説明

難燃性熱硬化樹脂組成物、それを用いたプリプレグ及び電気配線板用積層板

【課題】ハロゲンおよびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下にて難燃性UL94V−0を達成する材料を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を主成分とする熱硬化性樹脂及び(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物を、(A)、(B)及び(C)の総量100重量部に対して、(A)エポキシ樹脂5〜80重量部、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂5〜80重量部、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物5〜80重量部と、さらに(D)一般式(1)又は一般式(2)で表される反応型リン化合物を1〜50重量部含有し、使用する材料の総量に対して、ハロゲン原子およびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下である熱硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線板用絶縁材料として有用な熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び金属張り積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の種類は、拡大の一途を辿っており、コンピューター関連ばかりでなく、自動制御機器、通信機器、事務用機器なども、小型、軽量化が望まれている。これらの機器に使用されている多層プリント配線板は、4〜10層が中心であり、高密度実装に対応するために、ファインパターン化はもちろん薄型化が図られている。
【0003】
このプリント配線板に要求される項目には、吸湿耐熱性、信頼性等が挙げられる。したがって、プリント配線板に用いられる樹脂にも高Tg、高耐熱性、低吸水性が必要である。この要求に対応するために、エポキシ樹脂の改良や、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂等が使用されている。
【0004】
また、これらの電気絶縁材料は、ガラス基材エポキシ樹脂電気配線板用絶縁材料に代表される様に安全性の面から高い難燃性が求められハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物またはリン系難燃剤等を併用して難燃化してきた。
【0005】
しかしながら、近年、環境汚染や毒性の面から使用物質規制の動きが高まってきており、なかでもダイオキシン等の有機ハロゲン物質の毒性、発がん性が問題となっており、ハロゲン含有物質の低減、削減が強く求められている。
【0006】
また、アンチモンの発がん性の問題から、アンチモン化合物についても低減、削減の要求がたかまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ハロゲンおよびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下にて難燃性UL94V−0を達成する材料を提供するものである。
【0008】
しかしながら、難燃剤として、リン酸エステル等の添加型のリン化合物を添加するとガラス転移点(以下、Tgと称す)の大幅な低下や耐熱性が低下する問題があり、本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ノンハロゲンかつノンアンチモンであって、耐熱性に優れる配線板用に有用な熱硬化性樹脂並びにこれを用いたプリプレグ及び金属張り積層板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次のものに関する。
1. (A)エポキシ樹脂、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を主成分とする熱硬化性樹脂及び(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物を、(A)、(B)及び(C)の総量100重量部に対して、(A)エポキシ樹脂5〜80重量部、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂5〜80重量部、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物5〜80重量部と、さらに(D)一般式(1)又は一般式(2)で表される反応型リン化合物を1〜50重量部含有し、使用する材料の総量に対して、ハロゲン原子およびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

(ただし、式中、R1〜R8は、水素、または、炭素数1〜10の一価脂肪族もしくは芳香族置換基でありR1〜R8は同一でも異なってもよい)
【0013】
2.(A)エポキシ樹脂10〜50重量部、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂10〜70重量部、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物10〜50重量部を含有する項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
3.項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸乾燥してなるプリプレグ。
4.基材が織布または不織布である項3に記載のプリプレグ。
5.項3又は4記載のプリプレグ又はこれを積み重ねた積層体の片面または両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる金属張り積層板。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、 Tg、耐熱性が著しく低下することなく、ハロゲンおよびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下にて難燃性UL94V−0を達成する材料を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂5〜80重量部、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂5〜80重量部であり、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物が5〜80重量部であって、これらの総量が100重量部になるように含有することが好ましい。
【0016】
(A)エポキシ樹脂が5〜80重量部であることが好ましい理由は、5重量部未満ではエポキシ樹脂の特長である高い接着性の発現が不十分になる傾向があり、80重量部を超えると相対的に他の成分が減少し、硬化不十分となる傾向があり、耐熱性やTgが低下する傾向がある。接着性や耐熱性やTgの点からエポキシ樹脂は、5〜80重量部が好ましく、さらに、難燃性等のバランスから10〜50重量部が特に好ましい。
【0017】
