説明

運転支援装置

【課題】路面の摩擦係数(路面μ)が低い場面でも、障害物と車両Cの接触の可能性がある場合に、運転者に違和感を与えることなく、車両Cを適切進路から逸脱し難くなるように制御できる運転支援装置1を提供する。
【解決手段】障害物の回避を支援するステアリング制御又はブレーキ制御の制御量を算出し、この制御量で所定の制御開始時期からステアリング制御又はブレーキ制御を実施することで運転を支援する運転支援装置1において、ステアリングホイール3に振動をさせ、この振動に起因する車両挙動又は操舵角の変化量に応じて、路面μが低いか否かを判定し、路面μが低いと判定された場合に制御量又は制御開始時期を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物を回避すべき方向に運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたレーダを用いて障害物を検出・認識し、その障害物と車両との接触の可能性の有無を判断し、接触の可能性が有ると判断した場合、警報や操舵など車両制御により障害物と車両の接触回避の運転支援を行う(運転支援)装置が、本出願人によって提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−131072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の運転支援装置では、障害物と車両の接触の可能性が有る場合、車両が適切進路から逸脱し難くなるように制御しているが、路面の摩擦係数(路面μ)が低い場面で、前記制御を行うと、運転者に違和感を与える場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、路面の摩擦係数(路面μ)が低い場面でも、障害物と車両の接触の可能性がある場合に、運転者に違和感を与えることなく、又は、与える違和感を少なく、車両を適切進路から逸脱し難くなるように制御できる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、障害物の回避を支援するステアリング制御又はブレーキ制御の制御量を算出し、前記制御量で所定の制御開始時期から前記ステアリング制御又はブレーキ制御を実施することで運転を支援する運転支援装置において、ステアリングホイールに振動をさせ、該振動に起因する車両挙動又は操舵角の変化量に応じて、前記制御量又は前記制御開始時期を補正したことを特徴としている。
【0007】
ステアリングホイールが振動することで、障害物と車両が接触する可能性があることを、運転者に警報するだけでなく、ステアリングホイールが振動することに伴って車輪が転舵し車両挙動又は操舵角が変化することを利用して、路面μの大きさを計測・把握することができる。例えば、一定のトルク(制御量)でステアリングホイールを振動させた場合、路面μが高いほど、例えば、路面が乾いている(ドライ)ほど、車輪の転舵角の変化量は小さくなり、ステアリングホイールの操舵角(車両挙動)の変化量は小さくなる。逆に、路面μが低いほど、例えば、路面が濡れているほど、車輪の転舵角の変化量は大きくなり、ステアリングホイールの操舵角(車両挙動)の変化量は大きくなる。これらの関係を利用することで、ステアリングホイールの振動から、路面μが小さい場合に対応する操舵角(車両挙動)の変化量が取得された場合に、前記制御量又は前記制御開始時期を補正することで、乗員に違和感を与えることなく、又は、与える違和感を少なく、車両が適切進路から逸脱し難くなるように制御することができる。
【0008】
また、前記車両挙動又は操舵角の前記変化量が閾値より大きいときは、前記制御量を小さくする又は前記制御開始時期を早くする補正をすることが好ましい。前記車両挙動又は操舵角の前記変化量が閾値より大きいときは、路面μが小さい場合であり、車輪のスリップ率が大きくなりやすい。そこで、スリップ率の増大を抑制するように、前記制御量を小さくしたり、スリップ率が大きくても目的とする制御の実施が可能なように、前記制御開始時期を早くしたりして、路面μが小さい場合でも、車両が適切進路から逸脱し難くなる制御をできるようにしている。
【0009】
また、前記車両挙動又は操舵角の前記変化量が閾値より大きいときは、前記制御開始時期から立ち上がり前記制御量まで上昇する変化を緩やかにする補正をすることが好ましい。前記車両挙動又は操舵角の前記変化量が閾値より大きいときは、路面μが小さい場合であり、車輪のスリップ率が大きくなりやすい。そこで、スリップ率の増大を抑制するように、前記制御量の上昇する変化を緩やかにして、路面μが小さい場合でも、車両が適切進路から逸脱し難くなる制御を貫徹できるようにしている。
