電動パワーステアリング装置および設定方法
【課題】トルク計などの計測器を用いることなく、装置全体での製造ばらつきなどを考慮して左右の操舵特性をバランスさせることができる技術を提供する。
【解決手段】同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出装置と、2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、相対角度検出装置からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出部と、補正値を設定する中立補正値設定部と、を備え、中立補正値設定部は、電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの相対角度検出装置からの出力値である右側出力値と、電動モータが左方向に所定回転速度で回転したときの相対角度検出装置からの出力値である左側出力値とに基づいて補正値を設定する。
【解決手段】同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出装置と、2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、相対角度検出装置からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出部と、補正値を設定する中立補正値設定部と、を備え、中立補正値設定部は、電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの相対角度検出装置からの出力値である右側出力値と、電動モータが左方向に所定回転速度で回転したときの相対角度検出装置からの出力値である左側出力値とに基づいて補正値を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置および設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータの動力にてドライバの操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置において、センサの中立点のずれを補正し、左右の操舵特性をバランスさせて操舵フィーリングを良くする技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載のパワーステアリング制御装置は、以下のように構成されている。すなわち、電動パワーステアリング装置は、操舵位置の中立点を規定する操舵トルク基準値と、操舵トルクが零(0)とみなされる状態に、操舵トルク検出手段が検出する操舵トルク中立点信号とに基づいて通常の操舵状態の操舵トルク信号を補正するトルク補正手段と、を有する制御手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−278816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操舵トルクが零であるかどうかは、トルク計などの計測器を用いない限り把握することが困難である。また、部品の製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に摩擦が生じることなどにより、製品毎にセンサの中立点が異なる。
したがって、簡易に電動パワーステアリング装置の操舵フィーリングを向上させるには、トルク計などの計測器を用いることなく、装置全体での製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に生じる摩擦などを考慮して左右の操舵特性をバランスさせることができる構成であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、前記相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、前記補正値を設定する補正値設定手段と、を備え、前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0006】
ここで、前記補正値設定手段は、前記相対角度検出手段が出力する電気信号の最大値と最小値との中間の値である基準値と、前記右側出力値と前記左側出力値との中間の値である中間出力値との差に基づいて前記補正値を設定するとよい。
また、前記トルク検出手段が検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータに供給する目標電流を決定する第1の目標電流決定手段と、前記電動モータの回転速度が前記所定回転速度となるように前記電動モータに供給する目標電流を決定する第2の目標電流決定手段と、前記第1の目標電流決定手段が決定した目標電流又は前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する供給手段と、をさらに備え、前記補正値設定手段は、前記供給手段が前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する場合の前記相対角度検出手段からの出力値に基づいて前記補正値を設定するとよい。
【0007】
他の観点から捉えると、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する検出部と、当該検出部の検出値を補正するための補正値を記憶する補正値記憶部とを有し、当該検出値を当該補正値にて補正した後の値に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、前記補正値を設定する補正値設定手段と、前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、を備え、前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0008】
他の観点から捉えると、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、当該2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、当該補正値を設定する補正値設定手段と、を備える電動パワーステアリング装置における当該補正値を設定する設定方法であって、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値を取得する工程と、前記電動モータが左方向に前記所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である左側出力値を取得する工程と、前記右側出力値と前記左側出力値とに基づいて前記補正値を算出する工程と、前記補正値を算出する工程にて算出した当該補正値を前記記憶領域に記憶する工程と、を含むことを特徴とする設定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トルク計などの計測器を用いることなく、装置全体での製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に生じる摩擦などを考慮して左右の操舵特性をバランスさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】ステアリングギアボックス内を示す断面図である。
【図3】図2におけるX部の拡大図である。
【図4】トルク検出装置の主要部品の概略構成図である。
【図5】トルク検出装置を、図2におけるY方向から見た図である。
【図6】下部連結シャフトとピニオンシャフトとが相対変位する前のトルク検出装置の状態を示す図である。
【図7】図5で見た場合に、磁石がヨークに対して時計回転方向に回転した状態を示す図である。
【図8】図5で見た場合に、磁石がヨークに対して反時計回転方向に回転した状態を示す図である。
【図9】磁石とヨークとの相対角度と第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが検出する磁束密度との関係を示す図である。
【図10】操舵トルクと、第1の電圧信号および第2の電圧信号との関係を示す図である。
【図11】電動パワーステアリング装置の制御装置の概略構成図である。
【図12】目標電流算出部の概略構成図である。
【図13】制御部の概略構成図である。
【図14】中立補正値設定部の概略構成図である。
【図15】中立補正値算出部が行う中立補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】中立補正値設定処理により中立補正値が設定される過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。図2は、ステアリングギアボックス107内を示す断面図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0012】
ステアリング装置100は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0013】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバー140(図2参照)を介して上述した下部連結シャフト108と連結されている。
【0014】
図2に示すように、ピニオンシャフト106および下部連結シャフト108は、ハウジング120に回転可能に支持されている。ハウジング120は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング121と第2ハウジング122とが、例えばボルトなどにより結合されて構成される。下部連結シャフト108は、軸受を介して第1ハウジング121に回転可能に支持され、ピニオンシャフト106は、トーションバー140を介して下部連結シャフト108に同軸的に結合されるとともに軸受を介して第2ハウジング122に回転可能に支持されている。
【0015】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に固定された電動モータ110と、ピニオンシャフト106に固定されたウォームホイール130と、を備えている。電動モータ110の出力軸に連結されたウォームギヤ111とウォームホイール130とは噛み合っており、電動モータ110の回転力がウォームホイール130により減速されてピニオンシャフト106に伝達される。電動モータ110は、3相ブラシレスモータであることを例示することができる。
ステアリングギアボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対角度に基づいて、言い換えればトーションバー140の捩れ量を検出する相対角度検出手段の一例としての相対角度検出装置20が設けられている。この相対角度検出装置20については後で詳述する。
また、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10には、上述した相対角度検出装置20の出力値、自動車の移動速度である車速Vを検出する車速センサ170の出力値が入力される。
【0016】
以上のように構成されたステアリング装置100は、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクTを相対角度検出装置20からの出力値に基づいて検出し、検出した操舵トルクTに応じて制御装置10が電動モータ110を駆動制御し、電動モータ110の発生トルクをピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。つまり、ピニオンシャフト106は、ステアリングホイール101の回転によって発生する操舵トルクTと電動モータ110から付与される補助トルクとで回転する。
【0017】
次に、相対角度検出装置20について詳述する。
図3は、図2におけるX部の拡大図である。図4は、相対角度検出装置20の主要部品の概略構成図である。図5は、相対角度検出装置20を、図2におけるY方向から見た図である。なお、図4においては、後述するブラケット60は省略している。
【0018】
相対角度検出装置20は、同軸的に配置された2つの回転軸の一例としての、ハウジング120に回転可能に支持された下部連結シャフト108と、同じくハウジング120に回転可能に支持されたピニオンシャフト106との相対回転角度(トーションバー140の捩れ量)を検出する装置である。
相対角度検出装置20は、下部連結シャフト108に取り付けられる磁石21と、磁石21が形成する磁界内に配置されたヨーク30と、ヨーク30に生じる磁束密度を検出する磁気センサ40とを有している。
【0019】
磁石21は、円筒状であり、図4に示すように、下部連結シャフト108の周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに周方向に着磁されている。この磁石21は、カラー22を介して下部連結シャフト108に取り付けられている。つまり、磁石21がカラー22に固定されており、カラー22が下部連結シャフト108に固定されている。そして、磁石21は下部連結シャフト108とともに回転する。なお、磁石21の下部連結シャフト108の軸方向の長さは、ヨーク30の長さよりも長い。
【0020】
ヨーク30は、第1のヨーク31と、第2のヨーク32と、下部連結シャフト108の軸方向に第1のヨーク31と第2のヨーク32との間に設けられた、第3のヨーク33とから構成されている。これら第1のヨーク31、第2のヨーク32および第3のヨーク33は、ピニオンシャフト106に取り付けられる。
【0021】
第1のヨーク31は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第1の円環部31aと、この第1の円環部31aから下部連結シャフト108の軸方向に伸びるように形成された複数の第1の突起部31bとを有している。
第1の突起部31bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。つまり、磁石21のN極およびS極がそれぞれ例えば12個である場合には、第1の突起部31bも12個形成されている。そして、この第1の突起部31bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図3,図5に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第1の突起部31bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0022】
第2のヨーク32は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第2の円環部32aと、この第2の円環部32aから下部連結シャフト108の軸方向に伸びるように形成された複数の第2の突起部32bとを有している。
第2の突起部32bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。そして、この第2の突起部32bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図3,図5に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第2の突起部32bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0023】
第3のヨーク33は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第3の円環部33aと、この第3の円環部33aから下部連結シャフト108の軸方向に、第1のヨーク31側へ伸びるように形成された複数の第3の突起部33bと、第2のヨーク32側へ伸びるように形成された複数の第4の突起部34bとを有している。
第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。そして、この第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図3,図5に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第3の突起部33bおよび第4の突起部34bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0024】
また、第1のヨーク31の第1の突起部31bと第3のヨーク33の第3の突起部33bとは、下部連結シャフト108の周方向に交互に配置されている。第2のヨーク32の第2の突起部32bと第3のヨーク33の第4の突起部34bとは、下部連結シャフト108の周方向に交互に配置されている。
なお、本実施の形態に係る第3のヨーク33においては、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、下部連結シャフト108の軸方向に一体的に連続して形成されている。
