説明

送信装置及び通信システム

【課題】ASK通信のとき、FSK通信に用いる搬送波を用いると、変調信号の一部が帯域濾波器により欠落することがあった。
【解決手段】送信すべきデータに応じて、第1の周波数を有する第1の搬送波、第2の周波数を有する第2の搬送波、又は、前記第1の周波数及び前記第2の周波数の間に位置する第3の周波数を有する第3の搬送波を発生させる発振回路と、前記第1及び第2の搬送波を送信する周波数変調、又は、前記送受信すべきデータに応じて前記第3の搬送波の振幅を変化させる振幅変調を行う変調回路と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、乗用車等のためのキーレスエントリーに用いられるFSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)及びASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)を選択的に実行する送信装置及び受信装置、並びに、両装置を含む通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示される従来の通信システムCS10は、送信装置TX10と、送信アンテナTA10と、受信装置RX10と、受信アンテナRA10とを含む。更に、送信装置TX10は、変調回路MD10と、送信帯域濾波器TB10とを有し、また、受信装置RX10は、受信帯域濾波器RB10と、復調回路DE10とを有する。
【0003】
FSK通信をするときには、変調回路MD10が、デジタル形式のベースバンド信号である、送信データD10(T)を用いて、2つの搬送波、即ち、第1の周波数fLを有する第1の搬送波及び第2の周波数fHを有する第2の搬送波による周波数偏移変調を施すことにより、変調信号Smod10を生成し、当該変調信号Smod10は、送信帯域濾波器TB10を通過して、送信アンテナTA10から送出され、他方で、受信アンテナRA10により受信され、受信帯域濾波器RB10を通過した後、復調回路DE10により復調されることにより、送信データD10(T)と同一な受信データD10(R)が得られる。
【0004】
上記と異なり、ASK通信をするときには、変調回路MD10が、送信データD10(T)を用いて、第1の周波数fL又は第2の周波数fHのいずれかの搬送波、例えば、第2の周波数fHの搬送波に振幅偏移変調を施すことにより、変調信号Smod20を生成し、当該変調信号Smod20は、送信帯域濾波器TB10を通過して、送信アンテナTA10から送信され、他方で、受信アンテナRA10により受信され、受信帯域濾波器RB10を通過した後、復調回路DE10により復調されることにより、送信データD10(T)と同一な受信データD10(R)が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10に示されるように、送信帯域濾波器TB10、RB10の通過帯域が、S/N改善等のために、第1の周波数fLから第2の周波数fHまでの範囲であることから、ASK通信での第2の周波数fHの変調信号Smod20の一部が、温度変化などで生じる周波数変動により、送信帯域濾波器TB10、RB10を通過することができず、送信データD10(T)と同一な受信データD10(R)を得ることができないという問題があった。
【0006】
また、受信装置RX10では、FSK通信及びASK通信での復調のために、それぞれ別個に、局部発振信号を生成する必要があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る送信装置は、
送信すべきデータに応じて、第1の搬送波、第2の搬送波、又は、前記第1の第2の搬送波及び前記第2の搬送波の間に位置する第3の搬送波を発生させる発振回路と、
前記第1及び第2の搬送波を送信する周波数変調、又は、前記送信すべきデータに応じて前記第3の搬送波の振幅を変化させる振幅変調を行う変調回路と、を含む。
【0008】
本発明に係る送信装置によれば、前記発振器が生成する、前記第1、第2の周波数間に位置する第3の周波数を用いて振幅変調を行うことにより、当該振幅変調された信号は、全て、前記第1の搬送波から前記第2の搬送波までの帯域を通過させる前記受信用濾波器を通過することから、前記送信すべきデータを、その一部を何ら失うことなく送信することができる。
