説明

防振ブッシュ及び防振ブッシュの製造方法

【課題】外筒の軸方向過大変位を規制するとともに組み立てが容易な防振ブッシュ及び防振ブッシュの製造方法を提供する。
【解決手段】ストッパ25a,26が、シャフト21の両端部に一体にあるいは移動不能に設けられ、ストッパ25a,26の少なくとも一方が、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部26c,26cを有し、外筒22に周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部22d,22dを有し、シャフト21の外方突出部26c,26cの外径が、外筒22の内方突出部22d,22dの内径よりも大きく形成され、防振ブッシュ11の車体側への取付状態では、外方突出部26c,26cと内方突出部22d,22dとは軸方向に重なるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュ及び防振ブッシュの製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の防振ブッシュとして、ロアアームが取付けられる取付筒部の過大変位を規制するストッパが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の図1によれば、防振ブッシュ10は、車体側に両端部が取付けられる芯部材12と、この芯部材12の中央部を囲む取付筒部6と、これらの芯部材12及び取付筒部6のそれぞれの間に設けられて芯部材12と取付筒部6とを結合する防振基体14と、芯部材12の一端に一体成形されたストッパフランジ26とで取付筒部6を軸方向に挟み込むように芯部材12の他端に圧入されたストッパリング18とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−294084公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
芯部材12の外径とストッパリング18の内径とに寸法公差の関係で圧入代が小さい場合に、ストッパリング18に取付筒部6から軸方向の過大入力が加わると、ストッパリング18が芯部材12に対して相対移動して過大変位を抑制できなくなる恐れがある。
【0006】
そこで、例えば、芯部材12の外径とストッパリング18の内径との圧入代を大きくして、取付筒部6からストッパリング18に過大入力が作用してもストッパリング18が移動しにくい構造にすることは可能であるが、芯部材12へのストッパリング18を圧入する、即ち、防振ブッシュ10を組み立てることが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、外筒の軸方向過大変位を規制するとともに組み立てが容易な防振ブッシュ及び防振ブッシュの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、両端部に車体側へ取付けられる取付部を有するシャフトと、このシャフトの外周部に取付けられる弾性部材と、この弾性部材の外周部に取付けられる外筒とを有し、シャフトに対する外筒の軸方向変位を規制するためにシャフトの両端部にストッパが設けられた防振ブッシュにおいて、ストッパが、シャフトの両端部に一体にあるいは移動不能に設けられ、これらのストッパのうちの少なくとも一方が、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部を有し、外筒に周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部を有し、シャフトの外方突出部の外径が、外筒の内方突出部の内径よりも大きく形成されるとともに外筒の内方突出部を除く部分の内径よりも小さく形成され、シャフトの外方突出部を除く部分の外径が、外筒の内方突出部の内径よりも小さく形成され、防振ブッシュの車体側への取付状態では、外方突出部と内方突出部とは軸方向に重なるように配置されることを特徴とする。
【0009】
防振ブッシュを組み立てるには、まず、外筒の内方突出部がシャフトの外方突出部に軸方向に重ならないようにして、外筒をシャフトに嵌合し、次に、外筒をシャフトに対して相対回動させて外筒の内方突出部がシャフトの外方突出部と軸方向に重なるようにし、そして、この状態でシャフトと外筒とに弾性部材を取付ける。これで防振ブッシュが完成する。
【0010】
完成した防振ブッシュは、シャフトの取付部で車体側に取付けられる。
防振ブッシュが車体側に取付けられた状態で、外筒に軸方向に過大入力が加わっても、外筒の内方突出部がシャフトの外方突出部に当たり、外筒の軸方向の変位が規制される。
【0011】
請求項2に係る発明は、外筒の内方突出部の半径方向内側で且つシャフトの外周部に環状の溝部が形成され、この溝部の内面にも弾性部材が取付けられることを特徴とする。