【0025】
そして、本実施の形態に係る相対角度検出装置20においては、トーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときに、図5に示すように、下部連結シャフト108の周方向において、時計回転方向に見た場合に磁石21のN極とS極との境界線と第1のヨーク31の第1の突起部31bの周方向の中心が一致するように配置されている。
【0026】
第2のヨーク32の第2の突起部32bは、下部連結シャフト108の周方向には、第1のヨーク31の第1の突起部31bと同じ位置となるように配置されている。つまり、トーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときに、第1の突起部31bが対向する磁石21のN極とS極との境界線と、第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。すなわち、図5に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石21のN極とS極との境界線と第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石21のN極あるいはS極と対向する場合に、第2の突起部32bは、第1の突起部31bが対向する極性と同じ極性の磁極に対向する。
【0027】
第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、初期状態のときに、下部連結シャフト108の周方向において、図5に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石21のS極とN極との境界線と第3の突起部33bおよび第4の突起部34bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石21のN極あるいはS極と対向する場合に、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、第1の突起部31bが対向する磁極とは異なる極性の磁極に対向する。
【0028】
また、本実施の形態に係るヨーク30においては、図3に示すように、第1のヨーク31、第2のヨーク32および第3のヨーク33は、インサートモールド成形により一体化されている。そして、インサートモールド成形する際にブラケット60をも一体成形している。ブラケット60は、ピニオンシャフト106の軸方向に伸びる薄肉円筒状の軸方向部位61と、軸方向部位61からピニオンシャフト106の回転半径方向に伸びる円板状の半径方向部位62とを有する。そして、ブラケット60の軸方向部位61がピニオンシャフト106に圧入、溶接あるいはねじ止めされることにより、軸方向部位61がピニオンシャフト106に固定されている。これにより、ヨーク30は、ピニオンシャフト106に固定される。
【0029】
第1の磁気センサ41は、ハウジング120に固定されており、下部連結シャフト108の軸方向において、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間に配置されている。第1の磁気センサ41は、制御装置10から電源電圧が供給されることにより作動して、第1のヨーク31と第3のヨーク33との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
【0030】
また、第2の磁気センサ42は、ハウジング120に固定されており、下部連結シャフト108の軸方向において、第2のヨーク32の第2の円環部32aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間に配置されている。第2の磁気センサ42は、制御装置10から電源電圧が供給されることにより作動して、第2のヨーク32と第3のヨーク33との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
そして、第1の磁気センサ41と第2の磁気センサ42とは、例えば下部連結シャフト108の軸方向に同じ向きの磁界が生じている場合には、同じ符号の磁束密度を検出するように配置されている。
【0031】
以上のように構成された相対角度検出装置20においては、以下に示すように作用する。
図6は、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106とが相対変位する前の相対角度検出装置20の状態を示す図である。図6(a)は、磁石21とヨーク30との関係を、図2におけるY方向に見た図である。図6(b)は、磁石21およびヨーク30を、(a)におけるZ方向に見た図である。
【0032】
トーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときは、図5、図6(a)に示すように、下部連結シャフト108の周方向において、ヨーク30の全ての突起部である第1の突起部31b〜第4の突起部34bの周方向の中心と、磁石21のN極とS極との境界線とが一致する。かかる場合、第1の突起部31b〜第4の突起部34bの各突起部には、磁石21のN極とS極とから同数の磁力線が出入りする。そのため、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間、および第2のヨーク32の第2の円環部32aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間には磁束密度差が生じないので、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42の出力は零となる。
【0033】
ステアリングホイールに操舵トルクTが入力されてトーションバー140に捩れが生じると、磁石21とヨーク30との周方向の相対位置が変化する。
図7は、図5で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転した状態を示す図である。図8は、図5で見た場合に、磁石21がヨーク30に対して反時計回転方向に回転した状態を示す図である。それぞれの図において、(a)は磁石21とヨーク30との関係を、図2におけるY方向から見た図である。(b)は磁石21およびヨーク30を、(a)におけるZ方向に見た図である。
また、図9は、磁石21(下部連結シャフト108)とヨーク30(ピニオンシャフト106)との相対角度(トーションバー140の捩れ角θ)と第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42が検出する磁束密度との関係を示す図である。
【0034】
図7および図8に示すように、トーションバー140が捩れると、下部連結シャフト108の周方向において、ヨーク30の第1の突起部31b〜第4の突起部34bの周方向の中心と、磁石21のN極とS極との境界線とが一致しなくなる。つまり、初期状態に比べて、磁石21のいずれかの磁極がヨーク30の第1の突起部31b〜第4の突起部34bと対向する領域が増加する。
【0035】
より具体的には、図7の状態においては、第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石21のN極と対向する領域が増加し、第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のS極と対向する領域が増加する。そのため、磁石21のN極から第1の突起部31bおよび第2の突起部32bに向かう磁力線が、第1の突起部31bおよび第2の突起部32bから磁石21のS極に向かう磁力線よりも増加する。また、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bから磁石21のS極に向かう磁力線が、磁石21のN極から第3の突起部33bおよび第4の突起部34bに向かう磁力線よりも増加する。これにより、第1のヨーク31の第1の円環部31aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう磁束密度が増加するとともに第2のヨーク32の第2の円環部32aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう磁束密度が増加する。
【0036】
そして、第1のヨーク31の第1の円環部31aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう方向をプラスの方向とすると、初期状態から、図5で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転するにしたがって、第1の磁気センサ41が検出する磁束密度B1がプラスの方向へ大きくなる。他方、第2の磁気センサ42が検出する磁束密度B2がマイナスの方向へ大きくなる。以下、図5で見た場合に、初期状態から、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転するときに、「右方向」の操舵トルクTが発生しているものとする。
【0037】
また、図8の状態においては、第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石21のS極と対向する領域が増加し、第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のN極と対向する領域が増加する。そのため、第1の突起部31bおよび第2の突起部32bから磁石21のS極に向かう磁力線が、磁石21のN極から第1の突起部31bおよび第2の突起部32bに向かう磁力線よりも増加する。また、磁石21のN極から第3の突起部33bおよび第4の突起部34bに向かう磁力線が、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bから磁石21のS極に向かう磁力線よりも増加する。これにより、第3のヨーク33の第3の円環部33aから第1のヨーク31の第1の円環部31aへ向かう磁束密度が増加するとともに第3のヨーク33の第3の円環部33aから第2のヨーク32の第2の円環部32aへ向かう磁束密度が増加する。それゆえ、初期状態から、図5で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転するにしたがって、第1の磁気センサ41が検出する磁束密度B1がマイナスの方向へ大きくなる。他方、第2の磁気センサ42が検出する磁束密度B2がプラスの方向へ大きくなる。以下、図5で見た場合に、初期状態から、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転するときに、「左方向」の操舵トルクTが発生しているものとする。
【0038】
図9においては、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106とを、両方向に磁極1個(α度)分相対的に回転させた場合の磁束密度の変化を示している。そして、トーションバー140が両方向に1/3×α度捩れることを許容する仕様にすることで、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、トーションバー140の捩れ量(下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度)に比例する磁束密度の変化を検出することが可能となる。
【0039】
第1の磁気センサ41は、検出した磁束密度B1を、この磁束密度B1に応じた電圧値を示す第1の電圧信号V1sに変換して出力し、第2の磁気センサ42は、検出した磁束密度B2を、この磁束密度B2に応じた電圧値を示す第2の電圧信号V2sに変換して出力する。トーションバー140の捩れ量(下部連結シャフト108とピニオンシャフト106の相対回転角度)とステアリングホイール101の操舵トルクTとは比例関係にある。つまり、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、操舵トルクTに応じた電圧値を示す第1の電圧信号V1sおよび第2の電圧信号V2sを出力する。
【0040】
図10は、操舵トルクTと、第1の電圧信号V1sおよび第2の電圧信号V2sとの関係を示す図である。
図10においては、横軸に操舵トルクT、縦軸に第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を示している。横軸は、操舵トルクTが零の状態、言い換えれば、トーションバー140の捩れ量が零の状態を中点にし、右方向の操舵トルクTをプラス、左方向の操舵トルクをマイナスとしている。
そして、本実施の形態に係る第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、図10に示すように、第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sが示す第2の電圧V2が、最大電圧VHiと最小電圧VLoとの間で変化するように構成されている。なお、最大電圧VHiは、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42が第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力可能な出力上限値よりわずかに低く、最小電圧VLoは、出力可能な出力下限値よりわずかに高く設定される。これは、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42の出力上限値や出力下限値の近傍では、第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力する電圧が不安定になって操舵トルクTの検出精度が低下するおそれがあるためである。
【0041】
そして、図10の実線で示すように、第1の磁気センサ41が出力する第1の電圧信号V1sは、操舵トルクTの右方向への大きさが増加(トーションバー140の右方向への回転量が増加)するのに伴って電圧が上昇する特性を有する。すなわち、ステアリングホイール101が右方向に回転すると第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が上昇する。また、図10の破線で示すように、第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2は、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と同じ最大電圧VHiと最小電圧VLoの間で変化するとともに第1の電圧信号V1sと逆の特性(負の相関関係)を有し、操舵トルクTの右方向への大きさが増加するのに伴って第2の電圧信号V2sが低下する特性を有する。すなわち、ステアリングホイール101が右方向に回転すると第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が低下する。
【0042】
そして、中点では第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2とが等しい電圧(以下、「中点電圧Vc」と称する場合がある)となるように構成されている。中点電圧Vcは、例えば、最大電圧VHiと最小電圧VLoの中間の電圧(Vc=(VHi+VLo)/2)となる。
さらに、操舵トルクTの変化に対する第1の電圧信号V1sの変化の割合と第2の電圧信号V2sの変化の割合(絶対値)は等しく、同じ操舵トルクTを示す第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を合計した合計電圧Vt(以下、単に「合計電圧Vt」と称する場合がある)が常に予め定められた所定電圧となる特性を有する。本実施の形態において、合計電圧Vtは、一定電圧(VHi+VLo)となるように構成されており、「VHi+VLo」が所定電圧となる。
【0043】
例えば、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42が、0〜5〔V〕の間の電圧値を第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力可能な性能を有する場合、すなわち、出力下限値が0〔V〕で出力上限値が5〔V〕の場合に、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の最大電圧VHiを4.5〔V〕、最小電圧VLoを0.5〔V〕に設定すると、中点電圧Vcは2.5〔V〕、所定電圧は5〔V〕になる。
したがって、操舵トルクTが零の中点では、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2は共に2.5〔V〕となり、第1の電圧V1と第2の電圧V2との合計電圧Vtは常に5〔V〕となる。そして、操舵トルクTが右方向に増加すると、第1の電圧V1は2.5〔V〕から上昇し、第2の電圧V2は2.5〔V〕から低下する。他方、操舵トルクTが左方向に増加すると、第1の電圧V1は2.5〔V〕から低下し、第2の電圧V2は2.5〔V〕から上昇する。
