説明

車載用電子機器

【課題】車両走行中の安全性を確保しつつ、使い勝手を確保する上で有利な車載用電子機器を提供する。
【解決手段】瞳孔検出手段42は、運転者Dの瞳孔の向きと大きさを検出し、瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータと瞳孔の大きさを示す瞳孔サイズデータとを生成するものである。視線判定手段38は、画像処理手段48から供給される瞳孔向きデータと瞳孔サイズデータとに基づいて運転者Dの視線が車両の正面を向いているか否かを判定するものである。操作入力制御手段40は、視線判定手段48によって運転者Dの視線が車両の正面を向いていると判定された場合に操作入力部23に対する操作を許容し、視線判定手段48によって運転者Dの視線が車両の正面を向いていないと判定された場合に操作入力部23に対する操作を禁止するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用電子機器として、例えば車両用カーナビゲーション装置が提供されている。
このような車両用カーナビゲーション装置として、車両走行中の安全性を確保する観点から、車両走行中は車両用カーナビゲーション装置の操作を受け付けないようにしたものが提案されている。
この場合、車両走行中、例えば、助手席に座っている搭乗者が車両用カーナビゲーション装置を操作することも禁止されてしまう不都合がある。
そこで、運転者が運転操作を行っている場合には、運転者以外の搭乗者による車両用カーナビゲーション装置に対する操作の一部または全部を許容するようにしたものが種々提案されている。
このような車両用カーナビゲーション装置の具体的構成として、ステアリングホイールに該ステアリングホイールを把持する運転者の手を検出する応力センサからなるセンサ手段を設け、例えば、センサ手段により運転者の左右両手の双方がステアリングホイールにあることが検出された場合には車両用カーナビゲーション装置に対する操作を許容し、センサ手段により運転者の左右両手の双方がステアリングホイールにあることが検出されない場合には車両用カーナビゲーション装置に対する操作を規制するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
また、運転者の顔を検出する顔検出手段と、該顔検出手段により検出された運転者の顔の向きが車両の正面以外に向いているか否かを判定する顔向き判定手段と、該顔向き判定手段による判定された運転者の顔が車両の正面を向いていない場合の時間を積算して総脇見時間を算出する総脇見時間算出手段とを設け、総脇見時間が規定時間以下であるか否かに応じて車両用カーナビゲーション装置に対する操作を許容あるいは規制するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−271488号公報
【特許文献2】特開2007−69756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の従来技術では、運転者の手がステアリングホイールのうちセンサ手段以外の箇所にある場合には、車載用電子機器の操作が規制されてしまい、運転者以外の搭乗者による操作も規制されてしまう不都合がある。
また、前者の従来技術では、当初、運転者の手がステアリングホイールのうちセンサ手段の箇所にありしたがって運転者以外の搭乗者による操作が行われているにも拘わらず、時間経過と共に運転者の手がステアリングホイールのうちセンサ手段の箇所以外の箇所に動いてしまうと、操作の途中で操作が規制されてしまう不都合もある。
また、後者の従来技術では、運転者の顔が車両の正面を向いていれば、運転者が視線を操作対象である車両用カーナビゲーション装置に向けて操作を行うことが許容されてしまう不都合が懸念される。
また、後者の従来技術では、運転者がカーオーディオ機器などの操作を行うために顔の向きを変えた場合であっても、車両用カーナビゲーション装置に対する操作が規制されてしまい運転者以外の搭乗者による操作が行えなくなる不都合もある。
したがって上記従来技術では、車両走行中の安全性および使い勝手の双方を確保する上で十分なものとはいえなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両走行中の安全性を確保しつつ、使い勝手を確保する上で有利な車載用電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するため、本発明は、入力操作を受け付ける操作入力部と、前記操作入力部に対する操作を許容あるいは禁止する操作入力制御手段とを備える車載用電子機器であって、運転者の瞳孔の向きと瞳孔の大きさとを検出し瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータと瞳孔の大きさを示す瞳孔サイズデータとを生成する瞳孔検出手段と、前記瞳孔向きデータと前記瞳孔サイズデータとに基