弾性部材の溝部に対応する位置の半径方向の厚さが溝部以外の部分の厚さと同様に確保される。
【0012】
請求項3に係る発明は、防振ブッシュが、外筒に取付けられるとともに車輪を支持するアーム部材の車幅方向内端に設けられることを特徴とする。
外筒に取付けられたアーム部材の変位が防振ブッシュによって規制される。
【0013】
請求項4に係る発明は、両端部に車体側へ取付けられる取付部を有するシャフトと、このシャフトの外周部に取付けられる弾性部材と、この弾性部材の外周部に取付けられる外筒とを有し、シャフトに対する外筒の軸方向変位を規制するためにシャフトの両端部にストッパが設けられた防振ブッシュの製造方法であって、両端部に一体にあるいは移動不能に設けられたストッパを備えるとともに、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部をストッパのうちの少なくとも一方に有するシャフト、及び周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部を有する外筒を準備する工程と、外筒の内方突出部とシャフトの外方突出部とが軸方向に重ならない状態で外筒をシャフトに嵌合させる工程と、外筒の内方突出部とシャフトの外方突出部とが軸方向に重なるように外筒とシャフトとを相対回動させる工程と、シャフトと外筒との間をゴムで加硫接着する工程とを含む。
【0014】
外筒をシャフトに嵌合させる工程では、外筒の内方突出部がシャフトの外方突出部に規制されずに外筒がシャフトに組み付けられる。
外筒の内方突出部とシャフトの外方突出部とが軸方向に重なると、外筒の変位がシャフトの外方突出部によって規制される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ストッパが、シャフトの両端部に一体にあるいは移動不能に設けられ、これらのストッパのうちの少なくとも一方が、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部を有し、外筒に周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部を有し、シャフトの外方突出部の外径が、外筒の内方突出部の内径よりも大きく形成されるとともに外筒の内方突出部を除く部分の内径よりも小さく形成され、シャフトの外方突出部を除く部分の外径が、外筒の内方突出部の内径よりも小さく形成され、防振ブッシュの車体側への取付状態では、外方突出部と内方突出部とは軸方向に重なるように配置されるので、外筒に軸方向に過大入力が作用したときに、外筒の内方突出部がストッパの外方突出部に当たり、ストッパで外筒の軸方向変位を規制することができ、外筒の軸方向の過大変位を防止することができる。
【0016】
また、外筒をシャフトに組付ける際に、ストッパの外方突出部と外筒の内方突出部とが軸方向に重ならないようにシャフトと外筒とを軸回りに相対回動させることで、シャフトの外方突出部及び周方向の外方突出部を除く部分に対して、外筒の周方向の内方突出部を除く部分及び内方突出部を干渉なくスムーズに移動させて、シャフトに外筒を容易に組み付けることができる。
従って、シャフト両端部のストッパを予めシャフトに一体に設けるあるいは移動不能に取付けたとしても、防振ブッシュを容易に組み立てることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、外筒の内方突出部の半径方向内側で且つシャフトの外周部に環状の溝部が形成され、この溝部の内面にも弾性部材が取付けられるので、外筒の内方突出部の半径方向内側において弾性部材の厚さを確保することができるため、外筒がシャフトに対して回動しながら軸方向に変位する際にも防振効果を充分に発揮することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、防振ブッシュが、外筒に取付けられるとともに車輪を支持するアーム部材の車幅方向内端に設けられるので、防振ブッシュでアーム部材の変位を規制することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、両端部に一体にあるいは移動不能に設けられたストッパを備えるとともに、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部をストッパのうちの少なくとも一方に有するシャフト、及び周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部を有する外筒とを準備する工程と、外筒の内方突出部とシャフトの外方突出部とが軸方向に重ならない状態で、外筒をシャフトに嵌合させる工程と、外筒の内方突出部とシャフトの外方突出部とが軸方向に重なるように外筒とシャフトとを相対回動させる工程と、シャフトと外筒との間をゴムで加硫接着する工程とを含むので、上記製造方法により、従来のようなシャフトに対するストッパの移動の防止、外筒のシャフトへの組付性向上、及び外筒の軸方向変位の規制を同時に成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る防振ブッシュ(実施例1)の車両での使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る防振ブッシュ(実施例1)の説明図である。