【0044】
次に、制御装置10について説明する。
制御装置10は、電動モータ110の制御を行う際の演算処理を行うCPU11と、CPU11にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM12と、CPU11の作業用メモリ等として用いられるRAM13と、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory)14と、を備えている。
制御装置10には、上述した相対角度検出装置20からの出力値、車速センサ170にて検出された車速Vが出力信号に変換された車速信号vなどが入力される。
【0045】
図11は、ステアリング装置100の制御装置10の概略構成図である。
制御装置10は、相対角度検出装置20から入力される信号に基づいて操舵トルクTを検出するトルク検出部210と、トルク検出部210にて検出された操舵トルクTに基づいて電動モータ110に供給する目標電流を算出する目標電流算出部220と、を備えている。目標電流算出部220は、後述する第1の目標電流決定部225を有している。
また、制御装置10は、トルク検出部210が操舵トルクTを検出するのに用いる中立補正値ΔVを設定する中立補正値設定部250を備えている。中立補正値設定部250は、後述するように電動モータ110の実際の回転速度と目標の回転速度との偏差が零になるように電動モータ110に供給する目標電流を算出する第2の目標電流決定部254を有している。
【0046】
また、制御装置10は、第1の目標電流決定部225あるいは第2の目標電流決定部254が決定した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部230と、制御部230への入力を第1の目標電流決定部225からの出力値と第2の目標電流決定部254からの出力値とで切り替える切替部270と、を有している。また、制御装置10は、電動モータ110の回転角度(以下、「モータ角度θ」と称する場合もある。)を算出するモータ角度算出部36と、モータ角度算出部36で算出されたモータ角度θに基づいて実際の電動モータ110の回転速度(以下、「実回転速度Nma」と称する場合もある。)を算出するモータ回転速度算出部37と、を有している。
【0047】
先ずは、目標電流算出部220について詳述する。
図12は、目標電流算出部220の概略構成図である。
目標電流算出部220は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部221と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部222と、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部223とを備えている。また、目標電流算出部220は、ベース電流算出部221、イナーシャ補償電流算出部222、ダンパー補償電流算出部223などからの出力に基づいて目標電流を決定する第1の目標電流決定部225を備えている。さらに、目標電流算出部220は、トルク信号Tdの位相補償を行う位相補償部226を備えている。
【0048】
なお、目標電流算出部220には、トルク信号Tdと、車速信号vと、モータ回転速度算出部37からの回転速度信号Nmsとが入力される。制御装置10には、車速センサ170などからの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、目標電流算出部220に取り込んでいる。
【0049】
ベース電流算出部221は、位相補償部226にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサ170からの車速信号vとに基づいてベース電流を算出し、このベース電流の情報を含むベース電流信号Imbを出力する。なお、ベース電流算出部221は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Tsおよび車速信号vとベース電流との対応を示すマップに、検出されたトルク信号Tsおよび車速信号vを代入することによりベース電流を算出する。
【0050】
イナーシャ補償電流算出部222は、トルク信号Tdと車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流を算出し、この電流の情報を含むイナーシャ補償電流信号Isを出力する。なお、イナーシャ補償電流算出部222は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Tdおよび車速信号vとイナーシャ補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdおよび車速信号vを代入することによりイナーシャ補償電流を算出する。
【0051】
ダンパー補償電流算出部223は、トルク信号Tdと、車速信号vと、モータ角速度ωとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流を算出し、この電流の情報を含むダンパー補償電流信号Idを出力する。なお、ダンパー補償電流算出部223は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Td、車速信号vおよびモータ角速度ωと、ダンパー補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdと車速信号vとモータ角速度ωとを代入することによりダンパー補償電流を算出する。
【0052】
第1の目標電流決定部225は、ベース電流算出部221から出力されたベース電流信号Imb、イナーシャ補償電流算出部222から出力されたイナーシャ補償電流信号Isおよびダンパー補償電流算出部223から出力されたダンパー補償電流信号Idに基づいて最終的な目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号IT1を出力する。第1の目標電流決定部225は、例えば、ベース電流に、イナーシャ補償電流を加算するとともにダンパー補償電流を減算して得た補償電流を、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、補償電流と最終的な目標電流との対応を示すマップに代入することにより最終的な目標電流を算出する。
【0053】
次に、制御部230について詳述する。
図13は、制御部230の概略構成図である。
制御部230は、電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部231と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部232と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部233とを有している。
モータ駆動制御部231は、第1の目標電流決定部225にて決定された目標電流又は第2の目標電流決定部254にて決定された目標電流と、モータ電流検出部233にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部240と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部260とを有している。
【0054】
フィードバック制御部240は、目標電流算出部220にて最終的に決定された目標電流とモータ電流検出部233にて検出された実電流Imとの偏差を求める偏差演算部241と、その偏差が零となるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部242とを有している。
偏差演算部241は、目標電流算出部220からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部233からの出力値であるモータ電流信号Imsとの偏差の値を偏差信号241aとして出力する。
【0055】
フィードバック(F/B)処理部242は、目標電流と実電流Imとが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号241aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号242aを生成・出力する。
PWM信号生成部260は、フィードバック制御部240からの出力値に基づいてPWM信号260aを生成し、生成したPWM信号260aを出力する。
【0056】
モータ駆動部232は、所謂インバータであり、例えば、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
モータ電流検出部233は、モータ駆動部232に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出して、検出した実電流Imをモータ電流信号Imsに変換して出力する。
【0057】
モータ角度算出部36は、電動モータ110に設けられたレゾルバの出力信号に基づいてモータ角度θを算出する。このモータ角度θは、電動モータ110のU相電機子巻線の位置を基準とするロータ(界磁)の角度である。モータ回転速度算出部37は、モータ角度算出部36で算出されたモータ角度θに基づいて実回転速度Nmaを算出し、算出した実回転速度Nmaを回転速度信号Nmsに変換して出力する。これらモータ角度θおよび実回転速度Nmaの符号は、以下のように定められる。つまり、前輪150側から受ける力を零として、ユーザがステアリングホイール101を操舵トルクTの符号がプラスとなるように回転させたときに電動モータ110が回転する方向をモータ角度θおよび実回転速度Nmaのプラス方向とする。
【0058】
次に、トルク検出部210について説明する。
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、相対角度検出装置20(磁気センサ40)の中立点(零点)が正規状態(操舵トルクTが零であるときの磁気センサ40からの出力値が中点電圧Vc(2.5V)となる状態)からずれている場合には、操舵フィーリングが悪くなるおそれがある。これは、ステアリングホイール101を操作して左右方向に同じ操舵トルクTを加えても、電動パワーステアリング装置100の操舵補助力は一方が大きく、他方が小さくなって操舵補助力にアンバランスが生じてしまうからである。
【0059】
相対角度検出装置20の中立点(零点)が正規状態である場合、左右同じ大きさの操舵トルクTに対して相対角度検出装置20の中点電圧Vcからの偏差(絶対値)は等しくなり、電動モータ110による操舵補助力は左右方向共に等しく、バランスされる。これに対して、相対角度検出装置20の中立点(零点)が正規状態からずれている場合には、操舵トルクTが零であるときであっても、相対角度検出装置20の出力値が中点電圧Vcとは異なる値となり、その出力値に応じた操舵トルクTが作用しているものとして電動モータ110により操舵補助力が与えられてしまう。そして、例えば、相対角度検出装置20の出力値が中点電圧Vcとなるのが右方向にTaずれた操舵トルクである場合、右方向の操舵トルクTが零からTaの範囲においては、ステアリングホイール101を右方向に操作しても電動モータ110により左方向の操舵補助力が作用してしまう。
【0060】
かかる事項に鑑み、本実施の形態に係るトルク検出部210は以下のように構成されている。
トルク検出部210は、相対角度検出装置20から入力される信号に基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する出力部211と、中立補正値ΔVを記憶する中立補正値記憶部212と、を備えている。
中立補正値ΔVは、以下のようにして中立補正値設定部250により設定される値である。中立補正値設定部250にて設定される前は、初期値として零に設定される値である。中立補正値記憶部212は、EEPROM14の領域の一部にて構成されており、第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1と、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2とが書き込まれている。
【0061】
出力部211は、磁気センサ40の第1の磁気センサ41が正常である場合には、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と、中立補正値記憶部212に記憶された中立補正値ΔV1とに基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
第1の電圧V1と中立補正値ΔV1とに基づいて操舵トルクTを算出する手法としては以下を例示することができる。すなわち、先ず、第1の電圧V1に中立補正値ΔV1を加算することにより得た補正後電圧V1fと、操舵トルクTとの関係を示すマップをROM12に記憶しておき、トルク検出部210は、このマップに、補正後電圧V1fを代入することにより操舵トルクTを算出する。又は、補正後電圧V1fと操舵トルクTとの関係を示す関数、あるいは、第1の電圧V1および中立補正値ΔV1と操舵トルクTとの関係を示す関数を組み込んでおき、トルク検出部210は、この関数に第1の電圧V1および中立補正値ΔV1を代入して操舵トルクTを算出してもよい。
なお、出力部211は、磁気センサ40の第1の磁気センサ41に異常が生じ、第2の磁気センサ42のみが正常である場合には、非常用として、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2と、中立補正値記憶部212に記憶された中立補正値ΔV2とに基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
【0062】
次に、中立補正値ΔVの設定について説明する。
電動パワーステアリング装置100においては、この電動パワーステアリング装置100を構成する部品の製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に生じる摩擦などにより、製品毎に相対角度検出装置20の中立点(零点)が異なる場合がある。
そこで、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100においては、制御装置10が中立補正値設定部250を備え、電動パワーステアリング装置100を組み立てた後、あるいは電動パワーステアリング装置100を乗り物に組み付けた後に中立補正値ΔVを算出し、トルク検出部210の中立補正値記憶部212に書き込み可能に構成した。
中立補正値設定部250が中立補正値ΔVを算出する方法は以下の通りである。
電動モータ110を右方向に所定の回転速度で回転させたときの磁気センサ40の出力値と、左方向に所定の回転速度で回転させたときの磁気センサ40の出力値とに基づいてこれらの出力値の中間の電圧値Vmを算出する。そして、中点電圧Vcからこの中間の電圧値Vmを減算することで中立補正値ΔVを算出する(ΔV=Vc−Vm)。
【0063】
次に、この中立補正値設定部250について詳述する。
図14は、中立補正値設定部250の概略構成図である。
中立補正値設定部250は、外部機器300から特定信号を受信するとともに特定信号の受信をトリガーとして後述する中立補正値設定処理を行う中立補正値算出部251と、電動モータ110の目標回転速度Nmtを設定する目標モータ回転速度設定部252と、を備えている。また、中立補正値設定部250は、目標モータ回転速度設定部252にて設定された目標回転速度Nmtと電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaとの偏差を算出する偏差算出部253と、偏差算出部253が算出した偏差に基づいて電動モータ110に供給する目標電流を算出する第2の目標電流決定部254と、を備えている。
なお、外部機器300としては、電動パワーステアリング装置100の組み立て工場、電動パワーステアリング装置100を搭載する乗り物の生産工場あるいはサービス工場に設置されて、上記中立補正値設定処理を実行させる特定信号を送信できる装置であればよい。
【0064】
目標モータ回転速度設定部252は、中立補正値算出部251から出力されたコマンドに基づいて電動モータ110の目標回転速度Nmtを決定し、この目標回転速度Nmtの情報を含む目標回転速度信号Nmtsを出力する。
偏差算出部253は、目標モータ回転速度設定部252にて設定された目標回転速度Nmtから、モータ回転速度算出部37にて算出された電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaを減算することで、目標回転速度Nmtと実回転速度Nmaとの偏差を算出する。
【0065】
