説明

車体挙動安定化装置

【課題】制動制御装置および駆動制御装置を用いた車体挙動安定化装置において、車体挙動安定化制御用のアクチュエータが異常となったときに車体挙動を安定化させる。
【解決手段】モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を制御することで第1の車体挙動安定化制御を実行する駆動制御指令部36と、ブレーキアクチュエータ12c〜12fを駆動制御して前後左右の車輪2・3の制動力を独立制御することで第2の車体挙動安定化制御を実行する制動制御部35と、ブレーキアクチュエータの異常を検出する異常検出部37とを備えた車体挙動安定化装置1において、異常検出部37がブレーキアクチュエータの異常を検出した場合、制動制御部35が2の車体挙動安定化制御を停止するとともに、駆動制御指令部36に対して車体挙動安定化制御の実行指令を出力し、駆動制御指令部36が単独で第1の車体挙動安定化制御を実行するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置の駆動力を制御して車体挙動の安定化制御を実行する駆動制御手段と前後左右の車輪の制動力を独立制御して車体挙動の安定化制御を実行する制動制御手段とを備えた車体挙動安定化装置に係る。
【背景技術】
【0002】
車輪の駆動力を制御するトラクションコントロールシステム(以下、TCSと記す。)として、駆動力を制御するための制御対象としてのブレーキ装置(制動装置)による制動力とエンジン(駆動装置)による駆動力とを、車輪のスリップ率などに応じて選択的に切り替えて制御することで車体挙動の安定化を図る車体挙動安定化装置が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−69731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車体挙動安定化装置では、TCSが用いるセンサやアクチュエータが異常となった時には、異常状態や異常部位に応じて制動力の制御と駆動力の制御とを選択的に切り替えることなく、両制御を共に停止させるようにしている。そのため、例えば、制動装置側のみに用いている加速度センサやポンプ・弁などのアクチュエータに加え、駆動装置側のみに用いているセンサやスロットルバルブなどのアクチュエータに異常が生じた際に制動装置による制動力の制御も同時に停止するため、スプリット路における発進時など、駆動装置による駆動力の制御だけで車体挙動の安定化を図れるような場合にも車体挙動安定化制御が行われなくなり、ユーザメリットを低減させている。
【0005】
また、駆動制御装置による駆動力制御と、制動制御装置による横滑り抑制制御(Electronic Stability Control:ESC)とを行う車体挙動安定化装置においても同様に、ESCに用いるセンサやアクチュエータに加え、駆動装置側のみに用いているセンサやスロットルバルブなどのアクチュエータが異常となった時には、異常状態や異常部位に関わらず制動制御装置による横滑り抑制制御と駆動制御装置による駆動力制御とが同時に停止するため、ブレーキ装置による横滑り抑制制御のみで行えるオーバーステア状態およびカウンタステア状態での車体挙動安定化制御が実行されず、ユーザメリットを低減させている。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、制動制御装置および駆動制御装置を用いて車体挙動の安定化を図る車体挙動安定化装置において、これら装置、特に制動装置側のみに用いている加速度センサやポンプ・弁などのアクチュエータや、駆動装置側のみに用いているセンサやスロットルバルブなどのアクチュエータに異常が生じた場合に、異常状態や異常部位に応じて制動制御装置による車体挙動安定化制御および駆動制御装置による車体挙動安定化制御を選択的に切り替えて暫定的に継続させることで、車体挙動を安定化させ、ユーザメリットの向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、駆動装置(5・8)の駆動力を制御することで第1の車体挙動安定化制御を実行する駆動制御手段(9)と、複数のアクチュエータ(12c,12d,12e)を駆動制御して前後左右の車輪(2・3)の制動力を独立制御することで第2の車体挙動安定化制御を実行する制動制御手段(12h)と、前記駆動装置(5,8)または前記複数のアクチュエータ(12c,12d,12e)のうち少なくとも1つの異常を検出する異常検出手段(37a、37b)とを備えた車体挙動安定化装置であって、前記異常検出手段(37a,37b)が前記駆動装置または前記少なくとも1つのアクチュエータの異常を検出した場合、前記第1の車体挙動安定化制御または前記第2の車体挙動安定化制御のいずれか一方を単独で実行するように構成する。
【0008】
このように構成することにより、制動制御手段による車体挙動安定化制御に用いるアクチュエータが異常となり、制動制御手段による第2の車体挙動安定化制御あるいは駆動制御手段による第1の車体挙動安定化制御のいずれか一方が実施不能となった場合においても、他方による車体挙動安定化制御を暫定的に継続させることができるため、第1および第2の車体挙動安定化制御をいずれも停止する場合に比べて車体挙動を安定化させることができる。
