説明

電子写真用感光体製造装置

【課題】 円筒状基体上に、堆積膜を膜剥がれが発生することなく形成することを実現し、多様なサイズの電子写真用感光体を生産性良く製造する。
【解決手段】 少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器と、反応容器内部に配置された円筒状基体及び原料ガス導入手段と、反応容器外部に配置された高周波電力導入手段とを有し、高周波電力導入手段に高周波電力を印加し、反応容器内にグロー放電を発生させることによって、反応容器内に前記原料ガス導入手段を介して導入された原料ガスを分解し、円筒状基体上に堆積膜を形成する電子写真用感光体製造装置において、高周波電力導入手段は、反応容器内壁から円筒状基体までの距離が最短となる直線上に配置され、円筒状基体の直径をD〔mm〕、反応容器内壁から円筒状基体までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9 (1)
20≦L≦60 (2)
を全て満たすこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用される電子写真用感光体製造装置に関するものであり、より具体的には、プラズマCVD法を用いたアモルファスシリコン電子写真用感光体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
堆積膜形成方法の一つとして放電エネルギーを利用するプラズマCVD法があり、この方法により形成される非晶質薄膜 (例えば水素又は/及びハロゲンによって補償されたアモルファスシリコン) は電子写真用感光体、半導体デバイス、TFT等の半導体素子への応用が提案され、その中のいくつかは実用に至っている。特に13.56MHzのRF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD法は基板材料、堆積膜材料等が導電体、絶縁体に関わらず処理でき、又、その取り扱いが比較的容易であるため広く用いられている。又、近年においては、VHF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD法(以下、「VHF−PCVD法」と省略する)が注目を浴びており、これを用いた各種堆積膜形成方法の開発も積極的に進められている。これは、VHF−PCVD法では堆積膜形成速度が速く、また高品質な堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を同時に達成し得るものと期待されるためである。(例えば、特許文献1参照)又、VHF−PCVD法における生産性をより高めるために、複数の電極を用いて複数の基体上に同時に堆積膜を形成する技術の開発も積極的に進められている。その結果、複数の電極への均一な電力分割を実現することによって、複数基体を均一に処理することが可能となってきており、より高い生産性が実現されてきている。(例えば、特許文献2参照)
【0003】
図1(A)にVHF−PCVD法による電子写真用感光体製造装置の代表例を示す模式的な構成図を示す。図1(A)は製造装置を横からみた概略断面図であり、図1(B)は図1(A)の切断線X−X’に沿う真上から見た概略断面図である。
【0004】
図1に示した製造装置を使用した場合の電子写真用感光体の製造方法の一例を以下に示す。
【0005】
高周波電源113より出力された高周波電力は、整合器114を介した後、導電性部材で構成される電力分割容器115内に導入される。次に、電力分割容器115内に導入された高周波電力は、電力分割容器115内に設置された電力分割部116によって複数の高周波電力伝送部117へと分割された後、高周波電力導入手段109を介して少なくとも一部が誘電体で形成された反応容器101内に導入され、反応容器101内にプラズマが形成される。該プラズマによって、原料ガス導入手段103より反応容器101内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体102上に堆積膜が形成される。このような製造装置を使用することにより、VHF−PCVD法によって、速い堆積膜形成速度でも高品質な堆積膜を得ることができ、さらには、複数の基体を同時に均一処理することが可能となり、製品の低コスト化、及び高品質化を実現することができる(特許文献1、2参照)。
【0006】
しかしながら、近年においては、電子写真用感光体が搭載される電子写真装置の小型化が進み、アモルファスシリコン膜を用いた電子写真用感光体も小型化、即ち小径化が求められてきている。そのため、VHF−PCVD法における電子写真用感光体の製造装置としても、様々なサイズの円筒状基体にアモルファスシリコン膜を形成することで、多様なサイズの電子写真用感光体を製造することが求められてきている。
【0007】
【特許文献1】特開平06−287760(第17頁、第1図)
【特許文献2】特開2001−316829(第17頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、例えば図1に示した電子写真用感光体製造装置を使用して、図1に示した円筒状基体102とは異なる直径の円筒状基体に堆積膜形成を行う場合、単純に図1に示した円筒状基体102と同じ位置に異なる直径の円筒状基体を配置した構成で、前記したVHF−PCVD法による堆積膜形成を行うと、求める品質の堆積膜が形成できない場合や、膜剥がれが発生する場合があり、所望の電子写真特性を備えた電子写真用感光体を生産性良く製造できない場合がある。
