説明

配線基板およびその製造方法

【課題】 TFT基板11とソースTCP18とのコンタクト領域またはその近傍におけるパネル配線20の断線が修正された液晶表示パネルの提供。
【解決手段】 液晶表示パネルは、TFT基板11と、TFT基板11上に形成され、断線部分を有するパネル配線20と、パネル配線20の額縁領域に配置されたソースTCP18と、額縁領域におけるパネル配線20と接続され、ソースTCP18のTFT基板11側面に形成された配線6とを有する。断線部分は額縁領域14内またはその近傍に存在する。液晶表示パネルは、断線部分の配線を接続し、かつ少なくとも一部がパネル配線20と配線6との間に介在して両配線20,6を接続する転写配線3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線の断線部分が修正された配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、画像の表示を行う表示領域と、その周辺部の周辺領域とを有する。表示領域には液晶層を駆動するためのアクティブ素子やアクティブ素子に接続された配線が形成され、周辺領域には表示領域に形成された配線の引き出し電極や表示に必要な周辺配線が形成されている。一方、表示装置の大型化に伴って配線が長尺化しているので、断線不良のない配線を形成することが困難である。
【0003】
断線不良を修正する方法としては、YAGレーザ等を用いて、断線した配線と予備配線とを接続することにより、断線した配線の両端から信号を入力させる方法がある(例えば特許文献1を参照)。また、支持部材の片面に設けられた転写用媒体を断線部分にスパッタさせて転写する方法もある(例えば特許文献2,3を参照)。
【特許文献1】特開平3-23425 号公報
【特許文献2】特開2000-31013号公報
【特許文献3】特開平7-253583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶ドライバが搭載された、TCP(Tape Carrier Package)やCOF(Chip On Film)、SOF(System On Film)などのフィルム配線は、異方性導電接着材を介して、周辺領域内の端子に接続される。周辺領域内の配線に断線が生じた場合、フィルム配線と周辺領域内の端子とがコンタクトする領域が減少するので、接続抵抗が増大し、パネルモジュールの表示に悪影響を与える。接続抵抗を減少させるために、異方性導電接着材中の導電性粒子径を大きくする或いは導電性粒子の密度を高めると、絶縁性が保たれなくなるおそれがある。
【0005】
断線部分のみの接続抵抗を減少させるために、フィルム配線と周辺領域内の端子との接合部をレーザーメルトする方法が想定される。しかし、フィルム配線と端子との間に介在する異方性導電接着材が障害となり、フィルム配線と周辺領域内の端子との電気的な接続は得られない。したがって、コンタクト領域に断線が生じた場合には、不良品としてパネルを廃棄する必要がある。
【0006】
一方、転写用媒体を断線部分に転写する方法では、断線部分に数百nm程度の膜厚の金属薄膜を形成するので、電源ラインなどの高電流密度の配線に対して高信頼性を確保した断線修正が困難である。
【0007】
本発明の目的は、第1基板上に形成された第1配線と第2基板上に形成された第2配線とのコンタクト領域またはその近傍における第1配線の断線を修正するための技術を提供すること、例えば断線部分が修正された配線基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、第1基板と、前記第1基板上に形成され、断線部分を有する第1配線と、前記第1配線の一部の領域に配置された第2基板と、前記一部の領域における前記第1配線と接続され、前記第2基板の前記第1基板側面に形成された第2配線とを有し、前記断線部分が前記第1配線の前記一部の領域内またはその近傍に存在する配線基板であって、前記断線部分の配線を接続し、かつ少なくとも一部が前記第1配線と前記第2配線との間に介在して前記第1配線と前記第2配線とを接続する第3配線を有する。
【0009】
断線部分の配線を接続する第3配線は、少なくとも一部が第1配線と第2配線との間に介在して第1配線と第2配線とを接続するので、第1配線と第2配線とのコンタクト領域の面積が減少せず、コンタクト抵抗が増大しない。したがって、本発明の配線基板を液晶表示パネルに適用した場合には、コンタクト抵抗の増大による表示不良が生じない。
