説明

車載用ナビゲーション装置及び地図データ更新方法

【課題】一部の地域の地図データの更新をする場合であっても、名称が更新される施設については他の地域の施設にも反映する機能を備えた「車載用ナビゲーション装置及び地図データ更新方法」を提供すること。
【解決手段】車載用ナビゲーション装置は、施設のデータを含む地図データが格納された記憶手段と、ユーザが指示する情報を入力する情報入力手段と、地図更新データを用いて情報入力手段を介して指定された所定地域の地図データを更新する制御手段とを有する。制御手段は、所定地域の地図データを更新するとともに、所定地域の範囲内に存在する施設の名称の変更を検出して旧施設名称と新施設名称とを関連付けた施設情報更新テーブルを作成し、所定地域の範囲外に存在する施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を施設情報更新テーブルを参照して旧施設名称から新施設名称に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置に係り、特に、最新の施設等を適切に案内可能なように適応された車載用ナビゲーション装置及び地図データ更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的な車載用ナビゲーション装置は、ナビゲーションに係る一切の処理を制御するCPU等の制御装置、地図データを予め記憶させたDVD(Digital Versatile Disk)−ROMやICメモリカード等の記憶装置、表示装置、GPS(Global Positioning System)受信機、ジャイロや車速センサ等の車両の現在位置及び現在方位を検出する検出装置等を有している。そして、制御装置により、車両の現在位置を含む地図データを記憶装置から読み出し、該地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像を表示装置の画面に表示すると共に、自車の現在位置を指示する車両位置マークを地図画像に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示したり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させたりして、車両が現在どこを走行しているのかを一目で判るようにしている。
【0003】
また、車載用ナビゲーション装置には、通常、ユーザが目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるように案内する機能(経路案内機能)が搭載されている。この経路案内機能によれば、CPUにより、地図データを用いて出発地(典型的には自車の現在位置)から目的地までを結ぶ最適な経路を、横型探索法やダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って探索し、その探索した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上にその誘導経路を他の道路とは識別可能に(例えば、色を変えたり、線幅を太くして)表示したり、また、自車が案内経路上で進路を変更すべき交差点まで所定距離に近づいたときに地図画像上にその交差点の案内図(交差点拡大図、該交差点での進行方向を示す矢印、該交差点までの距離、交差点名など)を表示したりすることで、いずれの道路を走行すればよいか、また、交差点でどの方向に進んだらよいかをユーザが把握できるようになっている。
【0004】
近年、通信技術の発展により、通信ネットワークを介してナビゲーション装置で使用される地図データを配信でき、配信された地図データを用いて、HDD(Hard Disc Drive)に格納された地図データを更新できる技術が実用化されている。これにより、道路や施設等の実際の状態を正確に表している地図データを取得することが可能となっている。
【0005】
また、全国の地図データを書き換えることなく、所定の地域の地図データだけを更新するようにして、通信費用や地図データ量の削減を可能とする技術も検討され、実用化されている。
【0006】
これに関連する技術として、特許文献1には、過去に通過したエリアに、所定の条件を満たす施設が含まれるエリアを含めたエリアを地図更新対象エリアとして、そのエリア内の地図更新を行う地図データ更新方法が記載されている。
【特許文献1】特開2005−147864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、書き換え可能なHDDに格納された地図データに対して、指定された地域の地図データだけを更新することができ、更新する地図データ量を削減することが可能となっている。
【0008】
このような地図データの更新においては、新設された道路や使用されなくなった道路の情報とともに、施設の情報も更新されている。例えば、施設が移転して新たな地図データには存在しない場合や、施設の名称が変更になり新たな名称が付与され、地図データを表示する際にはそれらの更新が反映されて表示される。
【0009】