【0009】
上記した本発明に係る送信装置では、
前記変調回路は、
圧電基板と、
前記圧電基板上に配置された第1、第2の櫛形電極ユニットであり、当該第1の櫛形電極ユニットが第1、第2の櫛形電極からなり、当該第2の櫛形電極ユニットが、前記第1、第2の櫛形電極に対応する第3、第4の櫛形電極からなる前記第1、第2の櫛形電極ユニットと、
前記圧電基板上で前記第1、第2の櫛形電極ユニットを協働して挟む位置に設けられた一対の反射器と、を有する弾性表面波素子型発振器を有し、
当該弾性表面波素子型発振器は、
前記第1の搬送波の生成を、前記第1、第2の櫛形電極間、及び、前記第3、第4の櫛形電極間への、弾性表面波を励起するための入力信号の印加を、前記第1の櫛形電極の電圧と前記第2の櫛形電極の電圧との第1の関係が、前記第3の櫛形電極の電圧と前記第4の櫛形電極の電圧との第2の関係と実質的に同相となるように行い、
前記第2の搬送波の生成を、前記第1、第2の櫛形電極間、及び、前記第3、第4の櫛形電極間への前記入力信号の印加を、前記第1関係が、前記第2の関係と実質的に逆相となるように行い、
前記第3の搬送波の生成を、前記第1、第2の櫛形電極間に前記入力信号を印加し、かつ、前記第3、第4の櫛形電極間に前記入力信号を実質的に印加しないことにより行う。
【0010】
上記した本発明に係る送信装置によれば、前記発振器が、上記した構成を有する弾性表面波素子型であり、かつ、当該発振器に前記入力信号を上記のような3つの態様で印加することにより、上記した第1、第2、第3の周波数を生成することから、換言すれば、3つの周波数を1個の発振器で生成することから、3つの周波数を2個以上の発振器で生成することに比して、送信装置を小型化することができ、かつ、コスト低減することができる。
【0011】
本発明に係る通信システムは、
上記した送信装置と、受信装置とを含む通信システムであって、
前記受信装置は、
前記第1の搬送波から前記第2の搬送波までの帯域を通過させるための受信用濾波器と、
前記第3の局部発振信号を生成する発振回路と、
当該第3の搬送波に基づき、前記受信用濾波器を通過した、前記第1の周波数及び前記第2の周波数で周波数変調された搬送波の復調、及び、前記受信用濾波器を通過した前記第3の周波数で振幅変調された搬送波の復調を行う復調回路と、を有する。
【0012】
本発明に係る通信システムによれば、受信装置では、従来と異なり、第3の局部発振信号を生成する前記1つの発振回路により、前記第1、第2の搬送波により周波数変調された信号、及び、前記第3の搬送波により振幅変調された信号を復調することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る通信システムの実施例について図面を参照して説明する。
【0014】
《構成》
図1は、実施例の通信システムの構成を示す。実施例の通信システムCS1は、図1に示されるように、送信すべきベースバンド帯域のデジタル信号である送信データD1(T)を、第1の周波数fL及び第2の周波数fHを用いたFSK通信、又は、第1、第2の周波数fL、fH間に位置する第3の周波数fMを用いたASK通信のいずれで送受信すべきかを規定するFSK/ASK切換信号FAS1に従って、送受信すべく、送信装置TX1と、送信アンテナTA1と、受信アンテナRA1と、受信装置RX1とを含む。
【0015】
送信装置TX1は、変調回路MD1と、送信帯域濾波器TB1とを有し、更に、変調回路MD1は、発振器OS1と、増幅回路AP1と、切換器SWT1とを備える。他方で、受信装置RXは、受信帯域濾波器RB1と、復調回路DE1と、発振器OS2とを有する。
【0016】
変調回路MD1では、発振器OS1は、FSK通信の場合、送信データD1(T)の「0」、「1」に応じて、第1、第2の周波数fL、fHのいずれかを有する搬送波を生成し、より詳しくは、送信データD1(T)が「0」のとき、第1の周波数fLを有する第1の搬送波を生成し、送信データD1(T)が「1」のとき、第2の周波数fHを有する第2の搬送波を生成する。このようにして、変調信号SmodFを形成する。