【0010】
また、前記振動の振幅は、車両と障害物の接触の可能性が大きいほど大きくなり、前記閾値は、前記振動の振幅が大きいほど大きくなることが好ましい。ステアリングホイールが振動することで、障害物と車両が接触する可能性があることを、運転者に警報する。そして、障害物が車両に接近等して、その可能性が大きくなる程、振動の振幅を大きくすることで、運転者に障害物に対する注意を確実に喚起させることができる。ステアリングホイールの振動の振幅が大きくなるだけでも、ステアリングホイールを振動させるトルク(制御量)が大きくなり、車輪の転舵角も大きくなり、ステアリングホイールの操舵角(車両挙動)の変化量が大きくなるので、絶対値的に路面μが小さいか否かを判定するためには、前記車両挙動又は操舵角の前記変化量の閾値も、前記振幅や前記変化量に対応させて大きくすることが好ましい。
【0011】
また、前記閾値は、車速が高いほど小さくなることが好ましい。車速が高いほど、同じトルクでステアリングホイールを振動させようとしても、振幅は小さくなり、ステアリングホイールの操舵角(車両挙動)の変化量は小さくなるので、前記車両挙動又は操舵角の前記変化量の閾値も、前記振幅に対応させて小さくすることが好ましい。
【0012】
また、前記閾値は、前記振動の前の前記車両挙動又は操舵角が大きいほど大きくなることが好ましい。前記振動の前の前記車両挙動又は操舵角が大きいほど、同じトルクでステアリングホイールを振動させようとすると、振幅は大きくなりやすく、ステアリングホイールの操舵角(車両挙動)の変化量は大きくなるので、前記車両挙動又は操舵角の前記変化量の閾値も、前記振幅に対応させて大きくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、路面の摩擦係数(路面μ)が低い場面でも、障害物と車両の接触の可能性がある場合に、乗員に違和感を与えることなく、又は、与える違和感を少なく、車両を適切進路から逸脱し難くなるように制御可能な運転支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置を備えた車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る運転支援装置において実施される運転支援方法のフローチャートである。
【図3】ステアリング警報制御量(入力量)に応じて、旋回方向の車両挙動変化(出力量)に対し設定された、低μ路領域か否かを判定する閾値a1、a2、a3を示すグラフである。
【図4】ステアリング(ブレーキ)警報制御量(入力量)に応じて、ステアリング操縦角度変化(スリップ率変化)(出力量)に対し設定された、低μ路領域か否かを判定する閾値b1、b2、b3を示すグラフである。
【図5】補正無しの通常の場合と、閾値a1、b1を用いて通常より制御量を小さくする補正を行った場合の、(a)は時間に対するステアリング制御量を示すグラフであり、(b)は時間に対するブレーキ制御量を示すグラフである。
【図6】補正無しの通常の場合と、閾値a2、b2を用いて通常より制御量の立ち上がり下がりを緩やかにする補正を行った場合の、(a)は時間に対するステアリング制御量を示すグラフであり、(b)は時間に対するブレーキ制御量を示すグラフである。
【図7】補正無しの通常の場合と、閾値a3、b3を用いて通常より制御開始時期を早くする補正を行った場合の、(a)は時間に対するステアリング制御量を示すグラフであり、(b)は時間に対するブレーキ制御量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運転支援装置1は電子制御ユニットとして車両Cに搭載されている。電子制御ユニット(運転支援装置)1は、障害物接触可能性判定手段1aと、障害物警報手段1bと、障害物回避支援手段1cとを有している。
障害物接触可能性判定手段1aは、レーダ7やカメラ8等からの車両Cの周囲の情報に基づいて、障害物を検出するとともに、車両Cの進路を推定し、障害物と車両Cの接触可能性のレベルを判定・決定する。接触可能性のレベルは、多段階に判定・決定することができ、接触可能性が無いというレベル、接触可能性が有るというレベル、さらに、接触可能性が低いレベル、接触可能性が高いレベル等を判定・決定することができる。
【0017】
