説明

運転支援装置

【課題】 車両内部の位置情報に誤差がある場合でも、運転支援が行われるか否かによって運転者に与える違和感を軽減することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】 運転支援ECU4は、路車間通信機1から対象交差点Cまでの距離情報と対象交差点Cに設けられた信号Sに関する信号サイクル情報を受信する。また、運転支援ECU4は、ナビゲーション装置2から経路組立情報を取受信する。運転支援ECU4では、路車間通信機1から受信した距離情報と、ナビゲーション装置2から受信した経路組立情報に含まれる距離情報に基づいて、警報装置5による警報を行うか否かの判断を異なる度合いで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援を行う運転支援装置に係り、特に、外部通信装置から自車両位置を取得した車両に対する運転支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号機が設置された信号機設置交差点を車両が通行する際に、最適な通行方法に関する情報を運転者に提供する信号情報提供装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。この信号情報提供装置では、路車間通信によって車両の現在位置から信号機設置交差点までの距離およびその信号における信号状態の残り時間を検出する。さらには、車両が現在の車速を維持した場合に、交差点を通行できるか否かを判断して、交差点の最適な通行方法に関する情報を運転者に提供する。
【特許文献1】特開2002−373396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された信号情報提供装置では、たとえば交差点までの距離情報と、GPS(GlobalPositioning System)装置等から取得し、車両内部で保持している位置情報と、を照らし合わせながら運転支援を行うことが考えられる。このとき、車両内部の位置情報に誤差があり、車両内部の位置情報から算出した距離情報と路車間通信によって得られた距離情報とが一致しない場合に、必要な運転支援が行われなかったり、逆に不要な運転支援を行ってしまったりすることがあった。その結果、運転支援が行われるか否かが不安定となり、運転者に違和感を与えるおそれがあるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の課題は、車両内部の位置情報に誤差がある場合でも、運転支援が行われるか否かによって運転者に与える違和感を軽減することができる運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明に係る運転支援装置は、外部通信装置から取得した自車両位置から支援対象地点までの取得距離情報および支援対象情報と、支援対象地点を含む所定範囲内における地図上の自車両の位置情報と、に基づいて、支援対象地点における自車両に対する運転支援を行う運転支援装置において、支援対象地点に近接する分岐地点が存在する場合に、支援対象地点および分岐地点間の二点間距離と、位置情報に関する所定の誤差範囲と、の比較結果に応じて、異なる運転支援度合いの運転支援を行うことを特徴とするものである。
【0006】
本発明に係る運転支援装置においては、支援対象地点および分岐地点間の二点間距離と、位置情報に関する所定の誤差範囲と、の比較結果に応じて、異なる運転支援度合いの運転支援を行う。このため、位置情報に誤差が見込まれる範囲と、誤差がないと考えられる範囲とで運転支援度合いを異なるものとすることができる。したがって、車両内部の位置情報に誤差がある場合でも、運転支援が行われるか否かによって運転者に与える違和感を軽減することができる。なお、本発明における「地図上の自車両の位置情報」とは、地図情報とGPS等から得られる自車両の位置との関係を示す情報である。
【0007】
ここで、支援対象地点における自車両に対する運転支援は、支援対象地点と、自車両の位置から支援対象地点までの経路と、に応じた運転支援である態様とすることができる。
【0008】
このような運転支援を行うことにより、自車両の運転支援を行うにあたり、不要な運転支援を削減することができ、自車両の経路に応じた支援を行うことができる。
【0009】
このとき、二点間距離が誤差範囲より小さい場合には、運転支援度合いを抑制する態様とすることができる。
【0010】
このように、二点間距離が誤差範囲より小さい場合には、運転支援度合いを抑制することにより、位置情報に誤差が見込まれる場合には、運転支援が抑制される。このため、支援対象地点と分岐地点が近接することに基づく誤った運転支援によって、運転者に与える違和感を軽減することができる。