【0009】
また、本発明の一側面によれば、前記駆動制御手段または制動制御手段は、旋回走行を含む複数の走行状態に対応する複数の制御モードを備え、第1の車体挙動安定化制御の実行中、旋回走行に対応する制御モードにおいて前記第2の車体挙動安定化制御が実行されている場合においては、第1の車体挙動安定化制御のみの制御への移行を禁止する禁止手段を備えるように構成することができる。
【0010】
特に駆動装置が内燃機関であって駆動力を1軸のみについて制御可能な車両に車体挙動安定化装置が搭載される場合などには、制動制御手段による第2の車体挙動安定化制御の実行時に駆動制御手段による駆動力の低減制御が同時に行われることがあり、このような同時制御が行われる場合に制動制御手段が制御を停止したにも拘わらず駆動制御手段による駆動力の低減制御のみが行われると、逆にアンダーステアやオーバーステアが発生する可能性がある。そこで、上記のように構成することにより、駆動制御手段による単独での第1の車体挙動安定化制御が原因となってこのような事態が発生することを防止し、車体挙動を安定化させることができる。
【0011】
また、本発明の一側面によれば、前記禁止手段は、車両の運動量を検出する運動量検出手段の検出結果に基づき、単独での前記第1の車体挙動安定化制御の制御への移行を禁止するように構成することができる。
【0012】
このように構成することにより、駆動制御手段による第1の車体挙動安定化制御が車体挙動に与える変化が小さいと考えられる領域では、第1の車体挙動安定化制御を実行させて積極的に車体挙動の安定化を図る一方、第1の車体挙動安定化制御が車体挙動に与える変化が大きいと考えられる領域では、駆動力の制御を無効化することで車体挙動を安定化させることができる。
【0013】
また、本発明の一側面によれば、前記駆動装置は、車両の減速時に減速エネルギを電力に変換して回生制動力を発生するモータ(5)を含み、前記駆動制御手段は、前記単独での第1の車体挙動安定化制御の実行中、前記制動制御手段が行うべき制動力の低減制御に代えて前記モータの駆動力を増加させるように構成することができる。
【0014】
減速時に回生制動を行う車両では、回生制動によって非制動操作中に車輪がロック傾向になることがあり、モータの慣性力が大きいために、車輪がロック傾向になるとロックを抑制するために回生制動の停止だけでなく積極的にモータを回転させる必要があるが、上記のように構成することにより、車輪のロックを抑制することができる。
【0015】
また、本発明の一側面によれば、前記駆動制御手段による単独での車体挙動の安定化の実行中に、前記制動制御手段の異常を報知する報知手段(41・19)を備えるように構成することができる。
【0016】
このよう構成することにより、制動制御手段による第2の車体挙動安定化制御が停止した不完全な状態で継続使用されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制動制御手段による車体挙動安定化制御に用いるアクチュエータが異常となった場合に、制動制御手段による第2の車体挙動安定化制御を停止しつつ、異常状態や異常部位に応じて駆動制御手段による第1の車体挙動安定化制御を暫定的に継続させられるため、ユーザメリットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された自動車の駆動系および制動系の要部系統図
【図2】図1に示すブレーキ系を模式的に示す油圧回路図
【図3】図1に示す制御ユニットの要部機能ブロック図
【図4】図1に示す制御ユニットによる制御フロー図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された電気自動車またはハイブリッド自動車(以下、単に自動車Vと記す。)の駆動系および制動系の要部系統図である。
【0020】
図1に示される自動車Vは、車両前側に配設された左右一対の前輪2と、車両後側に配設された左右一対の後輪3とを有する。左右の前輪2に連結された前輪車軸4には駆動装置としてのモータ・ジェネレータ5が機械的に連結されている。なお、差動機構は図示省略する。
【0021】
モータ・ジェネレータ5は、車両走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ねたものであり、二次電池であるバッテリ6を電源としてインバータ7によってバッテリ6よりの電力供給とバッテリ6に対する電力供給(充電)とを制御され、減速時には減速エネルギを電力に変換回生して回生制動力を発生する回生制動手段をなす。
【0022】
また自動車Vには、CPUを用いた制御回路を備えることにより車両の内燃機関あるいは電動機等からなる駆動装置の制御を行う駆動制御ユニット9が設けられている。駆動制御ユニット9には、上記インバータ7が電気的に接続されている。なお、電気自動車の場合にはこの構成のまま、または後輪3を駆動するモータ・ジェネレータ5を設けても良いが、ハイブリッド自動車の場合には前輪車軸4に駆動装置として図の二点鎖線で示されるエンジン(内燃機関)8の出力軸が連結される。図の場合は前輪駆動の例であるが、四輪駆動とすることもできる。
