説明

道路標識表示装置

【課題】道路標識の内容を認識が容易な状態で運転者に通知する。
【解決手段】道路標識毎に画面に表示する優先順位を設定したデータテーブルを格納した標識表示優先度データベース103cを有し、カメラ113画像から抽出し又は地図データベース102から経路案内処理部101により抽出した道路標識を、前記データテーブルで照合し、案内優先順位判定部103が、道路標識に付与された優先順位に基づいて、表示装置114に表示する道路標識を選別し、その道路標識を優先的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標識を予め取得して運転者に対して表示する道路標識表示装置にかかり、詳しくは、所定の優先順位に基づいて表示する道路標識を選択する道路標識表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行中において、運転者は運転操作に加えて、進行方向の安全確認や、歩行者の確認、信号の確認など、集中して行なわなければならない事項が多数存在する。また、長時間運転などによって、運転者に疲労が蓄積されている場合には、集中を持続することが困難となることもある。さらに、運転経験の浅い運転者の場合には、既述のような運転操作以外の確認事項に意識を集中することに慣れていないことが多い。
このような場合、走行中に道路標識を見落とす恐れがあり、標識が規制標識である場合には、見落としによって、法令に違反してしまうなどのトラブルが発生する可能性もある。
【0003】
このため、従来では、特許文献1や特許文献2に記載されている装置が提案されている。特許文献1では、道路標識を認識し、その内容を文書によって画面に表示し、或いは音声で通知するものである。また、特許文献2に記載の装置は、ビデオ画像を記録し、標識を認識した場合には、標識が映されている前後の一定時間の映像を再生するものである。
【特許文献1】特開平5−174294号
【特許文献2】特開平6−036183号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、道路標識情報を文字情報として運転者に標識の内容が表示されるため、運転中の運転者は、画面に表示された文字情報を読む必要があり、視線の移動に伴って前方不注意となる可能性があり、安全上問題がある。また、道路標識情報を音声で通知する場合には、運転者は、出力された音声を最後まで聴き取る必要があるため、通知内容を理解するまでに時間がかかり、聴き終えるまでに、標識を通過してしまうといった問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載の装置では、多数の道路標識を認識した場合には、同時に多数の道路標識が運転者に表示されることとなる。この中には、全く不要な道路標識を表示してしまう恐れもある。例えば、40km/hで走行中に、10m先の「一時停止」標識が案内された場合には、標識の位置で停止することは困難である。また、画像情報を取得した直後に右折や左折してしまった場合には、取得した画像情報は、意味を成さない。
【0006】
以上のように、特許文献2に記載の装置には、運転者に対して表示される道路標識に、道路標識を取得した時点で、最も重要な又はより必要な道路標識のみならず、必要度の低い道路標識や、全く不要な道路標識などが混在してしまう。このことは、かえって運転者を混乱させることとなる。
本発明の目的は、上記事実に鑑みて成されたものであり、道路標識の内容を認識が容易な状態で運転者に通知することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような問題を解決する本発明は、以下のような構成を有する。
(1) 車両の進行方向に位置する道路標識の視覚情報を取得する標識情報取得手段と、
前記標識情報取得手段によって取得された標識情報が複数ある場合には、所定の順位に従って表示順位を決定する表示順位決定手段と、
前記表示順位決定手段によって決定された順位に従って道路標識の視覚情報を表示する表示手段とを有することを特徴とする道路標識表示装置。
【0008】
(2) 前記標識情報取得手段は、
車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、
道路標識の位置と視覚情報を含む地図情報が記録された地図情報記憶手段と、
前記現在位置取得手段によって取得された位置情報に基づき、進行方向に位置する道路標識を、前記地図情報記憶装置に記憶された地図情報から検索する道路標識検索手段とを有する上記(1)に記載の道路標識表示装置。
【0009】
(3) 前記標識情報取得手段は、