【0010】
本発明の配線基板は、導電性粒子を含有する異方性導電材が前記第1配線と前記第3配線との間に介在していても良い。これにより、異方性導電材が第1配線と第3配線とを電気的かつ機械的に接続することができる。また、異方性導電材を用いることにより、隣接する配線との短絡を防ぐことができる。
【0011】
本発明の配線基板は、前記第1配線と前記第3配線とがレーザーメルトにより接続されていても良い。これにより、第1配線と第3配線との接続抵抗の低抵抗化が可能となる。
【0012】
本発明の配線基板は、前記第3配線のピッチが前記第1配線のピッチよりも短くても良い。これにより、配線基板の製造工程において、異機種パネルの第1配線に対して第1配線のピッチに関係なく第3配線を配置することができる。
【0013】
本発明の配線基板は、導電性粒子を含有する異方性導電材が前記第2配線と前記第3配線との間に介在していても良い。これにより、異方性導電材が第2配線と第3配線とを電気的かつ機械的に接続することができる。また、異方性導電材を用いることにより、隣接する配線との短絡を防ぐことができる。
【0014】
本発明の配線基板は、導電性粒子を含有する第1異方性導電材が前記第1配線と前記第3配線との間に介在し、導電性粒子を含有する第2異方性導電材が前記第2配線と前記第3配線との間に介在していても良い。この場合、第1異方性導電材に含まれる導電性粒子の粒径が第2異方性導電材に含まれる導電性粒子の粒径よりも大きいか、あるいは第1異方性導電材に含まれる導電性粒子の密度が第2異方性導電材に含まれる導電性粒子の密度よりも高いことが好ましい。第1異方性導電材を第1配線と第3配線との間に介在させると、断線部分を有する第1配線の抵抗に、第1異方性導電材との接続抵抗および第3配線の配線抵抗が加わるので、第1異方性導電材との接続抵抗をできる限り小さくすることが好ましい。第1異方性導電材に含有された導電性粒子の粒径を大きくするか、あるいは密度を高くすることにより、第1異方性導電材との接続抵抗が減少するので、第1配線に付加される抵抗が減少する。
【0015】
本発明の第1の局面による製造方法は、第1基板と、前記第1基板上に形成され、断線部分を有する第1配線と、前記第1配線の一部の領域に配置された第2基板と、前記一部の領域における前記第1配線と接続され、前記第2基板の前記第1基板側面に形成された第2配線と、前記断線部分の配線を接続する第3配線とを有し、前記断線部分が前記第1配線の前記一部の領域内またはその近傍に存在する配線基板を製造する方法であって、基材上に剥離可能に形成された前記第3配線を前記断線部分の配線上に配置する工程と、前記基材を前記第3配線から剥離して、前記第3配線を前記断線部分の配線上に転写する工程とを有する。
【0016】
基材を第3配線から剥離することにより、第3配線を断線部分の配線上に転写するので、第3配線の膜厚を任意に設定することができる。したがって、電源ラインなどの高電流密度の配線に対しても高信頼性を確保した断線修正が可能となる。また第3配線の両面にて電気的接続を行うことができる。
【0017】
本発明の第1の局面による製造方法は、接着剤層を介さずに前記基材上に前記第3配線が形成されていても良い。第3配線の基材剥離面に接着剤が存在しないので、接着剤による接続抵抗の上昇が抑えられ、低抵抗接続が可能となる。
【0018】
本発明の第1の局面による製造方法は、前記配置工程と前記転写工程との間に、レーザーメルトにより前記第1配線と前記第3配線とを接続する工程をさらに有していても良い。第1配線と第3配線とを接合部にレーザーメルトを施すことにより、接続抵抗の低抵抗化が可能となる。
【0019】
本発明の第2の局面による製造方法は、第1基板と、前記第1基板上に形成され、断線部分を有する第1配線と、前記第1配線の一部の領域に配置された第2基板と、前記一部の領域における前記第1配線と接続され、前記第2基板の前記第1基板側面に形成された第2配線と、前記断線部分の配線を接続する第3配線とを有し、前記断線部分が前記第1配線の前記一部の領域内またはその近傍に存在する配線基板を製造する方法であって、異方性導電層に挟まれた前記第3配線または異方性導電層の表面に形成された前記第3配線を前記断線部分の配線上に前記異方性導電層を介して配置する工程と、前記第3配線とともに前記異方性導電層を加圧することにより、前記異方性導電層を介して前記第3配線を前記断線部分の配線上に転写する工程とを有する。
