説明

防塵機構を備えた基板搬送ロボット及びそれを備えた半導体製造装置

【課題】直動式アーム内にあるリニアスライダなどの機構からの発塵を抑制するとともに、真空中に置かれる基板搬送ロボットでも使用可能な防塵機構を提供すること
【解決手段】リニアスライダによって直動する直動式アーム3を備えて基板9を所望の位置に搬送する基板搬送ロボット1において、リニアスライダ18、23を摺動可能に保持するリニアレール7、8の近傍に、リニアスライダ18、23と微小な隙間を介して敷設され、ポリ塩化ビニール又はフッ素樹脂で製作された集塵カバ44をリニアレール7、8に沿って敷設した。リニアレール6上を摺動するリニアスライダ7直近に集塵カバ10を設置し、リニアレール6上のリニアスライダ7が摺動する際に飛散するパーティクル13を集塵カバ10のラビリンス形状部で収集し、アームカバ8の開口部からパーティクル13が流出することを防止し、ウエハ搬送フォーク3上のウエハ12にパーティクル13を付着させない処置をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や液晶のフラットパネルディスプレイの半導体製造装置において使用され、ウェハやガラスなどの基板を搬送する基板搬送ロボットに関し、特に、直動式アームを備えた基板搬送ロボットにおけるアーム部からの発塵防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶の製造過程で基板を搬送するのに使用される基板搬送ロボットには、複数のアームを水平面内で回転させる事で伸縮または旋回動作を実現し、基板を搬送する水平多関節タイプのロボットが一般的によく使用されている。しかし、水平多関節のアームに必要なフットプリントが大きくなるという理由から、直動式アームを備えた基板搬送ロボットも開発され、使用されている。
直動式アームは複数のアームが垂直方向または水平方向に多段に重なった構成になっていて、複数のアームが互いに直線状にスライドしながら伸長または伸縮を繰り返すアームである。従って、直動式アームには、互いのアームを直線状に精密に案内するため、リニアスライダと呼ばれるガイドが各アームに敷設されている。
ところで、半導体や液晶の製造過程では、歩留まり向上のため、基板に粉塵(パーティクル)を載積させることを抑制する努力がなされているが、上記の直動式アームを備えた基板搬送ロボットも例外なく防塵のための構成が必要となっている。このため、直動式アームを備えた従来の基板搬送ロボットは、直動式アームの伸縮動作時にリニアスライダから発生するパーティクルをアーム外へ流出させないために防塵のためのカバーを設けた構造となっている。こういった防塵のためのカバーに関する技術は、例えば特許文献1などがある。
また、防振カバーの構造だけではなく、例えば特許文献2のようにファンとフィルタを使って、さらに発塵を抑える技術も開示されている。
【特許文献1】特開平10−067429号公報
【特許文献2】特開2003−072944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1のような防塵カバーの構造だけでは、パーティクルがアーム外へ流出するのを防止しきれない。また、半導体の製造過程で使用される真空チャンバと呼ばれる減圧環境(真空)下に基板搬送ロボットが置かれた場合、特許文献2のようなファンとフィルタを使った清浄化手段は使用できない。また、特許文献2のような防塵構成を基板搬送ロボットに搭載すると、アーム構成が複雑となる。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、直動式アーム内にあるリニアスライダなどの機構からの発塵を抑制するとともに、真空中に置かれる基板搬送ロボットでも使用可能な防塵機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1に記載の発明は、リニアスライダによって直動する直動式アームを備えて基板を所望の位置に搬送する基板搬送ロボットにおいて、前記リニアスライダを摺動可能に保持するリニアレールの近傍に、前記リニアスライダと微小な隙間を介して敷設され、ポリ塩化ビニール又はフッ素樹脂で製作された集塵カバが前記リニアレールに沿って敷設された基板搬送ロボットとした。
請求項2に記載の発明は、前記集塵カバの少なくとも前記リニアスライダ及び前記リニアレールに対向する面に、複数の溝が設けられた請求項1記載の基板搬送ロボットとした。