づいて前記運転者の視線が車両の正面を向いているか否かを判定する視線判定手段とを備え、前記操作入力制御手段は、前記視線判定手段によって前記運転者の視線が車両の正面を向いていると判定された場合に前記操作入力部に対する操作を許容し、前記視線判定手段によって前記運転者の視線が車両の正面を向いていないと判定された場合に前記操作入力部に対する操作を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、瞳孔向きデータと瞳孔サイズデータとに基づいて運転者の視線が車両の正面を向いているか否かを判定し、その判定結果に基づいて操作入力部に対する操作を許容あるいは許容するようにしたので、運転中に操作入力部に対する操作を行うことを確実に禁止しつつ、運転者を除く搭乗者による操作入力部に対する操作を許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、本発明が車両用ナビゲーション装置に適用された場合について説明する。
図1は本発明の実施の形態である車載用電子機器10の構成を示すブロック図、図2は車室2内の平面図、図3は照明手段44および撮像装置46の配置を示す説明図である。
図1に示すように車載用電子機器10は、ナビゲーション用ECU(電子コントロールユニット)12、GPS受信機14、外部記憶装置16、ディスプレイ18、タッチパネル20、操作スイッチ22、TVチューナー24、ディスクドライブ装置26、瞳孔検出手段42などを含んで構成されている。
【0007】
GPS受信機14は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星(NAVSTAR)から受信した信号に基づいて緯度データ、経度データ、高度データを算出すると共に、受信地点の移動速度(車両の走行速度)を表す速度データおよび移動方位を表す方位データを生成しそれらデータをナビゲーション用ECU12に供給するものである。
【0008】
外部記憶装置16は、地図をディスプレイ18に表示させるための地図データ、交差点データ、道路データ、住所データなどのナビゲーションに必要なさまざまなデータを記憶するものである。
外部記憶装置16は、前記各データが格納されたCD−ROMやDVD−ROMなどのディスク状記録媒体と、該ディスク状記録媒体からデータを読み出すディスクドライブとで構成され、あるいは、前記各データが格納されたハードディスク装置で構成されるなど従来公知のさまざまな構成が採用可能である。
【0009】
ディスプレイ18は、図2に示すように、運転席4と助手席6との中間箇所に臨むインストルメントパネル8の部分に組み込まれている。
ディスプレイ18は、表示装置1802と、該表示装置1802を保持する筐体1804とを含んで構成されている。
表示装置1802は、外部記憶装置16から読み出されるナビゲーション用の各種データ、あるいは、TVチューナー24から供給される映像データ、あるいは、ディスクドライブ装置26から供給される映像データが、ナビゲーション用ECU12を介して選択的に供給されることでそれらデータを表示するものである。
表示装置1802としては、液晶表示装置など従来公知のさまざまな表示装置が採用可能である。
筐体1804は、表示装置1802の表示面の外周を矩形枠状に囲む前パネル1806を含んでいる。
【0010】
タッチパネル20は、図2に示すように、表示装置1804の表示面を覆うように設けられ、該タッチパネル20に指が接触されると、指が接触したタッチパネル20上の位置に対応した検出信号を生成してナビゲーション用ECU12に供給するものである。
操作スイッチ22は、筐体1804の前パネル1806に複数個設けられており、各操作スイッチ22は、操作されると検出信号を生成してナビゲーション用ECU12に供給するものである。
本実施の形態において、これらタッチパネル20および各操作スイッチ22は、運転者Dあるいは搭乗者による入力操作を受け付ける操作入力部23を構成している。
なお、操作入力部23としては、タッチパネルや操作スイッチの他、従来公知のさまざまな操作部材が採用可能である。
また、本実施の形態では、操作入力部23は、車両のナビゲーションを行うためのナビゲーション用操作入力部を構成している。
【0011】
TVチューナー24は、テレビジョン放送局から受信した信号に基づいて映像データなどを生成し、ナビゲーション用ECU12に供給するものである。
ディスクドライブ装置26は、DVDなどのディスク状記録媒体から読み出した映像データなどを生成し、ナビゲーション用ECU12に供給するものである。
【0012】
ナビゲーション用ECU12は、例えば、CPU、制御プログラムなどを格納するROM、ワーキングエリアを提供するRAM、周辺回路とのインタフェースをとるインタフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されたものであり、前記CPUが制御プログラムを実行することにより機能する。