【0023】
前輪2及び後輪3の各車輪には、摩擦制動を行う摩擦制動手段として、車輪(前輪2・後輪3)と一体のディスク11a及びホイールシリンダ11bを備えるキャリパにより構成される公知のディスクブレーキ11が設けられている。ホイールシリンダ11bには、公知のブレーキ配管を介してモジュレータ12が接続されている。ブレーキ配管は、後で詳述するが、各車輪別にブレーキ圧を増減可能な油圧回路で構成されている。モジュレータ12は、制動制御ユニット12hと一体に形成され、この制動制御ユニット12hにより各車輪のブレーキ圧が制御される。
【0024】
また、前輪2及び後輪3の各車輪には、対応する車輪速を検出する車輪速検出手段としての車輪速センサ21が設けられており、運転者のアクセル操作に供されるアクセルペダル13には、アクセル操作量(踏み込み量)を検出するアクセルセンサ22が、運転者のブレーキ操作に供されるブレーキペダル14には、ブレーキ操作量(踏み込み量)を検出するブレーキセンサ23がそれぞれ設けられている。アクセルセンサ22の検出信号は駆動制御ユニット9に入力し、各車輪速センサ21とブレーキセンサ23との各検出信号は制動制御ユニット12hに入力する。また、制動制御ユニット12hには、自動車Vの適所に設けられた横加速度センサ24、ヨーレイトセンサ25および操舵角センサ26の各検出信号が入力する。
【0025】
駆動制御ユニット9は、アクセルペダル13のアクセルセンサ22の出力信号が0から増大した場合に駆動の指令が発生したと判断し、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力制御を行うとともに、ブレーキセンサ23の出力信号が0から増大した場合に制動の指令が発生したと判断し、モータ・ジェネレータ5を発電機に切り替えた回生制動とディスクブレーキ11による制動との少なくとも一方を行うようにする。このように、回生制動を行いかつ油圧制動も行う回生協調制御により制動を行う場合、ブレーキ装置10には公知のブレーキ・バイ・ワイヤ形式が採用される。
【0026】
次に、図2を参照してブレーキ装置10およびこれに組み込まれたモジュレータ12について説明する。このブレーキ装置10は、ブレーキペダル14の操作を機械的にブレーキ液圧発生シリンダに伝達してブレーキ液圧を発生させるのと独立して、ブレーキセンサ23により検出したブレーキペダル14の操作量などに基づいて、各ホイールシリンダ11bのブレーキ液圧を個別に発生させることができ、運転者の操作から独立して制動力を制御することができるブレーキ・バイ・ワイヤ形式の一形態である。
【0027】
ブレーキペダル14は車体に回動自在に支持されており、運転者の制動操作に応じて円弧運動を行う。ブレーキペダル14にはその円弧運動を略直線運動に変換するロッド15の一端が連結されており、ロッド15の他端は、直列的に配設されたマスターシリンダ16の第1ピストン16aに対し、運転者の制動操作に応じて押し込むように係合している。マスターシリンダ16における第1ピストン16aのロッド15と相反する側には、第2ピストン16bが直列的に配設されており、各ピストン16a・16bはそれぞれロッド15側にばね付勢されている。
【0028】
また、マスターシリンダ16には、各ピストン16a・16bの変位によってブレーキ液が不足した際にブレーキ液を補充するためのリザーブタンク17が設けられている。なお、各ピストン16a・16bには、リザーブタンク17と連通する各油路10a・10bとの間をシールするための公知構造のシール部材が各適所に設けられている。そして、マスターシリンダ16の筒内には、第1ピストン16aと第2ピストン16bとの間に第1液室18aが形成され、第2ピストン16bの第1ピストン16aと相反する側に第2液室18bが形成されている。
【0029】
そして、マスターシリンダ16の第1液室18aが、図示しないモータ駆動シリンダの第1液圧発生室および油路10cを介して、第2液室18bが油路10dを介して、それぞれモジュレータ12と連通している。さらに、モジュレータ12は、複数(図示例では4つ)のホイールシリンダ11bに連通するように配管されている。なお、モジュレータ12は、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(トラクションコントロールシステム)、旋回時のヨーモーメントを制御して横滑りを抑制する横滑り抑制制御、緊急時に所定のブレーキ圧を自動的にホイールシリンダ11bに作用させるブレーキアシスト機能、衝突回避・レーンキープなどのための自動ブレーキ機能等を備えた車両挙動安定化制御システムに供される公知のものであって良い。
【0030】