しかし、施設の名称が変更になった場合、指定された地域については最新の情報が反映されるが、指定された地域以外に存在している同一の施設の名称は最新の名称に更新されていない。そのため、同一の施設に対して地図を表示する範囲によって異なる名称が表示されることになる。特に、全国的に著名な施設について名称が変更になった場合であれば、旧名称と新名称とが混在していても多少の違和感は生じるもののユーザがその施設を容易に認識することが可能であるが、全国的に著名でない施設について名称が変更になった場合、地域によって名称が異なっていると、同一の施設であるのか異なる施設であるのかの判断がつかなくなる。新たな名称で施設検索を行っても、施設が存在するにもかかわらず検索されないという不都合も発生してしまう。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたものであり、一部の地域の地図データの更新をする場合であっても、名称が更新される施設については他の地域の施設にも反映する機能を備えた車載用ナビゲーション装置及び地図データ更新方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の基本形態によれば、施設のデータを含む地図データが格納された記憶手段と、ユーザが指示する情報を入力する情報入力手段と、地図更新データを用いて前記情報入力手段を介して指定された所定地域の前記地図データを更新する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記所定地域の前記地図データを更新するとともに、当該所定地域の範囲内に存在する施設の名称の変更を検出して旧施設名称と新施設名称とを関連付けた施設情報更新テーブルを作成し、当該所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を前記施設情報更新テーブルを参照して前記旧施設名称から新施設名称に変更することを特徴とする車載用ナビゲーション装置が提供される。
【0012】
この形態に係る車載用ナビゲーション装置において、前記制御手段は、前記地図更新データ及び前記記憶手段に格納されている更新対象となる地図データのうち位置を示すデータが同一の施設を検出し、更新対象となる地図データに存在する当該施設の名称を旧施設名称とし、更新データに存在する当該施設の名称を新施設名称とするようにしてもよい。
【0013】
また、この形態に係る車載用ナビゲーション装置において、前記制御手段は、同一の施設について名称がすべて新たな同一の名称に変更されたとき、前記所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を変更するようにしてもよく、前記制御手段は、同一の施設について名称が異なる名称に変更されたものと、施設が存在しなくなったものとが混在するとき、当該施設の名称が一律に変更されたものと判定し、前記所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を変更するようにしてもよく、前記制御手段は、同一の施設について名称が複数の異なる名称に変更されたとき、前記所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設のうち、前記情報入力手段を介して指示された施設の名称を変更するようにしてもよい。
【0014】
本発明の車載用ナビゲーション装置によれば、指定された地図データ更新の地域において、地図データを更新するとともに、その範囲に含まれている施設の変更前の名称と変更後の名称との対応関係(施設情報更新テーブル)を作成している。この施設情報更新テーブルを参照して、指定された地域の範囲外においても、名称が変更された施設に対して名称の変更を行うようにしている。これにより、地図データの更新指定領域内外にかかわらず施設の名称を新たな名称に統一させることが可能となり、ユーザが同一の施設に対して異なる名称が混在することによる違和感や混乱を招くことを防止することが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の形態によれば、指示された所定地域の地図データを更新するステップと、前記更新において、名称が変更された施設を検出するステップと、前記施設の旧施設名称と新施設名称とを関連付けた施設情報更新テーブルを作成するステップと、前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップと、を有することを特徴とする地図データ更新方法が提供される。
【0016】
この形態に係る地図データ更新方法において、前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップは、前記更新において、同一の施設について名称が異なる名称に変更されたものと、施設が存在しなくなったものとが混在するとき、当該施設を更新対象施設とするステップと、前記所定地域以外の地域に存在する前記更新対象施設の名称を新施設名称に変更するステップであるようにしてもよく、前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップは、前記更新において、同一の施設の名称がすべて新たな同一の名称に変更されたとき、当該施設を更新対象施設とするステップと、前記所定地域以外の地域に存在する前記更新対象施設の名称を新施設名称に変更するステップであるようにしてもよい。
