説明

長寸法測定装置

【課題】使い勝手の良い長寸法測定装置を提供すること。
【解決手段】長寸法測定装置1は、試料2が載置し、配置位置が固定されている試料台10と、試料2に形成されたパターンに照明光を照射する照明ユニット20と、照明光から得られたパターンの像を撮像する撮像ユニット30と、試料台10の平面度を調整し試料台10を支持する平面度調整機構12と、エアを試料台10に送気し、試料台10からエアを吸引する送気吸引部16と、試料台10にて浮上している試料2に吸着する吸着機構40と、撮像ユニット30をZ方向に移動させるZステージ51と、撮像ユニット30をX方向に移動させるXステージ52と、吸着機構40を介して試料2をY方向に移動させるYステージ53と、試料2に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する干渉測定ユニット60とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD基板などの試料に形成されたパターン上の2点間の距離を、ステージの位置と撮像したパターンの像の位置とを基に測定する長寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、長寸法測定装置は、LCD基板などの試料に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する。そのために長寸法測定装置は、試料に形成されたパターンに照明光を照明ユニットから照明し、この照明光から得られたパターンの像を撮像ユニットによって拡大して撮像する。
【0003】
照明ユニットは、試料台に載置されている試料を透過する照明光を試料に形成されたパターンに照射する照明部と、照明部の光軸と撮像ユニットの光軸とを一致させるために、撮像ユニットのXY方向の移動に同期して照明部をXY方向に移動させ、照明部を位置決めする照明ステージとを有している。
【0004】
照明光の照明方式には、反射照明方式と、透過照明方式とが挙げられる。
反射照明方式は、撮像ユニットから同軸で照明光を落射照明し、試料からの反射光を画像として捕らえる。
透過照明方式は、照明光を試料の裏側から照射し、試料を透過する透過光を画像として捕らえる。
長寸法測定装置は、反射照明方式と透過照明方式とを試料に応じて使い分ける。
【0005】
撮像ユニットは、XY移動する。
【0006】
長寸法測定装置は、照明ユニットと撮像ユニットとが搭載されるステージベースを有している。
【0007】
長寸法測定装置に配設されている撮像ユニットを有する試料測定装置は、例えば特許文献1に開示されている。一般的に、試料測定装置の試料台の平面度精度を測定開始前にきちっと調整しておくことが必要であるが、調整には膨大な時間と労力が必要となる。そのためこの試料測定装置は、これらを解決し、短時間で平面データを測定及び調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−292683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、長寸法測定装置では、照明部と撮像ユニットとの両方がXY移動するため、Y方向の駆動重量が非常に大きくなる。このためステージベースには、移動のための加速・減速時にて、慣性エネルギを吸収する非常に重たい石定盤が用いられる。これにより長寸法測定装置の全体重量は非常に重たくなり、さらに長寸法測定装置は高価となってしまう。
また照明部と撮像ユニットとがY方向に移動する際、それぞれの駆動重量は大きく、且つ2軸が必要になる。そのため長寸法測定装置は高価になり、長寸法測定装置の消費電力が増大する傾向にある。
また照明部がY方向に移動するため、照明ステージは試料台のX方向における両端でしかステージベースに固定できない。そのためガラス材質の試料台は、例えば太鼓のような中空構造になるため、十分な剛性を確保しにくい。また試料台の平面度の調整には、限界がある。
【0010】
また試料台から試料を取り外す時に静電気が発生するために、試料と試料台とが密着し、試料が試料台に貼り付いてしまい、試料が容易に試料台から取り外せない問題がある。この対策として、静電気を除去する除電部を試料台周辺に複数配置する方法がある。しかしながら、長寸法測定装置は高価になり、効果にも限界がある。
さらにパターンが試料の両面に形成されている場合、試料が試料台に接触すると、接触面におけるパターンが損傷する問題がある。
