設定した方向に制御することができる。
【0029】
(4)の構成によれば、いずれかの吹き出し口が閉ざされていても、蓄電体の冷却に支障がなければ、吹き出し口から吹き出される冷却風の風向きを変更せずにそのまま維持できる。
【0030】
(5)(1)〜(4)の構成において、前記蓄電体の温度を検出するための蓄電体温度検出部を備え、前記吹き出し口開閉手段は開閉アクチュエータにより開閉駆動され、前記風向き調節制御手段は、前記蓄電体温度検出部が異常高温を測定すると、閉じ状態の前記吹き出し口開閉手段の前記開閉アクチュエータを開方向に駆動することを特徴とする。
【0031】
(5)の構成によれば、蓄電体の温度が正常温度を超えるような冷却不足を招いた場合には、閉じた吹き出し口を開いて全吹き出し口から冷却風を吹き出すことで、蓄電体をより効果的に冷却することができる。
【0032】
(6)(1)〜(5)の構成において、前記蓄電体は、複数のスタックからなり、前記各スタックに対応して前記空気導入口を設けることができる。
【0033】
(6)の構成によれば、複数のスタックを車両室内の冷却風により十分に冷却することができる。
【0034】
(7)(1)〜(6)の構成において、前記風向き調節制御手段は、閉状態の吹き出し口に応じて、開状態にある吹き出し口の前記風向き調節手段の風向き方向を予め設定した記憶部を設けることができる。
【0035】
例えばハイブリッド車両において、エアコンの冷却風の吹き出し口の一部が閉状態に操作されても十分なバッテリ冷却能力を確保することができるため、バッテリ出力が絞られることがないので、動力性能や燃費の低下を招くことがない。
【発明の効果】
【0036】
本願発明によれば、蓄電体の冷却効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1から図5は本発明による実施形態1を示し、図1はエアコン(空気調節部)を装備し、冷却装置(冷却手段)を備えたハイブリッド車両の縦断面模式図、図2は図1の車両室内を示す上面図、図3は図1のエアコンの吹き出し口から吹き出される冷却風の風向き方向を制御するための装置の構成を示すブロック図、図4は図1に示すエアコンの吹き出し口に設けられたルーバー(ルーバーを駆動するアクチュエータ等を含む)の概略図、図5は図3に示す風向き調節制御手段としてのCPU16の動作を示すフローチャートである。ただし、本発明に関連のない構成部材、構造などは省略している。なお、図3において、実線は電気的な接続を示し、一点鎖線は機械的な接続を示す。
【0038】
本実施形態に係るハイブリッド車両は、走行用モータ(電動機)とエンジン(内燃機関)の二つの動力源を組み合わせて走行する自動車であり、モータを駆動する電力の供給源(駆動電源)として、ハイブリッドバッテリを備えている。そして、このバッテリを冷却するバッテリ冷却装置は、車両室内の空調を行うエアコンにより空調された車両室内の冷気を利用するものである。
【0039】
まず、図1および図2において、ハイブリッド車両(以下、車両と略す)1は、車両前方に運転席40Rと助手席40Lを配置し、その後方に後部座席42を配置した構成の一般的な乗用車である。運転席40Rおよび助手席40Lの前方のインパネ(ダッシュボード)44には、空気調節部であるエアコン10の吹出し口12(12A〜12D)が設けられている。吹き出し口12(12A〜12D)は、運転席40Rの右前方の右吹出し口12Aと、インパネ中央の二つの中央吹出し口12B、12Cと、助手席40Lの左前方の左吹出し口12Dの4つが配置されている。
【0040】
車両1の後部座席42とトランクルーム46の間には、蓄電体としてのハイブリッドバッテリ(以下、「バッテリ」とする。)30が冷却手段の一部を構成するバッテリ収容筐体22内に収容されて配置されている。バッテリ収容筐体22は、吸気口(空気導入口)20と冷気導入ダクト22aを介して接続され、バッテリ収容筐体22の冷気入り口側に吸気ファン24が配置されている。吸気口20は、後部座席42後方のリアシェルフ2aに臨むように設けられている。また、バッテリ収容筐体22には不図示の排気口を有する排気ダクト22bが接続されており、不図示の該排気口からの空気を車外に排出しても良く、また車両室内2に戻すようにしてもよい。
【0041】
この冷却手段では、車両室内2の空気(冷気)を吸気ファン24により吸気口20から取り込んで、冷気導入ダクト22aを通してバッテリ収容筐体22内に導入し、バッテリ収容筐体22内に冷媒を車両室内の空気とする冷却気流を形成し、この冷却気流内に配置されるバッテリ30を強制冷却する。なお、吸気ファン24、冷気導入ダクト22a及びバッテリ収容筐体22により冷却手段は構成される。
【0042】
