重合体、この重合体を用いた有機薄膜及び有機薄膜素子
【課題】優れたホール輸送性を有する重合体を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有する重合体。
【解決手段】式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有する重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、並びにこの重合体を用いた有機薄膜及びこれを備える有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子又はホール)輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、光センサといった有機薄膜素子への応用が期待されており、このような薄膜を形成できる有機p型半導体材料(ホール輸送性を示す)や有機n型半導体材料(電子輸送性を示す)が種々検討されている。
【0003】
有機p型半導体材料としては、ポリ(3−アルキルチオフェン)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6107117号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の有機p型半導体材料は、ホール輸送性が十分であるとは言い難かった。
【0006】
そこで、本発明は、優れたホール輸送性を有する重合体を提供することを目的とする。さらに本発明は、かかる重合体を含む有機薄膜及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有する重合体を提供する。
【化1】
[式中、
X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)2で表される基(Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示す。2個のAは、同一であっても異なっていてもよい。)を示し、
Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子を示す。
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基(ただし、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基を示す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基を示す。
ただし、Yが炭素原子である場合には、Ar2及びAr3は3価の芳香族複素環基である。]
【0008】
かかる重合体は、イオン化ポテンシャルが小さく(HOMO(最高被占軌道)が浅く)、優れたホール輸送性を有する。
【0009】
さらに、好ましい実施形態では、本発明の重合体は有機溶媒、例えばクロロホルムへの溶解性に優れる。このような性質を有する本発明の重合体は、印刷法によりフレキシブル基板上に有機薄膜素子を形成することができるので、取り扱い性に優れる。
【0010】
本発明はまた、上記本発明の重合体を含む有機薄膜を提供する。かかる本発明の有機薄膜は、本発明の重合体を含むことから、優れたホール輸送性を示すほか、好ましい実施形態では、印刷法によって容易に形成することができる。
【0011】
本発明はさらに、上記本発明の有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供する。有機薄膜素子としては、有機薄膜トランジスタ及び有機薄膜太陽電池が好適である。このような有機薄膜素子は、本発明の有機薄膜を備えており、この有機薄膜は優れたホール輸送性を有することから、電極から注入された電荷や光吸収により発生した電荷等を効率よく輸送することができる。また、この有機薄膜は狭いHOMO−LUMO(最低空軌道)ギャップを有することから長波長の光を効率よく吸収することができる。そのため、本発明の有機薄膜素子は優れた性能を発揮することができ、有機薄膜トランジスタは高いホール移動度を有するものとなり、有機薄膜太陽電池は高い光電変換効率を有するものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れたホール輸送性を有する重合体を提供することができる。また、本発明の好ましい実施形態では、有機溶媒への溶解性にも優れる重合体を提供することができる。さらに、本発明によれば、このような本発明の重合体を含み、優れたホール輸送性を示す有機薄膜、並びに、かかる有機薄膜を備えることで、優れた性能を発揮し得る有機薄膜素子、特に有機薄膜トランジスタ及び有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】好適な実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図12】重合体Gの溶液及び薄膜の吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
以下、Meはメチル基、TIPSはトリイソプロピルシリル基を示す。
【0016】
[重合体]
まず、本実施形態の重合体について説明する。本実施形態の重合体は、上記式(1)及び上記式(2)で表される構造単位を有するものである。ここで、重合体の「構造単位」とは、当該重合体の主鎖を構成している構造単位を意味する。また、「重合体」とは、かかる「構造単位」を少なくとも1つずつ有するものをいい、通常オリゴマーやポリマーに分類されるものの両方を含む。
【0017】
以下、式(1)で表される構造単位の好適な構成について説明する。まず、式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)2で表される基を示す。Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示す。置換基を有していてもよい1価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基が好ましい。
【0018】
重合体が、X1又はX2として、=C(A)2で表される基を有する場合、LUMOをより低くできるので、二つのAのうち少なくとも一方が電子求引性の基であることが好ましく、二つのAがいずれも電子求引性の基であることがより好ましい。電子求引性の基としては、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基又はハロゲン原子が好ましく、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子がより好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0019】
X1及びX2としては、LUMOをより低くできるので、酸素原子又は=C(A)2で表される基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0020】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
【0021】
R1及びR2において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
R1及びR2において、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基としては、炭素数3〜24の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。なお、分子間の配列をよくするためには、直鎖状のアルキル基が好ましい一方、有機溶媒への溶解性を高くするためには、分岐状のアルキル基が好ましく、これらは所望とする特性に応じて選択することができる。なお、R1及びR2が同じ基であると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0023】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7,11−トリメチルドデシル基が挙げられる。これらのアルキル基は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0024】
直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基とは、アルキル基及び炭素原子以外の原子を含む1価の基、並びにアルキル基及び不飽和結合を含む1価の基をいう。その具体例としては、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル−アルケニル基、アルキル−アルキニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルチオフェニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルキルシリル基及びアルキルアミノ基が挙げられる。なかでも、アルコキシ基、アルキルチオ基が好ましく、アルキルチオ基がより好ましい。なお、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基に含まれるアルキル基としては、上述のアルキル基と同様のものを例示することができる。
【0025】
R1及びR2において、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基としては、例えば、フェニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基を有するフェニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。なかでも、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基を有するフェニル基及び炭素数1〜12のアルキル基を有するフェニル基がより好ましい。
【0026】
R1及びR2において、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するピリジル基が挙げられる。なかでも、炭素数4〜20の1価の複素環基が好ましく、チエニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピリジル基、及び、炭素数1〜12のアルキル基を有するピリジル基がより好ましい。なお、1価の複素環基とは、環状構造を有する有機基において、環を構成する少なくとも1つの原子がヘテロ原子である基をいうものとする。
【0027】
R1及びR2としては、溶媒への溶解性が高くなるので、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、及び、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基が好ましい。LUMOをより低くできるので、R1及びR2の少なくとも一方は、ハロゲン原子、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基、又はアルキル基を含むアルキル基以外の基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された1価の基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基がより好ましい。さらに、R1及びR2の両方が、ハロゲン原子、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基がより好ましく、R1及びR2の両方がハロゲン原子であると特に好ましい。置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0028】
式(1)中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基を示す。
【0029】
Ar1において、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の芳香族炭化水素化合物における芳香環上の4つの水素原子を除いた4価の基を示す。芳香族炭化水素化合物は、単環であっても縮合環であってもよい。これらの中でも、より優れた溶解性が得られ、かつ、製造が容易であるので、単環又は5以下の環が縮合した縮合環が好ましく、単環又は2つの環が縮合した縮合環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
【0030】
芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ピレン、ペリレンが挙げられる。なかでも、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
【0031】
置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基とは、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族複素環式化合物における芳香族複素環上の4つの水素原子を除いた4価の基を示す。芳香族複素環式化合物は、単環又は縮合環であってもよい。これらの中でも、より優れた溶解性が得られるほか、製造が容易であるので、単環又は5以下の環が縮合した縮合環が好ましく、単環又は2つの環が縮合した縮合環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
【0032】
芳香族複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、キノリン、インドールが挙げられる。なかでも、チオフェン、チエノチオフェン又はピリジンが好ましく、より好ましくはチオフェンである。
【0033】
Ar1における芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0034】
Ar1としては、ベンゼン又はチオフェンにおける芳香環上の4つの水素原子を除いた4価の基が好ましい。
【0035】
本実施形態に係る重合体において、式(1)で表される構造単位は、式(5)で表される構造単位であることが好ましい。
【化2】
【0036】
式(5)中、R1、R2、X1及びX2は、上記と同義である。Z1としては、下記の式(i)で表される基、式(ii)で表される基、式(iii)で表される基、式(iv)で表される基、式(v)で表される基、式(vi)で表される基、式(vii)で表される基、式(viii)で表される基及び式(ix)で表される基のうちのいずれかの基が好ましく、式(ii)及び(vii)で表される基のうちのいずれかの基がより好ましく、式(ii)で表される基が特に好ましい。Z1が式(i)、(ii)又は(ix)で表される基である場合、式(5)で表される基はそれぞれフラン環、チオフェン環又はピロール環の構造を有する。これらの環、特にチオフェン環は、好適な電気的性質を示すため、これらの環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。
【0037】
【化3】
【0038】
式(vii)、(viii)及び(ix)中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R11とR12とは互いに結合して環を形成していてもよい。また、式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0039】
R11、R12、R13及びR14における1価の有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐状の鎖状基(ここで、鎖状基とは、環式構造を有しない基を示す。)、1価の環状基(ここで、環状基とは、環式構造を有する基を示す。この環式構造は、単環でも縮合環でもよく、炭化水素環でも複素環でもよく、飽和でも不飽和でもよい。)が挙げられる。また、1価の有機基は、電子供与性の基であっても電子求引性の基であってもよく、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシ基、炭素数6から20のアリール基が好ましい。
【0040】
R11、R12、R13及びR14における1価の有機基が有していてもよい置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。その具体例としては、アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基等のアルキルアミノ基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。なお、本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
上記置換基であるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。これらの基は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。アルキル基における水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基としては、炭素数1〜10のフルオロアルキル基が好ましい。
【0042】
上記置換基であるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基)におけるアルキル基としても、上記と同様の基が例示できる。
【0043】
R11、R12、R13及びR14は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましい。
【0044】
次に、式(2)で表される構造単位の好適な構成について説明する。まず、式(2)中、Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子であり、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子が好ましく、ケイ素原子又はゲルマニウム原子がさらに好ましく、ケイ素原子が特に好ましい。Yがケイ素原子である場合、式(1)で表される基はシロール環の構造を有する。シロール環は、好適な電気的性質を示すため、シロール環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。
【0045】
式(2)中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
【0046】
R3及びR4の具体例としては、上記R1及びR2で例示した基を挙げることができる。R3及びR4としては、溶媒への溶解性が高くなるので、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、及び、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基が好ましい。直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基としては、炭素数3〜24の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。なお、分子間の配列をよくするためには、直鎖状のアルキル基が好ましい一方、有機溶媒への溶解性を高くするためには、分岐状のアルキル基が好ましく、これらは所望とする特性に応じて選択することができる。なお、R3及びR4が同じ基であると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0047】
式(2)中、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基を示す。置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の芳香族炭化水素化合物における芳香環上の3つの水素原子を除いた3価の基を示す。置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基とは、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族複素環式化合物における芳香族複素環上の3つの水素原子を除いた3価の基を示す。これらの芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物の具体例としては、上記Ar1の項で例示した芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物を挙げることができる。
【0048】
本実施形態に係る重合体において、上記式(2)で表される構造単位は、式(6)で表される構造単位であることが好ましい。
【化4】
【0049】
式(6)中、R3、R4及びYは、上記と同義である。W2及びW3は、それぞれ独立に、−C(R5)=で表される基(R5は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示す。)又は−N=で表される基を示す。なお、W2及びW3が同じであると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0050】
W1及びW2の両方が−C(R5)=で表される基であると好ましい。また、W1及びW2が−N=で表される基である重合体は、窒素原子を含まない重合体よりも電子受容性が高くなり、その結果、重合体のLUMOを調整することができる。
【0051】