【0017】
変調回路MD1では、また、増幅回路AP1は、ASK通信の場合、送信データD1(T)の「0」、「1」に応じて、発振器OS1により生成された第3の周波数fMを有する第3の搬送波の振幅を「0」、「1」に変え、より詳しくは、送信データD1(T)が「0」のとき、第3の搬送波の振幅を「0」にし、送信データD1(T)が「1」のとき、第3の搬送波の振幅を「1」にする。このようにして、変調信号SmodAを形成する。
【0018】
切換器SWT1は、上記したFSK通信及びASK通信のいずれかの選択の旨を示すFSK/ASK切換信号FAS1に従って、送信データD1(T)を、発振器OS1又は増幅回路AP1に出力する。
【0019】
受信装置RX1では、受信帯域濾波器RB1は、前記変調信号SmodF又は前記変調信号SmodAを濾波し、復調回路DE1は、前記濾波された変調信号SmodF、SmodAを、発振器OS2が生成する第3の搬送波に従って復調する。
【0020】
後に詳述されるように、図7(A)及び7(B)に示されるような接続により、FSK通信を行い、他方で、図7(C)に示されるような接続により、ASK通信を行う。
【0021】
図2は、発振器の構成を示す。発振器OS1は、図2に図示の弾性表面波素子SD1と、当該弾性表面波素子SD1に並列接続された、インバータ素子のような増幅器(図示せず。)とからなり、前記弾性表面波素子SD1は、図2に示されるように、圧電基板SB1と、第1、第2の櫛形電極ユニットCEU1、CEU2と、第1、第2の反射器RF1、RF2とを含む。
図7(A)及び7(B)に示されるように、送信データD1(T)の「0」、「1」に応じて、回路接続を切り換えることで、FSKを実現させる。また、図7(C)に示されるような接続状態で、送信データD1(T)の「0」、「1」に応じて出力をON/OFFすることで、ASKを実現させることができる。
【0022】
圧電基板SB1は、例えば、レイリー型表面波で動作可能な面内回転STカット水晶板である。
【0023】
第1、第2の櫛形電極ユニットCEU1、CEU2は、いわゆる「横結合」(櫛形電極ユニットが弾性表面波の伝搬方向に対し垂直な方向に沿って配置されているタイプ)されており、第1の櫛形電極ユニットCEU1は、一対の第1、第2の櫛形電極CE1、CE2からなり、また、第2の櫛形電極ユニットCEU2もまた、一対の第3、第4の櫛形電極CE3、CE4からなる。そして第1の櫛形電極ユニットCEU1と第2の櫛形電極ユニットCEU2は、弾性表面波の伝搬方向に直角に互いに隣接するように配置されている。第1の櫛形電極CE1は、3つの電極指EF1、EF2、EF3と、それら電極指EF1〜EF3を電気的に接続するバスバーBB1とを備えている。電極指EF1〜EF3は、圧電基板SB1の幅方向に延びる形状であるとともに、圧電基板SB1の長手方向すなわち弾性表面波の伝搬方向に向かって周期的に配置されている。物理的な構成(配置及び形状)並びに電気的な機能の観点から、第1の櫛形電極CE1と第3の櫛形電極CE3とが対応し、また、第2の櫛形電極CE2と第4の櫛形電極CE4とが対応する。より具体的には、前記圧電基板SB1の長手方向の位置について、第1の櫛形電極CE1の電極指のそれぞれと、第3の櫛形電極CE3の電極指のそれぞれとが対応している。そして、前記圧電基板SB1の長手方向の位置について、第2の櫛形電極CE2の電極指のそれぞれと、第4の櫛形電極CE4の電極指のそれぞれとが対応している。
【0024】
第1、第2の反射器RF1、RF2は、圧電基板SB1上で、協働して前記第1、第2の櫛形電極ユニットCEU1、CEU2を挟む位置に設けられている。
【0025】
《弾性表面波素子の説明》
図3、図4、及び図5は、実施例1の弾性表面波素子の使用方法を示す。実施例1の弾性表面波素子SD1の使用方法は、より正確には、弾性表面波素子SD1及び端子T1a、T1bからなる弾性表面波デバイスSDEV1の使用方法は、(1)第1の周波数fLを有する第1の搬送波を生成する第1の使用態様、(2)前記第1の周波数fLより高い第2の周波数fHを有する第2の搬送波を生成する第2の使用態様、(3)前記第1の周波数fLと前記第2の周波数fHとの間に位置する第3の周波数fMを有する第3の搬送波を生成する第3の使用態様からなる。