【0020】
通常はリールで供給される異方性導電接着材中またはその表面に第3配線を形成することにより、第3配線を支持する基材を削減することが可能となる。また、第3配線のハンドリングおよび断線部分への位置合せが容易となる。
【0021】
本発明の第1または第2の局面による製造方法は、前記基材上に剥離可能に形成された前記第3配線のピッチが前記第1配線のピッチよりも短くても良い。第3配線のピッチを第1配線のピッチよりも微細に設計することにより、第1配線のピッチに関係なく第3配線を断線部分の配線上に配置することが可能となる。したがって、異機種パネルに対し、第3配線が形成された基材や異方性導電材を個別に製作する必要がなくなる。
【0022】
本発明の第1または第2の局面による製造方法は、前記転写工程の後、前記第2基板を前記第1配線の前記一部の領域に配置することにより、前記第3配線の少なくとも一部を前記第1配線と前記第2配線との間に介在させて前記第1配線と前記第2配線とを接続する工程をさらに有していても良い。第1配線の断線部分を第3配線にてバイパスし、第1配線と第2配線とのコンタクト領域の面積を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1基板上に形成された第1配線と第2基板上に形成された第2配線とのコンタクト領域またはその近傍における第1配線の断線が修正される。これにより、例えば液晶モジュール製造工程において歩留まりの向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では配線基板として液晶表示パネルについて説明するが、本発明の配線基板は他の液晶パネルにも適用することができる。例えば、画素を光学的に順次シフトさせる画像シフトパネルや三次元映像を表示可能とするパララックスバリアパネルなどに適用することもできる。また本発明の配線基板は、一対の基板間に液晶材料が封入された液晶パネルに限らず、無機または有機エレクトロルミネッセントパネル、プラズマディスプレイパネル、エレクトロクロミック表示パネル、電気泳動表示パネルなどにも適用することができる。
【0025】
(実施形態1)
図1は本実施形態の液晶表示パネルを模式的に示す平面図である。本実施形態の液晶表示パネルは、TFT(Thin Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示パネルである。この液晶表示パネルは、TFT基板11とこれに対向する対向基板12とが貼り合わされた構造を有しており、TFT基板11の対向面の一部が露出している。液晶表示パネルは、一対の基板11,12間に液晶層を有している。図1中の対向基板12内に格子模様を付している部分は、画像信号に基づいて映像を表示する表示領域13である。表示領域13の周辺の領域は額縁領域14とも呼ばれている。
【0026】
TFT基板11は、ガラス基板上に、互いに交差して形成された走査配線および信号配線と、画素ごとに設けられたTFT素子と、画素電極とを有する。対向基板12には、共通電極が形成されている。TFT基板11の額縁領域14には、走査配線の線順次走査を制御するゲートドライバIC15と、信号配線に画像データ信号を供給するソースドライバIC16とがそれぞれ複数個設けられている。
【0027】
液晶表示パネルは、電子部品としての各ドライバIC15,16がTCP実装方式によって接続された構造を有する。TCP実装方式とは、ポリイミドフィルムなどのフレキシブル基板の上にICチップが搭載されたTCPを表示パネルと接続する方式である。以下、ゲートドライバIC15が搭載されたTCPをゲートTCP17、ソースドライバICが搭載されたTCPをソースTCP18と呼ぶ。TCP17,18は、ドライバIC15,16に外部信号を入力するIC駆動用配線、対向電極用配線、ドライバIC15,16から表示領域へ映像信号を供給するための信号出力配線、隣接するTCPに駆動信号を入出力するための中継配線を備えている。
【0028】
