説明

電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法

【課題】 過電圧を抑制しながら、小型化、低コスト化を達成することができる電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法を提供する。
【解決手段】 オン状態またはオフ状態のIGBT3のゲート3gに、それぞれ所定のオフ用電圧値Voffまたはオン用電圧値Vonをゲート回路7から入力することによってオン、オフ制御を行うようにしたIGBT3の駆動方法で、一方の状態から他方の状態へ切り替える時、ゲート回路7からゲート3gに、先ず、オン用電圧値Vonまたはオフ用電圧値Voffの一方の電圧値からオン用電圧値Vonとオフ用電圧値Voffの間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、その後、他方の電圧値を入力することによりオン、オフ制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力変換装置等に用いられた電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、電圧駆動型半導体スイッチング素子、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)やMOS形電界効果トランジスタ(MOSFET)等は、電鉄車両用や産業用のインバータ、無停電電源装置におけるインバータ等の電力変換装置に用いられており、例えばIGBTを用いて直流を3相交流に変換する電力変換装置では、3相のブリッジを構成している6つのアームそれぞれに、通常は主回路を構成するよう複数個が直列に接続されている。そして、各IGBTの制御は、ホトカプラ等を介して入力された制御入力に基づき動作するゲート駆動回路によって行われる。
【0003】
こうした電力変換装置におけるIGBTの駆動は、IGBTの周辺回路を図18に示すように構成して行われる。すなわち、図18において、101はゲート駆動回路で、主回路を構成するIGBT102のゲート102gに対し、ゲート抵抗103を介しゲート回路104を接続するように設けた回路となっている。また、IGBT102のコレクタ102cとエミッタ102eの主端子間には、逆導通ダイオード105が導通方向を逆とするようにして並列に接続されており、さらに主端子間に並列にスナバダイオード106、スナバコンデンサ107、スナバ抵抗108で構成されるスナバ回路109が接続されている。
【0004】
また、このように構成された回路では、ゲート駆動回路101に入力されたIGBT102をオン、オフ制御するためのゲート指令(制御指令)Sに基づき、ゲート回路104からゲート回路出力が出力され、ゲート抵抗103を介してIGBT102のゲート102gに入力される。これによりIGBT102がオン状態となれば、所定の電流がコレクタ102cとエミッタ102eの主端子間が導通して主回路に流れ、またオフ状態であればコレクタ102cとエミッタ102eの主端子間が非導通状態となり、主回路に電流が流れなくなる。
【0005】
そして、図19、図20に示すように、IGBT102をオン、オフ制御するゲート電圧は、例えば+15Vのオン用電圧と−15Vのオフ用電圧の2値であり、その2値間の切換速度は比較的高速度である。このため、+15Vのオン用電圧から−15Vのオフ用電圧にゲート電圧が変化し、IGBT102がオン状態からオフ状態に切り替えられる際には、IGBT102のターンオフに伴うターンオフ過電圧が、IGBT102及び逆導通ダイオード105の各素子に生じる。
【0006】
これは、主回路の配線インダクタンス成分による電流エネルギ分が、IGBT102においては、そのターンオフ時の急激な電流変化(急峻なdi/dt)によって大きな電圧となり、素子電圧にそれぞれ加算されるためである。またIGBT102に逆並列接続されている逆導通ダイオード105においても、逆導通ダイオード105のオフ時の電流変化が急激な場合(diR/dt:ダイオード電流が逆回復電流ピークに達した後、減少する期間(di/dt)が急峻な場合)に、IGBT102の場合と同様に、配線インダクタンス成分による過電圧が発生する。そして、この時のピーク電圧値が各素子の定格電圧を超えると、素子は破壊してしまうことになる。
【0007】
こうしたオン、オフ制御に伴う過電圧で破壊しないようIGBT102及び逆導通ダイオード105を過電圧保護するものとして、図18中に示したスナバ回路109がある。スナバ回路109では、ターンオフに伴い生じる主回路の配線インダクタンス成分による電流エネルギ分を、スナバコンデンサ107に充電させることで、IGBT102の過電圧が抑制され保護がなされる。
【0008】
また、過電圧を抑制するための別構成として、図21に示すものがある。図21において、逆導通ダイオード105がコレクタとエミッタの主端子間に接続されているIGBT102のコレクタ102cとゲート102g間に、ツェナーダイオード110が挿入されている。そして、挿入されたツェナーダイオード110のツェナー電圧は、IGBT102の最大許容電圧値に設定されたものとなっている。
【0009】
このようにツェナーダイオード110を挿入した構成では、IGBT102がオン状態からオフ状態に切り替えられるターンオフ時に、IGBT102のコレクタ電圧がツェナーダイオード110のツェナー電圧を超えると、ツェナーダイオード110がオンする。またIGBT102のゲート電圧については、図示しないゲート回路によって−15V方向に充電されるが、ツェナーダイオード110がオンすることでコレクタ102c側からゲート102gに対して+15V方向への充電がなされることになる。
【0010】
これにより、IGBT102が再度オンすることになり素子電圧は低下するが、IGBT102のコレクタ電圧がツェナーダイオード110のツェナー電圧以下となると、ツェナーダイオード110は即座にオフするので、IGBT102のゲート102gは再び−15V方向へ充電され、IGBT102はオフとなる。その結果、ツェナーダイオード110によってIGBT102のコレクタ電圧は、その最大許容電圧値であるツェナー電圧以下となり、過電圧が抑制される。
【0011】
しかしながら上記の従来技術においては、IGBT102の高電圧化、大電流化等に伴い、過電圧保護のためのスナバ回路109のスナバコンデンサ107やスナバ抵抗108等の回路部品やツェナーダイオード110も、対応して高電圧化、大電流化等が必要となってくる。そのため、IGBT102を用いて構成されるインバータ等の電力変換装置では、形状が大きなものとなり、コストも高いものとなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、過電圧保護については従来と同様であるか、あるいはそれ以上の性能を有しながら、小型化、低コスト化が達成することができる電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法は、
オン状態またはオフ状態の電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、それぞれ所定のオフ用電圧値またはオン用電圧値をゲート回路から入力することによってオン、オフ制御を行うようにした電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法において、