式(6)中、Z2及びZ3は、それぞれ独立に、下記の式(xi)で表される基、式(xii)で表される基、式(xiii)で表される基、式(xiv)で表される基、式(xv)で表される基、式(xvi)で表される基、式(xvii)で表される基、式(xviii)で表される基又は式(xix)で表される基であり、式(xii)及び(xvii)で表される基のうちのいずれかの基が好ましく、式(xii)で表される基が特に好ましい。Z2又はZ3が式(xi)、(xii)又は(xix)で表される基である場合、式(6)で表される基はそれぞれフラン環、チオフェン環又はピロール環の構造を有する。これらの環、特にチオフェン環は、好適な電気的性質を示すため、これらの環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。なお、Z2及びZ3が同じであると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【化5】
【0052】
式(xvii)、(xviii)及び(xix)中、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R21とR22とは互いに結合して環を形成していてもよい。また、式(xviii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0053】
R21、R22、R23及びR24で表される1価の有機基としては、R11、R12、R13及びR14で表される1価の有機基と同じ基が例示される。
【0054】
本実施形態に係る重合体は、式(3)で表される構造単位をさらに有することが好ましい。これにより、溶解性、又は、機械的、熱的若しくは電子的特性を、変化させ得る範囲が広くなる。なお、式(3)で表される構造単位は、上記式(1)で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位とは異なる。
【化6】
【0055】
式(3)中、Ar4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示す。置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素化合物における芳香環上の2つの水素原子を除いた2価の基を示す。置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基とは、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物における芳香族複素環上の2つの水素原子を除いた2価の基を示す。芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物の具体例としては、上記Ar1の項で例示した芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物を挙げることができる。
【0056】
本実施形態に係る重合体において、上記式(3)で表される構造単位は、式(7)で表される構造単位であることが好ましい。
【化7】
【0057】
式(7)中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示し、R7とR8とは互いに結合して環を形成していてもよい。R7及びR8の具体例としては、上記R1及びR2で例示した基を挙げることができる。R7及びR8としては、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、及び、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基が好ましく、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基がより好ましく、水素原子、炭素数6〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がさらに好ましい。なお、分子間の配列をよくするためには、直鎖状のアルキル基が好ましい一方、有機溶媒への溶解性を高くするためには、分岐状のアルキル基が好ましく、これらは所望とする特性に応じて選択することができる。なお、R7及びR8が同じ基であると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0058】
式(7)中、Z4は、式(xxi)で表される基、式(xxii)で表される基、式(xxiii)で表される基、式(xxiv)で表される基、式(xxv)で表される基、式(xxvi)で表される基、式(xxvii)で表される基、式(xxviii)で表される基又は式(xxix)で表される基のうちのいずれかの基が好ましく、式(xxii)で表される基がより好ましい。Z4が式(xxi)、(xxii)又は(xxix)で表される基である場合、式(7)で表される基はそれぞれフラン環、チオフェン環又はピロール環の構造を有する。これらの環、特にチオフェン環は、好適な電気的性質を示すため、これらの環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。
【0059】
【化8】
【0060】
式(xxvii)、(xxviii)及び(xxix)中、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R31とR32とは互いに結合して環を形成していてもよい。また、式(xxviii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0061】
R31、R32、R33及びR34における1価の有機基としては、R11、R12、R13及びR14における1価の有機基と同じ基が例示される。
【0062】
本実施形態に係る重合体の中では、ホール輸送性が向上するので、式(1)と式(2)が交互に並んだ構造を有するものが好ましい。そのような構造としては、式(4)で表される構造単位を有するものが好ましい。
【0063】
【化9】
【0064】
式(4)中、X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、上記と同義である。s及びtは、それぞれ独立に、0〜6の整数を示し、0〜2の整数が好ましい。Ar4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、複数のAr4が同じであると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0065】
本実施形態に係る重合体において、上記式(4)で表される構造単位は、式(8)で表される構造単位であることがより好ましい。
【化10】
【0066】
式(8)中、X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、R7、R8、W2、W3,Z1、Z2、Z3、Z4、s及びtは、上記と同義であり、R7、R8及びZ4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、複数のR7、R8及びZ4がそれぞれ同じであると、重合体の製造が容易となるため、好ましい。
【0067】
本実施形態に係る重合体において、上記式(4)で表される構造単位又は上記(8)で表される構造単位に加えて、さらに上記(3)で表される構造単位又は上記(7)で表される構造単位を有していてもよい。
【0068】
本実施形態に係る重合体としては、式(9)〜(14)で表される構造を有するものが好ましい。なお、式(9)〜(14)中の各符号は、いずれも上記で説明した同一符号とそれぞれ同義である。R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示す。R9及びR10の具体例としては、上記R7及びR8で例示した基が挙げられる。複数あるR7、R8、R9及びR10は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0069】
【化11】
【0070】
【化12】
【0071】
【化13】
【0072】
【化14】
【0073】
【化15】
【0074】
【化16】
【0075】
重合体の末端基としては、例えば、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アミノケト基、アリール基、1価の複素環基(これらの基に結合している水素原子の一部又は全部はフッ素原子と置換されていてもよい)、α−フルオロケトン構造を有する基や、その他の電子供与性の基及び電子求引性の基が挙げられる。なかでも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及び1価の複素環基が好ましい。また、末端基は、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有するものも好ましい。このような末端基としては、例えば、主鎖と炭素−炭素結合を介して結合したアリール基及び1価の複素環基が挙げられる。
【0076】
さらに、重合体の末端基としては、重合活性基も挙げられる。末端基として重合活性基を有している場合、その重合体は、さらに高分子量の重合体を得るための前駆体として用いることもできる。このような前駆体として用いる場合、重合体は、分子内に2つの重合活性基を有していることが好ましい。
【0077】
重合活性基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基、アリールスタンニル基、アリールアルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2で表される基)、ホルミル基、ビニル基が例示される。なかでも、ハロゲン原子、アルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基が好ましい。ここで、ホウ酸エステル残基とは、ホウ酸エステルにおけるホウ素原子が有する結合手の1つが結合手に置き換えられた構造を有する1価の基であり、例えば、下記式(100)〜(103)で表される基が挙げられる。
【0078】
【化17】
【0079】
上記の反応性基のうち、アルキル基をその構造中に含む基である、アルキルスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基及びアリールアルキルスタンニル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。
アリール基をその構造中に含む基である、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アリールスタンニル基及びアリールアルキルスタンニル基におけるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。
【0080】
なお、本実施形態の重合体を有機薄膜として用いる場合、末端基として重合活性基がそのまま残っていると、有機薄膜素子を形成したときの素子特性や耐久性が低下するおそれがあることから、重合活性基は安定な基で置換してもよい。
【0081】
本実施形態の重合体としては、下記一般式(15)〜(23)で表される構造を有するものが、より高い電荷移動度及び優れた溶媒への溶解性を両立させ得ることから特に好適である。
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
【化24】
【0089】
【化25】
【0090】
【化26】
【0091】
上記式(15)〜(23)中、R0及びR00は、それぞれ独立に、上述した末端基を示し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基が好ましい。R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9及びR10は、上記と同義であり、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9及びR10が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、j及びj’は1〜6の整数を示し、pは1以上の整数を示す。pは、重合体を用いた有機薄膜の形成方法に応じて適宜選ぶことができる。すなわち、重合体が昇華性を有しているのであれば、真空蒸着法等の気相成長法を用いて有機薄膜にすることができることから、この場合、pは2〜10が好ましく、2〜5がさらに好ましい。一方、重合体を有機溶媒に溶解した溶液を塗布する方法により有機薄膜を形成する場合、pは、3〜500が好ましく、6〜300がより好ましく、20〜200がさらに好ましい。
【0092】
そして、上述した重合体は、塗布により有機薄膜を形成したときの膜の均一性が良好であるので、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103〜1×108であると好ましく、1×103〜1×106であるとより好ましく、4×103〜1×105であるとさらに好ましい。
【0093】
[重合体の製造方法]
次に、上述した実施形態の重合体の製造方法について説明する。重合体は、どのような方法により製造されたものであってもよいが、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0094】
すなわち、本実施形態に係る重合体は、下記式(1−m)又は下記式(5−m)で表されるモノマー化合物と、下記式(2−m)又は下記式(6−m)で表されるモノマー化合物と、必要に応じて下記式(3−m)又は下記式(7−m)で表されるモノマー化合物とを反応させることにより、製造することが好ましい。この場合、ひとつのモノマー化合物におけるV1及びV2が、別のモノマー化合物におけるV1又はV2とそれぞれ反応して結合が生じ、このような反応が連続して生じることにより重合体が生成する。なお、式(1−m)又は式(5−m)で表されるモノマー化合物は、それぞれ式(1)又は式(5)で表される構造単位に対応し、式(2−m)又は式(6−m)で表されるモノマー化合物は、それぞれ式(2)又は式(6)(W3が−C(R5)=で表される基であるもの)に対応し、式(3−m)又は式(7−m)で表されるモノマー化合物は、それぞれ式(3)又は式(7)で表される構造単位に対応する。
【0095】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0096】
また、本実施形態に係る重合体は、上記モノマー化合物を原料として反応させることにより合成中間体を得た後、当該合成中間体をさらに反応させることにより製造することもできる。合成中間体としては、下記式(4−m)又は式(8−m)で表わされる化合物が好ましい。
【0097】
【化33】
【化34】
【0098】
式(1−m)、(2−m)、(3−m)、(4−m)、(5−m)、(6−m)、(7−m)及び(8−m)中、X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、W2、W3、Z1、Z2、Z3、Z4、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、s及びtは、上記と同義であり、R7、R8、Ar4、及びZ4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。V1及びV2は、それぞれ独立に、重合反応性基を示す。重合反応性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基、アリールスタンニル基、アリールアルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基、ホルミル基、ビニル基が挙げられる。
【0099】
上記モノマー化合物の合成がし易く、かつ、反応がし易いので、V1及びV2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基が好ましい。重合反応性基がこれらの基であると、モノマー化合物同士の反応は生じ易いので、合成上有利である。
【0100】
重合体の製造方法としては、例えば、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法、FeCl3等の酸化剤を用いる方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による方法が挙げられる。
【0101】
これらのうち、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、及びNi(0)触媒を用いる方法が、重合体の構造を制御し易いので好ましい。さらに、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法は、原料を入手しやすく、かつ、反応操作が簡便であるのでより好ましい。
【0102】
上記式(1−m)、(2−m)、(3−m)、(4−m)、(5−m)、(6−m)、(7−m)及び(8−m)で表されるモノマー化合物は、必要に応じて有機溶媒に溶解させた状態で、アルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で反応させることができる。
【0103】
反応に用いられる有機溶媒は、用いるモノマー化合物や反応の種類によっても異なるが、副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理が施されていることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。また、有機溶媒に代えて、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸を用いてもよい。
【0104】
アルカリや適当な触媒を添加する場合、これらは生じさせる反応に応じて選択すればよい。アルカリや触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。
【0105】
また、反応は、不活性雰囲気下で進行させることが好ましい。さらに、同様に、反応中には、脱水処理を行うことが好ましい(ただし、Suzukiカップリング反応等の水との2相系での反応の場合にはその限りではない。)。
【0106】
反応後には、例えば水で反応を止めた後に有機溶媒を用いた抽出を行い、その後溶媒を留去する等の通常の後処理を行うことにより、重合体を得ることができる。得られた重合体の単離及び精製は、クロマトグラフィによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0107】
なお、重合体を有機薄膜素子用の材料として用いる場合は、その純度が素子特性に影響を与えることがあるので、反応前の各モノマー化合物を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に反応させる(重合させる)ことが好ましい。重合体を合成した後には、再沈澱、クロマトグラフィによる分別等の純化処理をすることが好ましい。純度を高めて良好な素子特性を得るために、上述した製造方法で得られた重合体を、さらに蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0108】
なお、上記の例では、式(1)又は式(5)で表される構造単位、式(2)又は式(6)で表される構造単位、及び任意の式(3)又は式(7)で表される構造単位を有する重合体の製造方法を例に挙げて説明したが、これら以外の構造単位を有する重合体も、モノマー化合物を適宜選択することにより、上記反応と同様にして製造することができる。
【0109】
[有機薄膜]
次に、好適な実施形態に係る有機薄膜について説明する。本実施形態に係る有機薄膜は、上述した好適な実施形態の重合体を含む。
【0110】
有機薄膜は、厚さが1nm〜100μmであると好ましく、2nm〜1000nmであるとより好ましく、5nm〜500nmであるとさらに好ましく、20nm〜200nmであると特に好ましい。
【0111】
有機薄膜は、本実施形態に係る重合体の1種類を単独で含むものであってもよく、2種類以上を組み合わせて含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、本実施形態に係る重合体以外に、電子輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(以下、「電子輸送性材料」という。)、ホール輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(以下、「ホール輸送性材料」という。)を混合して含むものであってもよい。
【0112】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用できる。その具体例としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0113】
電子輸送性材料としては、公知のものが使用できる。その具体例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が挙げられる。
【0114】
有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては、公知のものが使用できる。その具体例としては、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が挙げられる。
【0115】
有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要なその他の材料を含んでいてもよい。その他の材料としては、例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、安定性を増すための安定化剤、紫外(UV)光を吸収するためのUV吸収剤等が挙げられる。
【0116】
有機薄膜は、機械的特性を高めることができるので、本実施形態に係る重合体以外の高分子材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0117】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが例示される。
【0118】
本実施形態に係る有機薄膜の製造方法としては、例えば、本実施形態に係る重合体のほか、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、電荷発生材料、高分子バインダーを含む溶液を用いて成膜する方法が挙げられる。また、本実施形態に係る重合体が昇華性を有する場合は、真空蒸着法により薄膜を形成することもできる。