障害物警報手段1bは、障害物と車両Cの接触可能性が有る場合に、運転者に警報を発する。警報の方法としては、障害物警報手段1bが、EPS(電動パワーステアリング)2に、接触可能性のレベルの高さに応じて増減するステアリング警報制御量(入力量)dsを送信し、EPS2は、ステアリング警報制御量(入力量)dsに応じた振幅で、ステアリングホイール3を振動させる。運転者は、この振動を、ステアリングホイール3を握った手から感じ、障害物と車両Cが接触する可能性があることを知ることができる。
【0018】
別の警報の方法としては、障害物警報手段1bが、ブレーキ油圧ユニット5に、接触可能性のレベルの高さに応じて増減するブレーキ警報制御量(入力量)dbを送信し、ブレーキ油圧ユニット5は、ブレーキ警報制御量(入力量)dbに応じた油圧を、ブレーキ6に印加して、前輪TFを制動させる。運転者は、この制動を、体で感じ、障害物と車両Cが接触する可能性があることを知ることができる。
【0019】
障害物回避支援手段1cは、障害物と車両Cの接触可能性が有る場合に、障害物警報手段1bによる警報の後に、運転者に対して、障害物回避の支援を行う。具体的には、車両Cが今後進むべき適切進路を算出等により取得し、その適切進路の通りに進んで(停止も含む)、その適切進路から逸脱し難くなるように、EPS2と、ブレーキ油圧ユニット5を介したブレーキ6とを制御する。この制御のために、障害物回避支援手段1cは、EPS2に対し、ステアリング制御量を送信することによって、EPS2を制御して、前輪TFを転舵させる。また、障害物回避支援手段1cは、ブレーキ油圧ユニット5に対し、ブレーキ制御量を送信することによって、ブレーキ6を制御して、前輪TFを制動させる。
【0020】
障害物回避支援手段1cは、路面の摩擦係数(路面μ)が低い場面で、ステアリング制御量とブレーキ制御量を補正し、運転者に違和感を与えないように、車両を適切進路から逸脱し難くなるように制御することができる。この制御のために、障害物回避支援手段1cは、前記補正すべきほどに、現在走行中の路面の摩擦係数(路面μ)が低いか否か判定可能なように、現在走行中の路面μの高低が判別できる。
【0021】
路面μの高低の判別には、障害物警報手段1bによる警報の動作を利用する。例えば、警報がステアリングホイール3の振動である場合、障害物警報手段1bが、EPS2へ、ステアリング警報制御量(入力量)dsを入力させると、EPS2は、ステアリングホイール3を振動させるとともに、前輪TFを転舵させる。この前輪TFの転舵角は、路面μの高低によって変化する。前輪TFの転舵角とステアリングホイールの操舵角は連動して変化し比例関係にあるので、ステアリングホイールの操舵角も、路面μの高低によって変化する。逆に、前輪TFの転舵角や、ステアリングホイール3の操舵角を計測することで、路面μの値を取得することができ、路面μの高低の判別をすることができる。すなわち、路面μの高低に影響を受ける路面環境(いわゆるブラックボックス)に対して、ステアリング警報制御量dsを入力量とし、舵角センサ4で計測され出力されるステアリングホイール3の操舵角を出力量とし、この入力量(ステアリング警報制御量ds)と出力量(操舵角)とから、路面μの高低を判別している。
【0022】
なお、この出力量としては、舵角センサ4の操舵角に限らず、車両挙動を表す物理量を用いることができ、ヨーレートセンサ9で計測されるヨーレートや、横Gセンサ10で計測される横Gであってもよい。
【0023】
また、路面μの高低の判別に利用する障害物警報手段1bによる警報の動作は、ブレーキ油圧ユニット5とブレーキ6による前輪TFの制動であってもよい。障害物警報手段1bが、ブレーキ油圧ユニット5へ、ブレーキ警報制御量(入力量)dbを入力させると、ブレーキ油圧ユニット5は、ブレーキ6を介して前輪TFを制動させる。この前輪TFのすべり率は、路面μの高低によって変化する。逆に、すべり率を計測することで、路面μの値を取得することができ、路面μの高低の判別をすることができる。なお、すべり率は、前輪TFの車輪速と、従動輪である後輪TRの車輪速から算出することができる。前輪TFの車輪速は、車輪速センサSFで計測され、後輪TRの車輪速は、車輪速センサSRで計測される。路面μの高低に影響を受ける路面環境(いわゆるブラックボックス)に対して、ブレーキ警報制御量dbを入力量とし、スリップ率を出力量とし、この入力量(ブレーキ警報制御量db)と出力量(スリップ率)とから、路面μの高低を判別している。
【0024】
イグニションスイッチIGは、電子制御ユニット1に接続され、運転者によってオンオフすることができ、イグニションスイッチIGのオンに伴って電子制御ユニット1が起動し、イグニションスイッチIGのオフに伴って電子制御ユニット1がストップする。