モジュレータ12は、前輪2の各ホイールシリンダ11bに対応する第1系統12aと、後輪3の各ホイールシリンダ11bに対応する第2系統12bと、両系統12a・12bに接続するポンプモータ12cとを備え、各系統12a・12bにはそれぞれ、常閉型のアウトバルブ12dや、常開型のインバルブ12e、レギュレータバルブ12f(ともに電磁弁)、低圧リザーバ12gなどが設けられている。これらポンプモータ12c、アウトバルブ12d、インバルブ12eおよびレギュレータバルブ12f(以下、これらを総称して「ブレーキアクチュエータ」と称する。)は、制動制御ユニット12hにより駆動制御される。また、モジュレータ12は、ホイールシリンダ11bに加わるブレーキ液圧を検出し得る位置に、各ホイールシリンダ11bに対してブレーキ液圧センサ12iを備えている。
【0031】
このように構成されたブレーキ装置10は、運転者がブレーキペダル14を操作すると、この操作量に応じたブレーキ液圧がモジュレータ12を介して前後輪の各ホイールシリンダ11bに供給されて、制動力を発生させるとともに、制動制御ユニット12hがポンプモータ12cを駆動することにより、ポンプモータ12cによって加圧されたブレーキ液が常開型のインバルブ12eを通してホイールシリンダ11bへ送られ、ブレーキ操作に応じた制動力とは独立して補助制動力を発生させる一方、制動制御ユニット12hが常閉型のアウトバルブ12dを開弁駆動するとともに常開型のインバルブ12eを閉弁駆動することにより、ブレーキ液が低圧リザーバ12g側へ排出され、ホイールシリンダ11bに発生する制動力を低減することができる。
【0032】
モジュレータ12とモータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8とは、上記駆動制御ユニット9により総合的に制御されるようになっている。駆動制御ユニット9には、アクセルセンサ22(+α)の検出信号が入力している。制動制御ユニット12hは、ブレーキセンサ23と各ブレーキ液圧センサ12iおよび車両の挙動を検出するための各種センサ21、24〜26からの各検出信号に基づき、かつ上記各種センサからの検出信号から判断した走行状況等に応じて、モジュレータ12により発生するブレーキ液圧を制御する。さらに、本実施形態の対象車両となるハイブリッド車(または電気自動車)の場合には、モータ・ジェネレータ5による回生制御を行うようにしており、この場合、制動制御ユニット12hは、回生制御を行う場合の回生の大きさに対するブレーキ液圧の大きさの配分制御も行う。
【0033】
回生ブレーキが同時に作動する場合には、駆動制御ユニット9がモータ・ジェネレータ5を発電機として制御し、ブレーキペダル14によるブレーキ操作量などに応じて回生ブレーキ量を増減する。そして、ブレーキ操作量の大きさ(運転者が要求する減速度の大きさ)に対して回生ブレーキだけでは不足する車体減速度に対応するよう、制動制御ユニット12hがモジュレータ12を駆動制御して、回生ブレーキと油圧ブレーキとによる回生協調制御を行う。
【0034】
駆動制御ユニット9は、上記のような通常時の駆動力制御および制動力制御の他、各種センサ21〜26からの検出信号に基づいてモータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を制御することによる第1の車体挙動安定化制御、およびモジュレータ12による制動力を制御することによる第2の車体挙動安定化制御も行う。これら駆動制御ユニット9、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8、およびモジュレータ12などにより、本発明に係る車体挙動安定化装置1が構成される。
【0035】
図3に示すように、制動制御ユニット12hは、旋回時のヨーモーメントを制御して横滑りを抑制する横滑り抑制制御部31と、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS制御部32と、運転者のブレーキ操作をアシストするブレーキアシスト制御部33と、加速時などの車輪空転を防ぐトラクションコントロール部34と、モジュレータ12による制動力を制御する制動制御部35と、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を制御するための要求信号を送信する駆動制御指令部36と、異常検出部37とを備えている。さらに、横滑り抑制制御部31は、規範横滑り角算出部38と、実横滑り角算出部39とを備えており、制動制御部35は、実行指令生成部40と、異常報知部41とを備えている。
【0036】
規範横滑り角算出部38は、車輪速センサ21の検出置の平均値から求めた車速Vaと操舵角センサ26の検出値(操舵角δf)とから車体挙動の規範となる規範横滑り角βsを算出する。実横滑り角算出部39は、横加速度センサ24の検出値(横加速度Gy)とヨーレイトセンサ25の検出値(ヨーレイトγ)と車速Vaとから自動車Vの実横滑り角βaを次式(1)により算出する。つまり、第2車体挙動安定化制御に供される車体の運動状態量を検出する複数の運動状態量検出手段のうち少なくとも1つの出力を用いて実横滑り角βaを算出する。
(Gy/Va)−γ=βa/dt ・・・(1)
【0037】