【0026】
〈第1の使用態様〉
第1の使用態様では、図3に示されるように、入力信号源ISから与えられる交流入力信号Sinを印加するための端子T1a、T1bについて、端子T1aと、第2、第4の櫛形電極CE2、CE4とが電気的に接続されており、かつ、端子T1bと、第1、第3の櫛形電極CE1、CE3とが電気的に接続されている。
【0027】
弾性表面波素子SD1に端子T1a、T1bから交流入力信号Sinを印加すると、第1の櫛形電極CE1に供給される交流信号と「同相」の交流信号が、第3の櫛形電極CE3に印加される。また、第2の櫛形電極CE2に供給される交流信号と「同相」の交流信号が、第4の櫛形電極CE4に印加される。より具体的には、第1の櫛形電極CE1の電極指に印加される交流信号の位相と、第3の櫛形電極CE3の電極指に印加される交流信号の位相とが、同じである。更に、第2の櫛形電極CE2の電極指に印加される交流信号の位相と、第4の櫛形電極CE4の電極指に印加される交流信号の位相とが、同じである。例えば、第1の櫛形電極CE1の電圧値が−V1であり第2の櫛形電極CE2の電圧値が+V1であるときに、第3の櫛形電極CE3の電圧値が−V1であり第4の櫛形電極CE4の電圧値が+V1である。これにより、圧電基板SB1は、変位強度分布が「モードS0」になるように共振する。この結果、端子T1a、T1bに接続された電流電圧変換器のような検出器(図示せず。)で、出力信号として、モードS0に対応する第1の周波数fLである共振信号Soutを取り出すことができる。
【0028】
〈第2の使用態様〉
第2の使用態様では、図4に示されるように、第1の使用態様のときと異なり、端子T1aと、第2、第3の櫛形電極CE2、CE3とが電気的に接続されており、かつ、端子T1bと、第1、第4の櫛形電極CE1、CE4とが電気的に接続されている。
【0029】
第1の使用態様のときと同様に、弾性表面波素子SD1に端子T1a、T1bから、交流入力信号Sinを印加すると、第1の使用態様のときと異なり、第1の櫛形電極CE1に供給される交流信号と「逆相」の交流信号が、第3の櫛形電極CE3に印加される。また、第2の櫛形電極CE2に供給される交流信号と「逆相」の交流信号が、第4の櫛形電極CE4に印加される。より具体的には、第1の櫛形電極CE1の電極指に印加される交流信号の位相と、第3の櫛形電極CE3の電極指に印加される交流信号の位相との間に、180°の差がある。更に、第2の櫛形電極CE2の電極指に印加される交流信号の位相と、第4の櫛形電極CE4の電極指に印加される交流信号の位相との間に、180°の差がある。例えば、第1の櫛形電極CE1の電圧値が−V1であり第2の櫛形電極CE2の電圧値が+V1であるときに、第3の櫛形電極CE3の電圧値が+V1であり第4の櫛形電極CE4の電圧値が−V1である。これにより、圧電基板SB1は、変位強度分布が「モードA0」になるように共振する。この結果、端子T1a、T1bに接続された前記検出器で、出力信号として、モードA0に対応した、第1の周波数fLより高い第2の周波数fHである共振信号Soutを取り出すことができる。
【0030】
〈第3の使用態様〉
第3の使用態様では、図5に示されるように、第1、第2の使用態様のときと異なり、端子T1aと第2の櫛形電極CE2とが電気的に接続されており、端子T1bと第1の櫛形電極CE1とが電気的に接続されており、かつ、第3、第4の櫛形電極CE3、CE4は、開放されており、より正確には、第1、第2の櫛形電極CE1、CE2間の入力インピーダンスに比して、第3、第4の櫛形電極CE3、CE4間の入力インピーダンスが高くなっている。
【0031】
第1、第2の使用態様のときと同様に、弾性表面波素子SD1に端子T1a、T1bから、交流入力信号Sinを印加すると、第1、第2の使用態様のときと異なり、圧電基板SB1は、変位強度分布がモード(S0+A0)になるように共振する。モード(S0+A0)は、モードS0の変位強度分布とモードA0の変位強度分布とを足し合わせた変位強度分布を有する。この結果、端子T1a、T1bに接続された前記検出器で、出力信号として、前記第1の周波数fL及び前記第2の周波数fH間に位置する第3の周波数fMである共振信号Sout(S0+A0)を取り出すことができる。