そこで試料台においては、上述したように試料台に試料を密着させる方式の他に、試料台に支持ピンを千鳥状に配置し、試料と試料台との接触を小さくする方式が存在する。
この方式では、支持ピンによる試料と試料台との接触の減少により、静電気による試料台への試料の貼り付き(密着)及び接触面におけるパターンの損傷を軽減することができる。しかしながら支持ピンが接触面におけるパターンと部分的に接触するため、この部分でのパターンの損傷の回避は困難である。またこの方式では、試料おいて支持ピンによって支持されていない部分が撓み、試料の平面度の確保に限界が生じる。さらにこの方式では、試料は、外部振動に弱い。また試料と試料台との接触が少ないため、投入された試料がサーマルチャンバ内の雰囲気温度に落ち着くまで多大な時間がかかる。
【0011】
また撮像ユニットがXY方向に移動する際に、2軸のモータ及び2軸のレーザ測定長システムが必要となり、長寸法測定装置は高価となってしまう。この対策として、撮像ユニットをX方向にのみ移動させ、試料台をY方向にのみ移動させ、X方向とY方向との移動を分離させることが考えられる。この方式ではY方向の移動において、モータ及レーザ測長システムを1軸にして安価にすることができ、かつ重量を軽減することができる。しかしながら試料台の重量が比較的大きいため、上述したようにステージベースには非常に重たい石定盤が使用される。そのため結果的に、長寸法測定装置の軽量化には限界があり、長寸法測定装置は高価になる。
【0012】
このように長寸法測定装置において、全体重量が重く、高価で、消費電力が増大してしまう。
また試料台に十分な剛性を確保しにくく、試料台の平面度の調整に限界がある。
【0013】
また静電気によって試料が試料台に貼り付き容易に取り外せず、除電部を用いると長寸法測定装置は高価になり、パターンが試料の両面に形成されていると試料台に接触する接触面におけるパターンが損傷する。また支持ピンを用いると、支持ピンとの接触部分のパターンが損傷し、試料おいて支持ピンによって支持されていない部分が撓み、試料の平面度の確保に限界が生じ、試料は外部振動に弱くなり、試料がサーマルチャンバ内の雰囲気温度に落ち着くまで多大な時間がかかる。
【0014】
また撮像ユニットがXY方向に移動すると、長寸法測定装置は高価になり、1軸に移動させるにしても、ステージベースが重くなり、長寸法測定装置全体の軽量化に限界があり、高価になる。
【0015】
このように使い勝手が良くない。
【0016】
そのため本発明は、上記事情に鑑み、使い勝手の良い長寸法測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は目的を達成するために、試料に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する長寸法測定装置であって、前記試料が載置し、配置位置が固定されている試料台と、前記試料台の下方に固定され、前記試料台に載置された前記試料の裏面側から前記パターンに照明光を照射する照明ユニットと、前記試料台の上方に配設され、前記パターンを透過した前記照明光から得られた前記パターンの像を撮像する撮像ユニットと、前記試料台の平面度を調整する平面度調整部と、前記平面度調整部が載置され、前記平面度調整部を介して前記試料台を支持するL字形状の支持部とを有する平面度調整機構と、前記試料台に載置されている前記試料を前記試料台から浮上させるためにエアを前記試料台に送気し、前記試料の浮上量が所望となるように前記試料台から前記エアを吸引する送気吸引部と、前記試料台にて浮上している前記試料の端部を前記試料の裏面側から吸着する吸着機構と、前記撮像ユニットが搭載され、前記試料台上にて前記撮像ユニットを上下方向に移動させるZステージと、前記Zステージが搭載され、前記Zステージを前記上下方向に直交する左右方向に移動させることで、前記Zステージを介して前記試料台の上方に配設されている前記撮像ユニットを前記左右方向に移動させるXステージと、前記吸着機構が搭載され、前記吸着機構を前記左右方向と前記上下方向とに直交する前後方向に移動することで前記吸着機構を介して前記試料を前記前後方向に移動させるYステージと、前記撮像ユニットの位置と前記試料の位置とをレーザの干渉によって測定し、前記パターンの像の位置を測定し、測定結果を基に、前記試料に形成された前記パターン上の2点間の距離を測定する干渉測定ユニットと、を具備することを特徴とする長寸法測定装置を提供する。
【0018】