一方の状態から他方の状態へ切り替える時、
前記ゲート回路から前記ゲートに、
先ず、前記オン用電圧値または前記オフ用電圧値の一方の電圧値から前記オン用電圧値と前記オフ用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、その後、他方の電圧値を入力することによりオン、オフ制御を行うことを特徴とする方法であり、
さらに、前記ゲート回路からオン状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
先ず、前記オン用電圧値から該オン用電圧値と前記オフ用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、
その後、前記オフ用電圧値を入力するようにしたことを特徴とする方法であり、
さらに、オン状態からオフ状態へ切り替える時、
前記オン用電圧値から前記所定中間電圧値まで漸次変化させる前記時間を、前記電圧駆動型半導体スイッチング素子に接続した負荷に流れる負荷電流値に対応して変化させることを特徴とする方法であり、
さらに、前記ゲート回路からオフ状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
先ず、前記オフ用電圧値から該オフ用電圧値と前記オン用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、
その後、前記オン用電圧値を入力するようにしたことを特徴とする方法であり、
さらに、オフ状態からオン状態へ切り替える時、
前記オフ用電圧値から前記所定中間電圧値まで漸次変化させる前記時間を、前記電圧駆動型半導体スイッチング素子に接続した負荷に流れる負荷電流値に対応して変化させることを特徴とする方法であり、
さらに、前記ゲート回路と前記ゲートの接続が、低インピーダンス接続となっていることを特徴とする方法である。
【0014】
また、オン状態またはオフ状態の電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、それぞれ所定のオフ用電圧値またはオン用電圧値をゲート回路から入力することによってオン、オフ制御を行うようにした電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法において、
一方の状態から他方の状態へ切り替える時、
前記ゲート回路から前記ゲートに、前記オン用電圧値または前記オフ用電圧値の一方の電圧値から他方の電圧値まで予め設定した電圧パターンにしたがい変化する電圧値を入力することによってオン、オフ制御を行うことを特徴とする方法であり、
さらに、前記ゲート回路からオン状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
前記オン用電圧値から前記オフ用電圧値まで予め設定した電圧パターンにしたがい変化する電圧値を入力することによってオン、オフ制御を行うことを特徴とする方法であり、
さらに、前記ゲート回路からオフ状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
前記オフ用電圧値から前記オン用電圧値まで予め設定した電圧パターンにしたがい変化する電圧値を入力することによってオン、オフ制御を行うことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
オン状態の電圧駆動型半導体スイッチング素子のターンオフ時に、ゲート電圧をオン用電圧値からオン用電圧値とオフ用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化させ、その後、オフ用電圧値とすることでオン、オフ制御を行っている。このため、ターンオフ時の急峻なdi/dtが低減され、スナバ回路等の過電圧保護回路を要することなく、配線インダクタンス成分による過電圧発生が抑制できることになる。
【0016】
さらに、オフ状態の電圧駆動型半導体スイッチング素子のターンオン時に、ゲート電圧をオフ用電圧値からオン用電圧値とオフ用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化させ、その後、オン用電圧値とすることでオン、オフ制御を行っている。このため、電圧駆動型半導体スイッチング素子の素子電流が、0からゲート電圧が所定中間電圧値である時の素子電流値まで所定の時間をかけてターンオンすることになり、ターンオンする電圧駆動型半導体スイッチング素子に対しスイッチングが対となる他相の電圧駆動型半導体スイッチング素子に並列接続され、オフ動作する逆導通ダイオードの電流も、同様に所定の時間をかけて低下することになる。その結果、逆導通ダイオードのオフ時の急峻なdiF/dtが低減し、逆導通ダイオードの逆回復特性がソフトリカバリ化され、過電圧発生が抑制される。
【0017】
このように、スナバ回路等を要することなく電圧駆動型半導体スイッチング素子等の過電圧保護を行うことができると共に、電圧駆動型半導体スイッチング素子を用いたインバータ等の電力変換装置の小型化、低コスト化を達成することができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を、電圧駆動型半導体スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いた場合を例にして、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず第1の実施形態を図1乃至図6により説明する。図1は電力変換装置の概略を示す構成図であり、図2はIGBTの駆動回路構成を示す回路図であり、図3はゲート指令、ゲート回路出力の波形図であり、図4はIGBTのI‐V特性曲線上における軌跡を示す図であり、図5はオフ切替用電圧値がスレッショルド電圧以下である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形図であり、図6はオフ切替用電圧値がスレッショルド電圧以上である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形図である。
【0020】
図1乃至図6において、1は直流を3相交流に変換する電力変換装置で、3相のブリッジを構成している6つのアーム2u,2v,2w,2x,2y,2zの主回路に、それぞれIGBT3を設けて構成されている。さらに、各IGBT3には、そのコレクタ3cとエミッタ3eの主端子間に、逆導通ダイオード4が導通方向を逆とするようにして並列に接続されている。なお、図1では1つのIGBT3によって各アーム2u,2v,2w,2x,2y,2zをそれぞれ構成したが、電力変換装置1の仕様に応じ、複数個のIGBT3を直列に接続した構成となる。
【0021】
また、各アーム2u,2v,2w,2x,2y,2zの各IGBT3の制御は、図示しない制御部からホトカプラ等を介し供給された制御入力(ゲート指令)Sに基づき動作するゲート駆動回路5からのゲート制御出力が、各IGBT3のゲート3gにそれぞれ所定のタイミングで入力することにより行われる。そして、電力変換装置1の出力である直流から変換された交流電力が、例えば交流電動機等の3相負荷6に供給される。
【0022】
