説明

金属多層積層電気絶縁体とその製造方法

【課題】
π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー層が形成された電気絶縁性材料表面に、適度な厚みを有する密着性の強い金属膜が形成された電気絶縁体とその製造方法。
【課題解決手段】
電気絶縁性材料表面に近いほうから順に、i)π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー層、ii)Ni又はNi合金層、iii)Ni又はNi合金より電気伝導度の高い1層以上の金属層からなる層が累積形成された当該金属多層積層電気絶縁体とその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁性材料表面に特定の金属膜を二層以上形成した金属多層積層電気絶縁体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気絶縁性材料への装飾、導電性、耐熱性、耐候性、耐摩耗性、硬度、帯電防止、電磁波遮断を目的として該材料表面に対する金属による被覆が行われている。その被覆方法として接着剤を介して金属箔を電気絶縁性材料表面に張り付ける方法や、その他湿式法(無電解めっき及び電気めっき)や乾式法(真空蒸着、低温スパッタ、イオンプレーティング)などがある。コストの点から金属箔を張り合わせる接着剤法が幅広く利用されている。
【0003】
近年、電子回路基板の技術分野においては、電子機器の小型化や軽量化が進む中で電気絶縁性材料を使ったフレキシブル回路基板へ応用展開されている。フレキシブル回路基板を作製するには、剛直回路基板の作製の場合と同様に接着剤を介して電気絶縁性材料(例えば電気絶縁フィルム)に金属箔(例えば銅箔)を張り付ける方法や、その他後述する湿式法、乾式法と呼ばれる手法が試みられている。
【0004】
エポキシ樹脂等の接着剤を電気絶縁フィルムと金属箔との間に塗工して貼り合わせることにより該フィルム表面を被覆する方法は、低コストであるため検討されてきた。しかしながら、耐熱性・耐薬品性・電気特性等は、使用されている接着剤の特性に支配され、電気絶縁フィルムの優れた諸特性が十分に活かされず、特に耐熱性の点で十分なものでなかった。また、張り合わせる金属箔(例えば銅箔)については、低コストでできる膜厚は12μmから35μmのものが主流である。近年の高密度化及び高性能化に伴う微細な回路形成に対応するためには銅箔の最薄化が必須であるが、銅箔の膜厚を薄くすると張り合わせ作業が難しくなり歩留まりが低下するため、コスト高になる点が問題視されていた。
【0005】
電気絶縁フィルム上に金属を無電解めっきで付ける湿式法では、電気絶縁フィルムとの密着性を向上させるために基材表面の官能基との化学結合やアンカー効果を利用する物理結合などが種々検討されてはきたが、電気絶縁フィルムと金属(例えば銅)間の密着性が悪いため、歩留まりよく製造することは困難であった。
【0006】
真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等に代表される乾式法では、電気絶縁フィルムに銅の薄膜層を形成することによって製造が試みられている。中でも現在、頻繁に使用されている手法として比較的膜厚のムラが出にくいためスパッタリング法が提案されている。スパッタリング法で銅膜を0.3μm形成することで導体化でき、後工程で電気銅めっきにより膜厚を調整することができる。これにより、微細な回路パターンを形成することができ、かつ歩留まりよく均一な銅膜を得ることができる。しかしながら、高額な真空設備を必要とするため安価で製造することは困難である。
【0007】
これら上記課題点を克服するために以下の方法が開示されている。それは、電気絶縁フィルムに導電性高分子を含む分散液を塗工し、その上に触媒付着等の前処理を行った上で、無電解銅めっきする方法である。これは、還元された導電性高分子に触媒成分であるパラジウム又はパラジウム化合物が化学結合され、それを核として銅が析出し、金属膜を形成することができる。(特許文献1、2)
【0008】
例えば、特許文献1には、導電性高分子としてポリアニリンを利用する方法が開示されている。ポリアニリンを含む分散液を電気絶縁フィルム上に塗工し、ポリアニリンで被覆された部分のみに銅、銀、錫を非電気化学的方法で付着させることができる。しかしながら、無電解銅めっきを行う前処理としてポリアニリン表面を還元するためにヒドラジン等のアルカリ浴に長時間浸漬する必要があり、アルカリ浴に絶えうる電気絶縁フィルムは限定される。また、ポリアニリン自身がアルカリ液に浸漬した場合に劣化され、強度が低下することも問題視される。
【0009】
また、特許文献2には、導電性高分子としてポリピロールを利用する方法が開示されている。これは、電気絶縁フィルム上にポリピロールを含む分散液を塗工し、ポリピロールをアルカリ浴で還元することで、パラジウムを付着させ、無電解銅めっきする方法である。ポリピロールを塗工した箇所のみに銅を付着させることができるため、パターンめっきすることが可能となる。また、アルカリ浸漬による活性化も短時間で行えるため優れた方法といえる。しかしながら、特許文献2の実施例記載の手順に従いポリピロール面に直接無電解銅めっきしたものに、更に新たに電気銅めっきし、例えば3μmの銅膜層を形成した場合、密着性の強い金属フィルムを得ることができない。
【特許文献1】特表平10−511433号公報