また本発明は目的を達成するために、前記吸着機構は、前記吸着機構を前記上下方向に移動させて、前記試料台の平面度誤差と前記Yステージの高さ方向の真直度誤差とを吸収するサスペンション機構を有することを特徴とする上記に記載の長寸法測定装置を提供する。
【0019】
また本発明は目的を達成するために、前記照明ユニットは、前記試料台に載置された前記試料と前記試料台とを透過する前記照明光を前記試料に形成された前記パターンに照射する照明部と、前記照明部の光軸と前記撮像ユニットの光軸とを一致させるために、前記撮像ユニットの前記左右方向の移動に同期して前記照明部を前記左右方向に移動させ、前記照明部を位置決めする照明試料台と、を有することを特徴とする上記に記載の長寸法測定装置を提供する。
【0020】
また本発明は目的を達成するために、前記吸着機構と前記Yステージとからなるユニットが1つ配設される場合、前記ユニットは、前記試料の前記左右方向における両端の前記左右方向における中点を通り前記前後方向に延びている前記試料の中心線上に配設され、前記ユニットが複数配設される場合、前記ユニットは前記中心線に対して前記左右方向に対称に配設され、前記吸着機構が1つの前記Yステージに搭載されている場合、前記吸着機構は前記中心線に対して前記左右方向に対称に配設され、前記前後方向における前記Yステージの中心軸は前記中心線上に配設されることを特徴とする上記に記載の長寸法測定装置を提供する。
【0021】
また本発明は目的を達成するために、前記平面度調整機構と前記送気吸引部と前記照明ユニットと前記Xステージと前記Yステージと前記干渉ユニットとが搭載される試料台ベースと、前記試料台ベースが搭載する架台と、前記試料台ベースと前記架台との間に配設され、前記試料台ベースを除振する除振部と、をさらに具備することを特徴とする上記に記載の長寸法測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、使い勝手の良い長寸法測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る長寸法測定装置の斜視図である。
【図2】図2は、プレートの平面度調整機構を説明するための図である。
【図3】図3(A)は、試料台の上面図である。図3(B)は、試料台の側面図である。
【図4】図4は、吸着機構部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお以下において、長寸法測定装置1の高さ方向を上下方向またはZ方向、Z方向に直交する長寸法測定装置1の幅方向を左右方向またはX方向、Z方向とX方向とに直交する長寸法測定装置1の長さ方向を前後方向またはY方向と称する。
本実施形態の長寸法測定装置1は、例えば同軸落射照明または透過照明方式を用いて、LCD基板などの試料2に形成された図示しないパターン上の2点間の距離を測定する。
【0025】
長寸法測定装置1は、試料2が載置し、配置位置が固定され移動しないガラス材質または金属材質の試料台10と、試料台10の下方に固定され、試料台10に載置された試料2の裏面2a側から試料台10の隙間を通して試料2に形成されたパターンに照明光を照射する照明ユニット20と、試料台10の上方に配設され、パターンを透過した照明光から得られたパターンの像(以下、パターン像)を拡大して撮像する撮像ユニット30とを有している。撮像ユニット30は同軸で照明光を落射照明する機能を有している。
【0026】
試料台10は、照明光と撮像ユニット30の光軸とが挿通し、X方向に沿って配設されている長穴形状の開口部10aを有している。
【0027】
試料台10,10h,10iは、後述するステージベース70に固定されている平面度調整機構12に配設されている。平面度調整機構12は、試料2の平面度(撓み)誤差によって生じるパターン上の2点間の距離の測定誤差を最小限に抑えるために、試料台10,10h,10iの平面度を所望となるように調整する平面度調整部13と、ステージベース70から延設され、平面度調整部13が載置され、平面度調整部13を介して試料台10,10h,10iを支持するL字形状の支持部14とを有している。
【0028】
図1と図2(A)と図3(A)とに示すように、平面度調整部13は、例えばボルトなどであり、支持部14の後述する一辺14aに載置されている後述する台14dと試料台10とを固定する。図2(B)に示すように、平面度調整部13にはバネが巻かれ、平面度調整部13は、試料台10と台14dとを固定する際に、締るまたは緩まることで試料台10の平面度を調整する。平面度調整部13は、複数配設されている。なおこのような平面度調整部13は、図2(C)と図3(B)とに示すように後述する吸着機構40側におけるレール状の試料台10hと、後述するXステージ側におけるレール状の試料台10iとにも配設されている。
