説明

電子サイクロトロン共鳴による勾配付きバンドギャップを有する非晶質膜の蒸着

プラズマからの蒸着により基板(14)上に非晶質材料の膜を形成する方法を開示している。基板(14)を容器内に配置し、膜用前駆ガスを各管(20)を通じて容器内に導入し、容器内を低圧にすべく未反応および解離ガスを容器から各管(22)を通じて抽出する。容器内でプラズマを生成するために分散型電子サイクロトロン共鳴(DECR)により容器内のガスに所定の周波数と出力レベルの連続したパルスとしてマイクロ波エネルギーを導入し、プラズマから材料を基板上に蒸着する。蒸着した材料の厚さにわたってバンドギャップを変化させるべく材料の蒸着中にパルスの周波数および/または出力レベルを変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマから作業面上に非晶質材料の蒸着を行う成膜方法に関する。本発明は、特に電子サイクロトロン共鳴でプラズマを生成する際のマイクロ波エネルギーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に関心の高い事項として、プラズマ化学気相成長法として知られている処理における、例えばSiH4、Si2H6あるいはより高次のオリゴマー等のシランの解離によるアモルファスシリコン(a-Si:H)製膜の蒸着がある。アモルファスシリコンまたはアモルファスシリコン合金の蒸着に使用可能な他の前駆ガスは、その中にシリコンが炭素、酸素または窒素のうち1つ以上、更に要すれば水素と合わせて化合して存在する、分子を含む。シリコン合金の例として、SiOxNyで表される種類の構造がある。さらに、シリコン含有ガスは、例えばゲルマン等の他のガスと合わせて使用でき、またシリコンを含まないガスは違う種類の膜、例えば非晶質ゲルマニウムまたは非晶質炭素、の蒸着に使用することもできる。アモルファスシリコン膜の利用に関して特に関心の高い事項は、太陽エネルギーを電力に変換する装置での利用である。このようなアモルファスシリコン材料は例えば表示装置用TFT等の電子技術の応用に利用できる。本明細書内にて使用しているように「アモルファスシリコン」という用語は、水素化非晶質シリコン、a-Si:H、を意味する。上述の分野での使用では、不都合なダングリングボンド(dangling bond)を不動態化すべく水素がある程度、通常3〜20%、存在しなければならない。
【0003】
電子サイクロトロン共鳴(以降「ECR」と略す)を起こすようにプラズマを励起する技術分野において、静磁場あるいは準静磁場にある電子の旋回周波数が印加した加速電場の周波数と等しい時に共鳴する。この共鳴は、磁場BにおいてBと下記の関係を持つ励起周波数fについて得られる。
B=2πmf/e (1)
ここでmとeはそれぞれ質量と電子の電荷である。
【0004】
電子サイクロトロン共鳴周波数でプラズマを励起すると、電子は磁場と同位相で回転し、外部励起源から継続的にエネルギーを得てそこでガスの解離またはイオン化に必要なしきい値を達成するためのECR条件(1)が満たされる。この条件を満たすためには、第一に、電子を磁力線間に閉じ込めたままにすること、つまり電子がその回転中に概ね一定の磁場を確認できるようにその回転半径が静磁場の傾斜に対して十分小なること、第二に、上記回転周期が電子と、原子および/または分子等の中性元素間の衝突頻度に対して大なることを維持することが必要である。言い換えると、電子サイクロトロン共鳴でプラズマを励起するための最良の条件は、ガス圧力が比較的低いと同時に励起周波数fが高い時に得られると予想されており、これは磁場強度Bが高いに違いないことをも意味する。
【0005】
従来の拡散ECRの主な問題は、広範囲で概ね一定の密度を有するプラズマを生成することができないことにある。これは、例えば、広い作業面での概ね均一の材料層の蒸着には使用できないことを意味する。この問題を克服するために分散型電子サイクロトロン共鳴(DECR)として知られている技術が開発された。これには、その中に、合わせて作業面に概ね均一な密度のプラズマを発生する複数のプラズマ励起装置がネットワーク状に形成されている装置を用いる。個々のプラズマ励起装置はそれぞれマイクロ波エネルギー用ワイヤアプリケータで構成されており、一端はマイクロ波エネルギーを発生するソースに結合し、他端は一定の磁場と電子サイクロトロン共鳴に対応した一定の強度を持つ少なくとも1つの表面を形成するべく少なくとも1つの磁気ダイポールを装着している。このダイポールは、アプリケータの端部から離間したダイポールの横位置にプラズマ拡散区域を形成すべく、電子サイクロトロン共鳴するように加速した電子が電極間で確実に往復するような方法でマイクロ波アプリケータの端部に取付けられている。個々の励起装置は、共同して作業面に均一なプラズマを生成すべく作業面に近接して互いに分散して配置されている。
【0006】
このようなDECR装置は、米国特許第6,407,359号明細書(欧州特許第1075168号明細書に対応)に開示されており、これらに記載の本装置のより詳細な説明は図面を参照して以下に記載する。これらの図面から明らかなように、基板から見ると各励起装置は、長方形が正方形であるという特殊なケースを含む、概ね長方形配列を成しており、このためこのような装置をマトリックスDECR(MDECR)装置と呼ぶことがある。しかしながら、本発明はDECR装置で、励起装置を非長方形二次元ネットワークに配置した場合、例えば六角形ネットワークまたは、一方の装置列が他方から離間して2列に平行に並んだ装置の場合にも適用できることを理解されたい。六角形配列の例は、ラガルデ(T. Lagarde)、アーナル(Y. Arnal)、ラコステ(A. Lacoste)、ペレティエ(J. Pelletier)、 「多極磁界上で励起された電子サイクロトロン共鳴プラズマにおけるラングミュアプローブ診断によるEEDFの測定(Determination of the EEDF by Langmuir probe diagnostic in a plasma excited at ECR above a multipolar magnetic field)」、Plasma Sources Sci. Technol. 