【特許文献2】特開2008−163371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー層が形成された電気絶縁性材料表面に、適度な厚みを有する密着性の強い金属膜が形成された電気絶縁体とその製造方法を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次の手段を見出した。
即ち、本発明は、電気絶縁性材料表面に近いほうから順に、i)π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー層、ii)Ni又はNi合金層、iii)Ni又はNi合金より電気伝導度の高い1層以上の金属層からなる層が累積形成された当該金属多層積層電気絶縁体である。
【0012】
また、本発明は、
1a)電気絶縁性材料表面に、π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成する工程、次いで、
2a)形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程、次いで、
3a)形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程、
からなる、金属多層積層電気絶縁体の製造方法に関するか、あるいは
1b)電気絶縁性材料表面に、π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成する工程、次いで、
2b)形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程、次いで、
3b)形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金より電気伝導度の高い金属層を形成する工程、次いで、
4b)形成された当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い金属表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程、
からなる、金属多層積層電気絶縁体の製造方法に関する。
なお、ここで「ドープ」とは、手段の如何を問わず、π共役結合を有する有機化合物をバインダー樹脂中に存在させることを意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属多層積層電気絶縁体は、例えばフレキシブル回路基板に適した適度な厚みを有する密着性の強い金属膜が形成されたものであり、また本発明の製造方法によれば、当該金属多層積層電気絶縁体を作業性よくかつ安価に製造することができる。
【0014】
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明である金属多層積層電気絶縁体について具体的に説明する。
本発明は、電気絶縁性材料表面に近いほうから順に、i)π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー樹脂層、ii)Ni又はNi合金層、iii)Ni又はNi合金より電気伝導度の高い1層以上の金属層からなる層が累積形成された当該金属多層積層電気絶縁体であって、i)の好ましい厚みは0.01〜10μm、ii)の好ましい厚みは0.01〜1.0μm、iii)の好ましい厚みは0.01〜5.0μmである。
【0016】
本発明の金属多層積層電気絶縁体は、その製造方法を問わないが、例えば、電気絶縁性材料表面にπ共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成し、次いでその上にNi又はNi合金層を無電解めっきし、更にその上に該電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきすることで密着性の強い金属箔を形成させることができ、あるいは、電気絶縁性材料表面にπ共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成し、次いでその上にNi又はNi合金層を無電解めっきし、更にその上にNi又はNi合金より電気伝導度の高い金属を無電解めっきし、また更にその上に該電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきすることで密着性の強い金属箔を形成させることができる。
なお、上記Ni又はNi合金層形成のための無電解めっき処理は、電気絶縁性材料表面にπ共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層表面全体に対してなされるものであるが、実際に該無電解めっきがのるのはバインダー樹脂表面に露出している、共役結合を有する有機化合物に対してである。このようにして形成されたNi又はNi合金層はπ共役結合を有する有機化合物と強固に結合することで強靭なめっき層を形成する。
【0017】
本発明である金属多層積層電気絶縁体の製造方法について具体的に説明する。
1)π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層の形成工程
バインダー樹脂層の形成は、π共役結合を有する有機化合物をバインダー樹脂に分散または溶解させてドープ混合物とし、そのドープ混合物を電気絶縁性材料表面に塗布してよい。