第2の目標電流決定部254は、偏差算出部253が算出した偏差に基づいて電動モータ110に供給する目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号IT2を出力する。第2の目標電流決定部254は、目標回転速度Nmtと実回転速度Nmaとの差が零となるように電動モータ110に供給する目標電流を決定する。より具体的には、第2の目標電流決定部254は、偏差算出部253が算出した偏差を、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、モータ回転速度の偏差と目標電流との対応を示すマップに代入することにより目標電流を算出し、この目標電流を電動モータ110に供給する目標電流として決定する。
【0066】
次に、フローチャートを用いて、中立補正値算出部251が行う中立補正値設定処理の手順について説明する。
図15は、中立補正値算出部251が行う中立補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。中立補正値算出部251は、制御装置10に備えられたインターフェイスを介して外部機器300からコマンドを取得した場合に、この中立補正値設定処理を実行する。以下では、磁気センサ40の第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1を設定する場合を例示して説明する。
【0067】
先ず、中立補正値算出部251は、電動パワーステアリング装置100が中立状態であるか否かを判別する(ステップ(以下、単に、「S」と記す。)1501)。これは、ステアリングホイール101や前輪150から負荷が掛かっているか否かを判別する処理であり、磁気センサ40からの出力値に係る電圧が、ROM12に予め記憶されている中点電圧Vcを中心とする所定範囲内であるか否かを判別し、所定範囲内であれば中立状態であると判定し、所定範囲外であれば中立状態ではないと判定する。そして、中立状態であれば(S1501でYes)、制御部230への入力を第2の目標電流決定部254からの出力値とするように切替部270を切り替える(S1502)。
【0068】
その後、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を右方向の目標回転速度Nmtrとするためのコマンドを送る(S1503)。
そして、電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域であるか否かを判別する(S1504)。この所定の右方向の回転速度領域は、右方向の目標回転速度Nmtr−5(rpm)以上、右方向の目標回転速度Nmtr+5(rpm)以下であることを例示することができる。
【0069】
そして、実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域である場合(S1504でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってから(S1504にて最初に肯定判定されてから)、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、右方向の平均電圧V1rを算出する(S1505)。
【0070】
その後、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってから(S1504にて最初に肯定判定されてから)、予め定められた規定時間が経過したか否かを判別する(S1506)。そして、規定時間が経過していない場合(S1506でNo)、S1503以降の処理を行う。
また、実回転速度Nmaが所定の回転速度領域ではない場合(S1504でNo)、S1503以降の処理を行う。
【0071】
規定時間が経過した場合(S1506でYes)、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を左方向の目標回転速度Nmtlとするためのコマンドを送る(S1507)。
そして、電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域であるか否かを判別する(S1508)。この所定の左方向の回転速度領域は、左方向の目標回転速度Nmtl−5(rpm)以上、左方向の目標回転速度Nmtl+5(rpm)以下であることを例示することができる。
そして、実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域である場合(S1508でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域内となってから(S1508にて最初に肯定判定されてから)、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、左方向の平均電圧V1lを算出する(S1509)。
【0072】
その後、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域内となってから(S1508にて最初に肯定判定されてから)、予め定められた規定時間が経過したか否かを判別する(S1510)。そして、規定時間が経過していない場合(S1510でNo)、S1507以降の処理を行う。
また、実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域ではない場合(S1508でNo)、S1507以降の処理を行う。
【0073】
その後、S1505にて算出した右方向の平均電圧V1rとS1509にて算出した左方向の平均電圧V1lとの中間の電圧値(中立電圧値)Vm1(=(V1r+V1l)/2)を算出する(S1511)。
そして、その後、第1の磁気センサ41の中点電圧VcからS1511にて算出した中間の電圧値Vm1を減算することにより中立補正値ΔV1(=Vc−Vm1)を算出する(S1512)。
その後、S1512にて算出した中立補正値ΔV1を、新たな中立補正値ΔV1としてトルク検出部210の中立補正値記憶部212に書き込む(S1513)。
その後、制御部230への入力を第1の目標電流決定部225からの出力値とするように切替部270を切り替える(S1514)。
【0074】
図16は、中立補正値設定処理により中立補正値ΔV1が設定される過程を示す図である。
S1503にて、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を右方向の目標回転速度Nmtrとするためのコマンドが送られると、目標モータ回転速度設定部252が図16(a)に示すように電動モータ110の目標回転速度Nmtrを決定する。そして、第2の目標電流決定部254が、偏差算出部253が算出する目標回転速度Nmtrと実回転速度Nmaとの差が零となるように電動モータ110に供給する目標電流を決定する。その結果、電動モータ110の実回転速度Nmaが図16(b)に示すように変化する。
【0075】
そして、実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域である場合(S1504でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、右方向の平均電圧V1rを算出する(S1505)。この処理を、最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってから規定時間が経過するまで行う。その結果、S1505にて算出した右方向の平均電圧V1rが、例えば図16(c)に示すように2.4〔V〕である。
なお、電動モータ110が右方向に回転すると、この電動モータ110の回転駆動力により、図5で見た場合に、ピニオンシャフト106(ヨーク30)が下部連結シャフト108(磁石21)に対して時計回転方向に回転する。そのため、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転し、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1は中点電圧Vcよりも低くなる。
【0076】
規定時間が経過した後(S1506でYes)、S1507にて、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を左方向の目標回転速度Nmtlとするためのコマンドが送られると、目標モータ回転速度設定部252が図16(a)に示すように電動モータ110の目標回転速度Nmtlを決定する。そして、第2の目標電流決定部254が、偏差算出部253が算出する目標回転速度Nmtlと実回転速度Nmaとの差が零となるように電動モータ110に供給する目標電流を決定する。その結果、電動モータ110の実回転速度Nmaが図16(b)に示すように変化する。
【0077】
そして、実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域である場合(S1508でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、左方向の平均電圧V1lを算出する(S1505)。この処理を、最初に実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域内となってから規定時間が経過するまで行う。その結果、S1509にて算出した左方向の平均電圧V1lが、例えば図16(c)に示すように2.7〔V〕である。
【0078】
その後、S1505にて算出した右方向の平均電圧V1r=2.4〔V〕とS1509にて算出した左方向の平均電圧V1l=2.7〔V〕との中間の電圧値Vm1を、Vm1=(2.4+2.7)/2=2.55〔V〕と算出する(S1511)。
その後、第1の磁気センサ41の中点電圧Vc=2.5〔V〕からS1511にて算出した中間の電圧値Vm1=2.55〔V〕を減算することにより中立補正値ΔV1を、ΔV1=2.5−2.55=−0.05〔V〕と算出する(S1512)。
その後、S1512にて算出した中立補正値ΔV1=−0.05〔V〕を、新たな中立補正値ΔV1としてトルク検出部210の中立補正値記憶部212に書き込む(S1513)。
【0079】
中立補正値設定部250が上述したように構成されることで、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100においては、この電動パワーステアリング装置100を構成する部品の製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に摩擦が生じたとしても、操舵トルクTが零であるときの中立点を導き出すことができるので、操舵フィーリングを向上させることができる。また、トルク計などの計測器を用いることなく、操舵トルクTが真に零であるときの中立点を導き出すことができるので、操舵フィーリングの向上を簡易な構成で実現できる。
【0080】
なお、上述した中立補正値設定処理においては、第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1を設定する場合を例示して説明したが、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を設定する処理も上記と同様であり、第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1を設定するための中立補正値設定処理が終了したら、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を設定するための中立補正値設定処理を連続して実行すればよい。あるいは、上記中立補正値設定処理の実行開始後、S1513にて中立補正値ΔV1を書き込んだ後、S1514の処理を行う前に、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を設定するためにS1503以降の処理を再度行いS1513にて第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を書き込んだ後、S1514の処理を行って中立補正値設定処理を終了してもよい。
【0081】
また、上述した中立補正値設定処理においては、S1506およびS1510にて、最初に実回転速度Nmaが所定の回転速度領域内となってから規定時間が経過したか否かを判別し、S1505およびS1509においては、規定時間内に読み込んだセンサ信号に基づいた平均電圧を算出しているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、S1506およびS1510にて、S1505およびS1509において読み込んだセンサ信号が予め定められた規定回数に到達したか否かを判別してもよい。つまり、センサ信号に基づいた電圧の規定回数分の平均電圧を、右方向の平均電圧V1r、左方向の平均電圧V1lとする。また、その規定回数は、連続して実回転速度Nmaが所定の回転速度領域内である場合(最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってからS1504あるいはS1508で否定判定されない場合)の回数であるとよい。また、規定回数は、必ずしも連続していることを必要とせず、最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってからS1504あるいはS1508で肯定判定された回数であってもよい。
【0082】
また、磁気センサ40自体がEEPROMを有するとともにそのEEPROMに記憶された中立補正値ΔVを加味して出力し、トルク検出部210が磁気センサ40からの出力値に応じた操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する構成である場合には、中立補正値算出部251が算出した中立補正値ΔVを、磁気センサ40のEEPROMに書き込むことができる構成とするとよい。
【符号の説明】
【0083】
10…制御装置、20…トルク検出装置、21…磁石、30…ヨーク、40…磁気センサ、41…第1の磁気センサ、42…第2の磁気センサ、100…電動パワーステアリング装置、101…ステアリングホイール(ハンドル)、110…電動モータ、210…トルク検出部、220…目標電流算出部、230…制御部、250…中立補正値設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置および設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータの動力にてドライバの操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置において、センサの中立点のずれを補正し、左右の操舵特性をバランスさせて操舵フィーリングを良くする技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載のパワーステアリング制御装置は、以下のように構成されている。すなわち、電動パワーステアリング装置は、操舵位置の中立点を規定する操舵トルク基準値と、操舵トルクが零(0)とみなされる状態に、操舵トルク検出手段が検出する操舵トルク中立点信号とに基づいて通常の操舵状態の操舵トルク信号を補正するトルク補正手段と、を有する制御手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−278816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操舵トルクが零であるかどうかは、トルク計などの計測器を用いない限り把握することが困難である。また、部品の製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に摩擦が生じることなどにより、製品毎にセンサの中立点が異なる。
したがって、簡易に電動パワーステアリング装置の操舵フィーリングを向上させるには、トルク計などの計測器を用いることなく、装置全体での製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に生じる摩擦などを考慮して左右の操舵特性をバランスさせることができる構成であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、前記相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、前記補正値を設定する補正値設定手段と、を備え、前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0006】
ここで、前記補正値設定手段は、前記相対角度検出手段が出力する電気信号の最大値と最小値との中間の値である基準値と、前記右側出力値と前記左側出力値との中間の値である中間出力値との差に基づいて前記補正値を設定するとよい。