【図3】本発明に係る防振ブッシュ(実施例1)のシャフトの説明図である。
【図4】本発明に係る防振ブッシュ(実施例1)の外筒の説明図である。
【図5】本発明に係る防振ブッシュ(実施例1)の組立要領を示す作用図である。
【図6】本発明に係る防振ブッシュ(実施例2)の断面図である。
【図7】本発明に係る防振ブッシュ(実施例3)の断面図である。
【図8】本発明に係る防振ブッシュ(実施例4)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1を説明する。
図1に示すように、車体側に前後一対の防振ブッシュ11,11及び防振ブッシュ12,12が取付けられ、防振ブッシュ11,11にサスペンションを構成するアッパアーム13が上下スイング可能に取付けられ、防振ブッシュ12,12にサスペンションを構成するロアアーム14が上下スイング可能に取付けられ、これらのアッパアーム13及びロアアーム14のそれぞれの先端部にナックル16が取付けられ、このナックル16の車軸16aに車輪17が回転可能に取付けられる。
【0023】
防振ブッシュ11,12は、アッパアーム13及びロアアーム14を弾性的に支持して車輪17から車体側へ振動が伝わるのを防止するとともに、防振ブッシュ11,12の軸方向でのアッパアーム13及びロアアーム14の前後方向変位を規制する部品であり、防振ブッシュ11と防振ブッシュ12とは、基本構造が同一であり、以下では防振ブッシュ11について説明する。
【0024】
図2(a)は防振ブッシュ11の縦断面図であり、防振ブッシュ11は、車体側に取付けられるシャフト21と、このシャフト21の半径方向外側を囲むように配置されるとともにアッパアーム13(図1参照)の車幅方向内端が取付けられる外筒22と、これらのシャフト21及び外筒22のそれぞれに加硫接着されたゴム23とからなる。
【0025】
シャフト21は、中央部に設けられた円柱部25Aと、この円柱部25Aの両端部に設けられた第1ストッパ25a及び第2ストッパ26と、車体側に取付けられるように第1ストッパ25a及び第2ストッパ26からそれぞれ軸方向に延ばされた矩形断面の車体側取付部25b,27とからなる一体成形品である。
【0026】
第1ストッパ25aは円形で板状、第2ストッパ26は楕円、長円、又はこれらの楕円、長円に近い形状(図2(b)参照)で板状の部分である。
車体側取付部25b,27は、車体側に取付ける際にボルトを通すボルト挿通穴25e,27aが開けられている。
【0027】
外筒22は、円筒部22Aと、この円筒部22Aの一端に且つ第1ストッパ25a側の端部に半径方向外側に凸となるように形成された環状凸部22aと、円筒部22Aの他端に且つ第2ストッパ26側の端部に半径方向内側及び半径方向外側に屈曲するように形成された環状屈曲部22bとからなる。
【0028】
アッパアーム13(図1参照)に取付けられた外筒22が軸方向に変位したときには、環状凸部22aの変位が第1ストッパ25aで規制され、環状屈曲部22bの変位が第2ストッパ26で規制される。
【0029】
図2(b)は図2(a)のb矢視図であり、シャフト21の第2ストッパ26は、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部26c,26cを有し、外筒22は、環状屈曲部22bに、周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部22d,22dを有する。
外方突出部26c、26cの外方へ最も突出する部分と、内方突出部22d,22dの内方へ最も突出する部分は、共に鉛直方向に延びる直線30上に位置する。
【0030】
図3(a)はシャフト21の側面図であり、シャフト21は、鍛造又は鋳造によって、円柱部25A、第1ストッパ25a、第2ストッパ26、車体側取付部25b,27が一体成形されている。
【0031】
図3(b)は図3(a)のb矢視図であり、第2ストッパ26は、楕円又は長円又はこれらの形状に近い縦長の部分であり、側部を形成するストッパ側部26e,26eと、これらのストッパ側部26e,26eよりも鉛直方向で半径方向外側に突出する外方突出部26c,26cとを備える。
【0032】
ここで、ストッパ側部26e,26e間の距離(楕円の短径に相当)をDS1、外方突出部26c,26cの各頂点間の距離(楕円の長径に相当)をDS2とすると、DS1<DS2である。
【0033】
図4(a)は外筒22の側面図、図4(b)は図4(a)のb矢視図である。