使用する電気絶縁性材料は、あらゆるタイプのプラスチックが利用できる。具体的には、フェノール樹脂やエポキシ樹脂やメラミン樹脂等」の熱硬化性樹脂、ポリ酢酸ビニルやABS樹脂やポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートやナイロン等の熱可塑性汎用エンプラ、ポリスルフォンやポリエーテルイミドやポリイミド等の熱可塑性スーパーエンプラ、ポリアミノビスマレインイミドやシリコーン樹脂等の架橋型エンプラ等が利用できる。また、ガラスやセラミックスや酸化物微粒子や合成繊維なども利用することができる。材料の形態は特に限定されることはなく、剛直な材料、柔軟性のある材料に適用することができる。特にプリント回路基盤へ利用する場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートやポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0018】
使用するバインダー樹脂としては、使用する電気絶縁性材料と密着性が強い樹脂であれば、特に限定されるものではない。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。ポリエステル、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンメラクリレートが好ましく、更に好ましくはエポキシ樹脂、メラミン樹脂である
【0019】
上記バインダー樹脂にドープさせるπ共役結合を持つ有機化合物の種類としては、特に限定されるものではないが、一般的に導電性高分子と呼ばれる化合物が好ましく例示される。例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、フラーレン、ポリアセチレン、カーボンブラック、ポリペリナフタレン、ポリフタロシアニン等が挙げられる。ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、フラーレンが好ましく、更に好ましくはポリアリニン、ポリピロールである。
π共役結合を持つ有機化合物の添加量としては、電気絶縁性材料表面に形成された当該バインダー樹脂層の表面抵抗値が1011Ω/□以下となるようにドープして良く、具体的にはバインダー樹脂100重量部に対し、10〜100重量部のドープが好ましく、更に好ましいドープは20〜80重量部である。
この場合、使用するバインダー樹脂とそこに分散されたπ共役結合を有する有機化合物の比重差を利用することで、水平に保たれた電気絶縁性材料表面に塗布されたドープ混合物の表面近くのπ共役結合を有する有機化合物の濃度を高めることができる。
π共役結合を持つ有機化合物が固体である場合、粉体にしてよく、その粒径は、1nm〜100nmが好ましい。
【0020】
ところで、当該ドープ混合物のコート作業を容易にするためにバインダー樹脂をいったん媒体に溶解させ、そこにπ共役結合を有する有機化合物を分散または溶解させ液状物とし、それを電気絶縁性材料表面に塗布、その後媒体を乾燥等の手段により除去することで当該π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー層を形成してよい。
使用する媒体は、バインダー樹脂を溶解させる一方、π共役結合を有する有機化合物を破壊せず、当該π共役結合を有する有機化合物が粉体である場合には凝集させなければ特に種類が限定されるものではない。塗布後の媒体除去性を考慮すると大気圧下での沸点が60〜200℃の範囲である媒体が好ましい。具体的には、トルエン、ベンゼン、キシレン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、エチセロブなどの有機溶媒が挙げられる。トルエン、メタノール、エタノール、エチセロブが好ましく、更に好ましくはエチセロブ、トルエンである。
媒体の添加量としては、π共役結合を有する有機化合物をバインダー樹脂に分散または溶解させたドープ混合物100重量部に対し、50重量部〜9500重量部が好ましく、更に好ましくは100〜9000重量部である。
当該媒体に対してπ共役結合を有する有機化合物を分散させるのが好ましい。
【0021】
上記π共役結合を有する有機化合物をバインダー樹脂に分散または溶解させてドープ混合物を塗布する方法としては限定されるものではないが、特に媒体を使用した場合にはインクジェット方式、グラビア方式、オフセット方式、スクリーン方式、スプレー方式、ディップ方式、コーター方式、キャスティング方式など一般的な塗布方法を好ましく用いることができる。塗布後は媒体を除去するために加熱するのが好ましい。媒体除去完了後においてはπ共役結合を持つ有機化合物をアニールする目的で改めて加熱してもよい。
【0022】
2)Ni又はNi合金層の形成工程
Ni又はNi合金層の形成は、電気絶縁性材料上に形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成すればよい。この場合、無電解めっきを行うに当たり、次の二段階の前処理工程を経てよい。
【0023】
(電気絶縁性材料表面に形成されたバインダー樹脂を含むπ共役結合を持つ有機化合物層の表面に更に触媒を付着させる為の前処理工程)
電気絶縁性材料表面に形成されたバインダー樹脂を含むπ共役結合を持つ有機化合物層の表面の脱脂等を目的として表面を洗浄するのが好ましい。その洗浄液としては、例えば、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムや水酸化カリウムやアンモニア等、アルカリ性化合物の溶液が好ましく、特に水溶液が好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液が更に好ましい。