請求項3に記載の発明は、前記集塵カバの少なくとも前記リニアスライダ及び前記リニアレールに対向する面が、階段状に形成された請求項1記載の基板搬送ロボットとした。
請求項4に記載の発明は、前記集塵カバの一端又は両端の形状が、前記リニアスライダと接触して擦れるように、リニアスライダに対して凸部を有するように形成された請求項1記載の基板搬送ロボットとした。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4いずれかに記載の基板搬送ロボットが、真空チャンバに設置された半導体製造装置とした。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、リニアレールとリニアスライダの間にある摺動用の玉の転がりにより発生するパーティクルを、帯電しやすいポリ塩化ビニール又はフッ素樹脂で製作された集塵カバによってリニアスライダ直近で収集することができ、アーム外へのパーティクル流出を防ぎ、フォーク上で搬送される基板にパーティクルの付着を防ぐことができる。
請求項2に記載の発明によると、リニアスライダ及びリニアレールに対向する面に複数の溝が形成されているので、この面の表面積が大きくなり、パーティクルを多く集塵できる。
請求項3に記載の発明によると、リニアスライダの下面とリニアレールの敷設面との間に集塵カバを挿入でき、集塵カバを発塵源により近接させることができるので、集塵効果が高くなる。
請求項4に記載の発明によると、直動式アームが普段動作しない範囲でリニアスライダと集塵カバが接触するので、通常は余計な発塵が起こらず、所望のときにリニアスライダと集塵カバを接触させて、集塵カバの帯電を促すことができ、これにより集塵効果を高めることができる。
請求項5に記載の発明によると、真空チャンバ内など電力が得られにくい場所でも発塵を抑える事ができる基板搬送ロボットを使用するため、製造装置の歩留まり向上・構成の簡単化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
まず、本発明の防塵機構を備えた直動式アームの基板搬送ロボットの概要構成を図1を使って説明する。図1は、本発明の防塵機構を備えた直動式アームの基板搬送ロボットの外観斜視図を示している。基板搬送ロボット1は、回転型モータで構成された駆動部を収容する胴体2の上部に、直動式アーム3を備えている。直動式アーム3は、胴体2の上部で回転可能な第1アーム4と、第1アーム4の上部に直動可能に搭載され、第1アーム4の回転中心から放射状の方向に直動可能な第2アーム5と、第2アーム5の直動方向と同方向に、第2アーム5からさらに直動可能なフォーク6とから構成されている。第1アーム4上には、第2アーム5を直線状に案内するリニアレール7が敷設され、第2アーム5上にも、フォーク3を直線状に案内するリニアレール8が敷設されている。
以上の構成と胴体2内部の図示しない駆動部とによって、直動式アーム3は第1アーム4から上の部分が回転することができ、また、第1アーム4に対して第2アーム5が伸縮動作でき、また、第2アーム5に対してフォーク6が伸縮動作できるようになっている。そして、フォーク6に搭載した基板9を目的の位置に搬送する。
【0008】
次に、図1における直動式アーム3の構成について図2を使って説明する。図2は図1の直動式アーム3を図1においてXXから見た断面図であり、真空チャンバ11にロボットを据え付けた状態を示している。
胴体2に収容されている図示しない駆動部の回転軸12aが第1アーム4下面に接続されていて、第1アーム4から上部すべての機構を旋回中心13を中心として回転可能である。第1アーム4内にはプーリ14、ベルト15などの第2アーム駆動機構16が収容されている。プーリ24には図示しない駆動部の回転軸12bが接続されていて、これによってプーリ24が回転し、この回転力によって後述するフォーク駆動機構24と第2アーム駆動機構16とを動作させて、第2アーム5とフォーク6とを動作させる。ここではこれらの詳細な構成については説明しない。そして、これらを覆うように第1アーム4の上面に第1アームカバ17が固定されている。さらに第1アームカバ17の上面に一対のリニアレール7a、7bが敷設されている。リニアレール7a、7bにはリニアスライダ18a、18bがレールに沿って直線状に摺動可能に保持されている。リニアスライダ18a、18bの上には第2アームベース19が固定されている。第2アームベース19は板状体のもので、これに第2アーム5が固定されている。従って、第2アームベース19及び第2アーム5は、リニアスライダ18によってリニアレール7上を移動する。また、第1アームカバ17の周囲には、第2アームベース19及び第2アーム5が移動するとき、これらと干渉しない形状であって、これらの移動の全域にわたってベースカバ20によって覆われている。