また、前記トルク検出手段が検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータに供給する目標電流を決定する第1の目標電流決定手段と、前記電動モータの回転速度が前記所定回転速度となるように前記電動モータに供給する目標電流を決定する第2の目標電流決定手段と、前記第1の目標電流決定手段が決定した目標電流又は前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する供給手段と、をさらに備え、前記補正値設定手段は、前記供給手段が前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する場合の前記相対角度検出手段からの出力値に基づいて前記補正値を設定するとよい。
【0007】
他の観点から捉えると、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する検出部と、当該検出部の検出値を補正するための補正値を記憶する補正値記憶部とを有し、当該検出値を当該補正値にて補正した後の値に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、前記補正値を設定する補正値設定手段と、前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、を備え、前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0008】
他の観点から捉えると、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、当該2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、当該補正値を設定する補正値設定手段と、を備える電動パワーステアリング装置における当該補正値を設定する設定方法であって、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値を取得する工程と、前記電動モータが左方向に前記所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である左側出力値を取得する工程と、前記右側出力値と前記左側出力値とに基づいて前記補正値を算出する工程と、前記補正値を算出する工程にて算出した当該補正値を前記記憶領域に記憶する工程と、を含むことを特徴とする設定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トルク計などの計測器を用いることなく、装置全体での製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に生じる摩擦などを考慮して左右の操舵特性をバランスさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】ステアリングギアボックス内を示す断面図である。
【図3】図2におけるX部の拡大図である。
【図4】トルク検出装置の主要部品の概略構成図である。
【図5】トルク検出装置を、図2におけるY方向から見た図である。
【図6】下部連結シャフトとピニオンシャフトとが相対変位する前のトルク検出装置の状態を示す図である。
【図7】図5で見た場合に、磁石がヨークに対して時計回転方向に回転した状態を示す図である。
【図8】図5で見た場合に、磁石がヨークに対して反時計回転方向に回転した状態を示す図である。
【図9】磁石とヨークとの相対角度と第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが検出する磁束密度との関係を示す図である。
【図10】操舵トルクと、第1の電圧信号および第2の電圧信号との関係を示す図である。
【図11】電動パワーステアリング装置の制御装置の概略構成図である。
【図12】目標電流算出部の概略構成図である。
【図13】制御部の概略構成図である。
【図14】中立補正値設定部の概略構成図である。
【図15】中立補正値算出部が行う中立補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】中立補正値設定処理により中立補正値が設定される過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。図2は、ステアリングギアボックス107内を示す断面図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0012】
ステアリング装置100は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0013】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバー140(図2参照)を介して上述した下部連結シャフト108と連結されている。
【0014】
図2に示すように、ピニオンシャフト106および下部連結シャフト108は、ハウジング120に回転可能に支持されている。ハウジング120は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング121と第2ハウジング122とが、例えばボルトなどにより結合されて構成される。下部連結シャフト108は、軸受を介して第1ハウジング121に回転可能に支持され、ピニオンシャフト106は、トーションバー140を介して下部連結シャフト108に同軸的に結合されるとともに軸受を介して第2ハウジング122に回転可能に支持されている。
【0015】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に固定された電動モータ110と、ピニオンシャフト106に固定されたウォームホイール130と、を備えている。電動モータ110の出力軸に連結されたウォームギヤ111とウォームホイール130とは噛み合っており、電動モータ110の回転力がウォームホイール130により減速されてピニオンシャフト106に伝達される。電動モータ110は、3相ブラシレスモータであることを例示することができる。
ステアリングギアボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対角度に基づいて、言い換えればトーションバー140の捩れ量を検出する相対角度検出手段の一例としての相対角度検出装置20が設けられている。この相対角度検出装置20については後で詳述する。
また、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10には、上述した相対角度検出装置20の出力値、自動車の移動速度である車速Vを検出する車速センサ170の出力値が入力される。
【0016】
以上のように構成されたステアリング装置100は、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクTを相対角度検出装置20からの出力値に基づいて検出し、検出した操舵トルクTに応じて制御装置10が電動モータ110を駆動制御し、電動モータ110の発生トルクをピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。つまり、ピニオンシャフト106は、ステアリングホイール101の回転によって発生する操舵トルクTと電動モータ110から付与される補助トルクとで回転する。
【0017】
次に、相対角度検出装置20について詳述する。
図3は、図2におけるX部の拡大図である。図4は、相対角度検出装置20の主要部品の概略構成図である。図5は、相対角度検出装置20を、図2におけるY方向から見た図である。なお、図4においては、後述するブラケット60は省略している。
【0018】
相対角度検出装置20は、同軸的に配置された2つの回転軸の一例としての、ハウジング120に回転可能に支持された下部連結シャフト108と、同じくハウジング120に回転可能に支持されたピニオンシャフト106との相対回転角度(トーションバー140の捩れ量)を検出する装置である。
相対角度検出装置20は、下部連結シャフト108に取り付けられる磁石21と、磁石21が形成する磁界内に配置されたヨーク30と、ヨーク30に生じる磁束密度を検出する磁気センサ40とを有している。
【0019】
磁石21は、円筒状であり、図4に示すように、下部連結シャフト108の周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに周方向に着磁されている。この磁石21は、カラー22を介して下部連結シャフト108に取り付けられている。つまり、磁石21がカラー22に固定されており、カラー22が下部連結シャフト108に固定されている。そして、磁石21は下部連結シャフト108とともに回転する。なお、磁石21の下部連結シャフト108の軸方向の長さは、ヨーク30の長さよりも長い。
【0020】
ヨーク30は、第1のヨーク31と、第2のヨーク32と、下部連結シャフト108の軸方向に第1のヨーク31と第2のヨーク32との間に設けられた、第3のヨーク33とから構成されている。これら第1のヨーク31、第2のヨーク32および第3のヨーク33は、ピニオンシャフト106に取り付けられる。
【0021】
第1のヨーク31は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第1の円環部31aと、この第1の円環部31aから下部連結シャフト108の軸方向に伸びるように形成された複数の第1の突起部31bとを有している。
第1の突起部31bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。つまり、磁石21のN極およびS極がそれぞれ例えば12個である場合には、第1の突起部31bも12個形成されている。そして、この第1の突起部31bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図3,図5に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第1の突起部31bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0022】
第2のヨーク32は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第2の円環部32aと、この第2の円環部32aから下部連結シャフト108の軸方向に伸びるように形成された複数の第2の突起部32bとを有している。
第2の突起部32bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。そして、この第2の突起部32bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図3,図5に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第2の突起部32bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0023】
第3のヨーク33は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第3の円環部33aと、この第3の円環部33aから下部連結シャフト108の軸方向に、第1のヨーク31側へ伸びるように形成された複数の第3の突起部33bと、第2のヨーク32側へ伸びるように形成された複数の第4の突起部34bとを有している。
第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。そして、この第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図3,図5に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第3の突起部33bおよび第4の突起部34bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0024】
また、第1のヨーク31の第1の突起部31bと第3のヨーク33の第3の突起部33bとは、下部連結シャフト108の周方向に交互に配置されている。第2のヨーク32の第2の突起部32bと第3のヨーク33の第4の突起部34bとは、下部連結シャフト108の周方向に交互に配置されている。
なお、本実施の形態に係る第3のヨーク33においては、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、下部連結シャフト108の軸方向に一体的に連続して形成されている。
【0025】
そして、本実施の形態に係る相対角度検出装置20においては、トーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときに、図5に示すように、下部連結シャフト108の周方向において、時計回転方向に見た場合に磁石21のN極とS極との境界線と第1のヨーク31の第1の突起部31bの周方向の中心が一致するように配置されている。
【0026】
第2のヨーク32の第2の突起部32bは、下部連結シャフト108の周方向には、第1のヨーク31の第1の突起部31bと同じ位置となるように配置されている。つまり、トーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときに、第1の突起部31bが対向する磁石21のN極とS極との境界線と、第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。すなわち、図5に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石21のN極とS極との境界線と第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石21のN極あるいはS極と対向する場合に、第2の突起部32bは、第1の突起部31bが対向する極性と同じ極性の磁極に対向する。
【0027】
第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、初期状態のときに、下部連結シャフト108の周方向において、図5に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石21のS極とN極との境界線と第3の突起部33bおよび第4の突起部34bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石21のN極あるいはS極と対向する場合に、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、第1の突起部31bが対向する磁極とは異なる極性の磁極に対向する。
【0028】
また、本実施の形態に係るヨーク30においては、図3に示すように、第1のヨーク31、第2のヨーク32および第3のヨーク33は、インサートモールド成形により一体化されている。そして、インサートモールド成形する際にブラケット60をも一体成形している。ブラケット60は、ピニオンシャフト106の軸方向に伸びる薄肉円筒状の軸方向部位61と、軸方向部位61からピニオンシャフト106の回転半径方向に伸びる円板状の半径方向部位62とを有する。そして、ブラケット60の軸方向部位61がピニオンシャフト106に圧入、溶接あるいはねじ止めされることにより、軸方向部位61がピニオンシャフト106に固定されている。これにより、ヨーク30は、ピニオンシャフト106に固定される。
【0029】
第1の磁気センサ41は、ハウジング120に固定されており、下部連結シャフト108の軸方向において、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間に配置されている。第1の磁気センサ41は、制御装置10から電源電圧が供給されることにより作動して、第1のヨーク31と第3のヨーク33との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
【0030】
また、第2の磁気センサ42は、ハウジング120に固定されており、下部連結シャフト108の軸方向において、第2のヨーク32の第2の円環部32aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間に配置されている。第2の磁気センサ42は、制御装置10から電源電圧が供給されることにより作動して、第2のヨーク32と第3のヨーク33との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
そして、第1の磁気センサ41と第2の磁気センサ42とは、例えば下部連結シャフト108の軸方向に同じ向きの磁界が生じている場合には、同じ符号の磁束密度を検出するように配置されている。
【0031】
以上のように構成された相対角度検出装置20においては、以下に示すように作用する。