【0017】
また、この形態に係る地図データ更新方法において、前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップの前に、前記所定地域以外の地域の施設のうち名称の更新を行う施設をユーザが指示する情報を入力する情報入力手段を介して選択するステップを有するようにしてもよく、前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップの前に、前記所定地域以外の地域のうち施設名称の変更を行う特定の地域をユーザが指示する情報を入力する情報入力手段を介して決定するステップを有するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0019】
(車載用ナビゲーション装置の構成)
図1は本発明の実施形態に係る車載用ナビゲーション装置100の構成を示すブロック図である。
【0020】
図中、1はハードディスク(HDD)を示し、このHDD1によって駆動されるディスク1aには地図データその他の案内データが格納されている。ディスク1aに格納されている地図データは、1/12500、1/25000、1/50000、1/100000等の各縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、この地図に含まれる道路、建築物、施設その他の各種物件は、経度及び緯度で表現された点(ノード)の座標集合として記憶されている。地図データは、(1)道路リスト、ノードテーブル、交差点構成ノードリスト等からなる道路レイヤ、(2)地図画像上に道路、建築物、公園、河川等を表示するための背景レイヤ、(3)市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名などを指示する文字や地図記号等を表示するための文字・記号レイヤなどから構成されている。ディスク1aに格納している地図データはその情報を更新することができるようになっている。この更新は、全国の地図データを一斉に更新するだけでなく、地域毎に更新することも可能となっている。
【0021】
また、2はナビゲーション装置本体10を操作するための操作ボタン等が設けられた操作部である。本実施形態では、操作部2にリモコン送信機が含まれており、ユーザは手元のリモコン送信機でナビゲーション装置本体10を操作することもできる。
【0022】
また、3は複数のGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信して車両の現在位置の経度、緯度、PDOP(Position DOP)値及びHDOP(Horizontal DOP)値等のGPSデータを生成して出力するGPS受信機を示す。4は自立航法センサを示す。この自立航法センサ4は、車両回転角度を検出するジャイロ等の角度センサと、一定の走行距離毎にパルスを発生する走行距離センサとにより構成されている。
【0023】
また、5は各種のサービスセンターと通信するための車載電話機等の通信機であり、この通信機5を介して最新の地図情報のデータを取得することができる。6は電波ビーコン又は光ビーコンから送られてくるVICS(道路交通情報通信システム)情報を受信するVICS受信機を示す。これらのビーコンは路側に設置され、警察署、道路管理者及び統合センターに接続され、周辺の渋滞情報等を提供する。
【0024】
また、7は液晶パネル等の表示部であり、ナビゲーション装置本体10は、この表示部7に車両の現在位置の周囲の地図を表示したり、出発地から目的地までの誘導経路や車両マーク及びその他の案内情報を表示する。表示部7はその画面上にタッチパネルが設けられ、表示画面の表示内容と対になった各種のボタンが構成される。また、タッチパネルはこれら各種のボタンで示されるメニュー等を選択するための入力装置となる。8は音声によりユーザに案内情報を提供するためのスピーカーである。
【0025】
ナビゲーション装置本体10は以下のものから構成されている。1bはHDD1を介してディスク1aから地図データを読み取るための地図データ読取制御部、11はディスク1aから読み出された地図データを一時的に格納するバッファメモリを示す。
【0026】
12はマイクロコンピュータにより構成される制御部を示す。制御部12は、ナビゲーション用のプログラムを内蔵しており、このプログラムに従い、GPS受信機3から出力される信号や、自立航法センサ4から出力される信号に基づいて自車の現在位置を算出したり、地図データ読取制御部1bを制御して表示させたい地図のデータ等をHDD1を介してディスク1aからバッファメモリ11に読み出したり、バッファメモリ11に読み出された地図データを用いて設定された探索条件で出発地から目的地までの誘導径路を探索するなど、種々の処理を実行する。また、後述するように、指定された地域の地図データを更新したり、名称が更新された施設の情報を基に施設情報更新テーブルを作成して記憶部17に記憶したり、指定された地域以外の地域において名称が更新される施設を検出し、施設情報更新テーブルを基にして最新の施設名称に変更する処理を行う。