【0009】
第2アーム5の内部には、プーリ21、ベルト22、リニアレール8、及びリニアスライダ23からなるフォーク駆動機構24が設けられている。リニアレール8にはリニアスライダ23がレールに沿って直線状に摺動可能に保持されている。リニアスライダ23にはフォークプレート31が固定されている。また、フォークプレート31の一部はベルト22に連結されている。また、第2アーム5の上面は、上記フォーク駆動機構24を収容するように第2アームカバ25が取り付けられていて、この第2アームカバ25と第2アーム5の側壁上面に設けられた段差とによりスリット穴26を形成している。フォークプレート31はこのスリット穴36から突出し、フォーク6を支持している。
よって、フォーク6は、フォークプレート31とともにリニアスライダ23によって直線状に案内され、第2アーム5に対してスライド可能である。
【0010】
次に、本発明の防塵機構について説明する。本発明では、図2のように、リニアレール7、リニアレール8の各リニアレールに沿って、防塵機構40が備えられている。各防塵機構40はほぼ同一構成なので、代表してリニアレール7aに沿って設けた防塵機構40について、図3を用いて説明する。図3は図2におけるリニアレール7aの部分の拡大図である。
図3のように、リニアレール7aはリニアスライダ18a保持しており、リニアスライダ18aは玉41を介してリニアレール7aに接触している。上述の直動式アーム3が伸縮動作をする際、リニアスライダ18aは玉41の回転を伴って摺動する。玉41が転がることでリニアレール7aとリニアスライダ18aの間からは、潤滑剤として使用されているグリス42の成分のパーティクル、及びリニアレール7aや玉41の金属磨耗によるパーティクルが飛散する。飛散したパーティクルは、図2の二点鎖線の矢印で示すように、直動式アーム20の構造上、封止してしまうことができない隙間43やスリット穴26から流出し、フォーク6上の基板9上に付着してしまう。特に、図2のようにロボットを真空チャンバ11内に設置したときは、パーティクルは、半導体製造工場でよく使用されるダウンフロー(清浄な気体を天から地に向かって流すこと)によって得られる粉塵飛散抑制効果が期待できない。
そこで本発明では、リニアレール6aの直近に集塵カバ44が設置されている。集塵カバ44は、ほぼリニアレール7aの長さにわたって設けられている棒状のもので、リニアスライダ18aが移動したときに接触しない程度の一定の微小な隙間をもってリニアレール7aの側面に部品46によって敷設されている。集塵カバ44は部品46に対して取り外し可能であって、後述するようにパーティクルを収集した後、簡単に交換可能になっている。勿論、部品46を必ずしも介す必要はない。また、リニアレール7a及びリニアスライダ18aに対向する面に、複数の溝45が形成されている。この溝45はレール及びスライダに対向する面の表面積を増大させるためのものである。
集塵カバ45は、ポリ塩化ビニール又はフッ素樹脂で製作する。特に、これらの材質は負(マイナス)に帯電しやすく、本発明ではこの性質を利用する。すなわち、集塵カバ45をこれらの材質で製作し、レール及びスライダに対向する面の表面積を溝45で増大させることによって、レール及びスライダから発生したパーティクルを集塵カバ44に吸着させ、溝45にパーティクルを蓄積させるようになっていて、隙間43やスリット穴26を介してアーム外にパーティクルが流出することを防ぐ。また、ポリ塩化ビニール又はフッ素樹脂は機械加工に適しており、複数の溝45の加工も容易である。
また、半導体製造工程における真空チャンバ11内は、図示しないポンプによって、その内部気体が吸引され、減圧された状態である。真空チャンバ11は、一旦減圧状態にされた後は、仮に大気圧程度まで圧力が戻されるとしても純度の高いドライ窒素で圧力が戻されるため、乾燥した状態が保たれる。乾燥した環境では特に集塵カバ44はマイナスに帯電しやすくなるため、集塵効果の向上が期待できる。
なお、基板搬送ロボットの各部の材質に多用されるアルミニウムなどは帯電しにくいため、集塵カバには不適である。
【0011】