【0025】
図2に、電子制御ユニット(運転支援装置)1において実施される運転支援方法のフローチャートを示す。運転支援方法は、イグニションスイッチIGのオンに伴ってスタートする。そして、ステップS1で、運転支援装置1は、イグニションスイッチIGがオフされたか否かを判定する。イグニションスイッチIGがオフされた場合(ステップS1、Yes)は、運転支援方法をストップさせ、イグニションスイッチIGがオフされていない場合(ステップS1、No)は、ステップS2へ進む。
【0026】
ステップS2で、運転支援装置1の障害物接触可能性判定手段1aは、レーダ7やカメラ8から、車両Cの周囲の情報を取得する。
【0027】
ステップS3で、障害物接触可能性判定手段1aは、レーダ7やカメラ8から取得した情報に基づいて、障害物を検出・認識する。
【0028】
ステップS4で、障害物接触可能性判定手段1aは、レーダ7やカメラ8から取得した情報に基づいて、車両Cが進行中の道路と、車両Cの進行方向を検出・認識し、車両Cの
自車進路を推定する。
【0029】
ステップS5で、障害物接触可能性判定手段1aは、検出した障害物と、推定した自車進路とに基づいて、車両Cと障害物の接触可能性の有無、さらには、接触可能性のレベルの判定・決定を行う。車両Cと障害物の接触可能性が無いと判定された場合(ステップS5、無し)は、ステップS1へ戻る。接触可能性が有ると判定された場合(ステップS5、有り)は、ステップS6へ進む。
【0030】
ステップS6で、障害物回避支援手段1cは、警報制御前の車両挙動値(出力量)、例えば、操舵角を、舵角センサ4から受信し、記憶する。出力量としては、操舵角の他に、ヨーレート、横G、スリップ率等を用いることができる。
【0031】
ステップS7で、障害物警報手段1bは、警報制御を実施する。警報制御がステアリング制御である場合は、障害物警報手段1bは、EPS2へ、警報モードに変更するための警報制御信号と、前記警報のレベルに応じたステアリング警報制御量(入力量)dsを送信する。EPS2は、ステアリング警報制御量(入力量)dsに基づき、ステアリングホイール3や前輪TFが振動する。また、警報制御がブレーキ制御である場合は、障害物警報手段1bは、ブレーキ油圧ユニット5へ、警報モードに変更するための警報制御信号と、前記警報のレベルに応じたブレーキ警報制御量(入力量)dbを送信する。ブレーキ油圧ユニット5は、ブレーキ警報制御量(入力量)dbに基づき、ブレーキ6により前輪TFを制動させる。障害物警報手段1bは、判定された警報のレベルが高いほど、ステアリング警報制御量(入力量)dsやブレーキ警報制御量(入力量)dbを大きくしている。
【0032】
ステップS8で、障害物回避支援手段1cは、警報制御後の車両挙動値(出力量)、例えば、操舵角を、舵角センサ4から受信する。
【0033】
ステップS9で、障害物回避支援手段1cは、警報制御前後の車両挙動値(出力量)の変化量を算出する。車両挙動値(出力量)の変化量は、警報制御後の車両挙動値(出力量)と、警報制御前の車両挙動値(出力量)の差から算出する。
【0034】
ステップS10で、障害物回避支援手段1cは、前記警報のレベルや、車速(車輪速)等に基づいて、通常の障害物回避支援の制御量を算出する。この制御量は、ステアリング制御であれば、ステアリング警報制御量(入力量)dsと同様に、EPS2に入力され障害物回避支援の制御をするための制御量である。この制御量が、ブレーキ制御であれば、ブレーキ警報制御量(入力量)dbと同様に、ブレーキ油圧ユニット5に入力され障害物回避支援の制御をするための制御量である。
【0035】
ステップS11で、障害物回避支援手段1cは、路面μの高低の判定を行う。路面μが低いと判定された場合(ステップS11、低い)は、ステップS12へ進み制御量の補正を行い、路面μが高いと判定された場合(ステップS11、高い)は、ステップS12をパスして制御量の補正を行わずにステップS13へ進む。
【0036】
具体的に、路面μの高低の判定では、図3に示す閾値a1、a2、a3と、図4に示す閾値b1、b2、b3を用いる。図3に示す閾値a1、a2、a3は、旋回方向の車両挙動変化(出力量)、例えば、ヨーレートの変化量や横Gの変化量に対し設定された閾値であり、旋回方向の車両挙動変化(出力量)が、閾値a1、a2、a3より小さいと、路面μが高い(DRY路面である)と判定され、閾値a1、a2、a3以上だと、路面μが低い(低μ路である)と判定される。閾値a1、a2、a3はそれぞれ、ステアリング警報制御量(入力量)dsが大きいほど(すなわち、警報のステアリングホイール3の振動が大きいほど)、大きくなるように設定されている。ただ、これに限らず、閾値a1、a2、a3それぞれをステアリング警報制御量(入力量)dsによらず一定にしてもよい。また、閾値a1、a2、a3はそれぞれ、車速が高いほど小さくなるように設定されている。また、閾値a1、a2、a3はそれぞれ、警告のステアリングホイール3の振動の前の車両挙動(ヨーレート、横G等)又は操舵角が大きいほど大きくなるように設定されている。
