防振ブッシュ付きスタビライザバー及びその製造方法
【課題】乗り心地と走行安定性の両立を図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とを有利に確保し得る防振ブッシュ付きスタビライザバーを提供する。
【解決手段】内側ゴム部32,32同士の間にスタビライザバー10を挟み、且つ各内側ゴム部32,32の内周面に形成された潤滑層40,40をスタビライザバー10に接触させて、一対の分割構造体20,20を相互に組み付けた状態で、スタビライザバー10への捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、各内側ゴム部32,32とスタビライザバー10との間に周方向の滑りを生じさせる大きさにおいて、各内側ゴム部32,32に予圧縮を加えつつ、各仕切部材24,24を互いに連結することにより、一対の分割構造体20,20をスタビライザバー10に固定して、構成した。
【解決手段】内側ゴム部32,32同士の間にスタビライザバー10を挟み、且つ各内側ゴム部32,32の内周面に形成された潤滑層40,40をスタビライザバー10に接触させて、一対の分割構造体20,20を相互に組み付けた状態で、スタビライザバー10への捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、各内側ゴム部32,32とスタビライザバー10との間に周方向の滑りを生じさせる大きさにおいて、各内側ゴム部32,32に予圧縮を加えつつ、各仕切部材24,24を互いに連結することにより、一対の分割構造体20,20をスタビライザバー10に固定して、構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュ付きスタビライザバー及びその製造方法に係り、特に、スタビライザバーを自動車等の車両のボデーやフレーム等に防振支持させるための防振ブッシュがスタビライザバーに取り付けられてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーの新規な構造と、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーの有利な製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、自動車等の車両には、旋回時等における車体の傾きを抑えるためのスタビライザバーが装着されている。このスタビライザバーは、一般に、スタビライザバーが挿通される内孔を備えた筒状ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットが固着されてなる防振ブッシュを介して、車体に取り付けられる。
【0003】
ところで、そのようなスタビライザバーにおいては、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体との間で生ずるスティックスリップにより、きしみ音や擦れ音等の異音が発生したり、防振特性が低下したりすることが、問題となっている。このスティックスリップは、自動車の走行時等において、スタビライザバーに入力される捩り力(回転トルク)により、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとが、大きな摩擦抵抗の下で相対回転することに起因して惹起されるものである。
【0004】
そこで、従来では、(ア)防振ブッシュの筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの相対回転を阻止することによって、スティックスリップの発生防止対策が講じられた防振ブッシュ付きスタビライザバーと、(イ)防振ブッシュの筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間の摩擦抵抗を低減させることによって、スティックスリップの発生防止対策が講じられた防振ブッシュ付きスタビライザバーとが、それぞれ提案されている。
【0005】
(ア)の防振ブッシュ付きスタビライザバーとしては、例えば、特開2006−123818号公報(特許文献1)等に開示される如き構造を有するものが、知られている。この防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、分割構造体における分割ゴム弾性体の径方向中間部に、分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材(中間板)が埋設されて、分割ゴム弾性体が、仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されている。そして、かかる分割構造体の一対が、スタビライザバーを各分割ゴム弾性体の内側ゴム部同士の間において内側ゴム部内周面に接触するように挟んで、組み付けられた状態において、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されている。
【0006】
このような防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されることにより、各分割構造体が、スタビライザバーに対して相対回転不能に固定されて、スティックスリップの発生が防止され得るようになっている。また、車両の旋回時等における走行安定性も、より良好に確保され得る。しかしながら、かかる接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーは、以下の如き欠点を有していた。
【0007】
すなわち、従来の接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、通常、内側ゴム部とスタビライザバーとの接着に際して、熱硬化性の接着剤が用いられて、それら内側ゴム部とスタビライザバーとの接着されるべき部分を、加熱炉内等で、厳密な管理の下、長時間に亘って加熱する操作が実施される。そのため、生産性やコスト性が良いものとは言えず、また、内側ゴム部とスタビライザバーとの間の接着強度に基づく分割構造体のスタビライザバーへの固定強度も、例えば、内側ゴム部とスタビライザバーとを加硫接着して、分割構造体をスタビライザバーに固定する場合等に比して、ある程度劣るものとなってしまうことが避けられなかった。
【0008】
しかも、かかる防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、分割ゴム弾性体からなる筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間での相対回転が阻止されるようになっているところから、スタビライザバーに大きな捩り力が繰り返し入力されたときに、分割ゴム弾性体が過大な変形量で繰り返し弾性変形するようになり、それによって、分割ゴム弾性体、ひいては防振ブッシュの耐久性に問題が発生する可能性があった。
【0009】
また、(ア)の防振ブッシュ付きスタビライザバーには、例えば、特開2008−168756号公報(特許文献2)等に明らかにされるような構造を有するものも知られている。この防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、各分割構造体の分割ゴム弾性体の径方向中間部に仕切部材が埋設されて、分割ゴム弾性体が、外側ゴム部と内側ゴム部とにて構成されている。また、仕切部材には、分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられている。そして、一対の分割構造体が、分割ゴム弾性体同士の間にスタビライザバーを挟んで組み付けられると共に、各分割ゴム弾性体の内側ゴム部が、スタビライザバーと仕切部材との間で径方向に圧縮されて、内側ゴム部に予圧縮が加えられた状態で、一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材が、連結部同士において、かしめられる等して相互に連結されることにより、一対の分割構造体が、スタビライザバーに対して非接着で固定されている。
【0010】
このような従来の非接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーは、接着タイプのものとは異なって、熱硬化性の接着剤等を何等用いることなく、一対の分割構造体が、スタビライザバーに対して強固に固定されている。それによって、生産性の向上と低コスト化とが有利に図られ得る。
【0011】
ところが、かかる非接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっても、各分割構造体における分割ゴム弾性体の内側ゴム部に大きな予圧縮が加えられていることで、分割ゴム弾性体からなる筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間での相対回転が阻止されるようになっている。そのため、接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーと同様に、スタビライザバーに大きな捩り力が繰り返し入力されることによって、分割ゴム弾性体、ひいては防振ブッシュの耐久性に問題が発生する可能性があったのである。
【0012】
一方、(イ)の防振ブッシュ付きスタビライザバーとしては、例えば、特開2001−221284号公報(特許文献3)等に開示される如き構造を有するものが、知られている。この防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、防振ブッシュにおける筒状ゴム弾性体の内孔の内周面に、テフロン(登録商標)布等の表面潤滑性を有するライナー布が加硫接着されている。そして、この筒状ゴム弾性体の内孔内にスタビライザバーが挿通されている。
【0013】
このような防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、筒状ゴム弾性体の内孔内に挿通されたスタビライザバーに捩り力が入力されたときに、かかるスタビライザバーが、筒状ゴム弾性体の内周面に接着された表面潤滑性を有するライナー布により、筒状ゴム弾性体に対して良好な摺動性をもってスムーズに相対回転し、以て、スティックスリップの発生が防止され得るようになっている。また、例えば、車両が突起を乗り越すとき等、両輪が同相で大きく動く場合等のように、スタビライザバーに大きな捩り力が入力された際においても、スタビライザバーと筒状ゴム弾性体とがスムーズに相対回転することで、良好な乗り心地が、有利に確保され得る。
【0014】
しかしながら、この防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、前記の如きスタビライザバーと筒状ゴム弾性体とが相対回転不能に固定されてなるものとは異なって、車両の走行時においてスタビライザバーに入力される捩り力を、筒状ゴム弾性体の弾性変形によって抑制することが出来ない。そのため、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーを装着した車両では、スタビライザバーと筒状ゴム弾性体とが相対回転不能に固定された防振ブッシュ付きスタビライザバーを装着する車両に比して、走行安定性が、多少、低下してしまう懸念があったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−123818号公報
【特許文献2】特開2008−168756号公報
【特許文献3】特開2001−221284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、高い生産性と低コスト性とが有利に発揮され得るだけでなく、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を有利に図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、より長期に亘って安定的に確保され得る防振ブッシュ付きスタビライザバーと、そのような特徴的な防振ブッシュ付きスタビライザバーを有利に製造し得る方法とを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そして、本発明者等が、上記の課題を解決するために、種々検討を行う過程で、先ず、以下の点について着目した。即ち、防振ブッシュ付きスタビライザバーが装着された自動車等の車両が小さな角度で旋回する場合、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体に対して比較的に小さな角度の捩り力が入力されるが、そのときには、乗り心地よりも走行安定性が優先される。一方、かかる車両が突起を乗り越すときのように、両輪が同相で大きく動く場合には、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体に対して大きな捩り力が入力され、その際には、走行安定性よりも乗り心地が優先される。従って、防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいて、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体に比較的に小さな捩り力が入力されたときには、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間の相対回転を阻止する一方、筒状ゴム弾性体に大きな捩り力が入力されたときには、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとを摺動性良くスムーズに相対回転させることによって、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を図ることが出来、しかも、スティックスリップの発生が有利に防止され得ることを見出したのである。
【0018】
すなわち、本発明は、そのような知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーであって、前記分割構造体における前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなり、かかる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟み、且つそれら各分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で組み付けられる一方、各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部が、該スタビライザバーと前記仕切部材との間で径方向に圧縮されて、該内側ゴム部に予圧縮が加えられると共に、該予圧縮の大きさが、該スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとされた状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材が、前記連結部同士において相互に連結されることにより、該一対の分割構造体が、該スタビライザバーに固定されていることを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバーにある。
【0019】
本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの有利な態様の一つによれば、前記内側ゴム部が、前記スタビライザバーと前記仕切部材との間で、30〜60%の範囲内の圧縮率にて圧縮されることとなる。なお、ここで言う内側ゴム部の圧縮率とは、内側ゴム部の圧縮前の厚さに対する内側ゴム部の圧縮による厚さの減少量の比率を言う(以下、同一の意味において使用する)。
【0020】
また、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの望ましい態様の一つによれば、前記内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に、ゴム凸部が一体形成されてなり、前記一対の分割構造体が、前記分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟んで組み付けられて、それら各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部に予圧縮が加えられた状態下において、一方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部に設けられた前記ゴム凸部が、他方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部の周方向の端部に接触せしめられるように構成される。
【0021】
さらに、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの好適な態様の一つによれば、前記潤滑層が、表面潤滑性を有するライナー布にて構成されて、該ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に固着される。なお、この場合には、ライナー布の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方側の端部が、内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成されたゴム凸部に固着されていることが好ましく、また、ライナー布が、内側ゴム部の内周面に対して、加硫接着により固着されていることが望ましい。
【0022】
更にまた、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの望ましい態様の一つによれば、前記外側ゴム部の厚さに対する前記内側ゴム部の予圧縮前の厚さの比率が0.1〜0.5の範囲内の値とされる。
【0023】
また、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの好ましい態様の一つによれば、前記仕切部材が、前記分割ブラケットから軸方向外方に突出し、且つ前記内側ゴム部が、該仕切部材の内周面の全面を覆う状態で、該仕切部材の内側に配置されることとなる。
【0024】
さらに、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの有利な態様の一つによれば、前記分割ブラケットが、前記分割ゴム弾性体の外周面に対して、加硫接着により固着されると共に、前記仕切部材が、該分割ゴム弾性体の前記外側ゴム部の内周面と前記内側ゴム部の外周面とに対して加硫接着されて、前記分割構造体が、それら分割ゴム弾性体と分割ブラケットと仕切部材とからなる一体加硫成形品にて構成される。