図6は、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106とが相対変位する前の相対角度検出装置20の状態を示す図である。図6(a)は、磁石21とヨーク30との関係を、図2におけるY方向に見た図である。図6(b)は、磁石21およびヨーク30を、(a)におけるZ方向に見た図である。
【0032】
トーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときは、図5、図6(a)に示すように、下部連結シャフト108の周方向において、ヨーク30の全ての突起部である第1の突起部31b〜第4の突起部34bの周方向の中心と、磁石21のN極とS極との境界線とが一致する。かかる場合、第1の突起部31b〜第4の突起部34bの各突起部には、磁石21のN極とS極とから同数の磁力線が出入りする。そのため、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間、および第2のヨーク32の第2の円環部32aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間には磁束密度差が生じないので、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42の出力は零となる。
【0033】
ステアリングホイールに操舵トルクTが入力されてトーションバー140に捩れが生じると、磁石21とヨーク30との周方向の相対位置が変化する。
図7は、図5で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転した状態を示す図である。図8は、図5で見た場合に、磁石21がヨーク30に対して反時計回転方向に回転した状態を示す図である。それぞれの図において、(a)は磁石21とヨーク30との関係を、図2におけるY方向から見た図である。(b)は磁石21およびヨーク30を、(a)におけるZ方向に見た図である。
また、図9は、磁石21(下部連結シャフト108)とヨーク30(ピニオンシャフト106)との相対角度(トーションバー140の捩れ角θ)と第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42が検出する磁束密度との関係を示す図である。
【0034】
図7および図8に示すように、トーションバー140が捩れると、下部連結シャフト108の周方向において、ヨーク30の第1の突起部31b〜第4の突起部34bの周方向の中心と、磁石21のN極とS極との境界線とが一致しなくなる。つまり、初期状態に比べて、磁石21のいずれかの磁極がヨーク30の第1の突起部31b〜第4の突起部34bと対向する領域が増加する。
【0035】
より具体的には、図7の状態においては、第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石21のN極と対向する領域が増加し、第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のS極と対向する領域が増加する。そのため、磁石21のN極から第1の突起部31bおよび第2の突起部32bに向かう磁力線が、第1の突起部31bおよび第2の突起部32bから磁石21のS極に向かう磁力線よりも増加する。また、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bから磁石21のS極に向かう磁力線が、磁石21のN極から第3の突起部33bおよび第4の突起部34bに向かう磁力線よりも増加する。これにより、第1のヨーク31の第1の円環部31aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう磁束密度が増加するとともに第2のヨーク32の第2の円環部32aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう磁束密度が増加する。
【0036】
そして、第1のヨーク31の第1の円環部31aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう方向をプラスの方向とすると、初期状態から、図5で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転するにしたがって、第1の磁気センサ41が検出する磁束密度B1がプラスの方向へ大きくなる。他方、第2の磁気センサ42が検出する磁束密度B2がマイナスの方向へ大きくなる。以下、図5で見た場合に、初期状態から、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転するときに、「右方向」の操舵トルクTが発生しているものとする。
【0037】
また、図8の状態においては、第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石21のS極と対向する領域が増加し、第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のN極と対向する領域が増加する。そのため、第1の突起部31bおよび第2の突起部32bから磁石21のS極に向かう磁力線が、磁石21のN極から第1の突起部31bおよび第2の突起部32bに向かう磁力線よりも増加する。また、磁石21のN極から第3の突起部33bおよび第4の突起部34bに向かう磁力線が、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bから磁石21のS極に向かう磁力線よりも増加する。これにより、第3のヨーク33の第3の円環部33aから第1のヨーク31の第1の円環部31aへ向かう磁束密度が増加するとともに第3のヨーク33の第3の円環部33aから第2のヨーク32の第2の円環部32aへ向かう磁束密度が増加する。それゆえ、初期状態から、図5で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転するにしたがって、第1の磁気センサ41が検出する磁束密度B1がマイナスの方向へ大きくなる。他方、第2の磁気センサ42が検出する磁束密度B2がプラスの方向へ大きくなる。以下、図5で見た場合に、初期状態から、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転するときに、「左方向」の操舵トルクTが発生しているものとする。
【0038】
図9においては、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106とを、両方向に磁極1個(α度)分相対的に回転させた場合の磁束密度の変化を示している。そして、トーションバー140が両方向に1/3×α度捩れることを許容する仕様にすることで、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、トーションバー140の捩れ量(下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度)に比例する磁束密度の変化を検出することが可能となる。
【0039】
第1の磁気センサ41は、検出した磁束密度B1を、この磁束密度B1に応じた電圧値を示す第1の電圧信号V1sに変換して出力し、第2の磁気センサ42は、検出した磁束密度B2を、この磁束密度B2に応じた電圧値を示す第2の電圧信号V2sに変換して出力する。トーションバー140の捩れ量(下部連結シャフト108とピニオンシャフト106の相対回転角度)とステアリングホイール101の操舵トルクTとは比例関係にある。つまり、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、操舵トルクTに応じた電圧値を示す第1の電圧信号V1sおよび第2の電圧信号V2sを出力する。
【0040】
図10は、操舵トルクTと、第1の電圧信号V1sおよび第2の電圧信号V2sとの関係を示す図である。
図10においては、横軸に操舵トルクT、縦軸に第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を示している。横軸は、操舵トルクTが零の状態、言い換えれば、トーションバー140の捩れ量が零の状態を中点にし、右方向の操舵トルクTをプラス、左方向の操舵トルクをマイナスとしている。
そして、本実施の形態に係る第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、図10に示すように、第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sが示す第2の電圧V2が、最大電圧VHiと最小電圧VLoとの間で変化するように構成されている。なお、最大電圧VHiは、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42が第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力可能な出力上限値よりわずかに低く、最小電圧VLoは、出力可能な出力下限値よりわずかに高く設定される。これは、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42の出力上限値や出力下限値の近傍では、第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力する電圧が不安定になって操舵トルクTの検出精度が低下するおそれがあるためである。
【0041】
そして、図10の実線で示すように、第1の磁気センサ41が出力する第1の電圧信号V1sは、操舵トルクTの右方向への大きさが増加(トーションバー140の右方向への回転量が増加)するのに伴って電圧が上昇する特性を有する。すなわち、ステアリングホイール101が右方向に回転すると第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が上昇する。また、図10の破線で示すように、第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2は、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と同じ最大電圧VHiと最小電圧VLoの間で変化するとともに第1の電圧信号V1sと逆の特性(負の相関関係)を有し、操舵トルクTの右方向への大きさが増加するのに伴って第2の電圧信号V2sが低下する特性を有する。すなわち、ステアリングホイール101が右方向に回転すると第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が低下する。
【0042】
そして、中点では第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2とが等しい電圧(以下、「中点電圧Vc」と称する場合がある)となるように構成されている。中点電圧Vcは、例えば、最大電圧VHiと最小電圧VLoの中間の電圧(Vc=(VHi+VLo)/2)となる。
さらに、操舵トルクTの変化に対する第1の電圧信号V1sの変化の割合と第2の電圧信号V2sの変化の割合(絶対値)は等しく、同じ操舵トルクTを示す第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を合計した合計電圧Vt(以下、単に「合計電圧Vt」と称する場合がある)が常に予め定められた所定電圧となる特性を有する。本実施の形態において、合計電圧Vtは、一定電圧(VHi+VLo)となるように構成されており、「VHi+VLo」が所定電圧となる。
【0043】
例えば、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42が、0〜5〔V〕の間の電圧値を第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力可能な性能を有する場合、すなわち、出力下限値が0〔V〕で出力上限値が5〔V〕の場合に、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の最大電圧VHiを4.5〔V〕、最小電圧VLoを0.5〔V〕に設定すると、中点電圧Vcは2.5〔V〕、所定電圧は5〔V〕になる。
したがって、操舵トルクTが零の中点では、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2は共に2.5〔V〕となり、第1の電圧V1と第2の電圧V2との合計電圧Vtは常に5〔V〕となる。そして、操舵トルクTが右方向に増加すると、第1の電圧V1は2.5〔V〕から上昇し、第2の電圧V2は2.5〔V〕から低下する。他方、操舵トルクTが左方向に増加すると、第1の電圧V1は2.5〔V〕から低下し、第2の電圧V2は2.5〔V〕から上昇する。
【0044】
次に、制御装置10について説明する。
制御装置10は、電動モータ110の制御を行う際の演算処理を行うCPU11と、CPU11にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM12と、CPU11の作業用メモリ等として用いられるRAM13と、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory)14と、を備えている。
制御装置10には、上述した相対角度検出装置20からの出力値、車速センサ170にて検出された車速Vが出力信号に変換された車速信号vなどが入力される。
【0045】
図11は、ステアリング装置100の制御装置10の概略構成図である。
制御装置10は、相対角度検出装置20から入力される信号に基づいて操舵トルクTを検出するトルク検出部210と、トルク検出部210にて検出された操舵トルクTに基づいて電動モータ110に供給する目標電流を算出する目標電流算出部220と、を備えている。目標電流算出部220は、後述する第1の目標電流決定部225を有している。
また、制御装置10は、トルク検出部210が操舵トルクTを検出するのに用いる中立補正値ΔVを設定する中立補正値設定部250を備えている。中立補正値設定部250は、後述するように電動モータ110の実際の回転速度と目標の回転速度との偏差が零になるように電動モータ110に供給する目標電流を算出する第2の目標電流決定部254を有している。
【0046】
また、制御装置10は、第1の目標電流決定部225あるいは第2の目標電流決定部254が決定した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部230と、制御部230への入力を第1の目標電流決定部225からの出力値と第2の目標電流決定部254からの出力値とで切り替える切替部270と、を有している。また、制御装置10は、電動モータ110の回転角度(以下、「モータ角度θ」と称する場合もある。)を算出するモータ角度算出部36と、モータ角度算出部36で算出されたモータ角度θに基づいて実際の電動モータ110の回転速度(以下、「実回転速度Nma」と称する場合もある。)を算出するモータ回転速度算出部37と、を有している。
【0047】
先ずは、目標電流算出部220について詳述する。
図12は、目標電流算出部220の概略構成図である。
目標電流算出部220は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部221と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部222と、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部223とを備えている。また、目標電流算出部220は、ベース電流算出部221、イナーシャ補償電流算出部222、ダンパー補償電流算出部223などからの出力に基づいて目標電流を決定する第1の目標電流決定部225を備えている。さらに、目標電流算出部220は、トルク信号Tdの位相補償を行う位相補償部226を備えている。
【0048】
なお、目標電流算出部220には、トルク信号Tdと、車速信号vと、モータ回転速度算出部37からの回転速度信号Nmsとが入力される。制御装置10には、車速センサ170などからの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、目標電流算出部220に取り込んでいる。
【0049】
ベース電流算出部221は、位相補償部226にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサ170からの車速信号vとに基づいてベース電流を算出し、このベース電流の情報を含むベース電流信号Imbを出力する。なお、ベース電流算出部221は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Tsおよび車速信号vとベース電流との対応を示すマップに、検出されたトルク信号Tsおよび車速信号vを代入することによりベース電流を算出する。
【0050】