更に、車両の外側の画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された画像から道路標識の視覚情報を抽出する道路標識抽出手段とを有する上記(1)に記載の道路標識表示装置。
【0010】
(4) 前記表示順位決定手段は、規制標識を最優先として表示する上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の道路標識表示装置。
【0011】
(5) さらに、車両の状況を取得する車両状況取得手段を有し、
前記表示手段は、車両状況取得手段により取得された車両状況が、標識情報取得手段で取得された道路標識の示す法令を遵守している場合には、その道路標識の表示は行なわない上記(4)に記載の道路標識表示装置。
【0012】
(6) 車両状況取得手段により取得された車両状況が、標識情報取得手段で取得された道路標識の示す条件に合致しない場合には、取得された道路標識を最優先で表示する上記(5)に記載の道路標識表示装置。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、複数の道路標識の視覚情報が取得された場合に、所定の表示順位に従って表示される道路標識が表示されるので、整理された状態で運転者は道路標識を確認することができ、その内容を把握することが容易となる。
請求項2記載の発明によれば、現在位置に基づき、地図情報から検索することにより道路標識に関する情報を取得する。このため、街路樹や車高の高い前方車両の陰になって視認できない道路標識や、霧や雨などの悪天候、暗がりなどの外部環境の変化により視認することが困難となった道路標識についても、確実に認識することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、撮像手段により取得された画像から実際の道路標識の視覚情報を抽出するので、現実に存在する道路標識に基づいて、道路標識の内容を表示することができる。
請求項4記載の発明によれば、規制標識が、他の標識に優先されて表示されるので、規制された車両状況を未然に抑制することが容易となる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、車両の状況が、道路標識で示されている条件に合致していれば、標識の内容を表示する必要がないため、表示を省略する。これにより、表示される標識の数を削減することができ、標識を表示する内容を簡素化することができ、より理解し易い表示内容とすることが可能となる。
請求項6記載の発明によれば、車両の状況が、道路標識で示されている条件に合致していない場合には、その旨を報知することで、法令違反等を未然に抑制することができる。より安全な運転操作を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の道路標識表示装置において、好適実施形態について、図1〜図6を参照しつつ、詳細に説明する。
(1)本実施形態の概要
本実施形態では、ナビゲーションシステムを搭載する車両において、走行中に道路標識に関する情報をカメラにより取得し、或いはナビゲーションシステムに記憶されている情報から検索し、該道路標識を運転者へ対して表示する。
【0017】
この際、複数の道路標識を取得した場合には、所定の優先順位に基づいて表示する順番を決定し、道路標識を表示装置にする。この所定の優先順位とは、運転者か運転操作をするにあたって重要度が高い順番に決定される。例えば、法令上規制されている内容を示す道路標識、人間に対して注意を喚起する道路標識、道路の状況の変化を予告道路標識、案内標識などの順番に優先順位が決定される。そして、重要度の高い道路標識を優先的に表示する、換言すると重要度の低い道路標識は表示を省略することによって、運転者にとって、一見して把握し易い道路標識に関する情報を伝達することが容易となる。
【0018】
例えば、取得された道路標識の中に規制標識が存在する場合には、これを最優先で表示し、規制違反を未然に抑制する。さらに、車両の走行速度や、ウインカー、車両の大きさ(車幅、車高など)を取得し、道路標識の表示する条件に合致している場合、例えば、制限速度を表示した道路標識を取得した場合に、走行速度が制限速度以内である場合、車幅制限を示す道路標識を取得して、車幅が制限幅以内であった場合など、あえて表示を行なわない。また、進入禁止の道路標識を取得して、車両が進入し、或いは進入しそうになった場合、右折禁止の道路標識を取得して、左ウインカーが作動している場合には、表示する優先順位を上げて、運転者に対して、より注意を喚起する。
【0019】