【0009】
このような問題が発生する原因は定かではないが、反応容器101内に設置される円筒状基体の直径を変えることによって、高周波電力導入手段109に印加される高周波電力が反応容器101内へと適切に導入されなくなり、そのために、形成される堆積膜の膜質の低下や膜剥がれが発生するのではないかと推察している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題に対して、本発明者らは鋭意検討を行った結果、図1に示すような電子写真用感光体製造装置を用いて円筒状基体102に堆積膜形成を行なう場合、円筒状基体102の直径と、反応容器101内壁から円筒状基体表面までの距離との関係を適正化することによって、多様な直径の円筒状基体に適切な堆積膜形成を行なうことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の電子写真用感光体製造装置は、少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器と、反応容器内部に配置された円筒状基体及び原料ガス導入手段と、反応容器外部に配置された高周波電力導入手段とを有し、高周波電力導入手段に高周波電力を印加し、反応容器内にグロー放電を発生させることによって、反応容器内に原料ガス導入手段を介して導入された原料ガスを分解し、円筒状基体上に堆積膜を形成する電子写真用感光体製造装置において、高周波電力導入手段は、反応容器内壁から円筒状基体までの距離が最短となる直線上に配置され、円筒状基体の直径をD〔mm〕、反応容器内壁から前記円筒状基体外表面までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9 (1)
20≦L≦60 (2)
を全て満たすことを特徴としている。
【0012】
さらに本発明の電子写真用感光体製造装置は、高周波電力導入手段が円柱状であり、かつ高周波電力導入手段の直径が、円筒状基体の直径よりも小さいことを特徴としている。
【0013】
さらに本発明の電子写真用感光体製造装置は、円筒状基体が複数であり、かつ同一円周上に配置され、高周波電力印加手段が円筒状基体と同数であり、かつ円筒状基体の配置円と中心軸を同じとした同一円周上に配置されていることを特徴としている。
【0014】
さらに本発明の電子写真用感光体製造装置は、円筒状基体の配置円の中央に、導電性の円筒状部材が設置されていることを特徴としている。
【0015】
さらに本発明の電子写真用感光体製造装置は、高周波電力の周波数が50〜250MHzの範囲にあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
これらの手段によって、様々なサイズの円筒状基体上に、求める品質の堆積膜を膜剥がれなく形成することを実現し、その結果、多様なサイズの優れた品質の電子写真用感光体を生産性良く製造可能な電子写真用感光体製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、上記のような効果が得られる本発明を図を用いて詳述する。
【0018】
図2に示した堆積膜形成装置は、任意の直径を持つ円筒状基体202に、VHF−PCVD法によって堆積膜形成を行うために最適化された装置であり、図2に示すように、円筒状基体202の直径をD〔mm〕、少なくとも一部が誘電体で構成された反応容器101内壁から円筒状基体外表面までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9 (1)
20≦L≦60 (2)
を全て満たすように構成されている。
【0019】
このように、堆積膜が形成される円筒状基体の直径D〔mm〕に対して、上記(1)及び(2)を満たすような装置構成を選択することによって、様々なサイズの円筒状基体上に、求める品質の堆積膜を膜剥がれなく形成することを実現し、その結果、多様なサイズの優れた品質の電子写真用感光体を生産性良く製造可能な電子写真用感光体製造装置を提供することができる。
【0020】
L/Dが0.4よりも小さい場合においては、膜剥がれが発生する場合がある。又、L/Dが2.1よりも大きい場合においては、十分な膜質の堆積膜が得られない場合がある。L〔mm〕が20よりも小さい場合においては、十分な膜質の堆積膜が得られない場合がある。又、L〔mm〕が60よりも大きい場合においては、適切な電力導入がなされない場合があり、十分な膜質の堆積膜を得ることができない場合がある上、高周波電源113から高周波電力導入手段109の間の高周波電力伝送経路内に高周波電力のエネルギーが蓄積され、高周波電力伝送経路が熱により損傷してしまう場合がある。よって、本発明の請求範囲が好ましい。
【0021】
又、図2に示した堆積膜形成装置においては、高周波電力導入手段を円柱状とし、かつ高周波電力導入手段の直径を、円筒状基体の直径よりも小さくすることにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。例えば、高周波電力導入手段の形状を、直方体形状にした場合や、円筒状基体の直径よりも大きなサイズにした場合においては、適切な電力導入がなされない場合があり、その結果、十分な膜質の堆積膜を得ることができない場合がある。よって、本発明の請求範囲が好ましい。又、高周波電力導入手段の材質としては、銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレス等が、熱伝導が良く、電気伝導も良いので好ましい。
