説明

運転者への通知方法および通知装置

手動切替トランスミッションを有する車両の運転者に通知する通知方法と通知装置が提案される。その通知は運転者に、クラッチペダルを操作すべきことを指示し、エンジン回転数がしきい値を下回った場合に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動切替トランスミッションを有する自動車の運転者に通知する方法および装置に関するものであって、同方法において、エンジン回転数がしきい値を下回った場合に出力される通知により、運転者はクラッチペダルを操作すべきことを指示される。
【背景技術】
【0002】
「適応的車両速度制御ACC(Adaptive Fahrgeschwindigkeitsregelung ACC)」(ISBN−3−7782−2034−9;2002年4月ローベルトボッシュ社シュトゥットガルトから出版)から、マイクロ波センサを用いて前を走行する車両に対する間隔と速度を測定することが知られており、これより得られたデータから自己の車両の速度または間隔制御が自動的に行われる。
【0003】
DE10210545A1からは、手動切替トランスミッションを有する自動車のための速度制御装置が知られている。かかる装置は、加速の要否を決定するための装置、情報を運転者へ出力するための出力装置およびそのための制御装置を有している。この場合、出力装置および付属の制御装置は、加速の要否にしたがって切替要請を出力するように形成されている。
【発明の開示】
【発明の核心と利点】
【0004】
本発明の核心は、自動車の運転者に、自動車のエンジンストールを防止するために、運転者がクラッチペダルを操作すべきであるという要請を信号で知らせることにある。特に手動で切り替え可能なマニュアルトランスミッションの使用と組み合わせて適応的な間隔および速度制御を使用する場合に、前を走行する車両が例えば信号機で停止した場合、速度制御器によって自己の車両を停止状態まで制動することが可能である。車両を停止状態まで制動することができ、適応的な間隔および速度制御器がエンジンを自動的に止めてしまわないようにするため、停止プロセスの間、運転者は、適切な時にクラッチペダルを操作しなければならない。このため、現在のエンジン回転数が回転数しきい値を下回った場合に、運転者にクラッチペダルを操作することを示唆する運転者報告が出力される。本発明によれば、これは、独立請求項の特徴によって解決される。そして、好ましい展開および形態が、従属請求項から明らかにされる。
【0005】
好ましくは、車両は、間隔および速度制御する装置を有しており、かかる装置によって車両を自動的に停止状態へ制動することができる。
【0006】
さらに好ましくは、クラッチペダルを操作させるための要請は、車両が最低速度を下回った場合に出力される。これは、間隔および速度制御器が前を走行する車両が停止したのを検出し、自己の車両も同様に停止状態に制動するために、適応的な間隔および速度制御器が車両のエンジンを自動的に停止させてしまう一方で、運転者がこの瞬間にドライブトレインに介入してしまい、ドライブトレインのパワー伝達を中断しなければならないことに気づかないことがあり得るからである。
【0007】
さらに、好ましくは、運転者がクラッチペダルを操作した場合に、間隔制御器がドライブトレインへの介入を非作動にし、さらに遅延装置だけを駆動することができる。クラッチ操作要請が出力されて、運転者がこの要請に応じた場合には、好ましくは間隔および速度制御器がブレーキオンリーモードへ移行される。したがって、ドライブトレインまたは内燃機関への介入による加速は行うことはできないが、車両の減速装置の駆動による自動的な制動は変わらず行うことができる。それによって運転者は、停止プロセスの間にクラッチペダルの操作によって、停止プロセスをさらに間隔および速度制御器によって自動的に実施させることが可能である。
【0008】
さらに好ましくは、エンジン回転数が他のしきい値を下回った場合に、間隔制御器は自動的に非作動にされる。運転者がクラッチ操作の要請に応じず、エンジンの回転数が他のしきい値より低下した場合には、エンジンの停止を防止するために、間隔制御器が自動的に非作動にされる。
【0009】
好ましくは、エンジン回転数が所定の期間の間他のしきい値を下回った場合に、間隔制御器が自動的に非作動にされる。これにより、他のしきい値を下回った場合に、間隔制御器がオフにされる前に、運転者にまだ所定の期間の間自身で介入できる可能性を与えることができる。
【0010】
さらに、好ましくは、間隔制御器は目標速度として、エンジンがまだストップしない、最低の速度を設定する。この実施形態は、間隔および速度制御器を自動的に非作動にすることに比べて、システムを非作動にすることにより、車両が急勾配の道路上にいる場合に、車両が坂道を下ること、あるいはエンジン制御器のアイドリング制御によって自動的に加速されることがないという利点を有している。
【0011】
さらに、好ましくは、クラッチペダルを操作するための要請は、クラッチペダルが操作された場合、あるいは間隔制御器が自動的に非作動にされた場合に、非作動にされる。