【0027】
13はバッファメモリ11に読み出された地図データを用いて地図画像を生成する地図描画部、14は動作状況に応じた各種メニュー画面(操作画面)や車両位置マーク及びカーソル等の各種マークを生成する操作画面・マーク発生部である。
【0028】
15は制御部12で探索した誘導経路を記憶する誘導経路記憶部、16は誘導経路を描画する誘導経路描画部を示す。誘導経路記憶部15には、制御部12によって探索された誘導経路の全ノードが出発地から目的地まで記憶される。誘導経路描画部16は、地図を表示する際に、誘導経路記憶部15から誘導経路情報を読み出して、誘導経路を他の道路とは異なる色及び線幅で描画する。
【0029】
17はハードディスク等で構成される記憶部を示し、地図画像上に表示される施設のデータや、施設の名称変更に関連して旧名称と新名称との対応関係を有する施設情報更新テーブルが格納されている。
【0030】
18は音声出力部を示し、制御部12からの信号に基づいて音声信号をスピーカー8に供給する。19は画像合成部を示し、地図描画部13で描画された地図画像に、操作画面・マーク発生部14で生成した各種マークや操作画面、誘導経路描画部16で描画した誘導経路などを重ね合わせて表示部7に表示させる。
【0031】
このように構成された車載用ナビゲーション装置100における、地図データ更新方法について、図2から図5を参照しながら説明する。図2から図4は、施設の名称の更新を説明する図であり、図5は、地図データ更新処理の一例を示すフローチャートである。
【0032】
図2は、地図データの更新対象として指定した地域の範囲の地図の一例を示した図である。図2は本実施形態の地図データ更新処理の機能を説明するために簡略化して記載したものである。実際には、地図データの更新対象として指定する地域として、都道府県の行政区画や東北地方、関東地方などの単位とすることができる。また、表示部7に表示された更新地図のうち、ユーザが特定の範囲を操作部2を介して指定することによって更新対象とする地域を指定するようにしてもよい。
【0033】
図2(a)は、地図データ更新前の地図データのうち、地図データ更新指定地域21の地図データを表示した図であり、図2(b)は、地図データ更新後の地図データを表示した図である。図2(a)では、地点P1及び地点P2に施設名称が「HT」の施設が存在し、地点P3に施設名称が「WKA」の施設が存在していることを示している。
【0034】
地図データ更新後の図2(b)では、新たな道路22が追加され、施設名称が「NF」の新たな施設が地点P4に追加されている。また、更新前の地点P1及び地点P2に存在している施設の名称は「HT」であるが、図2(b)に示すように更新後の施設の名称は「HM」に変更されている。
【0035】
制御部12は、更新対象として指定された地域の範囲の地図更新データを取得すると、それに対応する更新前の地図データ(以下、現地図データとも呼ぶ)をディスク1aに格納されている地図データベースから取得し、現地図データを新地図データに更新する。すなわち、更新対象の地域の道路や施設等の情報が記載されているディスク1aのファイルの内容を地図更新データの内容に書き換える。
【0036】
この地図データの更新の際に、施設の更新状況を示す「施設情報更新テーブル」を作成して、どの施設が名称を変更したかが容易にわかるようにする。この「施設情報更新テーブル」は、施設の旧施設名称と新施設名称とを関連付けたテーブルであり、地図更新データに含まれている施設の住所や経緯度による位置情報と、現地図データに含まれている施設の位置情報とを基にして作成され記憶部17に保存される。
【0037】
例えば、施設の位置の経度がX1,緯度がY1であり、地図更新データに含まれている当該位置の施設の名称が「HM」、現地図データに含まれている当該位置の施設の名称が「HT」のとき、施設情報更新テーブルとして、例えば「位置(X1,Y1)、旧施設名称:HT、新施設名称:HM」と記録される。この施設情報更新テーブルにより、施設の名称が変更されているかいないか、施設そのものが存在しなくなったのか等の情報を取得できる。
【0038】
図3(a)は、図2(a)の地図データ更新指定地域21及び当該地域の範囲外の施設名称変更対象範囲23の地図データを表示した図である。この施設名称変更対象範囲23では、図2(a)の地図データ更新指定地域21に存在していた施設と同じ名称(HT)の施設が地点P5〜P7に存在している。また、地点P8には施設名称が「WKB」の施設が存在している。
【0039】
図3(b)は、図2(a)の地図データ更新指定地域21の地図データを更新した場合の地図データを表示している。すなわち、図3(b)では地図データ更新指定地域21だけが図2(b)のように更新されている。この場合、図3(b)に示すように、更新した地域21とその他の地域とでは新たに追加された道路22が不連続となっており、地点P1及び地点P2の施設と同じ名称であった地点P5〜P7の施設の名称が旧名称(HT)のままになっている。
【0040】