【0022】
又、図2に示した堆積膜形成装置においては、高周波電力導入手段と円筒状基体を同数とし、かつ高周波電力導入手段と円筒状基体を同じ中心軸を持つ異なる円周上に配置することによって、本発明の効果をより顕著に得ることができる。前記構成からはずれた場合においては、各円筒状基体上に形成される堆積膜の膜質に基体間差が発生する場合がある。よって、本発明の請求範囲が好ましい。
【0023】
又、図2に示した堆積膜形成装置においては、円筒状基体の配置円の中央に、導電性の円筒状部材を設置することによって、本発明の効果をより顕著に得ることができる。その原因は定かではないが、高周波電力導入手段から比較的距離が離れた空間の体積を小さくすることによって、高周波電力導入手段に面した空間とそうない空間で生成するプラズマ間における、プラズマ密度等のムラを抑制することができるからではないかと推察している。よって、本発明の請求範囲が好ましい。
【0024】
又、図2に示した堆積膜形成装置においては、高周波電力の周波数が50〜250MHzの範囲にあることによって、本発明の効果をより顕著に得ることができる。高周波電力の周波数が50MHzより小さい場合においては、高周波電力導入手段に面した空間とそうない空間で生成するプラズマ間において、プラズマ密度等にムラが生じる場合があり、十分な膜質の堆積膜を得ることができない場合がある。又、高周波電力の周波数が250MHzより大きい場合においては、スパーク等が発生する場合があり、又、放電を安定維持することが困難な場合がある。よって、本発明の請求範囲が好ましい。
【0025】
又、本発明で使用される円筒状基体の材質としては、銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスが、電気伝導が良好であるので好ましい。
【0026】
又、本発明で使用される反応容器の誘電体部分の材質としては、セラミックス材料が好ましく、具体的には、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等の少なくとも一つ以上を含む材料によって構成することが好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは絶縁抵抗等の電気特性に優れ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。
【実施例1】
【0027】
図2に示した電子写真用感光体製造装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、
(イ)20
(ロ)40
(ハ)60
とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、前記した方法により、反応容器101内に設置された直径(D)40mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を各1ロット(各6本)作製した。
【0028】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは
(イ)0.50
(ロ)1.00
(ハ)1.50
となっており、又、高周波電力導入手段109の直径は14mmである。
【0029】
【表1】

【0030】
(比較例1)
実施例1と同様に図2に示した電子写真用感光体製造装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、
(ニ)15
(ホ)65
とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、実施例1と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)40mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を各1ロット(各6本)作製した。
【0031】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは
(ニ)0.38
(ホ)1.63
となっており、又、高周波電力導入手段109の直径は14mmである。
【0032】
実施例1の(イ)〜(ハ)及び比較例1の(ニ)、(ホ)において作製した、各6本の電子写真用感光体の電子写真特性を以下に記載した方法で評価し、比較例1(ホ)で作製した電子写真用感光体を基準としてそれぞれ比較を行った。
但し、比較例1(ニ)で作製した電子写真用感光体については、6本中5本で膜剥れが発生したために、電子写真特性の評価対象外とした。
【0033】
『電子写真特性評価方法』
作成した各々の電子写真用感光体を本テスト用に改造された京セラミタ製の複写機KM−5035に設置し、評価項目は、『帯電能』及び『感度』の2項目とし、以下の具体的評価法により各項目の評価を行った。
【0034】
『帯電能』
複写機の主帯電器に一定の電流を流したときの現像器位置での暗部電位を『帯電能』とする(但し、周方向一周の平均値とし、又本例においては、母線方向中位置を測定する)。従って、数値が大きいほど良好である。実施例1の(イ)〜(ハ)及び比較例1の(ホ)において作成した、それぞれ6本の電子写真用感光体の『帯電能』を測定し、それぞれの6本間の平均値を求め、比較例1(ホ)を基準として以下のランクに区分した。