また、IGBT3の制御を行うゲート駆動回路5は、各IGBT3に対応する同じ構成のゲート回路7を設けていて、各ゲート回路7からはゲート指令Sに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート抵抗8を介し対応するIGBT3のゲート3gに、ゲート制御出力として供給されるようになっている。さらに、各ゲート回路7は、電圧発生器9、タイマ10、2つの切替端子11a,11bを有する切替スイッチ11、電流増幅器12を備えた構成となっていて、電圧発生器9とタイマ10には、同時にゲート指令Sが入力されるよう接続されている。なお、各アーム2u,2v,2w,2x,2y,2zは、本実施形態及び以下の各実施形態についても同様の構成であるため、1つのアーム2uを例として説明する。
【0023】
また電圧発生器9は、その出力側が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに接続されており、切替スイッチ11の他方の切替端子11bにはオフ用電圧値Voffが加わるようになっている。そして、切替スイッチ11に各入力し、切り替え選択された電圧発生器9の出力とオフ用電圧値Voffとは、その後、出力端子11cから電流増幅器12に入力され、電流増幅器12からゲート回路出力としてゲート抵抗8に入力される。
【0024】
また、電圧発生器9は、例えばIGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonを+15V、オフ動作するオフ用電圧値Voffを−15Vとした時、IGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonから、オン用電圧値Vonとオフ用電圧値Voffとの間の予め設定した、例えば+5Vの所定の中間電圧値(オフ切替用電圧値)Vaoffまで、直線的に漸次低下する電圧を出力する可変電圧電源となっている。そして、ゲート指令Sのオフ信号Soffが入力されることで電圧発生器9からは、+15Vのオン用電圧値Vonから+5Vの中間電圧値Vaoffまで、予め設定した所定の一定の時間Taoffをかけて漸次低下する電圧が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに出力される。
【0025】
また切替スイッチ11については、オン状態のIGBT3をオフするようゲート指令Sのオフ信号Soffが入力されることで時間カウントを開始したタイマ10によって、電圧発生器9の電圧低下時間Taoffと同じ、予め設定した所定の時間Taoffが経過した時点で、切替動作が行われるようになっている。そして、時間が経過することで、切替スイッチ11では、電圧発生器9が接続された一方の切替端子11aから、−15Vのオフ用電圧値Voffが加わっている他方の切替端子11bへの切替が行われる。
【0026】
そのため、ゲート回路7の出力は、図3に示すように制御部からのゲート指令Sに基づきオン状態からオフ状態に切り替わる際、+15Vのオン用電圧値Vonから+5Vの中間電圧値Vaoffまで、時間Taoffをかけて漸次低下し、低下後、瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffに変化する。そして、このようなゲート回路7の出力がゲート抵抗8を介してゲート3gに加わることにより、IGBT3がターンオフする際の素子電流変化(di/dt)が緩和されたものとなる。
【0027】
すなわち、図4に示すIGBT3のI‐V特性曲線上での軌跡(太い実線矢印)を示す図により説明すると、ゲート指令Sのオフ信号Soffが入力すると、オン状態のIGBT3のゲート電圧Vgeが+15Vのオン用電圧値Vonより漸次低下していき、これに伴いIGBT3の素子電圧Vceは徐々に上昇する。そして、IGBT3の素子電流値Icが飽和電流値IcXとなるゲート電圧値VgeXにゲート電圧Vgeが達すると、IGBT3のゲート電圧Vgeによる素子電流絞りが始まり、素子電圧Vceは、IGBT3がオフの時の素子電圧VceXまで上昇する。
【0028】
さらにゲート電圧Vgeが低下していくことで、素子電流Icは各ゲート電圧Vgeに対応する飽和電流値をとりながら低下していくことになる。その後、各ゲート電圧Vgeがスレッショルド電圧以下になると、素子電流Icは0となりIGBT3はオフする。このゲート電圧Vgeの低下する時間が所定の一定値であることにより、素子電流Icのdi/dtが低減されたものとなる。
【0029】
さらに、中間電圧値(オフ切替用電圧値)Vaoffがスレッショルド電圧以下である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形を示す図5と、中間電圧値(オフ切替用電圧値)Vaoffがスレッショルド電圧以上である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形を示す図6とにより説明する。
【0030】
図5においては、時間Taoffの間にゲート電圧Vgeがスレッショルド電圧以下になるので、IGBT3は時間Taoffが経過する中でオフする。しかし、図6においては、時間Taoffで、素子電流Icはゲート電圧Vgeが中間電圧値Vaoffにおける飽和電流値まで低下するが、IGBT3はオフしない。時間Taoffがすぎた後、ゲート電圧Vgeが−15Vのオフ用電圧値Voffに切替わることで、IGBT3はオフする。この時、素子電流Icは高いdi/dtとなり、これによる電圧サージが発生するが、中間電圧値Vaoffを十分低い素子電流Icとなる電圧値、例えば5Vと設定していることで、電圧ピークを抑制できる。
【0031】
以上の通り、本実施形態によれば、IGBT3のターンオフ時に、ゲート電圧Vgeをオン用電圧値Von(+15V)から中間電圧値Vaoff(+5V)まで所定の時間Taoffで低下させることで、素子電流Icが負荷電流IcXからゲート電圧Vgeが中間電圧値Vaoffである時の素子電流まで、一定の時間Taoffで低下することになる。これにより、IGBT3ターンオフ時の急峻なdi/dtが低減され、主回路の配線インダクタンス成分によりIGBT3に発生する過電圧が抑制できる。
【0032】
なお、上記の実施形態においては電圧発生器9の電圧変化が、直線的に漸次低下するものとしたが、これに限るものでなく、漸次曲線的、階段状に変化するものであってもよい。
【実施例2】
【0033】
次に第2の実施形態を図7により説明する。図7はIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0034】
図7において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、13はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路である。ゲート駆動回路13には、第1の実施形態と同じ構成のゲート回路7が、各IGBT3に対応して設けられている。そして、ゲート回路7にはゲート指令Sが制御部から供給されるようになっている。またゲート回路7とIGBT3のゲート3gとは、ゲート抵抗を介すことなく、接続配線14のみによって直接接続されている。すなわち、ゲート回路7とIGBT3のゲート3gとの間は、接続配線14のみの低インピーダンスでの接続となっている。
【0035】