表示パネルの額縁領域14の一部には信号入力用のFPC(フレキシブルプリント配線板)19が接続されている。信号入力用のFPC19は、表示に必要な各種電気信号(画像データ信号など)やドライバIC15,16などを駆動するための電源電圧(IC駆動用電源電圧、共通電極駆動用電源電圧など)を外部から表示パネルに入力する役割を担っている。画像表示を行うための画像データ信号、ドライバIC15,16のための駆動電源、対向基板12の共通電極の電気信号等は、全てFPC19から導入されている。導入された各種信号はゲートTCP17あるいはソースTCP18内の配線を順次伝搬する。
【0029】
額縁領域14には複数の配線が形成されている。大別すると、表示領域13へ画像データ信号を出力するための配線21(表示領域への導入用電気配線)と、隣接する各TCP17,18間の電気的接続を行う配線22と、FPC19およびTCP17,18を電気的に接続する電源配線23である。
【0030】
表示領域13内の配線は、導電性材料を1種または2種以上含有する単層膜や積層膜であり、TFTを形成する薄膜プロセスによって形成される。導電性材料として、例えばAl、Ta、Mo、Cr、Tiなどの金属やITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)などの導電性酸化物が挙げられる。典型的には、表示領域13内の配線は金属薄膜と導電性酸化膜との積層膜である。額縁領域14内の各配線21,22,23は表示領域13内の配線の形成と同じプロセスや同じ材料を用いて形成される。
【0031】
次に、額縁領域14内の配線に断線が生じた場合の修正工程について説明する。図2は額縁領域14内のTAB(Tape Automated Bonding)接続端子部を模式的に示す平面図である。以下、TAB接続端子部をパネル配線(第1配線)20と呼び、断線が生じているTAB接続端子部を特に断線パネル配線20と呼ぶことがある。
【0032】
図2に示す断線部分に対して転写配線付きフィルムにより修正を行う。図3は転写配線付きフィルム1を断線部分に位置合わせした状態を示す平面図である。転写配線付きフィルム1は、支持フィルム(基材)2と、支持フィルム2上に形成され、パネル配線20の形状に対応してパターニングされた転写配線(第3配線)3とを有する。
【0033】
支持フィルム2は、位置合わせを容易にするために、透光性を有することが好ましい。また支持フィルム2の材料は、パターン精度が高い高精細な配線を形成する場合には、伸縮性の小さいポリイミドが好ましい。ポリイミドフィルムを支持フィルム2に用いた場合、加熱処理することにより転写配線3との密着性が低下するので、支持フィルム2と転写配線3とが容易に剥離する。例えばキャスティング法によりポリイミドフィルム上にCuを蒸着した転写配線付きフィルムであれば、フィルム基材に100 〜150 ℃程度の加熱を行うことにより、支持フィルム2が転写配線3から剥離される。
【0034】
一方、パターン精度の低い配線を形成する場合には、支持フィルム2の材料として、ポリイミドより安価なPET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、エポキシなどを使用することができる。
【0035】
転写配線3は、断線部分の配線を接続するものであり、低抵抗の金属、例えばCu、Ag、Ni、Auなどを含有することが好ましい。転写配線3は単層膜、積層膜、合金膜などである。
【0036】
支持フィルム2と転写配線3との間には微粘性接着材が介在していても良い。この場合、光(好ましくは紫外線)照射によって接着性を低下させる光崩壊性樹脂(好ましくは紫外線崩壊性樹脂)や、加熱によって接着性を低下させる熱可塑性樹脂などからなる樹脂層を設けることが好ましい。これにより、光照射あるいは加熱処理によって転写配線3を支持フィルム2から簡単に剥離させることができる。また、転写後の転写配線3の表面に、界面活性剤などの変色防止剤を適宜散布して、表面保護を施してもよい。転写配線3がCuを含む場合は、変色防止剤を用いることが好ましい。これにより、Cu表面の腐蝕や酸化による高抵抗化を防止することができる。
【0037】
支持フィルム2上に転写配線3を形成する方法として、公知の方法を採用することができる。例えば、無電解めっき法と電気めっき法とを併用してポリイミドフィルム上にCu膜を形成した後にパターニングする方法(例えば特開2001-73159号公報を参照)、紫外線を用いてポリイミドフィルム上にAgパターンを形成した後にAgパターン上に選択的にCuメッキを施す方法(表面技術協会主催第100回講演大会講演要旨集(表面技術協会発行、平成11年9月17日発行)23、24頁を参照)、キャスティング法によりポリイミドフィルム上にCuを蒸着した後にパターニングする方法などが挙げられる。
