説明

運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム

【課題】交差点を走行する車両の死角を補完し、安全に走行を行わせることを可能とした運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関するものである。
【解決手段】自車両54が交差点53に接近した場合であって、自車両が走行する道路が優先道路で、且つ自車両の走行する道路に交差する交差道路が非優先道路であり、更に自車両54が後方を走行する後続車両55を検出した場合に、検出した後続車両55に関する情報(位置座標や進行方向)を取得し、取得した後続車両に関する情報を、自車両が進入する側の交差道路60上に位置する他車両56〜58に提供するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他車両に関する情報を提供する運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両運転時の事故防止の観点から、車両の周辺に位置する人や自転車等の障害物をレーダや撮像したカメラの画像等によって検出し、障害物との衝突を防止するために運転者に対する警告や車両制御を行う運転支援装置を搭載する車両が増加している。
【0003】
また、このような運転支援装置を用いることにより、特に車両が交差点を走行する際において交差点に進入する他車両を案内することが行われていた。即ち、交差点においては、複数の方向から車両が交差点へと進入する。従って、運転者は交差点を通過する場合に他車両が進入する可能性のある全ての方向を視認し、他車両に対して注意を払う必要がある。しかしながら、交差点では車両から視認できない領域である死角が多数存在する。例えば、交差点の角に設置された建物や交差点を走行中の他車両によってこのような死角が形成される。そして、死角方向から他車両が交差点へ進入する場合には、運転者が他車両の進入に気付かない場合もあった。更に、死角方向に位置する他車両は、カメラやセンサによって検出することも難しかった。
【0004】
そこで、従来においては車両間で通信を行うことにより、他車両が検出した障害物に関する情報を取得し、自車両からでは検出できない位置にある車両に関する情報についても取得する技術についても提案されている。そして、車両間の通信で取得した情報に基づいて、交差点を走行する際に自車両の死角方向に位置する他車両等の障害物を案内することにより、他車両の接近を運転者に把握させ、他車両との接触を回避させることが可能となる。
【0005】
ここで、例えば特開2000−99898号公報には、右折待ち車両に対して死角方向に位置する車両の情報を提供する技術が記載されている。以下に、図7を用いて特開2000−99898号公報に記載された従来技術について説明する。図7に示すように交差点101で右折待ちをする右折待ち車両102と、対向車線から進入する直進車両103と、直進車両103の後方を走行する後続車両104とが位置する状況では、右折待ち車両102からは直進車両103が障害物となって直進車両103の後方が死角となる。従って、右折待ち車両102の運転者は交差点101に進入する後続車両104に気付かない虞がある。そこで、直進車両103が後続車両104を検出した場合に、後続車両104の情報を右折待ち車両102へと提供している。
【特許文献1】特開2000−99898号公報(第2頁〜第3頁、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、交差点を走行する車両について死角が形成される状況は上記特許文献1に示す状況以外にも存在する。例えば、図8に示すように優先道路111と非優先道路112とが交差する交差点113において、非優先道路112で一時停止中の一時停止車両114と、優先道路111から非優先道路112へと進入する左折車両115と、左折車両115の後方を走行する後続車両116とが位置する状況では、一時停止車両114からは左折車両115が障害物となって左折車両115の後方が死角となる。従って、一時停止車両114の運転者は交差点113に進入する後続車両116に気付かない虞がある。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、自車両が走行する道路と交差する交差道路上に位置する他車両に自車両の後続車両に関する情報を提供するので、交差点を走行する車両の死角を補完し、安全に走行を行わせることを可能とした運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る運転支援装置(1)は、自車両の後方に位置する後続車両に関する情報を取得する後続車両情報取得手段(11)と、自車両の進行方向前方にある交差点において自車両が走行する道路と交差する交差道路を特定する交差道路特定手段(11)と、前記交差道路特定手段によって特定された交差道路上に位置する