このように構成されているので、制御部からゲート指令Sはゲート駆動回路13のゲート回路7に供給され、それに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート回路7からそのままゲート制御出力として直接IGBT3のゲート3gに供給される。そのため、ゲート回路7の出力電圧はそのままIGBT3のゲート3gに加わり、ゲート回路7の出力電圧の値と、IGBT3のゲート電圧Vgeの値は同値となる。
【0036】
そして、オン状態のIGBT3をオフするようゲート指令Sのオフ信号Soffがゲート回路7に入力すると、ゲート回路7は第1の実施形態におけると同じように、ゲート回路7の出力は、+15Vのオン用電圧値Vonから+5Vの中間電圧値Vaoffまで、時間Taoffをかけて漸次低下し、その後、瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffに変化する。
【0037】
この変化するゲート回路7の出力電圧の値が、接続配線14を経て直接IGBT3のゲート3gに加わることになり、ゲート電圧Vgeはオン用電圧値Von(+15V)から中間電圧値Vaoff(+5V)まで所定の時間Taoffで低下し、素子電流Icが負荷電流IcXからゲート電圧Vgeに対応する中間電圧値Vaoffにおける素子電流まで、一定の時間Taoffで低下する。これにより、本実施形態によれば、IGBT3ターンオフ時の急峻なdi/dtがより効果的に低減され、主回路の配線インダクタンス成分によりIGBT3に発生する過電圧が抑制できる。
【実施例3】
【0038】
次に第3の実施形態を図8により説明する。図8はIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0039】
図8において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、15はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路であり、16は負荷回路に挿入され、負荷6を流れる負荷電流値を検出する電流検出器である。ゲート駆動回路15は、各IGBT3に対応する同じ構成のゲート回路17を設けていて、各ゲート回路17からはゲート指令Sに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート抵抗8を介し対応するIGBT3のゲート3gに、ゲート制御出力として供給されるようになっている。
【0040】
また、各ゲート回路17は、電圧発生器18、タイマ19、切替スイッチ11、電流増幅器12を備えた構成となっていて、電圧発生器18とタイマ19には、同時にゲート指令Sが入力されるよう接続されている。さらに、電圧発生器18とタイマ19には、電流検出器16で検出した負荷電流値の信号が入力されるように構成されている。
【0041】
また電圧発生器18は、その出力側が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに接続されており、切替スイッチ11の他方の切替端子11bにはオフ用電圧値Voffが加わるようになっている。そして、切替スイッチ11に各入力し、切り替え選択された電圧発生器18の出力とオフ用電圧値Voffとは、出力端子11cから電流増幅器12を介しゲート回路出力としてゲート抵抗8に入力される。
【0042】
また、電圧発生器18は、例えばIGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonを+15V、オフ動作するオフ用電圧値Voffを−15Vとした時、IGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonから、オン用電圧値Vonとオフ用電圧値Voffとの間の予め設定した、例えば+5Vの所定の中間電圧値(オフ切替用電圧値)Vaoffまで、直線的に漸次低下する電圧を出力する可変電圧電源となっている。そして、ゲート指令Sのオフ信号Soffが入力されることで電圧発生器9からは、+15Vのオン用電圧値Vonから+5Vの中間電圧値Vaoffまで、電流検出器16で検出した負荷電流値に対応して可変となるよう設定した時間Tboffをかけて、漸次低下する電圧が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに出力される。
【0043】
また切替スイッチ11については、オン状態のIGBT3をオフするようゲート指令Sのオフ信号Soffが入力されることで時間カウントを開始したタイマ19によって、電圧発生器18の負荷電流値に対応して可変に設定された電圧低下時間Tboffと同じ、時間Tboffが経過した時点で、切替動作が行われるようになっている。そして、時間が経過することで、切替スイッチ11では、電圧発生器18が接続された一方の切替端子11aから、−15Vのオフ用電圧値Voffが加わっている他方の切替端子11bへの切替が行われる。
【0044】
そのため、ゲート回路17の出力は、制御部からのゲート指令Sに基づきオン状態からオフ状態に切替わる際、+15Vのオン用電圧値Vonから+5Vの中間電圧値Vaoffまで、時間Tboffをかけて漸次低下し、低下後、瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffに変化する。
【0045】
この時、IGBT3に流れる素子電流Icが負荷電流と略等しいと考えられるから、例えばIGBT3のターンオフ時の過電圧レベルが高くなる領域、すなわち予め設定した電流値基準よりIGBT3の素子電流Icの値が高くなる領域では、時間Tboffを予め設定した基準時間よりも長くする。これにより、素子電流変化(di/dt)は低減する。また逆に、素子電流Icの値が低くなる領域では、時間Tboffを予め設定した基準時間よりも短くする。これにより、素子電流変化(di/dt)は高めとなる。このように、負荷電流値に対応して時間Tboffを可変としたゲート回路17の出力がゲート抵抗8を介してゲート3gに加わることにより、IGBT3がターンオフする際の素子電流変化(di/dt)が緩和されたものとなる。
【0046】
以上の通り、本実施形態によれば、IGBT3のターンオフ時に、ゲート電圧Vgeをオン用電圧値Von(+15V)から中間電圧値Vaoff(+5V)まで、負荷電流値に対応して可変とした時間Tboffで低下させることで、素子電流Icが負荷電流IcXからゲート電圧Vgeが中間電圧値Vaoffである時の素子電流まで、負荷電流値に応じた時間Tboffで低下することになる。これにより、IGBT3ターンオフ時のdi/dtが負荷電流値に応じて変えられ、その結果、効果的に主回路の配線インダクタンス成分によりIGBT3に発生する過電圧が抑制できる。
【0047】
なお、上記の実施形態においては電圧発生器18の電圧変化が、直線的に漸次低下するものとしたが、これに限るものでなく、漸次曲線的、階段状に変化するものであってもよい。
【実施例4】
【0048】