【0035】
A:比較例1(ホ)より5%以上増加
B:比較例1(ホ)より2%以上5%未満の範囲で増加
C:比較例1(ホ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例1(ホ)に対し98%未満
『感度』
現像器位置における暗部電位が所定の値となるように、主帯電器の電流値を調整した後、像露光を照射する。ついで像露光光源の光量を調整して、現像器位置における表面電位(明電位)が所定の値となるようにし、そのときの露光量を『感度』とする(但し、周方向一周の平均値とし、又本例においては、母線方向中位置を測定する)。従って、数値が小さいほど良好である。実施例1の(イ)〜(ハ)及び比較例1の(ホ)において作成した、それぞれ6本の電子写真用感光体の『感度』を測定し、それぞれ6本間の平均値を求め、比較例1(ハ)を基準として以下のランクに区分した。
【0036】
A:比較例1(ホ)より5%以上減少
B:比較例1(ホ)より2%以上5%未満の範囲で減少
C:比較例1(ホ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例1(ホ)に対し102%以上
その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
本実施例の結果から明らかな様に、円筒状基体202の直径をD〔mm〕、反応容器101内壁から円筒状基体202外表面までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9
20≦L≦60
を全て満たすことにより、膜剥れ等が発生することなく、良好な品質の電子写真用感光体を製造することができることがわかる。
【実施例2】
【0039】
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、24〔mm〕とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、実施例1と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)80mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表3に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を1ロット(6本)作製した。
【0040】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは0.30となっている。
【0041】
【表3】

【0042】
(比較例2)
実施例2と同様に図2に示した電子写真用感光体製造装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、
(イ)21
(ロ)65
とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、実施例2と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)80mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表3に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を1ロット(6本)作製した。
【0043】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは、
(イ)0.26
(ロ)0.81
となっている。
【0044】
実施例2及び比較例2において作製した、各6本の電子写真用感光体の電子写真特性を、本テスト用に改造されたキヤノン製の複写機iR5000を用いた以外は実施例1と同様の方法で評価し、比較例2(ロ)で作製した電子写真用感光体を基準としてそれぞれ比較を行った。その結果を表4に示す。
【0045】
但し、比較例2(イ)で作製した電子写真用感光体については、6本中5本で膜剥れが発生したために、電子写真特性の評価対象外とした。
【0046】
尚、比較の際の評価基準は以下のとおりである。
【0047】
『帯電能評価基準』
A:比較例2(ロ)より5%以上増加
B:比較例2(ロ)より2%以上5%未満の範囲で増加
C:比較例2(ロ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例2(ロ)に対し98%未満
『感度評価基準』
A:比較例2(ロ)より5%以上減少
B:比較例2(ロ)より2%以上5%未満の範囲で減少
C:比較例2(ロ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例2(ロ)に対し102%以上
【0048】
【表4】

【0049】
本実施例の結果から明らかな様に、円筒状基体202の直径をD〔mm〕、反応容器101内壁から円筒状基体202外表面までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9
20≦L≦60
を全て満たすことにより、膜剥れ等が発生することなく、良好な品質の電子写真用感光体を製造することができることがわかる。
【実施例3】
【0050】