【0012】
さらに、好ましくは、クラッチペダルを操作するための要請は、音響的および/または光学的な信号である。このとき運転者には、車両の計器パネル内のコントロールランプ、あるいは車両の計器パネル内の明文テキスト表示によって、視覚的なクラッチ操作要請が信号で知らされる。さらに、例えば信号トーンが鳴り響き、あるいは音声出力によって直接行うべき処理を指示することにより、運転者に音響的なクラッチ操作要請を出力することが可能である。
【0013】
特に重要なのは、本発明に基づく方法を制御部の形式で実現することであって、その制御部は、自動車の適応可能な間隔および速度制御の制御装置のために設けられている。このとき、制御部上にプログラムが記憶されており、このプログラムは計算装置上、例えばマイクロプロセッサまたは信号プロセッサ上で遂行可能であって、本発明に基づく方法を実施するのに適している。したがってこの場合、本発明は制御部上に格納されたプログラムによって実現されるので、このプログラムを有する制御部は、プログラムがそれを実施するのに適している方法と同様に本発明を表す。制御部として、特に電気的なメモリ媒体、例えばリードオンリーメモリが使用される。
【0014】
本発明の他の特徴、適用可能性および利点は、図面に示される本発明の実施例についての以下の説明から明らかにされる。この場合に、すべての記載、あるいは図示されている特徴は、それ自体あるいは任意の組合せにおいて、特許請求の範囲におけるその要約あるいはその帰属に関係なく、かつ明細書または図面における表現、あるいは表示に関係なく、本発明の対象を形成する。
【実施例の説明】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【0016】
図1には、間隔速度制御器1を有する、本発明に基づく装置のブロック回路図が示されている。間隔速度制御器1は入力回路2を有しており、その入力回路を用いて間隔速度制御器1へ入力信号を供給することができる。入力回路2には、特にセンサ装置3の信号が供給され、そのセンサ装置は、例えばレーダーセンサ、レーザーセンサ、ビデオセンサ、超音波センサ、あるいはこれらのセンサ種類の組合せとして形成することができる。レーダーセンサとして形成した場合には、前を走行する車両あるいは前にあるセンサ検出領域内にある対象の正確な測定信号を、その間隔と相対速度に関して検出することを可能にする。これらの対象固有の信号が入力回路2へ供給されることにより、車両の縦制御に関して評価される。
【0017】
さらに、入力回路2には速度センサ4の速度信号Vが供給され、これを用いて自己の車両の速度を検出することができる。それによってさらに、センサ装置3によって測定された、前にある車両または対象の相対速度を絶対速度に換算することが可能となる。さらに、入力回路2には操作装置5の操作信号および制御信号が供給され、これを用いて間隔速度制御器が作動化可能、非作動可能であり、かつ間隔速度制御器を運転者固有に調節するための駆動パラメータの調節が可能である。さらに、入力回路2へクラッチセンサ6の入力信号を供給することができ、これを用いて運転者によるクラッチペダルの操作を認識することが可能となり、かつドライブトレイン内の力結合を検出することができる。
【0018】
他の入力量として、間隔速度制御器に現在のエンジン回転数nが供給されるが、これはエンジン回転数センサ23を用いて、あるいはエンジン制御装置23によって提供される。入力回路2へ供給された入力信号はデータ交換装置7によって計算装置8へ供給され、計算装置内で例えば認識された対象から適切な目標対象が選択され、この目標対象に関して車両の縦制御が実施される。計算装置8は、入力信号にしたがって操作信号を形成し、それを最終的な操作部へ出力する。
【0019】
さらに、運転者にクラッチ操作を行うべきであることを報告するための本発明に基づく方法が計算装置内で実施される。計算装置8は、例えばマイクロプロセッサあるいは信号プロセッサとして形成することができる。計算装置8が形成する操作信号はデータ交換装置7を用いて出力回路9へ出力されるので、間隔速度制御器1は、最終的な操作装置を駆動することができる。最終的な操作装置として、例えば車両の駆動装置のパワーを定める操作部10を設けることができる。これは、例えば電気的に駆動可能な絞り弁として形成することができ、ディーゼル噴射ポンプの制御ロッドとして、あるいは燃料噴射システムの燃料量測定装置として形成することができる。さらにまた、車両を駆動するために用いられる電動機を駆動するためのパワーエレクトロニクス構成部材を設けることも考えられる。
【0020】