【0038】
次に、断線パネル配線20の断線部分と転写配線3とを接合する。図4は断線パネル配線20の断線部分と転写配線3とを接合した状態を示す平面図であり、図5は図4中のV−V線断面図である。本実施形態では、支持フィルム2側またはTFT基板11側からレーザ光を照射することにより、断線パネル配線20の断線部分と転写配線3とをレーザーメルト部4にて接合する。
【0039】
断線パネル配線20の断線部分と転写配線3とを接合した後、転写配線付きフィルム1の支持フィルム2を剥離する。図6は支持フィルム2を剥離した状態を示す平面図であり、図7は図6中のVII −VII 線断面図である。図6および図7に示すように、支持フィルム2を剥離することにより、転写配線3が断線パネル配線20の断線部分に転写される。これにより、パネル配線20の断線が修正される。また支持フィルム2を剥離することにより、転写配線3の剥離面にてTCP17,18の配線と接続させることができる。言い換えれば、転写配線付きフィルム1の支持フィルム2を剥離することにより、電気的修復のコンタクト面とは反対の転写配線3面を露出させ、この上面にTCP17,18の電気的接続端子をコンタクトさせることができる。すなわち転写配線3の両面にてTCP17,18の配線と断線パネル配線20とを電気的に接続することができる。
【0040】
このように、支持フィルム2を転写配線3から剥離することにより、転写配線3を断線部分の配線上に転写するので、転写配線3の膜厚を任意に設定することができる。したがって、電源ラインなどの高電流密度の配線に対しても高信頼性を確保した断線修正が可能となる。
【0041】
なお、支持フィルム2と転写配線3との間に微粘着性接着材が介在する転写配線付きフィルム1を用いた場合には、支持フィルム2を剥離した後に、転写配線3の剥離面をアルコールなどの有機溶剤により清掃して、剥離面に残存する微粘着性接着材を除去するのが望ましい。接着材が残存することによる接続抵抗の上昇を抑え、低抵抗接続を可能とするためである。
【0042】
次に、額縁領域14内のパネル配線20とTCP17,18とを接続する。図8はソースTCP18をパネル配線20に接続した状態を示す平面図であり、図9は図8中のIX−IX線断面図である。図9中の矢印はドライバIC15からの出力信号の流れを示している(以降の図において同様)。ソースTCP18は、ポリイミドなどからなる支持基材(第2基板)5と、支持基材5上に形成され、パネル配線20の配置に対応してパターニングされた配線(第2配線)6とを有する。典型的には、ソースTCP18は、異方性導電材7を介してパネル配線20に接続される。
【0043】
異方性導電材7は、絶縁性樹脂を含有するバインダ(結合剤)中に導電性粒子(例えば、プラスチック球の周りにAu/Niメッキ膜が形成された粒子)が分散された部材であり、ACF(異方導電性フィルム)やACP(異方導電性ペースト)が用いられる。絶縁性樹脂としては、熱硬化性あるいは熱可塑性を有し、加熱処理によって接着効果を発揮するものを使用することが好ましい。異方性導電材7は、断線パネル配線20上にのみ配置しても良いし、隣接する他のパネル配線20をも覆うように配置しても良い。
【0044】
異方性導電材7を介してパネル配線20上にソースTCP18を配置した後、好ましくは温度100〜200℃の熱圧着(熱プレス)プロセスにて、支持基材5の上方から熱圧着を行う。これにより、パターニングされた配線6と断線パネル配線20とが異方性導電材7を介して電気的に接続される。このとき、断線部分の配線が転写配線3により接続され、転写配線3が断線パネル配線20とソースTCP18との間に介在するので、パネル配線20が断線していないときと同程度にコンタクト領域の面積を確保することができる。具体的には、図9に示すように、ソースTCP18と重なる部分のパネル配線20の長さL1を確保することができる。したがって、断線パネル配線20とソースTCP18の配線6とが低抵抗にて接続されるので、ドライバIC15からの出力信号が減衰されず、コンタクト抵抗の増大による表示不良が生じない。
【0045】