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、
(イ)45
(ロ)57
とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、実施例1と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)30mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を各1ロット(各6本)作製した。
【0051】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは
(イ)1.50
(ロ)1.90
となっている。
【0052】
(比較例3)
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、60〔mm〕とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、実施例3と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)30mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を1ロット(6本)作製した。
【0053】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは、2.0となっている。
【0054】
実施例3(イ)、(ロ)及び比較例3において作製した、各6本の電子写真用感光体の電子写真特性を本テスト用に改造されたキヤノン製複写機GP55IIを使用した以外は実施例1と同様の方法で評価し、比較例3で作製した電子写真用感光体を基準としてそれぞれ比較を行った。その結果を表5に示す。
【0055】
尚、比較の際の評価基準は以下のとおりである。
【0056】
『帯電能評価基準』
A:比較例3より5%以上増加
B:比較例3より2%以上5%未満の範囲で増加
C:比較例3に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例3に対し98%未満
『感度評価基準』
A:比較例3より5%以上減少
B:比較例3より2%以上5%未満の範囲で減少
C:比較例3に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例3に対し102%以上
【0057】
【表5】

【0058】
本実施例の結果から明らかな様に、円筒状基体の直径をD〔mm〕、反応容器101内壁から円筒状基体外表面までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9
20≦L≦60
を全て満たすことにより、膜剥れ等が発生することなく、良好な品質の電子写真用感光体を製造することができることがわかる。
【実施例4】
【0059】
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置において、高周波電力導入手段109の直径を50mmとし、その他の構成は、実施例1の(ハ)と同様にした電子写真用感光体製造装置において、実施例1と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)40mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を1ロット(6本)作製した。
【0060】
尚、本実施例においては、高周波電力導入手段109表面から反応容器外壁までの最短距離は、実施例1と実施例4の間で同じとしている。
【0061】
実施例4において作製した、6本の電子写真用感光体の電子写真特性を実施例1と同様の方法で評価し、比較例1(ホ)で作製した電子写真用感光体を基準として、実施例1(ロ)で作製した電子写真用感光体との比較を行った。その結果を表6に示す。
【0062】
尚、比較の際の評価基準は以下のとおりである。
【0063】
『帯電能評価基準』
A:比較例1(ホ)より5%以上増加
B:比較例1(ホ)より2%以上5%未満の範囲で増加
C:比較例1(ホ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例1(ホ)に対し98%未満
『感度評価基準』
A:比較例1(ホ)より5%以上減少
B:比較例1(ホ)より2%以上5%未満の範囲で減少
C:比較例1(ホ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:比較例1(ホ)に対し102%以上
【0064】
【表6】

【0065】
本実施例の結果から明らかな様に、高周波電力導入手段109の直径を、円筒状基体202の直径よりも小さくすることにより、本発明の効果をより顕著に得ることができることがわかる。
【実施例5】
【0066】
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置に変えて、図3に示した電子写真用感光体製造装置を使用し、高周波電力導入手段の本数を3本とした以外は、実施例1の(ロ)と同様にした電子写真用感光体製造装置において、実施例1と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)40mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を5ロット(30本)作製した。