そして、横滑り抑制制御部31は、算出した規範横滑り角βsと実横滑り角βaとに基づいて、主に、制動力を発生させるべき車輪(前輪2・後輪3)を特定するとともにその車輪に発生させるべき制動力を求めて制動制御部35に指令を出力する。例えば、横滑り抑制制御部31は、自動車Vが旋回走行中に前輪2が外側へ流れてアンダーステア傾向となった場合には、旋回内側の後輪3に制動力を発生させ、後輪3が外側へ流れてオーバーステア傾向となった場合には、旋回外側の前輪2に制動力を発生させる指令を出力する。また、横滑り抑制制御部31は、自動車Vが加速走行中などで所定の車輪の制動力発生だけでは横滑り抑制が不足するようなときは、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8に低減させるべき駆動力を求めて駆動制御指令部36から駆動制御ユニット9に駆動要求指令を出力する。
【0038】
ABS制御部32は、車輪速センサ21の検出値からロックしそうになった車輪(前輪2・後輪3)を特定するとともにその車輪に低減させるべき制動力を求めて制動制御部35に指令を出力する。ブレーキアシスト制御部33は、走行路の傾斜やシフトドライブポジション、サイドブレーキ信号、ブレーキセンサ23の検出信号などに基づき前輪2および後輪3に発生させるべき制動力を決定して制動制御部35に指令を出力する。
【0039】
トラクションコントロール部34は、自動車Vが直進加速時などに、車輪速センサ21の検出値からスリップしている車輪(前輪2・後輪3)を特定するとともに、詳細を後述するように、その車輪に低減させるべき駆動力または発生させるべき制動力を求めて制動制御部35および/または駆動制御指令部36に指令を出力する。
【0040】
駆動制御部42は、駆動制御指令部36から出力された指令に基づき、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を制御することで第1の車体挙動安定化制御を実行する駆動制御手段として機能する。なお、図示は省略するが、駆動制御指令部36には、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力制御が不可能になっていることを検出する検出手段からの検出信号が入力しており、この信号が入力した場合には駆動制御指令部36による制御指令を停止する。また、駆動制御部42は後述の制動制御部35により判定した自動車Vの走行状態に対応した複数の制御モードに従った処理を行う。駆動制御モードとしては、自動車Vが直進走行中に選択されるモードや、自動車Vが旋回走行中に選択されるモード、自動車Vが加速中に選択されるモード、自動車Vが制動中に選択されるモードなどがある。そして、駆動制御部42は、各駆動制御モードにしたがって、モータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を制御する。
【0041】
制動制御部35は、横滑り抑制制御部31、ABS制御部32、ブレーキアシスト制御部33およびトラクションコントロール部34などから出力された指令に基づき、これら機能制御部(31〜34)による制御を所定のロジックに基づいて協調させ、前輪2および後輪3の各ディスクブレーキ11に発生させるべき制動力を決定し、モジュレータ12を作動させるための信号を出力する。なお、モータ・ジェネレータ5が回生制動力を発生中にABS制御部32が制動力の低減指令を出力している場合には、制動制御部35は、ディスクブレーキ11が制動力を発生させていればモジュレータ12によりブレーキ液圧を低減させるとともに、回生制動を停止させもしくは回生制動の制動力を抑制する。
【0042】
モジュレータ12では、制動制御部35が出力した信号に基づき、上記ブレーキアクチュエータを駆動制御して所定の車輪に所定の制動力を発生させる。すなわち、制動制御部35は、モジュレータ12のブレーキアクチュエータ(12c〜12gなど)を駆動制御して前後左右の車輪の制動力を独立制御することで第2の車体挙動安定化制御を実行する制動制御手段として機能する。なお、左右の車輪の駆動力を独立制御できる場合には、同様に駆動制御指令部36により、駆動制御部42へ左右それぞれの駆動力あるいは回生制動力に対応する指令を出力するように構成しても良い。
【0043】
制動制御部35は、前輪2および後輪3の各ディスクブレーキ11に発生させるべき制動力を決定するのに際し、自動車Vの走行状態に対応した複数の駆動制御モードにしたがった処理を行う。駆動制御モードとしては、自動車Vが直進走行中に選択されるモードや、自動車Vが旋回走行中に選択されるモード、自動車Vが加速中に選択されるモード、自動車Vが制動中に選択されるモードなどがある。そして、制動制御部35は、各種センサ21〜26の検出信号に基づいて判定した自動車Vの走行状態に対応する駆動制御モードにしたがって、前輪2および後輪3の各ディスクブレーキ11に発生させるべき制動力を決定し、モジュレータ12を作動させる。
【0044】
モジュレータ12の作動時には、各ホイールシリンダ11bに加わるブレーキ液圧がブレーキ液圧センサ12iにより検出され、この検出信号が異常検出部37に入力する。異常検出部37は、制動制御部35により制動力制御が行われたときは、ブレーキアクチュエータの駆動により所定のブレーキ液圧が発生しているか否かを監視し、検出されたブレーキ圧が所定の目標値と大きく相違する場合、相違の状態に応じて少なくともいずれかのブレーキアクチュエータに異常が発生したことを検出し、ブレーキアクチュエータの異常検出信号を制動制御部35に送る。