一方、断線部分の配線が転写配線3により接続されない場合には、表示不良が生じるおそれがある。図10は断線したパネル配線20にソースTCP18を接続した状態を示す平面図であり、図11は図10中のXI−XI線断面図である。図11に示すように、転写配線3により断線部分の配線が接続されない場合には、断線したパネル配線20とソースTCP18の配線6とが有効接続長L2にて接続される。言い換えれば、図9に示す有効接続長L1のときと比べて、断線パネル配線20とソースTCP18の配線6とのコンタクト領域の面積が減少する。したがって、コンタクト抵抗が増大するので、ドライバIC15からの出力信号が減衰して、表示不良が生じるおそれがある。
【0046】
なお、本実施形態ではソースTCP18の実装領域内で断線が生じた場合を例示的に説明したが、ゲートTCP17やFPC19の実装領域内で断線が生じた場合についても同様に本発明を適用することができる。特に、抵抗減衰が懸念されるゲートTCP17やソースTCP18への駆動電源配線や諧調信号配線の断線修正においては有効である。
【0047】
(実施形態2)
実施形態1では、ソースTCP18の実装領域内で断線が生じた場合について説明したが、ソースTCP18の実装領域の近傍に断線が生じた場合についても本発明を適用することができる。本実施形態ではソースTCP18の実装領域の近傍に断線が生じた場合について説明する。
【0048】
図12は本実施形態におけるソースTCP18の実装領域およびその近傍を示す平面図であり、図13は図12中のXIII−XIII線断面図である。なお、以降の図面においては、実施形態1と同一の構成要素に同一の参照符号を付すことにより、構成要素の説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、ソースTCP18の実装領域の近傍にてパネル配線20に断線が生じている。断線部分の配線を接続する転写配線3は、断線パネル配線20とソースTCP18の配線6との間に介在する部分と、ソースTCP18の実装領域の外側に延びる部分とから構成される。断線部分の配線が転写配線3により接続され、転写配線3の少なくとも一部が断線パネル配線20とソースTCP18との間に介在するので、パネル配線が断線していないときと同程度にコンタクト領域の面積を確保することができる。具体的には、図13に示すように、ソースTCP18と重なる部分のパネル配線20の長さL1を確保することができる。したがって、断線パネル配線20とソースTCP18の配線6とが低抵抗にて接続されるので、ドライバIC15からの出力信号が減衰されず、コンタクト抵抗の増大による表示不良が生じない。
【0050】
(実施形態3)
実施形態1では、転写配線付きフィルム1の転写配線3として、パネル配線20の形状に対応してパターニングされたものを用いたが、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、転写配線のピッチがパネル配線20のピッチよりも短い場合について説明する。図14は本実施形態による転写配線30を断線パネル配線20に接合した状態を示す平面図である。
【0051】
図14に示すように、転写配線30のピッチは断線パネル配線20のピッチよりも短く、断線修正に必要な転写配線30のみがレーザーメルト部4にて接合されている。このようなピッチの転写配線30を採用することにより、端子ピッチの異なるパネル配線20に対しても転用可能な転写配線付きフィルム、言い換えれば汎用性の高い転写配線付きフィルムを提供することが可能となる。
【0052】
(実施形態4)
実施形態1では、転写配線3と断線パネル配線20とをレーザーメルト部4にて接合しているが、転写配線3と断線パネル配線20との接合を異方性導電材により行っても良い。この場合、転写配線3が異方性導電層に挟まれた異方性導電材、転写配線3が異方性導電層の表面に形成された異方性導電材を用いることができる。異方性導電材は、典型的にはリールにて供給されるので、実施形態1で用いた支持フィルム2を削減することが可能となる。また、リールを用いることにより、転写配線3のハンドリングや断線部分への位置合せが容易となる。なお、実施形態1の転写配線付きフィルム1を用い、異方性導電材を介して転写配線3と断線パネル配線20とを接合しても良い。
【0053】