なお、図4のように、リニアスライダの下面とリニアレールの設置面との隙間に入るよう、集塵カバ44を設置してもよい。この例の場合、リニアレール7に対して階段状の形をなすよう形成されていて、玉41に近接する面の表面積を増大させている。また、集塵カバ44は、リニアレールの両側面にそれぞれ配置するのが望ましい。
また、集塵カバ44の帯電を促進させるため、図5のように、集塵カバ44の一端又は両端の形状を、故意にリニアスライダ18の側面表面と擦れるように、リニアスライダに対して傾斜を経て凸部47を有する形状としてもよい。図5は、リニアスライダ、リニアレール、及び集塵カバ44を上面から見た部分図である。この凸部47は直動式アーム3が通常直動動作しない領域に設け、例えばメンテナンス時、或いは半導体製造の処理(プロセス)が行われている間、或いは所定周期ごとに、凸部47がリニアスライダと接触するように動作させ、集塵カバ44の帯電を促すものである。
【0012】
以上のように第1アーム4に対して第2アーム5が直線移動するとき、或いは第2アーム5に対してフォーク6が直線移動する時、リニアレール7或いは8上のリニアスライダ18或いは23直近に静電気によってパーティクルを集塵する集塵カバ44を設置したので、パーティクルは集塵カバ44の溝45に蓄積し、直動アーム3の構造上必ずできてしまう隙間からアームの外部へ流出するパーティクルの量を抑制することができる。これにより、基板9にパーティクルを付着させにくくなり、半導体製造における歩留まりの向上に寄与できる。また、真空チャンバ内にロボットを置いたときには、特にその乾燥した環境によって集塵カバ44はより帯電しやすくなり、集塵効果の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の防塵機構が適用された直動式アームの基板搬送ロボットの斜視図
【図2】図1における直動式アームのXX断面図
【図3】防塵機構を示す図2の部分拡大図
【図4】防塵機構の他の構成例を示す部分側面図
【図5】防塵機構の他の構成例を示す部分上面図
【符号の説明】
【0014】
1 基板搬送ロボット
2 胴体
3 直動式アーム
4 第1アーム
5 第2アーム
6 フォーク
7 リニアレール
8 リニアレール
9 基板
11 真空チャンバ
12 回転軸
13 旋回中心
14 プーリ
15 ベルト
16 第2アーム駆動機構
17 第1アームカバ
18 リニアスライダ
19 第2アームベース
20 ベースカバ
21 プーリ
22 ベルト
23 リニアスライダ
24 フォーク駆動機構
25 第2アームカバ
26 スリット穴
31 フォークプレート
40 防振機構
41 玉
42 グリス
43 隙間
44 集塵カバ
45 溝
46 部品
47 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアスライダによって直動する直動式アームを備えて基板を所望の位置に搬送する基板搬送ロボットにおいて、
前記リニアスライダを摺動可能に保持するリニアレールの近傍に、前記リニアスライダと微小な隙間を介して敷設され、ポリ塩化ビニール又はフッ素樹脂で製作された集塵カバが前記リニアレールに沿って敷設されたことを特徴とする基板搬送ロボット。
【請求項2】
前記集塵カバの少なくとも前記リニアスライダ及び前記リニアレールに対向する面に、複数の溝が設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送ロボット。
【請求項3】
前記集塵カバの少なくとも前記リニアスライダ及び前記リニアレールに対向する面が、階段状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送ロボット。
【請求項4】
前記集塵カバの一端又は両端の形状が、前記リニアスライダと接触して擦れるように、リニアスライダに対して凸部を有するように形成されたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送ロボット。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の基板搬送ロボットが、真空チャンバに設置されたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−23020(P2009−23020A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186536(P2007−186536)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】