【0119】
溶液による成膜に用いる溶媒としては、本実施形態に係る重合体やこれと混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、電荷発生材料、高分子バインダーを溶解させるものであればよい。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒が例示される。本実施形態に係る重合体は、その構造や分子量にもよるが、通常これらの溶媒に0.1質量%以上溶解させることができる。
【0120】
溶液を用いた成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。これらのうち、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法が好ましい。
【0121】
有機薄膜を製造する工程には、本実施形態に係る重合体を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により重合体を配向させることで、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、有機薄膜による電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0122】
本実施形態に係る重合体を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。なかでも、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0123】
また、有機薄膜を製造する工程には、成膜後にアニール処理をする工程が含まれていてもよい。この工程により、本実施形態に係る重合体間の相互作用が促進される等、有機薄膜の膜質が改善され、電子移動度又はホール移動度がさらに向上する。アニール処理の処理温度としては、50℃から本実施形態に係る重合体のガラス転移温度(Tg)付近の間の温度が好ましく、(Tg−30℃)からTgの間の温度がより好ましい。アニール処理する時間としては、1分から10時間が好ましく、10分から1時間がより好ましい。アニール処理する雰囲気としては、真空中、又は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0124】
本実施形態に係る有機薄膜は、電荷輸送性(特に、優れたホール輸送性)を有することから、電極から注入された電荷、又は、光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、光センサ等、種々の有機薄膜素子に用いることができる。有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理により配向させて用いることが、高い電荷輸送性が得られることからより好ましい。
【0125】
[有機薄膜素子]
上述した好適な実施形態に係る有機薄膜は、本実施形態に係る重合体を含むことから、優れた電荷輸送性(特に、優れたホール輸送性)を有するものである。したがって、この有機薄膜は、電極等から注入された電荷、又は、光吸収により発生した電荷を効率よく輸送できるものであり、有機薄膜を用いた各種の電気素子(有機薄膜素子)に応用することができる。また、本実施形態に係る重合体は、環境安定性にも優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、通常の大気中においても性能が安定している有機薄膜素子を得ることが可能となる。以下、有機薄膜素子の例についてそれぞれ説明する。
【0126】
(有機薄膜トランジスタ)
まず、好適な実施形態に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る重合体を含む活性層(即ち、有機薄膜層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよい。有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型、静電誘導型が例示される。
【0127】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る重合体を含む活性層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本実施形態に係る重合体を含む活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0128】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る重合体を含有する活性層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が活性層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び活性層中に設けられたゲート電極が、本実施形態に係る重合体を含有する活性層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、櫛形電極が挙げられる。
【0129】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0130】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0131】
図3は、第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0132】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0133】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0134】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0135】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0136】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本実施形態に係る重合体を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0137】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0138】
基板1としては有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板を用いることができる。
【0139】
活性層2を形成する際には、有機溶媒に可溶な化合物を用いることが、製造上有利であるため好ましい。その場合、上記で説明した有機薄膜の製造方法を適用して、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0140】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。例えば、SiOx,SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化できるので、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0141】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、例えば、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、O2プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0142】
また、有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、有機薄膜トランジスタにより駆動する表示デバイスを有機薄膜トランジスタの上に形成する工程における外部からの影響を、保護膜により低減することができる。
【0143】
保護膜を形成する方法としては、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又は無機のSiONx膜でカバーする方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中又は真空中で)行うことが好ましい。
【0144】
有機薄膜トランジスタを複数集積することにより有機薄膜トランジスタアレイを構成することができ、フラットパネルディスプレイのバックプレーンとして用いることもできる。
【0145】
(有機薄膜太陽電池)
次に、好適な実施形態の有機薄膜太陽電池への応用について説明する。図8は、好適な実施形態に係る有機薄膜太陽電池の模式断面図である。図8に示す有機薄膜太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0146】
本実施形態に係る有機薄膜太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの少なくとも一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。活性層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0147】
有機薄膜太陽電池の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーがアクセプター性化合物及び/又はドナー性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、アクセプター性化合物とドナー性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、該界面での各々の化合物のHOMO及びLUMOのエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷が発生する。発生した電子は陰極へ、発生したホールは陽極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0148】
このような動作機構を考慮すると光電変換効率の高い有機薄膜太陽電池を得るためには、所望の入射光のスペクトルを効率的に吸収することができる吸収域を有したアクセプター性化合物及び/又はドナー性化合物を用いること、励起子を効率よく分離するために有機薄膜太陽電池がヘテロ接合界面を多く含むこと、生成した電荷を速やかに電極へ輸送する電荷輸送性を有する材料を用いることが重要である。
【0149】
本実施形態の有機薄膜太陽電池としては、第1の電極7a及び第2の電極7bの少なくとも一方の電極と該素子中の活性層2との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層、電極と有機層を隔離するためのバッファ層が挙げられる。
【0150】
具体的には、図8に示す有機薄膜太陽電池200において、アクセプター性化合物及びドナー性化合物を含有する活性層2と上記一対の電極のうちの一方又は両方との間にバッファ層を有する上記有機薄膜太陽電池が好ましい。
【0151】
有機薄膜太陽電池は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。本実施形態の重合体は、優れたホール輸送性を有することからアクセプター性化合物として機能する。
【0152】
(光センサ)
次に、本実施形態に係る有機薄膜の光センサへの応用を説明する。図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0153】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0154】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0155】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの少なくとも一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0156】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0157】
以下の実施例においては、例えば式Aで表される化合物を「化合物A」と表記することとし、式B〜Uで表される化合物についても同様に表記する。
【0158】
[測定条件等]
まず、後述する実験において行った各測定の条件について説明する。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(1H測定時400MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。マイクロウェーブ照射下での反応は、Biotage AB社製のInitiatorTM Ver.2.5を用い、出力400W、2.45GHzで行った。
【0159】
また、質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製のGCMS−QP5050A(商品名)を用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定した。カラムクロマトグラフィにおけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel 60N(40〜50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社又はダイキン化成品株式会社より購入した。
化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による精製では、GPCシステムCO−8020(東ソー株式会社製)を用いた。
【0160】
吸収スペクトル測定は、自記分光光度計(UV-3100PC:(株)島津製作所製)を用い、スリット幅1mmの条件で測定した。溶液の吸収スペクトル測定は、重合体を1×10-6mol/Lのクロロベンゼン溶液となるように調製し、セル幅1cmの石英セルを用いて行った。薄膜の吸収スペクトルは、重合体の薄膜を石英基板上に成膜して行った。
【0161】
実施例1
<重合体Cの合成>
原料となる化合物AをJ. Hou, H. Chen, S. Zhang, G. Li, Y. Yang. J. Am. Chem. Soc. 2008,130, 16144.に記載の方法で合成した。
【化35】
【0162】
原料となる化合物BをY. Ie, Y. Umemoto, M. Okabe, T. Kusunoki, Y. Aso., Org. Lett. 2008,10, 833.に記載の方法で合成した。
【化36】
【0163】
ふた付き試験管に化合物A(200mg,0.27mmol)、化合物B(98mg, 0.27mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)(7mg,0.0054mmol)、トルエン(2.7mL)を入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させた。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で分離精製し、黒色固体である重合体Cを得た。
収量:65mg、収率:40%
λmax=633nm(クロロベンゼン溶液)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.30(br,2H),1.88(br, 2H),1.30−1.17(m,20H),0.82(br,12H).
【化37】
(式中、nは繰り返し単位数を示し、以下、同様である。)
【0164】
重合体Cについて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行ったところ、−1.67V、0.48Vにそれぞれ可逆な還元波、酸化波が観測された。還元波から見積もったLUMOエネルギーは3.13eVであり、LUMOが深くなっていることが確認できた。また、酸化波から見積もったHOMOエネルギーは5.28eVであり、HOMOが浅くなっていることが確認できた。
重合体Cのポリスチレン換算の数平均分子量は、4300であった。
【0165】
実施例2
<重合体Gの合成>
窒素雰囲気下、反応容器に化合物B(500mg,1.45mmol)、2−トリブチルスタンニル4−ドデシルチオフェン(1.64g,3.04mmol)、Pd(PPh3)4(84mg,0.07mmol)、トルエン(14.5mL)を入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。反応生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ヘキサン)で分離精製し、赤色の固体である化合物Eを得た。
収量:800mg、収率:80%
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.02(s,2H),7.13(s,2H),2.65−2.63(t,4H),1.65−1.59(t,4H),1.38−1.26(m,36H),0.94−0.88(t,6H).
【化38】
【0166】
窒素雰囲気下、反応容器に化合物E(100mg,0.145mmol)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(55mg,0.3mmol)、ジメチルホルムアミド(DMF)(6mL)を入れ、室温で一晩攪拌した。反応生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ヘキサン)で分離精製し、赤色の固体である化合物Fを得た。
収量:120mg、収率:97%
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.81(s,2H),2.63−2.59(t,4H),1.68−1.60(t,4H),1.35−1.27(m,36H), 0.94−0.90(t,6H).
【化39】
【0167】
ふた付き試験管に化合物A(105mg,0.142mmol)、化合物F(120mg,0.142mmol)、Pd(PPh3)4(3mg,0.0028mmol)、トルエン(2.8mL)を入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させた。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順番にソックスレー抽出法で分離精製し、黒色固体である重合体Gを得た。
収量:99mg、収率:63%
λmax=660nm(クロロベンゼン溶液)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.07(br,2H),7.19(br, 2H),2.84(br,4H),1.77(br,4H),1.29(br,58H),0.88(br,18H).
【化40】
【0168】
重合体Gについて、CV測定を行ったところ、−1.77V、0.51Vにそれぞれ可逆な還元波、酸化波が観測された。還元波から見積もったLUMOエネルギーは3.03eVであり、LUMOが深くなっていることが確認できた。また、酸化波から見積もったHOMOエネルギーは5.31eVであり、HOMOが浅くなっていることが確認できた。重合体Gの溶液の吸収スペクトル(a)及び薄膜の吸収スペクトル(b)を図12に示す。溶液に比べ薄膜で吸収ピーク波長が長波長側にシフトしており、分子間で会合体が形成されていることが確認できた。また、薄膜の吸収スペクトルの吸収端から見積もったHOMO−LUMOギャップは1.38eVであった。
重合体Gのポリスチレン換算の数平均分子量は、11500であった。
【0169】
実施例3
<重合体Iの合成>
原料となる化合物HをChiu-Hsiang Chen et al., Macromolecules 2010, Vol.43, p.697-p.708.に記載の方法で合成する。
ふた付き試験管に化合物H、化合物B、Pd(PPh3)4、トルエンを入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させる。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順番にソックスレー抽出法で分離精製し、重合体Iを得る。
【化41】
【化42】
【0170】
実施例4
<重合体Jの合成>
ふた付き試験管に化合物H、化合物F、Pd(PPh3)4、トルエンを入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させる。メタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で分離精製し、重合体Jを得る。
【化43】
【0171】
実施例5
<重合体Rの合成>
窒素雰囲気下、反応容器に化合物M(1g,2.08mmol)、テトラヒドロフラン(THF)(40mL)を入れ、−40℃まで冷やし、リチウムジイソプロピルアミド(6mL,1M THF溶液)、化合物N(0.82g,2.5mmol)を入れ、4時間攪拌した。反応生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=10:1(容積比))で分離精製し、無色の液体である化合物Oを得た。
収量:460mg、収率:30%
MALDI TOFMS : m/z=734
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=1.43−1.36(m,2H),1.31−1.27(m,2H),1.21−1.00(m,38H),0.84−0.81(t, 3H),0.79−0.75(t,3H),0.73−0.70(t,3H),0.63−0.60(t,3H).