【0029】
支持部14において、L字の一辺14aはX方向に沿って配設され、L字の他辺14bはZ方向に沿ってステージベース70から立設し、支持部14は、一辺14aと他辺14bとに連結し、一辺14aと他辺14bとを支持する筋交い14cを有しており、剛性(強度)を確保している。支持部14は、試料台10,10h,10iのX方向の両端、且つY方向に並んで配設されている。このように支持部14は、試料台10,10h,10iを多点で支持している。Y方向に並んで配設されている2つの支持部14(一辺14a)には、2つの平面度調整部13がX方向にずれた状態でY方向に沿って配設されている。つまり2つの支持部14と、2つの平面度調整部13とによって1つのユニット15が形成される。
【0030】
またX方向において、一方の一辺14aの先端と、他方の一辺14aの先端との間には、隙間部14fが配設されている。この隙間部14fは、開口部10aと同様にY方向に沿って配設され、Z方向において開口部10aの下方に配置されている。
【0031】
また試料台10には、試料台10に載置されている試料2を試料台10から浮上させるためにエアを試料台10に送気し、試料2の浮上量が所望となるように試料台10からエアを吸引する送気吸引部16が配設されている。またこの送気吸引部16は、試料台10h,10iに載置されている試料2を試料台10h,10iから浮上させるためにエアを試料台10h,10iに送気する。また送気吸引部16は、サーマルチャンバの雰囲気温度と同一のエアを、試料台10,10h,10iの裏面10bから表面10cに向けて送気し、試料台10,10h,10iに載置されている試料2を試料台10,10h,10iから浮上させる。また送気吸引部16は、試料2の浮上量が一定となるように、エアを試料台10の表面10cから裏面10bに向けて吸引する。このように送気吸引部16は、エアを送気の圧力と吸引の圧力とのバランスをとることで、試料2の浮上量を調整する。
なお送気吸引部16が試料台10からのみエアを吸引する理由は、撮像ユニット30が試料2を試料台10上にて撮像するため、試料台10h,10iよりも試料台10における試料2の浮上量を精密に制御する必要があるためである。
【0032】
なお図3に示すように、試料台10は、エアが裏面10bから表面10cに吹き出す吹出口10fと、エアが表面10cから裏面10bに向けて吸引される吸引口10gとを複数有している。吹出口10fと吸引口10gとは、千鳥状(互い違い)に配設されている。
なお図3に示すように、吹出口10fは、レール状の試料台10h,10iにも配設されている。この吹出口10fは、例えばボルトなどの平面度調整部13のための孔を兼ねていてもよい。
【0033】
照明ユニット20は、試料2と試料台10とを透過する照明光(透過光)を試料2に形成されたパターンに照射する照明部21と、照明部21の光軸と撮像ユニット30の光軸とを一致させるために、撮像ユニット30のX方向の移動に同期して照明部21をX方向に移動させ、照明部21を位置決めする照明ステージ22とを有している。照明部21は、試料2を透過する照明光(透過光)を、試料2の裏面2a側から試料台10を介して試料2に形成されたパターンに向けて照射する。照明部21は、Y方向とZ方向とには移動せず、Y方向とZ方向とにおいて位置決めされている。照明ステージ22は、支持部14と干渉しない。
【0034】
撮像ユニット30は、照明部21から照明された試料2に形成されたパターンの像を拡大して撮像する顕微鏡とCCDカメラとの少なくとも一方を有している。
【0035】
長寸法測定装置1は、送気吸引部16が試料台10,10h,10iに送気するエアの温度を、サーマルチャンバ内の配管経路をエアが流れる間に、サーマルチャンバの雰囲気温度と同一となるようにしている。なお本実施形態では、送気吸引部16が試料台10,10h,10iに送気するエアの温度をサーマルチャンバの雰囲気温度と同一となるように調整する温度調整部35を有していてもよい。
【0036】
また長寸法測定装置1は、試料台10,10h,10iにて浮上している試料2の端部2bを試料2の裏面2a側から吸着する吸着機構40を有している。
吸着機構40は、Y方向に配設され、試料2をY方向に移動させる。