次に第4の実施形態を図9乃至図13により説明する。図9はIGBTの駆動回路構成を示す回路図であり、図10はゲート指令、ゲート回路出力の波形図であり、図11はIGBTのI‐V特性曲線上における軌跡を示す図であり、図12はオン切替用電圧値がスレッショルド電圧以下である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流及びスイッチングが対となるIGBTに逆並列接続している逆導通ダイオードの電圧、電流の波形図であり、図13はオン切替用電圧値がスレッショルド電圧以上である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流及びスイッチングが対となるIGBTに逆並列接続している逆導通ダイオードの電圧、電流の波形図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0049】
図9至図13において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、20はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路であり、ゲート駆動回路20は、各IGBT3に対応する同じ構成のゲート回路21を設けていて、各ゲート回路21からはゲート指令Sに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート抵抗8を介し対応するIGBT3のゲート3gに、ゲート制御出力として供給されるようになっている。さらに、各ゲート回路21は、電圧発生器22、切替スイッチ11、電流増幅器12を備えた構成となっていて、電圧発生器22と切替スイッチ11には、同時にゲート指令Sが入力されるよう接続されている。
【0050】
また電圧発生器22は、その出力側が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに接続されており、切替スイッチ11の他方の切替端子11bにはオフ用電圧値Voffが加わるようになっている。そして、切替スイッチ11に各入力し、切り替え選択された電圧発生器22の出力とオフ用電圧値Voffとは、その後、出力端子11cから電流増幅器12に入力され、電流増幅器12からゲート回路出力としてゲート抵抗8に入力される。
【0051】
また、電圧発生器22は、例えばIGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonを+15V、オフ動作するオフ用電圧値Voffを−15Vとした時、IGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonとオフ動作するオフ用電圧値Voffとの間の予め設定した、例えば+5Vの所定の中間電圧値(オン切替用電圧値)Vaonから、オン用電圧値Vonまで、直線的に漸次上昇する電圧を出力する可変電圧電源となっている。そして、ゲート指令Sのオン信号Sonが入力されることで電圧発生器22からは、+5Vの中間電圧値Vaonから+15Vのオン用電圧値Vonまで、予め設定した所定の一定の時間Taonをかけて漸次上昇する電圧が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに出力される。
【0052】
また切替スイッチ11については、オフ状態のIGBT3をオンするようゲート指令Sのオン信号Sonが入力されることで、−15Vのオフ用電圧値Voffが加わっている他方の切替端子11bから、電圧発生器22が接続された一方の切替端子11aへ切り替える切替動作が行われるようになっている。
【0053】
そのため、ゲート回路21の出力は、図10に示すように制御部からのゲート指令Sに基づきオフ状態からオン状態に切替わる際、先ず切替スイッチ11の切替動作で、瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffから+5Vの中間電圧値Vaonに変化し、その後、+5Vの中間電圧値Vaonから+15Vのオン用電圧値Vonまで、時間Taonをかけて漸次上昇する。そして、このようなゲート回路21の出力がゲート抵抗8を介してゲート3gに加わることにより、IGBT3がターンオンする際の素子電流変化(di/dt)が緩和されたものとなる。
【0054】
すなわち、図11に示すIGBT3のI‐V特性曲線上での軌跡(太い実線矢印)を示す図により説明すると、IGBT3に対してスイッチングが対となる他相のIGBT3に逆並列接続している逆導通ダイオード4、例えば図1における1つのアーム2uのIGBT3に対し、スイッチングが対となるアーム2xのIGBT3に逆並列接続している逆導通ダイオード4のダイオード電流値をIcXとした時、ゲート指令Sのオン信号Sonが入力すると、オフ状態のIGBT3のゲート電圧Vgeは、−15Vのオフ用電圧値Voffから+5Vの中間電圧値Vaonに瞬時に変化し、さらに、+5Vの中間電圧値Vaonから徐々に上昇する。
【0055】
その後、ゲート電圧Vgeがスレッショルド電圧以上になると、IGBT3はオンし、IGBT3の素子電流値Icは0から徐々に上昇する。そして、IGBT3の素子電流値Icが飽和電流値IcXとなるゲート電圧値VgeXにゲート電圧Vgeが達するまでは、素子電流はゲート電圧Vgeの飽和電流値をとりながら上昇していく。この間のIGBT3の素子電圧Vceは、オフ時の素子電圧VceXのままである。さらに、ゲート電圧VgeがVgeXに達すると、素子電圧Vceは低下しIGBT3は完全にオン状態となる。このゲート電圧Vgeの上昇する時間が所定の一定値であることにより、素子電流Icのdi/dtが低減されたものとなる。
【0056】
さらに、中間電圧値(オン切替用電圧値)Vaonがスレッショルド電圧以下である場合と、中間電圧値(オン切替用電圧値)Vaonがスレッショルド電圧以上である場合のターンオフ時のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形及びスイッチングが対となる他相のIGBTに逆並列接続している逆導通ダイオードのダイオード電圧、ダイオード電流の波形をそれぞれ示す図12、図13により説明する。
【0057】
図12においては、ゲート指令Sのオン信号Sonが入力された時にはゲート電圧Vgeがスレッショルド電圧以下になるので、IGBT3はオフのままである。そして、IGBT3のターンオン時には、他相の逆導通ダイオード4がオフとなるが、この逆導通ダイオード4のダイオード電流は、ターンオンしたIGBT3の素子電流と同じdi/dtで低下することになる。これにより、この逆導通ダイオード4のオフ時の急峻なdiF/dt(ダイオードオフ時にダイオード電流が負荷電流値から0になる期間のdi/dt)が低減され、逆回復特性がソフトリカバリ化されることで、この逆導通ダイオード4に発生する過電圧が抑制できる。
【0058】
また、図13においては、ゲート指令Sのオン信号Sonが入力された時にはゲート電圧Vgeが瞬時にスレッショルド電圧以上になるので、IGBT3はオンする。素子電流が0からIGBT3のゲート電圧Vgeが中間電圧値Vaonであるときの飽和電流値まで高いdi/dtでオンすることになる。この時、他相の逆導通ダイオード4のダイオード電流も、この高いdi/dtで低下すことになるが、IGBT3のゲート電圧Vgeが中間電圧値Vaonであるときの飽和電流値が充分に低い素子電流Icとなるように、中間電圧値Vaonを設定することで、この逆導通ダイオード4のトータルのdiF/dtは低減されるので、この逆導通ダイオード4に発生する過電圧は抑制できる。
【0059】