さらに、操作信号が車両の減速装置11へ出力されるが、この減速装置は車両の減速が必要な場合に間隔速度制御器1によって操作することができる。このため、ブレーキ制御装置が駆動され、そのブレーキ制御装置は自らへ供給される制御信号にしたがってブレーキ力またはブレーキ圧力を構築し、減速装置11内で車両減速に変換される。さらに、間隔速度制御器1は信号をクラッチ要請装置12へ出力するが、このクラッチ要請装置は、例えば聴覚的および/または視覚的な装置として形成することができる。クラッチ要請装置12は、本発明にしたがって運転者がクラッチペダルを操作すべきであることを間隔速度制御器1が認識した場合に作動される。クラッチ要請装置12は、さらに、運転者がクラッチを操作した場合(これはクラッチセンサ6によって認識可能である)に非作動にすることができ、クラッチセンサ6の代わりに、さらに、エンジン回転数を監視して、クラッチ結合あるいは開放されたクラッチ、またはスライドするクラッチを認識することが可能である。
【0021】
図2に、本発明に基づく方法を、フローチャートを用いて示す。そのための前提として、ブロック13に示すように、適応的な間隔速度制御器(ACC)がアクティブになっていなければならない。すなわち、これが運転者によってスイッチオンされていなければならず、かつ目標速度が運転者によって設定されていなければならない。次に推移して、ステップ14に示すように、駆動装置のエンジン回転数nがしきい値N1を下回った場合、シーケンスダイアグラムは「YES」へ分岐する。そして、ブロック15においてクラッチ要請がアクティブにされ、その中で例えば視覚的および/または聴覚的な信号によって運転者に、エンジンの停止を防止するためには運転者がクラッチペダルを操作しなければならないことを伝える。
【0022】
ステップ14において、エンジン回転数nがしきい値N1より大きいまたは等しい場合には、図のように「NO」へ分岐してステップ14を続行する。代替的に、間隔速度制御器1の周囲センサ技術3が、前を走行する車両が停止し、自己の車両も同様にその後ろで停止しなければならないことを認識した場合に、この時点で初めてシーケンスダイアグラムがスタートするようにすることもできる。さらに、本発明に基づく方法では、例えば10〜20km/hくらいの最低速度を下回った場合であって、これによって車両もまもなく停止状態に制動されることが予測される場合にのみ、遂行できるようにすることもできる。
【0023】
エンジン回転数nがしきい値N1を下回ったことにより、ステップ15にしたがってクラッチ要請がアクティブにされた場合に、運転者は、要請に応じてクラッチペダルを操作することもでき、あるいは要請に応じないでクラッチペダルを操作しないこともできる。ステップ16において、運転者がクラッチペダルを操作したことが認識された場合、ステップ16において「YES」へ分岐して、ステップ21で示すように間隔速度制御器1がブレーキオンリーモードで駆動される。ステップ16で認識されたように、クラッチの操作によってエンジンが停止する危険はないが、ドライブトレイン、特に内燃機関およびトランスミッションの駆動ももはや不要となる。というのは、ドライブトレイン伝送が中断されるからである。したがって、ステップ21に示すように、適応的な間隔制御器はさらにブレーキモードにおいてだけ駆動される。これは、パワーを定める操作部10によるエンジン介入はもはや行われないが、間隔速度制御器1によって自動的に駆動可能な減速装置11による車両の自動的な減速が、停止状態まで続行されることを意味している。
【0024】
ステップ21で作動されるような、ブレーキオンリーモードにおける間隔速度制御器1の機能は、その作動および非作動条件およびその機能に関して、例えばドイツ公開公報DE10019191A1により開示されている。運転者がクラッチ要請に応じ、また、エンジンが停止する危険はもはや存在しないので、それに続くステップ22においては、対応する信号ランプまたは対応する聴覚的な信号をオフにすることにより、クラッチ要請を非作動にする。
【0025】
ステップ16において、運転者がクラッチを操作しなかったことが認識された場合、このときのエンジン回転数nがさらにエンジン回転数nがしきい値N2を下回ったかについて監視する。この場合、しきい値N2は、クラッチ要請がそれにしたがって作動された第1のしきい値N1よりも小さい。エンジン回転数nがしきい値N2より大きい、あるいはそれと等しい間は、ステップ17の「NO」へ分岐して、それに続くステップ16において再度クラッチが操作されたかについてチェックする。エンジン回転数nが2つのしきい値N1とN2の間にある間は、このループを通過する。しかし、運転者がクラッチを操作せず、車両減速装置11が車両をさらに減速させたために、エンジン回転数nがしきい値N2の下に低下した場合には、ステップ17の「YES」に分岐して、ステップ18において再度クラッチが操作されたかについてチェックする。
【0026】
クラッチが運転者によって操作されない場合には、ステップ18の「NO」へ分岐して、ステップ19において、エンジン回転数nがしきい値N2を下回ってから経過した時間長さTを上回ったかについてチェックする。時間長さTをまだ上回らない間は、ステップ19の「NO」へ分岐してステップ18を続行する。したがって、運転者は時間長さTの間はいつでも、クラッチ操作によってエンジンの停止を防止する可能性を有する。運転者がこの時間内にクラッチペダルを操作した場合には、ステップ18は「YES」へ分岐して、ステップ21において間隔速度制御が続行される。エンジン回転数nがしきい値N2を下回ってから時間長さTの間に運転者がクラッチ操作を行わなかった場合には、ステップ19の「YES」へ分岐し、ステップ20において、操作信号がもはや減速装置11あるいはパワーを定める操作部10へ出力されないことによって、間隔速度制御器1は自動的に非作動にされる。