【0037】
図4に示すように、吸着機構40は、吸着パッド40aによって裏面2a側から吸着する。
【0038】
吸着機構40は、試料2が試料台10,10h,10iにて安定して浮上するように吸着機構40をZ方向に微小に移動させて、試料台10,10h,10iの平面度誤差と後述するYステージ53の高さ方向の真直度誤差と吸収するサスペンション機構41をさらに有している。サスペンション機構41のバネ力は、送気吸引部16における吹き出し、吸い込みによるエア浮上剛性よりも、十分小さく設定されている。サスペンション機構41は、試料2が浮上した状態で移動した際、試料台10,10h,10iの平面度誤差と後述するYステージ53の高さ方向の真直度誤差となどのZ方向の変化量を吸収し、後述する測定部66の吹き出し、吸引によるZ方向の拘束力と干渉しないようにしている。
【0039】
長寸法測定装置1は、撮像ユニット30が搭載され、試料台10上にて撮像ユニット30をZ方向に移動させるZステージ51と、Zステージ51が搭載され、Zステージ51をX方向に移動させることで、Zステージ51を介して試料台10の上方に配設されている撮像ユニット30をX方向に移動させるXステージ52と、吸着機構40が搭載され、吸着機構40をY方向に移動することで吸着機構40を介して試料2をY方向に移動させるYステージ53とを有している。
【0040】
Zステージ51は、撮像ユニット30をZ方向に移動させ、試料2のパターンに撮像ユニット30の焦点を合わせる。Zステージ51とXステージ52とYステージ53とは、試料2の熱膨張と、Zステージ51とXステージ52とYステージ53との熱膨張とによる誤差を軽減するため、温度が一定に保持されたサーマルチャンバに設置される。
またZステージ51とXステージ52とは、試料台10の上方に配置される。
【0041】
なお撮像ユニット30は、上述したように、Zステージ51によってZ方向に移動し、Xステージ52によってX方向に移動するのみであり、Y方向には移動しない。つまり撮像ユニット30は、Y方向において位置決めされている。
【0042】
なお吸着機構40とYステージ53とは、1つのユニット54として配設されている。ユニット54が1つ配設される場合、Y方向における試料2の動作に対してヨーイングを最小限に抑えるために、ユニット54は、試料2のX方向における両端2cのX方向における中点2dを通りY方向に延びている試料2の中心線2f上に配設される。このときY方向における吸着機構40の中心軸とY方向におけるYステージ53の中心軸とが、中心線2f上に配設される。
そのため吸着機構40がY方向に移動する際、吸着機構40は中心線2fに沿って移動する。またYステージ53と吸着機構40とは試料台10,10h,10iと平面度調整機構12とに干渉しないように、吸着機構40はY方向に沿って配設されている開口部10a内と隙間部14f内とをY方向に沿って移動し、Yステージ53は、支持部14(一辺14a)の下方に配設され、X方向において一方の他辺14bと他方の他辺14bとの間に配設される。つまりYステージ53は、一方の支持部14と他方の支持部14とによって両側と上方とを覆われる。またY方向に移動する吸着機構40とYステージ53とは、照明ユニット20に干渉しない。
【0043】
なお、試料2が大型となり、複数の吸着機構40が端部2bを吸着する場合、ユニット54が複数配設される。この場合、Y方向における試料2の動作に対してヨーイングを最小限に抑えるために、これらユニット54は、図示はしないが中心線2fに対してX方向に対称に配設される。
また複数の吸着機構40が1つのYステージ53に搭載されている場合、図示はしないが、これら吸着機構40は上記同様に中心線2fに対してX方向に対称に配設され、Y方向におけるYステージ53の中心軸は中心線2f上に配設される。
【0044】
また長寸法測定装置1は、撮像ユニット30の位置と試料2の位置とをレーザの干渉によって測定し、撮像ユニット30が撮像したパターンの像を画像処理し、画像処理によってパターンの像の位置を測定し、これら測定結果を基に、試料2に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する干渉測定ユニット60を有している。干渉測定ユニット60は、例えばレーザ干渉計である。
【0045】