以上の通り、本実施形態によれば、上記構成とすることで、逆導通ダイオード4のオフ時の急峻なdiF/dtが低減し、それによって逆導通ダイオード4の逆回復特性がソフトリカバリ化され、逆導通ダイオード4のオフ時に発生する逆導通ダイオード4の過電圧が抑制できる。
【0060】
なお、上記の実施形態においては電圧発生器22の電圧変化が、直線的に漸次上昇するものとしたが、これに限るものでなく、漸次曲線的、階段状に変化するものであってもよい。
【実施例5】
【0061】
次に第5の実施形態を図14により説明する。図14はIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。なお、第1の実施形態及び第2実施形態、第4の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態及び第2実施形態、第4の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0062】
図14において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、23はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路である。ゲート駆動回路23には、第4の実施形態と同じ構成のゲート回路21が、各IGBT3に対応して設けられている。そして、ゲート回路21にはゲート指令Sが制御部から供給されるようになっている。またゲート回路21とIGBT3のゲート3gとは、ゲート抵抗を介すことなく、接続配線14のみによって直接接続されている。すなわち、ゲート回路21とIGBT3のゲート3gとの間は、接続配線14のみの低インピーダンスでの接続となっている。
【0063】
このように構成されているので、制御部からゲート指令Sはゲート駆動回路23のゲート回路21に供給され、それに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート回路21からそのままゲート制御出力として直接IGBT3のゲート3gに供給される。そのため、ゲート回路21の出力電圧はそのままIGBT3のゲート3gに加わり、ゲート回路21の出力電圧の値と、IGBT3のゲート電圧Vgeの値は同値となる。
【0064】
そして、オフ状態のIGBT3をオンするようゲート指令Sのオン信号Sonがゲート回路21に入力すると、ゲート回路21は第4の実施形態におけると同じように、ゲート回路21の出力は、瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffから+5Vの中間電圧値Vaonに変化し、その後、+5Vの中間電圧値Vaonから+15Vのオン用電圧値Vonまで、時間Taonをかけて漸次上昇する。
【0065】
この変化するゲート回路21の出力電圧の値が、接続配線14を経て直接IGBT3のゲート3gに加わることになり、ゲート電圧Vgeは瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffから+5Vの中間電圧値Vaonに変化した後、+5Vの中間電圧値Vaonから+15Vのオン用電圧値Vonまで、所定の時間Taonをかけて漸次上昇する。これにより、本実施形態によれば、IGBT3がターンオンする際の急峻なdi/dtがより効果的に低減される。また、IGBT3とスイッチングが対となる他相のIGBT3に逆並列接続している逆導通ダイオード4も、そのダイオード電流がオフ時における急峻なdiF/dtが効果的に低減され、さらに逆回復特性がソフトリカバリ化されることで、逆導通ダイオード4に発生する過電圧が抑制できる。
【実施例6】
【0066】
次に第6の実施形態を図15により説明する。図15はIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。なお、第1の実施形態及び第3実施形態、第4の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態及び第3実施形態、第4の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0067】
図8において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、24はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路であり、ゲート駆動回路24は、各IGBT3に対応する同じ構成のゲート回路25を設けていて、各ゲート回路25からはゲート指令Sに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート抵抗8を介し対応するIGBT3のゲート3gに、ゲート制御出力として供給されるようになっている。さらに、各ゲート回路25は、電圧発生器26、切替スイッチ11、電流増幅器12を備えた構成となっていて、電圧発生器26と切替スイッチ11には、同時にゲート指令Sが入力されるよう接続されている。そして、電圧発生器26には、電流検出器16で検出した負荷電流値の信号が入力されるように構成されている。
【0068】
また、電圧発生器26は、その出力側が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに接続されており、切替スイッチ11の他方の切替端子11bにはオフ用電圧値Voffが加わるようになっている。そして、切替スイッチ11に各入力し、切り替え選択された電圧発生器26の出力とオフ用電圧値Voffとは、その後、出力端子11cから電流増幅器12に入力され、電流増幅器12からゲート回路出力としてゲート抵抗8に入力される。
【0069】
さらに電圧発生器26は、例えばIGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonを+15V、オフ動作するオフ用電圧値Voffを−15Vとした時、IGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonとオフ動作するオフ用電圧値Voffとの間の予め設定した、例えば+5Vの所定の中間電圧値(オン切替用電圧値)Vaonから、オン用電圧値Vonまで、直線的に漸次上昇する電圧を出力する可変電圧電源となっている。そして、ゲート指令Sのオン信号Sonが入力されることで電圧発生器26からは、+5Vの中間電圧値Vaonから+15Vのオン用電圧値Vonまで、電流検出器16で検出した負荷電流値に対応して可変となるよう設定した時間Tbonをかけて、漸次上昇する電圧が切替スイッチ11の一方の切替端子11aに出力される。
【0070】
また切替スイッチ11については、オフ状態のIGBT3をオンするようゲート指令Sのオン信号Sonが入力されることで、−15Vのオフ用電圧値Voffが加わっている他方の切替端子11bから、電圧発生器26が接続された一方の切替端子11aへ切り替える切替動作が行われるようになっている。
【0071】
そのため、ゲート回路25の出力は、制御部からのゲート指令Sに基づきオフ状態からオン状態に切替わる際、先ず切替スイッチ11の切替動作で、瞬時に−15Vのオフ用電圧値Voffから+5Vの中間電圧値Vaonに変化し、その後、+5Vの中間電圧値Vaonから+15Vのオン用電圧値Vonまで、時間Tbonをかけて漸次上昇する。
【0072】