図4(a)に示すように、環状屈曲部22bは、外筒22の全周に形成されている。
図4(b)に示すように、環状屈曲部22bは、楕円又は長円形状に近い横長の穴部22eを有する。
【0034】
穴部22eは、側部を形成する穴側部22g,22gと、これらの穴側部22g,22gよりも半径方向内側に突出するとともに鉛直方向に配置された内方突出部22d,22dとを備える。
【0035】
ここで、穴側部22g,22g間の距離(楕円の長径に相当)をDH1、内方突出部22d,22dのそれぞれの最も低い部分の間の距離(楕円の短径に相当)をDH2とすると、DH1>DH2である。
【0036】
また、図3(b)及び図4(b)において、第2ストッパ26の外方突出部26c,26c間の距離DS2は、外筒22の内方突出部22d,22d間の距離DH2より大きい(DS2>DH2)。
【0037】
更に、第2ストッパ26の外方突出部26c,26cの距離DS2は、外筒22の穴側部22g,22g間の距離DH1より小さく(DS2<DH1)、第2ストッパ26のストッパ側部26e,26e間の距離DS1は、外筒22の内方突出部22d,22d間の距離DH2より小さい(DS1<DH2)。
以上より、第2ストッパ26が外筒22の穴部22eに挿入されるように、シャフト21に外筒22を嵌合させることが可能になる。
【0038】
図4(c)は図4(a)のc−c線断面図であり、外筒22の円筒部22Aの内面22fに対して、穴側部22g、22gはわずかに半径方向内側に突出し、内方突出部22d,22dは穴側部22g,22gよりも更に半径方向内側に突出する。
【0039】
以上に述べた防振ブッシュ11の組立要領を次に説明する。
図5(a)に示すように、シャフト21における第2ストッパ26(ここでは、輪郭を太線で示している。(図5(b),(c)も同じ。))の外方突出部26c、26cを上下に配置し、外筒22における穴部22eの穴側部22g,22gを上下に配置する。
この状態では、DS1<DH2、DS2<DH1であり、第2ストッパ26の外形寸法よりも穴部22eの内形寸法が大きい。
【0040】
図5(b)に示すように、外筒22の穴部22eにシャフト21の第2ストッパ26を挿入・通過させてシャフト21に外筒22を嵌合させる。このときの穴部22eと第2ストッパ26との水平方向の隙間はCH(片側)、鉛直方向の隙間はCV(片側)である。
【0041】
この状態から図5(c)に示すように、外筒22を矢印で示すように軸回りに90°回転させて、外筒22の内方突出部22d,22dを上下に配置する。
この結果、内方突出部22d,22dが、第2ストッパ26の外方突出部26c,26cに軸方向に重なる。図中の着色した部分が内方突出部22d,22dと外方突出部26c,26cとの軸方向の重なり部35,35である。
この状態で、シャフト21と外筒22との間をゴムで加硫接着する。これで、防振ブッシュ11の組立が完了する。
【0042】
上記したように、シャフト21の外方突出部26c,26cと外筒22の内方突出部22d,22dとが軸方向に重なるから、外筒22がシャフト21に対して軸方向に変位するときにシャフト21の第2ストッパ26が外筒22の軸方向の変位を規制することができ、外筒22の過大変位を防止することができる。
【0043】
以上の図3〜図5で説明した防振ブッシュ11の製造方法を以下に順に記載する。
1.図3において、両端部に一体にあるいは移動不能に設けられたストッパ25a,26を備えるとともに、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部26c,26cをストッパ25a,26のうちの少なくとも一方のストッパ26に有するシャフト21を準備し、図4において、周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部22d,22dを有する外筒22を準備する。
【0044】
2.図5(a)において、外筒22の内方突出部22d,22dとシャフト21の外方突出部26c,26cとが軸方向に重ならない状態にする。
3.図5(b)において、外筒22をシャフト21に嵌合させる。
【0045】
4.図5(c)において、外筒22の内方突出部22d,22dとシャフト21の外方突出部26c,26cとが軸方向に重なるように外筒22とシャフト21とを相対回動させる。
【0046】
5.シャフト21と外筒22との間をゴム(硬化後はゴム23(図2参照))で加硫接着する。
これで、防振ブッシュ11(図2(a),(b)参照)の製造が完了する。
【実施例2】
【0047】
次に本発明の実施例2を説明する。図2に示した実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図6に示すように、防振ブッシュ40は、車体側に取付けられるシャフト41と、このシャフト41の半径方向外側を囲むように配置された外筒22と、これらのシャフト41及び外筒22のそれぞれに加硫接着されたゴム43とからなる。