【0067】
実施例5において作製した、30本の電子写真用感光体の電子写真特性を実施例1と同様の方法で評価し、比較例1(ホ)で作製した電子写真用感光体を基準として、実施例1(ロ)で作製した電子写真用感光体との比較を行った。その結果を表7示す。
【0068】
又、実施例5において作製した、30本の電子写真用感光体の電子写真特性再現性を以下に示す方法で評価し、比較例1(ホ)で作製した電子写真用感光体を基準として、実施例1(ロ)で作製した電子写真用感光体との比較を行った。その結果を表7示す。
【0069】
尚、電子写真特性再現性を確認するために、実施例1(ロ)及び比較例1(ホ)において、電子写真用感光体を4ロット(24本)追加で作製している。
『電子写真用感光体再現性評価方法』
作成した各々の電子写真用感光体を本テスト用に改造された京セラミタ製の複写機KM−5035に設置し、評価項目は、『帯電能再現性』及び『感度再現性』二項目とし、以下の具体的評価法により各項目の評価を行った。
【0070】
『帯電能再現性』
実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5において作成した、それぞれ30本の電子写真用感光体の『帯電能』を測定し、実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5毎に30本間の平均値Zを求める。次に、実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5毎に、帯電能上位5本、下位5本を選択し、上位5本間の平均値X及び下位5本間の平均値Yを求める。そして、実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5それぞれにおいて、(X-Y)/Zを求め、『帯電能再現性』として評価する。従って数値が小さいほど良好である。比較例1(ホ)を基準として以下のランクに区分した。
【0071】
A:比較例1(ホ)より30%以上減少
B:比較例1(ホ)より3%以上30%未満の範囲で減少
C:比較例1(ホ)に対し97%以上103%未満で同等レベル
D:比較例1(ホ)に対し103%以上
『感度再現性』
実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5において作成した、それぞれ30本の電子写真用感光体の『感度』を測定し、実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5毎に30本間の平均値Zを求める。次に、実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5毎に、感度上位5本、下位5本を選択し、上位5本間の平均値X及び下位5本間の平均値Yを求める。そして、実施例1(ロ)、比較例1(ホ)及び実施例5それぞれにおいて、(Y-X)Zを求め、『感度再現性』として評価する。従って数値が小さいほど良好である。比較例1(ホ)を基準として以下のランクに区分した。
【0072】
A:比較例1(ホ)より30%以上減少
B:比較例1(ホ)より3%以上30%未満の範囲で減少
C:比較例1(ホ)に対し97%以上103%未満で同等レベル
D:比較例1(ホ)に対し103%以上
【0073】
【表7】

【0074】
本例の結果から明らかな様に、高周波電力導入手段の本数を、円筒状基体の本数と同数とすることにより、本発明の効果をより顕著に得ることができることがわかる。
【実施例6】
【0075】
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置に代えて、図4に示した電子写真用感光体製造装置、即ち、円筒状基体の配置円中央に、導電性の円筒状部材401を設置した装置において、反応容器101内壁から円筒状基体202までの距離L〔mm〕を、
(イ)20
(ロ)40
(ハ)60
とした電子写真用感光体製造装置を使用し、発振周波数105MHzの高周波電源113を用い、実施例1と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)40mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を各1ロット(各6本)作製した。
【0076】
尚、本例においては、各装置におけるL/Dは
(イ)0.50
(ロ)1.00
(ハ)1.50
となっている。
【0077】
実施例6(イ)〜(ロ)において作製した、各6本の電子写真用感光体の電子写真特性を実施例1と同様の方法で評価し、実施例1(ハ)で作製した電子写真用感光体との比較を行った。その結果を表8示す。
【0078】
尚、比較の際の評価基準は以下のとおりである。
【0079】
『帯電能評価基準』
A:実施例1(ハ)より5%以上増加
B:実施例1(ハ)より2%以上5%未満の範囲で増加
C:実施例1(ハ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:実施例1(ハ)に対し98%未満
『感度評価基準』
A:実施例1(ハ)より5%以上減少
B:実施例1(ハ)より2%以上5%未満の範囲で減少
C:実施例1(ハ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:実施例1(ハ)に対し102%以上
【0080】
【表8】

【0081】