【化44】
【0172】
反応容器に化合物O、THF、NBSを入れ、60℃で4時間攪拌する。反応生成物をカラムクロマトグラフィで分離精製し、化合物Pを得る。
【化45】
【0173】
窒素雰囲気下、反応容器に化合物P、THFを入れ、−78℃まで冷やし、n−ブチルリチウム、塩化トリメチルスズを入れ、4時間攪拌する。反応生成物をカラムクロマトグラフィで分離精製し、化合物Qを得る。
【化46】
【0174】
5mLの試験管に化合物Q、化合物F、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリ−o−トリルホスフィン、クロロベンゼンを入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)で反応させる。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で分離精製し、重合体Rを得る。
【化47】
【0175】
実施例6
<有機薄膜素子1の作製及び太陽電池特性の評価>
ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルクヴイテック(株)製、Baytron(登録商標)PAI4083)の懸濁液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した。濾過した液を、スパッタ法によりガラス基板上に形成した150nmの厚みのITO膜にスピンコートにより塗布して、44nmの厚みの薄膜を形成した。この薄膜を、ホットプレートを用いて200℃で10分間加熱することにより乾燥した。次に、実施例2で合成した重合体Gと、フラーレンC60PCBM(フェニルC61−酪酸メチルエステル)(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)とを、重合体G/C60PCBMの質量比=1/2の割合で混合し、混合物をオルトジクロロベンゼンに溶解して、重合体GとC60PCBMの合計の濃度が1.0重量%である塗布液を調製した。このとき、重合体G及びC60PCBMは、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解したことから、重合体Gが有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。該塗布液をスピンコートにより基板上に塗布して、重合体Gを含む有機薄膜を堆積させた(膜厚約90nm)。形成した有機薄膜の光吸収末端波長は890nmであった。その後、有機薄膜上に真空蒸着機によりカルシウムを厚さ8nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着して、有機薄膜素子1を得た。得られた有機薄膜素子1の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜素子1に対して、ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO−SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)=1.29mA/cm2、Voc(開放端電圧)=0.87V、ff(フィルファクター(曲線因子))=0.48、光電変換効率(η)=0.54%であり、有機薄膜素子1が良好な太陽電池特性を示すことが確認された。
【0176】
実施例7
<有機薄膜素子2の作製及び太陽電池特性の評価>
フラーレンC60PCBMの代わりにフラーレンC70PCBM(フェニルC71−酪酸メチルエステル)(phenyl C71-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を用い、実施例6と同様の操作により、重合体GとフラーレンC70PCBMを重合体G/C70PCBMの質量比=1/2の割合で含む有機薄膜(膜厚約100nm)を有する有機薄膜素子2を得た。得られた有機薄膜素子2に対して実施例6と同様にソーラシミュレーターを用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)=1.89mA/cm2、Voc(開放端電圧)=0.88V、ff(フィルファクター(曲線因子))=0.46、光電変換効率(η)=0.77%であり、有機薄膜素子2が良好な太陽電池特性を示すことが確認された。
【0177】
実施例8
<有機薄膜素子3の作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極としての高濃度にドープされたp型シリコン基板の表面に、300nmのシリコン酸化膜を熱酸化により絶縁膜として形成した基板を準備した。この基板の上に、リフトオフ法により、チャネル幅2mm、チャネル長20μmのソース電極及びドレイン電極を形成した。電極付き基板をアセトンで10分間、次いでイソプロピルアルコールで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを20分間照射し表面を洗浄した。実施例2で合成した重合体Gをクロロホルムに0.5質量%の濃度で溶解させたところ、重合体Gは、クロロホルムに完全に溶解し、有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。この溶液を、表面処理した上記基板上にスピンコート法により回転数1500rpmで、1分間かけて塗布するともに乾燥して、重合体Gの有機薄膜を堆積させた(膜厚約100nm)。その後、窒素雰囲気で200℃にて30分間アニール処理をし、有機薄膜素子3を得た。半導体パラメータアナライザー(keithley社製、商品名「4200−SCS」)を用いて、真空中でゲート電圧Vg及びソース−ドレイン間電圧Vsdを+20〜−40Vの範囲で変化させながら、有機薄膜素子3の有機トランジスタ特性を測定したところ、有機薄膜素子3が良好なp型半導体のドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性を示すことが確認された。このときの移動度は4.4×10−3cm2/Vsであり、しきい値電圧は−2Vであり、オン/オフ比は約106であり、いずれも良好であった。このことから、有機薄膜素子3は、p型有機トランジスタとして有効に機能することが確認された。また、このことから、重合体Gは優れたホール輸送性を有し、に優れた有機p型半導体として利用可能であることが確認された。
【0178】
実施例9
<重合体Uの合成>
下記化学式で表される化合物SをY. Ie, Y. Umemoto, M. Okabe, T. Kusunoki, Y. Aso., Org. Lett. 2008, 10, 833.に記載の方法で合成し、これを原料として用いた。
【化48】
【0179】
窒素雰囲気下、反応容器に化合物S(0.62g,2mmol)、1−ヨードヘキサン(C6H13I)(3.81g,18mmol)、KF/Celite(1.06g,10mmol)、アセトニトリル(4ml)を入れ、80oCで一晩攪拌した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で生成物を分離精製し、黄色の液体である化合物Tを得た(収量:260mg、収率:24%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=4.35(s,4H),1.79−1.74(m,4H),1.23−1.15(m,12H),0.83(t,6H).
【化49】
【0180】
得られた化合物Tを、実施例1で合成した化合物A、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、及びトリ−o−トリルホスフィン(P(o−tol)3)、及びクロロベンゼンとともにふた付き試験管に入れた。アルゴンで試験管内雰囲気を30分置換した後、マイクロウェーブ照射下(200oC,30分)にて反応を進行させた。生成物をカラムクロマトグラフィで分離精製後、メタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で更に分離精製して、重合体Uを得た。
収量:90mg 収率:61%
Mn=16.1kg/mol PDI=3.78
λmax=610nm
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.02(br,2H),2.82(br,4H),1.80−0.60(br,56H).
【化50】
【0181】
実施例10
<有機薄膜素子4の作製及び太陽電池特性の評価>
重合体Gの代わりに実施例9で合成した重合体Uを用いて、実施例7と同様の操作により、重合体UとフラーレンC70PCBMを重合体U/C70PCBMの質量比=1/2の割合で混合し、混合物をオルトジクロロベンゼンに溶解して、重合体UとC70PCBMの合計の濃度が0.75重量%である塗布液を調製した。このとき、重合体U及びC70PCBMは、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解したことから、重合体Uが有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。該塗布液を用いて、実施例7と同様の操作により、重合体U及びC70PCBMを含む有機薄膜(膜厚約97nm)を有する有機薄膜素子4を得た。得られた有機薄膜素子4に対して実施例6と同様にソーラシミュレーターを用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)=6.13mA/cm2、Voc(開放端電圧)=0.91V、ff(フィルファクター(曲線因子))=0.31、光電変換効率(η)=1.73%であり、有機薄膜素子4が良好な太陽電池特性を示すことが確認された。
【0182】
実施例11
<有機薄膜素子5の作製及びトランジスタ特性の評価>
実施例9で合成した重合体Uをオルトジクロロベンゼンに0.5質量%の濃度で溶解させたところ、重合体Uは、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解し、有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。この溶液を、実施例8と同様に、表面処理した基板上にスピンコート法により塗布して、重合体Uの有機薄膜を堆積させた。その後、窒素雰囲気で170℃にて30分間アニール処理をし、有機薄膜素子5を得た。半導体パラメータアナライザーを用いて、真空中でゲート電圧Vg及びソース−ドレイン間電圧Vsdを+20〜−40Vの範囲で変化させながら、有機薄膜素子5の有機トランジスタ特性を測定したところ、有機薄膜素子5が良好なp型半導体のドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性を示すことが確認された。このときの移動度は1.0×10−4cm2/Vsであり、しきい値電圧は17Vであり、オン/オフ比は約105であり、いずれも良好であった。このことから、有機薄膜素子5は、p型有機トランジスタとして有効に機能することが確認された。また、このことから、重合体Uは優れたホール輸送性を有し、優れた有機p型半導体として利用可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0183】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、並びにこの重合体を用いた有機薄膜及びこれを備える有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子又はホール)輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、光センサといった有機薄膜素子への応用が期待されており、このような薄膜を形成できる有機p型半導体材料(ホール輸送性を示す)や有機n型半導体材料(電子輸送性を示す)が種々検討されている。
【0003】
有機p型半導体材料としては、ポリ(3−アルキルチオフェン)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6107117号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の有機p型半導体材料は、ホール輸送性が十分であるとは言い難かった。
【0006】
そこで、本発明は、優れたホール輸送性を有する重合体を提供することを目的とする。さらに本発明は、かかる重合体を含む有機薄膜及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有する重合体を提供する。
【化1】
[式中、
X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)2で表される基(Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示す。2個のAは、同一であっても異なっていてもよい。)を示し、
Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子を示す。
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基(ただし、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基を示す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基を示す。
ただし、Yが炭素原子である場合には、Ar2及びAr3は3価の芳香族複素環基である。]
【0008】
かかる重合体は、イオン化ポテンシャルが小さく(HOMO(最高被占軌道)が浅く)、優れたホール輸送性を有する。
【0009】
さらに、好ましい実施形態では、本発明の重合体は有機溶媒、例えばクロロホルムへの溶解性に優れる。このような性質を有する本発明の重合体は、印刷法によりフレキシブル基板上に有機薄膜素子を形成することができるので、取り扱い性に優れる。
【0010】
本発明はまた、上記本発明の重合体を含む有機薄膜を提供する。かかる本発明の有機薄膜は、本発明の重合体を含むことから、優れたホール輸送性を示すほか、好ましい実施形態では、印刷法によって容易に形成することができる。
【0011】
本発明はさらに、上記本発明の有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供する。有機薄膜素子としては、有機薄膜トランジスタ及び有機薄膜太陽電池が好適である。このような有機薄膜素子は、本発明の有機薄膜を備えており、この有機薄膜は優れたホール輸送性を有することから、電極から注入された電荷や光吸収により発生した電荷等を効率よく輸送することができる。また、この有機薄膜は狭いHOMO−LUMO(最低空軌道)ギャップを有することから長波長の光を効率よく吸収することができる。そのため、本発明の有機薄膜素子は優れた性能を発揮することができ、有機薄膜トランジスタは高いホール移動度を有するものとなり、有機薄膜太陽電池は高い光電変換効率を有するものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れたホール輸送性を有する重合体を提供することができる。また、本発明の好ましい実施形態では、有機溶媒への溶解性にも優れる重合体を提供することができる。さらに、本発明によれば、このような本発明の重合体を含み、優れたホール輸送性を示す有機薄膜、並びに、かかる有機薄膜を備えることで、優れた性能を発揮し得る有機薄膜素子、特に有機薄膜トランジスタ及び有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】好適な実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図12】重合体Gの溶液及び薄膜の吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
以下、Meはメチル基、TIPSはトリイソプロピルシリル基を示す。
【0016】
[重合体]
まず、本実施形態の重合体について説明する。本実施形態の重合体は、上記式(1)及び上記式(2)で表される構造単位を有するものである。ここで、重合体の「構造単位」とは、当該重合体の主鎖を構成している構造単位を意味する。また、「重合体」とは、かかる「構造単位」を少なくとも1つずつ有するものをいい、通常オリゴマーやポリマーに分類されるものの両方を含む。
【0017】
以下、式(1)で表される構造単位の好適な構成について説明する。まず、式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)2で表される基を示す。Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示す。置換基を有していてもよい1価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基が好ましい。
【0018】
重合体が、X1又はX2として、=C(A)2で表される基を有する場合、LUMOをより低くできるので、二つのAのうち少なくとも一方が電子求引性の基であることが好ましく、二つのAがいずれも電子求引性の基であることがより好ましい。電子求引性の基としては、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基又はハロゲン原子が好ましく、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子がより好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0019】
X1及びX2としては、LUMOをより低くできるので、酸素原子又は=C(A)2で表される基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0020】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
【0021】
R1及びR2において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
R1及びR2において、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基としては、炭素数3〜24の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。なお、分子間の配列をよくするためには、直鎖状のアルキル基が好ましい一方、有機溶媒への溶解性を高くするためには、分岐状のアルキル基が好ましく、これらは所望とする特性に応じて選択することができる。なお、R1及びR2が同じ基であると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0023】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7,11−トリメチルドデシル基が挙げられる。これらのアルキル基は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0024】