【0048】
シャフト41は、中央部に設けられた円柱部45aと、この円柱部45aの両端部に設けられた第1ストッパ25a及び第2ストッパ26と、車体側取付部25b,27とからなる一体成形品である。
円柱部45aは、端部に環状のくびれ部45bが形成されている。
【0049】
ゴム43は、円筒状の筒部43aと、この筒部43aの端部に筒部43aよりも小径にされた端部筒部43bとからなり、これらの筒部43a、端部筒部43bは共に、くびれ部45bを含む円柱部45aに臨む部分全体、及び第1ストッパ25a、第2ストッパ26に接着されている。
【0050】
このように、シャフト41の円柱部45aにくびれ部45bを設けることで、外筒22の環状屈曲部22bの内側においてもゴム43の厚さを他の部分と同様に厚く確保することができる。
【実施例3】
【0051】
次に本発明の実施例3を説明する。図2に示した実施例1、図6に示した実施例2と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図7に示すように、防振ブッシュ50は、車体側に取付けられるシャフト51と、このシャフト51の半径方向外側を囲むように配置された外筒52と、これらのシャフト51及び外筒52のそれぞれに加硫接着されたゴム53とからなる。
【0052】
シャフト51は、中央部に設けられた円柱部55aと、この円柱部55aの両端部に設けられた第1ストッパ25a及び第2ストッパ26と、車体側取付部25b,27とからなる一体成形品である。
円柱部55aは、両端に環状のくびれ部55b,45bが形成されている。
【0053】
外筒52は、円筒部52Aと、この円筒部52Aの両端部に半径方向内側及び半径方向外側に屈曲するように形成された環状屈曲部22b,22bとからなる。
ゴム53は、円筒状の筒部53aと、この筒部53aの両端部に設けられるとともに筒部53aよりも小径にされた端部筒部53b,53bとからなり、これらの筒部53a、端部筒部53b,53bは共に、くびれ部45b,55bを含む円柱部55a及び外筒52に臨む部分全体、及び第1ストッパ25a、第2ストッパ26に接着されている。
【0054】
このように、シャフト51の円柱部55aにくびれ部45b,55bを設けることで、外筒52の環状屈曲部22b,22bの内側においてもゴム53の厚さを他の部分と同様に厚く確保することができる。
【実施例4】
【0055】
次に本発明の実施例4を説明する。図2に示した実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図8(a)に示すように、防振ブッシュ60は、車体側に取付けられるシャフト61と、このシャフト61の半径方向外側を囲むように配置されるとともにアッパアーム13(図1参照)の車幅方向内端が取付けられる外筒22と、これらのシャフト61及び外筒22のそれぞれに加硫接着されたゴム23とからなる。
【0056】
シャフト61は、一端部に第1ストッパ65aが設けられたシャフト本体65と、このシャフト本体65の他端部に嵌合された第2ストッパ66と、この第2ストッパ66の抜け止めをするとともに車体側に取付けられるようにシャフト本体65の他端部に取付けられた車体側取付部67とからなる。
【0057】
シャフト本体65は、円柱部65Aと、この円柱部65Aの一端部に一体成形された円板状の第1ストッパ65aと、車体側に取付けられるように第1ストッパ65aから軸方向に一体に延ばされた矩形断面の車体側取付部65bと、第2ストッパ66と嵌合する小径部65cと、車体側取付部67がねじ結合されるめねじ65dとからなる。
【0058】
車体側取付部65b,67は、車体側に取付ける際にボルトを通すボルト挿通穴65e,67aが開けられている。
第2ストッパ66は、シャフト本体65の小径部65cに嵌合する嵌合穴66aが開けられている。
【0059】
シャフト本体65の小径部65cと第2ストッパ66の嵌合穴66aとは、例えば、しまりばめ又は中間ばめのはめあいが望ましい。
シャフト本体65と第2ストッパ66とは、図示せぬ回り止め構造(例えば、キー、ピン)にて回り止めされている。
【0060】
車体側取付部67は、シャフト本体65のめねじ65dにねじ結合するおねじ67bと、このおねじ67bの端部に一体成形された円板状の頭部67cと、この頭部67cから軸方向に一体に延びる矩形断面の取付部本体67dとからなり、取付部本体67dにボルト挿通穴67aが設けられている。
【0061】
アッパアーム13(図1参照)に取付けられた外筒22が軸方向に変位したときには、環状凸部22aの変位が第1ストッパ65aで規制され、環状屈曲部22bの変位が第2ストッパ66で規制される。
【0062】