図15は転写配線3と断線パネル配線20とが異方性導電材8を介して接合されている状態を示す平面図である。図15に示すように、本実施形態は異方性導電材8を介して転写配線3と断線パネル配線20とが接合されている点を除けば、図9に示す実施形態1と同様である。但し、転写配線3と断線パネル配線20とをできる限り低抵抗にて接合することが好ましい。そこで、転写配線3と断線パネル配線20との間に介在する異方性導電材8は、パネル配線とソースTCP18の配線6との間に介在する異方性導電材7よりも導電性粒子の粒径を大きくするか、あるいは導電性粒子の密度を高くする。なお、導電性粒子の粒径や密度は、配線材料の配線ピッチ(導体幅)における通電配線の抵抗許容値、印加電圧(電流)における絶縁抵抗保障などを考慮して適宜決定することができる。
【0054】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに、さらにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、上記実施形態ではTFT方式の液晶表示パネルについて説明したが、TFT方式以外のアクティブマトリクス方式の液晶表示パネル、例えばMIM(Metal Insulator Metal )方式の液晶表示パネルに対して適用することもできるし、あるいは単純マトリクス方式の液晶表示パネルに対して適用することもできる。
【0055】
また上記実施形態では、第2基板として、ドライバIC15,16が搭載されたTCP17,18を例示的に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドライバICだけでなく他の電子部品(メモリーなど)も搭載されたSOFなどのフィルム配線を第2基板として用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の配線基板は、液晶表示パネル、無機または有機エレクトロルミネッセントパネル、プラズマディスプレイパネル、エレクトロクロミック表示パネル、電気泳動表示パネル、電子トナーディスプレイパネルなどに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態1の液晶表示パネルを模式的に示す平面図である。
【図2】額縁領域14内のパネル配線20を模式的に示す平面図である。
【図3】転写配線付きフィルム1を断線部分に位置合わせした状態を示す平面図である。
【図4】パネル配線20の断線部分と転写配線3とを接合した状態を示す平面図である。
【図5】図4中のV−V線断面図である。
【図6】支持フィルム2を剥離した状態を示す平面図である。
【図7】図6中のVII −VII 線断面図である。
【図8】ソースTCP18をパネル配線20に接続した状態を示す平面図である。
【図9】図8中のIX−IX線断面図である。
【図10】断線したパネル配線20にソースTCP18を接続した状態を示す平面図である。
【図11】図10中のXI−XI線断面図である。
【図12】実施形態2におけるソースTCP18の実装領域およびその近傍を示す平面図である。
【図13】図12中のXIII−XIII線断面図である。
【図14】実施形態3による転写配線30を断線パネル配線20に接合した状態を示す平面図である。
【図15】転写配線3と断線パネル配線20とが異方性導電材8を介して接合されている状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 転写配線付きフィルム
2 支持フィルム
3 転写配線(第3配線)
4 レーザーメルト部
5 支持基材(第2基板)
6 配線(第2配線)
7 (第2)異方性導電材
8 (第1)異方性導電材
11 TFT基板(第1基板)
12 対向基板
13 表示領域
14 額縁領域
15 ゲートドライバIC
16 ソースドライバIC
17 ゲートTCP
18 ソースTCP
19 FPC
20 パネル配線(第1配線)
21,22,23 配線
23 電源配線
30 転写配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板上に形成され、断線部分を有する第1配線と、前記第1配線の一部の領域に配置された第2基板と、前記一部の領域における前記第1配線と接続され、前記第2基板の前記第1基板側面に形成された第2配線とを有し、前記断線部分が前記第1配線の前記一部の領域内またはその近傍に存在する配線基板であって、
前記断線部分の配線を接続し、かつ少なくとも一部が前記第1配線と前記第2配線との間に介在して前記第1配線と前記第2配線とを接続する第3配線を有する配線基板。