空気調節部としてのエアコン10の具体的な構成を説明する。エアコン10は、主ダクト10cに複数の分岐ダクト10eを接続し、各分岐ダクト10eの先端を吹き出し口12としており、主ダクト10c内にファン10aと蒸発器10bを配置している。ファン10aの駆動により主ダクト10c内に取り込んだ例えば外気が蒸発器10bにより冷却され、各分岐ダクト10eを通って吹き出し口12A〜12Dから冷却風が車両室内2に向けて吹き出される。なお、エアコン10は、暖房時には不図示のヒータにより外気を加熱して車両室内2に温風を提供することもできる。
【0043】
また、各吹出し口12A〜12Dには、エアコン10の吹き出し方向(風向き)を調節する風向き調節手段としてのルーバー14が取り付けられており、乗員はルーバー14の向きを調節することにより、各吹出し口12A〜12Dから吹き出される冷却風の吹き出し方向を上下左右に調節することができる。
【0044】
また、図4に示すように、各吹き出し口12A〜12Dのルーバー14には、風向き調節アクチュエータとしての、アクチュエータ14a、14bが取り付けられており、アクチュエータ14a、14bの駆動によって対応するルーバー14を動かすことができる。すなわち、アクチュエータ14aは、上下方向の風向きを調節する横ルーバー141を上下に動かし、アクチュエータ14bは、左右方向の風向きを調節する縦ルーバー142を左右に動かすことができる。このアクチュエータ14a、14bは、アクチュエータ制御装置14cによって駆動される。そして、アクチュエータ制御装置14cは、後述する風向き調節制御手段としてのCPU16に接続されている。このような構成により、アクチュエータ制御装置14cがCPU16からの指令に基づいてアクチュエータ14a、14bを駆動して、横ルーバー141、縦ルーバー142を動かすことにより、吹き出し口12A〜12Dの上下方向及び左右方向の風向きを調節し、任意の方向に風向を変えることができる。なお、図4においては、アクチュエータ制御装置14cはCPU16とは別の部材としたが、CPU16内にアクチュエータ制御部として設けることもできる。
【0045】
上記アクチュエータ14a、14bとしては、ルーバー14の向きを正確に制御することが可能な駆動手段を使用することが好ましいが、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、圧電モータなどの種々の駆動源を利用することができる。
【0046】
なお、後述するように、吹き出し方向を吸気口20の方向に向ける場合など、横ルーバー141および縦ルーバー142を特定の方向(角度)に調節するように制御する場合は、調節前の現在のルーバー14の方向を検出し、その方向に基づいてルーバー14を動かす必要がある。この場合には、ルーバー14にルーバーの向きを検出する位置センサを配置して、その検出信号に基づいてアクチュエータ14a、14bの駆動を行う。アクチュエータ14a、14bとして、ステッピングモータ等の位置(方向)検出が可能な駆動手段を使用すれば、別途センサを設けることなく、ルーバー14の向きを検出・調整することができる。なお、後述するように、ルーバー14を単に天井方向に向ける調節のみ行う場合には、現在のルーバー14の向き(角度)に関らず、強制的にルーバー14(横ルーバー141)を上に向けるように駆動制御すればよい。
【0047】
図3に示すように、CPU16は、記憶部16aを有しており、記憶部16aはさらに駆動方向記憶部16a1と温度記憶部16a2とを備えている。駆動方向記憶部16a1は、吹き出し口12A〜12Dのうちいずれかが閉じられた場合に、残りの吹き出し口のルーバー14をどの方向に駆動するか記憶しておくメモリである。また、温度記憶部16a2は、後述するように、ルーバー14の駆動をバッテリ30の温度に応じて行う場合に、その制御に関連するバッテリ30の温度を記憶しておくメモリである。なお、図3では、ルーバー14及びアクチュエータ14a,14bを一組のみ記載したが、実際には各吹き出し口12A〜12Dごとにそれぞれ設けられており、アクチュエータ14a,14bはそれぞれアクチュエータ制御装置14cに接続されている。
【0048】
各吹き出し口12A〜12Dの分岐ダクト10e内部には、分岐ダクト10eを閉じて吹き出し口12からの冷却風の吹き出しを止めることが可能な、吹き出し口開閉手段としてのダンパ10dがそれぞれ設けられている。ダンパ10dは、インパネ44に設けられた開閉ダイヤル15を乗員が操作することにより、図1に示す矢印方向に回動して、吹き出し口12の開閉状態を個別に切り換えることができる。例えば、助手席に座った人が、左吹き出し口12Dから風が吹き出さないように、左吹き出し口12Dの開閉ダイヤル15を操作してダンパ10dを閉じると、左吹き出し口12Dからの冷却風の吹き出しは停止し、残りの吹き出し口12A〜12Cから風が吹き出すことになる。なお、吹き出し口12の開閉を行う手段は、開閉ダイヤル15に限られるものではなく、開閉レバー等の他の手動開閉手段や、開閉ボタン等を押した場合に電気的に開閉動作を行う電気的な開閉手段であってもよい。