【0027】
この非作動化は、運転者がアクセルペダルまたはブレーキペダルを操作し、それによって制御器が永続的あるいは予め定められた時間の間非作動にされる場合と、同じステータスに相当する。ステップ20で間隔および速度制御器が非作動にされた後に、ステップ22にしたがってクラッチ要請12が同様に非作動にされる。これは、クラッチ操作をしなかったことによるエンジンの停止はもはや存在しないからである。代替的に、間隔速度制御器1を自動的にオフにするステップ20を、例えば速度制御器が自動的にエンジンストールをまさに阻止できる大きさの目標速度を設定することによって、他の機能により代用することができる。これは、間隔速度制御器1を非作動にすることと比較して利点を有している。なぜなら、間隔速度制御器1は坂を下る際にオフにされたり、あるいは車両のアイドリング制御が使用されたりした場合に車両が不用意に加速されることがあり、運転者がこの反応に驚き、場合によっては追突事故が生じる可能性があるからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に基づく装置の実施例を概略的に示すブロック回路図である。
【図2】本発明に基づく方法の実施例を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動切替トランスミッションを有する車両の運転者に、クラッチを操作すべきことを通知する通知方法において、
エンジン回転数(n)がしきい値(N1)を下回った場合に、クラッチペダルの操作を要請するための要請(12)が出力されることを特徴とする、運転者への通知方法。
【請求項2】
前記車両は、間隔速度制御装置(1)を備え、
前記間隔速度制御装置は、前記車両を自動的に停止状態まで制動可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両が最低速度(Vmin)を下回った場合に、前記クラッチペダルを操作する要請(12)が出力されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
運転者によってクラッチペダルが操作された場合、間隔制御器(1)は、ドライブトレイン(10)への介入を非作動にし、さらに減速装置(11)のみを駆動することができることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
エンジン回転数(n)が他のしきい値(N2)を下回った場合、間隔制御器(1)は自動的に非作動にされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
予め定められた時間長さ(T)の間にエンジン回転数(n)が他のしきい値(N2)を下回った場合、間隔制御器(1)は自動的に非作動にされることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
間隔速度制御器(1)は、目標速度として、エンジンがまだ停止しない、最低の速度を設定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
運転者がクラッチペダルを操作、または間隔制御器(1)が自動的に非作動にされた場合、クラッチペダルを操作するための要請(12)が非作動にされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
クラッチペダルを操作するための要請(12)は、聴覚的および/または視覚的な信号であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
手動切替トランスミッションを有する車両の運転者に、クラッチペダルを操作すべきことを通知する通知装置において、
エンジン回転数(n)がしきい値(N1)を下回った場合に、クラッチペダルの操作を要請するための要請装置(12)を作動させることを特徴とする、運転者への通知装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−506566(P2008−506566A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518564(P2007−518564)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051610
【国際公開番号】WO2006/003035
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】