【0025】
そして、本発明にあっては、軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法であって、(a)前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなるものを、前記分割構造体として、一対準備する工程と、(b)かかる一対の分割構造体の前記分割ゴム弾性体同士の間に、前記スタビライザバーを挟み、且つ該分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で、該一対の分割構造体を相互に組み付ける工程と、(c)相互に組み付けられた前記一対の分割構造体のそれぞれにおける前記仕切部材を径方向内方に押圧して、それら各分割構造体の前記内側ゴム部を前記スタビライザバーと該仕切部材との間で径方向に圧縮することにより、該内側ゴム部に予圧縮を加えると共に、該予圧縮の大きさを、該スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとした状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材を、前記連結部同士において相互に連結することにより、該一対の分割構造体を該スタビライザバーに固定する工程とを含むことを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0026】
要するに、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、スタビライザバーに捩り力が入力されたときに、その値が予め設定された値に達するまでは、内側ゴム部とスタビライザバーとの間の相対回転が阻止される。一方、スタビライザバーに対して、予め設定された値を超える捩り力が入力されると、内側ゴム部とスタビライザバーとが、潤滑層が有する潤滑性に基づいて、摩擦抵抗力が十分に低減された、良好な摺動性をもって、スムーズに相対回転し得るようになっている。
【0027】
それ故、かかる防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザバーに入力される捩り力の大きさに拘わらず、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、有利に発揮され得る。そして、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーが装着された車両等では、捩り力が小さな角度で入力したときに、内側ゴム部とスタビライザバーとの間の相対回転が阻止されることにより、乗り心地よりも優先されるべき走行安定性が、十分に確保され得る。また、捩り力が大きな角度で入力したときには、内側ゴム部とスタビライザバーとがスムーズに相対回転することにより、走行安定性よりも優先されるべき乗り心地が、有利に高められ得る。
【0028】
しかも、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、スタビライザバーに大きな捩り力が加えられたときに、内側ゴム部とスタビライザバーとが、十分に小さな摩擦抵抗の下で、スムーズに相対回転するようになっているところから、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されてなる従来の防振ブッシュ付きスタビライザバーとは異なって、スタビライザバーへの大きな捩り力の入力により、内側ゴム部が、スタビライザバーと仕切部材との間で、また、外側ゴム部が、仕切部材と分割ブラケットとの間で、それぞれ過剰に弾性変形するようなことが、有利に回避され得る。それ故、そのような過剰な弾性変形によって、分割ゴム弾性体がダメージを受けたり、損傷したりすることが、効果的に防止され得、以て、分割ゴム弾性体の耐久性の向上が有利に図られ得る。
【0029】
また、本発明に係る防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されておらず、仕切部材の連結部同士が互いに連結されることによって、一対の分割構造体が、スタビライザバーに対して強固に固定されている。そのため、例えば、接着剤を用いて、内側ゴム部をスタビライザバーに接着してなる従来の防振ブッシュ付きスタビライザバーに比して、生産性の向上と低コスト化とが有利に図られ得る。
【0030】
従って、かくの如き本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、高い生産性と低コスト性とが有利に発揮され得るだけでなく、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を有利に図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、より長期に亘って安定的に確保され得ることとなるのである。
【0031】
そして、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法にあっては、上記せる如き構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーを確実に且つ有利に製造することが出来、また、製造された防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいて、上記せる優れた特徴を有効に発揮させることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従う構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーの一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1に示される防振ブッシュ付きスタビライザバーの一部を拡大して示す斜視説明図である。
【図3】図2におけるIII−III断面説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面説明図である。
【図5】図1に示される防振ブッシュ付きスタビライザバーの防振ブッシュを構成する分割構造体の側面説明図であって、かかる分割構造体のスタビライザバーへの組付前の状態を示している。
【図6】図5におけるVI−VI断面説明図である。
【図7】図5における VII矢視説明図である。
【図8】図1に示された防振ブッシュ付きスタビライザバーを製造する際の工程の一例を示す説明図であって、図5に示された分割構造体の一対を、分割ゴム弾性体同士の間にスタビライザバーを挟んで組み付けた状態を示している。
【図9】図8におけるIX矢視説明図である。
【図10】図8に示される工程に引き続いて行われる工程を示す説明図であって、一対の分割構造体のそれぞれにおける仕切部材を径方向内方に押圧して、分割ゴム弾性体の内側ゴム部に予圧縮を加えた状態を示している。
【図11】図10におけるXI−XI断面説明図である。
【図12】図1に示される構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーを用いて実施された捩り方向特性試験でのスタビライザバーの回転角度とスタビライザバーに対する回転トルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0034】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーの一例として、自動車のスタビライザブッシュがスタビライザバーに取り付けられてなるスタビライザブッシュ付スタビライザバーが、その正面形態において、概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーは、所定長さを有する金属の丸棒からなるスタビライザバー10の軸方向両端側部位に、防振ブッシュとしてのスタビライザブッシュ12が、それぞれ一つずつ位置固定に取り付けられて、構成されている。
【0035】
このスタビライザバー10に取り付けられるスタビライザブッシュ12は、図2乃至図4に示されるように、全体として、略厚肉円筒形状を呈し、スタビライザバー10が挿通される内孔14が軸方向に延びるように設けられた、筒状ゴム弾性体としての本体ゴム弾性体16と、かかる本体ゴム弾性体16の外周面に固着されて、車体に取り付けられるブラケット18とを備えた、従来と同様な基本構造を有している。また、かかるスタビライザブッシュ12にあっては、それが、径方向において半分ずつに二分されるように、軸方向に沿って二分割された一対の分割構造体20,20にて構成されている。そして、それら一対の分割構造体20,20が、スタビライザバー10を間に挟んで、互いに組み付けられた状態において、スタビライザバー10に固定されることにより、厚肉円筒状の全体形状をもって、スタビライザバー10に取り付けられているのである。
【0036】
より詳細には、スタビライザブッシュ12を構成する一対の分割構造体20,20は、分割ゴム弾性体としての分割ゴム部22と、分割ブラケットとしての分割金具23とを備えた、互いに同一の構造及び同一の形状を有している。
【0037】
図3、及び図5乃至図7に示されるように、分割構造体20の分割ゴム部22は、本体ゴム弾性体16が、径方向において略半分ずつに二分されるように、周上の二箇所で分割されてなるもので、半円に満たない横断面形状を有する略半割円筒形状を呈している。そして、そのような分割ゴム部22の内部には、仕切部材24が埋設されている。この仕切部材24は、分割ゴム部22に比して、十分に薄い肉厚と、所定寸法大きな内径と、所定寸法小さな外径と、略半円状の横断面とを有する半割円筒金具にて、構成されている。
【0038】
また、仕切部材24の周方向の両側端部には、径方向外方に所定高さで突出し且つ軸方向に連続して延びる、狭幅平板状の外フランジ部26a,26bが、それぞれ一体形成されている。そして、それらの外フランジ部26a,26bの延出方向(仕切部材24の軸方向)両側端部が、延出方向中間部よりも突出高さが高い(幅の広い)連結部28a,28a,28b,28bとされている。また、二つの外フランジ部26a,26bのうちの一方の外フランジ部26aの軸方向両側に設けられた連結部28a,28aには、外フランジ部26aから略直角に立ち上がるかしめ部30が、一体形成されている。
【0039】
そのような仕切部材24が、分割ゴム部22の径方向(軸直角方向)の中央部よりも内側に所定寸法偏倚した位置において、各外フランジ部26a,26bを、それぞれ、分割ゴム部22の周方向両側端部から径方向外方に突出させつつ、分割ゴム部22と同軸上に配置されている。これにより、分割ゴム部22が、仕切部材24にて、それよりも内側に位置する薄肉のゴム部分と、それよりも外側に位置する厚肉のゴム部分とに仕切られている。
【0040】
かくして、分割ゴム部22の仕切部材24を間に挟んだ内側のゴム部分が、薄肉で、半円に満たない横断面形状を有する略半割円筒状の内側ゴム部32とされている一方、その外側のゴム部分が、厚肉で、半円に満たない横断面形状を有する略半割円筒状の外側ゴム部34とされている。また、内側ゴム部32は、仕切部材24と略同一の軸方向長さを有しており、外側ゴム部34は、仕切部材24よりも短い軸方向長さを有している。そうして、内側ゴム部32が、仕切部材24の内周面に対して、その全面を被覆するように固着されている一方、外側ゴム部34が、仕切部材24の外周面の軸方向中央部に固着されているのである。
【0041】
図6から明らかなように、仕切部材24の軸方向両側端面と軸方向両端側の外周面部分とには、内側ゴム部32と外側ゴム部34とに一体形成された薄肉の内側被覆ゴム部36が、それらの面を被覆するように固着されている。これによって、仕切部材24のうちの外フランジ部26a,26bを除く表面の大部分が、内側ゴム部32と外側ゴム部34と内側被覆ゴム部36とにて覆われており、以て、仕切部材24の略全体の防錆が図られている。なお、ここでは、内側ゴム部32と外側ゴム部34と内側被覆ゴム部36とに対する仕切部材24の固着が、加硫接着により実現されている。
【0042】
図5及び図7に示されるように、内側ゴム部32の周方向両側端面には、ゴム凸部としてのシールリップ部38が、それぞれ一体形成されている。このシールリップ部38は、内側ゴム部32の周方向両側端面の内周側端部から所定高さで突出し且つ軸方向に連続的に延びる狭幅(薄肉)の凸条形態を有している。また、かかるシールリップ部38にあっては、その突出先端面が、仕切部材24の内周面に連続する外フランジ部26a,26bの板面の位置を超えて位置するような突出高さを有している。
【0043】
一方、内側ゴム部32の内周面には、潤滑層としての、表面潤滑性を有するライナー布40が、加硫接着により固着されている。このライナー布40は、内側ゴム部32に対応した略半割円筒形状を呈し、内側ゴム部32の内周面の全面を被覆している。また、このライナー布40は、その周方向の両端側部位において、内側ゴム部32の周方向両側端部にそれぞれ設けられたシールリップ部38,38の内周面の全面に、それぞれ固着されている。
【0044】
これにより、内側ゴム部32の内周面の全面に対して十分な摺動性が、付与されている。そうして、後述するように、一対の分割構造体20,20が、各分割ゴム部22,22同士の間でスタビライザバー10を挟みつつ、スタビライザバー10に組み付けられた状態下において、スタビライザバー10が、各分割ゴム部22,22に対してスムーズに相対回転し得るようになっている。また、ライナー布40の周方向両端側部位が、薄肉のシールリップ部38に固着されていることによって、容易に折れ曲がらないように補強されている。
【0045】
なお、ライナー布40は、表面潤滑性を有するものであれば、その種類が特に限定されるものではない。このライナー布40として使用可能なものには、例えば、テフロン布等のフッ素樹脂繊維を主要構成部材とするフッ素樹脂系布材やポリアミド繊維からなる編成物等が挙げられる。
【0046】
一方、分割金具23は、図3、及び図5乃至図7に示されるように、ブラケット18が二分割されてなるものである。そして、略長手矩形の厚肉金属板からなり、長手方向の中間部に、横断面形状が半円に満たない円弧形状とされた分割円筒状の固着部42が設けられ、また、長手方向の両側端部に対して、固着部42の周方向両端部から径方向外方に所定長さをもってそれぞれ水平に延出する、矩形平板状の取付フランジ部44,44が一体形成されている。この分割金具23においては、固着部42の軸方向長さが、分割ゴム部22の外側ゴム部34の軸方向長さよりは長くされているものの、内側ゴム部32や仕切部材24の軸方向長さよりも所定寸法短くされている。また、各取付フランジ部44の略中央部には、ボルト挿通孔46が、それぞれ、一個ずつ穿設されている。
【0047】
そして、このような分割金具23が、固着部42の内周面の軸方向中央部において、分割ゴム部22における外側ゴム部34の外周面に固着されている。また、分割金具23の固着部42の内周面の軸方向両端側部位と外周面の全面と軸方向両側端面とには、外側ゴム部34に一体形成された、防錆用の外側被覆ゴム部48が、それらの面を被覆するように固着されている。そして、ここでは、外側ゴム部34と外側被覆ゴム部48とに対する分割金具23の固着が、加硫接着により実現されている。
【0048】
かくして、分割構造体20が、分割ゴム部22に対して分割金具23と仕切部材24とが加硫接着されてなる一体加硫成形品として、構成されている。また、そのような分割構造体20においては、分割ゴム部22の外周部(外側ゴム部34の外周面)における周方向の両端側から、分割金具23の取付フランジ部44,44が、径方向外方にそれぞれ突出し、更に、分割ゴム部22の内周部(外側ゴム部32の内周面と内側ゴム部32の外周面との間)における周方向の両端側からは、仕切部材24の外フランジ部26a,26bが、径方向外方にそれぞれ突出している。
【0049】
そして、図2乃至図4に示されるように、上記の如き構造を有する一対の分割構造体20,20が、それぞれの分割ゴム部22,22同士の間において、スタビライザバー10を、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32の内側に固着されたライナー布40,40の内周面にそれぞれ接触させるように挟んで組み付けられている。この組付状態下では、各仕切部材24,24の外フランジ部26a,26bの連結部28a,28b同士が互いに対応し、且つ各分割金具23,23の取付フランジ部44,44同士が相互に対応するように、それぞれ配置されている。
【0050】
また、かかる組付下において、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32が、各仕切部材24,24とスタビライザバー10との間で、肉厚が所定の厚さまで減少するように(後述する如く、図6にt2 にて示される内側ゴム部32の厚さが、図4にt3 にて示される厚さにまで減少するように)、径方向内方に圧縮されている。これにより、各仕切部材24の外フランジ部26a,26bの互いに対応する連結部28a,28b同士が互いに重ね合わされている。また、各内側ゴム部32,32の周方向両端面にそれぞれ設けられたシールリップ部38,38が、先端部同士において突き合わされ、弾性変形した状態で、互いに当接している。更に、圧縮された内側ゴム部32の復元力に基づいて、ライナー布40,40が、その内周面において、スタビライザバー10の外周面に対して強く押し付けられた状態とされている。
【0051】
そして、そのような状態下で、互いに重ね合わされた連結部28aと連結部28bとが、かしめ部30にて、かしめ固定されている。これにより、二つの分割構造体20,20のそれぞれの仕切部材24,24が、連結部28a,28b同士において、接着剤を用いることなく、相互に且つ強固に連結されている。
【0052】
かくして、二つの分割構造体20,20が、スタビライザバー10を介して一体化され、以て、スタビライザブッシュ12が、それら二つの分割構造体20,20との一体組付品として構成されている。また、それと共に、本体ゴム弾性体16(二つの分割ゴム部22,22)の内側ゴム部32,32に予圧縮が加えられ、且つかかる内側ゴム部32,32とスタビライザバー10との間に接着剤が何等介在しない状態で、二つの分割構造体20,20からなるスタビライザブッシュ12が、スタビライザバー10に対して、接着剤を用いることなく固定されている。更に、そのような固定構造にて、スタビライザブッシュ12の二つが、スタビライザバー10の軸方向両側端部にそれぞれ固定されており、それによって、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーが、図1に示される如き構造とされている。