【0049】
そして、本実施形態の車両1においては、各吹き出し口12A〜12Dの分岐ダクト10eに、ダンパ10dの開閉状態を検知する開閉検知手段としてのスイッチ13がそれぞれ設けられている。図3に示すように、各吹き出し口12A〜12Dに設けられたスイッチ13はCPU16と接続されており、スイッチ13のオン信号がCPU16に送信されるようになっている。なお、図3には、スイッチ13及びダンパ10dを一組のみ記載したが、実際には、各吹き出し口12A〜12Dそれぞれにスイッチ13及びダンパ10dが設けられており、CPU16と接続されている。
【0050】
上記の開閉ダイヤル15の操作によりいずれかの吹き出し口12のダンパ10dが閉じられると、スイッチ13がオンとなり、CPU16はスイッチ13から、ダンパ10dの閉状態を示す検知信号としてのオン信号を受信する。オン信号に吹き出し口12の識別情報を含ませるなどの方法で、どの吹き出し口12A〜12Dに対応するスイッチ13が発したオン信号であるかを識別可能にすることにより、オン信号を受信したCPU16は、閉じられた吹き出し口12を特定することができる。
【0051】
いずれかのダンパ10dの閉状態を示すオン信号を受信したCPU16は、ダンパ10dが閉じられた吹き出し口12以外の吹き出し口のルーバー14について、アクチュエータ制御装置14cおよびアクチュエータ14a、14bを駆動制御して、冷却風の風向き方向を上下左右方向で調節することができる。例えば、助手席側の左吹き出し口12Dのダンパ10dを閉じた場合、CPU16は、スイッチ13から左吹き出し口12Dの閉状態を示すオン信号を受信し、左吹き出し口12D以外の吹き出し口のアクチュエータ14a、14bを駆動して、ルーバー14の向きを変えるように制御する。
【0052】
本実施形態においては、閉状態を示すオン信号を受信すると、CPU16は、閉じられていない残りの吹き出し口12の吹き出し方向が、車両室内2の天井48の方向になるように、ルーバー14を駆動する。この際ルーバー14は、最も上向きの角度となるように動かしてもよいし、駆動方向記憶部16a1に予め記憶しておいた角度に動かすように制御してもよい。
【0053】
このようにして、いずれかの吹き出し口12が閉じられた場合に、残りの吹き出し口12の風向きを天井側に変更するようにルーバー14を調節することにより、冷却風の流れが障害物に遮られることなく車両室内2後方まで到達するようになる。冷却風が車両後方まで確実に到達することにより、吸気口20付近の温度が上昇することが防止され、結果としてバッテリの冷却効果も維持することができる。
【0054】
なお、冷却風の風向きは、天井方向に調節するだけでなく、左右方向に調節するように制御することもできる。例えば、ルーバー14を天井方向に向けると共に、ルーバー14を左右方向に動かして吸気口20が配置されている方向に向けることにより、冷却風が吸気口20に対してより到達しやすくなる。
【0055】
また、ダンパ10dが閉じられた場合に、上述のように直ちに他の吹き出し口12のルーバー14を動作させるように制御してもよいが、バッテリ30の温度に応じてルーバー14の向きを調節するようにしてもよい。つまり、バッテリ30の温度を監視し、ダンパ10dが閉じられた場合に、バッテリ30の温度が冷却が必要な所定温度よりも高い場合に限り、ルーバー14の向きを天井48方向等に駆動することができる。
【0056】
具体的な方法としては、図3に示すように、バッテリ30に取り付けられているバッテリ温度検出部としてのサーミスタ34により測定されたバッテリの温度情報をCPU16が受信して、CPU16はその温度が記憶部16aの温度記憶部16a2に予め記憶された所定温度に達しているか否かの判断をする。そして、所定温度を超えている場合には、CPU16は、アクチュエータ14a(14b)を駆動制御して、ルーバー14の向きを天井48等の方向に変更することができる。
【0057】
このように、バッテリ30の温度に応じてルーバー14を駆動する構成とすれば、バッテリ30の冷却が必要な場合にのみルーバー14の駆動・制御を行って、冷却風の風向き方向を調節することが可能になり、無駄のないルーバー14の調節が可能になる。また、バッテリの温度に関らずルーバーの制御を行うモードと、バッテリの温度に応じて制御を行うモードの二つを、乗員が選択できるようにしてもよい。
【0058】