【0011】
また、地図上における自車両の位置情報の誤差が車両進行方向側に生じている場合と、車両進行方向逆側に生じている場合とで、異なる運転支援度合いの運転支援を行う態様とすることができる。
【0012】
このように、位置情報の誤差方向による違いを反映させることにより、誤った運転支援を抑制するとともに、支援を行うべき支援対象位置に対する支援の漏れを防止することができる。
【0013】
さらに、地図上における自車両の位置情報の誤差が車両進行方向逆側に生じている場合に、運転支援度合いを抑制する態様とすることができる。
【0014】
このように、自車両の位置情報の誤差が車両進行方向逆側に生じている場合に、運転支援度合いを抑制することにより、誤った運転支援を抑制するとともに、支援を行うべき支援対象位置に対する支援の漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る運転支援装置によれば、車両内部の位置情報に誤差がある場合でも、運転支援が行われるか否かによって運転者に与える違和感を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図、図2は道路において運転支援が行われる車両を俯瞰する俯瞰図である。運転支援装置は、路車間通信機1、ナビゲーション装置2、車速センサ3、運転支援ECU(Electronic Control Unit)4、および警報装置5を備えている。
【0018】
路車間通信機1は、光ビーコンアンテナ11および光ビーコン処理部12などを備えている。路車間通信機1では、図2に示す対象交差点Cの手前の所定の位置に設置される外部通信装置である光ビーコンBから近赤外線によって情報を受信する。路車間通信機1では、光ビーコンアンテナ11によってダウンリンクエリア内で光ビーコンBからの信号を受信する。路車間通信機1では、受信した信号を光ビーコン処理部12で復調してダウンリンク情報を取り出し、そのダウンリンク情報を運転支援ECU4に送信する。なお、光ビーコンとの間で情報を送受信できる光ビーコン送受信機でもよい。
【0019】
ダウンリンク情報としては、VICS(Vehicle Information Communication System)情報やインフラ情報がある。VICS情報は、全車線で共通の道路交通情報である。道路交通情報は、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラ情報は、車線毎に構成される車線情報であり、距離情報、車線毎の信号サイクル情報、道路形状情報、停止線情報、車線識別情報などがある。
【0020】
距離情報は、光ビーコンBから信号を受信した受信位置から信号サイクル情報の対象となる信号機Sが設けられた交差点(以下「対象交差点」という)Cまでの距離である。この対象交差点が対象支援地点となる。信号サイクル情報は、信号機Sの点灯色である青、黄、赤の各点灯時間、右折指示信号の点灯時間、現在点灯している信号とその信号機Sが点灯してからの経過時間などである。この信号サイクル情報により、たとえば、何秒後に信号機Sの点灯色が赤になるか、右折車線の場合には右折指示に何秒後になり、何秒後に終了するかが判る。この信号サイクル情報が支援対象情報となる。道路形状情報は、周囲の道路の形状を示す情報であり、勾配情報(上り坂、下り坂、勾配角度)も含んでいる。停止線情報は、対象交差点Cでの停止線の位置情報などである。また、光ビーコンBにおいて他車両情報(位置、車速など)の情報を取得できる場合には他車両情報もインフラ情報に含まれる。
【0021】
ナビゲーション装置2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力ポートなどを備えて形成されている。また、ナビゲーション装置2は、GPSアンテナ21、GPS受信機22、GPS処理部23、地図データベース24、表示モニタ25、タッチパネル26、経路組立部27などを備えている。このナビゲーション装置2は、自車両の現在位置などを推定するとともに、入力された行先に合わせて経路計画を行う。
【0022】
ナビゲーション装置2におけるGPS受信機22では、GPSアンテナ21によってGPS衛星からのGPS信号を受信する。ここで、自車両の現在位置を算出するためには3つ以上のGPS衛星の位置データが必要となるで、ナビゲーション装置2では、異なる3つ以上のGPS衛星からのGPS信号をそれぞれ受信している。ナビゲーション装置2におけるGPS処理部23では、GPSアンテナ21で受信したGPS信号を復調し、復調された各GPS衛星の位置データに基づいて自車両の現在位置(緯度、経度)などを算出する。