【0053】
そして、このような本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、図示されてはいないものの、従来と同様に、スタビライザバー10が、軸方向両端部において、例えば、自動車のサスペンションアームに固定される一方、各スタビライザブッシュ12が、ブラケット18に設けられるボルト挿通孔46に挿通された固定ボルトにて、自動車のフレーム等に固定され、以て、自動車に対して防振的に支持されるようになっているのである。
【0054】
ところで、かかる本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、特に、本体ゴム弾性体16の内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮の大きさが、従来品には見られない程、十分に大きくされている。そのため、スタビライザブッシュ付スタビライザバーの自動車への装着状態下で、スタビライザバー10に捩り力が入力されたときに、その捩り力が予め設定された値を超えるまでは、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32の捩り方向への弾性変形が可及的に抑制されようになっている。また、それと共に、予圧縮された内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、ライナー布40,40が、スタビライザバー10の外周面に対して、比較的に大きな力で圧接され、以て、ライナー布40,40が表面潤滑性を有するにも拘わらず、予め設定された大きさを超える捩り力がスタビライザバー10に加えられるまでは、スタビライザバー10とライナー布40,40との間に周方向の滑りが生じないようになっている。
【0055】
かくして、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、自動車に装着された状態下で、スタビライザバー10に捩り力が入力されたときに、その捩り力が予め設定された値を超えるまでは、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16(内側ゴム部32,32)との間の相対回転が阻止されつつ、実質的に、本体ゴム弾性体16の外側ゴム部34,34のみが捩り方向に弾性変形させられるようになっている。そして、スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、スタビライザバー10とライナー布40,40との間に周方向の滑りが生じて、スタビライザバー10が、ライナー布40,40の表面潤滑性に基づいて、摩擦抵抗力が十分に低減された、良好な摺動性をもって、本体ゴム弾性体16(内側ゴム部32,32)に対して、スムーズに相対回転するようになっている。また、ここでは、上記のような予め設定された捩り力の値が、路線変更するときや緩やかなカーブを走行するとき等のように小さな角度で旋回する際に、スタビライザバー10に入力される捩り力の値よりも多少大きな値(例えば、一般的な普通乗用車では10Nm程度)に設定されている。
【0056】
従って、このようなスタビライザブッシュ付スタビライザバーが装着された自動車では、路線変更時等のように、小さな角度で捩り力が入力されたときに、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との間の相対回転が阻止されることにより、走行安定性が十分に確保され得る。また、そのようなスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との間の相対回転が阻止された状態下において、実質的に、本体ゴム弾性体16の外側ゴム部34,34のみが捩り方向に弾性変形させられるようになっているため、スタビライザブッシュ12全体のばね特性として、外側ゴム部34,34のばね特性のみ由来したリニアな(線形性を保持し得る)捩りばねが確保され、これによって、より十分な走行安定性が有利に確保され得ると共に、優れた防振特性が得られる。一方、タイヤの両輪が同相で動くような突起乗り越しの際に大きな角度で捩り力が入力されたときには、スタビライザバー10が本体ゴム弾性体16に対してスムーズに相対回転することにより、良好な乗り心地が確保され得る。
【0057】
しかも、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、自動車に装着された状態下で、スタビライザバー10に入力される捩り力の大きさに応じて、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との間の相対回転が阻止されるか、或いはスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16とがスムーズに相対回転するようになっているため、スタビライザバー10に入力される捩り力の大きさに拘わらず、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、有利に且つ安定的に発揮され得るのである。
【0058】
なお、前記のように、ここでは、本体ゴム弾性体16の内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮が十分に高く設定され、それにより、スタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいて上記の如き優れた特徴が発揮され得るのであるが、この内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮の大きさは、内側ゴム部32,32の圧縮率(%):Kが30〜60%の範囲内の値となるような大きさ、即ち、内側ゴム部32,32の予圧縮前の厚さ(図6にt2 にて示される寸法)と予圧縮後の厚さ(図4にt3 にて示される寸法)との差にて表される内側ゴム部32,32の予圧縮による厚さの減少量:t2−t3の、内側ゴム部32,32の予圧縮前の厚さに対する比率:(t2−t3)/t2 が0.3〜0.6(圧縮率:K=30〜60%)の範囲内の値となるような大きさにおいて設定されていることが、望ましい。なお、圧縮率:Kは、{(t2−t3)/t2}×100にて表される。
【0059】
何故なら、かかる圧縮率:Kが30%を下回る場合には、内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮量が過小となり、それによって、予圧縮された内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、ライナー布40,40がスタビライザバー10の外周面に圧接される作用力が不十分なものとなってしまう。そして、そのために、内側ゴム部32,32に対して十分に大きな予圧縮が加えられることにより、スタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいて発揮される上記の如き優れた特徴が十分に発揮されなくなる可能性があるからである。また、圧縮率:Kが60%を超えるような大きさにおいて、内側ゴム32,32に対して予圧縮を加えることは技術的に容易ではなく、そのために、内側ゴム32,32に対する予圧縮、更にはスタビライザブッシュ付スタビライザバーの製造に際しての作業性が著しく低下する恐れがあるからである。なお、圧縮率:Kのより好適な範囲は、40〜50%程度である。
【0060】
また、そのような大きな圧縮率:Kにより内側ゴム部32,32に予圧縮を加える場合にあっても、内側ゴム部32,32と外側ゴム部34,34とが、ばね硬さ等のばね特性において、然程、差異を有しない場合には、内側ゴム部32,32に予圧縮を加えることによって得られるべき特徴が十分に確保されなくなる恐れがある。それ故、本実施形態では、外側ゴム部34の厚さ:t1 に対する予圧縮前の内側ゴム部32の厚さ:t2 の比率:t2/t1が0.1〜0.5とされていることが、望ましい。
【0061】
すなわち、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1が0.5以下とされていることにより、内側ゴム部32が、外側ゴム部34よりも十分に硬いばね特性が発揮されるようになる。その結果、内側ゴム部32,32に予圧縮が加えられてなるスタビライザブッシュ付スタビライザバーが自動車に装着された状態で、スタビライザバー10に対して、予め設定された大きさを超える捩り力が加えられるまで、内側ゴム部32,32の捩り方向での弾性変形が可及的に阻止されて、実質的に外側ゴム部34,34のみが捩り方向に弾性変形する状態が、確実に維持されると共に、スタビライザバー10とライナー布40,40との間に周方向の滑りが防止されて、スタビライザバー10の内側ゴム部32,32に対する相対回転が有利に阻止されるようになるのである。
【0062】
一方、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1が0.1を下回る場合には、内側ゴム部32の厚さが極端に薄いものとなり、そのような薄肉の内側ゴム部32を大きな圧縮率:Kで圧縮することが困難となる。そのため、内側ゴム部32を十分に大きな圧縮率:Kで圧縮することによって、前記したような優れた特徴を確保するには、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1が0.1以上とされていることが望ましいのである。なお、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1のより好適な範囲は0.2〜0.5である。
【0063】
ところで、かくの如き構造とされたスタビライザブッシュ付スタビライザバーを製造する際には、例えば、以下の如き手順に従って、その作業が進められることとなる。
【0064】
すなわち、先ず、図5乃至図7に示される如き構造を有する分割構造体20を、二対、作製して、準備する。なお、各分割構造体20は、例えば、分割ゴム部22(本体ゴム弾性体16)を与えるゴム材料と、インサートとして、分割金具23と仕切部材24とライナー布40とをそれぞれ用いた公知の射出成形による一体加硫成形操作を行うこと等によって、容易に作製されて、準備されることとなる。また、かくして準備される分割構造体20においては、上記のように、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率t2/t1が、好適には0.1〜0.5となるように、分割ゴム部22が形成される。
【0065】
そして、かくして準備された二対の分割構造体20,20,20,20のうちの一対の分割構造体20,20を、図8及び図9に示されるように組み付ける。即ち、各分割構造体20,20の分割ゴム部22,22の間に、スタビライザバー10の軸方向一方の端部側部分を、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32に加硫接着されたライナー布40,40の内周面が、かかるスタビライザバー10の端部側部分の外周面に接触するように挟んだ状態で、一対の分割構造体20,20を相互に組み付けるのである。
【0066】
このとき、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32の周方向両側の端面に一体的に突設されたシールリップ部38,38が、その先端面同士において、互いに接触して、押し縮められるように、或いは撓むように弾性変形した状態で配置される。また、各分割金具23,23における取付フランジ部44,44同士が、ボルト挿通孔46を対応させつつ、互いに所定距離を隔てた状態で、対向配置される。更に、各仕切部材24,24の連結部28a,28b同士も、互いに所定距離を隔てた状態で、対向配置される。なお、ここでは、一対の分割構造体20,20のうちの一方の分割構造体20が、他方の分割構造体20に対して、水平面内において180°回転した状態とされて、かかる一方の分割構造体20の仕切部材24におけるかしめ部30を有する連結部28aと、他方の分割構造体20の仕切部材24におけるかしめ部30を有しない連結部28bとが、互いに対向するように、配置される。
【0067】
その後、図10において白抜きの矢印で示されるように、一対の分割構造体20,20のうち、各分割金具23,23の固着部42,42から軸方向外方に突出する各仕切部材24,24の軸方向両側端部が、スタビライザバー10の軸心に向かって、径方向内方に押圧される。このような各仕切部材24,24の軸方向両側端部の径方向内方への押圧操作は、図11に示されるように、各仕切部材24,24の連結部28a,28b同士が互いに重ね合わされると共に、各分割金具23,23の取付フランジ部44,44同士が互いに重ね合わされるまで続けられる。
【0068】
これによって、各分割構造体20,20における分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32が、それぞれ、仕切部材24とスタビライザバー10との間で挟圧されて、径方向内方に圧縮されて、径方向において弾性変形し、以て、各内側ゴム部32,32に対して予圧縮が加えられる。そうして、内側ゴム部32,32の内周面に加硫接着されたライナー布40,40が、各内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、スタビライザバー10の外周面に圧接される。また、その際には、各内側ゴム部32,32の周方向両側端面から突出するシールリップ部38,38が弾性変形しており、それによって、シールリップ部38,38の内側に加硫接着された、ライナー布40,40の周方向端部も、シールリップ部38,38の復元力に基づいて補強された状態で、スタビライザバー10の外周面に圧接される。
【0069】
かくして、本操作で内側ゴム部32,32が予圧縮された状態で、一対の分割構造体20,20が組み付けられるスタビライザバー10の端部側部分の外周面に対して、ライナー布40,40が押圧接触される。また、内側ゴム部32,32の周方向両側端部の間が、弾性変形した各シールリップ部38,38にて、それぞれシールされるようになる。
【0070】
なお、本操作では、各内側ゴム部32,32が、それらの内外周面に接触乃至は固着するスタビライザバー10と仕切部材24との間で径方向に圧縮されているため、例えば、各分割金具23,23を径方向内方に押圧して、それら各分割金具23,23とスタビライザバー10との間で、外側ゴム部34,34と内側ゴム部32,32の両方を同時に圧縮する場合に比して、内側ゴム部32,32が、より小さな力で、確実に且つ効率的に圧縮され得るようになる。
【0071】
また、本操作によって、各内側ゴム部32,32の厚さが、圧縮前の厚さ:t2 から圧縮後の厚さ:t3 にまで減ぜられることとなるが、かかる内側ゴム部32の厚さの減少量:t2−t3は、各連結部26に対する押圧操作を行う前において互いに対向配置された各仕切部材24,24の連結部28aと連結部28bとの間の距離:Lや、各分割金具23,23の取付フランジ部44,44同士の間の距離:L(ここでは、内側ゴム部32,32の圧縮前において互いに対向する連結部28aと連結部28bとの間の距離と同一の大きさとなる)の1/2の大きさに相当する。一方、そのような連結部28aと連結部28bとの間の距離:Lや取付フランジ部44,44同士の間の距離:Lは、仕切部材24の径や連結部28a,28bの厚さ、或いは分割金具23の固着部42の径や取付フランジ部44の厚さ等に応じて、適宜に変更され得る。従って、本実施形態では、仕切部材24の径や連結部28a,28の厚さ、或いは分割金具23の固着部42の径や取付フランジ部44の厚さ等を単に変更するだけで、内側ゴム部32,32の予圧縮による厚さの減少量:t2−t3、ひいては内側ゴム部32,32の圧縮率(%):K={(t2−t3)/t2 }×100を、容易に且つ確実にチューニングすることが出来る。
【0072】
さらに、本操作では、各仕切部材24,24の軸方向両側端部を径方向内方に押圧するための装置乃至は治具として、公知の押圧装置や押圧治具が何れも採用され得るが、各仕切部材24,24の軸方向両側端部のうち、各分割金具23,23の固着部42,42から軸方向外方に突出する部分の外周面の全面に接触して、かかる外周面の全面を押圧する押圧面を備えたものが、好適に採用される。そのような押圧面を有する押圧装置乃至は押圧治具を用いれば、各仕切部材24,24に対する押圧操作によって、各仕切部材24,24が局部的に変形し、内側ゴム部32,32の圧縮率:Kが軸方向において不均一となって、かかる内側ゴム部32,32、更には本体ゴム弾性体16のばね特性にバラツキが生ずるようなことが、未然に且つ有効に防止され得ることとなるからである。
【0073】
そして、上記のようにして、内側ゴム部32,32を予圧縮した状態で、図11に二点鎖線で示されるように、各仕切部材24,24の連結部28aにおけるかしめ部30の先端側部分を、公知の工具や装置等を用いて、内側に直角に屈曲させる。これにより、各仕切部材24,24の連結部28aを、かしめ部30にて、各仕切部材24,24の連結部28bにかしめ固定し、以て、各仕切部材24,24を連結部28a,28b同士において相互に且つ強固に連結する。そうして、一対の分割構造体20,20とを、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32に径方向の予圧縮を加えた状態で、接着剤を何等用いることなく、即ち、内側ゴム部32,32をスタビライザバー10に接着剤にて接着することなしに、スタビライザバー10の軸方向一方の端部側部分に強固に固定する。また、それと同様にして、スタビライザバー10の軸方向他方の端部側部分にも、一対の分割構造体20,20を強固に固定する。以て、図1に示される如き構造を有する、目的とするスタビライザブッシュ付スタビライザバーを得るのである。
【0074】
このように、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、スタビライザバー10の軸方向両側端部に、それぞれ、一対の分割構造体20,20が、接着剤を用いることなく強固に固定されることで、スタビライザブッシュ12が取り付けられている。それ故、例えば、熱硬化性の接着剤等を用いて、分割構造体20をスタビライザバー10に固定してなる従来品とは異なって、前処理や後処理等を伴った厳密な管理の下で、加熱炉内での長時間に及ぶ接着操作を何等行うことなく、スタビライザバー10の所定箇所に対して、スタビライザブッシュ12を迅速に且つ確実に取り付けることが出来る。それによって、スタビライザブッシュ付スタビライザバーの製造に際しての生産性の向上と低コスト化とが、有利に図られ得ると共に、スタビライザバー10と各分割構造体20,20の分割ゴム部22,22との間の接着が剥離する懸念や、かかる接着の剥離により使用耐久性が低下する恐れが、効果的に皆無ならしめられ得る。