さらに、サーミスタ34によってバッテリ30の温度を測定し、バッテリの温度が異常に高くなった場合などに、閉じ状態にある吹き出し口12を強制的に開くように制御することもできる。そのために、例えば、各ダンパ10dにダンパを開閉駆動する開閉アクチュエータ10fを設置して、CPU16からの信号によりダンパ10dを開状態(あるいは閉状態)に制御する。このようにして全吹き出し口12から冷却風が吹き出されるようにすれば、開状態にある吹き出し口について風向きを調節するだけの場合に比べて、より確実にバッテリ30を冷却することができる。
【0059】
上記のように強制的に吹き出し口を開く場合の具体的な制御の流れとしては、いずれかの吹き出し口12のダンパ10dが閉じ状態にあるときに、CPU16がサーミスタ34から温度を受信し、バッテリ30が異常高温の状態にあるか否かを判断する。CPU16が異常高温であると判断した場合には、閉じ状態にあるダンパ10dの開閉アクチュエータを開状態となるように駆動して、そのダンパ10dを強制的に開くことができる。さらに、強制的に開いた吹き出し口12についても、上述のように、風向きを上下方向又は左右方向あるいはその両方について調節することができ、これによって十分にバッテリの冷却を行うことができる。
【0060】
風向き調節制御手段であるCPU16としては、エアコンの動作を制御するエアコンCPUや、ハイブリッド車両のエンジンを制御するECUなどのCPUを利用することができるが、上述のようなルーバー14の調節を制御することのできる制御手段であれば、どのようなものを使用してもよい。また、ダンパ10dの開閉状態の検知とルーバー14の風向きの調節を制御するための専用の制御手段を設けてもよい。
【0061】
また、ダンパ10dの開閉を検知する開閉検知手段としてのスイッチ13は、ダンパ10dの開閉状態を検知できるものであればどのようなものでもよい。例えば、ダンパ10dの開閉動作によってオン、オフが切換わる機械的なスイッチや、ダンパ10dが閉じ位置にあるか否かを検知する、フォトセンサなどのセンサーであってもよい。また、開閉ダイヤル15にスイッチ13を設置し、ダイヤルの位置(開位置又は閉位置)を検知することによりダンパの開閉を検知し、ルーバー14の駆動制御を行ってもよい。
【0062】
次に、ハイブリッド車両1のバッテリ30について説明する。上述したように、車両1の後部座席42とトランクルーム46との間には、ハイブリッド車両1の原動機の一つとしての不図示のモータを駆動するためのバッテリ30が配置されている。バッテリ30に用いる電池としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を用いることができる。バッテリ30を構成するこれらの電池には、適正な使用温度範囲(適正温度)があり、この適正温度を超えると電池の劣化が起こる。例えば、リチウムイオン電池の場合には、60℃を超えると電池劣化が進行すると考えられている。そのため、上述したように、バッテリ30は、吸気口20、冷気導入ダクト22a、吸気ファン24、バッテリ収容筐体22、排気ダクト22b等によって構成される冷却手段によって冷却されることにより、適正温度に維持される。
【0063】
次に、吹き出し口12が閉じられた場合において、風向き調節制御手段としてのCPU16が冷却風の風向き方向を調節する際の制御の流れを、図5のフローチャートに沿って説明する。
【0064】
まず、ステップS101において、吹き出し口12A〜12Dのいずれかのダンパ10dが閉じられることにより、CPU16がスイッチ13から、ダンパ10dの閉状態を検知するオン信号を受信したか否かを判断する。CPU16が閉状態を示すスイッチ13のオン信号を受信した場合には、ステップS102に進み、閉状態の信号を受信しない場合にはステップS101を繰り返す。
【0065】
ステップS102では、CPU16が、バッテリ30の温度が所定温度を超えているか否かを判断する。具体的には、CPU16がバッテリ30の温度を測定するサーミスタ34から電池の温度に関する情報を受信し、温度記憶部16a2に記憶された所定温度を超えているか否かの判断をする。ここで、所定温度は任意に設定可能な温度であるが、例えば、上述したバッテリ30の適正温度の上限とすることができる。所定温度を超えていると判断した場合には、ステップS103に進む。所定温度を超えていないと判断した場合には、ステップS101に戻る。
【0066】
なお、ダンパ10dが閉じられた場合に、バッテリ30の温度に関らず、直ちに残りの吹き出し口12のルーバー14の向きを変更するように制御する場合には、ステップS102は省略される。この場合は、ステップS101からステップS103に進むことになり、ダンパ10dの開閉状態のみに基づいて、ルーバー14の駆動を行うことになる。
【0067】