直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基とは、アルキル基及び炭素原子以外の原子を含む1価の基、並びにアルキル基及び不飽和結合を含む1価の基をいう。その具体例としては、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル−アルケニル基、アルキル−アルキニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルチオフェニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルキルシリル基及びアルキルアミノ基が挙げられる。なかでも、アルコキシ基、アルキルチオ基が好ましく、アルキルチオ基がより好ましい。なお、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基に含まれるアルキル基としては、上述のアルキル基と同様のものを例示することができる。
【0025】
R1及びR2において、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基としては、例えば、フェニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基を有するフェニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。なかでも、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基を有するフェニル基及び炭素数1〜12のアルキル基を有するフェニル基がより好ましい。
【0026】
R1及びR2において、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するピリジル基が挙げられる。なかでも、炭素数4〜20の1価の複素環基が好ましく、チエニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピリジル基、及び、炭素数1〜12のアルキル基を有するピリジル基がより好ましい。なお、1価の複素環基とは、環状構造を有する有機基において、環を構成する少なくとも1つの原子がヘテロ原子である基をいうものとする。
【0027】
R1及びR2としては、溶媒への溶解性が高くなるので、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、及び、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基が好ましい。LUMOをより低くできるので、R1及びR2の少なくとも一方は、ハロゲン原子、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基、又はアルキル基を含むアルキル基以外の基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された1価の基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基がより好ましい。さらに、R1及びR2の両方が、ハロゲン原子、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基がより好ましく、R1及びR2の両方がハロゲン原子であると特に好ましい。置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0028】
式(1)中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基を示す。
【0029】
Ar1において、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の芳香族炭化水素化合物における芳香環上の4つの水素原子を除いた4価の基を示す。芳香族炭化水素化合物は、単環であっても縮合環であってもよい。これらの中でも、より優れた溶解性が得られ、かつ、製造が容易であるので、単環又は5以下の環が縮合した縮合環が好ましく、単環又は2つの環が縮合した縮合環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
【0030】
芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ピレン、ペリレンが挙げられる。なかでも、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
【0031】
置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基とは、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族複素環式化合物における芳香族複素環上の4つの水素原子を除いた4価の基を示す。芳香族複素環式化合物は、単環又は縮合環であってもよい。これらの中でも、より優れた溶解性が得られるほか、製造が容易であるので、単環又は5以下の環が縮合した縮合環が好ましく、単環又は2つの環が縮合した縮合環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
【0032】
芳香族複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、キノリン、インドールが挙げられる。なかでも、チオフェン、チエノチオフェン又はピリジンが好ましく、より好ましくはチオフェンである。
【0033】
Ar1における芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0034】
Ar1としては、ベンゼン又はチオフェンにおける芳香環上の4つの水素原子を除いた4価の基が好ましい。
【0035】
本実施形態に係る重合体において、式(1)で表される構造単位は、式(5)で表される構造単位であることが好ましい。
【化2】
【0036】
式(5)中、R1、R2、X1及びX2は、上記と同義である。Z1としては、下記の式(i)で表される基、式(ii)で表される基、式(iii)で表される基、式(iv)で表される基、式(v)で表される基、式(vi)で表される基、式(vii)で表される基、式(viii)で表される基及び式(ix)で表される基のうちのいずれかの基が好ましく、式(ii)及び(vii)で表される基のうちのいずれかの基がより好ましく、式(ii)で表される基が特に好ましい。Z1が式(i)、(ii)又は(ix)で表される基である場合、式(5)で表される基はそれぞれフラン環、チオフェン環又はピロール環の構造を有する。これらの環、特にチオフェン環は、好適な電気的性質を示すため、これらの環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。
【0037】
【化3】
【0038】
式(vii)、(viii)及び(ix)中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R11とR12とは互いに結合して環を形成していてもよい。また、式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0039】
R11、R12、R13及びR14における1価の有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐状の鎖状基(ここで、鎖状基とは、環式構造を有しない基を示す。)、1価の環状基(ここで、環状基とは、環式構造を有する基を示す。この環式構造は、単環でも縮合環でもよく、炭化水素環でも複素環でもよく、飽和でも不飽和でもよい。)が挙げられる。また、1価の有機基は、電子供与性の基であっても電子求引性の基であってもよく、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシ基、炭素数6から20のアリール基が好ましい。
【0040】
R11、R12、R13及びR14における1価の有機基が有していてもよい置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。その具体例としては、アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基等のアルキルアミノ基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。なお、本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
上記置換基であるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。これらの基は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。アルキル基における水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基としては、炭素数1〜10のフルオロアルキル基が好ましい。
【0042】
上記置換基であるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基)におけるアルキル基としても、上記と同様の基が例示できる。
【0043】
R11、R12、R13及びR14は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましい。
【0044】
次に、式(2)で表される構造単位の好適な構成について説明する。まず、式(2)中、Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子であり、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子が好ましく、ケイ素原子又はゲルマニウム原子がさらに好ましく、ケイ素原子が特に好ましい。Yがケイ素原子である場合、式(1)で表される基はシロール環の構造を有する。シロール環は、好適な電気的性質を示すため、シロール環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。
【0045】
式(2)中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
【0046】
R3及びR4の具体例としては、上記R1及びR2で例示した基を挙げることができる。R3及びR4としては、溶媒への溶解性が高くなるので、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、及び、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基が好ましい。直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基としては、炭素数3〜24の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。なお、分子間の配列をよくするためには、直鎖状のアルキル基が好ましい一方、有機溶媒への溶解性を高くするためには、分岐状のアルキル基が好ましく、これらは所望とする特性に応じて選択することができる。なお、R3及びR4が同じ基であると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0047】
式(2)中、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基を示す。置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の芳香族炭化水素化合物における芳香環上の3つの水素原子を除いた3価の基を示す。置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基とは、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族複素環式化合物における芳香族複素環上の3つの水素原子を除いた3価の基を示す。これらの芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物の具体例としては、上記Ar1の項で例示した芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物を挙げることができる。
【0048】
本実施形態に係る重合体において、上記式(2)で表される構造単位は、式(6)で表される構造単位であることが好ましい。
【化4】
【0049】
式(6)中、R3、R4及びYは、上記と同義である。W2及びW3は、それぞれ独立に、−C(R5)=で表される基(R5は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示す。)又は−N=で表される基を示す。なお、W2及びW3が同じであると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0050】
W1及びW2の両方が−C(R5)=で表される基であると好ましい。また、W1及びW2が−N=で表される基である重合体は、窒素原子を含まない重合体よりも電子受容性が高くなり、その結果、重合体のLUMOを調整することができる。
【0051】
式(6)中、Z2及びZ3は、それぞれ独立に、下記の式(xi)で表される基、式(xii)で表される基、式(xiii)で表される基、式(xiv)で表される基、式(xv)で表される基、式(xvi)で表される基、式(xvii)で表される基、式(xviii)で表される基又は式(xix)で表される基であり、式(xii)及び(xvii)で表される基のうちのいずれかの基が好ましく、式(xii)で表される基が特に好ましい。Z2又はZ3が式(xi)、(xii)又は(xix)で表される基である場合、式(6)で表される基はそれぞれフラン環、チオフェン環又はピロール環の構造を有する。これらの環、特にチオフェン環は、好適な電気的性質を示すため、これらの環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。なお、Z2及びZ3が同じであると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【化5】
【0052】
式(xvii)、(xviii)及び(xix)中、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R21とR22とは互いに結合して環を形成していてもよい。また、式(xviii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0053】
R21、R22、R23及びR24で表される1価の有機基としては、R11、R12、R13及びR14で表される1価の有機基と同じ基が例示される。
【0054】
本実施形態に係る重合体は、式(3)で表される構造単位をさらに有することが好ましい。これにより、溶解性、又は、機械的、熱的若しくは電子的特性を、変化させ得る範囲が広くなる。なお、式(3)で表される構造単位は、上記式(1)で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位とは異なる。
【化6】
【0055】
式(3)中、Ar4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示す。置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素化合物における芳香環上の2つの水素原子を除いた2価の基を示す。置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基とは、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物における芳香族複素環上の2つの水素原子を除いた2価の基を示す。芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物の具体例としては、上記Ar1の項で例示した芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環式化合物を挙げることができる。
【0056】
本実施形態に係る重合体において、上記式(3)で表される構造単位は、式(7)で表される構造単位であることが好ましい。
【化7】
【0057】
式(7)中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示し、R7とR8とは互いに結合して環を形成していてもよい。R7及びR8の具体例としては、上記R1及びR2で例示した基を挙げることができる。R7及びR8としては、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、及び、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基が好ましく、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基がより好ましく、水素原子、炭素数6〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がさらに好ましい。なお、分子間の配列をよくするためには、直鎖状のアルキル基が好ましい一方、有機溶媒への溶解性を高くするためには、分岐状のアルキル基が好ましく、これらは所望とする特性に応じて選択することができる。なお、R7及びR8が同じ基であると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0058】
式(7)中、Z4は、式(xxi)で表される基、式(xxii)で表される基、式(xxiii)で表される基、式(xxiv)で表される基、式(xxv)で表される基、式(xxvi)で表される基、式(xxvii)で表される基、式(xxviii)で表される基又は式(xxix)で表される基のうちのいずれかの基が好ましく、式(xxii)で表される基がより好ましい。Z4が式(xxi)、(xxii)又は(xxix)で表される基である場合、式(7)で表される基はそれぞれフラン環、チオフェン環又はピロール環の構造を有する。これらの環、特にチオフェン環は、好適な電気的性質を示すため、これらの環を有する重合体は種々の電気的特性を発揮することが可能となる。
【0059】
【化8】
【0060】
式(xxvii)、(xxviii)及び(xxix)中、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R31とR32とは互いに結合して環を形成していてもよい。また、式(xxviii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0061】
R31、R32、R33及びR34における1価の有機基としては、R11、R12、R13及びR14における1価の有機基と同じ基が例示される。
【0062】
本実施形態に係る重合体の中では、ホール輸送性が向上するので、式(1)と式(2)が交互に並んだ構造を有するものが好ましい。そのような構造としては、式(4)で表される構造単位を有するものが好ましい。
【0063】
【化9】
【0064】