【0075】
また、かかるスタビライザブッシュ付スタビライザバーでは、半割円筒金具からなる仕切部材24とスタビライザバー10との間に、分割ゴム部22の内側ゴム部32が介在せしめられているため、かかる仕切部材24,24との直接的な接触によって生ずるスタビライザバー10の損傷が有利に解消され得、これによっても、使用耐久性の向上が有利に図られ得る。
【0076】
そして、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、特に、それが装着される自動車の走行時において、スタビライザバー10に対して小さな角度の捩り力が入力したときに、十分な走行安定性を発揮させると共に、スタビライザバー10に対して大きな角度の捩り力が入力したときには、良好な乗り心地を確保することが出来、しかも、スタビライザバー10に対する捩り力の大きさに拘わらず、優れた防振特性とスティックスリップの発生防止効果とを、より有利に得ることが出来る。
【0077】
しかも、かかるスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、スタビライザバー10に対して大きな角度の捩り力が加えられたときに、スタビライザバー10が、ライナー布40,40の表面潤滑性に基づいて、分割ゴム部22,22(内側ゴム部32,32)に対してスムーズに相対回転し得る。それにより、スタビライザバー10に対して大きな角度の捩り力が加えられたときに、分割ゴム部22,22(主に、外側ゴム部34,34)が過剰に弾性変形して、大きなダメージを受けたり、損傷したりすることが、有効に防止され得る。そして、その結果、分割ゴム部22,22の耐久性の向上が効果的に図られ得る。
【0078】
従って、かくの如き本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、高い生産性と低コスト性とが有利に発揮され得るだけでなく、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を有利に図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、より長期に亘って安定的に確保され得ることとなるのである。
【0079】
そして、かかるスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、一対の分割構造体20,20が組み付けられるスタビライザバー10の両端部側部分の外周面に対して、ライナー布40,40が、予圧縮された内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、それぞれ押圧接触されており、また、内側ゴム部32,32の周方向両側端部の間が、弾性変形した各シールリップ部38,38にて、それぞれシールされている。これによって、内側ゴム部32,32とスタビライザバー10との間に異物等が侵入して、スタビライザバー10や分割ゴム部22,22、ライナー布40,40等が損傷することが、効果的に防止され得る。
【0080】
また、本実施形態においては、分割ゴム部22の外周面に分割金具23が加硫接着されて、分割構造体20が形成されているところから、分割ゴム部22と分割金具23との間の接着強度が、より十分に大きくされる。更に、分割ゴム部22の内側ゴム部32の外周面と外側ゴム部34の内周面とに、仕切部材24が加硫接着されている。その上、内側ゴム部32の内周面にライナー布40が加硫接着されている。これらによって、分割構造体20の取扱性の向上が図られ得ると共に、スタビライザブッシュ12、ひいてはスタビライザブッシュ付スタビライザバーの自動車への取付状態下での使用耐久性が、有利に高められる。
【0081】
更にまた、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、分割ゴム部22の内側ゴム部32をスタビライザバー10との間で圧縮した状態で、互いに連結される仕切部材24が、十分に大きな剛性を備えた半割円筒金具にて構成されているため、仕切部材24を軸方向両側端部のみにおいて径方向内方に押圧するだけで、スタビライザバー10との間で、内側ゴム部32の全体を確実に圧縮することが出来る。また、各仕切部材24,24を、連結部28a,28b同士において、かしめ固定に代えて、溶接等によって、更に強固に連結することも可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、仕切部材24の軸方向両側端部が、分割ゴム部22の外側ゴム部34や分割金具23の固着部42から軸方向両側に突出配置されているところから、各仕切部材24の軸方向両側端部を径方向内方に向かって外方から押圧する操作が、外側ゴム部34や分割金具23によって邪魔されることなく、より容易に行われ得る。それによって、スタビライザブッシュ付スタビライザブッシュの生産性の更なる向上が、有利に図られ得る。
【0083】
加えて、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、分割ゴム部22の内側ゴム部32の軸方向長さが十分に長くされて、分割金具23の固着部42よりも軸方向長さの長い仕切部材24の内周面の全面に固着されている。そうして、内側ゴム部32のスタビライザバー10への押圧面積と、内側ゴム部32の内周面に固着されるライナー布40のスタビライザバー10との接触面積が十分に大きくされている。これによっても、各分割構造体20,20のスタビライザバー10に対する固定強度の向上等が、有利に図られ得る。
【0084】
次に、本実施形態に係るスタビライザブッシュ付スタビライザバーが、前記の如き優れた特徴を発揮するものであることを確認するために、本発明者が行った試験について、詳述する。
【0085】
すなわち、先ず、図5乃至図7に示される如き構造を有する分割構造体を、一対、作製して、準備した。この準備された分割構造体においては、分割ゴム弾性体の外側ゴム部の厚さに対する内側ゴム部の厚さの比率が0.33であった。また、仕切部材と分割ブラケットは、金属材料を用いて形成した。更に、内側ゴム部の内周面には、潤滑層として、テフロン布を加硫接着した。
【0086】
次いで、準備された一対の分割構造体を用い、図8及び図9に示されるように、分割ゴム弾性体同士の間にスタビライザバーを挟んで、テフロン布の内周面をスタビライザバーの外周面に接触させた状態で、それら一対の分割構造体を相互に組み付けた。その後、図10及び図11に示されるように、各分割構造体の仕切部材を径方向内方に押圧して、各分割構造体の分割ゴム弾性体の内側ゴム部に予圧縮を加えた状態において、各仕切部材の連結部をかしめ固定した。これにより、一対の分割構造体をスタビライザバーに固定し、目的とするスタビライザブッシュ付スタビライザバーを得た。なお、かくして得られたスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、スタビライザブッシュの固定状態下でスタビライザバーに加えられる回転トルク(捩り力)が、予め設定された値:A(Nm)を超えてから、始めて、スタビライザバーが分割ゴム弾性体(内側ゴム部)に対して相対回転するように、内側ゴム部の前記圧縮率(%):Kが50%となる程度において、内側ゴム部に加えられる予圧縮の大きさを設定した。
【0087】
引き続き、かくして得られたスタビライザブッシュ付スタビライザバーを用いて、スタビライザブッシュを所定の支持台に固定した。そして、その状態から、スタビライザバーを一方向に2B(deg)だけ回転させた後、それとは反対方向に4B(deg)だけ回転させ、その後、更に、一方向に4B(deg)だけ回転させ、そのときのスタビライザバーの回転角度と、スタビライザバーに加えられる回転トルクの大きさとの関係を調べる捩り方向特性試験を行った。その結果を図12に示した。
【0088】
図12から明らかなように、スタビライザバーの回転角度がB(deg)に達するまでは、スタビライザバーに加えられる回転トルクが、予め設定された値であるA(Nm)を超えて、比例的に増大している。そして、スタビライザバーの回転角度がB(deg)が超えると、回転トルクが、予め設定された値であるA(Nm)まで減少してから、A(Nm)で一定に推移している。これは、スタビライザバーに加えられる回転トルクが、予め設定された値であるA(Nm)を超えてから、初めて、スタビライザバーが分割ゴム弾性体(内側ゴム部)に対して相対回転し、また、そのようなスタビライザバーの分割ゴム弾性体に対する相対回転が生じるまでは、分割ゴム弾性体においてリニアな(線形性を保持し得る)捩りばねが確保され得ることを、如実に示している。このことは、スタビライザバーを一方向に2B(deg)だけ回転させてから、それとは反対方向に4B(deg)だけ回転させたときや、その後、スタビライザバーを一方向に再び4B(deg)だけ回転させときの回転角度と回転トルクの関係からも、明確に認識され得るところである。
【0089】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0090】
例えば、前記実施形態では、仕切部材24,24の連結部28aと連結部28bとが、かしめ固定により、相互に連結されていたが、かかる連結部28a,28b同士の連結は、接着剤を用いない方式乃至は構造の何れによっても実現され得る。従って、例えば、連結部28a,28b同士を溶接したり、或いはボルトやリベット等の締結部材や拘束バンド等の締着部材、更には各種のクランプ部材等を用いて、連結部28a,28b同士を連結しても良いのである。勿論、連結部28a,28b同士をかしめ固定する場合にあっても、例示した方式以外の方式のかしめ固定も、適宜に採用され得る。
【0091】
なお、仕切部材や分割ブラケットは、必要とされる剛性等を有するものであれば、その材質が、特に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0092】
また、前記実施形態では、内側ゴム部32の内周面に固着された、表面潤滑性を有するライナー布40にて、潤滑層が構成されていたが、この潤滑層は、内側ゴム部32の内周面に対して潤滑性を付与し得るものであれば、その構造が何等限定されるものではない。従って、例えば、二硫化モリブデンやフッ素樹脂等からなる公知の摺動剤等を、内側ゴム部32の内周面に、従来手法により焼き付ける等して、表面潤滑性を有するコーティング層を積層形成し、このコーティング層にて、潤滑層を構成することも出来る。
【0093】
また、各分割構造体20,20がスタビライザバー10に固定された状態下で、各分割金具23,23のそれぞれの取付フランジ部44同士の間に隙間を設けておき、取付フランジ部44が自動車のフレーム等に固定されたときに、かかる隙間の大きさに相当する分だけ、各分割ゴム部22,22の外側ゴム部34,34に対して予圧縮を加えるようにしても良い。これによって、自動車への取付状態下での外側ゴム部34の耐久性が効果的に高められ、また、それに基づくスタビライザブッシュ付スタビライザバー全体の使用耐久性の向上も、有利に実現され得ることとなる。
【0094】
加えて、本発明は、例えば、特開2001−221284号公報に開示される如き構造を有する防振ブッシュがスタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーや、その製造方法に対しても、有利に適用可能である。即ち、防振ブッシュが、軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体と、この筒状ゴム弾性体の外周面に装着されたブラケットとを有して構成されていると共に、かかる筒状ゴム弾性体の内孔内にスタビライザバーが挿入された状態で、防振ブッシュがスタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーや、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法に対しても、本発明を適用することが出来るのである。
【0095】
また、本発明は、自動車用以外の防振ブッシュ付きスタビライザバーやその製造方法の何れに対しても有利に適用され得ることは、勿論である。
【0096】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0097】
10 スタビライザバー 12 スタビライザブッシュ
14 内孔 16 本体ゴム弾性体
18 ブラケット 20 分割構造体
22 分割ゴム部 23 分割金具
24 仕切部材 28a,28b 連結部
32 内側ゴム部 34 外側ゴム部
38 シールリップ部 40 ライナー布
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュ付きスタビライザバー及びその製造方法に係り、特に、スタビライザバーを自動車等の車両のボデーやフレーム等に防振支持させるための防振ブッシュがスタビライザバーに取り付けられてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーの新規な構造と、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーの有利な製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、自動車等の車両には、旋回時等における車体の傾きを抑えるためのスタビライザバーが装着されている。このスタビライザバーは、一般に、スタビライザバーが挿通される内孔を備えた筒状ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットが固着されてなる防振ブッシュを介して、車体に取り付けられる。
【0003】
ところで、そのようなスタビライザバーにおいては、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体との間で生ずるスティックスリップにより、きしみ音や擦れ音等の異音が発生したり、防振特性が低下したりすることが、問題となっている。このスティックスリップは、自動車の走行時等において、スタビライザバーに入力される捩り力(回転トルク)により、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとが、大きな摩擦抵抗の下で相対回転することに起因して惹起されるものである。
【0004】
そこで、従来では、(ア)防振ブッシュの筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの相対回転を阻止することによって、スティックスリップの発生防止対策が講じられた防振ブッシュ付きスタビライザバーと、(イ)防振ブッシュの筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間の摩擦抵抗を低減させることによって、スティックスリップの発生防止対策が講じられた防振ブッシュ付きスタビライザバーとが、それぞれ提案されている。
【0005】
(ア)の防振ブッシュ付きスタビライザバーとしては、例えば、特開2006−123818号公報(特許文献1)等に開示される如き構造を有するものが、知られている。この防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、分割構造体における分割ゴム弾性体の径方向中間部に、分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材(中間板)が埋設されて、分割ゴム弾性体が、仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されている。そして、かかる分割構造体の一対が、スタビライザバーを各分割ゴム弾性体の内側ゴム部同士の間において内側ゴム部内周面に接触するように挟んで、組み付けられた状態において、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されている。
【0006】
このような防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されることにより、各分割構造体が、スタビライザバーに対して相対回転不能に固定されて、スティックスリップの発生が防止され得るようになっている。また、車両の旋回時等における走行安定性も、より良好に確保され得る。しかしながら、かかる接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーは、以下の如き欠点を有していた。
【0007】
すなわち、従来の接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、通常、内側ゴム部とスタビライザバーとの接着に際して、熱硬化性の接着剤が用いられて、それら内側ゴム部とスタビライザバーとの接着されるべき部分を、加熱炉内等で、厳密な管理の下、長時間に亘って加熱する操作が実施される。そのため、生産性やコスト性が良いものとは言えず、また、内側ゴム部とスタビライザバーとの間の接着強度に基づく分割構造体のスタビライザバーへの固定強度も、例えば、内側ゴム部とスタビライザバーとを加硫接着して、分割構造体をスタビライザバーに固定する場合等に比して、ある程度劣るものとなってしまうことが避けられなかった。
【0008】
しかも、かかる防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、分割ゴム弾性体からなる筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間での相対回転が阻止されるようになっているところから、スタビライザバーに大きな捩り力が繰り返し入力されたときに、分割ゴム弾性体が過大な変形量で繰り返し弾性変形するようになり、それによって、分割ゴム弾性体、ひいては防振ブッシュの耐久性に問題が発生する可能性があった。
【0009】