(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂が5〜80重量部であることが好ましい理由は、5重量部未満ではジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂の特長である高い難燃性や高い耐熱性の発現が低下する傾向があり、80重量部を超えると前記と同様に硬化不十分になる傾向があり、耐熱性が低下する傾向がある。そのため、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂は、難燃性や耐熱性の点から5〜80重量部が好ましく、さらに、接着性等のバランスから10〜70重量部が特に好ましい。
【0018】
(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物が5〜80重量部であることが好ましい理由は、5重量部未満ではフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物の特長である高い難燃性の発現が低下する傾向があり、80重量部を超えると前記したのと同様に硬化不十分となる傾向があり、耐熱性が低下する傾向がある、そのため、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物は、難燃性や耐熱性の点から5〜80重量部が好ましく、さらに、接着性、Tg等のバランスから10〜50重量部が特に好ましい。
【0019】
(D)反応型リン化合物は前記の(A)、(B)及び(C)の総量100重量部に対して1〜50重量部使用されるが、その理由は、1重量部未満では難燃性向上効果が低く、50重量部を超えるとTgおよび耐熱性が低下するためであり、接着性および難燃性等の理由から5〜30重量部が特に好ましい。
【0020】
本発明に使用するエポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、ビスフェノールAノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、環状脂肪族エポキシ、複素環式エポキシ、ジグリシジルエステル系エポキシ等があげられ特に制限がなく、単独または数種類加えるなど使用目的にあわせて選択可能である。
【0021】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応により硬化する樹脂であれば特に限定されるものではなく、フェノール性水酸基を有する化合物、ホルマリン、1級アミンから下記の反応式に従って合成される。
【0022】
【化3】

(式中のR1はアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基またはアルキル基もしくはアルコキシル基で置換されたフェニル基である。)
【0023】
フェノール性水酸基を有する化合物として、多官能フェノール、 ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物、フェノール樹脂があげられる。多官能フェノールとしてはカテコール、ヒドロキノン、レゾルシノールがあげられる。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびその位置異性体、ビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールAがあげられる。またフェノール樹脂としてはレゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ベンゾグアナミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエン等があげられる。
【0024】
1級アミンとしては、具体的にメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、置換アニリン等があげられる。
【0025】
本発明において、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、フェノール性水酸基を有する化合物と1級アミンとの混合物を70℃以上に加熱したアルデヒド中に添加して、70〜110℃、好ましくは90〜100℃で20〜120分反応させ、その後120℃以下の温度で減圧乾燥することにより、合成することができる。
【0026】
本発明のフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との重縮合物を得るために使用するためのフェノール類としては、フェノ−ルまたはビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF、ビスフェノ−ルSなどの多価フェノール類や、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、などのアルキルフェノール類、アミノフェノール、フェニルフェノールなどがあげられ1種類または2種以上の併用も可能である。このましくはフェノールとビスフェノ−ルAの組合せまたは、フェノールとアルキルフェノ−ルを組合せて使用した場合にはフェノール単独を使用した場合より反応性が抑制され成形性にすぐれ、ビスフェノ−ルAやアルキルフェノ−ルを単独で使用した場合より難燃性に優れ好ましい。
【0027】
また、トリアジン環を有する化合物としてはメラミンまたはベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのグアナミン誘導体、シアヌル酸またはメチルシアヌレート、エチルシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体や、イソシアヌル酸またはメチルイソシアヌレート、エチルシアヌレートなどのイソシアヌル酸誘導体などがあげられる。好ましくは耐熱性や難燃性が良好になり低価格なメラミンが適しておりトリアジン環を有する化合物種類、使用量を目的に合わせて選定しN含有量を調整し難燃性、反応性、耐熱性の最適化が可能である。
【0028】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキシメチレン等が挙げられこれらに限定されるものではないが、取扱いの容易さから、ホルムアルデヒドが好ましく、特にホルマリン、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0029】
本発明におけるフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との重縮合物は、前記のフェノール類、トリアジン環を有する化合物、アルデヒド類の主材料を所望のN(窒素)含有量、水酸基当量になる配合にて、触媒下にて反応させることに得ることができる。本発明のフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との重縮合物としては、メチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解するものが好ましい。
【0030】
次に、フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物でを得るための代表的な方法について説明する。まず、前記したフェノール類とアルデヒド類とトリアジン環を有する化合物とを塩基性あるいは酸性触媒化で反応させる。