表面への濡れ性向上のために、洗浄液は界面活性剤を含んでいてもよい。緩和なアルカリ条件が好ましく、具体的にはアルカリ性溶液の濃度は、使用する水等の溶媒に対して0.5重量%から10重量%となるよう当該アルカリを添加するのが好ましい。洗浄は浸漬法を採用してよく、浸漬温度は、25℃から50℃の範囲が好ましく、更に好ましいのは30℃〜50℃の範囲である。浸漬時間は、30秒から5分が好ましく、更に好ましいのは1分〜3分の範囲である。
【0024】
(π共役結合を持つ有機化合物表面に触媒を付着する前処理工程)
電気絶縁性材料表面に形成されたバインダー樹脂を含むπ共役結合を持つ有機化合物層の上記脱脂後の表面に更に触媒を付着させてよい。触媒の付着方法に制限はないが、触媒液に浸漬するのが好ましい。使用できる触媒液は、次の工程である無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、塩化パラジウム溶液、OPC-80キャタリスト(奥野製薬(株))、ICPアクセラ(奥野製薬(株))、NNPアクセラ(奥野製薬(株))が好ましく、更に好ましくはOPC-80キャタリスト(奥野製薬(株))、ICPアクセラ(奥野製薬(株))である。これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む溶液の安定性の点からパラジウム化合物が好ましい。浸漬温度は、20℃〜40℃好ましい。浸漬時間は、30秒〜5分が好ましい。
【0025】
(無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程)
好ましくは上記二つの前処理工程を経て、π共役結合を持つ有機化合物が表面に形成された電気絶縁性材料はNi又はNi合金めっき液に浸漬される。Ni又はNi合金めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。例えば、Niめっき液としては、市販品が幅広く使用でき、硫酸ニッケル30g/l、次亜リン酸ソーダ20g/l、クエン酸アンモニウム50g/lを含む水溶液などが挙げられる。Ni合金めっき液としては、りん化合物が還元剤となるNi-P合金めっき液やホウ素化合物が還元剤となるNi-Bメッキ液などが挙げられる。トップニコロンXT(奥野製薬(株))、ICPニコロンGM(E)(奥野製薬(株))、トップケミアロイB-1(奥野製薬(株))、ICP二コロンDK(奥野製薬(株))が好ましく、更に好ましくはICP二コロンDK(奥野製薬(株))、トップケミアロイB-1(奥野製薬(株))である。浸漬温度は、30℃〜90℃が好ましい。浸漬時間は、15秒〜10分が好ましい。
【0026】
3)Ni又はNi合金より電気伝導度の高い金属層の形成工程
必要に応じ、上記で形成した無電解Ni又はNi合金めっき層上にNi又はNi合金よりも電気伝導度が高い金属を無電解めっきすることができる。Ni又はNi合金よりも電気伝導度が高い金属であれば、特に限定されるものではないが、例えば、金、銀、銅、コバルト、それら合金金属等が挙げられる。置換めっき、化学還元めっきがあるが、金属に応じてそれらを自由に選択することができる。
【0027】
当該無電解めっきするに当たり、例えば触媒液に浸漬する等の手段により触媒を付着させる前処理工程を経てよい。触媒液とは、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む溶液の安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウム−塩酸溶液が特に好ましい。溶液中に含まれる触媒濃度は0.2g/l〜1g/lの範囲が好ましい。浸漬温度は、20℃〜40℃が好ましい。浸漬時間は、15秒〜2分が好ましい。
【0028】
無電解銅又は銅合金めっき浴は、一般的に使用されているめっき液であれば特に限定されるものではない。溶液中に含まれる銅濃度は1.5g/l〜3g/lの範囲が好ましい。例えば、銅めっき液としてはATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)やOPC−HR無電解銅E浴などが挙げられる。銅合金めっきとしては、PFPカッパーFF浴(奥野製薬(株))などが挙げられる。浸漬温度は、35℃から50℃が好ましい。浸漬時間は、1分から5分が好ましい。
【0029】
上記の無電解Ni又はNi合金への無電解銀めっき浴は、一般的に使用されているめっき液であれば特に限定されることはない。溶液中に含まれる銀濃度は1g/l〜4g/lの範囲が好ましい。例えば、プレサRGA−14(上村工業(株))、IM−SILVER(日本高純度化学(株))、ダインシルバーEL−3S(大和化成(株))等が挙げられる。浸漬温度は、25℃から50℃が好ましい。浸漬時間は、30秒から5分が好ましい。
【0030】
上記の無電解Ni又はNi合金への無電解金メッキ浴は、一般的に使用されているめっき液であれば特に限定されることはない。溶液中に含まれる金濃度は0.5g/l〜3.0g/lの範囲が好ましい。例えば、ゴブライトTAW−66(上村工業(株))、メルプレートAu6601M(メルテックス(株))、レクトロレスST(日本エレクトロプレーティング・エンジニヤース(株))等が挙げられる。浸漬温度は、50℃から90℃が好ましい。浸漬時間は、30秒から5分が好ましい。