また、(ア)の防振ブッシュ付きスタビライザバーには、例えば、特開2008−168756号公報(特許文献2)等に明らかにされるような構造を有するものも知られている。この防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、各分割構造体の分割ゴム弾性体の径方向中間部に仕切部材が埋設されて、分割ゴム弾性体が、外側ゴム部と内側ゴム部とにて構成されている。また、仕切部材には、分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられている。そして、一対の分割構造体が、分割ゴム弾性体同士の間にスタビライザバーを挟んで組み付けられると共に、各分割ゴム弾性体の内側ゴム部が、スタビライザバーと仕切部材との間で径方向に圧縮されて、内側ゴム部に予圧縮が加えられた状態で、一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材が、連結部同士において、かしめられる等して相互に連結されることにより、一対の分割構造体が、スタビライザバーに対して非接着で固定されている。
【0010】
このような従来の非接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーは、接着タイプのものとは異なって、熱硬化性の接着剤等を何等用いることなく、一対の分割構造体が、スタビライザバーに対して強固に固定されている。それによって、生産性の向上と低コスト化とが有利に図られ得る。
【0011】
ところが、かかる非接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっても、各分割構造体における分割ゴム弾性体の内側ゴム部に大きな予圧縮が加えられていることで、分割ゴム弾性体からなる筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間での相対回転が阻止されるようになっている。そのため、接着タイプの防振ブッシュ付きスタビライザバーと同様に、スタビライザバーに大きな捩り力が繰り返し入力されることによって、分割ゴム弾性体、ひいては防振ブッシュの耐久性に問題が発生する可能性があったのである。
【0012】
一方、(イ)の防振ブッシュ付きスタビライザバーとしては、例えば、特開2001−221284号公報(特許文献3)等に開示される如き構造を有するものが、知られている。この防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、防振ブッシュにおける筒状ゴム弾性体の内孔の内周面に、テフロン(登録商標)布等の表面潤滑性を有するライナー布が加硫接着されている。そして、この筒状ゴム弾性体の内孔内にスタビライザバーが挿通されている。
【0013】
このような防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、筒状ゴム弾性体の内孔内に挿通されたスタビライザバーに捩り力が入力されたときに、かかるスタビライザバーが、筒状ゴム弾性体の内周面に接着された表面潤滑性を有するライナー布により、筒状ゴム弾性体に対して良好な摺動性をもってスムーズに相対回転し、以て、スティックスリップの発生が防止され得るようになっている。また、例えば、車両が突起を乗り越すとき等、両輪が同相で大きく動く場合等のように、スタビライザバーに大きな捩り力が入力された際においても、スタビライザバーと筒状ゴム弾性体とがスムーズに相対回転することで、良好な乗り心地が、有利に確保され得る。
【0014】
しかしながら、この防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、前記の如きスタビライザバーと筒状ゴム弾性体とが相対回転不能に固定されてなるものとは異なって、車両の走行時においてスタビライザバーに入力される捩り力を、筒状ゴム弾性体の弾性変形によって抑制することが出来ない。そのため、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーを装着した車両では、スタビライザバーと筒状ゴム弾性体とが相対回転不能に固定された防振ブッシュ付きスタビライザバーを装着する車両に比して、走行安定性が、多少、低下してしまう懸念があったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−123818号公報
【特許文献2】特開2008−168756号公報
【特許文献3】特開2001−221284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、高い生産性と低コスト性とが有利に発揮され得るだけでなく、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を有利に図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、より長期に亘って安定的に確保され得る防振ブッシュ付きスタビライザバーと、そのような特徴的な防振ブッシュ付きスタビライザバーを有利に製造し得る方法とを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そして、本発明者等が、上記の課題を解決するために、種々検討を行う過程で、先ず、以下の点について着目した。即ち、防振ブッシュ付きスタビライザバーが装着された自動車等の車両が小さな角度で旋回する場合、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体に対して比較的に小さな角度の捩り力が入力されるが、そのときには、乗り心地よりも走行安定性が優先される。一方、かかる車両が突起を乗り越すときのように、両輪が同相で大きく動く場合には、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体に対して大きな捩り力が入力され、その際には、走行安定性よりも乗り心地が優先される。従って、防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいて、防振ブッシュの筒状ゴム弾性体に比較的に小さな捩り力が入力されたときには、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間の相対回転を阻止する一方、筒状ゴム弾性体に大きな捩り力が入力されたときには、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとを摺動性良くスムーズに相対回転させることによって、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を図ることが出来、しかも、スティックスリップの発生が有利に防止され得ることを見出したのである。
【0018】
すなわち、本発明は、そのような知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーであって、前記分割構造体における前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなり、かかる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟み、且つそれら各分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で組み付けられる一方、各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部が、該スタビライザバーと前記仕切部材との間で径方向に圧縮されて、該内側ゴム部に予圧縮が加えられると共に、該予圧縮の大きさが、該スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとされた状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材が、前記連結部同士において相互に連結されることにより、該一対の分割構造体が、該スタビライザバーに固定されていることを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバーにある。
【0019】
本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの有利な態様の一つによれば、前記内側ゴム部が、前記スタビライザバーと前記仕切部材との間で、30〜60%の範囲内の圧縮率にて圧縮されることとなる。なお、ここで言う内側ゴム部の圧縮率とは、内側ゴム部の圧縮前の厚さに対する内側ゴム部の圧縮による厚さの減少量の比率を言う(以下、同一の意味において使用する)。
【0020】
また、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの望ましい態様の一つによれば、前記内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に、ゴム凸部が一体形成されてなり、前記一対の分割構造体が、前記分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟んで組み付けられて、それら各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部に予圧縮が加えられた状態下において、一方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部に設けられた前記ゴム凸部が、他方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部の周方向の端部に接触せしめられるように構成される。
【0021】
さらに、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの好適な態様の一つによれば、前記潤滑層が、表面潤滑性を有するライナー布にて構成されて、該ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に固着される。なお、この場合には、ライナー布の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方側の端部が、内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成されたゴム凸部に固着されていることが好ましく、また、ライナー布が、内側ゴム部の内周面に対して、加硫接着により固着されていることが望ましい。
【0022】
更にまた、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの望ましい態様の一つによれば、前記外側ゴム部の厚さに対する前記内側ゴム部の予圧縮前の厚さの比率が0.1〜0.5の範囲内の値とされる。
【0023】
また、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの好ましい態様の一つによれば、前記仕切部材が、前記分割ブラケットから軸方向外方に突出し、且つ前記内側ゴム部が、該仕切部材の内周面の全面を覆う状態で、該仕切部材の内側に配置されることとなる。
【0024】
さらに、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの有利な態様の一つによれば、前記分割ブラケットが、前記分割ゴム弾性体の外周面に対して、加硫接着により固着されると共に、前記仕切部材が、該分割ゴム弾性体の前記外側ゴム部の内周面と前記内側ゴム部の外周面とに対して加硫接着されて、前記分割構造体が、それら分割ゴム弾性体と分割ブラケットと仕切部材とからなる一体加硫成形品にて構成される。
【0025】
そして、本発明にあっては、軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法であって、(a)前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなるものを、前記分割構造体として、一対準備する工程と、(b)かかる一対の分割構造体の前記分割ゴム弾性体同士の間に、前記スタビライザバーを挟み、且つ該分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で、該一対の分割構造体を相互に組み付ける工程と、(c)相互に組み付けられた前記一対の分割構造体のそれぞれにおける前記仕切部材を径方向内方に押圧して、それら各分割構造体の前記内側ゴム部を前記スタビライザバーと該仕切部材との間で径方向に圧縮することにより、該内側ゴム部に予圧縮を加えると共に、該予圧縮の大きさを、該スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとした状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材を、前記連結部同士において相互に連結することにより、該一対の分割構造体を該スタビライザバーに固定する工程とを含むことを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0026】
要するに、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、スタビライザバーに捩り力が入力されたときに、その値が予め設定された値に達するまでは、内側ゴム部とスタビライザバーとの間の相対回転が阻止される。一方、スタビライザバーに対して、予め設定された値を超える捩り力が入力されると、内側ゴム部とスタビライザバーとが、潤滑層が有する潤滑性に基づいて、摩擦抵抗力が十分に低減された、良好な摺動性をもって、スムーズに相対回転し得るようになっている。
【0027】
それ故、かかる防振ブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザバーに入力される捩り力の大きさに拘わらず、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、有利に発揮され得る。そして、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーが装着された車両等では、捩り力が小さな角度で入力したときに、内側ゴム部とスタビライザバーとの間の相対回転が阻止されることにより、乗り心地よりも優先されるべき走行安定性が、十分に確保され得る。また、捩り力が大きな角度で入力したときには、内側ゴム部とスタビライザバーとがスムーズに相対回転することにより、走行安定性よりも優先されるべき乗り心地が、有利に高められ得る。
【0028】
しかも、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、スタビライザバーに大きな捩り力が加えられたときに、内側ゴム部とスタビライザバーとが、十分に小さな摩擦抵抗の下で、スムーズに相対回転するようになっているところから、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されてなる従来の防振ブッシュ付きスタビライザバーとは異なって、スタビライザバーへの大きな捩り力の入力により、内側ゴム部が、スタビライザバーと仕切部材との間で、また、外側ゴム部が、仕切部材と分割ブラケットとの間で、それぞれ過剰に弾性変形するようなことが、有利に回避され得る。それ故、そのような過剰な弾性変形によって、分割ゴム弾性体がダメージを受けたり、損傷したりすることが、効果的に防止され得、以て、分割ゴム弾性体の耐久性の向上が有利に図られ得る。
【0029】
また、本発明に係る防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいては、内側ゴム部がスタビライザバーに接着されておらず、仕切部材の連結部同士が互いに連結されることによって、一対の分割構造体が、スタビライザバーに対して強固に固定されている。そのため、例えば、接着剤を用いて、内側ゴム部をスタビライザバーに接着してなる従来の防振ブッシュ付きスタビライザバーに比して、生産性の向上と低コスト化とが有利に図られ得る。
【0030】
従って、かくの如き本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーにあっては、高い生産性と低コスト性とが有利に発揮され得るだけでなく、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を有利に図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、より長期に亘って安定的に確保され得ることとなるのである。
【0031】
そして、本発明に従う防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法にあっては、上記せる如き構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーを確実に且つ有利に製造することが出来、また、製造された防振ブッシュ付きスタビライザバーにおいて、上記せる優れた特徴を有効に発揮させることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従う構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーの一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1に示される防振ブッシュ付きスタビライザバーの一部を拡大して示す斜視説明図である。
【図3】図2におけるIII−III断面説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面説明図である。
【図5】図1に示される防振ブッシュ付きスタビライザバーの防振ブッシュを構成する分割構造体の側面説明図であって、かかる分割構造体のスタビライザバーへの組付前の状態を示している。
【図6】図5におけるVI−VI断面説明図である。
【図7】図5における VII矢視説明図である。
【図8】図1に示された防振ブッシュ付きスタビライザバーを製造する際の工程の一例を示す説明図であって、図5に示された分割構造体の一対を、分割ゴム弾性体同士の間にスタビライザバーを挟んで組み付けた状態を示している。
【図9】図8におけるIX矢視説明図である。
【図10】図8に示される工程に引き続いて行われる工程を示す説明図であって、一対の分割構造体のそれぞれにおける仕切部材を径方向内方に押圧して、分割ゴム弾性体の内側ゴム部に予圧縮を加えた状態を示している。
【図11】図10におけるXI−XI断面説明図である。