干渉測定ユニット60は、レーザを照射するレーザ照射部61と、レーザ照射部61から照射されたレーザを撮像ユニット30側と吸着機構40側とに向けて反射するミラーである反射部62と、撮像ユニット30に配設され、反射部62によって反射されたレーザを照射され、このレーザを反射する撮像側反射部63と、吸着機構40の試料2近傍に配設され、反射部62によって反射されたレーザを照射され、このレーザを反射する試料側反射部64と、撮像側反射部63から反射された反射光と、試料側反射部64から反射された反射光との干渉を測定し、測定結果を基に、撮像ユニット30の位置と試料2の位置とを測定する干渉計65とを有している。
また干渉測定ユニット60は、撮像ユニット30が撮像したパターンの像を画像処理し、画像処理によってパターンの像の位置を測定する測定部66を有している。測定部66は、さらに、干渉計65における測定結果(撮像ユニット30の位置と試料2の位置)と、測定部66における測定結果(パターンの像の位置)とを基に、試料2に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する。
【0046】
干渉測定ユニット60は、後述するステージベース70に配設される。
【0047】
長寸法測定装置1は、支持部14と照明ステージ22とXステージ52とYステージ53とが搭載されるステージベース70と、ステージベース70が搭載する架台71と、ステージベース70と架台71との間に配設され、床振動を減衰して、ステージベース70を除振し、測定の安定性を確保する除振部73とを有している。
【0048】
次に本実施形態の動作方法について説明する。
平面度調整機構12は、試料台10,10h,10iの平面度を所望となるように調整し、試料台10,10h,10iの高さ位置を調整する。試料2は、試料台10hに載置される。サスペンション機構41は、試料2が試料台10,10h,10iにて安定して浮上するように吸着機構40をZ方向に微小に移動させて、試料台10,10h,10iの平面度誤差とYステージ53の高さ方向の真直度誤差とを吸収する。
【0049】
次に長寸法測定装置1は、送気吸引部16が送気するエアの温度をサーマルチャンバの雰囲気温度と同一となるように調整する。なおこの動作は、温度調整部35によって行われてもよい。次に送気吸引部16は、試料台10において、吹出口10fから長寸法測定装置1または温度調整部35によって温度が調整されたエアを送気し、吸引口10gからエアを吸引し、試料2を試料台10から所望量浮上させる。また送気吸引部16は、試料台10h,10iにおいて、吹出口10fから長寸法測定装置1または温度調整部35によって温度が調整されたエアを送気し、試料2を試料台10h,10iから所望量浮上させる。このとき試料2の温度は、長寸法測定装置1または温度調整部35が温度を調整し、送気吸引部16が送気したエアによってサーマルチャンバの雰囲気温度と同一となるように調整される。次に吸着機構40は、試料台10,10h,10iにて浮上している試料2の端部2bを試料2の裏面2a側から吸着パッド40aによって吸着する。
【0050】
次に試料2に形成されたパターン上の2点間の距離を測定するために、測定するパターン部分(以下、測定パターン)を、位置決めされている撮像ユニット30のY方向の位置に配置する必要がある。
そのため位置決めされている撮像ユニット30のY方向の位置に、測定パターンが配置されるように、Yステージ53は、吸着機構40をY方向に移動して、試料台10,10h,10iにて所望量浮上している試料2を吸着機構40を介してY方向に移動させる。このとき吸着機構40は、中心線2fに沿って移動する。
またこのとき吸着機構40はY方向に沿って配設されている開口部10a内と隙間部14f内とをY方向に沿って移動するために、吸着機構40は試料台10,10h,10iと平面度調整機構12とに干渉せずに移動する。
【0051】
次にXステージ52は、測定パターンの上方に撮像ユニット30が配設されるように、Zステージ51をX方向に移動させる。
【0052】
このとき照明ステージ22は、Xステージ52による撮像ユニット30のX方向の移動に同期して照明部21をX方向に移動させ、照明部21を位置決めする。このとき照明部21と測定パターンと撮像ユニット30とがZ方向において同一直線上に配設される。そして照明部21の光軸と、撮像ユニット30の光軸とは一致する。
【0053】
次にZステージ51は、撮像ユニット30の焦点が測定パターンに合うように、撮像ユニット30をZ方向に移動させる。
【0054】
このようにY方向には、吸着機構40と試料2とのみが移動する。
【0055】