10、2001年、p.181-190に開示されている。上記装置は、円形、一部円形またはほぼ円形配列に配置してもよい。本願の発明者らによる一部の研究では、それらの磁石の極性を中央プラズマ励起装置の磁石に相対させて配置し、それぞれが三角形または六角形配列に配置された3または6体の装置で中央プラズマ励起装置を囲んだ配置について実施していることに注意されたい。さらに、本発明はMDECR型でないDECR装置に適用できる。このため、例えば、長いアンテナおよびシリンダの頂部から底部まで延在する磁石を使用する、歴史的に見てMDECR型以前の円筒形のDECR反応装置に適用できる。このような配置は、ミシェル・モアサン(Michel Moisan)ジャック・ペレティエ(Jacques Pelletier)著、「マイクロ波励起プラズマ(Microwave Excited Plasmas)」、エルセビア(Elsevier)、1992年に開示されており、管などの円筒形基板だけでなくプラズマの中央部分に横わたって円筒の軸に対して垂直方向を向いた平坦な面の均質なコーティングに適している。
【0007】
通常、薄膜太陽電池は、例えば、pドープ層(p-doped layer)(p層)とnドープ層(n-doped layer)(n層)との間に挟まれたシリコンを主材料とした非晶質材料の真性層(i層)を備え、太陽電池の変換効率はとりわけ非晶質材料のバンドギャップに依存することが知られている。非晶質材料がその厚さ全体にわたって一定のバンドギャップを有する場合、バンドギャップが小さいとより多くの太陽光を収集でき、従ってより大なる変換効率を呈する。しかしながら、バンドギャップが真性層の厚さ全体にわたって適切な形で変化する場合に有利な構造が得られることも知られている。これは、勾配付きバンドギャップとして知られている。本発明の更なる背景として、以下に太陽電池内でのバンドギャップの役割と、勾配付きバンドギャップが有益である理由について述べている。次の説明が相当数の異なるバンドギャップの層が存在する真性層に焦点を当てているが、本発明は、例えば、真性層の大部分が一定のバンドギャップからなり異なるバンドギャップの比較的薄い層がp層あるいはn層に近接している、例えばp層に近接したより高いバンドギャップの緩衝層、の場合等に互いに異なるバンドギャップの2つの層のみが存在する場合にも適用できることに留意されたい。さらに、真性層は2つ以上の領域からできていてもよく、全ての領域が勾配付きバンドギャップを有するわけではない。以下に示す発明の特定の例ではバンドギャップが一つの層から次の層へ階段状に変化することを伴う限りある数の不連続層の蒸着に関係するが、本発明はバンドギャップがその厚さの全体または一部にわたって無段階に変化する場合の方法にも適用できることにも留意されたい。
【0008】
上述の通り、シリコン材料からできている薄膜太陽電池の活性部分は、pドープ層、真性層およびnドープ層の3つの層を含む。図10のエネルギーバンド図に示すように、真性層の端部に存在するpおよびnドープ層は伝導と価電子帯を変形させて電界を生じる。(価電子帯に存在する)正孔はpドープ層に向かってドリフトし、これと同時に(伝導帯に存在する)自由電子はnドープ層に向かってドリフトする。
【0009】
正孔の移動度と寿命は電子のそれらよりかなり短いことはよく知られている。具体的に、良質のa-Si:H材料での正孔および電子の移動度はそれぞれ0.01と1cm2/V/秒である。よってp層から離間した位置に一対の電子正孔対が生成された場合、正孔の収集は厳しくなる。このため、真性層にpドープ層近くの低バンドギャップ材料からnドープ層近くの高バンドギャップ材料まで勾配を付けることは正孔収集には有益である。これは、電荷キャリアの収集を進める電界が増加したためであり、従って太陽電池性能全体にとって有益である。
【0010】
また、アモルファスシリコンによる光吸収が波長によって変わる方法への配慮が必要となる。a-Si:Hの光吸収量が波長によって減るため、赤色光より青色光の方が非常に速く吸収される。p層またはn層を通してセルを照射する場合、青色光は別々にP/IまたはN/Iインターフェースの近くで吸収されるがこれに対して赤色光は真性層の厚さ全体にわたってより一様に吸収される。また、バンドギャップより小さいエネルギーを有する光子は材料に吸収されないため、太陽光の光吸収はバンドギャップが増加すると共に減少する。このため、真性材料のバンドギャップをpドープ層からnドープ層へと増やすと光吸収は、特に太陽光スペクトルの黄−赤色部で、減る。従って、pドープ層を通してセルを照射する場合、勾配の付いていないギャップセル(gap cell)と比べて勾配付きギャップセル固有の厚さの残り半分でより少ない電子/正孔対が生成される。しかし、上述のようにこの勾配の方向は生成された正孔がいずれ収集される確率を高め、より少ない正孔が生成されるという事実より、収集が生成を上回ることがある。セルをnドープ層から照射する場合この方向の傾きでも正孔収集を向上させ、さらに光吸収も真性層厚さ全体により行きわたるため有利となり、従ってn層から照射された勾配の付いていないセルと比較してP/Iインターフェースにより近い。
【0011】
多接合デバイスにとっても勾配付きバンドギャップ接合は関心の対象となっている。このようなデバイスにおいて、通常異なる接合は相互に直列接続しており(図12参照)、その後各接合部は同一電流を有するように調整しなければならない。前方接合部は最も短い波長を吸収し、よって最も大きいバンドギャップを有し、一方後方接合部は最も長い波長を吸収してより小さいバンドギャップを有する。
【0012】