(2)実施形態の詳細◎
図1は、車両に搭載される道路標識表示装置1の構成を示すブロック図である。道路標識表示装置1は、経路案内処理部101と、地図データベース102と、案内優先順位判定部103と、道路標識位置データベース103aと、標識表示優先度データベース103cと、表示履歴記憶部103dと、道路標識認識処理部104と、マッチング用道路標識パターンデータベース104aと、現在位置検出手段としてのGPS(全地球測位システム:Global Positioning System)111と、車両情報検出部112と、撮像手段としてのカメラ113と、表示装置114と、音声出力装置115とを備えている。
【0020】
経路案内処理部101は、CPUからなる処理部、経路探索処理等を行なうプログラム格納するプログラム格納部、ワーキングエリアとしてのRAM等を備えている。経路案内処理部101は、地図データベース102から取得したデータ及びGPS111から取得したデータに基づいて、経路探索、道路標識に関するデータの抽出等を行なう。経路探索は、GPS111によって取得した現在位置から、運転者によって設定された目的までの走行経路を、地図データベース102から探索し、決定する処理である。また、道路標識に関するデータの抽出は、原則として車両が直進するものと仮定した場合に、その直進する経路に存在する道路標識のデータを抽出する場合と、車両情報検出部112からウインカー・オンが供給された場合には、最も近い交差点又は曲がり角で、ウインカーの点滅する方向に曲がった場合にその進行方向に位置する道路標識のデータを抽出する場合、或いは、経路探索処理によって決定された経路が定まっている場合には、その経路上に位置する道路標識を抽出する場合がある。経路案内処理部101によって道路標識検索手段が構成される。
【0021】
地図データベース102は、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスクドライブ装置等の大容量記憶媒体が使用され、交差点データファイル、道路データファイル、ノードデータファイルのそれぞれが格納された、交差点データ、道路データ、ノードデータからなる道路網データが格納されている。地図データベースによって地図情報記憶手段が構成される。
案内優先順位判定部103は、複数の道路標識が取得された場合に、表示装置114に道路標識を表示する優先順位を決定する。この順位は、道路標識毎に予め設定されており、優先順位を決定する表(図2参照)として、標識表示優先度データベースとして、後述する標識表示優先度データベース103cに記録されている。
また表示履歴データベースは、過去に表示した道路標識の内容及び時刻、位置を記録している。
【0022】
道路標識位置データベース103aは、道路標識の位置データ、各標識の属性(例えば、規制標識、指示標識、警戒標識の何れであるか否か?/車両の状態にする制限事項:例えば、制限時速、車高制限、車幅制限/車両の挙動に対する制限事項:例えば、進入禁止、左折又は右折禁止、一時停止、ユーターン禁止、追越禁止、駐停車禁止/歩行者に対して注意を喚起する歩行者注意事項:例えば、この先横断歩道、スクールゾーン/その他の注意を喚起する注意事項:例えば、踏切、工事中、落石注意など)、視覚情報としての標識の意匠等、が含まれる。なお、記憶されている道路標識には、路面に表示されている道路標識も含まれている。
【0023】
標識表示優先度データベース130cは、道路標識の表示をするための優先順位を決定するマップが記録されている。図2は、優先順位毎に分類された道路標識の一例を示すものである。原則として規制標識が最も表示が優先され、警戒標識、指示標識、案内標識の順で優先順位が高く、案内標識が最も優先順位が低い。また、車両を対象としない標識、つまり歩行者に対して表示される標識、自転車に対して表示される標識、原付バイクに対して表示される標識は、表示されない標識として分類される。
また、これらの順位は、10段階で分類して記憶されており、優先順位0が最も優先度が高く、優先順位9が最も低い。優先順位0の道路標識は、常時表示、或いは他の報知手段とともに常時表示であり、優先順位9は、他に表示するべき標識が存しない場合に表示される。
この他、以下のあげる場合には、車両状況に基づいて、適宜優先順位が上げられる。
【0024】