【0031】
4)形成された当該Ni又はNi合金層表面、または形成された当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い金属表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程
上記の電気めっき浴は、一般的に使用されているめっき液であれば特に限定されることはない。
例えば、銅を電気めっきする場合は、硫酸銅60〜110g/l、硫酸160〜200g/lおよび塩酸0.1〜0.15ml/lを純水に加え、さらに奥野製薬株式会社製トップルチナSFベースWR1.5〜5.0ml/l、トップルチナSF−B0.5〜2.0ml/lおよびトップルチナSFレベラー3.0〜10ml/lを添加剤として加えてよい。好ましい銅めっき浴としては、硫酸銅70g/l、硫酸200g/lおよび塩酸0.5ml/lを純水に加え、さらにトップルチナSFベースWR2.5ml/l、トップルチナSF−B1.0ml/lおよびトップルチナSFレベラー5.0ml/lを加える。浸漬温度は、20〜30℃が好ましい。浸漬時間は、めっきをつける銅膜の厚さによるが、例えば、2μmの銅膜をつける場合は、電流密度2A/dm2で約5分間浸漬すればよい。
例えば、銀を電気めっきする場合は、シアン化ナトリウム114〜127g/l、を純水に加え溶解させ、さらにシアン化銀37〜60g/lを加える。続いて、炭酸ナトリウム10〜20g/lを加え攪拌した後に、日進化成株式会社製ニッシン・ブライト20〜40g/lを添加剤として加えてよい。好ましい銀めっき浴としては、シアン化ナトリウム120g、シアン化銀50g/lおよび炭酸ナトリウム15g/lを純水に加え、さらにニッシン・ブライト30g/lを加える。浸漬温度は、20〜30℃が好ましい。浸漬時間は、めっきをつける銀膜の厚さによるが、例えば、2μmの銀
膜をつける場合は、電流密度0.6A/dm2で約5分間浸漬すればよい。
例えば、金を電気めっきする場合は、日進化成株式会社製ニッシン・オーロベースAC-4をめっき液として使用してよい。浸漬温度は、35〜45℃が好ましい。浸漬時間は、めっきをつける金膜の厚さによるが、例えば、2μmの金膜をつける場合は、電流密度0.6A/dm2で約16分間浸漬すればよい。
【0032】
上記1)〜4)の各工程間には、前工程の処理液が次工程へ侵入するのを防ぐために水洗工程を設けてよい。
【実施例】
【0033】
[塗工例]
π共役結合を有する有機化合物(ポリピロールまたはポリアニリン)が分散されたトルエン溶液中にメラミン樹脂が溶解したトルエン溶液を、π共役結合を有する有機化合物の固形分濃度が2wt%、メラミン樹脂の固形分濃度が3wt%になるように調製した。続いて、バーコーターを使用してプラスチックフィルム上に当該π共役有機化合物及びメラミン樹脂層が100nmになるように製膜後、100℃にて10分間乾燥して作成した。
【0034】
[実施例1](無電解Ni合金めっき→無電解銅めっき)
ポリピロールが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。続いて、30℃に調整したICPアクセラ20質量%水溶液(pH1)に30秒浸漬し、40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各槽通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0035】
[実施例2](無電解Ni合金めっき→無電解銅めっき)
ポリピロールが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1013Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。続いて、30℃に調整したICPアクセラ20質量%水溶液に30秒浸漬し、40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各槽通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリイミドフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0036】
[実施例3](無電解Ni合金めっき→無電解銅めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。続いて、30℃に調整したICPアクセラ20質量%水溶液に30秒浸漬し、40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各槽通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0037】
[実施例4](無電解Ni合金めっき→無電解銅めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1010Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。続いて、30℃に調整したICPアクセラ20質量%水溶液に30秒浸漬し、40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各槽通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリイミドフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0038】