組成勾配付きバンドギャップを有する太陽電池の分野に関する調査は、ラファット(N. Rafat)、ハビブ(S.E.-D. Habib)著、「勾配付きバンドギャップ(The limiting efficiency of band gap graded solar cells)」、Solar Energy Materials & Solar Cells、55、1998年、p.341-361に開示されている。報告されたほとんどの研究はGa1-xAlxAs材料とa-Si合金、特にa-Si:Geに関するものであった。実際、a-SiGe:H材料は、SiとGe原子間ネットワークの不整合による多数の欠陥を特徴としていることはよく知られている。出版された文献の主な結論は、バンドギャップに勾配を付けると、少数キャリアの収集と表面の再結合率の減少の増進を通じて、セル効率を高めるということである。
【0013】
i層の種々の異なるバンドギャップ勾配、例えば、非対称vおよびu型の線形プロファイリング、の太陽電池のパラメータへの影響に関しては当技術分野において研究されている(例えば、フォルシュ(Foelsch, J.)、スティビグ(Stiebig, H.)、フィンガ(Finger, F.)、レック(Rech, B.)、ルンジェン(Lundszien, D.)、ラベルツ(Labertz, A.)、ワグナー(Wagner)著、第25回IEEE Photovoltaic Specialists Conference 議事録、1996年
、p.1133-1136参照)。真性層の軸に沿ってギャップが最小となる領域の位置をずらすとわかるように、バンドギャップの断面形はセルの性能に大きな影響を及ぼしている。勾配の断面形は曲線因子と開路電圧の両方に非常に大きな影響を及ぼす。図13に示すように、非対称v型のp-iインターフェース近くに最小バンドギャップを有するものが最適性能を示すことがわかった。
【0014】
勾配付きバンドギャップ構造を作るために種々の方法が提案されてきた。従って、例えば、英国公開特許第2083701号公報に各勾配付きバンドギャップシリコン合金が開示されている。これらの構造において、シリコン材料のバンドギャップは少なくとも1つのバンドギャップ調整素子(例えば、Ge,Sn,CまたはN)を導入することにより勾配を付けている。
【0015】
勾配付きバンドギャップについて述べている別の先行技術文献に、ダラル(V. Dalal)、ボールドウィン(G. Baldwin)、ガリケパティ(P. Garikepati)著、「勾配付きバンドギャップを利用したa-シリコン太陽電池の安定性の向上(Improvements in stability of a-silicon solar cells through the use of bandgap grading)」、第23回IEEE Photovoltaic Specialists Conference 議事録、1993年、p.816-20がある。これは、公知のa-Si:Hセル勾配は、光励起による真性層へ余計な欠陥が生成された結果であることを説明している。これらの余計な欠陥に起因して2つの結果がもたらされる。
【0016】
(i)これらは付加的な再結合中心としての役割を果たし、これにより電子および正孔の寿命を減らし、よってこれらキャリアの分散距離を減少させる。
(ii)これらはセル内でフィールド分布を移動させ、中央での電界を減らし、PIN a-Si:Hセルのpおよびnインターフェースで電界をわずかに増やす。
この文献における2つ目の事項は勾配付きバンドギャップ構造を用いて解決している。p層と大バンドギャップa-SiC:Hバッファの後にa-Si:H真性層が3つの段階を経て蒸着される。
【0017】
(i)厚さ100〜150nmの一定の低バンドギャップ(好ましくは1.65eV)層を350°Cで蒸着する。
(ii)蒸着温度を100°C下げ、希釈率(つまり、H2/SiH4)を増やすことにより120〜150nmの間でバンドギャップが約1.8eVに変えられた勾配付きバンドギャップ領域が得られる。
(iii)その後から続くn層と、100〜150nmの一定のバンドギャップ真性層領域がいずれも275°Cで蒸着される。
【0018】
グリッドを用いて基板をプラズマから隔離した状態で全ての層を高周波三極管でグロー放電により蒸着する。蒸着速度は非常にゆっくり(おそらく1Å/sまで)であり、100nmの蒸着中に100°C低下させることを可能にしている。このような温度低下はDECRでは不可能である。なぜならば、蒸着速度は上記の場合よりも約25倍速く、1分以内に100°C下げることを不可能にする。
【0019】
上記にて引用しているダラル、他による文献でも、バンドギャップに勾配を付けることはセル効率の安定化に有効であることを説明している。この文献には、35時間7x太陽光(キセノン)照射の後の標準セルと勾配付きセルの劣化がそれぞれ27%と20%であると述べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
アモルファスシリコン製の膜の蒸着にDECR処理を使用した場合、マイクロ波電力をパルスさせて、各パルスの周波数および/または出力を変えて蒸着材料のバンドギャップを変更することの発見が本発明の動機となっている。また、DECR処理を用いると、膜の蒸着速度はMWパルス周波数の影響を受けない、後者が10Hz以上である場合、こともわかった。
【0021】
従って本発明は、容器内に基板を配置することと、ある流動速度で膜用前駆ガスを前記容器内に連続して導入することと、前記容器内を低圧にすべく前記容器から未反応および解離ガスを抽出することと、分散型電子サイクロトロン共鳴(DECR)によりプラズマを前記容器内で生成すべく前記プラズマから材料を前記基板上に蒸着するために所定の周波数と出力レベルでの連続したパルスとして前記容器内のガスにマイクロ波エネルギーを導入することを備えるプラズマからの蒸着により基板上に非晶質材料の膜を形成する方法であって、前記蒸着した材料の厚さにわたってバンドギャップを変化させるべく前記周波数および/または出力レベルを材料の蒸着中に変える方法を提供する。