すなわち、ナビゲーション用ECU12は、上述したGPS受信機14、外部記憶装置16、ディスプレイ18、タッチパネル20、操作スイッチ22、TVチューナー24、ディスクドライブ装置26の制御を司るナビゲーション制御手段28として機能するほか、後述する基準瞳孔サイズ設定手段35、瞳孔大きさ記憶手段36、視線判定手段38、操作入力制御手段40として機能する。
【0013】
さらに、ナビゲーション用ECU12は、車内LANであるCAN(Controller Area Network)を介して上位ECU30と通信可能に接続されている。
上位ECU30は、ナビゲーション用ECU12以外の不図示の複数のECUとCANにより通信可能に接続されており、いわゆるゲートウェイ(ゲートウェイコンピュータ)を構成しており、言い換えると、上位ECU30は、車載機器制御装置ETACS(Electronics Time and Alarm Control System)を構成している。
本実施の形態では、上位ECU28は、車両の走行速度を検出する車速センサ32および変速段の位置を検出するシフトポジションセンサ34とそれぞれCANを介して通信可能に接続されている。
したがって、ナビゲーション用ECU12は、車速センサ32によって検出された車速データと、シフトポジションセンサ34によって検出された変速段の位置を示すシフトポジションデータとを上位ECU28を介して得ることになる。
【0014】
瞳孔検出手段42は、運転者Dの瞳孔の向きと大きさを検出し、瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータと瞳孔の大きさを示す瞳孔サイズデータとを生成するものである。
瞳孔検出手段42は、図1に示すように、照明手段44と、撮像装置46と、画像処理手段48とを含んで構成されている。
照明手段44は、図2、図3に示すように、運転者Dの左右の眼球に向けて照明光として赤外線光を照射するものである。
照明手段44は、運転席4に着座した運転者Dの左右の眼球に照明光を照射する箇所に配設されており、本実施の形態では、運転者Dの正面に臨むステアリングホイール50のコラムカバー52の部分に配設されている。
なお、照明手段44の配設箇所は、コラムカバー52の部分に限定されるものではなく、照明手段44によって運転席に着座した運転者Dの左右の眼球に照明光を照射可能な箇所であればよく、例えば、運転者Dの正面に臨むインストルメントパネル8の部分などでもよい。
【0015】
撮像装置46は、図3に示すように、運転者Dの眼球を撮像するものであり、被写体像を捉える撮像光学系と、該撮像光学系によって導かれた被写体像を撮像して画像信号を生成するCCDやC−MOSセンサなどの撮像素子と、該撮像素子から供給される画像信号に対して所定の信号処理を行い画像データを生成する信号処理部などを備えている。
撮像装置46は、図2に示すように、運転席4に着座した運転者Dの左右の眼球を撮像可能な箇所に配設されており、本実施の形態では、運転者Dの正面に臨むスステアリングホイール50のコラムカバー52の部分に配設されている。
なお、撮像装置46の配設箇所は、コラムカバー52の部分に限定されるものではなく、撮像装置46によって運転席に着座した運転者Dの左右の眼球を撮像可能な箇所であればよく、例えば、運転者Dの正面に臨むインストルメントパネル8の部分などでもよい。
【0016】
画像処理手段48は、撮像装置46から供給される画像データに対して画像処理を行うことにより、運転者Dの左右の眼球の瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータと、瞳孔の大きさを示す瞳孔サイズデータとを生成すると共に、それらデータをCANを介してナビゲーション用ECU12に供給するものである。
なお、眼球の画像データに対して画像処理を行うことにより、運転者Dの左右の眼球の瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータを得る技術としては、例えば、特開2008−29701、特開2008−29702など示されているように、眼球に赤外線を照射すると共に、眼球を撮像して得た画像データから、瞳孔の位置および角膜反射位置を検出し、その検出結果に基づいて視線、すなわち瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータを得るなど、従来公知のさまざまな技術が採用可能である。
また、眼球の画像データから瞳孔の大きさを示す瞳孔サイズデータを得る技術としては、眼球の画像データから抽出した特徴点に基づいて瞳孔の大きさを求めるなど、従来公知のさまざまな画像処理が採用可能である。
なお、画像処理手段48は、図1に示すようにナビゲーション用ECU12と別体に構成してもよいし、画像処理手段48をナビゲーション用ECU12によって構成してもよい。
【0017】