そして照明部21は、照明光を測定パターンにおけるパターンに照射する。照明光は、試料2を透過する。撮像ユニット30は、焦点が合った状態で、照明光から得られたパターンの像(以下、パターン像)を拡大して撮像する。
【0056】
次に、レーザは、レーザ照射部61から照射され、反射部62によって撮像側反射部63と試料側反射部64とに向けて反射され、撮像側反射部63によって干渉計65に向けて反射され、試料側反射部64によって干渉計65に向けて反射される。そして干渉計65は、撮像側反射部63から反射された反射光と、試料2側反射鏡から反射された反射光との干渉を測定し、測定結果を基に、撮像ユニット30の位置と試料2の位置とを測定する。
また測定部66は、撮像ユニット30が撮像したパターンの像を画像処理し、画像処理によってパターンの像の位置を測定する。そして測定部66は、干渉計65における測定結果と、測定部66における測定結果とを基に、試料2に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する。
【0057】
なお上記の動作中に、除振部73は、床振動を減衰して、ステージベース70を除振し、測定の安定性を確保する。
【0058】
このように本実施形態では、吸着機構40と試料2とのみをY方向に移動させるために、Y方向の駆動重量を大幅に低減できる。これにより本実施形態では、長寸法測定装置1の全体重量を軽量化でき、長寸法測定装置1を安価にでき、長寸法測定装置1の消費電力を低減することができる。
また本実施形態では、平面度調整部13を介して試料台10,10h,10iを多点で支持する支持部14によって十分な剛性を確保することができる。また本実施形態では、支持部14に筋交い14cを配設することで、より十分な剛性を確保することができる。また本実施形態では、照明部21がX方向に移動するが、平面度調整部13によってガラス質の試料台10,10h,10iの平面度を所望となるように調整でき、試料2の平面度(撓み)誤差によって生じるパターン上の2点間の距離の測定誤差を最小限に抑えることができる。また本実施形態では、支持部14によって試料2が外部振動の影響を受けにくくなる。
【0059】
また本実施形態では、送気吸引部16によって試料2を試料台10,10h,10iから浮上させるために、試料台10,10h,10iに対して試料2を非接触にすることができる。これにより本実施形態では、試料2と試料台10,10h,10iとの密着を防止でき、試料2が試料台10,10h,10iに貼り付くことを防止でき、試料2を容易に試料台10,10h,10iから取り外すことができる。また本実施形態では、静電気を除去する除電部を不要にでき、長寸法測定装置1を安価にすることができる。
また本実施形態では、送気吸引部16によって、エアを送気の圧力と吸引の圧力とのバランスをとることができ、試料2の浮上量を調整でき、撮像ユニット30におけるオートフォーカス範囲を調整でき、オートフォーカスの時間を短縮することができる。
【0060】
また本実施形態では、上述したように試料台10,10h,10iに対して試料2を非接触にすることができるために、パターンが試料2の両面に形成されていても、試料台10,10h,10iに接触する接触面におけるパターンの損傷を防止することができる。
また本実施形態では、送気吸引部16によって試料2を試料台10,10h,10iから浮上させて、試料台10,10h,10iに対して試料2を非接触にするために、支持ピンを用いることがなく、支持ピンによるパターンの損傷を防止できる。また本実施形態では、支持ピンを用いないために、試料2の撓みを防止でき、試料2の平面度を容易に確保でき、試料2が外部振動の影響を受けにくくなる。また本実施形態では、送気吸引部16によって試料2を試料台10,10h,10iから浮上させる際に、送気吸引部16が送気するエアの温度をサーマルチャンバの雰囲気温度と同一となるように長寸法測定装置1または温度調整部35によって調整できるために、エアによって試料2の温度をサーマルチャンバの雰囲気温度と同一となるように調整することができる。これにより本実施形態では、試料2がサーマルチャンバの雰囲気温度に落ち着くまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0061】
また本実施形態では、撮像ユニット30をX方向のみを移動させるために、撮像ユニット30を1軸にでき、長寸法測定装置1を軽量化且つ安価にすることができる。
【0062】