【0022】
パルス周波数および/または出力を変化させてバンドギャップに勾配を付けることに関し、一定の組成の膜用前駆ガスを使用して先の手段によって生じる勾配の効果が他の仕組みで作られる付加的な勾配で補足される可能性を排除することを意図しないことに留意されたい。このような仕組みの一つは、膜用前駆ガスの流動速度を変えてバンドギャップに勾配を付けており、本願と同日に提出した、上述の「プラズマからの非晶質材料の蒸着で勾配付きバンドギャップを有する膜を形成する方法(Method for forming a film with a graded bandgap by deposition of amorphous material from a plasma)」(出願人用参照番号G28333EP(欧州特許第出願06301117.5号明細書))と題する本願の出願人らによる同時係属出願で説明している。また、本発明は1つ以上のステップ(流動速度を段階的に変化させること)でその厚さの全体または一部でバンドギャップを変化させた膜の生成と、無段式に連続して(流動速度を無段式に連続して変化させることにより)膜の厚さの全体または一部でバンドギャップを変化させた場合の両方を含むことにも留意されたい。
【0023】
本発明は添付の図面を参照して以下により詳細に説明している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】欧州特許第1075168号明細書に説明および示すプラズマ生成装置の、図3に別に示すガスの導入および排出手段を省略した概略立面図を示す。
【図2】図1の装置の平面図を示す。
【図3】装置内へガスを導入および装置内からガスを抽出する一方法を示す。
【図4】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図5】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図6】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図7】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図8】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図9】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図10】以下に詳細に記載している、パルス周波数、出力および基板バイアスと共に種々の特性が変化する様子を示すグラフである。
【図11】p層を通して照射した太陽電池のエネルギーバンド図である。
【図12】多接合太陽電池の概略図である。
【図13】太陽電池の非対称バンドギャップの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および図2には、基板に膜を蒸着するためのプラズマ生成装置を示す。装置は、概略にて示すガスの導入およびガスをポンプで排出するための機器(図1に示さず)を装備した密閉容器1を備える。上記機器は、イオン化または解離するガスの圧力を所望の値に、例えば、ガスの性質と励起周期にもよるが概ね10-2から2x10-1Paのこともある、維持することができる。しかしながら、10-2Paよりも低い(例えば10-4Pa)あるいは2x10-1Paを超える(例えば5x10-1Pa、または1Pa以上まで)ガス圧力を使用してもよい。例えば、容器からガスを抽出するために1600l/sアルカテル・ターボ分子ポンプ(Alcatel Turbo-molecular pump)を用いてポンピングできる。
【0026】
適切なガス源、例えば、加圧ガスの入ったボンベから、ガスを質量流量制御器で制御しながら容器内へ入れる。ガスは、例えば膜用前駆ガスとしてSiH4を、または上述にてアモルファスシリコンの蒸着と関連して言及した他のガスのいずれかを含む場合もある。膜用前駆体に加えて、He,NeおよびAr等の非反応希釈ガス、水素、窒素および酸素等の反応性ガス、あるいはジボラン、トリメチルボロンまたはホスフィン等のドーパントガスを導入してもよい。通常、類似した他のガスはいずれも膜用前駆ガスと同じ1つ以上の出入り口から容器内へ膜用前駆ガスとの混合ガスとして導入するが、別々に導入もできる。ガス供給システムは、通常は1から1000sccm(立方センチメートル毎秒)の範囲である、ガスの反応装置内への適切な流動を確実にするべきである。
【0027】
一般に、ガス注入用出入り口は、蒸着室内に入る一本の管または複数の管から成る。管が2本以上ある場合、蒸着室内のガスのより一様な分布を確実にするために各管はグリッドを用いて延長することができる。注入は反応装置のどこで行ってもよいが、膜前駆ガスを基板表面に向けることが好ましい。本明細書内にて使用しているような、基板面に向けてガスを送るべく並んだ排気口への言及は、直接ガスをその上に膜を蒸着する基板面に向けた場合のみでなく、先の表面が完全に、先の排気口から該排気口からのガス流出方向へ延出した線と、該線に対して直角で該排気口を通る線との間に画定される角度の内側にある全てのケースも含むことを理解されたい。このような状況において、排気口から出てくるガスの流れは先の表面のあらゆる部分を向いたベクトル成分を有することになる。
【0028】