イナーシャ補償電流算出部222は、トルク信号Tdと車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流を算出し、この電流の情報を含むイナーシャ補償電流信号Isを出力する。なお、イナーシャ補償電流算出部222は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Tdおよび車速信号vとイナーシャ補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdおよび車速信号vを代入することによりイナーシャ補償電流を算出する。
【0051】
ダンパー補償電流算出部223は、トルク信号Tdと、車速信号vと、モータ角速度ωとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流を算出し、この電流の情報を含むダンパー補償電流信号Idを出力する。なお、ダンパー補償電流算出部223は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Td、車速信号vおよびモータ角速度ωと、ダンパー補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdと車速信号vとモータ角速度ωとを代入することによりダンパー補償電流を算出する。
【0052】
第1の目標電流決定部225は、ベース電流算出部221から出力されたベース電流信号Imb、イナーシャ補償電流算出部222から出力されたイナーシャ補償電流信号Isおよびダンパー補償電流算出部223から出力されたダンパー補償電流信号Idに基づいて最終的な目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号IT1を出力する。第1の目標電流決定部225は、例えば、ベース電流に、イナーシャ補償電流を加算するとともにダンパー補償電流を減算して得た補償電流を、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、補償電流と最終的な目標電流との対応を示すマップに代入することにより最終的な目標電流を算出する。
【0053】
次に、制御部230について詳述する。
図13は、制御部230の概略構成図である。
制御部230は、電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部231と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部232と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部233とを有している。
モータ駆動制御部231は、第1の目標電流決定部225にて決定された目標電流又は第2の目標電流決定部254にて決定された目標電流と、モータ電流検出部233にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部240と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部260とを有している。
【0054】
フィードバック制御部240は、目標電流算出部220にて最終的に決定された目標電流とモータ電流検出部233にて検出された実電流Imとの偏差を求める偏差演算部241と、その偏差が零となるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部242とを有している。
偏差演算部241は、目標電流算出部220からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部233からの出力値であるモータ電流信号Imsとの偏差の値を偏差信号241aとして出力する。
【0055】
フィードバック(F/B)処理部242は、目標電流と実電流Imとが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号241aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号242aを生成・出力する。
PWM信号生成部260は、フィードバック制御部240からの出力値に基づいてPWM信号260aを生成し、生成したPWM信号260aを出力する。
【0056】
モータ駆動部232は、所謂インバータであり、例えば、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
モータ電流検出部233は、モータ駆動部232に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出して、検出した実電流Imをモータ電流信号Imsに変換して出力する。
【0057】
モータ角度算出部36は、電動モータ110に設けられたレゾルバの出力信号に基づいてモータ角度θを算出する。このモータ角度θは、電動モータ110のU相電機子巻線の位置を基準とするロータ(界磁)の角度である。モータ回転速度算出部37は、モータ角度算出部36で算出されたモータ角度θに基づいて実回転速度Nmaを算出し、算出した実回転速度Nmaを回転速度信号Nmsに変換して出力する。これらモータ角度θおよび実回転速度Nmaの符号は、以下のように定められる。つまり、前輪150側から受ける力を零として、ユーザがステアリングホイール101を操舵トルクTの符号がプラスとなるように回転させたときに電動モータ110が回転する方向をモータ角度θおよび実回転速度Nmaのプラス方向とする。
【0058】
次に、トルク検出部210について説明する。
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、相対角度検出装置20(磁気センサ40)の中立点(零点)が正規状態(操舵トルクTが零であるときの磁気センサ40からの出力値が中点電圧Vc(2.5V)となる状態)からずれている場合には、操舵フィーリングが悪くなるおそれがある。これは、ステアリングホイール101を操作して左右方向に同じ操舵トルクTを加えても、電動パワーステアリング装置100の操舵補助力は一方が大きく、他方が小さくなって操舵補助力にアンバランスが生じてしまうからである。
【0059】
相対角度検出装置20の中立点(零点)が正規状態である場合、左右同じ大きさの操舵トルクTに対して相対角度検出装置20の中点電圧Vcからの偏差(絶対値)は等しくなり、電動モータ110による操舵補助力は左右方向共に等しく、バランスされる。これに対して、相対角度検出装置20の中立点(零点)が正規状態からずれている場合には、操舵トルクTが零であるときであっても、相対角度検出装置20の出力値が中点電圧Vcとは異なる値となり、その出力値に応じた操舵トルクTが作用しているものとして電動モータ110により操舵補助力が与えられてしまう。そして、例えば、相対角度検出装置20の出力値が中点電圧Vcとなるのが右方向にTaずれた操舵トルクである場合、右方向の操舵トルクTが零からTaの範囲においては、ステアリングホイール101を右方向に操作しても電動モータ110により左方向の操舵補助力が作用してしまう。
【0060】
かかる事項に鑑み、本実施の形態に係るトルク検出部210は以下のように構成されている。
トルク検出部210は、相対角度検出装置20から入力される信号に基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する出力部211と、中立補正値ΔVを記憶する中立補正値記憶部212と、を備えている。
中立補正値ΔVは、以下のようにして中立補正値設定部250により設定される値である。中立補正値設定部250にて設定される前は、初期値として零に設定される値である。中立補正値記憶部212は、EEPROM14の領域の一部にて構成されており、第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1と、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2とが書き込まれている。
【0061】
出力部211は、磁気センサ40の第1の磁気センサ41が正常である場合には、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と、中立補正値記憶部212に記憶された中立補正値ΔV1とに基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
第1の電圧V1と中立補正値ΔV1とに基づいて操舵トルクTを算出する手法としては以下を例示することができる。すなわち、先ず、第1の電圧V1に中立補正値ΔV1を加算することにより得た補正後電圧V1fと、操舵トルクTとの関係を示すマップをROM12に記憶しておき、トルク検出部210は、このマップに、補正後電圧V1fを代入することにより操舵トルクTを算出する。又は、補正後電圧V1fと操舵トルクTとの関係を示す関数、あるいは、第1の電圧V1および中立補正値ΔV1と操舵トルクTとの関係を示す関数を組み込んでおき、トルク検出部210は、この関数に第1の電圧V1および中立補正値ΔV1を代入して操舵トルクTを算出してもよい。
なお、出力部211は、磁気センサ40の第1の磁気センサ41に異常が生じ、第2の磁気センサ42のみが正常である場合には、非常用として、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2と、中立補正値記憶部212に記憶された中立補正値ΔV2とに基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
【0062】
次に、中立補正値ΔVの設定について説明する。
電動パワーステアリング装置100においては、この電動パワーステアリング装置100を構成する部品の製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に生じる摩擦などにより、製品毎に相対角度検出装置20の中立点(零点)が異なる場合がある。
そこで、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100においては、制御装置10が中立補正値設定部250を備え、電動パワーステアリング装置100を組み立てた後、あるいは電動パワーステアリング装置100を乗り物に組み付けた後に中立補正値ΔVを算出し、トルク検出部210の中立補正値記憶部212に書き込み可能に構成した。
中立補正値設定部250が中立補正値ΔVを算出する方法は以下の通りである。
電動モータ110を右方向に所定の回転速度で回転させたときの磁気センサ40の出力値と、左方向に所定の回転速度で回転させたときの磁気センサ40の出力値とに基づいてこれらの出力値の中間の電圧値Vmを算出する。そして、中点電圧Vcからこの中間の電圧値Vmを減算することで中立補正値ΔVを算出する(ΔV=Vc−Vm)。
【0063】
次に、この中立補正値設定部250について詳述する。
図14は、中立補正値設定部250の概略構成図である。
中立補正値設定部250は、外部機器300から特定信号を受信するとともに特定信号の受信をトリガーとして後述する中立補正値設定処理を行う中立補正値算出部251と、電動モータ110の目標回転速度Nmtを設定する目標モータ回転速度設定部252と、を備えている。また、中立補正値設定部250は、目標モータ回転速度設定部252にて設定された目標回転速度Nmtと電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaとの偏差を算出する偏差算出部253と、偏差算出部253が算出した偏差に基づいて電動モータ110に供給する目標電流を算出する第2の目標電流決定部254と、を備えている。
なお、外部機器300としては、電動パワーステアリング装置100の組み立て工場、電動パワーステアリング装置100を搭載する乗り物の生産工場あるいはサービス工場に設置されて、上記中立補正値設定処理を実行させる特定信号を送信できる装置であればよい。
【0064】
目標モータ回転速度設定部252は、中立補正値算出部251から出力されたコマンドに基づいて電動モータ110の目標回転速度Nmtを決定し、この目標回転速度Nmtの情報を含む目標回転速度信号Nmtsを出力する。
偏差算出部253は、目標モータ回転速度設定部252にて設定された目標回転速度Nmtから、モータ回転速度算出部37にて算出された電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaを減算することで、目標回転速度Nmtと実回転速度Nmaとの偏差を算出する。
【0065】
第2の目標電流決定部254は、偏差算出部253が算出した偏差に基づいて電動モータ110に供給する目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号IT2を出力する。第2の目標電流決定部254は、目標回転速度Nmtと実回転速度Nmaとの差が零となるように電動モータ110に供給する目標電流を決定する。より具体的には、第2の目標電流決定部254は、偏差算出部253が算出した偏差を、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、モータ回転速度の偏差と目標電流との対応を示すマップに代入することにより目標電流を算出し、この目標電流を電動モータ110に供給する目標電流として決定する。
【0066】
次に、フローチャートを用いて、中立補正値算出部251が行う中立補正値設定処理の手順について説明する。
図15は、中立補正値算出部251が行う中立補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。中立補正値算出部251は、制御装置10に備えられたインターフェイスを介して外部機器300からコマンドを取得した場合に、この中立補正値設定処理を実行する。以下では、磁気センサ40の第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1を設定する場合を例示して説明する。
【0067】
先ず、中立補正値算出部251は、電動パワーステアリング装置100が中立状態であるか否かを判別する(ステップ(以下、単に、「S」と記す。)1501)。これは、ステアリングホイール101や前輪150から負荷が掛かっているか否かを判別する処理であり、磁気センサ40からの出力値に係る電圧が、ROM12に予め記憶されている中点電圧Vcを中心とする所定範囲内であるか否かを判別し、所定範囲内であれば中立状態であると判定し、所定範囲外であれば中立状態ではないと判定する。そして、中立状態であれば(S1501でYes)、制御部230への入力を第2の目標電流決定部254からの出力値とするように切替部270を切り替える(S1502)。
【0068】
その後、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を右方向の目標回転速度Nmtrとするためのコマンドを送る(S1503)。
そして、電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域であるか否かを判別する(S1504)。この所定の右方向の回転速度領域は、右方向の目標回転速度Nmtr−5(rpm)以上、右方向の目標回転速度Nmtr+5(rpm)以下であることを例示することができる。
【0069】
そして、実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域である場合(S1504でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってから(S1504にて最初に肯定判定されてから)、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、右方向の平均電圧V1rを算出する(S1505)。
【0070】
その後、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってから(S1504にて最初に肯定判定されてから)、予め定められた規定時間が経過したか否かを判別する(S1506)。そして、規定時間が経過していない場合(S1506でNo)、S1503以降の処理を行う。
また、実回転速度Nmaが所定の回転速度領域ではない場合(S1504でNo)、S1503以降の処理を行う。
【0071】
規定時間が経過した場合(S1506でYes)、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を左方向の目標回転速度Nmtlとするためのコマンドを送る(S1507)。
そして、電動モータ110の実際の回転速度である実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域であるか否かを判別する(S1508)。この所定の左方向の回転速度領域は、左方向の目標回転速度Nmtl−5(rpm)以上、左方向の目標回転速度Nmtl+5(rpm)以下であることを例示することができる。