これに対して、図3(c)では、地図データ更新地域21以外の地域においても、名称が更新された施設に対して新たな名称を付与している。図3(c)に示すように、新たに追加された道路22の情報は図3(b)と同様に地図データ更新指定地域21とそれ以外の地域とでは不連続となっているが、地点P5〜P7の施設の名称がすべて新施設名称の「HM」に変更されている。
【0041】
このように、地図データ更新において、指定された地域内の地図データを更新するとともに、その地域内に含まれている施設の更新状況を示す「施設情報更新テーブル」を作成して施設の名称等の変更状況を記録し、地図データ更新指定地域以外の地域においても、名称が変更になる施設に対しては新たな名称を付与するため、地図データの更新指定地域内外にかかわらず施設の名称を新たな名称に統一させることが可能となる。これにより、ユーザが同一の施設に対して異なる名称が混在することによる違和感や混乱を招くことを防止し、安全走行に寄与することが可能となる。
【0042】
図2及び図3に示した例では、指定された地域内の地図データ更新の際に、名称が変更になる施設はすべて同一の新たな名称に変更されている場合について説明したが、一律に名称が変更されるとは限らない。例えば、同一の名称の施設が複数の異なる名称に変更される場合や施設の移転や閉鎖等によってその場所に存在しなくなる場合も起こり得る。
【0043】
図4(a)は、図2(a)と同じく地図データ更新指定地域21の現地図データを表示した図である。図4(b)は、図4(a)に示す現地図データに対して地図データを更新した一例であり、地点P1及び地点P2にある元の名称が「HT」の施設が、地点P1については名称が「HM」に変更になり、地点P2については名称の変更がなく「HT」のままとなっている例である。また、新たな道路22が追加され、新たな施設も地点P4に追加されている。
【0044】
図4(b)では、地図データ更新指定地域21に含まれている同一名称の施設が2か所であり1つの施設の名称が変更されているが、同一名称の施設が3ヵ所以上あり、2以上の異なる名称に変更される場合も発生し得る。
【0045】
このように、同一の施設の名称が複数の異なる名称に変更された場合は、指定された地域の範囲外に存在する同一の施設についてどの名称に変更すればよいかを自動的に判定することはできないため、この場合はユーザに問い合わせるようにする。その際、名称の変更をするかしないかを問い合わせたり、名称の変更をする場合はすべての施設の名称を一律に同一名称に変更するか、施設毎に名称を変更する等の問い合わせを行う。
【0046】
また、図4(c)は、地点P1については施設そのものがなくなっており、地点P2については施設の名称が「HT」から「HM」に変更されている。図4(c)のように、名称が変更されるものと施設そのものが存在しなくなる状況が混在する場合には、変更される名称が同一の施設に対してすべて同一であれば、一律に名称が変更されたものと判定し、指定された地域の範囲外に存在する同一の施設について名称を変更する。なお、この場合であっても、指定された地域の範囲外に存在する同一の施設についての名称を変更するか否かをユーザに問い合わせるようにしてもよい。
【0047】
また、指定された地域内で施設がすべて存在しなくなった場合には、その地域内だけで存在しなくなったのか、全国的に存在しなくなったのかの判断ができない。そこで、指定された地域の範囲外に存在する同一の施設をすべて削除するか、そのままの状態にしておくかをユーザに問い合わせる。
【0048】
次に、車載用ナビゲーション装置が行う地図データ更新処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
まず、最初のステップS11では、地図更新データを基に、指定された地域の地図データを更新する。新たな地図データである地図更新データは、携帯電話などの通信機5を介して外部から取得してもよいし、DVD−ROMなどの記録媒体(不図示)から取得するようにしてもよい。取得した地図更新データが全国を対象としておらず一部の地域の場合、そのすべての範囲を更新対象の地域としてもよいし、その範囲内の一部の地域を指定するようにしてもよい。
【0050】
次のステップS12では、地図更新データと更新対象の現地図データにおいて、位置を示すデータが同一の施設を検出する。具体的には、地図更新データのうち指定された地域に対応する現地図データをディスク1aの地図データベースから抽出してバッファメモリ11に読み出し、現地図データに含まれている施設の位置情報と地図更新データに含まれている施設の位置情報とが一致する施設を抽出する。
【0051】
次のステップS13では、地図更新データと更新対象の現地図データの両データから施設の名称を関連付けた「施設情報更新テーブル」を作成して記憶部17に格納する。
【0052】
ステップS12において地図更新データ及び現地図データから抽出した施設のデータを基に、位置情報、現地図データでの施設名称、地図更新データでの施設名称を関連付けて施設情報更新テーブルを作成する。例えば、施設の位置の経度がX1,緯度がY1であり、地図更新データに含まれている当該位置の施設の名称が「HM」、現地図データに含まれている当該位置の施設の名称が「HT」のとき、施設情報更新テーブルとして、「位置(X1,Y1)、旧施設名称:HT、新施設名称:HM」と記録する。また、地図更新データに当該位置の施設名称が登録されていないときは、施設情報更新テーブルとして、例えば、「位置(X1,Y1)、旧施設名称:HT、新施設名称:−」と記録する。