次に、ステップS103では、CPU16がアクチュエータ制御装置14c、アクチュエータ14a、14bを駆動制御して、ルーバー14の向きを調節する。具体的には、ステップS101において、CPU16がスイッチ13からのオン信号により、ダンパ10dが閉状態であると判断した吹き出し口12以外の吹き出し口について、アクチュエータ14a、14bをそれぞれ駆動制御する。例えば、助手席40L側の左吹き出し口12Dのダンパ10dが閉じられている場合には、CPU16は、残りの吹き出し口12A〜12Cのルーバー14の向きを天井48側に向けるようにアクチュエータ14a(14b)を駆動する。
【0068】
なお、このステップS103において、上述したように、残りの吹き出し口12のルーバー14を天井方向に向けると共に、左右方向の向きを変えるように駆動制御してもよい。例えば、残りの吹き出し口12の左右方向の向きを調節して吸気口20の方向に向けるようにすれば、冷却風がより吸気口に到達しやすくなり、バッテリ30の冷却効率が向上する。
【0069】
なお、変更するルーバー14の向きは、上述の天井の方向などに限られるものではなく、車両室内2の座席などの配置や車両1や車両室内2の大きさ、形状、そしてバッテリ30を冷却するための吸気口20の位置などに合わせて任意に変更することができ、吸気口20に冷却風が到達しやすい方向に調節できる。
【0070】
また、本実施形態においては、エアコン10の吹き出し口が車両室内2の前方のインパネ44に設けられている場合を例としたが、その他の場所に吹き出し口が設けられている場合は、それらの吹き出し口も制御の対象とすることができる。その他の位置に配置される吹き出し口の例としては、後部座席の側方上側の天井部分や、運転席40Rと助手席40Lとの間のコンソールボックスの後部座席側の側面などに設けられているものが挙げられる。これらの吹き出し口についても、ダンパの開閉の検知及びルーバーの駆動制御を行えば、同様に吸気口20付近の温度が上昇することを防いで、バッテリ30の冷却効率の低下を抑制できる。
【0071】
また、本実施形態においては、いずれかの吹き出し口12が閉じられた場合に、残りの吹き出し口全ての風向きを変えるように制御する例を説明したが、残りの吹き出し口12のうち特定の吹き出し口のみ向きを変えるように制御してもよい。例えば、左吹き出し口12Dが閉じられた場合に、中央吹き出し口12B、12Cのみについて、風向き方向を調節するように制御することができる。残りの吹き出し口の全てではなく、少なくとも一つの吹き出し口についてルーバー14の向きを調節する場合であっても、吸気口20に冷却風が到達し易くなって付近の温度の上昇を防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態においては、ルーバー14の駆動制御を行う場合、一つの吹き出し口12のダンパ10dが閉じられた場合に残りのルーバー14の向きを変えるように制御した例を説明したが、複数の吹き出し口が閉じられた場合に残りのルーバー14の向きを変えるように制御することもできる。例えば、中央吹き出し口12Cと助手席側の左吹き出し口12Dの二つのダンパ10dが閉じられた場合に、残りの吹き出し口12のルーバー14の向きを変更するように制御することができる。この場合は、吹き出し口一つが閉じられた場合に比べて、さらに車両室内の温度に偏りが生じやすい状態なると、ルーバー14の調整が行われることになる。
【0073】
また、予め決められた特定の吹き出し口12のダンパ10dが閉じられた場合にのみ、残りの吹き出し口12のルーバー14の向きを変更するように制御してもよい。例えば、左吹き出し口12Dが閉じられた場合のみ、残りのルーバー14の向きを変更し、他の吹き出し口12が閉じられても残りのルーバー14の向きは変更しないように設定することができる。
【0074】
(実施形態2)
実施形態2は、吹き出し口12の開閉状態を判断する対象として、ルーバー14の開閉状態を検知するものである。つまり、ルーバー14が、風向き調節手段だけでなく吹き出し口開閉手段も兼ねている場合における実施形態である。いずれかのルーバー14の閉状態を検知した場合には、実施形態1と同様に、ルーバー14が閉じられていない残りの吹き出し口12のルーバー14を駆動制御して、吹き出し方向を変更する。そのため、本実施形態は、ルーバー14を上向き又は下向きに動かすことにより、吹き出し口を塞ぐことができるようなルーバー14を備えた車両について適用することができる。なお、実施形態1と共通する点については、説明を省略する。
【0075】
本実施形態においては、図6に示すように、各吹き出し口12A〜12Dのルーバー14に、ルーバー14の開閉状態を検知するためのセンサ18が取り付けられている。センサ18はCPU16と接続されており、センサ18の検知信号はCPU16に送信される。このセンサ18は、乗員のルーバー14の操作などによりルーバー14が閉じられたことを検知すると、CPU16に閉状態を示す検知信号を送信する。CPU16は、閉状態を検知したルーバー14が配置されている吹き出し口12以外の吹き出し口12について、アクチュエータ制御装置14c及びアクチュエータ14a、14bを駆動制御し、ルーバー14の向きを天井方向に変える。