この時系のpHは特に限定されるものではないがトリアジン環を含む化合物の多くが塩基性溶液に容易に溶解することから、塩基性触媒化で反応させることが好ましく、さらにはアミン類の使用が好ましい。
また、各原料の反応順序も特に制限はなく、フェノール類、アルデヒド類をまず反応させてからトリアジン環を有する化合物を加えても、逆にトリァジン環を有する化合物とアルデヒド類を反応させてからフェノール類を加えても、同時にすべての原料を加えて反応させてもよい。
このとき、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比は特に限定されるものではないが0.2〜1.5で、好ましくは0.4〜0.8である。またフェノール類に対するトリアジン環を有する化合物との重量比は10〜98:90〜2で好ましくは50〜95:50〜5である。フェノール類の重量比が10%以下では樹脂化することが困難となり、98%以上では充分な難燃効果が得ることができなくなる。
【0031】
また触媒として特に限定されるものではないが、代表的なものとして水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、およびこれらの酸化物、アンモニア、1〜3級アミン類、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸ナトリウム等、そして塩酸、硫酸、スルホン酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、ルイス酸、あるいは酢酸亜鉛などの2価金属塩等がある。金属などの無機物が触媒残として残ることは好ましくないことから、塩基性の触媒としてはアミン類、酸性の触媒としては有機酸を使用することが好ましい。また反応制御の面から反応を各種溶剤の存在化で行ってもよい。
次に必要に応じて中和、水洗して塩類などの不純物を除去する。ただし触媒にアミン類を使用した場合は行わないことが好ましい。
【0032】
反応は、70〜90℃にて2〜4時間実施し、反応終了後、未反応のアルデヒド類、フェノール類、溶剤等を常圧蒸留、真空蒸留等の常法にしたがって除去する。この時、未反応のアルデヒド類とメチロール類を除去することが好ましく、未反応のアルデヒド類とメチロール基を実質的に含まない樹脂組成物を得るためには120℃以上の加熱処理を追加で実施する必要がある。このときノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい充分に加熱、蒸留することが好ましい。特に限定されるわけではないが、このとき前記したように未反応一官能性のフェノール単量体を2重量%以下にすることが好ましい。
このようにして得られたものは、フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒドの混合物または縮合物からなるフェノール樹脂組成物である。特に限定されるものではないが該混合物または縮合物中に未反応フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との重縮合物アルデヒドを含まず、メチロール基についても実質上含まないことが好ましい。
【0033】
このときの触媒としては、トリアジン環を有する化合物の溶解性が良好なことから塩基性触媒が好ましく、なかでも金属等が触媒残として残ると電気絶縁材料として好ましくないため、アミン類が好ましい。反応の順番は制限されず、主材料すべてを同時でも、2種の主材料を先に選択的に反応させることもでき、アセトン、メチルエチルケトン等の各種溶媒下の存在下で反応させることにより安定制御が可能で好ましい。反応物は、中和、水洗、加熱処理、蒸留等を常法に従って行い未反応のフェノール類、アルデヒド類、メチロール基、溶媒を除去して本発明で使用する変性フェノール樹脂を得る。
【0034】
さらに、本発明の変性フェノール樹脂を数種組み合わせたり、他のフェノール類のノボラック樹脂と併用して硬化剤として使用することにより単独では得られない成形性や難燃性、耐熱性を得ることが可能であり目的に応じ併用することも好ましい。
【0035】
反応型リン化合物としては、一般式(1)に示す有機リン化合物の例としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジクロル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジターシャリーブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどがあり、また、一般式(2)に示す有機リン化合物の例としては、10−2,5−ジヒドロキシフェニル−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシドなどがあり、変性エポキシ樹脂の固形分の100重量部に対して1〜50重量部添加することが好ましい。その理由は、1重量部未満では難燃性向上効果が少なく、50重量部を超えるとTgの低下および耐熱性の低下が著しくなるためである。
【0036】
これらの成分のほかに、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線不透過剤などが配合される。
【0037】
プリプレグを作製する際に使用する織布および不織布の基材としては、紙、コットンリンターのような天然繊維基材、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維のような有機合成繊維基材、ガラス、アスベストのような無機繊維基材が使用される。耐燃性の見地から、ガラス繊維基材が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラスなどを使用した織布や短繊維を有機バインダーで接着したガラス不織布、さらに、ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したものがある。
【0038】
これらを配合したワニスは従来と同様に、織布や不織布などの基材に含浸させてプリプレグを製造し、プリプレグを重ねあわせその両面に銅箔を構成後、加圧、加熱プレスすることにより、銅張り積層板を製造することが出来る。
【0039】
本発明は、芳香族成分が多く熱分解がしにくく、難燃性に優れたジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を使用し、さらに、硬化剤として難燃性を高めるNを含有するトリアジン環を有したフェノール樹脂組成物を使用するため、安定した状態で分子構造中にNを多量に取り込み、さらに難燃性を高める作用を有するリン源として反応型リン化合物添加物を使用し樹脂の構造内にリンを取り込むことにより、添加型のリン酸エステル等を使用した際におこるTgの低下、耐熱性の低下を起こすことなく、難燃性、および他特性バランスのすぐれたエポキシ樹脂組成物を得ることが可能である。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。以下、部は「重量部」を%は「重量%」を示すものとする。
【0041】
実施例1〜5、比較例1〜2