【0032】
実施例1の弾性表面波素子SD1の使用方法では、図4を参照して説明したように、第3、第4の櫛形電極CE3、CE4間の入力インピーダンスが、第1、第2の櫛形電極CE1、CE2間の入力インピーダンスに比して大きい条件下で、前記第1、第2の櫛形電極CE1、CE2に交流入力信号Sinを与えることにより、圧電基板SB1の変位強度分布がモード(S0+A0)となる。これにより、前記モード(S0+A0)に対応する、従来の第1、第2の周波数fL、fHと異なる前記第3の周波数fMである共振信号Sout(S0+A0)を得ることが可能となる。なお、図4にて説明した弾性表面波素子SD1の使用方法では、第3、第4の櫛形電極CE3、CE4間は、電気的に開放されているため、その間の入力インピーダンスが著しく大きな値となっている。
【0033】
図6は、実施例の弾性表面波素子を備える弾性表面波デバイスを含む発振装置の構成を示し、図7は、実施例の弾性表面波デバイスの動作を示す。
【0034】
上記した実施例の第1〜第4の櫛形電極CE1〜CE4についての配線は、図6に示される構成における切換ユニットSWUの第1のスイッチ部SW1及び第2のスイッチ部SW2の接続状態をスイッチ制御部SWCNTによって切り換えることが可能な弾性表面波デバイスSDEV1により実現できる。
【0035】
第1のスイッチ部SW1は、第3の櫛形電極ユニットCE3に接続されたノードND1(3)、第4の櫛形電極ユニットCE4に接続されたノードND1(4)、及び開放端OT1のいずれかを、端子T1aに電気的に接続するスイッチである。
【0036】
第2のスイッチ部SW2は、第4の櫛形電極ユニットCE4に接続されたノードND2(4)、第3の櫛形電極ユニットCE3に接続されたノードND2(3)、及び開放端OT2のいずれかを、端子T1bに電気的に接続するスイッチである。
【0037】
そして、スイッチ制御部SWCNTは、第1のスイッチ部SW1の接続状態及び第2のスイッチ部SW2の接続状態を同期して切り換える制御部である。スイッチ制御部SWCNTは、次の3つの接続状態を有する。
【0038】
第1の接続状態は、図7(A)に示されるように、第1のスイッチ部SW1において第1の端子T1aと第3の櫛形電極ユニットCE3に接続されたノードND1(3)との間を電気的に接続し、かつ、第2のスイッチ部SW2において第2の端子T1bと第4の櫛形電極ユニットCE4に接続されたノードND2(4)との間を電気的に接続した状態である(モードS0)。このとき、共振周波数はfLとなる。
【0039】
第2の接続状態は、図7(B)に示されるように、第1のスイッチ部SW1において第1の端子T1aと第4の櫛形電極ユニットCE4に接続されたノードND1(4)との間を電気的に接続し、かつ、第2のスイッチ部SW2において第2の端子T1bと第3の櫛形電極ユニットCE3に接続されたノードN2(3)との間を電気的に接続した状態である(モードA0)。このとき、共振周波数はfHとなる。
【0040】
第3の接続状態は、図7(C)に示されるように、第1のスイッチ部SW1において第1の端子T1aと開放端OT1とを接続し、第2のスイッチ部SW2において第2の端子T1bと開放端OT2とを接続する状態である(モード(S0+A0))。このとき、共振周波数はfMとなる。
【0041】
スイッチ制御部SWCNTによって、第1のスイッチ部SW1と第2のスイッチ部SW2の接続状態を、第1〜第3の接続状態のいずれかに切り換えることにより、弾性表面波素子SD1の共振周波数をfL、fH及びfMのいずれかに切り換えることを実現している。これにより、圧電体基板上に2つの櫛歯電極ユニットCE1及びCE2を構成した1つの弾性表面波素子を使用して、3つの周波数fL、fL及びfMのいずれかの共振周波数で共振する弾性表面波デバイスを実現できる。
【0042】
なお図6の弾性表面波デバイスSDEV1の端子T1a、T1bに、増幅器として反転増幅器INを接続することにより、1つの弾性表面波素子SD1を用いて3つの周波数の発振信号を出力することができる発振装置OSC1を構成している。
【0043】
図1に戻り、送信帯域濾波器TB1は、例えば、チェビシェフ型であり、FSK通信での第1、第2の周波数fL、fHを用いた変調信号SmodFの占有帯域を通過させ、かつ、ASK通信での第3の周波数fMを用いた変調信号SmodAの占有帯域を通過させる。