これを行うための一方法は、「点」注入と称し、図3に模式的に示す。この配置において、膜用前駆体を一本のまたは複数(図では2本)の管を通して注入する。各管の各出口21は、本明細書内にて規定している高温電子閉じ込めエンベロープ(破線で示す)と基板面の間に配置されている。図3はまた、未反応および解離ガスがポンプで排出される際に通る出口22を示す。図3の他の特徴は図1に示す装置を参照して以下にて説明する。他の特に関心の高い配置は、本願と同日に提出した、「プラズマからの蒸着による成膜方法および装置(Method and apparatus for forming a film by deposition from a plasma)」(出願人用参照番号G28331EP(欧州特許第出願06301115.9号明細書))と題する本願の出願人らによる同時係属出願に記載されている。
【0029】
プラズマ室は、装置に固定された部分として示す基板保持部材10を具備している。基板保持部材の機能の1つは基板を必要蒸着温度まで加熱することである。通常、これは室温と600℃との間にあり、アモルファスシリコンの蒸着の場合は200℃を超えていることが好ましく、225℃と350℃との間にあることがより好ましい。ここで参照している温度は基板の実温度であり、基板保持部材の温度を測って求められる公称温度とは異なる。この差異の有意性は本願と同日に提出した、上述の「プラズマによる蒸着でのアモルファスシリコン膜の形成方法(Method for forming a film of amorphous silicon by deposition from a plasma)」(出願人用参照番号G27558EP(欧州特許第出願06301114.2号明細書))と題する本願の出願人らによる同時係属出願に詳しく説明している。
【0030】
少なくとも1枚の基板14、また要すれば複数枚の同様の基板をその上に載置した搬送板12が基板保持部材10の上に取外し可能に取付けてある。このようにして、搬送板12をコーティングする各基板とともに室内へ運び入れ、またコーティングされた後に各基板とともに室外へ取り出すことができる。しかしながら、別の方法として熱伝導性接着剤を用いて基板を基板保持部材に直接接着してもよい。これにより、さもなければ低圧状態では達成することの難しい、基板と基板保持部材間の熱接触を向上させる。これについては、本願と同日に提出した、「プラズマによる蒸着でのアモルファスシリコン膜の形成方法(Method for forming a film of amorphous silicon by deposition from a plasma)」(出願人用参照番号G27558EP(欧州特許第出願06301114.2号明細書))と題する本願の出願人らによる同時係属出願に詳しく説明している。この場合、保持部材はその各基板とともに蒸着処理前に容器内へ取り入れて、後に容器内から取り出さなければならない。接着剤を使用しない場合、基板の加熱を進めるための一方法は、低圧膜蒸着処理ステップの前に容器内を比較的高圧(通常約100から200Pa)のガスで満たすステップを先行させることである。高圧のガスは、基板と加熱した保持部材との間に存在しうるあらゆる間隙間で熱を伝導させ、基板の初期加熱を確実にする。別の選択肢として、基板と基板保持部材との間に熱伝導炭素膜を配置することがある。基板保持部材の中で高温液体を循環させて基板保持部材を加熱できるが、代わりに基板保持部材内に埋め込んだ電熱抵抗器を用いて加熱することもできる。しかしながらもう一つの選択肢として、例えば、赤外線ランプを使用して基板を直接加熱することもできる。
【0031】
基板保持部材のもう一つの機能は、例えば、基板に向かうイオンのエネルギーを制御するために基板面の分極を起こすことである。分極は、高周波電圧源または直流電圧を用いて達成でき、基板保持部材を地面から電気的に絶縁する必要がある。分極は電気的に絶縁した基板保持部材を適切な高周波または直流発電機16へ、高周波分極の場合は相応の整合回路と共に、結合することにより達成される。絶縁基板上または先に基板(絶縁/非絶縁)上に蒸着した絶縁層上に蒸着を行う場合、高周波発振器を使用することが好ましい。伝導性基板上または先に絶縁/非絶縁基板上に蒸着した伝導層上に蒸着を行う場合、基板面に好適に電気結合した高周波発振器あるいは直流発電機を用いてバイアスを与えることができる。具体的な実施例において、基板保持部材に結合したドレスラ(Dressler)製の13.56MHz発電機を用いて、自動調整ボックスを介して高周波バイアスを与えた。高周波発振器を用いた場合でさえも、プラズマの状態によっては、基板面上に結果として得られるバイアスは直流バイアス成分を含む。これがどのようにして起こるかの説明は、鈴木らによる「無線周波数をベースとしたマイクロ波プラズマエッチング技術:SiO2エッチング速度の増加方法(Radio-frequency based microwave plasma etching technique: A method to increase SiO2 etch rate)」、Journal of Vacuum Science and Technology B 3(4), 1985年7/8月号、p1025-1033の全く異なるプラズマ処理に関する説明の中にある。
【0032】
プラズマ生成装置Iは、各基板が共同して均一なプラズマを生成するために、各基板に近接して互いに離間した一連の個別プラズマ励起装置Eを有する。個々のプラズマ励起装置Eはそれぞれ伸張マイクロ波エネルギー印加電極4を備えている。各印加電極4の両端のうち一方は容器1の外に置かれたマイクロ波エネルギー源にそれぞれ結合している。しかしながら、代わりにマイクロ波を1つのマイクロ波エネルギー源から全ての印加電極4に供給してもよく、あるいは印加電極より少ない複数のエネルギー源から供給してもよい。例えば、各々最大出力2kWの2.45GHzマイクロ波発生器2台で、一台のパワースプリッター(power splitter)と各々のスラグ同調器を介してそれぞれ8台の印加電極、合わせて16台の印加電極配列に都合よく供給することができる。各印加電極4は好都合に同軸管4’で囲まれた管状になっており、これにより放射マイクロ波を防ぎつつマイクロ波エネルギーがその自由端へ伝搬することを可能にし、また各印加電極間でのマイクロ波結合を減らしている。マイクロ波エネルギーのプラズマ内への適切な移動を確実にするために、各印加電極がプラズマ励起装置からの反射電力を最小にする、または少なくとも減少させる整合した装置が備えられていることが好ましい。