【0037】
図4に示す閾値b1、b2、b3は、(ステアリング)操舵角変化(出力量)又はスリップ率変化(出力量)に対し設定された閾値であり、(ステアリング)操舵角変化(出力量)又はスリップ率変化(出力量)が、閾値b1、b2、b3より小さいと、路面μが高い(DRY路面である)と判定され、閾値b1、b2、b3以上だと、路面μが低い(低μ路である)と判定される。閾値b1、b2、b3はそれぞれ、ステアリング警報制御量(入力量)ds又はブレーキ警報制御量(入力量)dbが大きいほど(すなわち、警報のステアリングホイール3の振動やブレーキ6による制動が大きいほど)、大きくなるように設定されている。ただ、これに限らず、閾値b1、b2、b3それぞれをステアリング警報制御量(入力量)dsとブレーキ警報制御量(入力量)dbによらず一定にしてもよい。また、閾値b1、b2、b3はそれぞれ、車速が高いほど小さくなるように設定されている。また、閾値b1、b2、b3はそれぞれ、警告のステアリングホイール3の振動の前の車両挙動(ヨーレート、横G等)又は操舵角が大きいほど大きくなるように設定されている。
【0038】
複数(例えば実施の形態では6つ)の閾値a1、a2、a3、b1、b2、b3それぞれを用いて、複数回の路面μの高低の判定が行われ、1つでも低μ路であるとの判定が行われると、ステップS12へ進むことになる。
【0039】
ステップS12で、障害物回避支援手段1cは、ステップS10で算出しておいた通常の障害物回避支援のステアリング制御とブレーキ制御の制御量を、補正する。
【0040】
図5(a)(b)では、閾値a1、b1を用いた判定で、路面μが低いと判定された場合の補正の方法を示している。すなわち、この補正の方法が適用されるのは、ステアリング警報を入力前後の旋回方向の車両挙動の変化量が閾値a1以上の場合、もしくは、ステアリング操舵角又はスリップ率の変化量が閾値b1以上の場合である。この場合においては、図5(a)に示すように、ステアリング(ブレーキ)警報制御の後のステアリング回避支援制御において、(ステアリング)制御量は、通常の制御量c0から補正後の制御量c1へ、制御量を小さくする補正がなされている。また、図5(b)に示すように、ステアリング(ブレーキ)警報制御の後のブレーキ回避支援制御において、(ブレーキ)制御量は、通常の制御量d0から補正後の制御量d1へ、制御量を小さくする補正がなされている。これらの補正によれば、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0041】
図6(a)(b)では、閾値a2、b2を用いた判定で、路面μが低いと判定された場合の補正の方法を示している。すなわち、この補正の方法が適用されるのは、ステアリング警報を入力前後の旋回方向の車両挙動の変化量が閾値a2以上の場合、もしくは、ステアリング操舵角又はスリップ率の変化量が閾値b2以上の場合である。この場合においては、図6(a)に示すように、ステアリング警報制御の後(図示は省略したがブレーキ警報制御の後でもよい)のステアリング回避支援制御において、(ステアリング)制御量の制御開始時期から立ち上がり一定になるまでの上昇する変化を緩やかにする補正がなされている。また、(ステアリング)制御量の制御終盤から立ち下がりゼロになるまでの降下する変化を緩やかにする補正がなされている。また、図6(b)に示すように、ステアリング警報制御の後(図示は省略したがブレーキ警報制御の後でもよい)のブレーキ回避支援制御において、(ブレーキ)制御量の制御開始時期から立ち上がり一定になるまでの上昇する変化を緩やかにする補正がなされている。また、(ブレーキ)制御量の制御終盤から立ち下がりゼロになるまでの降下する変化を緩やかにする補正がなされている。これらの補正によれば、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0042】