【0044】
送信アンテナTA1は、例えば、回路基板(図示せず。)上に形成されたループアンテナであり、変調信号SmodF、SmodAを送信する。
【0045】
受信アンテナRA1は、送信アンテナTA1と同様に、例えば、ループアンテナであり、変調信号SmodF、SmodAを受信する。
【0046】
受信帯域濾波器RB1は、送信帯域濾波器TB1と同様な通過帯域特性を有する。
【0047】
復調回路DE1は、例えば、非同期式検波回路(例えば、包絡線検波回路)及び同期式検波回路(例えば、コスタスループ回路)であり、変調信号SmodF、SmodAを復調して、送信データD1(T)と同様な受信データD1(R)を再生する。
【0048】
発振器OS2は、例えば、上述した発振器OS1と同様な構成を有し、第3の周波数fMを有する第3の搬送波を生成する。
【0049】
《FSK通信の動作》
図8は、実施例の通信システムのFSK通信の動作を示す。以下、図8を用いて、実施例の通信システムのFSK通信の動作について説明する。
【0050】
ステップS10:変調回路MD1は、「FSK通信の選択」を示すFSK/ASK切換信号FAS1を受けると、当該切換信号FAS1に従って切換器SWT1を切り換えることにより、入来する送信データD1(T)を発振器OS1へ出力する。
【0051】
ステップS11:発振器OS1は、「FSK通信の選択」を示すFSK/ASK切換信号FAS1を受けていることから、送信データD1(T)の「0」、「1」に応じて、図7(A)及び図7(B)のように接続することで、FSK通信のための2つの搬送波、即ち、第1の周波数fL及び第2の周波数fHのいずれかの搬送波を生成し、これにより、変調信号SmodFを形成する。
【0052】
ステップS12:増幅回路AP1は、変調信号SmodFを固定の増幅率で増幅し、増幅された変調信号SmodFは、送信帯域濾波器TB1を通過して、送信アンテナTA1から送出される。
【0053】
ステップS13:変調信号SmodFは、受信アンテナRA1により受信され、また、受信帯域濾波器RB1を通過すると、発振器OS2が生成する第3の周波数fMを有する局部発振信号に基づき復調回路DE1により復調され、これにより、送信データD1(T)と同一な受信データD1(R)が再生される。
【0054】
《ASK通信の動作》
図9は、実施例の通信システムのASK通信の動作を示す。以下、図9を用いて、実施例の通信システムのASK通信の動作について説明する。
【0055】
ステップS20:変調回路MD1は、「ASK通信の選択」を示すFSK/ASK切換信号FAS1を受けると、当該切換信号FAS1に従って切換器SWT1を切り換えることにより、入来する送信データD1(T)を増幅回路AP1に出力する。
【0056】
ステップS21:発振器OS1は、「ASK通信の選択」を指示するFSK/ASK切換信号FAS1に基づき、図7(C)のように接続し、ASK通信のための第3の周波数fMを有する第3の搬送波を生成し、当該第3の搬送波を増幅回路AP1に出力する。
【0057】
ステップS22:増幅回路AP1は、「ASK通信の選択」の旨のFSK/ASK切換信号FAS1の下で、送信データD1(T)に基づき、第3の周波数fMの第3の搬送波に振幅偏移変調を施すことにより、変調信号SmodAを生成し、当該変調信号SmodAは、送信帯域濾波器TB1を通過し、更に、送信アンテナTA1から送出される。
【0058】
ステップS23:変調信号SmodAは、受信アンテナRA1により受信され、更に、受信帯域濾波器RB1を通過すると、発振器OS2が生成する第3の搬送波fMを有する局部発振信号に基づき復調回路DE1により復調され、これにより、送信データD1(T)と同一な受信データD1(R)が再生される。
【0059】
上述したように、実施例の通信システムCS1では、ASK通信のときに、FSK通信で用いられる第1、第2の周波数fL、fH間に位置する第3の搬送波fMを用いることから、従来の通信システムCS10におけるASKの通信のときに第1の搬送波fL及び第2の搬送波fHのいずれかの搬送波を用いることと異なり、変調信号SmodAは、何ら部分的な欠落を生じることなく、送信帯域濾波器TB1及び受信帯域濾波器RB1を通過することができる。