式(4)中、X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、上記と同義である。s及びtは、それぞれ独立に、0〜6の整数を示し、0〜2の整数が好ましい。Ar4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、複数のAr4が同じであると、重合体の製造が容易となるため、より好ましい。
【0065】
本実施形態に係る重合体において、上記式(4)で表される構造単位は、式(8)で表される構造単位であることがより好ましい。
【化10】
【0066】
式(8)中、X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、R7、R8、W2、W3,Z1、Z2、Z3、Z4、s及びtは、上記と同義であり、R7、R8及びZ4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、複数のR7、R8及びZ4がそれぞれ同じであると、重合体の製造が容易となるため、好ましい。
【0067】
本実施形態に係る重合体において、上記式(4)で表される構造単位又は上記(8)で表される構造単位に加えて、さらに上記(3)で表される構造単位又は上記(7)で表される構造単位を有していてもよい。
【0068】
本実施形態に係る重合体としては、式(9)〜(14)で表される構造を有するものが好ましい。なお、式(9)〜(14)中の各符号は、いずれも上記で説明した同一符号とそれぞれ同義である。R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示す。R9及びR10の具体例としては、上記R7及びR8で例示した基が挙げられる。複数あるR7、R8、R9及びR10は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0069】
【化11】
【0070】
【化12】
【0071】
【化13】
【0072】
【化14】
【0073】
【化15】
【0074】
【化16】
【0075】
重合体の末端基としては、例えば、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アミノケト基、アリール基、1価の複素環基(これらの基に結合している水素原子の一部又は全部はフッ素原子と置換されていてもよい)、α−フルオロケトン構造を有する基や、その他の電子供与性の基及び電子求引性の基が挙げられる。なかでも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及び1価の複素環基が好ましい。また、末端基は、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有するものも好ましい。このような末端基としては、例えば、主鎖と炭素−炭素結合を介して結合したアリール基及び1価の複素環基が挙げられる。
【0076】
さらに、重合体の末端基としては、重合活性基も挙げられる。末端基として重合活性基を有している場合、その重合体は、さらに高分子量の重合体を得るための前駆体として用いることもできる。このような前駆体として用いる場合、重合体は、分子内に2つの重合活性基を有していることが好ましい。
【0077】
重合活性基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基、アリールスタンニル基、アリールアルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2で表される基)、ホルミル基、ビニル基が例示される。なかでも、ハロゲン原子、アルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基が好ましい。ここで、ホウ酸エステル残基とは、ホウ酸エステルにおけるホウ素原子が有する結合手の1つが結合手に置き換えられた構造を有する1価の基であり、例えば、下記式(100)〜(103)で表される基が挙げられる。
【0078】
【化17】
【0079】
上記の反応性基のうち、アルキル基をその構造中に含む基である、アルキルスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基及びアリールアルキルスタンニル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。
アリール基をその構造中に含む基である、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アリールスタンニル基及びアリールアルキルスタンニル基におけるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。
【0080】
なお、本実施形態の重合体を有機薄膜として用いる場合、末端基として重合活性基がそのまま残っていると、有機薄膜素子を形成したときの素子特性や耐久性が低下するおそれがあることから、重合活性基は安定な基で置換してもよい。
【0081】
本実施形態の重合体としては、下記一般式(15)〜(23)で表される構造を有するものが、より高い電荷移動度及び優れた溶媒への溶解性を両立させ得ることから特に好適である。
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
【化24】
【0089】
【化25】
【0090】
【化26】
【0091】
上記式(15)〜(23)中、R0及びR00は、それぞれ独立に、上述した末端基を示し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基が好ましい。R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9及びR10は、上記と同義であり、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9及びR10が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、j及びj’は1〜6の整数を示し、pは1以上の整数を示す。pは、重合体を用いた有機薄膜の形成方法に応じて適宜選ぶことができる。すなわち、重合体が昇華性を有しているのであれば、真空蒸着法等の気相成長法を用いて有機薄膜にすることができることから、この場合、pは2〜10が好ましく、2〜5がさらに好ましい。一方、重合体を有機溶媒に溶解した溶液を塗布する方法により有機薄膜を形成する場合、pは、3〜500が好ましく、6〜300がより好ましく、20〜200がさらに好ましい。
【0092】
そして、上述した重合体は、塗布により有機薄膜を形成したときの膜の均一性が良好であるので、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103〜1×108であると好ましく、1×103〜1×106であるとより好ましく、4×103〜1×105であるとさらに好ましい。
【0093】
[重合体の製造方法]
次に、上述した実施形態の重合体の製造方法について説明する。重合体は、どのような方法により製造されたものであってもよいが、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0094】
すなわち、本実施形態に係る重合体は、下記式(1−m)又は下記式(5−m)で表されるモノマー化合物と、下記式(2−m)又は下記式(6−m)で表されるモノマー化合物と、必要に応じて下記式(3−m)又は下記式(7−m)で表されるモノマー化合物とを反応させることにより、製造することが好ましい。この場合、ひとつのモノマー化合物におけるV1及びV2が、別のモノマー化合物におけるV1又はV2とそれぞれ反応して結合が生じ、このような反応が連続して生じることにより重合体が生成する。なお、式(1−m)又は式(5−m)で表されるモノマー化合物は、それぞれ式(1)又は式(5)で表される構造単位に対応し、式(2−m)又は式(6−m)で表されるモノマー化合物は、それぞれ式(2)又は式(6)(W3が−C(R5)=で表される基であるもの)に対応し、式(3−m)又は式(7−m)で表されるモノマー化合物は、それぞれ式(3)又は式(7)で表される構造単位に対応する。
【0095】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0096】
また、本実施形態に係る重合体は、上記モノマー化合物を原料として反応させることにより合成中間体を得た後、当該合成中間体をさらに反応させることにより製造することもできる。合成中間体としては、下記式(4−m)又は式(8−m)で表わされる化合物が好ましい。
【0097】
【化33】
【化34】
【0098】
式(1−m)、(2−m)、(3−m)、(4−m)、(5−m)、(6−m)、(7−m)及び(8−m)中、X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、W2、W3、Z1、Z2、Z3、Z4、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、s及びtは、上記と同義であり、R7、R8、Ar4、及びZ4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。V1及びV2は、それぞれ独立に、重合反応性基を示す。重合反応性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基、アリールスタンニル基、アリールアルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基、ホルミル基、ビニル基が挙げられる。
【0099】
上記モノマー化合物の合成がし易く、かつ、反応がし易いので、V1及びV2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、アルキルスタンニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基が好ましい。重合反応性基がこれらの基であると、モノマー化合物同士の反応は生じ易いので、合成上有利である。
【0100】
重合体の製造方法としては、例えば、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法、FeCl3等の酸化剤を用いる方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による方法が挙げられる。
【0101】
これらのうち、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、及びNi(0)触媒を用いる方法が、重合体の構造を制御し易いので好ましい。さらに、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法は、原料を入手しやすく、かつ、反応操作が簡便であるのでより好ましい。
【0102】
上記式(1−m)、(2−m)、(3−m)、(4−m)、(5−m)、(6−m)、(7−m)及び(8−m)で表されるモノマー化合物は、必要に応じて有機溶媒に溶解させた状態で、アルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で反応させることができる。
【0103】
反応に用いられる有機溶媒は、用いるモノマー化合物や反応の種類によっても異なるが、副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理が施されていることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。また、有機溶媒に代えて、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸を用いてもよい。
【0104】
アルカリや適当な触媒を添加する場合、これらは生じさせる反応に応じて選択すればよい。アルカリや触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。
【0105】
また、反応は、不活性雰囲気下で進行させることが好ましい。さらに、同様に、反応中には、脱水処理を行うことが好ましい(ただし、Suzukiカップリング反応等の水との2相系での反応の場合にはその限りではない。)。
【0106】
反応後には、例えば水で反応を止めた後に有機溶媒を用いた抽出を行い、その後溶媒を留去する等の通常の後処理を行うことにより、重合体を得ることができる。得られた重合体の単離及び精製は、クロマトグラフィによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0107】
なお、重合体を有機薄膜素子用の材料として用いる場合は、その純度が素子特性に影響を与えることがあるので、反応前の各モノマー化合物を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に反応させる(重合させる)ことが好ましい。重合体を合成した後には、再沈澱、クロマトグラフィによる分別等の純化処理をすることが好ましい。純度を高めて良好な素子特性を得るために、上述した製造方法で得られた重合体を、さらに蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0108】
なお、上記の例では、式(1)又は式(5)で表される構造単位、式(2)又は式(6)で表される構造単位、及び任意の式(3)又は式(7)で表される構造単位を有する重合体の製造方法を例に挙げて説明したが、これら以外の構造単位を有する重合体も、モノマー化合物を適宜選択することにより、上記反応と同様にして製造することができる。
【0109】
[有機薄膜]
次に、好適な実施形態に係る有機薄膜について説明する。本実施形態に係る有機薄膜は、上述した好適な実施形態の重合体を含む。
【0110】
有機薄膜は、厚さが1nm〜100μmであると好ましく、2nm〜1000nmであるとより好ましく、5nm〜500nmであるとさらに好ましく、20nm〜200nmであると特に好ましい。
【0111】
有機薄膜は、本実施形態に係る重合体の1種類を単独で含むものであってもよく、2種類以上を組み合わせて含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、本実施形態に係る重合体以外に、電子輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(以下、「電子輸送性材料」という。)、ホール輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(以下、「ホール輸送性材料」という。)を混合して含むものであってもよい。
【0112】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用できる。その具体例としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0113】
電子輸送性材料としては、公知のものが使用できる。その具体例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が挙げられる。
【0114】
有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては、公知のものが使用できる。その具体例としては、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が挙げられる。
【0115】
有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要なその他の材料を含んでいてもよい。その他の材料としては、例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、安定性を増すための安定化剤、紫外(UV)光を吸収するためのUV吸収剤等が挙げられる。
【0116】
有機薄膜は、機械的特性を高めることができるので、本実施形態に係る重合体以外の高分子材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0117】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが例示される。
【0118】
本実施形態に係る有機薄膜の製造方法としては、例えば、本実施形態に係る重合体のほか、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、電荷発生材料、高分子バインダーを含む溶液を用いて成膜する方法が挙げられる。また、本実施形態に係る重合体が昇華性を有する場合は、真空蒸着法により薄膜を形成することもできる。
【0119】
溶液による成膜に用いる溶媒としては、本実施形態に係る重合体やこれと混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、電荷発生材料、高分子バインダーを溶解させるものであればよい。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒が例示される。本実施形態に係る重合体は、その構造や分子量にもよるが、通常これらの溶媒に0.1質量%以上溶解させることができる。
【0120】
溶液を用いた成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。これらのうち、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法が好ましい。
【0121】
有機薄膜を製造する工程には、本実施形態に係る重合体を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により重合体を配向させることで、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、有機薄膜による電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0122】
本実施形態に係る重合体を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。なかでも、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0123】
また、有機薄膜を製造する工程には、成膜後にアニール処理をする工程が含まれていてもよい。この工程により、本実施形態に係る重合体間の相互作用が促進される等、有機薄膜の膜質が改善され、電子移動度又はホール移動度がさらに向上する。アニール処理の処理温度としては、50℃から本実施形態に係る重合体のガラス転移温度(Tg)付近の間の温度が好ましく、(Tg−30℃)からTgの間の温度がより好ましい。アニール処理する時間としては、1分から10時間が好ましく、10分から1時間がより好ましい。アニール処理する雰囲気としては、真空中、又は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0124】