【0053】
次のステップS14では、施設情報更新テーブルから順に施設を抽出する。抽出した施設ごとに以下のステップS15からステップS19の処理を繰り返して実行する。
【0054】
次のステップS15では、ある施設の名称が地図データ更新によってすべて新たな同一の名称に変更されたか否かを判定する。施設情報更新テーブルから抽出した一つの施設に対し、その旧施設名称が同一の施設を施設情報更新テーブルから抽出する。これらの旧施設名称に関連する新施設名称を参照し、すべて新たな同一の名称になっているか否かによって判定する。新たな同一の名称に変更されていれば、ステップS16に移行し、新たな同一の名称に変更されていなければ、ステップS17に移行する。
【0055】
次のステップS16では、ステップS15の判定によって名称が一律に変更されたとみなされた施設であって、指定された地域の範囲外に存在する施設の名称を変更する。
【0056】
一方、ステップS15において施設の名称がすべて新たな同一の名称に変更されていないときはステップS17に移行し、施設の名称が複数の異なる名称に変更されたか否かを判定する。複数の異なる名称に変更される場合として例えば図4(b)に示すように、新施設名称が旧施設名称と同じものと異なるものとが混在する場合がある。この判定は、旧施設名称が同一の施設を施設情報更新テーブルから抽出し、これらの旧施設名称に関連する新施設名称を参照して、異なる名称になっているか否かによって行う。
【0057】
複数の異なる名称に変更されたときはステップS18に移行する。また、複数の異なる名称に変更されていないときは、その施設に関しては名称の変更がなかったものと判定され、本地図データ更新処理は終了する。
【0058】
次のステップS18では、指定された地域の範囲外における当該施設の名称を変更するか否かをユーザに問い合わせる。指定された地域において同一の施設の名称が複数の異なる名称に更新されているため、一律に変更されたと判断することはできない。そこで、名称を変更するか否か、名称を変更する場合には、どの名称に変更するか、また、一律に変更するか、施設毎に変更するか否かをユーザに確認する。
【0059】
次のステップS19では、名称を変更する指示があった場合、その施設の名称を変更して本地図データ更新処理は終了する。
【0060】
なお、ステップS15において、施設の名称がすべて新たな同一の名称に変更されたとき、一律に変更されたとみなして自動的に指定された地域の範囲外の同一の施設の名称を変更しているが、この場合であっても名称を変更するか否かをユーザに問い合わせるようにしてもよい。
【0061】
また、ステップS16及びステップS19において、指定された地域の範囲外における施設の名称を変更しているが、指定された地域の範囲外についてもどの地域を対象とするかを指定するようにしてもよい。例えば、指定された地域が「いわき市」等の行政区画のとき、指定された地域の範囲外の地域として「福島県」等の行政区画を指定するようにしてもよい。
【0062】
以上、図5を参照して説明したように、本実施形態の地図データ更新方法では、指定された地図データ更新の地域において、地図データを更新するとともに、その範囲に含まれている施設の変更前の名称と変更後の名称との対応関係(施設情報更新テーブル)を作成している。この施設情報更新テーブルを参照して、指定された地域の範囲外においても、名称が変更された施設に対して名称の変更を行うようにしている。これにより、地図データの指定領域内外にかかわらず施設の名称を新たな名称に統一させることが可能となり、ユーザが同一の施設に対して異なる名称が混在することによる違和感や混乱を招くことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】指定した地域の地図データ更新における施設の名称変更を説明する図(その1)である。
【図3】指定した地域の範囲外の地域の施設の名称の更新を説明する図である。
【図4】指定した地域の地図データ更新における施設の名称変更を説明する図(その2)である。
【図5】地図データ更新処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
100…車載用ナビゲーション装置、
1…HDD、
1a…ディスク(記憶手段)、
1b…地図データ読取制御部、
2…操作部(情報入力手段)、
11…バッファメモリ、
12…制御部(制御手段)、
17…記憶部、
21…地図データ更新指定地域、
23…施設名称変更対象範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設のデータを含む地図データが格納された記憶手段と、
ユーザが指示する情報を入力する情報入力手段と、