a)車両情報から得られた情報に基づいて、順位が上がる道路標識も存在する。道路標識で表示される規制事項に違反している場合には、その道路標識は優先順位0となり、常時表示される。例えば、制限時速50kmの道路標識を取得している場合に、一定時間以上50km以上の速度で走行している場合、車両通行止の道路標識を取得している場合に、ウインカーを出さずに直進している場合、指定方向外通行禁止の道路標識を取得している場合に、指定方向外へ操舵することを示すウインカーを点滅させている場合、車幅制限が2.5mである道路標識を取得している場合に、2.5m以上の車幅の車両で進入した(走行速度がゼロでない)場合、これには、道路標識で示されている規制に対して、現実に違反していることとなるので、最優先で標識が表示される。
【0025】
b)現在の走行状態(走行速度、直進するか否か等)を維持すると、道路標識で表示される規制事項に違反する可能性が高いと判断される場合にも、順位が上がる(例えば、優先順位1)場合もある。例えば、進入禁止の道路標識を取得した際に、ウインカーを出さずに直進している場合に優先順位を1とする。転回禁止の道路標識が取得されている際に、右方向のウインカーが点滅していると、転回する可能性が高くなるので優先順位9から1へ上げられる。一時停止の道路標識が取得されている場合に、車速が徐行又は走行である場合には、停止する可能性が低いので、規制に違反する可能性が高くなるため優先順位が4から1へ上げられる。車両通行止の道路標識が取得されている場合に、停車せずに走行中であると、規制を違反する可能性が高いので、優先順位が4から1へ上げられる。
【0026】
c)道路状況(走行環境)に応じて優先順位を上げる構成とすることもできる。例えば、警戒標識において、この先屈曲あり、屈折あり、つづら折あり、すべりやすい、下り勾配あり、等の道路標識を取得している場合において、ワイパーがオンである場合には、優先順位を5から2に上げる。ワイパーがオンであるということは、雨天又は雪であると予想されるので、路面は滑りやすく、より警戒が必要とされるからである。ワイパーがオン状態である場合の他、アクセルセンサにより、加速されたことが検出された場合にも、同様に優先順位を上げてもよい。
【0027】
d)路面凹凸あり、車線数減少、幅員減少等の警戒標識が取得された場合、車速が所定値以上であり、又は加速された場合には、優先順位を同様に上げてもよい。
e)路面凹凸あり、動物が飛び出すおそれあり、その他の危険、等の道路標識を取得している場合において、ヘッドライドがオン状態である場合には、優先順位を5から2に上げてもよい。ヘッドライトがオンであることから、夜間であることが推定され、警戒する必要性がより高まっていると予測されるからである。
【0028】
f)この先スクールゾーン、この先横断歩道、道路工事中など、歩行者や工事関係者に注意を喚起する道路標識は、他の警戒標識に比べて順位を高く設定されている。
g)規制内容、警戒内容が同じ区間を走行している間は、同じ規制内容又は警戒内容の標識は、重複して表示しない、あるいは、表示回数に応じて優先順位を下げる。
例えば、所定回数以上取得した追越禁止の標識、同じ速度の速度規制の標識は、表示する順位を下げる。なお、表示回数は、表示履歴によって判定される。
【0029】
h)時間帯によって規制される項目は、時間帯以外は表示されない。
【0030】
例えば、現在時刻が21:00時である場合に、8:00〜20:00の駐車禁止を示す道路標識は、取得していても表示されない。
i)速度によっては、優先順位が変更される。
駐車禁止の標識は、車両が停止又は徐行している際には、優先順位が上げられ、走行中は順位が下げられる。
j)車両が、道路標識の対象となる車種に該当しない場合には、優先順位が下げられるか、又は表示されない。
例えば、大型車を規制する道路標識は、普通乗用車を運転している運転者に対しては表示されない。
【0031】
h)制限区域が変わった場合には、変わった地点で、優先順位が上げられる。
例えば、「最高速度50km/h」の区域が開始される地点では、「最高時速50km/h」の道路標識の優先順位が上げられる。また、「最高速度50km/h」の区域が終了した場合にも、「最高時速50km/h」の道路標識の優先順位が上げられ、区域が終了した時点で「最高時速50km/h」の道路標識が表示される。さらに、「最高時速50km/h」の区域から「最高時速30km/h」の区域が開始される場合には、制限の変化点では、「最高時速50km/h」の区域が終了して「最高時速30km/h」の区域が開始されるので、両方の順位が上げられる。最高時速、車幅、車高、最低時速について、制限する数値が変化する変化点の場合には、新たに開始される区域のみ優先順位を上げてもよい。
なお、ひとつの道路標識について、複数の優先順位が付与され得る場合には、最も高い優先順位に決定される。
【0032】
表示履歴データベース103dには、過去に、表示装置114に表示した道路標識と、表示した時刻、及び表示した時刻における車両位置が、表示した順番に記録されている。