他車両に前記後続車両に関する情報を提供する情報提供手段(11)と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る運転支援装置(1)は、請求項1に記載の運転支援装置において、自車両が走行する道路の道路種別を取得する走行道路種別取得手段(11)と、前記交差道路特定手段(11)によって特定された交差道路の道路種別を取得する交差道路種別取得手段(11)と、を有し、前記情報提供手段(11)は、自車が走行する道路の道路種別が優先道路であって、且つ前記交差道路特定手段によって特定された交差道路の道路種別が非優先道路である場合に、前記他車両に情報を提供することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る運転支援装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置において、前記情報提供手段(11)は、自車両が進行方向前方にある交差点を右折又は左折する場合に、前記交差道路特定手段(11)によって特定された交差道路の内、自車両が進入する側の道路上に位置する他車両に情報を提供することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る運転支援方法は、自車両の後方に位置する後続車両に関する情報を取得する後続車両情報取得ステップ(S9)と、自車両の進行方向前方にある交差点において自車両が走行する道路と交差する交差道路を特定する交差道路特定ステップ(S5)と、前記交差道路特定ステップによって特定された交差道路上に位置する他車両に前記後続車両に関する情報を提供する情報提供ステップ(S11)と、を有することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムは、自車両の後方に位置する後続車両に関する情報を取得する後続車両情報取得機能(S9)と、自車両の進行方向前方にある交差点において自車両が走行する道路と交差する交差道路を特定する交差道路特定機能(S5)と、前記交差道路特定機能によって特定された交差道路上に位置する他車両に前記後続車両に関する情報を提供する情報提供機能(S11)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、自車両が走行する道路と交差する交差道路上に位置する他車両に自車両の後続車両に関する情報を提供することにより、交差点を走行する他車両に対してその他車両に生じる死角を補完することができる。従って、交差点を走行する各車両について、死角方向から接近する車両との接触を防止し、安全に走行を行わせることを可能とする。
【0014】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、自車両が走行する道路が優先道路であって、自車両が走行する道路と交差する交差道路が非優先道路である場合に、交差道路上に位置する他車両に自車両の後続車両に関する情報を提供するので、優先道路に車両がいる場合に本来交差点に進入すべきでない非優先道路の車両に対して注意を促すことができる。従って、非優先道路から交差点に進入する車両と優先道路から交差点に進入する車両との接触を防止し、安全に走行を行わせることを可能とする。
【0015】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、自車両が走行する道路が優先道路であって、自車両が走行する道路と交差する交差道路が非優先道路である場合に、自車両が進入する側の交差道路上に位置する他車両に後続車両に関する情報を提供するので、非優先道路上の車両に対して優先道路から進入する自車両が障害となって形成される死角を補完することができる。従って、非優先道路から交差点に進入する車両と優先道路から交差点に進入する車両との接触を防止し、安全に走行を行わせることを可能とする。
【0016】
また、請求項4に記載の運転支援方法によれば、自車両が走行する道路と交差する交差道路上に位置する他車両に自車両の後続車両に関する情報を提供することにより、交差点を走行する他車両に対してその他車両に生じる死角を補完することができる。従って、交差点を走行する各車両について、死角方向から接近する車両との接触を防止し、安全に走行を行わせることを可能とする。
【0017】