【図12】図1に示される構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーを用いて実施された捩り方向特性試験でのスタビライザバーの回転角度とスタビライザバーに対する回転トルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0034】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する防振ブッシュ付きスタビライザバーの一例として、自動車のスタビライザブッシュがスタビライザバーに取り付けられてなるスタビライザブッシュ付スタビライザバーが、その正面形態において、概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーは、所定長さを有する金属の丸棒からなるスタビライザバー10の軸方向両端側部位に、防振ブッシュとしてのスタビライザブッシュ12が、それぞれ一つずつ位置固定に取り付けられて、構成されている。
【0035】
このスタビライザバー10に取り付けられるスタビライザブッシュ12は、図2乃至図4に示されるように、全体として、略厚肉円筒形状を呈し、スタビライザバー10が挿通される内孔14が軸方向に延びるように設けられた、筒状ゴム弾性体としての本体ゴム弾性体16と、かかる本体ゴム弾性体16の外周面に固着されて、車体に取り付けられるブラケット18とを備えた、従来と同様な基本構造を有している。また、かかるスタビライザブッシュ12にあっては、それが、径方向において半分ずつに二分されるように、軸方向に沿って二分割された一対の分割構造体20,20にて構成されている。そして、それら一対の分割構造体20,20が、スタビライザバー10を間に挟んで、互いに組み付けられた状態において、スタビライザバー10に固定されることにより、厚肉円筒状の全体形状をもって、スタビライザバー10に取り付けられているのである。
【0036】
より詳細には、スタビライザブッシュ12を構成する一対の分割構造体20,20は、分割ゴム弾性体としての分割ゴム部22と、分割ブラケットとしての分割金具23とを備えた、互いに同一の構造及び同一の形状を有している。
【0037】
図3、及び図5乃至図7に示されるように、分割構造体20の分割ゴム部22は、本体ゴム弾性体16が、径方向において略半分ずつに二分されるように、周上の二箇所で分割されてなるもので、半円に満たない横断面形状を有する略半割円筒形状を呈している。そして、そのような分割ゴム部22の内部には、仕切部材24が埋設されている。この仕切部材24は、分割ゴム部22に比して、十分に薄い肉厚と、所定寸法大きな内径と、所定寸法小さな外径と、略半円状の横断面とを有する半割円筒金具にて、構成されている。
【0038】
また、仕切部材24の周方向の両側端部には、径方向外方に所定高さで突出し且つ軸方向に連続して延びる、狭幅平板状の外フランジ部26a,26bが、それぞれ一体形成されている。そして、それらの外フランジ部26a,26bの延出方向(仕切部材24の軸方向)両側端部が、延出方向中間部よりも突出高さが高い(幅の広い)連結部28a,28a,28b,28bとされている。また、二つの外フランジ部26a,26bのうちの一方の外フランジ部26aの軸方向両側に設けられた連結部28a,28aには、外フランジ部26aから略直角に立ち上がるかしめ部30が、一体形成されている。
【0039】
そのような仕切部材24が、分割ゴム部22の径方向(軸直角方向)の中央部よりも内側に所定寸法偏倚した位置において、各外フランジ部26a,26bを、それぞれ、分割ゴム部22の周方向両側端部から径方向外方に突出させつつ、分割ゴム部22と同軸上に配置されている。これにより、分割ゴム部22が、仕切部材24にて、それよりも内側に位置する薄肉のゴム部分と、それよりも外側に位置する厚肉のゴム部分とに仕切られている。
【0040】
かくして、分割ゴム部22の仕切部材24を間に挟んだ内側のゴム部分が、薄肉で、半円に満たない横断面形状を有する略半割円筒状の内側ゴム部32とされている一方、その外側のゴム部分が、厚肉で、半円に満たない横断面形状を有する略半割円筒状の外側ゴム部34とされている。また、内側ゴム部32は、仕切部材24と略同一の軸方向長さを有しており、外側ゴム部34は、仕切部材24よりも短い軸方向長さを有している。そうして、内側ゴム部32が、仕切部材24の内周面に対して、その全面を被覆するように固着されている一方、外側ゴム部34が、仕切部材24の外周面の軸方向中央部に固着されているのである。
【0041】
図6から明らかなように、仕切部材24の軸方向両側端面と軸方向両端側の外周面部分とには、内側ゴム部32と外側ゴム部34とに一体形成された薄肉の内側被覆ゴム部36が、それらの面を被覆するように固着されている。これによって、仕切部材24のうちの外フランジ部26a,26bを除く表面の大部分が、内側ゴム部32と外側ゴム部34と内側被覆ゴム部36とにて覆われており、以て、仕切部材24の略全体の防錆が図られている。なお、ここでは、内側ゴム部32と外側ゴム部34と内側被覆ゴム部36とに対する仕切部材24の固着が、加硫接着により実現されている。
【0042】
図5及び図7に示されるように、内側ゴム部32の周方向両側端面には、ゴム凸部としてのシールリップ部38が、それぞれ一体形成されている。このシールリップ部38は、内側ゴム部32の周方向両側端面の内周側端部から所定高さで突出し且つ軸方向に連続的に延びる狭幅(薄肉)の凸条形態を有している。また、かかるシールリップ部38にあっては、その突出先端面が、仕切部材24の内周面に連続する外フランジ部26a,26bの板面の位置を超えて位置するような突出高さを有している。
【0043】
一方、内側ゴム部32の内周面には、潤滑層としての、表面潤滑性を有するライナー布40が、加硫接着により固着されている。このライナー布40は、内側ゴム部32に対応した略半割円筒形状を呈し、内側ゴム部32の内周面の全面を被覆している。また、このライナー布40は、その周方向の両端側部位において、内側ゴム部32の周方向両側端部にそれぞれ設けられたシールリップ部38,38の内周面の全面に、それぞれ固着されている。
【0044】
これにより、内側ゴム部32の内周面の全面に対して十分な摺動性が、付与されている。そうして、後述するように、一対の分割構造体20,20が、各分割ゴム部22,22同士の間でスタビライザバー10を挟みつつ、スタビライザバー10に組み付けられた状態下において、スタビライザバー10が、各分割ゴム部22,22に対してスムーズに相対回転し得るようになっている。また、ライナー布40の周方向両端側部位が、薄肉のシールリップ部38に固着されていることによって、容易に折れ曲がらないように補強されている。
【0045】
なお、ライナー布40は、表面潤滑性を有するものであれば、その種類が特に限定されるものではない。このライナー布40として使用可能なものには、例えば、テフロン布等のフッ素樹脂繊維を主要構成部材とするフッ素樹脂系布材やポリアミド繊維からなる編成物等が挙げられる。
【0046】
一方、分割金具23は、図3、及び図5乃至図7に示されるように、ブラケット18が二分割されてなるものである。そして、略長手矩形の厚肉金属板からなり、長手方向の中間部に、横断面形状が半円に満たない円弧形状とされた分割円筒状の固着部42が設けられ、また、長手方向の両側端部に対して、固着部42の周方向両端部から径方向外方に所定長さをもってそれぞれ水平に延出する、矩形平板状の取付フランジ部44,44が一体形成されている。この分割金具23においては、固着部42の軸方向長さが、分割ゴム部22の外側ゴム部34の軸方向長さよりは長くされているものの、内側ゴム部32や仕切部材24の軸方向長さよりも所定寸法短くされている。また、各取付フランジ部44の略中央部には、ボルト挿通孔46が、それぞれ、一個ずつ穿設されている。
【0047】
そして、このような分割金具23が、固着部42の内周面の軸方向中央部において、分割ゴム部22における外側ゴム部34の外周面に固着されている。また、分割金具23の固着部42の内周面の軸方向両端側部位と外周面の全面と軸方向両側端面とには、外側ゴム部34に一体形成された、防錆用の外側被覆ゴム部48が、それらの面を被覆するように固着されている。そして、ここでは、外側ゴム部34と外側被覆ゴム部48とに対する分割金具23の固着が、加硫接着により実現されている。
【0048】
かくして、分割構造体20が、分割ゴム部22に対して分割金具23と仕切部材24とが加硫接着されてなる一体加硫成形品として、構成されている。また、そのような分割構造体20においては、分割ゴム部22の外周部(外側ゴム部34の外周面)における周方向の両端側から、分割金具23の取付フランジ部44,44が、径方向外方にそれぞれ突出し、更に、分割ゴム部22の内周部(外側ゴム部32の内周面と内側ゴム部32の外周面との間)における周方向の両端側からは、仕切部材24の外フランジ部26a,26bが、径方向外方にそれぞれ突出している。
【0049】
そして、図2乃至図4に示されるように、上記の如き構造を有する一対の分割構造体20,20が、それぞれの分割ゴム部22,22同士の間において、スタビライザバー10を、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32の内側に固着されたライナー布40,40の内周面にそれぞれ接触させるように挟んで組み付けられている。この組付状態下では、各仕切部材24,24の外フランジ部26a,26bの連結部28a,28b同士が互いに対応し、且つ各分割金具23,23の取付フランジ部44,44同士が相互に対応するように、それぞれ配置されている。
【0050】
また、かかる組付下において、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32が、各仕切部材24,24とスタビライザバー10との間で、肉厚が所定の厚さまで減少するように(後述する如く、図6にt2 にて示される内側ゴム部32の厚さが、図4にt3 にて示される厚さにまで減少するように)、径方向内方に圧縮されている。これにより、各仕切部材24の外フランジ部26a,26bの互いに対応する連結部28a,28b同士が互いに重ね合わされている。また、各内側ゴム部32,32の周方向両端面にそれぞれ設けられたシールリップ部38,38が、先端部同士において突き合わされ、弾性変形した状態で、互いに当接している。更に、圧縮された内側ゴム部32の復元力に基づいて、ライナー布40,40が、その内周面において、スタビライザバー10の外周面に対して強く押し付けられた状態とされている。
【0051】
そして、そのような状態下で、互いに重ね合わされた連結部28aと連結部28bとが、かしめ部30にて、かしめ固定されている。これにより、二つの分割構造体20,20のそれぞれの仕切部材24,24が、連結部28a,28b同士において、接着剤を用いることなく、相互に且つ強固に連結されている。
【0052】
かくして、二つの分割構造体20,20が、スタビライザバー10を介して一体化され、以て、スタビライザブッシュ12が、それら二つの分割構造体20,20との一体組付品として構成されている。また、それと共に、本体ゴム弾性体16(二つの分割ゴム部22,22)の内側ゴム部32,32に予圧縮が加えられ、且つかかる内側ゴム部32,32とスタビライザバー10との間に接着剤が何等介在しない状態で、二つの分割構造体20,20からなるスタビライザブッシュ12が、スタビライザバー10に対して、接着剤を用いることなく固定されている。更に、そのような固定構造にて、スタビライザブッシュ12の二つが、スタビライザバー10の軸方向両側端部にそれぞれ固定されており、それによって、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーが、図1に示される如き構造とされている。
【0053】
そして、このような本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、図示されてはいないものの、従来と同様に、スタビライザバー10が、軸方向両端部において、例えば、自動車のサスペンションアームに固定される一方、各スタビライザブッシュ12が、ブラケット18に設けられるボルト挿通孔46に挿通された固定ボルトにて、自動車のフレーム等に固定され、以て、自動車に対して防振的に支持されるようになっているのである。
【0054】
ところで、かかる本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、特に、本体ゴム弾性体16の内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮の大きさが、従来品には見られない程、十分に大きくされている。そのため、スタビライザブッシュ付スタビライザバーの自動車への装着状態下で、スタビライザバー10に捩り力が入力されたときに、その捩り力が予め設定された値を超えるまでは、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32の捩り方向への弾性変形が可及的に抑制されようになっている。また、それと共に、予圧縮された内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、ライナー布40,40が、スタビライザバー10の外周面に対して、比較的に大きな力で圧接され、以て、ライナー布40,40が表面潤滑性を有するにも拘わらず、予め設定された大きさを超える捩り力がスタビライザバー10に加えられるまでは、スタビライザバー10とライナー布40,40との間に周方向の滑りが生じないようになっている。
【0055】
かくして、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、自動車に装着された状態下で、スタビライザバー10に捩り力が入力されたときに、その捩り力が予め設定された値を超えるまでは、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16(内側ゴム部32,32)との間の相対回転が阻止されつつ、実質的に、本体ゴム弾性体16の外側ゴム部34,34のみが捩り方向に弾性変形させられるようになっている。そして、スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、スタビライザバー10とライナー布40,40との間に周方向の滑りが生じて、スタビライザバー10が、ライナー布40,40の表面潤滑性に基づいて、摩擦抵抗力が十分に低減された、良好な摺動性をもって、本体ゴム弾性体16(内側ゴム部32,32)に対して、スムーズに相対回転するようになっている。また、ここでは、上記のような予め設定された捩り力の値が、路線変更するときや緩やかなカーブを走行するとき等のように小さな角度で旋回する際に、スタビライザバー10に入力される捩り力の値よりも多少大きな値(例えば、一般的な普通乗用車では10Nm程度)に設定されている。
【0056】
従って、このようなスタビライザブッシュ付スタビライザバーが装着された自動車では、路線変更時等のように、小さな角度で捩り力が入力されたときに、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との間の相対回転が阻止されることにより、走行安定性が十分に確保され得る。また、そのようなスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との間の相対回転が阻止された状態下において、実質的に、本体ゴム弾性体16の外側ゴム部34,34のみが捩り方向に弾性変形させられるようになっているため、スタビライザブッシュ12全体のばね特性として、外側ゴム部34,34のばね特性のみ由来したリニアな(線形性を保持し得る)捩りばねが確保され、これによって、より十分な走行安定性が有利に確保され得ると共に、優れた防振特性が得られる。一方、タイヤの両輪が同相で動くような突起乗り越しの際に大きな角度で捩り力が入力されたときには、スタビライザバー10が本体ゴム弾性体16に対してスムーズに相対回転することにより、良好な乗り心地が確保され得る。
【0057】
しかも、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、自動車に装着された状態下で、スタビライザバー10に入力される捩り力の大きさに応じて、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との間の相対回転が阻止されるか、或いはスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16とがスムーズに相対回転するようになっているため、スタビライザバー10に入力される捩り力の大きさに拘わらず、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、有利に且つ安定的に発揮され得るのである。
【0058】
なお、前記のように、ここでは、本体ゴム弾性体16の内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮が十分に高く設定され、それにより、スタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいて上記の如き優れた特徴が発揮され得るのであるが、この内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮の大きさは、内側ゴム部32,32の圧縮率(%):Kが30〜60%の範囲内の値となるような大きさ、即ち、内側ゴム部32,32の予圧縮前の厚さ(図6にt2 にて示される寸法)と予圧縮後の厚さ(図4にt3 にて示される寸法)との差にて表される内側ゴム部32,32の予圧縮による厚さの減少量:t2−t3の、内側ゴム部32,32の予圧縮前の厚さに対する比率:(t2−t3)/t2 が0.3〜0.6(圧縮率:K=30〜60%)の範囲内の値となるような大きさにおいて設定されていることが、望ましい。なお、圧縮率:Kは、{(t2−t3)/t2}×100にて表される。
【0059】
何故なら、かかる圧縮率:Kが30%を下回る場合には、内側ゴム部32,32に加えられる予圧縮量が過小となり、それによって、予圧縮された内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、ライナー布40,40がスタビライザバー10の外周面に圧接される作用力が不十分なものとなってしまう。そして、そのために、内側ゴム部32,32に対して十分に大きな予圧縮が加えられることにより、スタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいて発揮される上記の如き優れた特徴が十分に発揮されなくなる可能性があるからである。また、圧縮率:Kが60%を超えるような大きさにおいて、内側ゴム32,32に対して予圧縮を加えることは技術的に容易ではなく、そのために、内側ゴム32,32に対する予圧縮、更にはスタビライザブッシュ付スタビライザバーの製造に際しての作業性が著しく低下する恐れがあるからである。なお、圧縮率:Kのより好適な範囲は、40〜50%程度である。
【0060】