本例の結果から明らかな様に、円筒状基体202の配置円の中央に、導電性の円筒状部材401を設置することにより、より良好な特性を持つ電子写真用感光体を作製できることがわかる。
【実施例7】
【0082】
本例では、図2に示した電子写真用感光体製造装置を使用し、高周波電力の周波数を
(イ)50MHz
(ロ)250MHz
とした以外は、実施例1の(ロ)と同様の方法により、反応容器101内に設置された直径(D)40mm、長さ358mmの円筒状基体202上に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を各1ロット(各6本)作製した。
【0083】
実施例7において作製した、各6本の電子写真用感光体の電子写真特性を実施例1と同様の方法で評価し、実施例1(ロ)で作製した電子写真用感光体を基準として、実施例7(イ)及び(ロ)で作製した電子写真用感光体間の比較を行った。その結果を表9示す。
【0084】
尚、比較の際の評価基準は以下のとおりである。
【0085】
『帯電能評価基準』
A:実施例1(ロ)より5%以上増加
B:実施例1(ロ)より2%以上5%未満の範囲で増加
C:実施例1(ロ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:実施例1(ロ)に対し98%未満
『感度評価基準』
A:実施例1(ロ)より5%以上減少
B:実施例1(ロ)より2%以上5%未満の範囲で減少
C:実施例1(ロ)に対し98%以上102%未満で同等レベル
D:実施例1(ロ)に対し102%以上
【0086】
【表9】

【0087】
本例の結果から明らかな様に、高周波電力の周波数を50MHz以上250MHz以下とした場合においても、本発明の効果を得ることができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明で使用した電子写真用感光体製造装置の一例で、VHF−PCVD法による電子写真用感光体製造装置を横から見た概略断面図である。
【図2】本発明で使用した電子写真用感光体製造装置の一例で、VHF−PCVD法による電子写真用感光体製造装置を横から見た概略断面図である。
【図3】本発明で使用した電子写真用感光体製造装置の一例で、VHF−CVD法による電子写真用感光体製造装置を横から見た概略断面図である。
【図4】本発明で使用した電子写真用感光体製造装置の一例で、VHF−CVD法による電子写真用感光体製造装置を横から見た概略断面図である。
【符号の説明】
【0089】
101 誘電体で構成された反応容器
102 円筒状基体
103 原料ガス導入手段
104 回転機構
105 下部基体支持手段
106 基体キャップ
107 上蓋
108 基体加熱ヒーター
109 高周波電力導入手段
110 原料ガス導入配管
111 圧力測定手段
112 スロットルバルブ
113 高周波電源
114 整合器
115 電力分割容器
116 電力分割部
117 複数の高周波電力伝送部
118 アースシールド
202 円筒状基体
401 導電性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器と、前記反応容器内部に配置された円筒状基体及び原料ガス導入手段と、前記反応容器外部に配置された高周波電力導入手段とを有し、前記高周波電力導入手段に高周波電力を印加し、前記反応容器内にグロー放電を発生させることによって、前記反応容器内に前記原料ガス導入手段を介して導入された原料ガスを分解し、前記円筒状基体上に堆積膜を形成する電子写真用感光体製造装置において、
前記高周波電力導入手段は、反応容器内壁から前記円筒状基体までの距離が最短となる直線上に配置され、前記円筒状基体の直径をD〔mm〕、前記反応容器内壁から前記円筒状基体までの最短距離をL〔mm〕とした場合において、
0.3≦L/D≦1.9 (1)
20≦L≦60 (2)
を全て満たすことを特徴とする電子写真用感光体製造装置。
【請求項2】
前記高周波電力導入手段が円柱状であり、かつ前記高周波電力導入手段の直径が、前記円筒状基体の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体製造装置。
【請求項3】
前記円筒状基体が複数であり、かつ同一円周上に配置され、前記高周波電力印加手段が前記円筒状基体と同数であり、かつ前記円筒状基体の配置円と中心軸を同じとした同一円周上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の電子写真用感光体製造装置。
【請求項4】
前記円筒状基体の配置円の中央に、導電性の円筒状部材が設置されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の電子写真用感光体製造装置。
【請求項5】
前記高周波電力の周波数が50MHz以上250MHz以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至4に記載の電子写真用感光体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−209748(P2008−209748A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47383(P2007−47383)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】