【0023】
さらに、ナビゲーション装置2における地図データベース24には、日本国内などの所定の範囲の地図情報や地名情報が記憶されている。表示モニタ25は、地図データベース24に記憶された地図情報の中から、GPS処理部23で算出された自車両の現在位置の近傍における地図を表示する。タッチパネル26は表示モニタ25に設けられており、地図データベース24に記憶された地名情報の中から、自車両の行先をドライバが入力可能となっている。
【0024】
経路組立部27は、GPS処理部23で算出された位置情報と地図データベースに記憶された地図情報に基づいて、自車両の走行路における分岐路や交差点などの経路情報の組立を行い、経路組立情報を生成する。経路組立情報には、自車両の位置や自車両付近の交差点等までの距離、あるいは目的地までの経路などに関する情報が含まれる。この経路組立情報の一部が本発明の「地図上の自車両の位置情報」となる。経路組立部27は、経路組立情報を運転支援ECU4に送信する。
【0025】
また、ナビゲーション装置2は、経路組立部27で組み立てられた経路組立情報に応じて、自車両Mが進行する方向を運転者に案内する。たとえば、経路組立によって曲がる交差点を設定した際、その曲がる交差点に自車両Mが到達したときに、曲がる交差点であることを運転者に報知する。
【0026】
車速センサ3は、自車両の車速を検出するセンサである。車速センサ3では、車速を検出し、検出した車速情報を運転支援ECU4に送信する。
【0027】
運転支援ECU4は、CPU、ROM、RAM、および入出力ポートなどを備える電子制御ユニットであり、運転支援装置を統括制御している。運転支援ECU4では、一定時間毎に、路車間通信機1およびナビゲーション装置2から各情報を受信し、これら情報に基づいて各処理を実行し、警報が必要と判断した場合には警報装置5に警報信号を送信する。
【0028】
また、運転支援ECU4では、路車間通信機1から受信したダウンリンク情報とナビゲーション装置2から受信した経路組立情報とを比較し、対象交差点Cを判断している。このとき、ダウンリンク情報に含まれる距離情報と、経路組立情報における自車両付近における交差点までの距離に基づいて、自車両が曲がる交差点と対象交差点Cとの関係を取得する。運転支援ECU4では、ダウンリンク情報に含まれる距離情報と経路組立情報における自車両付近における交差点までの距離とが一致する場合には、この経路組立情報における自車両付近における交差点を対象交差点と判断する。一方、ダウンリンク情報に含まれる距離情報と経路組立情報における自車両付近における交差点までの距離とが一致しない場合には、ダウンリンク情報に含まれる距離情報による距離を超えない範囲で、経路組立情報に含まれる自車両Mの位置から、ダウンリンク情報に含まれる距離情報における距離分進んだ位置にもっとも近い交差点(または分岐点)を対象交差点Cと判断する。こうして、対象交差点Cにおける自車両Mに対する運転支援は、対象交差点Cと、自車両Mの位置から対象交差点Cまでの経路と、に応じた運転支援を行う。
【0029】
さらに、運転支援ECU4は、ナビゲーション装置2における最大誤差(以下「ナビ最大誤差」という)δMAXを記憶している。ナビ最大誤差δMAXは、ナビゲーション装置2の種類等によって予め設定されている。運転支援ECU4では、ナビ最大誤差δMAXに基づいて、警報を行うか否かの基準を変更し、異なる運転支援度合いの運転支援を行うようにしている。さらに、運転支援ECU4は、路車間通信機1から送信されるダウンリンク情報に含まれる距離情報と、ナビゲーション装置2から送信される経路組立情報に含まれる自車両Mと対象交差点C等までの距離に関する情報に基づいて、ナビゲーション装置2に生じている誤差の方向(自車両の進行方向に沿って見た前方向または後方向)を取得する。ここでは、自車両Mの進行方向に対する前方向が車両進行方向側となり、後方向が車両進行方向逆側となる。
【0030】
警報装置5は、自車両が対象交差点Cに進入した時に黄信号または赤信号と予測される場合にそのことを知らせる警報を出力する装置であり、警報出力として音声出力や画像表示などを行う。警報装置5では、運転支援ECU4から警報信号を受信すると、警報信号に応じて音声を出力したり、画像を表示したりする。
【0031】
図1〜図5を参照して、運転支援装置の動作について説明する。図3は、運転支援装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
図2に示すように、自車両Mが対象交差点Cの手前に位置するダウンリンクエリアに入ると、路車間通信機1では、光ビーコンBからインフラ情報などを受信し、そのインフラ情報を運転支援ECU4に送信している。このとき、運転支援ECU4では、対象交差点Cにおける信号機Sの信号サイクル情報を含むインフラ情報を路車間通信機1から取得する(S11)。