更に、請求項5に記載のコンピュータプログラムによれば、自車両が走行する道路と交差する交差道路上に位置する他車両に自車両の後続車両に関する情報を提供することにより、交差点を走行する他車両に対してその他車両に生じる死角を補完することができる。従って、交差点を走行する各車両について、死角方向から接近する車両との接触を防止し、安全に走行を行わせることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る運転支援装置について具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る運転支援装置1を備えた複数の車両2によって構成される車車間通信システム3の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車車間通信システム3の概略構成図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る車車間通信システム3は、道路上を走行する複数の車両2によって構成され、各車両2に設置された運転支援装置1が備える通信装置4によって複数の車両2の間で相互に情報通信が可能となっている。
【0020】
ここで、通信装置4は、例えばミリ波帯の電波による無線方式で情報を通信する通信装置である。そして、自車両位置に対して予め定められた無線通信可能範囲(例えば、自車両位置を中心とした半径2kmまでの範囲)に位置する他車両(後続車両、前方車両、対向車両等)との間で、無線による情報の通信を行うことが可能となっている。
また、通信装置4によって車両間で送受信される情報としては、後述するように車両2に設置された各種センサで検出した後続車両に関する情報等がある。
【0021】
尚、車車間通信システム3における車両2の間の通信では、直接に車両2の間で情報を送受信することの他に、路上機(図示せず)等の通信施設を介して情報を送受信することも可能である。
【0022】
次に、上記車車間通信システム3を構成する車両2に設置された運転支援装置1の構成について図2及び図3を用いて説明する。図2は本実施形態に係る運転支援装置1の概略構成図、図3は本実施形態に係る運転支援装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、車両2には前記した通信装置4に加えて、運転支援ECU(後続車両情報取得手段、交差道路特定手段、情報提供手段、走行道路種別取得手段、交差道路種別取得手段)11と、測距センサ12と、地図情報DB13と、車両DB14と、液晶ディスプレイ16と、スピーカ17と、運転支援ECU11に接続されたGPS18、車速センサ19、ステアリングセンサ20、ジャイロセンサ21等の各種センサで構成されている。また、運転支援ECU11にはCAN(Controller Area Network)等の車内LANを介してウィンカーランプ制御ECU22が接続される。
【0024】
運転支援ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)11は、交差点に接近した場合に測距センサ12により検出した後続車両に関する情報を車車間通信システム3を介して他車両との間で送受信する車車間通信処理(図4参照)と、他車両から送信された後続車両に関する情報に基づいて該後続車両の案内を行う走行案内処理(図6参照)等を行う電子制御ユニットである。尚、運転支援ECU11はナビゲーション装置の制御に使用するECUと兼用してもよい。また、運転支援ECU11の詳細な構成については後述する。
【0025】
また、測距センサ12は、車両2の後方のナンバープレート上方に設置されており、音波送信部と音波受信部とから基本的に構成されている。そして、音波送信部から車両2の後方に対してそれぞれ超音波を放射するとともに障害物(具体的には後続車両)によって反射された反射波を音波受信部で受信する。その結果、運転支援ECU11は超音波の放射から反射波を受信するまでの時間に基づいて車両2の後方に位置する障害物までの距離を検出することが可能となる。そして、本実施形態では、運転支援ECU11は測距センサ12の検出結果に基づいて、車両後方に位置する後続車両の検出、並びに検出した後続車両の位置及び進行方向を特定する。
尚、測距センサ12としては、超音波センサの代わりにレーザ距離センサを用いても良い。また、測距センサ12の代わりにカメラを用いても良い。その場合には、カメラで撮像した撮像画像に対して画像認識処理を施すことにより後続車両の検出や検出した後続車両の位置及び進行方向の特定を行う。
【0026】
また、地図情報DB13は道路網や施設に関する地図データが記録された記憶手段である。ここで、地図データは、例えば道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、交差点に関する交差点データ等から構成されている。ここで特にリンクデータとしては、道路を構成する各リンクに関してリンク長、リンクの属する道路の幅員、勾(こう)配、カント、バンク、路面の状態、道路の車線数、車線数の減少する箇所、幅員の狭くなる箇所、踏切り等を表すデータが、コーナに関して、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口及び出口等を表すデータが、道路属性に関して、降坂路、登坂路等を表すデータが、道路種別に関して、国道、県道、細街路等の一般道のほか、高速自動車国道、都市高速道路、一般有料道路、有料橋等の有料道路を表すデータがそれぞれ記録される。更に、道路種別に関しては優先道路と非優先道路とを区分するデータについて含まれる。