本実施形態に係る有機薄膜は、電荷輸送性(特に、優れたホール輸送性)を有することから、電極から注入された電荷、又は、光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、光センサ等、種々の有機薄膜素子に用いることができる。有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理により配向させて用いることが、高い電荷輸送性が得られることからより好ましい。
【0125】
[有機薄膜素子]
上述した好適な実施形態に係る有機薄膜は、本実施形態に係る重合体を含むことから、優れた電荷輸送性(特に、優れたホール輸送性)を有するものである。したがって、この有機薄膜は、電極等から注入された電荷、又は、光吸収により発生した電荷を効率よく輸送できるものであり、有機薄膜を用いた各種の電気素子(有機薄膜素子)に応用することができる。また、本実施形態に係る重合体は、環境安定性にも優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、通常の大気中においても性能が安定している有機薄膜素子を得ることが可能となる。以下、有機薄膜素子の例についてそれぞれ説明する。
【0126】
(有機薄膜トランジスタ)
まず、好適な実施形態に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る重合体を含む活性層(即ち、有機薄膜層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよい。有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型、静電誘導型が例示される。
【0127】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る重合体を含む活性層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本実施形態に係る重合体を含む活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0128】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る重合体を含有する活性層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が活性層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び活性層中に設けられたゲート電極が、本実施形態に係る重合体を含有する活性層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、櫛形電極が挙げられる。
【0129】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0130】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0131】
図3は、第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0132】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0133】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0134】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0135】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0136】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本実施形態に係る重合体を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0137】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0138】
基板1としては有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板を用いることができる。
【0139】
活性層2を形成する際には、有機溶媒に可溶な化合物を用いることが、製造上有利であるため好ましい。その場合、上記で説明した有機薄膜の製造方法を適用して、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0140】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。例えば、SiOx,SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化できるので、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0141】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、例えば、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、O2プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0142】
また、有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、有機薄膜トランジスタにより駆動する表示デバイスを有機薄膜トランジスタの上に形成する工程における外部からの影響を、保護膜により低減することができる。
【0143】
保護膜を形成する方法としては、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又は無機のSiONx膜でカバーする方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中又は真空中で)行うことが好ましい。
【0144】
有機薄膜トランジスタを複数集積することにより有機薄膜トランジスタアレイを構成することができ、フラットパネルディスプレイのバックプレーンとして用いることもできる。
【0145】
(有機薄膜太陽電池)
次に、好適な実施形態の有機薄膜太陽電池への応用について説明する。図8は、好適な実施形態に係る有機薄膜太陽電池の模式断面図である。図8に示す有機薄膜太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0146】
本実施形態に係る有機薄膜太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの少なくとも一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。活性層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0147】
有機薄膜太陽電池の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーがアクセプター性化合物及び/又はドナー性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、アクセプター性化合物とドナー性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、該界面での各々の化合物のHOMO及びLUMOのエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷が発生する。発生した電子は陰極へ、発生したホールは陽極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0148】
このような動作機構を考慮すると光電変換効率の高い有機薄膜太陽電池を得るためには、所望の入射光のスペクトルを効率的に吸収することができる吸収域を有したアクセプター性化合物及び/又はドナー性化合物を用いること、励起子を効率よく分離するために有機薄膜太陽電池がヘテロ接合界面を多く含むこと、生成した電荷を速やかに電極へ輸送する電荷輸送性を有する材料を用いることが重要である。
【0149】
本実施形態の有機薄膜太陽電池としては、第1の電極7a及び第2の電極7bの少なくとも一方の電極と該素子中の活性層2との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層、電極と有機層を隔離するためのバッファ層が挙げられる。
【0150】
具体的には、図8に示す有機薄膜太陽電池200において、アクセプター性化合物及びドナー性化合物を含有する活性層2と上記一対の電極のうちの一方又は両方との間にバッファ層を有する上記有機薄膜太陽電池が好ましい。
【0151】
有機薄膜太陽電池は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。本実施形態の重合体は、優れたホール輸送性を有することからアクセプター性化合物として機能する。
【0152】
(光センサ)
次に、本実施形態に係る有機薄膜の光センサへの応用を説明する。図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0153】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0154】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0155】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの少なくとも一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0156】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0157】
以下の実施例においては、例えば式Aで表される化合物を「化合物A」と表記することとし、式B〜Uで表される化合物についても同様に表記する。
【0158】
[測定条件等]
まず、後述する実験において行った各測定の条件について説明する。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(1H測定時400MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。マイクロウェーブ照射下での反応は、Biotage AB社製のInitiatorTM Ver.2.5を用い、出力400W、2.45GHzで行った。
【0159】
また、質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製のGCMS−QP5050A(商品名)を用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定した。カラムクロマトグラフィにおけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel 60N(40〜50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社又はダイキン化成品株式会社より購入した。
化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による精製では、GPCシステムCO−8020(東ソー株式会社製)を用いた。
【0160】
吸収スペクトル測定は、自記分光光度計(UV-3100PC:(株)島津製作所製)を用い、スリット幅1mmの条件で測定した。溶液の吸収スペクトル測定は、重合体を1×10-6mol/Lのクロロベンゼン溶液となるように調製し、セル幅1cmの石英セルを用いて行った。薄膜の吸収スペクトルは、重合体の薄膜を石英基板上に成膜して行った。
【0161】
実施例1
<重合体Cの合成>
原料となる化合物AをJ. Hou, H. Chen, S. Zhang, G. Li, Y. Yang. J. Am. Chem. Soc. 2008,130, 16144.に記載の方法で合成した。
【化35】
【0162】
原料となる化合物BをY. Ie, Y. Umemoto, M. Okabe, T. Kusunoki, Y. Aso., Org. Lett. 2008,10, 833.に記載の方法で合成した。
【化36】
【0163】
ふた付き試験管に化合物A(200mg,0.27mmol)、化合物B(98mg, 0.27mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)(7mg,0.0054mmol)、トルエン(2.7mL)を入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させた。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で分離精製し、黒色固体である重合体Cを得た。
収量:65mg、収率:40%
λmax=633nm(クロロベンゼン溶液)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.30(br,2H),1.88(br, 2H),1.30−1.17(m,20H),0.82(br,12H).
【化37】
(式中、nは繰り返し単位数を示し、以下、同様である。)
【0164】
重合体Cについて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行ったところ、−1.67V、0.48Vにそれぞれ可逆な還元波、酸化波が観測された。還元波から見積もったLUMOエネルギーは3.13eVであり、LUMOが深くなっていることが確認できた。また、酸化波から見積もったHOMOエネルギーは5.28eVであり、HOMOが浅くなっていることが確認できた。
重合体Cのポリスチレン換算の数平均分子量は、4300であった。
【0165】
実施例2
<重合体Gの合成>
窒素雰囲気下、反応容器に化合物B(500mg,1.45mmol)、2−トリブチルスタンニル4−ドデシルチオフェン(1.64g,3.04mmol)、Pd(PPh3)4(84mg,0.07mmol)、トルエン(14.5mL)を入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。反応生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ヘキサン)で分離精製し、赤色の固体である化合物Eを得た。
収量:800mg、収率:80%
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.02(s,2H),7.13(s,2H),2.65−2.63(t,4H),1.65−1.59(t,4H),1.38−1.26(m,36H),0.94−0.88(t,6H).
【化38】
【0166】
窒素雰囲気下、反応容器に化合物E(100mg,0.145mmol)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(55mg,0.3mmol)、ジメチルホルムアミド(DMF)(6mL)を入れ、室温で一晩攪拌した。反応生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ヘキサン)で分離精製し、赤色の固体である化合物Fを得た。
収量:120mg、収率:97%
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.81(s,2H),2.63−2.59(t,4H),1.68−1.60(t,4H),1.35−1.27(m,36H), 0.94−0.90(t,6H).
【化39】
【0167】
ふた付き試験管に化合物A(105mg,0.142mmol)、化合物F(120mg,0.142mmol)、Pd(PPh3)4(3mg,0.0028mmol)、トルエン(2.8mL)を入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させた。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順番にソックスレー抽出法で分離精製し、黒色固体である重合体Gを得た。
収量:99mg、収率:63%
λmax=660nm(クロロベンゼン溶液)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.07(br,2H),7.19(br, 2H),2.84(br,4H),1.77(br,4H),1.29(br,58H),0.88(br,18H).
【化40】
【0168】
重合体Gについて、CV測定を行ったところ、−1.77V、0.51Vにそれぞれ可逆な還元波、酸化波が観測された。還元波から見積もったLUMOエネルギーは3.03eVであり、LUMOが深くなっていることが確認できた。また、酸化波から見積もったHOMOエネルギーは5.31eVであり、HOMOが浅くなっていることが確認できた。重合体Gの溶液の吸収スペクトル(a)及び薄膜の吸収スペクトル(b)を図12に示す。溶液に比べ薄膜で吸収ピーク波長が長波長側にシフトしており、分子間で会合体が形成されていることが確認できた。また、薄膜の吸収スペクトルの吸収端から見積もったHOMO−LUMOギャップは1.38eVであった。
重合体Gのポリスチレン換算の数平均分子量は、11500であった。
【0169】
実施例3
<重合体Iの合成>
原料となる化合物HをChiu-Hsiang Chen et al., Macromolecules 2010, Vol.43, p.697-p.708.に記載の方法で合成する。
ふた付き試験管に化合物H、化合物B、Pd(PPh3)4、トルエンを入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させる。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順番にソックスレー抽出法で分離精製し、重合体Iを得る。
【化41】
【化42】
【0170】
実施例4
<重合体Jの合成>
ふた付き試験管に化合物H、化合物F、Pd(PPh3)4、トルエンを入れ、アルゴン雰囲気(110℃,24時間)にて反応させる。メタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で分離精製し、重合体Jを得る。
【化43】
【0171】
実施例5
<重合体Rの合成>
窒素雰囲気下、反応容器に化合物M(1g,2.08mmol)、テトラヒドロフラン(THF)(40mL)を入れ、−40℃まで冷やし、リチウムジイソプロピルアミド(6mL,1M THF溶液)、化合物N(0.82g,2.5mmol)を入れ、4時間攪拌した。反応生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=10:1(容積比))で分離精製し、無色の液体である化合物Oを得た。
収量:460mg、収率:30%
MALDI TOFMS : m/z=734
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=1.43−1.36(m,2H),1.31−1.27(m,2H),1.21−1.00(m,38H),0.84−0.81(t, 3H),0.79−0.75(t,3H),0.73−0.70(t,3H),0.63−0.60(t,3H).