道路標識認識処理部104は、車両の外側へ向けて設けられているカメラ113から供給される画像から、道路標識の画像を抽出する。そして、抽出した画像と、マッチング用道路標識パターンデータベース104aに記録されている道路標識パターンと比較し、抽出した道路標識画像ともっとも近似しているパターンを、抽出した道路標識として案内優先順位判定部103へ供給する。
【0033】
案内優先順位判定部103では、道路標識認識処理部104から供給された道路標識の視覚情報に基づき、道路標識位置データベース103aに記録された道路標識の属性を参照し、その属性から優先順位を決定する。道路標識認識処理部104が道路標識抽出手段として機能する。
カメラ113は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられ、電気的に車両前方の外部画像を取得する。カメラ113が撮像手段として機能する。
【0034】
GPS111は、車両の現在位置情報を取得して、経路案内処理部101へ、取得した情報を供給する。GPS111によって、現在位置取得手段が構成される。
車両情報検出部112は、車両の走行速度を検出する車速センサ、操舵角度を検出するステアリングセンサ、ウインカーのオン状態を検出するウインカーセンサ、アクセルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ、ブレーキの踏み込み量を検出するブレーキセンサ、ヘッドライトのオン状態を検出するライトセンサ、ワイパーのオン状態を検出するワイパーセンサを備え、さらに、車幅、車高、車両の前後幅、車両重量、車種、排気量等の車両情報を記憶する車両情報記憶部を備えている。
【0035】
車両情報検出部112からは、走行速度、操舵角度、ウインカーのオン状態、アクセル踏み込み量、ブレーキの踏み込み量、ヘッドライトのオン状態、ワイパーのオン状態、車幅、車高、車両の前後幅、車両重量、車種、排気量が、経路案内処理部101を介して、案内優先順位判定部103へ供給される。
表示装置114は、例えば、液晶表示画面で構成され、道路標識の意匠が表示される。また、案内優先順位判定部103によって順位が並べ替えられて表示される。表示装置114によって表示手段が構成される。
音声出力装置115には、経路案内処理部101から供給される経路案内情報が音声で出力され、また、表示装置114に表示される道路標識に示す規制に違反した場合、或いは違反することが予想される場合に、音声を出力し、注意を喚起する。
【0036】
上記のように構成された道路標識表示装置1の処理内容について、図3に示されているフローチャートに基づき説明する。
初期設定値を参照する(ステップS101)。車体情報(例えば、車幅、車高、車体全長、車種、重量など)、その他初期設定値を設定する。車体情報は、車両情報検出部112から取得する。GPS111から、現在位置データを取得する(ステップS103)。
【0037】
カメラ113から画像データを取り込む(ステップS105)。さらに、地図データベース102を参照し、ステップS103で取得した現在位置から車両進行方向に所定距離の範囲に位置する道路標識の情報を抽出する(ステップS107)。ここで、所定距離の範囲とは、運転者の視覚で道路標識が把握できる程度の距離であり、例えば、200〜50m程度前方の範囲内に存在する道路標識である。この抽出する範囲及び車両から該範囲までの距離は、車両の速度に応じて変更され、速度が速くなるに従って該範囲および距離が共に長くなり、遅くなるに従って短くなるように設定される。ステップS107で抽出される道路標識は、経路案内処理部101によって走行経路が決まっている場合には、該走行経路上に位置する道路標識が抽出される。したがって、例えば、交差点で右折する経路となっていれば、交差点を直進又は左折した場合に現れる道路標識は抽出されない。また、走行経路が決まっていない場合には、道路法規に従って直進した場合に通過することが予想される経路を推定し、その経路上に位置する道路標識が抽出される。
【0038】
カメラ認識(ステップS111)により取得された画像データは、道路標識認識処理部104に供給される。道路標識処理部104では、供給された画像データから、道路標識に相当すると思われる部分を抽出する。そして、抽出された画像データと、マッチング用道路標識パターンデータベース104aに記録されているパターンを比較し、抽出画像データに最も近いパターンを有する道路標識を選定し、選定された道路標識を取得した道路標識として案内優先順位判定部103に供給する。この際、画像データを取得した時刻と、道路標識の大きさが、供給される道路標識データに添付される。この時刻と大きさによって、カメラによって複数の道路標識データが取得された場合に、優先順位の判定に利用される。複数の道路標識が取得された場合、最も近い標識が優先順位が高くなるが、車両から道路標識はまでの距離は、取得した道路標識の大きさによって判定される。