〔1〕ジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂の合成
(1)フェノールノボラックの合成
フェノール1.9kg、ホルマリン(37%水溶液)1.15kg、しゅう酸4gを5リットルフラスコに仕込み、還流温度で6時間反応させた。引き続き、内部を6666.1Pa以下に減圧して未反応のフェノールおよび水を除去した。得られた樹脂は軟化点89℃(環球法)、3核体以上/2核体比=89/11(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピーク面積比)であった。 以下得られた樹脂を(A1)と略記する。
(2)ジヒドロベンゾオキサジン環の導入
上記により合成したフェノールノボラック樹脂1.7kg(ヒドロキシル基16molに相当)をアニリン1.49kg(16molに相当)と80℃で5時間撹袢し、均一な混合溶液を調整した。5リットルフラスコ中に、ホルマリン1.62kgを仕込み90℃に加熱し、ここへノボラック/アニリン混合溶液を30分間かけて少しずつ添加した。添加終了後30分間、還流温度に保ち、然る後に100℃で2時間6666.1Pa以下に減圧して縮合水を除去し、反応しうるヒドロキシル基の95%がジヒドロベンゾオキサジン化された熱硬化性樹脂を得た。以下得られた樹脂を(B1)と略記する。
【0042】
〔2〕変性フェノール樹脂組成物の合成例
フェノール94部に41.5%ホルマリン29部、およびトリエチルアミン0.47部を加え、 80℃にて3時間反応させた。メラミンを19部加えさらに1時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら120℃まで昇温し、温度を保持したまま2時間反応させた。次に常圧下にて水を除去しながら180℃まで昇温し、減圧下にて未反応のフェノールを除去し、軟化点136℃のフェノールとメラミンの反応物であるフェノール樹脂組成物を得た。
【0043】
以下得られた樹脂を(C1)と略記する。この樹脂において、フェノール/メラミン(重量比率)は76/24、未反応ホルムアルデヒド量は0%、メチロール基は存在せず、未反応フェノールモノマー量は0.3重量%であった。
【0044】
〔3〕その他の配合物
エポキシ樹脂
フェノールノボラック型エポキシ樹脂
エポキシ当量170〜180g/eq、常温で液状
反応型リン化合物
(i)9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド:三光化学製 商品名 HCA
(ii) 10−2,5−ジヒドロキシフェニル−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン=10−オキシド:
三光化学製 商品名 HCA−HQ添加型リン化合物トリフェニルホォスフェート(以下、TPPと称す)
【0045】
〔4〕積層板の作製
表2に示した固形分配合の樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解させ、溶液の不揮発分を65〜75%になるようにメチルエチルケトンで調整した。しかる後、各々の混合溶液をガラスクロス(0.2mm)に含浸させ、160℃で4分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね、その両面に18μmの銅箔を重ね、 185℃、圧4MPaにて100分間加熱加圧成形して厚さ1.6mmの両面銅張り積層板を得た。
【0046】
以上作製した両面銅箔張積層板について、耐燃性、耐湿耐熱性、Tgを調べた。その結果を表1に示す。
【0047】
なお、試験方法は以下の通りとした。
耐燃焼性:UL94に準拠する。
はんだ耐熱性:
121℃、2130hPaのプレッシャークッカー処理装置内に6時間保持後の試験片(50mm×50mmの片面半銅付き)を、260℃に加熱されたはんだ槽に30秒間沈め、ふくれ及びミーズリングの発生の有無を肉眼にて観察した。
試験片のサンプル数は3である。表中の各記号は、○:変化なし、△:ミーズリングまたは目浮き発生、×:ふくれ発生を意味する。
ガラス転移温度(Tg):
JIS−C−6481に規定されるTMA法に従って測定した。なお、昇温速度 10℃/分で試料がガラス転移温度以上になるまで加熱し、一旦室温まで冷却してから再度昇温速度10℃/分で昇温したときの寸法変化量を測定し、"温度−寸法"カーブからガラス転移温度を求めた。
【0048】
得られた積層板の特性を表1に示す。
【表1】

【0049】
表1の結果から、本発明により、Tg、耐熱性が著しく低下することなく、ハロゲンおよびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下にて難燃性UL94V−0を達成可能であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を主成分とする熱硬化性樹脂及び(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物を、(A)、(B)及び(C)の総量100重量部に対して、(A)エポキシ樹脂5〜80重量部、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂5〜80重量部、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物5〜80重量部と、さらに(D)一般式(1)又は一般式(2)で表される反応型リン化合物を1〜50重量部含有し、使用する材料の総量に対して、ハロゲン原子およびアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(ただし、式中、R1〜R8は、水素、または、炭素数1〜10の一価脂肪族もしくは芳香族置換基でありR1〜R8は同一でも異なってもよい)
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂10〜50重量部、(B)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化樹脂10〜70重量部、(C)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物10〜50重量部を含有する請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸乾燥してなるプリプレグ。
【請求項4】
基材が織布または不織布である請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
請求項3又は4記載のプリプレグ又はこれを積み重ねた積層体の片面または両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる金属張り積層板。

【公開番号】特開2010−24459(P2010−24459A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247661(P2009−247661)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【分割の表示】特願平11−373382の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】