【化44】
【0172】
反応容器に化合物O、THF、NBSを入れ、60℃で4時間攪拌する。反応生成物をカラムクロマトグラフィで分離精製し、化合物Pを得る。
【化45】
【0173】
窒素雰囲気下、反応容器に化合物P、THFを入れ、−78℃まで冷やし、n−ブチルリチウム、塩化トリメチルスズを入れ、4時間攪拌する。反応生成物をカラムクロマトグラフィで分離精製し、化合物Qを得る。
【化46】
【0174】
5mLの試験管に化合物Q、化合物F、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリ−o−トリルホスフィン、クロロベンゼンを入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)で反応させる。反応生成物をメタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で分離精製し、重合体Rを得る。
【化47】
【0175】
実施例6
<有機薄膜素子1の作製及び太陽電池特性の評価>
ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルクヴイテック(株)製、Baytron(登録商標)PAI4083)の懸濁液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した。濾過した液を、スパッタ法によりガラス基板上に形成した150nmの厚みのITO膜にスピンコートにより塗布して、44nmの厚みの薄膜を形成した。この薄膜を、ホットプレートを用いて200℃で10分間加熱することにより乾燥した。次に、実施例2で合成した重合体Gと、フラーレンC60PCBM(フェニルC61−酪酸メチルエステル)(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)とを、重合体G/C60PCBMの質量比=1/2の割合で混合し、混合物をオルトジクロロベンゼンに溶解して、重合体GとC60PCBMの合計の濃度が1.0重量%である塗布液を調製した。このとき、重合体G及びC60PCBMは、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解したことから、重合体Gが有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。該塗布液をスピンコートにより基板上に塗布して、重合体Gを含む有機薄膜を堆積させた(膜厚約90nm)。形成した有機薄膜の光吸収末端波長は890nmであった。その後、有機薄膜上に真空蒸着機によりカルシウムを厚さ8nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着して、有機薄膜素子1を得た。得られた有機薄膜素子1の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜素子1に対して、ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO−SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)=1.29mA/cm2、Voc(開放端電圧)=0.87V、ff(フィルファクター(曲線因子))=0.48、光電変換効率(η)=0.54%であり、有機薄膜素子1が良好な太陽電池特性を示すことが確認された。
【0176】
実施例7
<有機薄膜素子2の作製及び太陽電池特性の評価>
フラーレンC60PCBMの代わりにフラーレンC70PCBM(フェニルC71−酪酸メチルエステル)(phenyl C71-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を用い、実施例6と同様の操作により、重合体GとフラーレンC70PCBMを重合体G/C70PCBMの質量比=1/2の割合で含む有機薄膜(膜厚約100nm)を有する有機薄膜素子2を得た。得られた有機薄膜素子2に対して実施例6と同様にソーラシミュレーターを用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)=1.89mA/cm2、Voc(開放端電圧)=0.88V、ff(フィルファクター(曲線因子))=0.46、光電変換効率(η)=0.77%であり、有機薄膜素子2が良好な太陽電池特性を示すことが確認された。
【0177】
実施例8
<有機薄膜素子3の作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極としての高濃度にドープされたp型シリコン基板の表面に、300nmのシリコン酸化膜を熱酸化により絶縁膜として形成した基板を準備した。この基板の上に、リフトオフ法により、チャネル幅2mm、チャネル長20μmのソース電極及びドレイン電極を形成した。電極付き基板をアセトンで10分間、次いでイソプロピルアルコールで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを20分間照射し表面を洗浄した。実施例2で合成した重合体Gをクロロホルムに0.5質量%の濃度で溶解させたところ、重合体Gは、クロロホルムに完全に溶解し、有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。この溶液を、表面処理した上記基板上にスピンコート法により回転数1500rpmで、1分間かけて塗布するともに乾燥して、重合体Gの有機薄膜を堆積させた(膜厚約100nm)。その後、窒素雰囲気で200℃にて30分間アニール処理をし、有機薄膜素子3を得た。半導体パラメータアナライザー(keithley社製、商品名「4200−SCS」)を用いて、真空中でゲート電圧Vg及びソース−ドレイン間電圧Vsdを+20〜−40Vの範囲で変化させながら、有機薄膜素子3の有機トランジスタ特性を測定したところ、有機薄膜素子3が良好なp型半導体のドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性を示すことが確認された。このときの移動度は4.4×10−3cm2/Vsであり、しきい値電圧は−2Vであり、オン/オフ比は約106であり、いずれも良好であった。このことから、有機薄膜素子3は、p型有機トランジスタとして有効に機能することが確認された。また、このことから、重合体Gは優れたホール輸送性を有し、に優れた有機p型半導体として利用可能であることが確認された。
【0178】
実施例9
<重合体Uの合成>
下記化学式で表される化合物SをY. Ie, Y. Umemoto, M. Okabe, T. Kusunoki, Y. Aso., Org. Lett. 2008, 10, 833.に記載の方法で合成し、これを原料として用いた。
【化48】
【0179】
窒素雰囲気下、反応容器に化合物S(0.62g,2mmol)、1−ヨードヘキサン(C6H13I)(3.81g,18mmol)、KF/Celite(1.06g,10mmol)、アセトニトリル(4ml)を入れ、80oCで一晩攪拌した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で生成物を分離精製し、黄色の液体である化合物Tを得た(収量:260mg、収率:24%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=4.35(s,4H),1.79−1.74(m,4H),1.23−1.15(m,12H),0.83(t,6H).
【化49】
【0180】
得られた化合物Tを、実施例1で合成した化合物A、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、及びトリ−o−トリルホスフィン(P(o−tol)3)、及びクロロベンゼンとともにふた付き試験管に入れた。アルゴンで試験管内雰囲気を30分置換した後、マイクロウェーブ照射下(200oC,30分)にて反応を進行させた。生成物をカラムクロマトグラフィで分離精製後、メタノール、ヘキサン、クロロホルムの順にソックスレー抽出法で更に分離精製して、重合体Uを得た。
収量:90mg 収率:61%
Mn=16.1kg/mol PDI=3.78
λmax=610nm
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.02(br,2H),2.82(br,4H),1.80−0.60(br,56H).
【化50】
【0181】
実施例10
<有機薄膜素子4の作製及び太陽電池特性の評価>
重合体Gの代わりに実施例9で合成した重合体Uを用いて、実施例7と同様の操作により、重合体UとフラーレンC70PCBMを重合体U/C70PCBMの質量比=1/2の割合で混合し、混合物をオルトジクロロベンゼンに溶解して、重合体UとC70PCBMの合計の濃度が0.75重量%である塗布液を調製した。このとき、重合体U及びC70PCBMは、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解したことから、重合体Uが有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。該塗布液を用いて、実施例7と同様の操作により、重合体U及びC70PCBMを含む有機薄膜(膜厚約97nm)を有する有機薄膜素子4を得た。得られた有機薄膜素子4に対して実施例6と同様にソーラシミュレーターを用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)=6.13mA/cm2、Voc(開放端電圧)=0.91V、ff(フィルファクター(曲線因子))=0.31、光電変換効率(η)=1.73%であり、有機薄膜素子4が良好な太陽電池特性を示すことが確認された。
【0182】
実施例11
<有機薄膜素子5の作製及びトランジスタ特性の評価>
実施例9で合成した重合体Uをオルトジクロロベンゼンに0.5質量%の濃度で溶解させたところ、重合体Uは、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解し、有機溶媒に溶解可能であることを確認できた。この溶液を、実施例8と同様に、表面処理した基板上にスピンコート法により塗布して、重合体Uの有機薄膜を堆積させた。その後、窒素雰囲気で170℃にて30分間アニール処理をし、有機薄膜素子5を得た。半導体パラメータアナライザーを用いて、真空中でゲート電圧Vg及びソース−ドレイン間電圧Vsdを+20〜−40Vの範囲で変化させながら、有機薄膜素子5の有機トランジスタ特性を測定したところ、有機薄膜素子5が良好なp型半導体のドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性を示すことが確認された。このときの移動度は1.0×10−4cm2/Vsであり、しきい値電圧は17Vであり、オン/オフ比は約105であり、いずれも良好であった。このことから、有機薄膜素子5は、p型有機トランジスタとして有効に機能することが確認された。また、このことから、重合体Uは優れたホール輸送性を有し、優れた有機p型半導体として利用可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0183】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有する重合体。
【化1】
[式中、
X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)2で表される基(Aは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい1価の有機基を示す。2個のAは、同一であっても異なっていてもよい。)を示し、Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子、又は、スズ原子を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基(ただし、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基を示す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基を示す。
ただし、Yが炭素原子である場合には、Ar2及びAr3は3価の芳香族複素環基である。]
【請求項2】
式(3)で表される構造単位をさらに有する、請求項1記載の重合体。
【化2】
[式中、
Ar4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示す。]
【請求項3】
式(4)で表される構造単位を有する、請求項1または2記載の重合体。
【化3】
[式中、
X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、前記と同義である。s及びtは、それぞれ独立に、0〜6の整数を示す。Ar4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
式(1)で表される構造単位が、式(5)で表される構造単位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体。
【化4】
[式中、
X1、X2、R1及びR2は、前記と同義である。
Z1は、式(i)で表される基、式(ii)で表される基、式(iii)で表される基、式(iv)で表される基、式(v)で表される基、式(vi)で表される基、式(vii)で表される基、式(viii)で表される基又は式(ix)で表される基を示す。]
【化5】
[式中、
R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R11とR12とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項5】
式(2)で表される構造単位が、式(6)で表される構造単位である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体。
【化6】
[式中、
Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子を示す。
W2及びW3は、それぞれ独立に、−C(R5)=で表される基(R5は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示す。)又は−N=で表される基を示す。
R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基(ただし、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
Z2及びZ3は、それぞれ独立に、式(xi)で表される基、式(xii)で表される基、式(xiii)で表される基、式(xiv)で表される基、式(xv)で表される基、式(xvi)で表される基、式(xvii)で表される基、式(xviii)で表される基又は式(xix)で表される基を示す。]
【化7】
[式中、
R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R21とR22とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項6】
式(3)で表される構造単位が、式(7)で表される構造単位である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の重合体。
【化8】
[式中、
R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示し、R7とR8とは互いに結合して環を形成していてもよい。
Z4は、式(xxi)で表される基、式(xxii)で表される基、式(xxiii)で表される基、式(xxiv)で表される基、式(xxv)で表される基、式(xxvi)で表される基、式(xxvii)で表される基、式(xxviii)で表される基又は式(xxix)で表される基を示す。]
【化9】
[式中、
R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R31とR32とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項7】
式(4)で表される構造単位が、式(8)で表される構造単位である請求項3〜6のいずれか一項に記載の重合体。
【化10】
[式中、
X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、R7、R8、W2、W3、Z1、Z2、Z3、Z4、s及びtは、前記と同義であり、R7、R8及びZ4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項8】
Z1が式(ii)で表される基である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項9】
Z2及びZ3が式(xii)で表される基であり、且つYがケイ素原子である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の重合体を含む有機薄膜。
【請求項11】
請求項10記載の有機薄膜を備える有機薄膜素子。
【請求項12】
請求項10記載の有機薄膜を備える有機薄膜トランジスタ。
【請求項13】
請求項10記載の有機薄膜を備える有機薄膜太陽電池。
【請求項1】
式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有する重合体。
【化1】
[式中、
X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)2で表される基(Aは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい1価の有機基を示す。2個のAは、同一であっても異なっていてもよい。)を示し、Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子、又は、スズ原子を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基(ただし、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の4価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の4価の芳香族複素環基を示す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の3価の芳香族複素環基を示す。
ただし、Yが炭素原子である場合には、Ar2及びAr3は3価の芳香族複素環基である。]
【請求項2】
式(3)で表される構造単位をさらに有する、請求項1記載の重合体。
【化2】
[式中、
Ar4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示す。]
【請求項3】
式(4)で表される構造単位を有する、請求項1または2記載の重合体。
【化3】
[式中、
X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、前記と同義である。s及びtは、それぞれ独立に、0〜6の整数を示す。Ar4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
式(1)で表される構造単位が、式(5)で表される構造単位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体。
【化4】
[式中、
X1、X2、R1及びR2は、前記と同義である。
Z1は、式(i)で表される基、式(ii)で表される基、式(iii)で表される基、式(iv)で表される基、式(v)で表される基、式(vi)で表される基、式(vii)で表される基、式(viii)で表される基又は式(ix)で表される基を示す。]
【化5】
[式中、
R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R11とR12とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項5】
式(2)で表される構造単位が、式(6)で表される構造単位である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体。
【化6】
[式中、
Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はスズ原子を示す。
W2及びW3は、それぞれ独立に、−C(R5)=で表される基(R5は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示す。)又は−N=で表される基を示す。
R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基(ただし、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜30のアルキル基を含むアルキル基以外の1価の基、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜60の1価の複素環基を示す。
Z2及びZ3は、それぞれ独立に、式(xi)で表される基、式(xii)で表される基、式(xiii)で表される基、式(xiv)で表される基、式(xv)で表される基、式(xvi)で表される基、式(xvii)で表される基、式(xviii)で表される基又は式(xix)で表される基を示す。]
【化7】
[式中、
R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R21とR22とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項6】
式(3)で表される構造単位が、式(7)で表される構造単位である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の重合体。
【化8】
[式中、
R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を示し、R7とR8とは互いに結合して環を形成していてもよい。
Z4は、式(xxi)で表される基、式(xxii)で表される基、式(xxiii)で表される基、式(xxiv)で表される基、式(xxv)で表される基、式(xxvi)で表される基、式(xxvii)で表される基、式(xxviii)で表される基又は式(xxix)で表される基を示す。]
【化9】
[式中、
R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、R31とR32とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項7】
式(4)で表される構造単位が、式(8)で表される構造単位である請求項3〜6のいずれか一項に記載の重合体。
【化10】
[式中、
X1、X2、Y、R1、R2、R3、R4、R7、R8、W2、W3、Z1、Z2、Z3、Z4、s及びtは、前記と同義であり、R7、R8及びZ4が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項8】
Z1が式(ii)で表される基である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項9】
Z2及びZ3が式(xii)で表される基であり、且つYがケイ素原子である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の重合体を含む有機薄膜。
【請求項11】
請求項10記載の有機薄膜を備える有機薄膜素子。
【請求項12】
請求項10記載の有機薄膜を備える有機薄膜トランジスタ。
【請求項13】
請求項10記載の有機薄膜を備える有機薄膜太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−193338(P2012−193338A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256446(P2011−256446)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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