【0033】
また、ナビゲーション装置2におけるGPS受信機22は、各GPS衛星からGPS情報をGPSアンテナ21によって一定時間毎にそれぞれ受信している。また、GPS処理部23では、各GPS情報に基づいて現在位置などを演算し、その現在位置を経路組立部27に送信している。経路組立部27では、GPS処理部23からの現在位置を取得する(S12)。
【0034】
経路組立部27では、GPS処理部23から取得した現在位置を地図データベース24に記憶された地図情報に参照して、現在位置付近における対象交差点Cや、交差点付近における分岐点D、さらには対象交差点Cと分岐点Dと距離などを取得する。さらに、経路組立部27では、取得した対象交差点Cと自車両Mとの距離を算出する(S13)。経路組立部27は、取得した対象交差点Cと自車両Mとの距離を算出する際には、地図データベース24に記憶された地図情報を参照する。
【0035】
続いて、経路組立部27は、経路情報の組立を行う(S14)。ここでは、タッチパネル26によってドライバが入力した行先と、取得した対象交差点Cと自車両Mとの距離とに基づいて、自車両Mが曲がる交差点を判断する。経路組立部27は、ここで自車両Mが曲がると判断した交差点に関する経路情報を運転支援ECU4に送信する。
【0036】
それから、運転支援ECU4においては、ナビゲーション装置2から送信された経路組立情報に基づいて、自車両Mが曲がる交差点を判断する。このとき、ナビゲーション装置2から送信される経路組立情報における自車両Mの位置に誤差が生じると、自車両Mが曲がる交差点と対象交差点Cとの関係が、実際とは相違する場合が生じうる。このような自車両Mが曲がる交差点と対象交差点Cとの関係の相違が生じることから、対象交差点Cと分岐点Dとの距離(以下「対象交差点−分岐点間距離」という)L1として、対象交差点−分岐点間距離L1が、運転支援ECU4が記憶しているナビ最大誤差δMAXより小さいか否かを判断する(S15)。なお、対象交差点−分岐点間距離L1が、支援対象地点および分岐地点間の二点間距離に相当する。ステップS15における判断の結果、対象交差点−分岐点間距離L1がナビ最大誤差より小さくない(対象交差点−分岐点間距離L1がナビ最大誤差δMAX以上である)と判断した場合には、通常の運転支援を行う(S16)。
【0037】
通常の運転支援では、自車両Mが対象交差点Cを直進する場合、光ビーコンBから送信された対象交差点Cにおける信号機Sの信号サイクル情報および車速センサ3から送信された車速情報に基づいて、自車両Mが現在の速度で走行した場合に、自車両Mが対象交差点Cに到達するときに、対象交差点Cにおける信号機Sの点灯色が青となるか否かを判断する。また、自車両Mが対象交差点Cを曲がる場合には、車速センサ3から送信された車速情報から所定の減速度を加味して、自車両Mが対象交差点Cに到達する時間を算出、自車両Mが対象交差点Cに到達するときに、対象交差点Cにおける信号機Sの点灯色が青となるか否かを判断する。
【0038】
その結果、自車両Mが対象交差点Cに到達するときに対象交差点Cにおける信号機Sの点灯色が青となる場合には、警報装置5による警報を出力しないようにする。また、自車両Mが対象交差点Cに到達するときに対象交差点Cにおける信号機Sの点灯色が青とならない(黄または赤となる)場合には、警報装置5によって、運転者に対する警報を出力する。こうして、運転支援装置による処理を終了する。
【0039】
一方、ステップS15において、対象交差点−分岐点間距離L1がナビ最大誤差δMAXより小さいと判断した場合には、運転支援として、運転支援度合いが異なり、運転支援度合いが抑制された特別運転支援を行う(S17)。特別運転支援としては、誤警報対応運転支援を行うことができる。誤警報対応運転支援として、具体的には、自車両Mが対象交差点Cに到達するときに対象交差点における信号機Sの点灯色が青とならない(黄または赤となる)場合であっても、警報装置5による警報を中止し、警報を出力しないようにする。
【0040】
ここで、たとえばナビ最大誤差δMAXが生じている場合には、図2に示すように、自車両Mの位置は、実際の位置である実位置Pに対して、最大前方誤差位置PFまたは最大後方誤差位置PRとなっていることになる。このとき、対象交差点−分岐点間距離L1が、運転支援ECU4が記憶しているナビ最大誤差δMAXより小さい場合には、警報が不要であるにも関わらず警報を出力してしまう誤警報を行うことが考えられる。
【0041】