【0076】
なお、図6には、センサ18およびルーバー14、アクチュエータ14a,14bを一組のみ記載したが、実際には各吹き出し口ごとに設けられ、それぞれCPU16と接続されている。また、センサ18としては、実施形態1と同様のスイッチを用いることもできるし、その他開閉状態を検知できるセンサであればどのようなものでも用いることができる。
【0077】
なお、実施形態2においても、ルーバー14の向きを変更する制御は、残りの吹き出し口の少なくとも一つについて行うようにしてもよい。また、複数の吹き出し口12のルーバー14が閉じられたとき、あるいは、いずれか特定の吹き出し口のルーバー14が閉じられたときに、残りのルーバー14の調節を行うようにしてもよい。また、本実施形態においても、ルーバー14は天井方向に駆動制御するのみならず、左右方向にも駆動することができ、また、両者を組み合わせて制御してもよい。例えば、ルーバー14を天井方向に動かすと共に左右方向にも動かして風向きを吸気口20の方向に向けることができる。
【0078】
また、実施形態1と同様に、いずれかの吹き出し口12のルーバー14が閉じられた際、サーミスタ34により測定したバッテリ30の温度が所定温度を超えた場合に、開状態にある吹き出し口12の風向きを調節するように駆動制御することができる。また、バッテリ30の異常高温の状態を検知した場合に、閉じ状態にある吹き出し口12について、強制的にルーバー14を開くように駆動制御することもできる。本実施形態の場合には、アクチュエータ14a(14b)によって、ルーバー14を開き、必要に応じて風向きについても調節することができる。
【0079】
(実施形態3)
実施形態3は、バッテリ30が複数の電池スタックで構成され、バッテリ冷却手段を構成する吸気口、冷気導入ダクト、吸気ファン、バッテリ収容筐体及び排気ダクトが夫々の電池スタックに対して設けられているハイブリッド車両に対して、本発明を適用したものである。なお、実施形態1および実施形態2と共通する点については説明を省略する。
【0080】
本実施形態では、図7に示すように、バッテリ30は電池スタック32L、32C、32Rの3つで構成され、夫々の電池スタック32について吸気口20L、20C、20Rが設けられている。つまり、実施形態1において説明したバッテリ30及びその冷却手段が、車両1の左右方向に3つ並んで配置されている場合に相当する。電池スタック32L、32C、32Rは、それぞれの吸気口20L、20C、20Rから吸気ファン24の駆動により空気を取り込んで、それぞれ独立して冷却が行われる。
【0081】
このように、複数の電池スタック32がある場合に、吹き出し口12A〜12Dのいずれかの吹き出し口がふさがれることにより、車両室内の左右方向の空気の温度にバラツキが生じると、吸気口から取り込まれる空気の温度差によって電池スタック32L、32C、32R間での冷却効率にも差が出ることになる。そうすると、電池スタック32L、32C、32Rの温度がバラつくことになり、好ましくない。例えば、左吹き出し口12Dの開閉ダイヤル15の操作により左吹き出し口12Dのダンパ10dが閉じられた場合、車両室内2の左側を車両後方に向けて流れる冷却風が減少し、車両室内2の後方左側に位置する吸気口20L付近の温度が右側に比べて高くなりやすくなる。そうすると、冷却手段による電池スタック32Lの冷却性能も低下して温度が上昇し、他の電池スタック32C、32Rと温度のバラツキが生じてしまう。
【0082】
そこで、本実施形態においては、いずれかの吹き出し口12のダンパ10dがふさがれて、エアコン10の冷却風の吹き出しに偏りが生じた場合に、その閉じられた吹き出し口12の位置に応じてルーバー14の向きを変えるように調整し、吸気口20が配置される車両後方における空気の温度のバラツキを低減するものである。これによって、各吹き出し口20から取り込まれる空気の温度のバラつきを少なくし、冷却手段によるそれぞれの電池スタック32の冷却性能を一定にすることができる。
【0083】
本実施形態において、吹き出し方向を変更するために行うルーバー14の駆動制御を説明する。まず、いずれかの吹き出し口12のダンパ10dが閉じられると、実施形態1と同様に、スイッチ13がダンパ10dの閉状態を検知し、その検知信号がCPU16に送信される。CPU16は、検知信号からダンパ10dが閉じられた吹き出し口12を特定し、残りの吹き出し口12のアクチュエータ14a、14bを駆動制御して、ルーバー14の向きを調節する。