[比較例1](ポリピロール面に直接無電解銅めっきする方法)
ポリピロールが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0039】
[比較例2](ポリピロール面に直接無電解銅めっきする方法)
ポリピロールが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリイミドフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0040】
[比較例3](ポリアニリン面に直接無電解銅めっきする方法)
ポリアニリンが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0041】
[比較例4](ポリアニリン面に直接無電解銅めっきする方法)
ポリアニリンが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。40℃に調整した無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に3分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、膜厚0.3μmで銅めっきが施されたポリイミドフィルムが得られた。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。
【0042】
[電気銅めっき]
上記実施例1〜4、比較例1〜4で得られた無電解銅めっきされたフィルムに以下の条件で電気銅めっきで3μm形成した。
上記実施例1〜4、比較例1〜4で得られた無電解銅フィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、硫酸銅70g/l、硫酸200g/l、塩酸0.5ml/l、トップルチナSFベースWR2.5ml/l、トップルチナSF−B1.0ml/l、トップルチナSFレベラー5.0ml/lを全て混ぜた溶液を用いた。続いて、電流密度を2A/dm2に設定し、8分程度通電することで、銅3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銅めっき後のサンプルを得た。
【0043】
[実施例5](無電解Ni合金めっき→電気銅めっき)
ポリピロールが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、硫酸銅70g/l、硫酸200g/l、塩酸0.5ml/l、トップルチナSFベースWR2.5ml/l、トップルチナSF−B1.0ml/l、トップルチナSFレベラー5.0ml/lを全て混ぜた溶液を用いた。続いて、電流密度を2A/dm2に設定し、8分程度通電することで、銅3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銅めっき後のサンプルを得た。
【0044】
[実施例6](無電解Ni合金めっき→電気銅めっき)
ポリピロールが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1013Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、硫酸銅70g/l、硫酸200g/l、塩酸0.5ml/l、トップルチナSFベースWR2.5ml/l、トップルチナSF−B1.0ml/l、トップルチナSFレベラー5.0ml/lを全て混ぜた溶液を用いた。続いて、電流密度を2A/dm2に設定し、8分程度通電することで、銅3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銅めっき後のサンプルを得た。
【0045】
[実施例7](無電解Ni合金めっき→電気銅めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、硫酸銅70g/l、硫酸200g/l、塩酸0.5ml/l、トップルチナSFベースWR2.5ml/l、トップルチナSF−B1.0ml/l、トップルチナSFレベラー5.0ml/lを全て混ぜた溶液を用いた。続いて、電流密度を2A/dm2に設定し、8分程度通電することで、銅3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銅めっき後のサンプルを得た。
【0046】
[実施例8](無電解Ni合金めっき→電気銅めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1010Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、硫酸銅70g/l、硫酸200g/l、塩酸0.5ml/l、トップルチナSFベースWR2.5ml/l、トップルチナSF−B1.0ml/l、トップルチナSFレベラー5.0ml/lを全て混ぜた溶液を用いた。続いて、電流密度を2A/dm2に設定し、8分程度通電することで、銅3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銅めっき後のサンプルを得た。
【0047】
[実施例9](無電解Ni合金めっき→電気銀めっき)