【0045】
トラクションコントロール部34は、駆動制御と制動制御とのどちから一方または両方を行うかを、具体的には次のようにして決定すればよい。例えば、自動車Vが前輪駆動車であれば、一方の前輪2がスリップを起こした場合に、スリップを起こした前輪2についてディスクブレーキ11に制動力を発生させてこの前輪2の駆動力を低減させ、左右両方の前輪2がスリップを起こした場合にはモータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を低減させるようにしてもよく、或いは、少なくとも一方の前輪2がスリップを起こした場合に、優先的にモータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を低減させて左右の前輪2の駆動力を低減させ、駆動力(駆動装置の出力)の低減だけではスリップを解消し得ないような場合に補助的にディスクブレーキ11に制動力を発生せるようにしてもよい。
【0046】
一方、自動車Vが四輪駆動車であれば、上記前輪駆動者と同様に、一部の車輪がスリップを起こした場合、当該車輪についてディスクブレーキ11に制動力を発生させ、前輪2または後輪3の両輪がスリップを起こした場合、スリップを起こした側の車輪(前輪2または後輪3)への駆動力分配率を低下させたり、1車輪のみの駆動力制御が可能な場合にはスリップを起こした車輪のみについて駆動力を低下させたりしてもよく、或いは、少なくとも1つの車輪がスリップを起こした場合に、優先的にモータ・ジェネレータ5および/またはエンジン8の駆動力を低減させ、補助的にディスクブレーキ11に制動力を発生せるようにしてもよい。
【0047】
このように、トラクションコントロール部34は、第1の車体挙動安定化制御を実行する駆動制御指令部36および駆動制御部42と、第2の車体挙動安定化制御を実行する制動制御部35とを併用して加速時などの車輪空転を防いで車体挙動の安定化を図る。また、横滑り抑制制御部31も、駆動制御指令部36と制動制御部35とを併用して加速時などの横滑りを抑制して車体挙動の安定化を図る。そこで、従来、モジュレータ12のブレーキアクチュエータ(12c〜12gなど)が異常となり制動制御部35による第2の車体挙動安定化制御が実施されなくなった場合には、制動制御部35から異常を示す異常信号を受け取ると、駆動制御指令部36および駆動制御部42も同時に制御を停止していた。
【0048】
一方、本実施形態では、異常検出部37が発した異常検出信号を制動制御部35が受け取ると、制動制御部35がモジュレータ12を用いた第2の車体挙動安定化制御を停止して、インストルメントパネルなど車室内に設けられたインジケータ19に対して異常報知部41が異常発生の表示を行わせるとともに、実行指令生成部40が駆動制御指令部36に対して車体挙動安定化制御を実行するべき旨の実行指令の出力を継続する。この実行指令を受け取った駆動制御指令部36は、異常等の異常がない限りにおいて単独で第1の車体挙動安定化制御を実行(継続)する。
【0049】
つまり、制動制御ユニット12hでは、図4に示す手順で処理が行われる。まず、制動制御部35は、異常検出部37からの異常信号に基づいてブレーキアクチュエータに異常が発生したか否かを判定し(ステップST1)、異常が発生している場合には(Yes)、さらにブレーキ液圧センサ12i、車輪速センサ21、ブレーキセンサ23、横加速度センサ24、ヨーレイトセンサ25、操舵角センサ26などの制御に利用する各センサの異常を実行されている制御モードに基づき判定する(ステップST2)。ここで異常が発生している場合には(No)、直ちに制動制御を終了し(ステップST5)、異常を示す報知を行う。
【0050】
ステップST1においてブレーキアクチュエータに異常が発生していない場合には(No)、ステップST2と同様に各センサの異常を判定し(ステップST3)、正常でない場合には(No)さらに異常が生じたセンサから得られるパラメータを代替演算可能か否かを判定する(ステップST4)。ここで、例えばヨーレイトおよび横加速度Gyは舵角と車速Vaとの対応関係を利用した推定演算が可能である。この推定演算には公知の手法を用いて良い。ステップST4で代替制御が可能と判定された場合(Yes)または実行中の制御モードにおいて使用しないセンサの異常のみが特定された場合には、他の条件等(車速Vaや車体運動状態など)を考慮した上で代替暫定制御モードによる代替制御を許可する(ステップST6)。代替制御が不能な異常(例えば、複数の車輪速センサ21の異常や、推定演算の精度が低くなる走行状態)が検出されている場合には(No)、制動制御を停止する(ステップST5)。ステップST3においてこれらセンサに異常が存在しない場合には(Yes)、制動制御を許可し、モジュレータ12による第2の車体挙動安定化制御を継続する(ステップST7)。
【0051】