【0033】
各マイクロ波エネルギー印加電極4の自由端は少なくとも1つの永久磁石5に結合している。(好ましくは)各磁石の磁気軸は磁石自体の長軸と平行になっている。この配列のうちある特定の形では、全てのプラズマ励起装置の磁石が同じ方向を向いている(単極構成)。つまり、これらの全てのN極が上にあり全てのS極が下にある、あるいはその逆になっている。別の形では、各極の一部が上にあり各極の一部が下にある(多極構成)。後者の配列の一例では、図2でのように一端から装置のある横列または縦列に沿って見ると交互の極がある。さらに別の例では、ある横列(縦列)の全ての磁石は同じ極性を有するが、縦列(横列)の磁石は異なる極性を有する。しかしながら、磁界の磁力線がマイクロ波の伝搬ベクトルに平行になっている有効な領域があることを前提として、各磁石の磁気軸が磁石自体の長軸に平行でない配列をも使用できる。これは、電子サイクロトロン共鳴の減衰が生じ得る有効な領域の存在を確実にするために必要である。
【0034】
前述の通り、マイクロ波をパルスさせる、よってDECRプラズマをパルスさせることは、蒸着した層の品質の改善につながり、周波数が約10Hz以上であることを前提とするとパルス周波数は蒸着速度にわずかしか影響しないことの発見に加えて、特にパルスさせたプラズマ周波数の調節により材料バンドギャップが変更可能となることを発見したことが本発明の動機となっている。
【0035】
以下は、蒸着材料バンドギャップの、プラズマ生成および蒸着反応装置に供給されるマイクロ波エネルギーの周波数と出力への依存性を調べるために実施した実験の説明である。
【0036】
使用した反応装置は、16台のプラズマ励起装置を備え、それぞれが1つのアンテナと磁石を含み、各装置は4列に4台ずつ配列された。マイクロ波出力を連続またはさまざまな周波数でパルスさせ、そして異なるデューティサイクルで各アンテナへ送ることが可能であった。以下に記載のパルスマイクロ波の実験では、1.2kWのSairem GMP 12KE/D発振器を使用した。4x4のアンテナネットワークのうち中央の4基のアンテナのみにMWを供給したが、これは発振器にそれ以上供給する能力がなかったためである。Sairem発振器は、連続波(CW)およびパルスモードで30kHzまでの周波数で動作でき、これにより周波数を除く同一動作および装備条件で蒸着した材料の比較を可能にした。発振器からの出力はパワースプリッターを用いて4つに分割され、各アンテナへ供給された。発振器を駆動するためのパルス信号は、方形波モードで動作しているヒューレットパッカード波動関数発振器で供給した。
【0037】
100sccm(1.69x10-2Pa・m3/sec)のシラン流動速度、2つの異なるマイクロ波ピーク出力値(125W/アンテナ,250W/アンテナ)と、-60ボルトまでのバイアスを生成すべく基板保持部材への連続高周波供給を用いて蒸着を行った。Sairem発振器を10kHzと30kHz間の周波数、デューティサイクル50%にしてCWおよびパルスモードで蒸着を行った。各膜をコーニング1737ガラス上に蒸着した。
【0038】
材料バンドギャップ、誘電関数の虚部の最大値(以下εi(max)とする)、膜厚およびその表面粗さを導き出すために、膜の光学特性はTauc-Lorentzモデルの偏光解析データから得た。この方法についての詳細は、フォンキュベルタ・イ・モラル(A. Fontcuberta i Morral)、ロカ・イ・キャバロカス(P. Roca i Cabarrocas)、クラーク(C. Clerc)による、「分光偏光解析法および核測定による多形シリコン薄膜の構造および水素含有量の研究(Structure and hydrogen content of polymorphous silicon thin films studied by spectroscopic ellipsometry and nuclear measurements)」、PHYSICAL REVIEW B69, 2004年、125307/1-10を参照されたい。
【0039】
10kHz以上の種々の周波数でDECRアンテナに供給したマイクロ波出力をパルスすることにより、蒸着材料のバンドギャップをパルスの周波数と相関させることができることがわかった。これは、MWパルス周波数を変化させるとともにプラズマ組成が変化するためである可能性が最も高い。通常、CWモードと比べてより低い材料バンドギャップを有する膜が得られ、バンドギャップの変更の及ぶ範囲はパルスの周波数に依存することがわかった。これは、MWアンテナに与えたMWピーク出力の2つの値について図4に示す。
【0040】
対数グラフ上にCWモードでの結果を表示できるように、CWモードには「周波数」10-1Hzが任意に割り当てられた。使用した条件は表1に示す。
【0041】
表1

この表の第3列より、条件2,4および5は点注入、つまり図3のように、を使用したことがわかる。条件1および3は、下から反応装置内へ延びて上を向いた管を通して膜用前駆ガスが導入される容量注入(volume injection)として知られている別の配置を使用した。
【0042】
周波数のバンドギャップへの影響は、MWピーク出力の2つの値について調べたが、高MW出力での場合の方がより広範囲のバンドギャップ値が得られる。ここでの高出力条件では、CWおよび30kHzとの間では0.14eVの領域が含まれる。
【0043】
アンテナ1基当たり250ワットと10kHzのパルスのマイクロ波ピーク出力を用いて1.75eVのバンドギャップを得ることができることを強調したい。このような低バンドギャップは、より低いマイクロ波出力(125W/アンテナ)を用いても得られるが、CWモードの条件のもとである。パルスモードで「低」出力蒸着を続けると、これらの蒸着条件において材料バンドギャップをさらに1.7eVまで下げることを可能にする。