基準瞳孔サイズ設定手段35は、画像処理手段48で生成される瞳孔サイズデータのうち、運転者Dの視線が車室2内に向けられた状態で検出された瞳孔サイズデータを基準瞳孔サイズデータとして瞳孔大きさ記憶手段36に記憶するものである。
瞳孔大きさ記憶手段36は、例えば、ナビゲーション用ECU12が有するRAMなどによって構成することができる。
【0018】
視線判定手段38は、画像処理手段48から供給される瞳孔向きデータと瞳孔サイズデータとに基づいて運転者Dの視線が車両の正面を向いているか否かを判定するものである。
より詳細には、視線判定手段38は、瞳孔向きデータが車両の正面を向いていることを示し、かつ、瞳孔サイズデータが前記基準瞳孔サイズデータ以下であることをもって運転者Dの視線が車両の正面を向いていると判定し、そうでないときに運転者Dの視線が車両の正面を向いていないと判定する。
【0019】
操作入力制御手段40は、視線判定手段48によって運転者Dの視線が車両の正面を向いていると判定された場合に操作入力部23に対する操作を許容し、視線判定手段48によって運転者Dの視線が車両の正面を向いていないと判定された場合に操作入力部23に対する操作を禁止するものである。
【0020】
次に、図7の動作フローチャートを参照して示す車載用電子機器10の動作について説明する。
初めに、ナビゲーション用ECU12は、基準瞳孔サイズの検出を行う(ステップS10)。
すなわち、ナビゲーション用ECU12は、車両の停止中において、運転者Dが運転席4に着座した状態で左右の眼球の視線を車室2内に向けた状態で、照明手段44により照明光を各眼球に照射し撮像装置46によって各眼球を撮像し、これにより得られた画像データを画像処理手段48が画像処理することにより得られた瞳孔サイズデータを基準瞳孔サイズデータとして検出する。
次いで、ナビゲーション用ECU12は、前記基準瞳孔サイズデータを瞳孔サイズデータ記憶手段36に記憶させる(ステップS12)。
【0021】
次に、ナビゲーション用ECU12は、車速センサ32から供給される車速データに基づいて、車両の走行速度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14の判定結果が否定(「N」)であれば、ナビゲーション用ECU12は、操作入力部23に対する操作を許容する(ステップS22)。
また、ナビゲーション用ECU12は、ディスプレイ18に、地図や道路などを含むナビゲーション画面、あるいは、TVチューナー24で得られた映像データ、あるいは、ディスクドライブ装置26によりDVDなどから再生された映像データの何れかを表示させる(ステップS24)。
すなわち、車両の走行速度が所定値以上でなければ(車両の走行速度が所定値未満であれば)、運転者Dあるいは助手席6に着座している搭乗者の何れが操作入力部23に対して操作を行ってもよい。
また、車両の走行速度が所定値未満であれば、ディスプレイ18にナビゲーション画面、テレビやDVDの映像データを表示させていてもかまわない。
【0022】
ステップS14の判定結果が肯定(「Y」)であれば、ナビゲーション用ECU12は、瞳孔検出手段42による瞳孔向きデータおよび瞳孔サイズデータの検出を行う(ステップS16)。
そして、ナビゲーション用ECU12は、検出された瞳孔向きデータに基づいて運転者Dの視線が車両の正面を向いているか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18の判定結果が肯定(「Y」)であれば、ナビゲーション用ECU12は、検出された瞳孔サイズデータが瞳孔サイズデータ記憶手段36から読み出した基準瞳孔サイズデータよりも小さいか否かを判定する(ステップS20)。
ここで、検出された瞳孔サイズデータが基準瞳孔サイズデータよりも小さければ、図4に示すように、運転者Dの視線は車両の正面でかつ車室2の外方を向いていることになる。
これとは逆に、検出された瞳孔サイズデータが基準瞳孔サイズデータ以上であれば、図5に示すように、運転者Dの視線は車室2内を向いていることになる。
これは、昼間、夜間の何れのであっても、車室2内よりも車室2外の方が明るい場合がほとんどであることから、視線が車室2内を向いているときの運転者Dの瞳孔の大きさに比較して、視線が車室2外を向いているときの運転者Dの瞳孔の大きさの方がより大きくなることによるものである。
【0023】
ステップS20の判定結果が肯定(「Y」)であれば、ナビゲーション用ECU12は、操作入力部23に対する操作を許容する(ステップS22)。
また、ナビゲーション用ECU12は、ディスプレイ18に、地図や道路などを含むナビゲーション画面、あるいは、TVチューナー24で得られた映像データ、あるいは、ディスクドライブ装置26によりDVDなどから再生された映像データの何れかを表示させる(ステップS24)。
すなわち、運転者Dの視線は車両の正面でかつ車室2外に向いているため、助手席の搭乗者による操作入力部23に対する操作が許容されることになる。