このように本実施形態では、使い勝手を良くすることができる。
【0063】
また本実施形態では、サスペンション機構41によって、吸着機構40をZ方向に微小に移動できる。これにより本実施形態では、試料台10,10h,10iの平面度誤差とYステージ53の高さ方向の真直度誤差とを吸収することができる。
【0064】
また本実施形態では、撮像ユニット30と照明部21とはY方向に移動せず、撮像ユニット30のX方向の移動に同期して照明部21を照明ステージ22によってX方向に移動できるために、容易に撮像ユニット30の光軸と照明部21の光軸とを一致させることができ、撮像ユニット30と照明部21との位置合わせを不要にすることができる。
【0065】
また本実施形態では、吸着機構40とYステージ53とを中心線2f上に配設することで、Y方向における試料2の動作に対してヨーイングを最小限に抑えることができ、試料2を斜行させることなくY方向に移動させることができる。
【0066】
また本実施形態では、除振部73によってステージベース70を除振することができるために、試料2に形成されたパターン上の2点間の距離する際に、測定の安定性を確保することができ、試料2がX軸周りとY軸周りとに傾くことを防止することができる。
【0067】
また本実施形態では、試料台10に吹出口10fと吸引口10gとを配設しているが、これに限定する必要はなく、例えば多孔質材によって吹出と吸引とが行われてもよい。
【0068】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0069】
1…長寸法測定装置、2…試料、2a…裏面、2b…端部、2f…中心線、10,10h,10i…試料台、10a…開口部、10b…裏面、10c…表面、10f…吹出口、10g…吸引口、12…平面度調整機構、13…平面度調整部、14…支持部、14a…一辺、14b…他辺、14c…筋交い、15…ユニット、16…送気吸引部、20…照明ユニット、21…照明部、22…照明ステージ、30…撮像ユニット、35…温度調整部、40…吸着機構、41…サスペンション機構、51…Zステージ、52…Xステージ、53…Yステージ、54…ユニット、60…干渉測定ユニット、70…ステージベース、71…架台、73…除振部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に形成されたパターン上の2点間の距離を測定する長寸法測定装置であって、
前記試料が載置し、配置位置が固定されている試料台と、
前記試料台の下方に固定され、前記試料台に載置された前記試料の裏面側から前記パターンに照明光を照射する照明ユニットと、
前記試料台の上方に配設され、前記パターンを透過した前記照明光から得られた前記パターンの像を撮像する撮像ユニットと、
前記試料台の平面度を調整する平面度調整部と、前記平面度調整部が載置され、前記平面度調整部を介して前記試料台を支持するL字形状の支持部とを有する平面度調整機構と、
前記試料台に載置されている前記試料を前記試料台から浮上させるためにエアを前記試料台に送気し、前記試料の浮上量が所望となるように前記試料台から前記エアを吸引する送気吸引部と、
前記試料台にて浮上している前記試料の端部を前記試料の裏面側から吸着する吸着機構と、
前記撮像ユニットが搭載され、前記試料台上にて前記撮像ユニットを上下方向に移動させるZステージと、
前記Zステージが搭載され、前記Zステージを前記上下方向に直交する左右方向に移動させることで、前記Zステージを介して前記試料台の上方に配設されている前記撮像ユニットを前記左右方向に移動させるXステージと、
前記吸着機構が搭載され、前記吸着機構を前記左右方向と前記上下方向とに直交する前後方向に移動することで前記吸着機構を介して前記試料を前記前後方向に移動させるYステージと、
前記撮像ユニットの位置と前記試料の位置とをレーザの干渉によって測定し、前記パターンの像の位置を測定し、測定結果を基に、前記試料に形成された前記パターン上の2点間の距離を測定する干渉測定ユニットと、
を具備することを特徴とする長寸法測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−237345(P2011−237345A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110447(P2010−110447)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】