具体的に、自車両Mが実位置Pに位置している場合にナビ最大誤差δMAXが生じている場合を想定して、自車両Mが最大前方誤差位置PFにいると判断した場合には、分岐点Dで自車両Mが曲がるときにも、対象交差点Cで自車両Mが曲がると判断してしまう。このため、対象交差点Cにおける信号機Sの警報は不要であるにも関わらず、警報を出力することになる。この点、誤警報対応運転支援では、警報装置5による警報を中止し、警報を出力しないようにする。こうして、運転支援装置による処理を終了する。
【0042】
このように、本実施形態に係る運転支援装置では、対象交差点−分岐点間距離L1がナビ最大誤差δMAXより小さいか否かによって運転支援度合いを異なるものとし、警報装置5による警報の出力基準を変更している。そして、対象交差点−分岐点間距離L1がナビ最大誤差δMAXより小さい場合には、警報装置5による警報の出力を中止している。このため、分岐点Dで自車両Mが曲がるときにも、対象交差点Cで自車両Mが曲がると判断し、対象交差点Cにおける信号機Sの警報は不要であるにも関わらず、警報を出力するといった事態を防止することができる。その結果、不要な警報が出力されることによって運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0043】
また、特別運転支援として、誤差が生じている方向を加味した態様とすることもできる。この特別運転支援の態様について、図4を参照して説明する。図4は、特別運転支援の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、特別運転支援では、ナビゲーション装置2における誤差が生じている方向が明確であるか否かを判断する(S21)。誤差が生じている方向が明確であるか否かは、たとえば路車間通信機1から送信されるダウンリンク情報に含まれる距離情報と、ナビゲーション装置2から送信される経路組立情報に含まれる自車両と交差点等までの距離に関する情報における距離の差が、所定のしきい値以上となっているか否かによって判断することができる。
【0044】
その結果、誤差の前後方向が明確であると判断した場合には、誤差方向が自車両Mの進行方向に見て後方向であるか否かを判断する(S22)。その結果、誤差の方向が後方向である場合には、誤警報対応運転支援を行う(S23)。一方、誤差の方向が後方向でない(前方向である)と判断した場合には、未警報対応運転支援を行う(S24)。こうして、特別運転支援を終了する。以下に、これらの振分けを行う理由について説明する。
【0045】
たとえば、図2に示す実位置Pに自車両Mが位置している際に、誤差の方向が後方である場合について考える。この場合、図5(a)に示すように、自車両Mの実位置Pに対して、自車両Mが後方誤差位置PR1に位置していると判断されている状態にある。このとき、下記(1)式が成立すると、自車両Mが分岐点Dで曲がるにも関わらず、対象交差点Cを曲がると判断することとなる。下記(1)式において、左辺は、自車両Mから、自車両Mが曲がると判断する分岐点Dまでの距離を示し、右辺は、実際の自車両Mと対象交差点Cとの距離を示している。
【0046】
L3+L4>L2 ・・・(1)
ただし、L2:自車両Mと対象交差点Cとの距離(以下「自車両−交差点間距離」という)
L3:自車両Mと分岐点Dとの距離(以下「自車両−分岐点間距離」という)
L4:後方誤差位置PR1と実位置Pとの距離(以下「実位置−誤差位置距離」という)
【0047】
ここで、自車両−交差点間距離L2と、自車両−分岐点間距離L3との差は、対象交差点−分岐点間距離L1となる。よって、上記(1)式を変形すると、下記(2)式となる。
【0048】
L4>L2−L3=L1 ・・・(2)
【0049】
したがって、上記(2)式が満たされる場合に、図5(b)に示すように、自車両Mが分岐点Dで曲がるにも関わらず、対象交差点Cで曲がると判断され、その結果、警報装置5からの誤警報が発生する。また、実位置−誤差位置距離L4の最大値はナビ最大誤差δMAXとなる。このため、上記(2)式における実位置−誤差位置距離L4に代えてナビ最大誤差δMAXを代入した下記(3)式を満たすときに誤警報が発生する可能性がある。よって、下記(3)式を満たす場合に、誤警報を防止するための誤警報対応運転支援を行う(S23)。
【0050】
L1<δMAX ・・・(3)
【0051】
一方、図2に示す実位置Pに自車両Mが位置している際に、誤差の方向が前方である場合について考える。この場合、図6(a)に示すように、自車両Mの実位置Pに対して、自車両Mが前方誤差位置PF1に位置していると判断されている状態にある。このとき、下記(4)式が成立すると、自車両Mが対象交差点Cで曲がるにも関わらず、分岐点Dで曲がると判断することとなる。下記(4)式において、左辺は、自車両Mから、自車両Mが曲がると判断する分岐点Dまでの距離を示し、右辺は、実際の自車両Mと対象交差点Cとの距離を示している。