【0027】
また、車両DB14は、車両2の形状設計値やセンサ設計値等の車両に関する各種パラメータ情報が記憶された記憶手段である。例えば車両DB14には、測距センサ12の設置位置等について記憶されている。
そして、運転支援ECU11は後述するように車両DB14に記憶された各種パラメータ情報を用いることによって、後述する車車間通信処理(図4参照)で後続車両の検出を行う。
【0028】
また、液晶ディスプレイ16は、運転支援ECU11からの指示に基づいて走行を案内する案内画面を表示する。特に本実施形態に係る運転支援装置1では、自車両が交差点に接近した場合において自車両の死角方向から交差点に進入する他車両がある場合には、所定の案内画面を表示することにより交差点に進入する他車両を案内する。ここで、表示される案内画面としては、例えば、交差点付近の地図画像を表示するとともに、地図画像上に他車両の位置や進行方向を示すマーク等を表示する。
【0029】
また、スピーカ17は、運転支援ECU11からの指示に基づいて走行を案内する音声ガイダンスを出力する。特に本実施形態に係る運転支援装置1では、自車両が交差点に接近した場合において自車両の死角方向から交差点に進入する他車両がある場合には、所定の案内音声を出力することにより交差点に進入する他車両を案内する。ここで、出力される案内音声としては、例えば、「右方50mの位置に接近する車両があります。」等がある。
【0030】
また、GPS18は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、自車の現在位置及び現在時刻を検出可能とする。
【0031】
また、車速センサ19は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両2の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号を運転支援ECU11に出力する。そして、運転支援ECU11は発生するパルスを計数することにより車輪の回転速度や移動距離を算出する。
【0032】
また、ステアリングセンサ20は、ステアリング装置の内部に取り付けられており、ステアリングの回動角を検出可能とするセンサである。
ジャイロセンサ21は、車両2の旋回角を検出可能とするセンサである。また、ジャイロセンサ21によって検出された旋回角を積分することにより、自車方位を検出することができる。
【0033】
また、ウィンカーランプ制御ECU22は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、ウィンカーランプ23A〜23D(図2参照)の点灯制御を行う電子制御ユニットである。そして、運転支援ECU11はウィンカーランプ制御ECU22から送信される制御信号に基づいて現在のウィンカーランプ23A〜23Dの点灯状態を検出する。
【0034】
次に、運転支援ECU11の詳細について図3を用いて説明すると、運転支援ECU11はCPU31を核として構成されており、CPU31には記憶手段であるROM32及びRAM33が接続されている。そして、ROM32には測距センサ12や液晶ディスプレイ16、スピーカ17等の制御上必要な各種のプログラム等が格納されている。また、RAM33は後述の車車間通信処理プログラム(図4参照)及び走行案内処理プログラム(図6参照)の他、CPU31で演算された各種データを一時的に記憶しておくメモリである。
【0035】
続いて、前記構成を有する運転支援装置1において運転支援ECU11が実行する車車間通信処理プログラムについて図4に基づき説明する。図4は本実施形態に係る車車間通信処理プログラムのフローチャートである。ここで、車車間通信処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定時間間隔(例えば200ms毎)で実行され、交差点に接近した場合において後続車両に関する情報を交差道路上に位置する他車両に提供する処理を行うプログラムである。尚、以下の図4及び図6にフローチャートで示されるプログラムは、運転支援装置1が備えているROM32やRAM33に記憶されており、CPU31により実行される。
【0036】
先ず、車車間通信処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU31は走行情報を取得する。ここで、前記S1で取得される走行情報としては、例えば自車両の現在位置や自車方位に関する現在地情報、自車両が現在走行する道路の道路種別に関する道路情報等がある。尚、自車の現在位置や自車方位は、GPS18やジャイロセンサ21の検出結果に基づいて取得される。また、取得した自車の現在位置を地図上で特定するマップマッチングも行われる。一方、道路情報は、自車両の現在位置に基づいて地図情報DB13から取得される。尚、上記S1が走行道路種別取得手段の処理に相当する。