地図更新データを用いて前記情報入力手段を介して指定された所定地域の前記地図データを更新する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記所定地域の前記地図データを更新するとともに、当該所定地域の範囲内に存在する施設の名称の変更を検出して旧施設名称と新施設名称とを関連付けた施設情報更新テーブルを作成し、当該所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を前記施設情報更新テーブルを参照して前記旧施設名称から新施設名称に変更することを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記地図更新データ及び前記記憶手段に格納されている更新対象となる地図データのうち位置を示すデータが同一の施設を検出し、更新対象となる地図データに存在する当該施設の名称を旧施設名称とし、更新データに存在する当該施設の名称を新施設名称とすることを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、同一の施設について名称がすべて新たな同一の名称に変更されたとき、前記所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を変更することを特徴とする請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御手段は、同一の施設について名称が異なる名称に変更されたものと、施設が存在しなくなったものとが混在するとき、当該施設の名称が一律に変更されたものと判定し、前記所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設と同一の施設の名称を変更することを特徴とする請求項3に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御手段は、同一の施設について名称が複数の異なる名称に変更されたとき、前記所定地域の範囲外に存在する前記施設名称が変更された施設のうち、前記情報入力手段を介して指示された施設の名称を変更することを特徴とする請求項4に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記情報入力手段を介して前記所定地域の範囲外における前記施設の名称の更新をする旨の指示があったとき、当該更新を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記所定地域の範囲外の地域は、前記情報入力手段を介して指定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
指示された所定地域の地図データを更新するステップと、
前記更新において、名称が変更された施設を検出するステップと、
前記施設の旧施設名称と新施設名称とを関連付けた施設情報更新テーブルを作成するステップと、
前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップと、
を有することを特徴とする地図データ更新方法。
【請求項9】
前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を
新施設名称に変更するステップは、
前記更新において、同一の施設について名称が異なる名称に変更されたものと、施設が存在しなくなったものとが混在するとき、当該施設を更新対象施設とするステップと、
前記所定地域以外の地域に存在する前記更新対象施設の名称を新施設名称に変更するステップであることを特徴とする請求項8に記載の地図データ更新方法。
【請求項10】
前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップは、
前記更新において、同一の施設の名称がすべて新たな同一の名称に変更されたとき、当該施設を更新対象施設とするステップと、
前記所定地域以外の地域に存在する前記更新対象施設の名称を新施設名称に変更するステップであることを特徴とする請求項8に記載の地図データ更新方法。
【請求項11】
前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップの前に、
前記所定地域以外の地域の施設のうち名称の更新を行う施設をユーザが指示する情報を入力する情報入力手段を介して選択するステップを有することを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の地図データ更新方法。
【請求項12】
前記所定地域以外の地域に存在する前記名称が変更された施設と同一の施設の名称を新施設名称に変更するステップの前に、
前記所定地域以外の地域のうち施設名称の変更を行う特定の地域をユーザが指示する情報を入力する情報入力手段を介して決定するステップを有することを特徴とする請求項11に記載の地図データ更新方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−112917(P2010−112917A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287543(P2008−287543)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】