そして、実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域である場合(S1508でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域内となってから(S1508にて最初に肯定判定されてから)、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、左方向の平均電圧V1lを算出する(S1509)。
【0072】
その後、今回の中立補正値設定処理において最初に実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域内となってから(S1508にて最初に肯定判定されてから)、予め定められた規定時間が経過したか否かを判別する(S1510)。そして、規定時間が経過していない場合(S1510でNo)、S1507以降の処理を行う。
また、実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域ではない場合(S1508でNo)、S1507以降の処理を行う。
【0073】
その後、S1505にて算出した右方向の平均電圧V1rとS1509にて算出した左方向の平均電圧V1lとの中間の電圧値(中立電圧値)Vm1(=(V1r+V1l)/2)を算出する(S1511)。
そして、その後、第1の磁気センサ41の中点電圧VcからS1511にて算出した中間の電圧値Vm1を減算することにより中立補正値ΔV1(=Vc−Vm1)を算出する(S1512)。
その後、S1512にて算出した中立補正値ΔV1を、新たな中立補正値ΔV1としてトルク検出部210の中立補正値記憶部212に書き込む(S1513)。
その後、制御部230への入力を第1の目標電流決定部225からの出力値とするように切替部270を切り替える(S1514)。
【0074】
図16は、中立補正値設定処理により中立補正値ΔV1が設定される過程を示す図である。
S1503にて、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を右方向の目標回転速度Nmtrとするためのコマンドが送られると、目標モータ回転速度設定部252が図16(a)に示すように電動モータ110の目標回転速度Nmtrを決定する。そして、第2の目標電流決定部254が、偏差算出部253が算出する目標回転速度Nmtrと実回転速度Nmaとの差が零となるように電動モータ110に供給する目標電流を決定する。その結果、電動モータ110の実回転速度Nmaが図16(b)に示すように変化する。
【0075】
そして、実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域である場合(S1504でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、右方向の平均電圧V1rを算出する(S1505)。この処理を、最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってから規定時間が経過するまで行う。その結果、S1505にて算出した右方向の平均電圧V1rが、例えば図16(c)に示すように2.4〔V〕である。
なお、電動モータ110が右方向に回転すると、この電動モータ110の回転駆動力により、図5で見た場合に、ピニオンシャフト106(ヨーク30)が下部連結シャフト108(磁石21)に対して時計回転方向に回転する。そのため、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転し、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1は中点電圧Vcよりも低くなる。
【0076】
規定時間が経過した後(S1506でYes)、S1507にて、目標モータ回転速度設定部252に対して、電動モータ110の回転速度を左方向の目標回転速度Nmtlとするためのコマンドが送られると、目標モータ回転速度設定部252が図16(a)に示すように電動モータ110の目標回転速度Nmtlを決定する。そして、第2の目標電流決定部254が、偏差算出部253が算出する目標回転速度Nmtlと実回転速度Nmaとの差が零となるように電動モータ110に供給する目標電流を決定する。その結果、電動モータ110の実回転速度Nmaが図16(b)に示すように変化する。
【0077】
そして、実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域である場合(S1508でYes)、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sを読み込み、これまで取得した第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1を平均化し、左方向の平均電圧V1lを算出する(S1505)。この処理を、最初に実回転速度Nmaが所定の左方向の回転速度領域内となってから規定時間が経過するまで行う。その結果、S1509にて算出した左方向の平均電圧V1lが、例えば図16(c)に示すように2.7〔V〕である。
【0078】
その後、S1505にて算出した右方向の平均電圧V1r=2.4〔V〕とS1509にて算出した左方向の平均電圧V1l=2.7〔V〕との中間の電圧値Vm1を、Vm1=(2.4+2.7)/2=2.55〔V〕と算出する(S1511)。
その後、第1の磁気センサ41の中点電圧Vc=2.5〔V〕からS1511にて算出した中間の電圧値Vm1=2.55〔V〕を減算することにより中立補正値ΔV1を、ΔV1=2.5−2.55=−0.05〔V〕と算出する(S1512)。
その後、S1512にて算出した中立補正値ΔV1=−0.05〔V〕を、新たな中立補正値ΔV1としてトルク検出部210の中立補正値記憶部212に書き込む(S1513)。
【0079】
中立補正値設定部250が上述したように構成されることで、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100においては、この電動パワーステアリング装置100を構成する部品の製造ばらつき、部品締結のばらつきあるいは部品間に摩擦が生じたとしても、操舵トルクTが零であるときの中立点を導き出すことができるので、操舵フィーリングを向上させることができる。また、トルク計などの計測器を用いることなく、操舵トルクTが真に零であるときの中立点を導き出すことができるので、操舵フィーリングの向上を簡易な構成で実現できる。
【0080】
なお、上述した中立補正値設定処理においては、第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1を設定する場合を例示して説明したが、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を設定する処理も上記と同様であり、第1の磁気センサ41の中立補正値ΔV1を設定するための中立補正値設定処理が終了したら、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を設定するための中立補正値設定処理を連続して実行すればよい。あるいは、上記中立補正値設定処理の実行開始後、S1513にて中立補正値ΔV1を書き込んだ後、S1514の処理を行う前に、第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を設定するためにS1503以降の処理を再度行いS1513にて第2の磁気センサ42の中立補正値ΔV2を書き込んだ後、S1514の処理を行って中立補正値設定処理を終了してもよい。
【0081】
また、上述した中立補正値設定処理においては、S1506およびS1510にて、最初に実回転速度Nmaが所定の回転速度領域内となってから規定時間が経過したか否かを判別し、S1505およびS1509においては、規定時間内に読み込んだセンサ信号に基づいた平均電圧を算出しているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、S1506およびS1510にて、S1505およびS1509において読み込んだセンサ信号が予め定められた規定回数に到達したか否かを判別してもよい。つまり、センサ信号に基づいた電圧の規定回数分の平均電圧を、右方向の平均電圧V1r、左方向の平均電圧V1lとする。また、その規定回数は、連続して実回転速度Nmaが所定の回転速度領域内である場合(最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってからS1504あるいはS1508で否定判定されない場合)の回数であるとよい。また、規定回数は、必ずしも連続していることを必要とせず、最初に実回転速度Nmaが所定の右方向の回転速度領域内となってからS1504あるいはS1508で肯定判定された回数であってもよい。
【0082】
また、磁気センサ40自体がEEPROMを有するとともにそのEEPROMに記憶された中立補正値ΔVを加味して出力し、トルク検出部210が磁気センサ40からの出力値に応じた操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する構成である場合には、中立補正値算出部251が算出した中立補正値ΔVを、磁気センサ40のEEPROMに書き込むことができる構成とするとよい。
【符号の説明】
【0083】
10…制御装置、20…トルク検出装置、21…磁石、30…ヨーク、40…磁気センサ、41…第1の磁気センサ、42…第2の磁気センサ、100…電動パワーステアリング装置、101…ステアリングホイール(ハンドル)、110…電動モータ、210…トルク検出部、220…目標電流算出部、230…制御部、250…中立補正値設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、
前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、
前記相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
前記補正値を設定する補正値設定手段と、
を備え、
前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記補正値設定手段は、前記相対角度検出手段が出力する電気信号の最大値と最小値との中間の値である基準値と、前記右側出力値と前記左側出力値との中間の値である中間出力値との差に基づいて前記補正値を設定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記トルク検出手段が検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータに供給する目標電流を決定する第1の目標電流決定手段と、
前記電動モータの回転速度が前記所定回転速度となるように前記電動モータに供給する目標電流を決定する第2の目標電流決定手段と、
前記第1の目標電流決定手段が決定した目標電流又は前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する供給手段と、
をさらに備え、
前記補正値設定手段は、前記供給手段が前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する場合の前記相対角度検出手段からの出力値に基づいて前記補正値を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する検出部と、当該検出部の検出値を補正するための補正値を記憶する補正値記憶部とを有し、当該検出値を当該補正値にて補正した後の値に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、
前記補正値を設定する補正値設定手段と、
前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、
を備え、
前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、当該2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、当該補正値を設定する補正値設定手段と、を備える電動パワーステアリング装置における当該補正値を設定する設定方法であって、
前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値を取得する工程と、
前記電動モータが左方向に前記所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である左側出力値を取得する工程と、
前記右側出力値と前記左側出力値とに基づいて前記補正値を算出する工程と、
前記補正値を算出する工程にて算出した当該補正値を前記記憶領域に記憶する工程と、
を含むことを特徴とする設定方法。
【請求項1】
同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、
前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、
前記相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
前記補正値を設定する補正値設定手段と、
を備え、
前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記補正値設定手段は、前記相対角度検出手段が出力する電気信号の最大値と最小値との中間の値である基準値と、前記右側出力値と前記左側出力値との中間の値である中間出力値との差に基づいて前記補正値を設定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記トルク検出手段が検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータに供給する目標電流を決定する第1の目標電流決定手段と、
前記電動モータの回転速度が前記所定回転速度となるように前記電動モータに供給する目標電流を決定する第2の目標電流決定手段と、
前記第1の目標電流決定手段が決定した目標電流又は前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する供給手段と、
をさらに備え、
前記補正値設定手段は、前記供給手段が前記第2の目標電流決定手段が決定した目標電流を前記電動モータに供給する場合の前記相対角度検出手段からの出力値に基づいて前記補正値を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する検出部と、当該検出部の検出値を補正するための補正値を記憶する補正値記憶部とを有し、当該検出値を当該補正値にて補正した後の値に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、
前記補正値を設定する補正値設定手段と、
前記2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、
を備え、
前記補正値設定手段は、前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値と、当該電動モータが左方向に当該所定回転速度で回転したときの当該相対角度検出手段からの出力値である左側出力値とに基づいて前記補正値を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度検出手段と、当該2つの回転軸のいずれか一方の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該相対角度検出手段からの出力値と記憶領域に記憶された補正値とに基づいて操舵トルクを検出するトルク検出手段と、当該補正値を設定する補正値設定手段と、を備える電動パワーステアリング装置における当該補正値を設定する設定方法であって、
前記電動モータが右方向に予め定められた所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である右側出力値を取得する工程と、
前記電動モータが左方向に前記所定回転速度で回転したときの前記相対角度検出手段からの出力値である左側出力値を取得する工程と、
前記右側出力値と前記左側出力値とに基づいて前記補正値を算出する工程と、
前記補正値を算出する工程にて算出した当該補正値を前記記憶領域に記憶する工程と、
を含むことを特徴とする設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−210900(P2012−210900A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78420(P2011−78420)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】
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