図8(b)は図8(a)のb矢視図であり、シャフト61の第2ストッパ66は、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部66c,66cを有し、外筒22は、環状屈曲部22bに、周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部22d,22dを有する。
外方突出部66c、66cの外方へ最も突出する部分と、内方突出部22d,22dの内方へ最も突出する部分は、共に鉛直方向に延びる直線30上に位置する。
【0063】
上記の図2(a),(b)、図5(a)〜(c)に示したのは、両端部に車体側へ取付けられる取付部としての車体側取付部25b,27を有するシャフト21と、このシャフト21の外周部に取付けられる弾性部材としてのゴム23と、このゴム23の外周部に取付けられる外筒22とを有し、シャフト21に対する外筒22の軸方向変位を規制するためにシャフト21の両端部にストッパ25a,26が設けられた防振ブッシュ11である。
【0064】
この防振ブッシュ11は、ストッパ25a,26が、シャフト21の両端部に一体にあるいは移動不能に設けられ、これらのストッパ25a,26のうちの少なくとも一方が、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部26c,26cを有し、外筒22に周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部22d,22dを有し、シャフト21の外方突出部26c,26cの外径としての距離DS2が、外筒22の内方突出部22d,22dの内径としての距離DH2よりも大きく形成されるとともに外筒22の内方突出部22d,22dを除く部分(即ち、穴側部22g,22g)の内径としての距離DH1よりも小さく形成され、シャフト21の外方突出部26c,26cを除く部分(即ち、ストッパ側部26e,26e)の外径としての距離DS1が、外筒22の内方突出部22d,22dの内径としての距離DH2よりも小さく形成され、防振ブッシュ11の車体側への取付状態では、外方突出部26c,26cと内方突出部22d,22dとは軸方向に重なるように配置されることを特徴とする。
【0065】
上記構成により、外筒22に軸方向に過大入力が作用したときに、外筒22の内方突出部22d,22dがストッパ26の外方突出部26c,26cに当たり、ストッパ26で外筒22の軸方向変位を規制することができ、外筒22の軸方向の過大変位を防止することができる。
【0066】
また、外筒22をシャフト21に組付ける際に、ストッパ26の外方突出部26c,26cと外筒22の内方突出部22d,22dとが軸方向に重ならないようにシャフト21と外筒22とを軸回りに相対回動させることで、シャフト21の外方突出部26c,26c及び周方向の外方突出部26c,26c(ストッパ側部26e,26e)を除く部分に対して、外筒22の周方向の内方突出部22d,22dを除く部分(穴側部22g,22g)及び内方突出部22d,22dを干渉なくスムーズに移動・通過させて、シャフト21に外筒22を容易に組み付けることができる。
【0067】
従って、シャフト21の両端部のストッパ25a,26を予めシャフト21に一体に設けるあるいは移動不能に取付けたとしても、防振ブッシュ11を容易に組み立てることができる。
【0068】
更に、ストッパ25a,26を、シャフト21の両端部に一体に設け、好ましくは、シャフト21の全体を一体成形することで、従来のような分割式防振ブッシュに比べて部品数及び組立工数を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0069】
上記の図6、図7に示したように、外筒22,52の内方突出部22d,22dの半径方向内側で且つシャフト41,51の外周部に環状の溝部としてのくびれ部45b,55bが形成され、これらのくびれ部45b,55bの内面にも弾性部材としてのゴム43,53が取付けられるので、外筒22,52の内方突出部26c,26cの半径方向内側においてゴム43,53の厚さを確保することができるため、外筒22,52がシャフト41,51に対して回動しながら軸方向に変位する際にも防振効果を充分に発揮することができる。
【0070】
上記の図1に示したように、防振ブッシュ11,12が、外筒22(図2(a),(b)参照)に取付けられるとともに車輪17を支持するアーム部材としてのアッパアーム13、ロアアーム14の車幅方向内端に設けられるので、防振ブッシュ11,12でアッパアーム13、ロアアーム14の変位を規制することができる。
【0071】
上記の図3(a),(b)、図4(a),(b)、図5(a)〜(c)に示したように、防振ブッシュ11の製造方法は、まず、両端部に一体にあるいは移動不能に設けられたストッパ25a,26を備えるとともに、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部26c,26cをストッパ25a,26のうちの少なくとも一方に有するシャフト21、及び周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部22d,22dを有する外筒22とを準備する。