この時、IGBT3に流れる素子電流Icが負荷電流と略等しいと考えられるから、例えばIGBT3に対してスイッチングが対となる他相のIGBT3に逆並列接続している逆導通ダイオード4のオフ時のダイオード電流が高い領域では、時間Tbonを予め設定した基準時間よりも長くし、di/dtは低減する。逆に、ダイオード電流が低い領域では、時間Tbonを予め設定した基準時間よりも短くし、di/dtを高めにする。このように、負荷電流値を検出し、それに応じて電圧発生器26の時間Tbonを可変とすることで、逆導通ダイオード4のオフ時に、逆導通ダイオード4に発生する過電圧をより効果的に抑制できることになる。
【0073】
なお、上記の実施形態においては電圧発生器26の電圧変化が、直線的に漸次上昇するものとしたが、これに限るものでなく、漸次曲線的、階段状に変化するものであってもよい。
【実施例7】
【0074】
次に第7の実施形態を図16により説明する。図16はIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0075】
図16において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、27はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路であり、ゲート駆動回路27は、各IGBT3に対応する同じ構成のゲート回路28を設けていて、各ゲート回路28からはゲート指令Sに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート抵抗8を介し対応するIGBT3のゲート3gに、ゲート制御出力として供給されるようになっている。
【0076】
また、各ゲート回路28は、電圧発生器29、電流増幅器12を備え、さらに電圧発生器29に電圧パターン発生部30を備えた構成となっている。電圧パターン発生部30は、IGBT3のターンオフ時に過電圧が発生しないようIGBT3の最適スイッチングを実現する、例えばIGBT3がオン動作するオン用電圧値Vonの+15Vから、オフ動作するオフ用電圧値Voffの−15Vまで、所定の時間をかけて変化する電圧パターンが、予めプログラムされている。
【0077】
電圧パターン発生部30にプログラムされた電圧パターンは、例えばオン用電圧値Vonからオフ用電圧値Voffまで漸次直線的に、または曲線的に、または階段状に変化するパターン、あるいはオン用電圧値Vonから両電圧値Von,Voffの中間電圧値まで漸次直線的に、または曲線的に、または階段状に変化してから瞬時にオフ用電圧値Voffに変化するパターン等である。
【0078】
また、電圧発生器29は、ゲート指令Sが入力されるようになっていて、ゲート指令Sのオフ信号Soffが入力されることで電圧パターン発生部30が動作し、オン用電圧値Vonからオフ用電圧値Voffまで所定のパターンで変化する電圧を電流増幅器12に出力する。そして、電流増幅器12に入力された所定のパターンで変化する電圧は、電流増幅器12からゲート回路出力としてゲート抵抗8に入力される。
【0079】
そのため、制御部からのゲート指令Sに基づきオン状態からオフ状態に切替わる際、所定の時間をかけ所定の電圧パターンをもって+15Vのオン用電圧値Vonから−15Vのオフ用電圧値Voffまで変化する電圧が、ゲート回路7から出力され、ゲート抵抗8を介してIGBT3のゲート3gに加わり、IGBT3の最適なスイッチングが行われる。その結果、IGBT3がターンオフする際の素子電流変化(di/dt)が緩和されたものとなり、主回路の配線インダクタンス成分によりIGBT3に発生する過電圧が抑制できる。
【実施例8】
【0080】
次に第8の実施形態を図17により説明する。図17はIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0081】
図17において、IGBT3は、第1の実施形態と同様の電力変換装置の主回路に設けられており、31はIGBT3の制御を行うゲート駆動回路であり、ゲート駆動回路31は、各IGBT3に対応する同じ構成のゲート回路32を設けていて、各ゲート回路32からはゲート指令Sに基づく所定のゲート回路出力が、ゲート抵抗8を介し対応するIGBT3のゲート3gに、ゲート制御出力として供給されるようになっている。
【0082】
また、各ゲート回路32は、電圧発生器33、電流増幅器12を備え、さらに電圧発生器33に電圧パターン発生部34を備えた構成となっている。電圧パターン発生部34は、IGBT3に対してスイッチングが対となる他相のIGBT3に逆並列接続している逆導通ダイオード4のダイオードオフ時に過電圧が発生しないようIGBT3の最適スイッチングを実現する、例えばIGBT3がオフ動作するオフ用電圧値Voffの−15Vからオン動作するオン用電圧値Vonの+15Vまで、所定の時間をかけて変化する電圧パターンが、予めプログラムされている。
【0083】
電圧パターン発生部34にプログラムされた電圧パターンは、例えばオフ用電圧値Voffからオン用電圧値Vonまで漸次直線的に、または曲線的に、または階段状に変化するパターン、あるいはオフ用電圧値Voffから瞬時に両電圧値Von,Voffの中間電圧値に変化してから漸次直線的に、または曲線的に、または階段状にオン用電圧値Vonまで変化するパターン等である。
【0084】
また、電圧発生器33は、ゲート指令Sが入力されるようになっていて、ゲート指令Sのオン信号Sonが入力されることで電圧パターン発生部34が動作し、オフ用電圧値Voffからオン用電圧値Vonまで所定のパターンで変化する電圧を電流増幅器12に出力する。そして、電流増幅器12に入力された所定のパターンで変化する電圧は、電流増幅器12からゲート回路出力としてゲート抵抗8に入力される。
【0085】
そのため、制御部からのゲート指令Sに基づきオフ状態からオン状態に切替わる際、所定の時間をかけ所定の電圧パターンをもって−15Vのオフ用電圧値Voffから+15Vのオン用電圧値Vonまで変化する電圧が、ゲート回路7から出力され、ゲート抵抗8を介してIGBT3のゲート3gに加わり、IGBT3の最適なスイッチングが行われる。その結果、逆導通ダイオード4のオフ時、急峻な逆回復電流の電流変化により発生する逆導通ダイオード4の過電圧が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の概略を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるゲート指令、ゲート回路出力の波形図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるIGBTのI‐V特性曲線上における軌跡を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるオフ切替用電圧値がスレッショルド電圧以下である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるオフ切替用電圧値がスレッショルド電圧以上である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流の波形図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図9】本発明の第4の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図10】本発明の第4の実施形態におけるゲート指令、ゲート回路出力の波形図である。