次いでステップST8において、駆動制御の可否を判断する。ここでは、制動制御ユニット12hの駆動制御指令部36からの要求に対応して駆動制御ユニット9が対応した制御を実施できるか否かが判定される。例えば、既に駆動力を最小とした状態で制動要求(駆動力の低減要求)が駆動制御指令部36からなされた場合や、各センサにより検出された状態により、例えばヨーレイトが大きい時など制御によって車両挙動を一層不安定にする可能性のある場合には、駆動制御ユニット9は駆動制御不可と判定し(Yes)、駆動制御を停止する(ステップST11)。
【0052】
ステップST8において、駆動制御が可能と判定された場合には(No)、ステップST9において前述のステップST2およびステップST3と同様に、実行されている制御モードに基づき駆動制御ユニット9による車両挙動安定化のために用いられる駆動制御用センサ(アクセルセンサ22、Neセンサ、Thセンサ、モータトルクセンサ、モータ回転センサなど)が正常か否か判定する(ステップST9)。ここでセンサが正常であれば(Yes)、駆動制御を許可し、駆動制御ユニット9による第1の挙動安定化制御を継続する(ステップST13)。
【0053】
また、ステップST9においてセンサに異常が生じている場合には(No)、ステップST4と同様に異常の生じたセンサの値を他のセンサ信号等により代替可能か否かを判定する(ステップST10)。ここで既に制動制御部35が代替暫定制御を実行している場合には、各々の制御が干渉することなどによる制御異常が生じる可能性があるため、駆動制御における代替制御を不可と判定しても良い。代替制御が不可と判定された場合には(No)、駆動制御ユニット9による駆動制御を中止する(ステップST11)。代替制御が可能と判定された場合には(Yes)、駆動制御を代替暫定制御モードで実行する(ステップST12)。以上により、制動制御部35および駆動制御部42により、選択的に挙動安定化制御が実行されることとなる。
【0054】
このように、ブレーキアクチュエータの異常が検出されて制動制御部35が制動制御(第2の車体挙動安定化制御)を停止した場合であっても、駆動制御指令部36が駆動制御部42に対して実行指令を出力し、駆動制御部42が単独で駆動制御(第1の車体挙動安定化制御)を実行することにより、第1の車体挙動安定化制御をも停止した場合に比べて自動車Vの車体挙動を安定化させることができる。
【0055】
また、駆動制御部42が駆動制御(第1の車体挙動安定化制御)を停止した場合であっても、制動制御部35が単独で制動制御(第2の車体挙動安定化制御)を実行することにより、第1の車体挙動安定化制御をも停止した場合に比べて自動車Vの車体挙動を安定化させることができる。
【0056】
また、駆動制御部42は、駆動制御指令部36からの実行指令に基づいて第1の車体挙動安定化制御を第2の車体挙動安定化制御と同時に実行しているときには、制動制御部35が判定する自動車Vの走行状態に応じた制御モードを確認しながら駆動制御を行い、この制御モードが旋回走行中に選択される制御モードとなっているときや、旋回状態を示す運動状態量(例えばヨーレイトや横加速度Gy)が大きいときには、駆動力による第1の車体挙動安定化制御のみの制御への移行を禁止する禁止手段として機能する。これにより、横滑り抑制制御部31やトラクションコントロール部34が制動制御部35と駆動制御指令部36とに同時に駆動指令を出力した場合に、制動制御部35による第2の車体挙動安定化制御が停止しているにも拘わらず駆動制御指令部36による駆動制御のみが行われることによって、自動車Vにアンダーステアやオーバーステアが発生することが防止され、自動車Vの車体挙動を一層安定化させることができる。
【0057】
また、駆動制御部42は、前述のようにヨーレイトが大きい場合に代えて、第1の車体挙動安定化制御を第2の車体挙動安定化制御と同時に実行しているときには、横滑り抑制制御部31が算出する規範横滑り角βsと実横滑り角βaを確認しながら駆動制御を行い、規範横滑り角βsに対する実横滑り角βaの乖離が所定量以上の場合には、駆動力による第1の車体挙動安定化制御のみの制御への移行を禁止する。これにより、駆動制御部42による第1の車体挙動安定化制御が車体挙動に与える変化が小さいと考えられる領域では、駆動力のみによる制御を許容して積極的に第1の車体挙動安定化制御による車体挙動の安定化を図る一方、第1の車体挙動安定化制御が車体挙動に与える変化が大きく、逆に車体挙動を不安定にさせていると考えられる領域では、駆動力の制御を無効化することで車体挙動を安定化させることができる。
【0058】
さらに、駆動制御部42は、単独での第1の車体挙動安定化制御の実行中には、制動制御部35が行うべき制動力の低減制御に代えてモータ・ジェネレータ5の駆動力を増加させる。これにより、回生制動の停止後にABS制御部32が制動力の低減指令を出力しているにも拘わらず制動制御部35が制御停止している場合など、回生制動を停止させもしくは回生制動の制動力を抑制することができない場合であっても、モータの慣性力が大きいために車輪のロック傾向が継続することを防止し、車輪のロックを抑制することができる。
【0059】
また、異常検出部37がブレーキアクチュエータに異常が発生したことを検出した場合、制動制御部35がモジュレータ12を用いた第2の車体挙動安定化制御を停止するとともに、異常報知部41がインジケータ19に異常発生の表示を行って異常の報知を行うことにより、制動制御部35による第2の車体挙動安定化制御が停止した不完全な状態で継続使用されることを防止できる。