【0037】
次に、S2においてCPU31は、前記S1で取得した現在地情報と地図情報DB13に記憶された地図情報に基づいて、自車両の進行方向前方の所定距離(例えば100m)以内に交差点があるか否か判定する。そして、自車両の進行方向前方の所定距離以内に交差点があると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。一方、自車両の進行方向前方の所定距離以内に交差点がないと判定された場合(S2:NO)には、当該車車間通信処理プログラムを終了する。
【0038】
S3においてCPU31は、前記S1で取得した道路情報に基づいて、自車両が現在走行する道路の道路種別が優先走路であるか否か判定する。そして、自車両が現在走行する道路の道路種別が優先走路であると判定された場合(S3:YES)には、S4へと移行する。それに対して、自車両が現在走行する道路の道路種別が優先道路でないと判定された場合(S3:NO)には、当該車車間通信処理プログラムを終了する。
【0039】
続いて、S4においてCPU31は、自車両の進行方向前方にある交差点の通過形態を取得する。
【0040】
以下に、先ず前記S4における自車両の交差点の通過形態の取得方法について詳細に説明する。自車両の交差点の通過形態は下記の(1)又は(2)のいずれかの方法により取得される。
(1)車両が備えるナビゲーション装置において案内経路が設定されている場合には、設定されている案内経路に従って自車両が走行すると仮定し、交差点の通過形態を特定する。尚、案内経路は、ナビゲーション装置によって出発地(例えば自車の現在位置)からユーザに選択された目的地までの経路探索処理の結果に基づいて設定される。また、経路探索処理は、地図情報DBに記憶されたリンクデータやノードデータ、交通情報等が用いられ、公知のダイクストラ法等により行われる。
(2)車両が備えるナビゲーション装置において案内経路が設定されていない場合には、自車両の現在位置、方位から自車両が現在走行する道路や交差点への進入方向を特定する。また、ウィンカーランプ制御ECU22から送信される信号に基づいてウィンカーランプ23A〜23Dの点灯状態を取得し、自車両が直進、右折、左折のいずれの態様により交差点を通過するのかを特定する。更に、交差点に接続する道路の車線情報を用いることによって交差点の通過形態をより具体的に特定する。
【0041】
その後、S5においてCPU31は、地図情報DB13に記憶された地図情報に基づいて、進行方向前方にある交差点において自車両が現在走行する道路と交差する交差道路を特定する。尚、上記S5が交差道路特定手段の処理に相当する。
【0042】
続いて、S6においてCPU31は、前記S5で特定された交差道路の道路種別に関する情報について地図情報DB13から取得する。尚、上記S6が交差道路種別取得手段の処理に相当する。
【0043】
その後、S7においてCPU31は、前記S4で取得した自車両の交差点の通過形態と前記S6で取得した交差道路の道路種別に基づいて、自車両が交差点で右折又は左折を行うことによって交差道路へと進入し、且つその交差道路の道路種別が非優先道路であるか否か判定する。
【0044】
そして、自車両が交差点で右折又は左折を行うことによって交差道路へと進入し、且つその交差道路の道路種別が非優先道路であると判定された場合(S7:YES)には、S8へと移行する。それに対して、自車両が交差点を直進して通過すると判定された場合、或いは交差道路の道路種別が非優先道路でないと判定された場合(S7:NO)には、当該車車間通信処理プログラムを終了する。
【0045】
S8においてCPU31は、測距センサ12の検出結果に基づいて、自車両の後方に後続車両を検出したか否かを判定する。その結果、後続車両を検出したと判定された場合(S8:YES)には、S9へと移行する。それに対して、後続車両を検出していないと判定された場合(S8:NO)には、当該車車間通信処理プログラムを終了する。
【0046】
S9においてCPU31は、測距センサ12の検出結果に基づいて、検出された後続車両に関する情報を取得する。具体的には、検出した後続車両の位置座標、移動方向について取得する。尚、上記S9が後続車両情報取得手段の処理に相当する。
【0047】
S10においてCPU31は、車車間通信システム3(図1)を構成する他車両に対して送信する為の送信データを作成する。尚、前記S10で作成される送信データは、送信先の車両を特定する送信先特定情報と、検出した後続車両の位置座標及び移動方向に関する情報とから構成されている。また、本実施形態では、送信先の車両は、自車が現在走行する道路と交差する交差道路の内、自車両が進入する側の道路上に位置する車両である。従って、送信先特定情報は自車両が進入する側の交差道路のリンク番号を含む。
【0048】