【0052】
L2−L4<L3 ・・・(4)
【0053】
上記(4)式を変形すると、下記(5)式となる。
【0054】
L4>L2−L3=L1 ・・・(5)
【0055】
したがって、上記(5)式が満たされる場合に、図6(b)に示すように、自車両Mが対象交差点Cで曲がるにも関わらず、分岐点Dで曲がると判断され、その結果、信号機Sが設けられた対象交差点Cを曲がるものの、警報装置5からの警報が発生しない未警報となる。また、実位置−誤差位置距離L4の最大値はナビ最大誤差δMAXとなる。このため、上記(5)式における実位置−誤差位置距離L4に代えてナビ最大誤差δMAXを代入した下記(6)式を満たすときに未警報となる可能性がある。よって、下記(6)式を満たす場合に、未警報を防ぐための未警報対応運転支援を行う(S24)。
【0056】
L1<δMAX ・・・(6)
【0057】
具体的な誤警報対応運転支援としては、上記のように、警報装置5による警報を中止し、警報を出力しないようにする。また、未警報対応運転支援としては、ダウンリンク情報を受信し、地図情報を参照した結果、前方に対象交差点Cに関する情報を取得した場合には、警報装置5から警報を出力するようにする。このように、誤警報対応運転支援および未警報対応運転支援が行われる。
【0058】
また、ステップS21において誤差の前後方向が明確でないと判断した場合には、誤/未警報防止対応運転支援を行う(S25)。誤/未警報対応運転支援では、誤警報の発生を防止するために、警報装置5からの警報の出力を中止する。こうして、運転支援装置による処理を終了する。
【0059】
このように、本実施形態に係る運転支援装置においては、対象交差点−分岐点間距離L1と、ナビ最大誤差δMAXとの比較結果に応じて、異なる運転支援度合いの運転支援である通常の運転支援と特別運転支援のいずれかを行う。このため、位置情報に誤差が見込まれる範囲と、誤差がないと考えられる範囲とで運転支援度合いを異なるものとすることができる。したがって、車両内部の位置情報に誤差がある場合でも、運転支援が行われるか否かによって運転者に与える違和感を軽減することができる。
【0060】
また、特別運転支援では、運転支援度合い抑制された運転支援を行う。このため、ナビゲーション装置2から送信される経路組立情報に基づく対象交差点−分岐点間距離L1に誤差が見込まれる場合には、運転支援が抑制される。このため、対象交差点Cと分岐点Dが近接することに基づく誤った運転支援によって、運転者に与える違和感を軽減することができる。
【0061】
さらに、特別運転支援の他の例では、ナビゲーション装置2から送信される経路組立情報に基づく自車両Mの位置情報の誤差が前方向に生じている場合には誤警報対応運転支援を行い、後方向に生じている場合には未警報対応運転支援を行う。このように、位置情報の誤差方向による違いを反映させることにより、誤った運転支援を抑制するとともに、支援を行うべき支援対象位置に対する支援の漏れを防止することができる。しかも、誤差が前方向に生じている場合に、誤警報対応運転支援を行っている。このため、誤った運転支援を抑制することができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、誤警報対応運転支援として、警報を中止する態様としているが、たとえば警報レベルを下げる態様とすることができる。警報レベルを下げるとは、たとえば通常の運転支援では「前方の信号が赤に変わります、停車してください」と報知するところを「前方に信号が有ります」とするなど、警告の内容を和らげることなどを挙げることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、対象交差点−分岐点間距離L1がナビ最大誤差δMAXより小さいと判断した場合には、運転支援として、運転支援度合いが異なる特別運転支援として、自車両Mが対象交差点Cに到達するときに対象交差点における信号機Sの点灯色が青とならない場合であっても、警報装置5による警報を中止し、警報を出力しないようにしている。これに対して、ナビ最大誤差δMAXが対象交差点−分岐点間距離L1以下である場合に、ナビゲーション装置2に対して、曲がる交差点の報知を中止する中止情報を送信し、ナビゲーション装置2による報知を中止する態様とすることもできる。
【0064】