ポリピロールが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に銀板電極を準備した。電解液は、シルブレックス5(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(製)社製)を用いた。続いて、電流密度を1A/dm2に設定し、5分程度通電することで、銀3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銀めっき後のサンプルを得た。
【0048】
[実施例10](無電解Ni合金めっき→電気銀めっき)
ポリピロールが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1013Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に銀板電極を準備した。電解液は、シルブレックス5(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(製)社製)を用いた。続いて、電流密度を1A/dm2に設定し、5分程度通電することで、銀3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気銀めっき後のサンプルを得た。
【0049】
[実施例11](無電解Ni合金めっき→電気金めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、テンペレックス401(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(製)社製)を用いた。続いて、電流密度を1A/dm2に設定し、5分程度通電することで、金3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気金めっき後のサンプルを得た。
【0050】
[実施例12](無電解Ni合金めっき→電気金めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1010Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。50℃に調整した無電解Ni浴トップケミアロイB1(奥野製薬工業(株)社製)100%水溶液に1分30秒浸漬しNiめっきを0.02μmポリピロール表面に形成させる。めっき終了後、100℃のオーブンで1時間乾燥を行った。続いて、無電解Ni合金めっきされたフィルムを陰極に繋ぎ、陽極に不溶性電極を準備した。電解液は、テンペレックス401(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(製)社製)を用いた。続いて、電流密度を1A/dm2に設定し、5分程度通電することで、金3μmが電気めっきされたフィルムを得た。電解液を水洗により除去し、1時間乾燥すること電気金めっき後のサンプルを得た。
【0051】
[比較例5](無電解銀めっき→電気銀めっき)
ポリピロールが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。続いて、硝酸銀 7g/l、トリエタノールアミン 12ml/l、2,2−チオジエタノール 12g/l、グルコース(ブドウ糖) 5g/lを混ぜた溶液を20℃まで調整し20分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、めっきは析出しなかった。
【0052】
[比較例6](無電解銀めっき→電気銀めっき)
ポリピロールが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。続いて、硝酸銀 7g/l、トリエタノールアミン 12ml/l、2,2−チオジエタノール 12g/l、グルコース(ブドウ糖) 5g/lを混ぜた溶液を20℃まで調整し20分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、結果として、めっきは析出しなかった。
【0053】
[比較例7](無電解金めっき→電気金めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。70℃に調整した無電解金めっき浴セラゴールド6040浴(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(製)社製)に20分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、結果として、めっきは析出しなかった。
【0054】
[比較例8](無電解金めっき→電気金めっき)
ポリアニリンが塗工されたポリイミドフィルム(シート抵抗値:1011Ω/□)を初めに40℃に調整した水酸化ナトリウム5質量%水溶液に2分浸漬し、次に30℃に調整した0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に2分浸漬する。70℃に調整した無電解金めっき浴セラゴールド6040浴(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(製)社製)に20分浸漬した。各工程通過後には水洗を行った。結果として、結果として、めっきは析出しなかった。
【0055】
(試験例)