そして、CPU31は、通信装置4を介して車車間通信システム3により自車両を中心とした所定距離(例えば半径2km)以内に位置する全車両に前記S10で作成された送信データを送信する(S11)。ここで、送信データには前記したように送信先の車両を特定する送信先特定情報を含んでいる。従って、送信データを受信した車両は、送信先特定情報と自車両の現在位置とを比較して、送信データが自車両に送信された送信データであるか否かを判定する。そして、自車両に対して送信された送信データであると判定した場合には、送信された送信データを有効な情報として受信する。尚、上記S11が情報提供手段の処理に相当する。
【0049】
ここで、図5は前記S11で送信対象となる他車両を説明した説明図である。図5では、優先道路51と非優先道路52とが交差する交差点53に自車両54が接近した場合を示す。また、自車両54は交差点53において優先道路51と交差する交差道路52(非優先道路)へと左折進入する。更に、自車両54の後方には後続車両55が存在する。更に、交差道路52には車両56〜59が一時停止状態にある。
そして、図5に示す状況においては、自車両54は後続車両55の位置座標(x1,y1)を測距センサ12の検出結果に基づいて取得する(S9)。そして、自車両54は、自車両54が進入する側の交差道路52を送信先に特定し、該進入する側の交差道路52のリンク番号を送信先特定情報として加えて後続車両55に関する情報を含む送信データを送信する(S11)。従って、車両56〜58は自車両54が障害物となって自車両54の後方が死角となるものの、後続車両55に関する情報を取得することによって、後続車両55の存在を把握することが可能となる。
【0050】
次に、運転支援装置1において運転支援ECU11が実行する走行案内処理プログラムについて図6に基づき説明する。図6は本実施形態に係る走行案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、走行案内処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定時間間隔(例えば200ms毎)で実行され、他車両から提供された後続車両に関する情報を案内する処理を行うプログラムである。
【0051】
走行案内処理プログラムでは、先ず、S21においてCPU31は、他車両から自車両向けのデータを受信したか否か判定する。尚、受信したデータが自車に向けたデータであるか否かは、受信データに含まれる送信先特定情報と自車の現在位置とを比較することによって判定する。より具体的には、先ず、CPU31はGPS18により検出した自車の現在位置と地図情報とに基づいてマップマッチング処理を行い、自車の走行するリンクのリンク番号を検出する。そして、受信データに含まれる送信先特定情報により特定されるリンク(即ち、自車両が進入する側の交差道路のリンク)を自車が走行しているか否か判定する。その結果、送信先特定情報により特定されるリンクを自車が走行していると判定した場合に、受信データが自車に向けたデータであると判定する。
【0052】
そして、前記S21の判定の結果、自車両向けのデータを受信したと判定した場合(S21:YES)には、S22へと移行する。一方、自車両向けのデータを受信していないと判定した場合(S21:NO)には、当該走行案内処理プログラムを終了する。
【0053】
S22で更にCPU31は、受信した自車両向けのデータが送信元の車両の後方に位置する後続車両に関する情報であるか否か判定する。尚、後続車両に関する情報は、前記S11で後続車両を検出した車両から送信されるデータであり、送信元の車両の後方に位置する後続車両の位置座標や進行方向に関する情報が含まれる。
【0054】
そして、前記S22の判定の結果、受信した自車両向けのデータが後続車両に関する情報であると判定された場合(S22:YES)には、S23へと移行する。それに対して、受信した自車両向けのデータが後続車両に関する情報でないと判定された場合(S22:NO)には、S24へと移行する。
【0055】
S23においてCPU31は、後続車両の案内を行う。具体的には、交差点付近の地図画像を液晶ディスプレイ16に表示するとともに、地図画像上に後続車両の位置や進行方向を示すマーク等を表示する。また、スピーカ17より後続車両の位置や進行方向を特定する為の案内音声(例えば、「右方50mの位置に接近する車両があります。」等)を出力する。それによって、後続車両に関する情報を受信した車両は、送信元の車両の後方に後続車両が位置することを容易に把握することが可能となる。
一方、S24では受信したデータに対応した所定の処理を行う。