【0084】
この際、実施形態1においては、ダンパ10dが閉じられていない吹き出し口12のルーバー14の向きを天井48側に向けるように制御することについて説明したが、本実施形態においては、さらに、ルーバー14の左右方向の向きも変更するように制御することが好ましい。本実施形態のハイブリッド車両のように電池スタックが車両室内2の左右方向に複数配置され、独立したそれぞれの吸気口20から空気を取り込んで冷却する場合は、単に吹き出し方向を天井方向に向けるだけでは左右方向の温度のバラつきを改善することが難しいためである。そのため、閉じられていない吹き出し口12の左右方向の吹き出し方向を調整し、吸気口20R、20C、20Lの周辺で、空気の温度にバラツキが生じないようにする。
【0085】
ここで、左右方向におけるルーバー14の向きの調整を具体的に説明する。CPU16は、ダンパ10dの閉状態を示す信号を受信した場合、残りの吹き出し口からの冷却風により、車両室内2の前後方向及び左右方向の空気の温度が均等になるように、ルーバー14の駆動を行う。
【0086】
前後方向については、実施形態1と同様に、ルーバー14の上下方向の向きを変更して、冷却風が車両後方まで到達するように、ルーバー14を天井48方向に向ける。
【0087】
そして、左右方向については、上述のように閉じられた吹き出し口12に応じて、残りの吹き出し口12のルーバー14の左右方向の向きを調整する。例えば、左吹き出し口12Dのダンパ10dが閉じられた場合、助手席40L側の冷却風の流れが減少することになるので、残りの吹き出し口12A〜12Cのルーバー14の向きを、例えば、正面方向から助手席40L側方向に向くように制御する。また、中央吹き出し口12B、12Cのダンパ10dが閉じられた場合、車両室内2の中央付近の冷却風の流れが減少しやすくなるので、例えば、吹き出し口12Aおよび12Dの向きを中央よりに向けるように制御する。
【0088】
なお、いずれかの吹き出し口12のダンパ10dが閉じられた場合に、残りの吹き出し口12のルーバー14をどの方向に駆動制御するかは、CPU16の駆動方向記憶部16a1に予め記憶しておくことができる。つまり、それぞれの吹き出し口ごとに、その吹き出し口のダンパ10dが閉じられた場合に、車両後方の左右方向における温度のバラツキを最も少なくすることが可能な、残りの吹き出し口それぞれの最適な風向き方向を記憶しておく。そして、その記憶した方向に基づいてルーバー14を調節すれば、どの吹き出し口12が閉じられた場合でも、残りの吹き出し口12を最適な吹き出し方向に調節することが可能になる。さらに、複数の吹き出し口12が閉じられた場合にルーバー14の調節を行うようにする場合は、閉じられる吹き出し口の組み合わせごとに残りの吹き出し口の風向き方向を記憶しておくことができる。このように、閉状態の吹き出し口に応じて、開状態にある残りの吹き出し口のバッテリの冷却に最適な風向きを予め記憶して、風向きを調節すれば、バッテリ30を構成する複数の電池スタックをバラつきなく冷却することができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、ダンパ10dの開閉状態に基づいてルーバー14の制御を行ったが、実施形態2のように、ルーバー14にセンサを配置して、ルーバー14の開閉状態に基づいて吹き出し方向の変更を行ってもよい。また、実施形態1と同様に、複数の吹き出し口が閉じられた場合に、残りの吹き出し口のルーバー14の方向を変更するようにしてもよいし、特定の吹き出し口が閉じられた場合にのみルーバー14の方向を変更するようにしてもよい。
【0090】
また、実施形態1と同様に、いずれかの吹き出し口12のルーバー14が閉じられた際、サーミスタ34により測定したバッテリ30の温度が所定温度を超えた場合に、開状態にある吹き出し口12の風向きを調節するように制御することができる。また、バッテリ30の異常高温状態を検知した場合に、閉じ状態にある吹き出し口12について、開閉アクチュエータ10fの駆動により強制的にダンパ10dを開くように制御することもできる。
【0091】
以上のように、本発明を特定の態様により詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施形態1のハイブリッド車両の模式図。
【図2】図1に示すハイブリッド車両の上面図。
【図3】実施形態1の冷却風の風向き方向を制御するための構成を示すブロック図。
【図4】アクチュエータ、アクチュエータ制御装置および吹き出し口の構成を示す模式図。
【図5】吹き出し方向を変更するための制御を示すフローチャート。
【図6】実施形態2の冷却風の風向き方向を制御するための構成を示すブロック図。
【図7】実施形態3のハイブリッド車両の上面図