【0039】
このように、カメラ113によって実際に存在する道路標識を撮影し、画像から道路標識に関する視覚情報を取得することによって、地図データベース102に記録されていない、最も新しい道路標識の情報を取得することができる。ステップS105及びステップS107によって、標識情報取得手段が構成される。
ステップS105、ステップS107において、道路標識が取得されたか否かを判断する(ステップS109)。取得されていない場合には、以下の処理は行なわず、リターンされる。取得されている場合には、車両情報検出部112から車両の走行速度を取得する(ステップS111)。車速によって、車両が停止しているのか、徐行しているのか、走行しているのか、制限時速以内で走行しているのか否か、判断することができる。
【0040】
さらに、運転者操作データを車両情報検出部112から取得する(ステップS113)。運転者操作データとは、例えば、操舵角度、ブレーキの踏み込みの有無、アクセルの踏み込み量、左又は右のウインカーのオン・オフ、ヘッドライトのオン・オフ、ワイパーのオン・オフなどである。操舵角度によって、車両が右折又は左折しようとしているのか否かを判断することができる。ブレーキの踏み込み量の変化によって、減速しようとしているのか否かを判断することができる。ウインカーの点滅の有無によって、左折又は右折或いは車線変更を行なおうとしているのか否かを判断することができる。
【0041】
ヘッドライトのオン・オフによって、暗がりで走行しているのか否かを判断することができる。また、ワイパーのオン・オフによって、雨天又は雪などの天候を推量することができる。ヘッドライトとワイパーは、その状況によって、運転者が道路標識を容易に視認できない状況であるか否かを判定することが可能となり、その状況に応じて、図2に示されているデータテーブルに基づき、表示装置114に表示される優先順位が変更される場合もある。
ステップS117において、取得された道路標識について、それぞれ優先順位0〜9が付与される。また、図2に示されているデータテーブルに基づいて付与される優先順位が、ひとつの道路標識について複数設定された場合には、その中で最も高い順位のものが優先順位として付与される。
【0042】
次に表示履歴を表示履歴データベース103dから取得する(ステップS115)。過去に表示装置114に表示された道路標識と、その表示が行なわれた時刻、及び表示が行なわれた車両位置が取得される。
標識表示優先度データベース103cに記録されている優先順位を決定するりためのデータテーブル(図2)を取得する(ステップS117)。取得した道路標識が(N+1)[Nは自然数]個以上であるか判断する(ステップS119)。N+1個以上でない場合には、表示する必要のない標識を除いて、優先順位に従って、順に道路標識を表示装置114に表示する(ステップS121)。N+1個以上である場合には、最も優先度の高いNつの道路標識を抽出する(ステップS123)。
【0043】
Nつの道路標識が、優先順位に従って、表示装置114に表示される(ステップS125)。同時に、表示された道路標識は、表示履歴データベース103dに記録される(ステップS127)。以上の処理が終了したのち、メインルーチンにリターンされる。上記、ステップS117〜S125によって、表示順位決定手段が構成される。
図4〜図6に基づいて、本発明の道路路標識表示装置1の作用について説明する。図4〜図6は、道路と、道路に沿って配置された道路標識を示す模式図であり、車両のコックピット内に配置された表示装置114の表示画面114Sを、走行位置毎に表した模式図である。
【0044】
図4において、前進している車両が走行位置p1において、制限時速50km/hの領域を、制限速度以内に走行している場合、「+方道路交差点あり」の道路標識A1と、「最高速度50km/h」の道路標識A2を取得すると、「+方道路交差点あり」の道路標識a1のみが表示される。「最高速度50km/h」の道路標識は、表示履歴から表示履歴があり、かつ車速は、50km/h以下を維持しているので、「最高速度50km/h」の道路標識は、画面に表示されない。走行位置p2で、「8時から20時まで駐車禁止」の道路標識B1を取得すると、車両情報検出部112からステップS111で取得した車速から、停止することが予想されないので、優先順位9とし、表示画面114Sにはなにも表示されない。