また、そのような大きな圧縮率:Kにより内側ゴム部32,32に予圧縮を加える場合にあっても、内側ゴム部32,32と外側ゴム部34,34とが、ばね硬さ等のばね特性において、然程、差異を有しない場合には、内側ゴム部32,32に予圧縮を加えることによって得られるべき特徴が十分に確保されなくなる恐れがある。それ故、本実施形態では、外側ゴム部34の厚さ:t1 に対する予圧縮前の内側ゴム部32の厚さ:t2 の比率:t2/t1が0.1〜0.5とされていることが、望ましい。
【0061】
すなわち、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1が0.5以下とされていることにより、内側ゴム部32が、外側ゴム部34よりも十分に硬いばね特性が発揮されるようになる。その結果、内側ゴム部32,32に予圧縮が加えられてなるスタビライザブッシュ付スタビライザバーが自動車に装着された状態で、スタビライザバー10に対して、予め設定された大きさを超える捩り力が加えられるまで、内側ゴム部32,32の捩り方向での弾性変形が可及的に阻止されて、実質的に外側ゴム部34,34のみが捩り方向に弾性変形する状態が、確実に維持されると共に、スタビライザバー10とライナー布40,40との間に周方向の滑りが防止されて、スタビライザバー10の内側ゴム部32,32に対する相対回転が有利に阻止されるようになるのである。
【0062】
一方、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1が0.1を下回る場合には、内側ゴム部32の厚さが極端に薄いものとなり、そのような薄肉の内側ゴム部32を大きな圧縮率:Kで圧縮することが困難となる。そのため、内側ゴム部32を十分に大きな圧縮率:Kで圧縮することによって、前記したような優れた特徴を確保するには、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1が0.1以上とされていることが望ましいのである。なお、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率:t2/t1のより好適な範囲は0.2〜0.5である。
【0063】
ところで、かくの如き構造とされたスタビライザブッシュ付スタビライザバーを製造する際には、例えば、以下の如き手順に従って、その作業が進められることとなる。
【0064】
すなわち、先ず、図5乃至図7に示される如き構造を有する分割構造体20を、二対、作製して、準備する。なお、各分割構造体20は、例えば、分割ゴム部22(本体ゴム弾性体16)を与えるゴム材料と、インサートとして、分割金具23と仕切部材24とライナー布40とをそれぞれ用いた公知の射出成形による一体加硫成形操作を行うこと等によって、容易に作製されて、準備されることとなる。また、かくして準備される分割構造体20においては、上記のように、内側ゴム部32と外側ゴム部34の厚さの比率t2/t1が、好適には0.1〜0.5となるように、分割ゴム部22が形成される。
【0065】
そして、かくして準備された二対の分割構造体20,20,20,20のうちの一対の分割構造体20,20を、図8及び図9に示されるように組み付ける。即ち、各分割構造体20,20の分割ゴム部22,22の間に、スタビライザバー10の軸方向一方の端部側部分を、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32に加硫接着されたライナー布40,40の内周面が、かかるスタビライザバー10の端部側部分の外周面に接触するように挟んだ状態で、一対の分割構造体20,20を相互に組み付けるのである。
【0066】
このとき、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32の周方向両側の端面に一体的に突設されたシールリップ部38,38が、その先端面同士において、互いに接触して、押し縮められるように、或いは撓むように弾性変形した状態で配置される。また、各分割金具23,23における取付フランジ部44,44同士が、ボルト挿通孔46を対応させつつ、互いに所定距離を隔てた状態で、対向配置される。更に、各仕切部材24,24の連結部28a,28b同士も、互いに所定距離を隔てた状態で、対向配置される。なお、ここでは、一対の分割構造体20,20のうちの一方の分割構造体20が、他方の分割構造体20に対して、水平面内において180°回転した状態とされて、かかる一方の分割構造体20の仕切部材24におけるかしめ部30を有する連結部28aと、他方の分割構造体20の仕切部材24におけるかしめ部30を有しない連結部28bとが、互いに対向するように、配置される。
【0067】
その後、図10において白抜きの矢印で示されるように、一対の分割構造体20,20のうち、各分割金具23,23の固着部42,42から軸方向外方に突出する各仕切部材24,24の軸方向両側端部が、スタビライザバー10の軸心に向かって、径方向内方に押圧される。このような各仕切部材24,24の軸方向両側端部の径方向内方への押圧操作は、図11に示されるように、各仕切部材24,24の連結部28a,28b同士が互いに重ね合わされると共に、各分割金具23,23の取付フランジ部44,44同士が互いに重ね合わされるまで続けられる。
【0068】
これによって、各分割構造体20,20における分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32が、それぞれ、仕切部材24とスタビライザバー10との間で挟圧されて、径方向内方に圧縮されて、径方向において弾性変形し、以て、各内側ゴム部32,32に対して予圧縮が加えられる。そうして、内側ゴム部32,32の内周面に加硫接着されたライナー布40,40が、各内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、スタビライザバー10の外周面に圧接される。また、その際には、各内側ゴム部32,32の周方向両側端面から突出するシールリップ部38,38が弾性変形しており、それによって、シールリップ部38,38の内側に加硫接着された、ライナー布40,40の周方向端部も、シールリップ部38,38の復元力に基づいて補強された状態で、スタビライザバー10の外周面に圧接される。
【0069】
かくして、本操作で内側ゴム部32,32が予圧縮された状態で、一対の分割構造体20,20が組み付けられるスタビライザバー10の端部側部分の外周面に対して、ライナー布40,40が押圧接触される。また、内側ゴム部32,32の周方向両側端部の間が、弾性変形した各シールリップ部38,38にて、それぞれシールされるようになる。
【0070】
なお、本操作では、各内側ゴム部32,32が、それらの内外周面に接触乃至は固着するスタビライザバー10と仕切部材24との間で径方向に圧縮されているため、例えば、各分割金具23,23を径方向内方に押圧して、それら各分割金具23,23とスタビライザバー10との間で、外側ゴム部34,34と内側ゴム部32,32の両方を同時に圧縮する場合に比して、内側ゴム部32,32が、より小さな力で、確実に且つ効率的に圧縮され得るようになる。
【0071】
また、本操作によって、各内側ゴム部32,32の厚さが、圧縮前の厚さ:t2 から圧縮後の厚さ:t3 にまで減ぜられることとなるが、かかる内側ゴム部32の厚さの減少量:t2−t3は、各連結部26に対する押圧操作を行う前において互いに対向配置された各仕切部材24,24の連結部28aと連結部28bとの間の距離:Lや、各分割金具23,23の取付フランジ部44,44同士の間の距離:L(ここでは、内側ゴム部32,32の圧縮前において互いに対向する連結部28aと連結部28bとの間の距離と同一の大きさとなる)の1/2の大きさに相当する。一方、そのような連結部28aと連結部28bとの間の距離:Lや取付フランジ部44,44同士の間の距離:Lは、仕切部材24の径や連結部28a,28bの厚さ、或いは分割金具23の固着部42の径や取付フランジ部44の厚さ等に応じて、適宜に変更され得る。従って、本実施形態では、仕切部材24の径や連結部28a,28の厚さ、或いは分割金具23の固着部42の径や取付フランジ部44の厚さ等を単に変更するだけで、内側ゴム部32,32の予圧縮による厚さの減少量:t2−t3、ひいては内側ゴム部32,32の圧縮率(%):K={(t2−t3)/t2 }×100を、容易に且つ確実にチューニングすることが出来る。
【0072】
さらに、本操作では、各仕切部材24,24の軸方向両側端部を径方向内方に押圧するための装置乃至は治具として、公知の押圧装置や押圧治具が何れも採用され得るが、各仕切部材24,24の軸方向両側端部のうち、各分割金具23,23の固着部42,42から軸方向外方に突出する部分の外周面の全面に接触して、かかる外周面の全面を押圧する押圧面を備えたものが、好適に採用される。そのような押圧面を有する押圧装置乃至は押圧治具を用いれば、各仕切部材24,24に対する押圧操作によって、各仕切部材24,24が局部的に変形し、内側ゴム部32,32の圧縮率:Kが軸方向において不均一となって、かかる内側ゴム部32,32、更には本体ゴム弾性体16のばね特性にバラツキが生ずるようなことが、未然に且つ有効に防止され得ることとなるからである。
【0073】
そして、上記のようにして、内側ゴム部32,32を予圧縮した状態で、図11に二点鎖線で示されるように、各仕切部材24,24の連結部28aにおけるかしめ部30の先端側部分を、公知の工具や装置等を用いて、内側に直角に屈曲させる。これにより、各仕切部材24,24の連結部28aを、かしめ部30にて、各仕切部材24,24の連結部28bにかしめ固定し、以て、各仕切部材24,24を連結部28a,28b同士において相互に且つ強固に連結する。そうして、一対の分割構造体20,20とを、各分割ゴム部22,22の内側ゴム部32,32に径方向の予圧縮を加えた状態で、接着剤を何等用いることなく、即ち、内側ゴム部32,32をスタビライザバー10に接着剤にて接着することなしに、スタビライザバー10の軸方向一方の端部側部分に強固に固定する。また、それと同様にして、スタビライザバー10の軸方向他方の端部側部分にも、一対の分割構造体20,20を強固に固定する。以て、図1に示される如き構造を有する、目的とするスタビライザブッシュ付スタビライザバーを得るのである。
【0074】
このように、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、スタビライザバー10の軸方向両側端部に、それぞれ、一対の分割構造体20,20が、接着剤を用いることなく強固に固定されることで、スタビライザブッシュ12が取り付けられている。それ故、例えば、熱硬化性の接着剤等を用いて、分割構造体20をスタビライザバー10に固定してなる従来品とは異なって、前処理や後処理等を伴った厳密な管理の下で、加熱炉内での長時間に及ぶ接着操作を何等行うことなく、スタビライザバー10の所定箇所に対して、スタビライザブッシュ12を迅速に且つ確実に取り付けることが出来る。それによって、スタビライザブッシュ付スタビライザバーの製造に際しての生産性の向上と低コスト化とが、有利に図られ得ると共に、スタビライザバー10と各分割構造体20,20の分割ゴム部22,22との間の接着が剥離する懸念や、かかる接着の剥離により使用耐久性が低下する恐れが、効果的に皆無ならしめられ得る。
【0075】
また、かかるスタビライザブッシュ付スタビライザバーでは、半割円筒金具からなる仕切部材24とスタビライザバー10との間に、分割ゴム部22の内側ゴム部32が介在せしめられているため、かかる仕切部材24,24との直接的な接触によって生ずるスタビライザバー10の損傷が有利に解消され得、これによっても、使用耐久性の向上が有利に図られ得る。
【0076】
そして、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、特に、それが装着される自動車の走行時において、スタビライザバー10に対して小さな角度の捩り力が入力したときに、十分な走行安定性を発揮させると共に、スタビライザバー10に対して大きな角度の捩り力が入力したときには、良好な乗り心地を確保することが出来、しかも、スタビライザバー10に対する捩り力の大きさに拘わらず、優れた防振特性とスティックスリップの発生防止効果とを、より有利に得ることが出来る。
【0077】
しかも、かかるスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、スタビライザバー10に対して大きな角度の捩り力が加えられたときに、スタビライザバー10が、ライナー布40,40の表面潤滑性に基づいて、分割ゴム部22,22(内側ゴム部32,32)に対してスムーズに相対回転し得る。それにより、スタビライザバー10に対して大きな角度の捩り力が加えられたときに、分割ゴム部22,22(主に、外側ゴム部34,34)が過剰に弾性変形して、大きなダメージを受けたり、損傷したりすることが、有効に防止され得る。そして、その結果、分割ゴム部22,22の耐久性の向上が効果的に図られ得る。
【0078】
従って、かくの如き本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、高い生産性と低コスト性とが有利に発揮され得るだけでなく、良好な乗り心地と十分な走行安定性の両立を有利に図りつつ、十分な防振特性とスティックスリップの発生防止効果とが、より長期に亘って安定的に確保され得ることとなるのである。
【0079】
そして、かかるスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、一対の分割構造体20,20が組み付けられるスタビライザバー10の両端部側部分の外周面に対して、ライナー布40,40が、予圧縮された内側ゴム部32,32の復元力に基づいて、それぞれ押圧接触されており、また、内側ゴム部32,32の周方向両側端部の間が、弾性変形した各シールリップ部38,38にて、それぞれシールされている。これによって、内側ゴム部32,32とスタビライザバー10との間に異物等が侵入して、スタビライザバー10や分割ゴム部22,22、ライナー布40,40等が損傷することが、効果的に防止され得る。
【0080】
また、本実施形態においては、分割ゴム部22の外周面に分割金具23が加硫接着されて、分割構造体20が形成されているところから、分割ゴム部22と分割金具23との間の接着強度が、より十分に大きくされる。更に、分割ゴム部22の内側ゴム部32の外周面と外側ゴム部34の内周面とに、仕切部材24が加硫接着されている。その上、内側ゴム部32の内周面にライナー布40が加硫接着されている。これらによって、分割構造体20の取扱性の向上が図られ得ると共に、スタビライザブッシュ12、ひいてはスタビライザブッシュ付スタビライザバーの自動車への取付状態下での使用耐久性が、有利に高められる。
【0081】
更にまた、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、分割ゴム部22の内側ゴム部32をスタビライザバー10との間で圧縮した状態で、互いに連結される仕切部材24が、十分に大きな剛性を備えた半割円筒金具にて構成されているため、仕切部材24を軸方向両側端部のみにおいて径方向内方に押圧するだけで、スタビライザバー10との間で、内側ゴム部32の全体を確実に圧縮することが出来る。また、各仕切部材24,24を、連結部28a,28b同士において、かしめ固定に代えて、溶接等によって、更に強固に連結することも可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、仕切部材24の軸方向両側端部が、分割ゴム部22の外側ゴム部34や分割金具23の固着部42から軸方向両側に突出配置されているところから、各仕切部材24の軸方向両側端部を径方向内方に向かって外方から押圧する操作が、外側ゴム部34や分割金具23によって邪魔されることなく、より容易に行われ得る。それによって、スタビライザブッシュ付スタビライザブッシュの生産性の更なる向上が、有利に図られ得る。
【0083】
加えて、本実施形態のスタビライザブッシュ付スタビライザバーにあっては、分割ゴム部22の内側ゴム部32の軸方向長さが十分に長くされて、分割金具23の固着部42よりも軸方向長さの長い仕切部材24の内周面の全面に固着されている。そうして、内側ゴム部32のスタビライザバー10への押圧面積と、内側ゴム部32の内周面に固着されるライナー布40のスタビライザバー10との接触面積が十分に大きくされている。これによっても、各分割構造体20,20のスタビライザバー10に対する固定強度の向上等が、有利に図られ得る。
【0084】
次に、本実施形態に係るスタビライザブッシュ付スタビライザバーが、前記の如き優れた特徴を発揮するものであることを確認するために、本発明者が行った試験について、詳述する。
【0085】
すなわち、先ず、図5乃至図7に示される如き構造を有する分割構造体を、一対、作製して、準備した。この準備された分割構造体においては、分割ゴム弾性体の外側ゴム部の厚さに対する内側ゴム部の厚さの比率が0.33であった。また、仕切部材と分割ブラケットは、金属材料を用いて形成した。更に、内側ゴム部の内周面には、潤滑層として、テフロン布を加硫接着した。
【0086】
次いで、準備された一対の分割構造体を用い、図8及び図9に示されるように、分割ゴム弾性体同士の間にスタビライザバーを挟んで、テフロン布の内周面をスタビライザバーの外周面に接触させた状態で、それら一対の分割構造体を相互に組み付けた。その後、図10及び図11に示されるように、各分割構造体の仕切部材を径方向内方に押圧して、各分割構造体の分割ゴム弾性体の内側ゴム部に予圧縮を加えた状態において、各仕切部材の連結部をかしめ固定した。これにより、一対の分割構造体をスタビライザバーに固定し、目的とするスタビライザブッシュ付スタビライザバーを得た。なお、かくして得られたスタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいては、スタビライザブッシュの固定状態下でスタビライザバーに加えられる回転トルク(捩り力)が、予め設定された値:A(Nm)を超えてから、始めて、スタビライザバーが分割ゴム弾性体(内側ゴム部)に対して相対回転するように、内側ゴム部の前記圧縮率(%):Kが50%となる程度において、内側ゴム部に加えられる予圧縮の大きさを設定した。
【0087】
引き続き、かくして得られたスタビライザブッシュ付スタビライザバーを用いて、スタビライザブッシュを所定の支持台に固定した。そして、その状態から、スタビライザバーを一方向に2B(deg)だけ回転させた後、それとは反対方向に4B(deg)だけ回転させ、その後、更に、一方向に4B(deg)だけ回転させ、そのときのスタビライザバーの回転角度と、スタビライザバーに加えられる回転トルクの大きさとの関係を調べる捩り方向特性試験を行った。その結果を図12に示した。