また、運転者Dを除く搭乗者がディスプレイ18の画面に表示されるテレビやDVDなどの映像を見て楽しむことができる。
【0024】
一方、ステップS18の判定結果が否定(「N」)、あるいは、ステップS20の判定結果が否定(「N」)であれば、ナビゲーション用ECU12は、操作入力部23に対する操作を禁止する(ステップS26)。
また、ナビゲーション用ECU12は、ディスプレイ18に、地図や道路などを含むナビゲーション画面のみを表示させる(ステップS28)。
すなわち、運転者Dの視線が車両の正面を向いていないか、あるいは、運転者Dの視線が車両の正面を向いているが車室2内に向けられているため、操作入力部23に対する操作を禁止することで安全性を確保している。
また、運転者Dの視線が車両の正面を向いていないか、あるいは、運転者Dの視線が車両の正面を向いているが車室2内に向けられているということは、運転者Dの視線がディスプレイ18の画面に向けられている可能性があるため、ディスプレイ18の画面にナビゲーション画面のみを表示させている。
【0025】
なお、ステップS16において、運転者Dが頭部を上下左右に大きく傾けるなどして、運転者Dの眼球が撮像装置46の撮像可能な範囲から外れることにより、図6に示すように、瞳孔検出手段42による瞳孔向きデータおよび瞳孔サイズデータの検出が不能となることも考えられる。
この場合にも、ナビゲーション用ECU12は、操作入力部23に対する操作を禁止する(ステップS24)。
すなわち、この場合も、運転者Dの視線が車両の正面を向いていないことが明らかであるため、操作入力部23に対する操作を禁止することで安全性が確保されている。
【0026】
また、ステップS14、S16、S18、S20、S22の処理は、言い換えると、操作入力制御手段40は、車両の走行速度が所定値以上である場合に、視線判定手段36によって運転者Dの視線が車両の正面を向いていると判定された場合に操作入力部23に対する操作を許容し、視線判定手段36によって運転者Dの視線が車両の正面を向いていないと判定された場合に操作入力部23に対する操作を禁止し、車両の走行速度が所定値未満である場合に、視線判定手段36の判定結果に拘わらず、操作入力部23に対する操作を許容するものである。
【0027】
また、本実施の形態では、ステップS10、S12を実行するナビゲーション用ECU12が基準瞳孔サイズ取得手段37として機能する。
また、ステップS18、S20を実行するナビゲーション用ECU12が視線判定手段38として機能する。
また、ステップS14、S22、S26を実行するナビゲーション用ECU12が操作入力制御手段40として機能する。
【0028】
以上説明したように本実施の形態によれば、瞳孔向きデータと瞳孔サイズデータとに基づいて運転者Dの視線が車両の正面を向いているか否かを判定し、運転者Dの視線が車両の正面を向いていると判定された場合に操作入力部23に対する操作を許容し、運転者Dの視線が車両の正面を向いていないと判定された場合に操作入力部23に対する操作を禁止するようにした。
したがって、運転者Dが運転中に操作入力部23に対する操作を行うことを確実に禁止しつつ、運転者Dを除く搭乗者による操作入力部23に対する操作を許容することができ、車両走行中の安全性を確保しつつ、使い勝手を確保する上で有利となる。
【0029】
特に、ステアリングホイールに設けた応力センサによる運転者の左右両手の検出結果に基づいて操作入力部に対する操作を規制する従来技術では、当初、運転者の手がステアリングホイールのうちセンサ手段の箇所にありしたがって運転者以外の搭乗者による操作が行われているにも拘わらず、時間経過と共に運転者の手がステアリングホイールのうちセンサ手段の箇所以外の箇所に動いてしまうと、操作の途中で操作が規制されてしまう不都合があった。
また、運転者の顔の向きの判定結果に基づいて操作入力部に対する操作を規制する従来技術では、運転者の顔が車両の正面を向いていれば、運転者が視線を操作対象に向けて操作を行うことが許容されてしまう不都合があり、また、運転者がカーオーディオ機器などの操作を行うために顔の向きを変えた場合であっても、車載用電子機器に対する操作が規制されてしまい運転者以外の搭乗者による操作が行えなくなる不都合があった。
これら従来技術に対して、本実施の形態では、運転者の瞳孔の向きと大きさを検出しその検出結果に基づいて運転者の視線の向きを判定し、その判定結果に基づいて操作入力部に対する操作の許容、禁止を行うため、上記不都合を解消することができ、車両走行中の安全性を確保しつつ、使い勝手を確保する上でより一層有利となる。
【0030】
なお、本実施の形態では、ステップS14において、ナビゲーション用ECU12が、車速センサ32から供給される車速データに基づいて、車両の走行速度が所定値以上であるか否かを判定した。
しかしながら、ステップS14の処理を、ナビゲーション用ECU12が、シフトポジションセンサ34から供給されるシフトポジションデータに基づいて車両が走行しているか、停止しているかを判定するものとしてもよい。