【0045】
走行位置p3では、「指定方向(右)外進行禁止」の道路標識C1と、「信号機あり」の道路標識C2とを取得すると、それぞれ図2のデータテーブルに基づいて、道路標識C1は4、道路標識C2は5と、優先順位が決定される。画面114Sでは、例えば優先順位の高い標識が左側に配置されるように予め設定されていてもよい。このように決めることによって、表示される位置で、運転者に標識の重要度を知らせることができる。
【0046】
交差点に差し掛かった走行位置p4では、経路探索によって決定されている経路が右折である場合、右ウインカーを点滅させている場合には、画面には何も表示されない。また、ウインカーをなにも点滅させていない場合には、車両は直進するものと予想されるので、直進した場合に規制違反が予想される「通行止」の道路標識D1は、優先順位1となり、画像d1が、画面114Sに表示される。この道路標識D1情報の取得は、カメラ113によるものでも、地図情報データベース102から抽出したものであってもよい。
【0047】
走行位置p4で左ウインカを点滅させている場合には、左折することが予想される。左折した場合には、「進入禁止」の道路標識E1が存在するため、規制違反となると予想される。よって、道路標識E1の優先順位は1に変更され、画面114Sに表示される。
ここで例えば、車両情報検出部112からステップS113で取得した操舵角度により、車両が実際に左折したと判断した場合には、法令違反となり、道路標識E1の優先順位は0に上がる。道路標識e1は、画面114Sに常時表示となる。
走行位置p5では、「右背向屈曲あり」の道路標識F1と、「最高速度50km/h」の道路標識F2とを取得すると、速度制限は変わっていないので、道路標識F2の優先順位を下げ、道路標識f1のみ表示される。
【0048】
走行位置p6では、「すべりやすい」の道路標識G1と、「追越禁止」の道路標識G2、「最高速度50km/h」の道路標識G3とを取得すると、道路標識G3は、速度制限が変わっておらず、また走行速度も50km/h以下であるので、優先順位を下げ、画面114には表示されない。また、「追越禁止」区間が開始されるため、優先順位が上げられ、画面114Sに標識g2が表示される。また、「すべりやすい」の道路標識G1は、警戒標識であり、優先順位の高い2つの標識g1、g2が表示される。
走行位置p7では、「すべりやすい」の道路標識H1と、「最高速度30km/h」の道路標識H2とを取得すると、最高速度制限が変化したので規制の変化点となり、優先順位が上がり、道路標識h1とともに道路標識h2が表示される。
【0049】
次に、図5に基づいて、他の表示例を説明する。走行位置p8で、「追越禁止」区域の終了を示す道路標識I1と、「最高速度50km/h」の道路標識I2とを取得すると、規制の変化点を示す標識なので、道路標識I1の優先順位が上げられ、標識i1と標識i2とが画面114Sに表示される。交差点の手前に差し掛かった走行位置p9で、「優先道路」の道路標識J1を取得すると、指示標識は原則として優先順位6であるが、他の標識が取得されていないので、優先道路の標識j1を、画面114Sに表示する。
【0050】
交差点を右折して、橋の手前の走行位置p10では、「一時停止」の道路標識K1と、「二方向交通」の道路標識K2と、「最大幅2.2m」の道路標識K3とを取得すると、優先順位が4と5の標識k1、k2が画面114Sに表示される。また、ステップS113で取得した車幅が、道路標識K3で規制されている最大幅に満たないため、優先順位は下げられ、道路標識K3は表示されない。なお車速をモニターし、停止しない場合には、さらに標識k1に優先順位が上げられる。
【0051】
橋を通過した走行位置p11では、「幅員減少」の道路標識L1と、「最高速度50km/h」の道路標識L2と、大型車の「最高速度30km/h」の道路標識L3とを取得すると、ステップS113で取得した車種が大型車でないため、大型車の「最高速度30km/h」の道路標識L3の優先順位は下げられ、画面114Sには表示されない。「最高速度50km/h」の道路標識L2についても、過去に表示履歴があるので、優先順位が下げられ、表示されず、この3つの標識の中で、最も優先順位の高い「幅員減少」の道路標識l1のみが、画面114Sに表示される。
【0052】