【図8】従来のハイブリッド車両の模式図。
【符号の説明】
【0093】
1 ハイブリッド車両
2 車両室内
2a リアシェルフ
10 エアコン
10a ファン
10b 蒸発器
10c 主ダクト
10d ダンパ
10e 分岐ダクト
10f 開閉アクチュエータ
12(12A、12B、12C、12D) 吹き出し口
14 ルーバー
14a、14b アクチュエータ
14c アクチュエータ制御装置
15 開閉ダイヤル
16 CPU
16a 記憶部
20 吸気口
22 バッテリ収容筐体
22a 冷気導入ダクト
22b 排気ダクト
24 吸気ファン
30 バッテリ
32R,32C,32L 電池スタック
34 バッテリ温度計
40R 運転席
40L 助手席
42 後部座席
44 インパネ(ダッシュボード)
46 トランクルーム
48 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内に連通する空気導入口から導入された空気を用いて車両に搭載される蓄電体を冷却する冷却手段を備えた車両であって、
車両室内に向けて冷却風を吹き出す複数の吹き出し口と、前記各吹き出し口に対応してそれぞれ設けられた吹き出し口開閉手段とを有し、前記吹き出し口開閉手段が開状態の吹き出し口から冷却風を吹き出す空気調節部と、
前記各吹き出し口開閉手段の開閉状態を検知する開閉検知手段と、
前記吹き出し口にそれぞれ設けられ、該吹き出し口から吹き出される冷却風の風向きを風向き調節アクチュエータの駆動により調節可能とする風向き調節手段と、
前記開閉検知手段による開閉状態の検知に基づいて前記各風向き調節手段の前記風向き調節アクチュエータを制御する風向き調節制御手段と、
を備え、
前記風向き調節制御手段は、前記開閉検知手段の閉じ状態を検知すると、開状態にある前記吹き出し口に設けられた前記風向き調節手段の風向き方向を予め設定した方向に向くように前記風向き調節アクチュエータを制御することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記空気導入口を前記車両室内の後方に設けると共に、前記複数の吹き出し口及び前記複数の風向き調節手段を前記車両室内の前方に設け、前記風向き調節制御手段は、予め設定した前記風向き調節手段の上下の風向き方向として、開状態にある吹き出し口の少なくとも一つまたは全ての前記風向き調節手段に対して前記車両室内の天井方向としたことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記空気導入口を前記車両室内の後方に設けると共に、前記複数の吹き出し口及び前記複数の風向き調節手段を前記車両室内の前方に設け、前記風向き調節制御手段は、予め設定した前記風向き調節手段の左右の風向き方向として、開状態にある吹き出し口の少なくとも一つまたは全ての前記風向き調節手段に対して前記蓄電体冷却手段の前記空気導入口の方向としたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記蓄電体の温度を検出するための蓄電体温度検出部を備え、
前記風向き調節制御手段は、前記蓄電体の温度が所定温度を超えると前記風向き調節手段の風向き方向を予め設定した方向に制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の車両。
【請求項5】
前記蓄電体の温度を検出するための蓄電体温度検出部を備え、前記吹き出し口開閉手段は開閉アクチュエータにより開閉駆動され、前記風向き調節制御手段は、前記蓄電体温度検出部が異常高温を測定すると、閉じ状態の前記吹き出し口開閉手段の前記開閉アクチュエータを開方向に駆動することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の車両。
【請求項6】
前記蓄電体は、複数のスタックからなり、前記各スタックに対応して前記空気導入口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに車両。
【請求項7】
前記風向き調節制御手段は、閉状態の吹き出し口に応じて、開状態にある吹き出し口の前記風向き調節手段の風向き方向を予め設定した記憶部を有することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1つに記載の車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−89569(P2010−89569A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259517(P2008−259517)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】