【0060】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各部材の具体的形状や配置などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。さらに、上記実施形態に示した本発明に係る車体挙動安定化装置1は、必ずしも全ての要素を必須とするものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。例えば、上記実施形態では、駆動制御部42が禁止手段として作用する例を示したが、これに代えて制動制御部35あるいは他の制御装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 車体挙動安定化装置
2 前輪
3 後輪
5 モータ・ジェネレータ(駆動装置)
8 エンジン(駆動装置)
9 駆動制御ユニット(駆動制御手段)
10 ブレーキ装置
11 ディスクブレーキ
12 モジュレータ
12c ポンプモータ(アクチュエータ)
12d アウトバルブ(アクチュエータ)
12e インバルブ(アクチュエータ)
12f レギュレータバルブ
12i ブレーキ液圧センサ(異常検出手段)
12h 制動制御ユニット(制動制御手段)
19 インジケータ(報知手段)
21 車輪速センサ(車体運動状態量検出手段)
24 横加速度センサ(車体運動状態量検出手段)
25 ヨーレイトセンサ(車体運動状態量検出手段)
35 制動制御部
36 駆動制御指令部
37 異常検出部
38 規範横滑り角算出部
39 実横滑り角算出部
41 異常報知部
42 駆動制御部
V 自動車
βa 実横滑り角
βs 規範横滑り角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置の駆動力を制御することで第1の車体挙動安定化制御を実行する駆動制御手段と、
複数のアクチュエータを駆動制御して前後左右の車輪の制動力を独立制御することで第2の車体挙動安定化制御を実行する制動制御手段と、
前記駆動装置または前記複数のアクチュエータのうち少なくとも1つの異常を検出する異常検出手段とを備えた車体挙動安定化装置であって、
前記異常検出手段が前記駆動装置または前記少なくとも1つのアクチュエータの異常を検出した場合、前記第1の車体挙動安定化制御または前記第2の車体挙動安定化制御のいずれか一方を単独で実行することを特徴とする車体挙動安定化装置。
【請求項2】
前記制動制御手段または制動制御手段は、旋回走行を含む複数の走行状態に対応する複数の駆動制御モードを備え、
旋回走行に対応する制御モードにおいて同時に前記第2の車体挙動安定化制御が実行されている際に、前記第1の車体挙動安定化制御のみの制御へ移行することを禁止することを特徴とする、請求項1に記載の車体挙動安定化装置。
【請求項3】
前記禁止手段は、車両の運動量を検出する運動量検出手段の検出結果に基づき、単独での前記第1の車体挙動安定化制御のみの制御へ移行することを禁止することを特徴とする、請求項2に記載の車体挙動安定化装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、車両の減速時に減速エネルギを電力に変換して回生制動力を発生するモータを含み、
前記駆動制御手段は、前記単独での第1の車体挙動安定化制御の実行中、前記制動制御手段が行うべき制動力の低減制御に代えて前記モータの駆動力を増加させることを特徴とする、請求項1に記載の車体挙動安定化装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段による前記単独での車体挙動の安定化制御の実行中に前記制動制御手段の異常を報知する報知手段を備えることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車体挙動安定化装置。
【請求項6】
前記制動制御手段および前記駆動制御手段は、通信可能に接続された複数のセンサ信号から決定される運動状態量をもとに前記駆動装置および前記複数のアクチュエータを駆動制御するよう構成され、
前記複数のセンサの少なくとも1つに異常が発生した際に、前記複数のセンサ信号のうち少なくとも1つを異常信号として特定するセンサ異常判定手段と、
前記センサ異常判定手段が前記異常信号を特定した際に、残りのセンサ信号を用いて前記第1の車体挙動安定化制御または前記第2の車体挙動安定化制御の少なくとも一方を暫定制御モードで実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車体挙動安定化装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71549(P2013−71549A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211125(P2011−211125)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】