【0060】
また、実施例の通信システムCS1では、受信装置RX1は、従来と異なり、第3の周波数を有する局部発振信号だけで、周波数変調された信号SmodF及び振幅変調された信号SmodAの両信号を復調することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例の通信システムの構成を示す図。
【図2】実施例の発振器の構成を示す図。
【図3】実施例の弾性表面波素子の第1の使用態様を示す図。
【図4】実施例の弾性表面波素子の第2の使用態様を示す図。
【図5】実施例の弾性表面波素子の第3の使用態様を示す図。
【図6】実施例の発振装置の構成を示す図。
【図7】実施例の弾性表面波デバイスの動作を示す図。
【図8】実施例の通信システムのFSK通信の動作を示す図。
【図9】実施例の通信システムのASK通信の動作を示す図。
【図10】従来の通信システムの構成及び動作を示す図。
【符号の説明】
【0062】
CS1…通信システム、TX1…送信装置、MD1…変調回路、OS1…発振器、AP1…増幅回路、RX…受信装置、RB1…受信帯域濾波器、DE1…復調回路、OS2…発振器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべきデータに応じて、第1の周波数を有する第1の搬送波、第2の周波数を有する第2の搬送波、又は、前記第1の周波数及び前記第2の周波数の間に位置する第3の周波数を有する第3の搬送波を発生させる発振回路と、
前記第1及び第2の搬送波を送信する周波数変調、又は、前記送信すべきデータに応じて前記第3の搬送波の振幅を変化させる振幅変調を行う変調回路と、を含むことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記変調回路は、
圧電基板と、
前記圧電基板上に配置された第1、第2の櫛形電極ユニットであり、当該第1の櫛形電極ユニットが第1、第2の櫛形電極からなり、当該第2の櫛形電極ユニットが、前記第1、第2の櫛形電極に対応する第3、第4の櫛形電極からなる前記第1、第2の櫛形電極ユニットと、
前記圧電基板上で前記第1、第2の櫛形電極ユニットを協働して挟む位置に設けられた一対の反射器と、を有する弾性表面波素子型発振器を有し、
当該弾性表面波素子型発振器は、
前記第1の搬送波の生成を、前記第1、第2の櫛形電極間、及び、前記第3、第4の櫛形電極間への、弾性表面波を励起するための入力信号の印加を、前記第1の櫛形電極の電圧と前記第2の櫛形電極の電圧との第1の関係が、前記第3の櫛形電極の電圧と前記第4の櫛形電極の電圧との第2の関係と実質的に同相となるように行い、
前記第2の搬送波の生成を、前記第1、第2の櫛形電極間、及び、前記第3、第4の櫛形電極間への前記入力信号の印加を、前記第1関係が、前記第2の関係と実質的に逆相となるように行い、
前記第3の搬送波の生成を、前記第1、第2の櫛形電極間に前記入力信号を印加し、かつ、前記第3、第4の櫛形電極間に前記入力信号を実質的に印加しないことにより行うことを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
請求項1記載の送信装置と、受信装置とを含む通信システムであって、
前記受信装置は、
前記第1の周波数から前記第2の周波数までの帯域を通過させるための受信用濾波器と、
前記第3の周波数を有する局部発振信号を生成する発振回路と、
当該局部発振信号に基づき、前記受信用濾波器を通過した、前記第1の周波数及び前記第2の周波数で周波数変調された搬送波の復調、及び、前記受信用濾波器を通過した前記第3の周波数で振幅変調された搬送波の復調を行う復調回路と、を有することを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−141296(P2008−141296A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323086(P2006−323086)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】