【0088】
図12から明らかなように、スタビライザバーの回転角度がB(deg)に達するまでは、スタビライザバーに加えられる回転トルクが、予め設定された値であるA(Nm)を超えて、比例的に増大している。そして、スタビライザバーの回転角度がB(deg)が超えると、回転トルクが、予め設定された値であるA(Nm)まで減少してから、A(Nm)で一定に推移している。これは、スタビライザバーに加えられる回転トルクが、予め設定された値であるA(Nm)を超えてから、初めて、スタビライザバーが分割ゴム弾性体(内側ゴム部)に対して相対回転し、また、そのようなスタビライザバーの分割ゴム弾性体に対する相対回転が生じるまでは、分割ゴム弾性体においてリニアな(線形性を保持し得る)捩りばねが確保され得ることを、如実に示している。このことは、スタビライザバーを一方向に2B(deg)だけ回転させてから、それとは反対方向に4B(deg)だけ回転させたときや、その後、スタビライザバーを一方向に再び4B(deg)だけ回転させときの回転角度と回転トルクの関係からも、明確に認識され得るところである。
【0089】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0090】
例えば、前記実施形態では、仕切部材24,24の連結部28aと連結部28bとが、かしめ固定により、相互に連結されていたが、かかる連結部28a,28b同士の連結は、接着剤を用いない方式乃至は構造の何れによっても実現され得る。従って、例えば、連結部28a,28b同士を溶接したり、或いはボルトやリベット等の締結部材や拘束バンド等の締着部材、更には各種のクランプ部材等を用いて、連結部28a,28b同士を連結しても良いのである。勿論、連結部28a,28b同士をかしめ固定する場合にあっても、例示した方式以外の方式のかしめ固定も、適宜に採用され得る。
【0091】
なお、仕切部材や分割ブラケットは、必要とされる剛性等を有するものであれば、その材質が、特に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0092】
また、前記実施形態では、内側ゴム部32の内周面に固着された、表面潤滑性を有するライナー布40にて、潤滑層が構成されていたが、この潤滑層は、内側ゴム部32の内周面に対して潤滑性を付与し得るものであれば、その構造が何等限定されるものではない。従って、例えば、二硫化モリブデンやフッ素樹脂等からなる公知の摺動剤等を、内側ゴム部32の内周面に、従来手法により焼き付ける等して、表面潤滑性を有するコーティング層を積層形成し、このコーティング層にて、潤滑層を構成することも出来る。
【0093】
また、各分割構造体20,20がスタビライザバー10に固定された状態下で、各分割金具23,23のそれぞれの取付フランジ部44同士の間に隙間を設けておき、取付フランジ部44が自動車のフレーム等に固定されたときに、かかる隙間の大きさに相当する分だけ、各分割ゴム部22,22の外側ゴム部34,34に対して予圧縮を加えるようにしても良い。これによって、自動車への取付状態下での外側ゴム部34の耐久性が効果的に高められ、また、それに基づくスタビライザブッシュ付スタビライザバー全体の使用耐久性の向上も、有利に実現され得ることとなる。
【0094】
加えて、本発明は、例えば、特開2001−221284号公報に開示される如き構造を有する防振ブッシュがスタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーや、その製造方法に対しても、有利に適用可能である。即ち、防振ブッシュが、軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体と、この筒状ゴム弾性体の外周面に装着されたブラケットとを有して構成されていると共に、かかる筒状ゴム弾性体の内孔内にスタビライザバーが挿入された状態で、防振ブッシュがスタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーや、そのような防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法に対しても、本発明を適用することが出来るのである。
【0095】
また、本発明は、自動車用以外の防振ブッシュ付きスタビライザバーやその製造方法の何れに対しても有利に適用され得ることは、勿論である。
【0096】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0097】
10 スタビライザバー 12 スタビライザブッシュ
14 内孔 16 本体ゴム弾性体
18 ブラケット 20 分割構造体
22 分割ゴム部 23 分割金具
24 仕切部材 28a,28b 連結部
32 内側ゴム部 34 外側ゴム部
38 シールリップ部 40 ライナー布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーであって、
前記分割構造体における前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなり、
かかる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟み、且つそれら各分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で組み付けられる一方、各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部が、該スタビライザバーと前記仕切部材との間で径方向に圧縮されて、該内側ゴム部に予圧縮が加えられると共に、該予圧縮の大きさが、該スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとされた状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材が、前記連結部同士において相互に連結されることにより、該一対の分割構造体が、該スタビライザバーに固定されていることを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項2】
前記内側ゴム部が、前記スタビライザバーと前記仕切部材との間で、30〜60%の範囲内の圧縮率にて圧縮されている請求項1に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項3】
前記内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に、ゴム凸部が一体形成されてなり、前記一対の分割構造体が、前記分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟んで組み付けられて、それら各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部に予圧縮が加えられた状態下において、一方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部に設けられた前記ゴム凸部が、他方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部の周方向の端部に接触せしめられるようになっている請求項1又は請求項2に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項4】
前記潤滑層が、表面潤滑性を有するライナー布にて構成されて、該ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に固着されている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項5】
前記潤滑層が、表面潤滑性を有するライナー布にて構成されて、該ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に固着されていると共に、該ライナー布の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方側の端部が、該内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成された前記ゴム凸部に固着されている請求項3に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項6】
前記ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に対して、加硫接着により固着されている請求項4又は請求項5に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項7】
前記外側ゴム部の厚さに対する前記内側ゴム部の予圧縮前の厚さの比率が0.1〜0.5の範囲内の値とされている請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項8】
前記仕切部材が、前記分割ブラケットから軸方向外方に突出し、且つ前記内側ゴム部が、該仕切部材の内周面の全面を覆う状態で、該仕切部材の内側に配置されている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項9】
前記分割ブラケットが、前記分割ゴム弾性体の外周面に対して、加硫接着により固着されると共に、前記仕切部材が、該分割ゴム弾性体の前記外側ゴム部の内周面と前記内側ゴム部の外周面とに対して加硫接着されて、前記分割構造体が、それら分割ゴム弾性体と分割ブラケットと仕切部材とからなる一体加硫成形品にて構成されている請求項1乃至請求項8のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項10】
軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法であって、
前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなるものを、前記分割構造体として、一対準備する工程と、
かかる一対の分割構造体の前記分割ゴム弾性体同士の間に、前記スタビライザバーを挟み、且つ該分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で、該一対の分割構造体を相互に組み付ける工程と、
相互に組み付けられた前記一対の分割構造体のそれぞれにおける前記仕切部材を径方向内方に押圧して、それら各分割構造体の前記内側ゴム部を前記スタビライザバーと該仕切部材との間で径方向に圧縮することにより、該内側ゴム部に予圧縮を加えると共に、該予圧縮の大きさを、該スタビライザバーに入力される捩り力が、予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとした状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材を、前記連結部同士において相互に連結することにより、該一対の分割構造体を該スタビライザバーに固定する工程と、
を含むことを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法。
【請求項1】
軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーであって、
前記分割構造体における前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなり、
かかる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟み、且つそれら各分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で組み付けられる一方、各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部が、該スタビライザバーと前記仕切部材との間で径方向に圧縮されて、該内側ゴム部に予圧縮が加えられると共に、該予圧縮の大きさが、該スタビライザバーに入力される捩り力が予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとされた状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材が、前記連結部同士において相互に連結されることにより、該一対の分割構造体が、該スタビライザバーに固定されていることを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項2】
前記内側ゴム部が、前記スタビライザバーと前記仕切部材との間で、30〜60%の範囲内の圧縮率にて圧縮されている請求項1に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項3】
前記内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に、ゴム凸部が一体形成されてなり、前記一対の分割構造体が、前記分割ゴム弾性体同士の間に前記スタビライザバーを挟んで組み付けられて、それら各分割ゴム弾性体の前記内側ゴム部に予圧縮が加えられた状態下において、一方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部に設けられた前記ゴム凸部が、他方の分割ゴム弾性体の該内側ゴム部の周方向の端部に接触せしめられるようになっている請求項1又は請求項2に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項4】
前記潤滑層が、表面潤滑性を有するライナー布にて構成されて、該ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に固着されている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項5】
前記潤滑層が、表面潤滑性を有するライナー布にて構成されて、該ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に固着されていると共に、該ライナー布の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方側の端部が、該内側ゴム部の周方向両端部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成された前記ゴム凸部に固着されている請求項3に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項6】
前記ライナー布が、前記内側ゴム部の内周面に対して、加硫接着により固着されている請求項4又は請求項5に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項7】
前記外側ゴム部の厚さに対する前記内側ゴム部の予圧縮前の厚さの比率が0.1〜0.5の範囲内の値とされている請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項8】
前記仕切部材が、前記分割ブラケットから軸方向外方に突出し、且つ前記内側ゴム部が、該仕切部材の内周面の全面を覆う状態で、該仕切部材の内側に配置されている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項9】
前記分割ブラケットが、前記分割ゴム弾性体の外周面に対して、加硫接着により固着されると共に、前記仕切部材が、該分割ゴム弾性体の前記外側ゴム部の内周面と前記内側ゴム部の外周面とに対して加硫接着されて、前記分割構造体が、それら分割ゴム弾性体と分割ブラケットと仕切部材とからなる一体加硫成形品にて構成されている請求項1乃至請求項8のうちの何れか1項に記載の防振ブッシュ付きスタビライザバー。
【請求項10】
軸方向に延びる内孔を備えた筒状ゴム弾性体を二分割した分割ゴム弾性体の外周面に、車体に取り付けられる剛性のブラケットを二分割した分割ブラケットが固着されてなる分割構造体の一対が、該分割ゴム弾性体同士の間でスタビライザバーを挟んで、相互に組み付けられた状態において、該スタビライザバーに固定されてなる防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法であって、
前記分割ゴム弾性体の径方向中間部に、該分割ゴム弾性体を径方向中間部よりも内側の部分と外側の部分とに仕切る、半割円筒状を呈する剛性の仕切部材が埋設されて、該分割ゴム弾性体が、該仕切部材よりも内側の部分からなる内側ゴム部と、該仕切部材よりも外側の部分からなる外側ゴム部とにて構成されると共に、該内側ゴム部の内側に、潤滑層が、該内側ゴム部の内周面を被覆するように形成され、更に、該仕切部材に、該分割ゴム弾性体から外方に突出する連結部が一体的に設けられてなるものを、前記分割構造体として、一対準備する工程と、
かかる一対の分割構造体の前記分割ゴム弾性体同士の間に、前記スタビライザバーを挟み、且つ該分割ゴム弾性体の前記潤滑層を該スタビライザバーの外周面に接触させた状態で、該一対の分割構造体を相互に組み付ける工程と、
相互に組み付けられた前記一対の分割構造体のそれぞれにおける前記仕切部材を径方向内方に押圧して、それら各分割構造体の前記内側ゴム部を前記スタビライザバーと該仕切部材との間で径方向に圧縮することにより、該内側ゴム部に予圧縮を加えると共に、該予圧縮の大きさを、該スタビライザバーに入力される捩り力が、予め設定された値を超えてから、初めて、該内側ゴム部と該スタビライザバーとの間に周方向の滑りを生じさせる大きさとした状態で、該一対の分割構造体のそれぞれの仕切部材を、前記連結部同士において相互に連結することにより、該一対の分割構造体を該スタビライザバーに固定する工程と、
を含むことを特徴とする防振ブッシュ付きスタビライザバーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図10】
【図11】
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【公開番号】特開2011−121530(P2011−121530A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282390(P2009−282390)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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