次に、図6に基づいて、他の表示例を説明する。走行位置p12において、「一時停止」の道路標識M1と、「横断歩道」の道路標識M2と、「国道番号」の道路標識M3を取得すると、優先順位が1の標識m1と、指示標識であるが人間に対する注意を喚起する標識である「横断歩道」の道路標識M2を優先して、これらの意匠m1、m2を画面114Sに表示する。T字路で左折した走行位置p13において、「最高速度50km/h」の道路標識N1と、「踏切あり」の道路標識N2と、「学校、幼稚園、保育所あり」の道路標識N3を取得すると、新たな道路に合流したため、制限速度が変わっており、「最高速度50km/h」の道路標識N1の優先順位が上がり、「学校、幼稚園、保育所あり」の道路標識N3の優先順位が2となっており、これらの標識n1、n3が、画面114Sに表示される。
【0053】
走行位置p14で、「踏切あり」の道路標識Q1を取得すると、ステップS111で取得した車速から、車両が停止又は徐行していない場合には、優先順位が上げられ、画面114Sに標識q1が表示される。また、ブレーキの踏み込みが検出された場合には、優先順位を下げ、或いは表示を消してもよい。
踏み切りを通過した走行位置p15では、「学校、幼稚園、保育所あり」の道路標識R1と、「最高速度50km/h」の道路標識R2と、「駐車禁止」の道路標識R3を取得すると、速度制限が変わっていないので、「最高速度50km/h」の道路標識は表示されない。また、走行中であるため駐車する可能性は低いので「駐車禁止」の道路標識も表示されず、「学校、幼稚園、保育所あり」の道路標識r1のみが、画面114Sに表示される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の道路標識表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】道路標識を表示する優先順位を示すデータテーブルである。
【図3】道路標識表示装置の作用を示すフローチャートである。
【図4】車両の進行と共に表示される道路標識の内容を示す摸式図である。
【図5】車両の進行と共に表示される道路標識の内容を示す摸式図である。
【図6】車両の進行と共に表示される道路標識の内容を示す摸式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 道路標識表示装置
101 経路案内処理部
102 地図データベース
103 案内優先順位判定部
103a 道路標識位置データベース
103c 標識表示優先度データベース
104 道路標識認識処理部
111 GPS
112 車両情報検出部
114 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に位置する道路標識の視覚情報を取得する標識情報取得手段と、
前記標識情報取得手段によって取得された標識情報が複数ある場合には、所定の順位に従って表示順位を決定する表示順位決定手段と、
前記表示順位決定手段によって決定された順位に従って道路標識の視覚情報を表示する表示手段とを有することを特徴とする道路標識表示装置。
【請求項2】
前記標識情報取得手段は、
車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、
道路標識の位置と視覚情報を含む地図情報が記録された地図情報記憶手段と、
前記現在位置取得手段によって取得された位置情報に基づき、進行方向に位置する道路標識を、前記地図情報記憶装置に記憶された地図情報から検索する道路標識検索手段とを有する請求項1に記載の道路標識表示装置。
【請求項3】
前記標識情報取得手段は、
更に、車両の外側の画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された画像から道路標識の視覚情報を抽出する道路標識抽出手段とを有する請求項1に記載の道路標識表示装置。
【請求項4】
前記表示順位決定手段は、規制標識を最優先として表示する請求項1〜3のいずれか1に記載の道路標識表示装置。
【請求項5】
さらに、車両の状況を取得する車両状況取得手段を有し、
前記表示手段は、車両状況取得手段により取得された車両状況が、標識情報取得手段で取得された道路標識の示す法令を遵守している場合には、その道路標識の表示は行なわない請求項4に記載の道路標識表示装置。
【請求項6】
車両状況取得手段により取得された車両状況が、標識情報取得手段で取得された道路標識の示す条件に合致しない場合には、取得された道路標識を最優先で表示する請求項5に記載の道路標識表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−110394(P2009−110394A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283573(P2007−283573)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】