【0072】
次に、外筒22の内方突出部22d,22dとシャフト21の外方突出部26c,26cとが軸方向に重ならない状態で、外筒22をシャフト21に嵌合させ、外筒22の内方突出部22d,22dとシャフト21の外方突出部26c,26cとが軸方向に重なるように外筒22とシャフト21とを相対回動させる。
そして、シャフト21と外筒22との間をゴム23で加硫接着する。
【0073】
上記製造方法により、シャフト21に対するストッパ25a,26の移動の防止、外筒22のシャフト21への組付性向上、及び外筒22の軸方向変位の規制を同時に成立させることができる。
【0074】
本発明の防振ブッシュ及び防振ブッシュの製造方法は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0075】
11,12,40,50,60…防振ブッシュ、13,14…アーム部材(アッパアーム、ロアアーム)、17…車輪、21,41,51,61…シャフト、22,52…外筒、22d…内方突出部、23,43,53…弾性部材(ゴム)、25a,26,65a,66…ストッパ(第1ストッパ、第2ストッパ)、25b,27…取付部(車体側取付部)、26c…外方突出部、45b,55b…溝部(くびれ部)、DH1…外筒の内方突出部を除く部分の内径(距離)、DH2…外筒の内方突出部の内径(距離)、DS1…シャフトの外方突出部を除く部分の外径(距離)、DS2…シャフトの外方突出部の外径(距離)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に車体側へ取付けられる取付部を有するシャフトと、このシャフトの外周部に取付けられる弾性部材と、この弾性部材の外周部に取付けられる外筒とを有し、前記シャフトに対する前記外筒の軸方向変位を規制するために前記シャフトの両端部にストッパが設けられた防振ブッシュにおいて、
前記ストッパは、前記シャフトの両端部に一体にあるいは移動不能に設けられ、
これらのストッパのうちの少なくとも一方は、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部を有し、
前記外筒に周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部を有し、
前記シャフトの前記外方突出部の外径は、前記外筒の前記内方突出部の内径よりも大きく形成されるとともに前記外筒の前記内方突出部を除く部分の内径よりも小さく形成され、
前記シャフトの前記外方突出部を除く部分の外径は、前記外筒の前記内方突出部の内径よりも小さく形成され、
前記防振ブッシュの車体側への取付状態では、前記外方突出部と前記内方突出部とは軸方向に重なるように配置されることを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項2】
前記外筒の前記内方突出部の半径方向内側で且つ前記シャフトの外周部に環状の溝部が形成され、この溝部の内面にも前記弾性部材が取付けられることを特徴とする請求項1記載の防振ブッシュ。
【請求項3】
前記防振ブッシュは、前記外筒に取付けられるとともに車輪を支持するアーム部材の車幅方向内端に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の防振ブッシュ。
【請求項4】
両端部に車体側へ取付けられる取付部を有するシャフトと、このシャフトの外周部に取付けられる弾性部材と、この弾性部材の外周部に取付けられる外筒とを有し、前記シャフトに対する前記外筒の軸方向変位を規制するために前記シャフトの両端部にストッパが設けられた防振ブッシュの製造方法であって、
両端部に一体にあるいは移動不能に設けられたストッパを備えるとともに、周方向の他の部分よりも半径方向外側に突出する外方突出部を前記ストッパのうちの少なくとも一方に有する前記シャフト、及び周方向の他の部分よりも半径方向内側に突出する内方突出部を有する前記外筒とを準備する工程と、
前記外筒の内方突出部と前記シャフトの外方突出部とが軸方向に重ならない状態で前記外筒を前記シャフトに嵌合させる工程と、
前記外筒の内方突出部と前記シャフトの外方突出部とが軸方向に重なるように前記外筒と前記シャフトとを相対回動させる工程と、
前記シャフトと前記外筒との間をゴムで加硫接着する工程とを含む防振ブッシュの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−144891(P2011−144891A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6934(P2010−6934)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】