上記[実施例1〜4]、[比較例1〜4]および[電気銅めっき]の工程を経て作製した電気銅めっき後のフィルム、並びに、[実施例5〜12]、[比較例5〜8]の電気めっき後のフィルムのめっき密着性を評価した。それらの結果を表1ないし表3に示す。
なお、評価基準は以下の通りとした。
・密着性試験
JIS H8504テープ試験方法に準じて、カッターで2mm角の条こんを100個した後にテープによる引き剥がし試験を実施した。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○ :剥離全くなし。×:剥離発生。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表1ないし表3から明らかなように、実施例では下地に無電解めっきでNi又はNi合金を付けることで、電気めっき後の密着性が向上することが分かった。
特に実施例1〜4に記載のように、無電解めっきで形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金より電気伝導度の高い金属層(ここでは銅)を設けることで、電気銅めっき後の密着性の向上に加え、膜厚ムラの発生が抑制された良好な電気めっき膜が得られることがわかった。
【0060】
これに対し、比較例1〜4では、樹脂フィルム上に銅めっき膜が形成されているが、有機化合物と無電解銅めっきとの密着性が弱いため電気銅めっきすると、応力が働き有機化合物層と無電解銅層間で剥離された。
また、比較例5〜8では、電気めっきを施すも金または銀は析出せず、めっき膜形成にすら至らなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明を用いれば、密着性が強い金属膜が形成された電気絶縁性材料を簡便に得ることができ、例えばプリント回路基盤や剛直回路基板の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性材料表面に近いほうから順に、i)π共役結合を持つ有機化合物がドープされたバインダー樹脂層、ii)Ni又はNi合金層、iii)Ni又はNi合金より電気伝導度の高い1層以上の金属層からなる層が累積形成された当該金属多層積層電気絶縁体。
【請求項2】
1)電気絶縁性材料表面に、π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成する工程、次いで、
2)形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程、次いで、
3)形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程、
からなる製造方法により製造された請求項1記載の金属多層積層電気絶縁体。
【請求項3】
1)電気絶縁性材料表面に、π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成する工程、次いで、
2)形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程、次いで、
3)形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金より電気伝導度の高い金属層を形成する工程、次いで、
4)形成された当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い金属表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程、
からなる製造方法により製造された請求項1記載の金属多層積層電気絶縁体。
【請求項4】
1)電気絶縁性材料表面に、π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成する工程、次いで、
2)形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程、次いで、
3)形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程、
からなる請求項1または2記載の金属多層積層電気絶縁体の製造方法。
【請求項5】
1)電気絶縁性材料表面に、π共役結合を有する有機化合物がドープされたバインダー樹脂層を形成する工程、次いで、
2)形成された当該π共役結合を持つ有機化合物表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金層を形成する工程、次いで、
3)形成された当該Ni又はNi合金層表面に、更に無電解めっきでNi又はNi合金より電気伝導度の高い金属層を形成する工程、次いで、
4)形成された当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い金属表面に、更に当該Ni又はNi合金よりも電気伝導度の高い1種以上の金属を電気めっきする工程、
からなる請求項1または3記載の金属多層積層電気絶縁体の製造方法。

【公開番号】特開2011−153372(P2011−153372A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117096(P2010−117096)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【出願人】(591186903)進和工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】