【図11】本発明の第4の実施形態におけるIGBTのI‐V特性曲線上における軌跡を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施形態におけるオン切替用電圧値がスレッショルド電圧以下である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流及びスイッチングが対となるIGBTに逆並列接続している逆導通ダイオードの電圧、電流の波形図である。
【図13】本発明の第4の実施形態におけるオン切替用電圧値がスレッショルド電圧以上である場合のIGBTのゲート電圧、素子電圧、素子電流及びスイッチングが対となるIGBTに逆並列接続している逆導通ダイオードの電圧、電流の波形図である。
【図14】本発明の第5の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図15】本発明の第6の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図16】本発明の第7の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図17】本発明の第8の実施形態におけるIGBTの駆動回路構成を示す回路図である。
【図18】第1の従来技術に係るIGBTの周辺回路を示す回路図である。
【図19】第1の従来技術におけるIGBTのゲート電圧の波形図である。
【図20】第1の従来技術におけるIGBTターンオフ時のIGBTの素子電圧、素子電流及び逆導通ダイオードの素子電圧、素子電流の波形図である。
【図21】第2の従来技術に係るIGBTの周辺回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0087】
3…IGBT
3g…ゲート
4…逆導通ダイオード
5,13,15,20,23,24,27,31…ゲート駆動回路
7,17,21,25,28,32…ゲート回路
9,18,22,26,29,33…電圧発生器
10,19…タイマ
11…切替スイッチ
16…電流検出器
30,31…電圧パターン発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オン状態またはオフ状態の電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、それぞれ所定のオフ用電圧値またはオン用電圧値をゲート回路から入力することによってオン、オフ制御を行うようにした電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法において、
一方の状態から他方の状態へ切り替える時、
前記ゲート回路から前記ゲートに、
先ず、前記オン用電圧値または前記オフ用電圧値の一方の電圧値から前記オン用電圧値と前記オフ用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、
その後、他方の電圧値を入力することによりオン、オフ制御を行うことを特徴とする電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項2】
前記ゲート回路からオン状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
先ず、前記オン用電圧値から該オン用電圧値と前記オフ用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、
その後、前記オフ用電圧値を入力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項3】
オン状態からオフ状態へ切り替える時、
前記オン用電圧値から前記所定中間電圧値まで漸次変化させる前記時間を、前記電圧駆動型半導体スイッチング素子に接続した負荷に流れる負荷電流値に対応して変化させることを特徴とする請求項2記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項4】
前記ゲート回路からオフ状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
先ず、前記オフ用電圧値から該オフ用電圧値と前記オン用電圧値の間の所定中間電圧値まで所定の時間をかけて漸次変化するよう電圧値を入力し、
その後、前記オン用電圧値を入力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項5】
オフ状態からオン状態へ切り替える時、
前記オフ用電圧値から前記所定中間電圧値まで漸次変化させる前記時間を、前記電圧駆動型半導体スイッチング素子に接続した負荷に流れる負荷電流値に対応して変化させることを特徴とする請求項2記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項6】
前記ゲート回路と前記ゲートの接続が、低インピーダンス接続となっていることを特徴とする請求項2または請求項4記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項7】
オン状態またはオフ状態の電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、それぞれ所定のオフ用電圧値またはオン用電圧値をゲート回路から入力することによってオン、オフ制御を行うようにした電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法において、
一方の状態から他方の状態へ切り替える時、
前記ゲート回路から前記ゲートに、前記オン用電圧値または前記オフ用電圧値の一方の電圧値から他方の電圧値まで予め設定した電圧パターンにしたがい変化する電圧値を入力することによってオン、オフ制御を行うことを特徴とする電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項8】
前記ゲート回路からオン状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
前記オン用電圧値から前記オフ用電圧値まで予め設定した電圧パターンにしたがい変化する電圧値を入力することによってオン、オフ制御を行うことを特徴とする請求項7記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。
【請求項9】
前記ゲート回路からオフ状態の前記電圧駆動型半導体スイッチング素子のゲートに、
前記オフ用電圧値から前記オン用電圧値まで予め設定した電圧パターンにしたがい変化する電圧値を入力することによってオン、オフ制御を行うことを特徴とする請求項7記載の電圧駆動型半導体スイッチング素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−37255(P2007−37255A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215635(P2005−215635)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】