図7(a)(b)では、閾値a3、b3を用いた判定で、路面μが低いと判定された場合の補正の方法を示している。すなわち、この補正の方法が適用されるのは、ステアリング警報を入力前後の旋回方向の車両挙動の変化量が閾値a3以上の場合、もしくは、ステアリング操舵角又はスリップ率の変化量が閾値b3以上の場合である。この場合においては、図7(a)に示すように、ステアリング警報制御の後(図示は省略したがブレーキ警報制御の後でもよい)のステアリング回避支援制御において、ステアリング警報制御の終了時刻t00から、通常の制御開始時期t01までの時間より、補正後の制御開始時期t11までの時間の方が短くなるような補正がなされている。すなわち、通常のステアリング回避支援制御より、補正後のステアリング回避支援制御の方が早く始まる。また、図7(b)に示すように、ステアリング警報制御の後(図示は省略したがブレーキ警報制御の後でもよい)のブレーキ回避支援制御において、ステアリング警報制御の終了時刻t00から、通常の制御開始時期t02までの時間より、補正後の制御開始時期t12までの時間の方が短くなるような補正がなされている。すなわち、通常のブレーキ回避支援制御より、補正後のブレーキ回避支援制御の方が早く始まる。これらの補正によれば、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0043】
ステップS13で、障害物回避支援手段1cは、ステアリング回避支援制御又はブレーキ回避支援制御を実施する。ステアリング回避支援制御である場合は、障害物回避支援手段1cは、EPS2へ、回避支援制御モードに変更するための回避制御信号と、ステップS10、ステップS12に決定された(ステアリング)制御量を送信する。EPS2は、ステアリング制御量に基づき、前輪TFを転舵させ、障害物回避支援制御を実施する。また、ブレーキ回避支援制御である場合は、障害物回避支援手段1cは、ブレーキ油圧ユニット5へ、回避支援制御モードに変更するための回避制御信号と、ステップS10、ステップS12に決定された(ブレーキ)制御量を送信する。ブレーキ油圧ユニット5は、ブレーキ制御量に基づき、ブレーキ6を介して前輪TFを制動させ、障害物回避支援制御を実施する。
【符号の説明】
【0044】
1 電子制御ユニット(運転支援装置)
1a 障害物接触可能性判定手段
1b 障害物警報手段
1c 障害物回避支援手段
2 EPS(電動パワーステアリング)
3 ステアリング
4 舵角センサ
5 ブレーキ油圧ユニット
6 ブレーキ
7 レーダ
8 カメラ
9 ヨーレートセンサ
10 横Gセンサ
IG イグニションスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の回避を支援するステアリング制御又はブレーキ制御の制御量を算出し、前記制御量で所定の制御開始時期から前記ステアリング制御又はブレーキ制御を実施することで運転を支援する運転支援装置において、
ステアリングホイールを振動させ、
該振動に起因する車両挙動又は操舵角の変化量に応じて、前記制御量又は前記制御開始時期を補正したことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記車両挙動又は操舵角の前記変化量が閾値より大きいときは、前記制御量を小さくする又は前記制御開始時期を早くする補正をすることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記車両挙動又は操舵角の前記変化量が閾値より大きいときは、前記制御開始時期から立ち上がり前記制御量まで上昇する変化を緩やかにする補正をすることを特徹とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記振動の振幅は、車両と障害物の接触の可能性が大きいほど大きくなり、
前記閾値は、前記振動の振幅が大きいほど大きくなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記閾値は、車速が高いほど小さくなることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記振動の前の前記車両挙動又は操舵角が大きいほど大きくなることを特徹とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221805(P2010−221805A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70258(P2009−70258)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】