【0044】
従って、MWパルス周波数およびプラズマへの供給出力の両方の変化を組み合わせると、より広範囲のバンドギャップ領域を得ることが可能になる。この領域は、本発明の条件では0.18eVである。
【0045】
さらに低いMW出力での作業は可能であり、上記のデータから予想されるように、材料バンドギャップの更なる減少が観察される。MW周波数が10kHzのときのものを図5に示す。
【0046】
従って周波数とMW出力の両方の変化を組み合わせることにより、より広いバンドギャップ領域が得られる。これらのパラメータは両方とも、勾配付きバンドギャップ、つまり膜の厚さ全体にわたって変化するバンドギャップをつくるべく、膜の蒸着中に連続または段階的に変更できる。
【0047】
パルスMW周波数の材料バンドギャップへの影響の他に、他の材料特性、例えば水素分ではSiH2/SiHx比、密度およびεi(max)値の変化も期待されている。
【0048】
a-Si:H膜のバンドギャップとその含有水素、より多い水素含有量はより広いバンドギャップを誘発する、との間にリンクがあることは知られている。この水素含有量の効果は、シリコンとの結合そして特に膜内の=SiH2と≡SiHグループとの間の比率についてある程度理解されていれる。=SiH2/SiHx(SiHx=膜内の全シリルハイドライド(silyl hydride)グループの総計、つまり、=-SiH3+=SiH2+≡SiH)の比率は水素含有量と共に増加する。図6の上は、実際にMW周波数が増加する(高MW出力で)および/または出力が減少する(一定周波数で)とより低いSiH2/SiHx比が得られることを示す。
【0049】
図7に示すように、密度(εi(max)値に反映されている)等他の膜特性についても周波数および出力の影響が見られる。
【0050】
いくつかの膜におけるかなり広範囲での表面粗さによってデータがいくらか分散しているが(理由はわからないが、RFバイアス結合の不良によるかもしれない)、より高パルスMW周波数で動作すると材料密度が改善するという明確な傾向を示し、この効果はプラズマ内に注入した電力によって変調する。実際、低水素含有量、従ってより高いεi(max)最大値を意味する、材料密度がより高い場合に低バンドギャップをもたらす。
【0051】
プラズマへ送るMWパルス周波数およびMW出力は蒸着材料バンドギャップを制御する重要なパラメータであるだけでなく、このような制御は他の制御された蒸着条件のもとで、特に基板温度および基板に印加したバイアスにおいて、動作しなければならない。上述の実験において基板温度は変化させないで約200℃であった。図8および9に示すように、材料バンドギャップおよび密度への影響のため、基板バイアスも制御するべきであり、好ましくは印加する高周波出力を用いて制御するべきである。バンドギャップの制御を確実にするため、また良好な材料密度を得るためにバイアスは-40から-80Vの領域内にあることが好ましいことがわかる。基板のDCバイアスを制御するためには、高周波出力をプラズマに注入するMW出力に適合させなければならない。このような制御を容易にすべく、基板へのバイアス印加に使用する高周波発振器は一定出力モードよりむしろ一定直流バイアスモードで動作する。
【0052】
バンドギャップに勾配を付けること、特に正確なバンドギャップ断面形を実現することに関して言えば、制御のもう一つの主要パラメータは蒸着速度である。ここでの動作条件において蒸着速度は、幅広い周波数のうちMWパルス周波数の影響をわずかしか受けてなく、周波数を変更する際に蒸着時間の補正を必要としないほどであることがわかった。
【0053】
これは図10にからわかり、また詳細は表2に示す。蒸着速度は蒸着頻度と共に変化することはほとんど無く、10kHzから30kHzの間での標準偏差(1σ)は常に10%より低い。従って蒸着時間には補正が必須ではない。
【0054】
表2

特定の周波数で得た蒸着速度を、他の点では同一条件だがCWモードを用いて得た蒸着速度で割ったものである蒸着速度比の各値からわかるように、勾配付きギャップ構造の蒸着にCWモードが含まれている場合であっても、蒸着時間をCWとパルスモードとの間で調節するために補正が必要である。10Hzを下回る場合、OFF時間はプラズマの特性寿命(characteristic lifetime)よりも長くなり、蒸着速度は著しく落ちる。
【0055】
結論
DECR-PECVDで蒸着した膜のバンドギャップが各アンテナへ供給するMW出力をパルスさせることにより調整できることは上述からわかる。これは単一の膜用前駆ガスで達成でき、よってギャップに勾配を付けるためのガスを使用する必要がない。
【0056】
材料バンドギャップはMWパルスの周波数と共にその出力で制御されている。特定のデューティサイクル(ここでの実験では50%であった)では、パルス周波数を増やすことは材料バンドギャップの減少につながる。このような減少もまたMW出力の作用の一つである。ここでの動作条件において、周波数をCWから30kHzまで観察したところ、バンドギャップはMW出力が250W/アンテナと125W/アンテナではそれぞれ0.14eVと0.04eVと異なった。導入した出力を更に減少させると結果としてバンドギャップの更なる調整をもたらす。
【0057】
従ってMWパルス周波数とMWパルス出力の両方の変化を組み合わせると、材料バンドギャップの細かい調整が0.18eVを越える領域全体でできる。
【0058】
連続して変化するバンドギャップを有する単一層または各層がそれぞれ異なるバンドギャップを有する複数層からなる積層をつくるべく、このような変化を連続またはステップ式で行うことができる。
【0059】
バンドギャップにはあらゆる方向(広幅から狭くまたは狭くから広幅)に勾配をつけることができ、さらにVまたはU型にもできる。V型バンドギャップの例として、実際は非対称なV型を図13に示す。