この場合、ステップS14により車両が走行していると判定された場合には、ステップS16に移行し、ステップS14により車両が停止していると判定された場合には、ステップS22に移行するようにすればよい。
このような処理を行うと、車両が停止していない限り、言い換えると、僅かな速度で走行していても、運転者Dの視線の向きが判定され、その判定結果に基づいて操作入力部23に対する操作が許容あるいは禁止されることになる。
【0031】
また、本実施の形態では、車載用電子機器が車両用ナビゲーション装置に適用された場合について説明したが、本発明は、カーオーディオ機器などの車載用電子機器に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態である車載用電子機器10の構成を示すブロック図である。
【図2】車室2内の平面図である。
【図3】照明手段44および撮像装置46の配置を示す説明図である。
【図4】運転者Dの視線が車両の正面で車室2外を向いた状態を示す説明図である。
【図5】運転者Dの視線が車室2内を向いた状態を示す説明図である。
【図6】運転者Dの眼球が撮像装置46の撮像可能な範囲から外れた状態を示す説明図である。
【図7】車載用電子機器10の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10……車載用電子機器、23……操作入力部、38……視線判定手段、40……操作入力制御手段、42……瞳孔検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力操作を受け付ける操作入力部と、前記操作入力部に対する操作を許容あるいは禁止する操作入力制御手段とを備える車載用電子機器であって、
運転者の瞳孔の向きと瞳孔の大きさとを検出し瞳孔の向きを示す瞳孔向きデータと瞳孔の大きさを示す瞳孔サイズデータとを生成する瞳孔検出手段と、
前記瞳孔向きデータと前記瞳孔サイズデータとに基づいて前記運転者の視線が車両の正面を向いているか否かを判定する視線判定手段とを備え、
前記操作入力制御手段は、前記視線判定手段によって前記運転者の視線が車両の正面を向いていると判定された場合に前記操作入力部に対する操作を許容し、前記視線判定手段によって前記運転者の視線が車両の正面を向いていないと判定された場合に前記操作入力部に対する操作を禁止する、
ことを特徴とする車載用電子機器。
【請求項2】
前記視線判定手段は、
前記瞳孔向きデータが前記車両の正面を向いていることを示し、かつ、前記瞳孔サイズデータが予め定められた基準瞳孔サイズデータ以下であることをもって前記運転者の視線が車両の正面を向いていると判定し、そうでないときに前記運転者の視線が車両の正面を向いていないと判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の車載用電子機器。
【請求項3】
前記基準瞳孔サイズデータは、前記瞳孔検出手段によって検出される前記瞳孔サイズデータのうち、運転者の視線が車室内に向けられた状態で検出された瞳孔サイズデータである、
ことを特徴とする請求項2記載の車載用電子機器。
【請求項4】
前記操作入力制御手段は、
車両の走行速度が所定値以上である場合に、前記視線判定手段の判定結果に基づく前記操作入力部に対する操作の許容あるいは禁止を行い、
車両の走行速度が所定値未満である場合に、前記視線判定手段の判定結果に拘わらず、前記操作入力部に対する操作を許容する、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の車載用電子機器。
【請求項5】
前記瞳孔検出手段は、前記運転者の眼球に向けて赤外線光を照射する照明手段と、前記運転者の眼球を撮像して画像データを生成する撮像装置と、前記画像データに対して画像処理を行うことにより前記瞳孔向きデータと前記瞳孔サイズデータを生成する画像処理手段とを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の車載用電子機器。
【請求項6】
前記車載用電子機器は車両用ナビゲーション装置であり、
前記車両用ナビゲーション装置は、車両のナビゲーションを行うためのナビゲーション用操作入力部を有し、
前記操作入力部は、前記ナビゲーション用操作入力部である、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の車載用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−89703(P2010−89703A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263411(P2008−263411)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】