あるいは、対象交差点−分岐点間距離L1と、ナビゲーション装置2によって組み立てられた経路における自車両Mが曲がる交差点と自車両との距離と、の誤差が所定値以上である場合には、特別運転支援を行う態様とすることもできる。この場合、所定値を0に設定することにより、対象交差点−分岐点間距離L1と、ナビゲーション装置2によって組み立てられた経路における自車両Mが曲がる交差点と自車両との距離が一致しない場合には、常に特別運転支援を行う態様とすることもできる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、運転支援として警報装置5による警報を行っているが、自車両の走行制御による運転支援を行う態様とすることもできる。走行制御による運転支援では、警報装置5によって警報を出力する代わりに、自車両を対象交差点Cの手前で停止させる制御を行うことができる。また、この場合の特別運転支援としては、自車両を停止させる制御を中止する態様とすることができるほか、対象交差点Cの手前で停止させる代わりに自車両を減速させる態様などとすることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、支援対象情報として信号サイクル情報を挙げているが、その他の支援対象情報とすることもできる。その他の支援対象情報としては、たとえば交差点における一時停止標識に関する情報、踏切に関する情報、曲がり角における曲率に関する情報などを挙げることができる。さらに、上記実施形態では、地図として、ナビゲーション装置2における地図データベース24に記憶された地図のみを挙げているが、たとえばVICS等を通じて新たな地図を取得し、取得した地図を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。
【図2】道路において運転支援が行われる車両を俯瞰する俯瞰図である。
【図3】運転支援装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】特別運転支援の手順を示すフローチャートである。
【図5】(a)は、自車両の実位置に対して、自車両が後方誤差位置に位置していると判断されている状態を示す俯瞰図、(b)は自車両が曲がる位置を説明する俯瞰図である。
【図6】(a)は、自車両の実位置に対して、自車両が前方誤差位置に位置していると判断されている状態を示す俯瞰図、(b)は自車両が曲がる位置を説明する俯瞰図である。
【符号の説明】
【0068】
1…路車間通信機、2…ナビゲーション装置、3…車速センサ、4…運転支援ECU、5…警報装置、11…光ビーコンアンテナ、12…光ビーコン処理部、21…GPSアンテナ、22…GPS受信機、23…GPS処理部、24…地図データベース、25…表示モニタ、26…タッチパネル、27…経路組立部、B…光ビーコン、C…対象交差点、D…分岐点、M…自車両、S…信号機、δMAX…ナビ最大誤差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信装置から取得した自車両位置から支援対象地点までの取得距離情報および支援対象情報と、前記支援対象地点を含む所定範囲内における地図上の前記自車両の位置情報と、に基づいて、前記支援対象地点における前記自車両に対する運転支援を行う運転支援装置において、
前記支援対象地点に近接する分岐地点が存在する場合に、前記支援対象地点および前記分岐地点間の二点間距離と、前記位置情報に関する所定の誤差範囲と、の比較結果に応じて、異なる運転支援度合いの運転支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記支援対象地点における前記自車両に対する運転支援は、前記支援対象地点と、前記自車両の位置から前記支援対象地点までの経路と、に応じた運転支援である請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記二点間距離が前記誤差範囲より小さい場合には、前記運転支援度合いを抑制する請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
地図上における前記自車両の位置情報の誤差が車両進行方向側に生じている場合と、車両進行方向逆側に生じている場合とで、異なる運転支援度合いの運転支援を行う請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
地図上における前記自車両の位置情報の誤差が車両進行方向逆側に生じている場合に、前記運転支援度合いを抑制する請求項4に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−3249(P2010−3249A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163590(P2008−163590)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】