【0060】
連続した勾配付きギャップを有する層の生成は、DECRモードでは蒸着速度がMWパルス周波数の影響をほとんど受けていないことがわかったという事実に支援されて、一定した傾斜を有する勾配付きギャップの生成には時間の補正を必要としない。
【0061】
本発明の方法によって生成された非晶質材料、特にアモルファスシリコン、の勾配付きバンドギャップ層は、例えば太陽電池内の真性層として使用できる。真性層をnドープ材料の基板上に蒸着し、非晶質材料の膜上にpドープ材料を形成している、または、真性層をpドープ材料の基板上に蒸着し、非晶質材料の膜上にnドープ材料を形成している、のいずれかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に基板を配置することと、
ある流動速度で膜用前駆ガスを前記容器内に連続して導入することと、
前記容器内を低圧にすべく前記容器から未反応および解離ガスを抽出することと、
分散型電子サイクロトロン共鳴(DECR)によりプラズマを前記容器内で生成すべく前記プラズマから材料を前記基板上に蒸着するために所定の周波数と出力レベルでの連続したパルスとして前記容器内のガスにマイクロ波エネルギーを導入すること
を備えるプラズマからの蒸着により基板上に非晶質材料の膜を形成する方法であって、
前記蒸着した材料の厚さにわたってバンドギャップを変化させるべく前記周波数および/または出力レベルを材料の蒸着中に変える
方法。
【請求項2】
前記蒸着した膜が水素化非晶質シリコンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜用前駆ガスが水素化珪素を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜用前駆ガスがSiH4を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸着した膜がアモルファスシリコン合金である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プラズマが二次元ネットワークを形成するように配置した装置で生成されている請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマがマトリックスDECRで生成されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各層が先の層よりもより大なるバンドギャップを有する、複数の層を前記基板上に連続蒸着する請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
各層が先の層よりもより小なるバンドギャップを有する、複数の層を前記基板上に連続蒸着する請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
蒸着する第1および最終層の両方から離間した点で前記バンドギャップが最小値を有するように前記各層を蒸着する請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記流動速度を無段式に連続して変化させることにより、その厚さの全体または一部を通して前記膜の前記バンドギャップを連続また無段階に変化させる請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記周波数が少なくとも10Hzである請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記周波数のみを変える請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記出力のみを変える請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記周波数および前記出力の両方を変える請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
蒸着中にマイクロ波エネルギーを連続波として供給する段階がある請求項13または15に記載の方法。
【請求項17】
前記流動速度も前記蒸着中に変える請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
太陽電池の製作方法であって、nドープ材料の基板上に請求項1から17のいずれかに記載の方法で非晶質材料の膜が形成し、pドープ材料層が前記非晶質材料の膜上に形成する。
【請求項19】
太陽電池の製作方法であって、pドープ材料の基板上に請求項1から18のいずれかに記載の方法で非晶質材料の膜が形成し、nドープ材料層が前記非晶質材料の膜上に形成する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−508448(P2010−508448A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535600(P2009−535600)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009307
【国際公開番号】WO2008/052707
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(502053328)ダウ・コーニング・コーポレイション (12)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2200 West Salzburg Road, Midland, MI 48611ー0994, U.S.A.
【出願人】(509127608)エコール ポリテクニック (9)
【氏名又は名称原語表記】ECOLE POLYTECHNIQUE
【Fターム(参考)】