【請求項2】
導電性粒子を含有する異方性導電材が前記第1配線と前記第3配線との間に介在する請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1配線と前記第3配線とがレーザーメルトにより接続されている請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第3配線のピッチが前記第1配線のピッチよりも短い請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
導電性粒子を含有する異方性導電材が前記第2配線と前記第3配線との間に介在する請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
導電性粒子を含有する第1異方性導電材が前記第1配線と前記第3配線との間に介在し、導電性粒子を含有する第2異方性導電材が前記第2配線と前記第3配線との間に介在し、前記第1異方性導電材に含まれる前記導電性粒子の粒径が前記第2異方性導電材に含まれる前記導電性粒子の粒径よりも大きい請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
導電性粒子を含有する第1異方性導電材が前記第1配線と前記第3配線との間に介在し、導電性粒子を含有する第2異方性導電材が前記第2配線と前記第3配線との間に介在し、前記第1異方性導電材に含まれる前記導電性粒子の密度が前記第2異方性導電材に含まれる前記導電性粒子の密度よりも高い請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
第1基板と、前記第1基板上に形成され、断線部分を有する第1配線と、前記第1配線の一部の領域に配置された第2基板と、前記一部の領域における前記第1配線と接続され、前記第2基板の前記第1基板側面に形成された第2配線と、前記断線部分の配線を接続する第3配線とを有し、前記断線部分が前記第1配線の前記一部の領域内またはその近傍に存在する配線基板を製造する方法であって、
基材上に剥離可能に形成された前記第3配線を前記断線部分の配線上に配置する工程と、
前記基材を前記第3配線から剥離して、前記第3配線を前記断線部分の配線上に転写する工程とを有する方法。
【請求項9】
接着剤層を介さずに前記基材上に前記第3配線が形成されている請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記配置工程と前記転写工程との間に、レーザーメルトにより前記第1配線と前記第3配線とを接続する工程をさらに有する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1基板と、前記第1基板上に形成され、断線部分を有する第1配線と、前記第1配線の一部の領域に配置された第2基板と、前記一部の領域における前記第1配線と接続され、前記第2基板の前記第1基板側面に形成された第2配線と、前記断線部分の配線を接続する第3配線とを有し、前記断線部分が前記第1配線の前記一部の領域内またはその近傍に存在する配線基板を製造する方法であって、
異方性導電層に挟まれた前記第3配線または異方性導電層の表面に形成された前記第3配線を前記断線部分の配線上に前記異方性導電層を介して配置する工程と、
前記第3配線とともに前記異方性導電層を加圧することにより、前記異方性導電層を介して前記第3配線を前記断線部分の配線上に転写する工程とを有する方法。
【請求項12】
前記基材上に剥離可能に形成された前記第3配線のピッチが前記第1配線のピッチよりも短い請求項8または11に記載の方法。
【請求項13】
前記転写工程の後、前記第2基板を前記第1配線の前記一部の領域に配置することにより、前記第3配線の少なくとも一部を前記第1配線と前記第2配線との間に介在させて前記第1配線と前記第2配線とを接続する工程をさらに有する請求項8または11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−19415(P2006−19415A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194240(P2004−194240)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】