【0056】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る運転支援装置1、運転支援装置1による運転支援方法及び運転支援装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、自車両が交差点に接近した場合であって、自車両が走行する道路が優先道路で、且つ自車両の走行する道路に交差する交差道路が非優先道路であり、更に自車両が後方を走行する後続車両を検出した場合に、検出した後続車両に関する情報(位置座標や進行方向)を取得し(S9)、取得した後続車両に関する情報を、自車両が進入する側の交差道路上に位置する他車両に提供する(S11)ので、非優先道路上において一時停止する車両に対して優先道路から進入する車両が障害となって形成される死角を補完することができる。従って、非優先道路から交差点に進入する車両と優先道路から交差点に進入する車両との接触を防止し、安全に走行を行わせることを可能とする。また、優先道路に車両がいる場合に本来交差点に進入すべきでない非優先道路の車両に対して注意を促すことができる。
【0057】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では後続車両に関する情報を、交差道路の内、特に自車両が進入する側の道路に位置する他車両のみに提供することとしているが、交差道路に位置する全車両に対して送信することとしても良い。
【0058】
また、他車両に提供する後続車両に関する情報としては、後続車両の位置座標や進行方向に関する情報の他に、後続車両の車速、交差点への予想到達時間、車種、台数等に関する情報を含めることとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る車車間通信システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る運転支援装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る車車間通信処理プログラムのフローチャートである。
【図5】ステップ11で送信対象となる他車両を説明した説明図である。
【図6】本実施形態に係る走行案内処理プログラムのフローチャートである。
【図7】従来技術が適用される交差点の状況を示した図である。
【図8】本願発明が適用される交差点の状況を示した図である。
【符号の説明】
【0060】
1 運転支援装置
2 車両
4 通信装置
11 運転支援ECU
12 測距センサ
14 プロジェクタ
15 現在位置検出部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
54 自車両
55 後続車両
56〜59 他車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後方に位置する後続車両に関する情報を取得する後続車両情報取得手段と、
自車両の進行方向前方にある交差点において自車両が走行する道路と交差する交差道路を特定する交差道路特定手段と、
前記交差道路特定手段によって特定された交差道路上に位置する他車両に前記後続車両に関する情報を提供する情報提供手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
自車両が走行する道路の道路種別を取得する走行道路種別取得手段と、
前記交差道路特定手段によって特定された交差道路の道路種別を取得する交差道路種別取得手段と、を有し、
前記情報提供手段は、自車が走行する道路の道路種別が優先道路であって、且つ前記交差道路特定手段によって特定された交差道路の道路種別が非優先道路である場合に、前記他車両に情報を提供することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記情報提供手段は、自車両が進行方向前方にある交差点を右折又は左折する場合に、前記交差道路特定手段によって特定された交差道路の内、自車両が進入する側の道路上に位置する他車両に情報を提供することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
自車両の後方に位置する後続車両に関する情報を取得する後続車両情報取得ステップと、
自車両の進行方向前方にある交差点において自車両が走行する道路と交差する交差道路を特定する交差道路特定ステップと、
前記交差道路特定ステップによって特定された交差道路上に位置する他車両に前記後続車両に関する情報を提供する情報提供ステップと、を有することを特徴とする運転支援方法。
【請求項5】
コンピュータに搭載され、
自車両の後方に位置する後続車両に関する情報を取得する後続車両情報取得機能と、
自車両の進行方向前方にある交差点において自車両が走行する道路と交差する交差道路を特定する交差道路特定機能と、
前記交差道路特定機能によって特定された交差道路上に位置する他車両に前記後続車両に関する情報を提供する情報提供機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245342(P2009−245342A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93339(P2008−93339)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】