電子制御装置及びフィードバック制御方法
【課題】制御対象装置に印加される電源電圧が変動した場合でも、適切な制御を行うことを可能とする電子制御装置及びフィードバック制御方法を提供する。
【解決手段】制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数の積分項の零点設定値を補正する補正値を格納する参照手段を備え、当該参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正し、この補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定する。
【解決手段】制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数の積分項の零点設定値を補正する補正値を格納する参照手段を備え、当該参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正し、この補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の実測値と目標値との偏差を入力し、制御対象が目標値をとるようにフィードバック制御する電子制御装置及びフィードバック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の物理量が要求目標値になるように制御する技術的手法の一つとしてPID制御がある。ここで、PID制御とは出力値を入力側に帰還させるフィードバック制御の一種であって、制御対象の物理量の制御を、現在入力値と目標値との偏差、その積分及び微分の3つの制御要素(制御項)の適切な組み合わせにより行うものであり、現在、種々の電子制御装置に対する主力の制御方法となっている。
【0003】
ここで、PID制御におけるP(比例)制御項は、入力値を出力値と目標値の偏差の一次関数として制御するものである。また、PID制御におけるI(積分)制御項は、入力値を出力値と目標値の偏差の積分値(蓄積量)に比例して制御するものであり、D(微分)制御項は、入力値を出力値と目標値の偏差の微分値(変化率)に比例して制御しようとするものである。
【0004】
このようなPID制御を、内燃機関(エンジン)のスロットルバルブ(絞り弁装置)の制御に適用した例として、特開平7−293284号公報(特許文献1)及び特許第3356945号公報(特許文献2)が挙げられる。
【0005】
特許文献1に記載の制御装置は、内燃機関の絞り弁の制御にPID制御を適用し、制御弁の開度位置(実開度)と指令開度(目標値)の偏差が小さい時でも、比例項だけでも精密な空気供給制御を可能にするべく、開度位置(実開度)と指令開度(目標値)の偏差が小さい時には、比例項の制御係数を大きく設定するようにしている。
【0006】
また、特許文献2は、スロットルバルブの要求開度と実開度の偏差に応じて、小さい偏差に対しては大きい値の制御係数を用いることにより制御の応答性の改善を図ると共に、大きい偏差に対しては小さい値の偏差を用いることにより制御のオーバーシュートを回避するようにしたスロットルバルブ制御装置を開示している。
【特許文献1】特開平7−293284号公報
【特許文献2】特許第3356945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された制御装置では、偏差が小さい時には応答性に優れた制御が可能となるものの、偏差が大きい場合には制御がオーバーシュートする傾向を有し、実開度が無用に振動することとなるので装置の運転状態の安定性に欠けるとの欠点を有する。
【0008】
また、引用文献2に記載のスロットルバルブ制御装置は、スロットルバルブを駆動する直流モータに印加される電源電圧が変動した場合、使用する直流モータの駆動トルクに充分な余裕が無いことが多いので操作量が過不足の状態となって制御が不安定になることがある。特に、電源電圧が低下した時には、操作量が飽和してしまい、制御対象のスロットルバルブの実開度が要求開度に近づいた際にブレーキを掛ける必要があり、この場合、直流モータのギアートレイン等の負担が過大となる。また、制御のサイクル時間が長い場合には、装置への制御量がオーバーシュート又はアンダーシュートとなって制御が不安定化することがある。
【0009】
本発明は、制御のサイクルタイムが長い場合でも、制御装置(CPU)の負担を軽減させると共に、制御対象装置に印加される電源電圧が変動した場合でも、適切な制御を行うことを可能とする電子制御装置及びフィードバック制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、制御対象の目標値を順次入力し、設定された所定の伝達関数に基づいて当該制御対象の実測値と前記目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値になるようにフィードバック制御する電子制御装置であって、前記制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を格納する参照手段を備え、当該参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定する駆動信号制御手段を有することを特徴とする電子制御装置を提供するものである。
【0011】
ここで、前記フィードバック制御は、少なくとも積分動作制御を含み、前記伝達関数における積分項の零点設定値は、前記積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものであることを特徴とする。また、前記参照手段は、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値の補正値を規定するようにしている。そして、前記参照手段は、前記偏差と前記電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段としている。また、前記参照手段において、前記偏差が所定値以下の場合、前記補正値は前記電源電圧値に依存しない。
【0012】
そして、本電子制御装置の制御対象は、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、前記駆動装置は、前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータである。
【0013】
さらに、本発明は、設定された所定の伝達関数に基づいて制御対象の実測値と目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値を取るようにフィードバック制御を行う方法であって、(a)前記制御対象の前記目標値を順次入力するステップと、(b)前記制御対象の実測値と前記目標値の偏差を求めるステップと、(c)前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値を検知するステップと、(d)前記偏差と前記電源電圧値とをパラメータとして前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を求めるステップと、(e)前記補正値に基づいて前記伝達関数を補正するステップと、(f)前記補正された伝達関数に基づいて前記制御対象に係る駆動装置へ出力される駆動信号を決定するステップと、(g)前記駆動信号に基づいて前記駆動装置を駆動するステップと、の各ステップを有することを特徴とする電子制御装置のフィードバック制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
これにより、本発明は、制御対象装置の制御サイクルタイムが長い場合でも、制御装置の負担を軽減させると共に、制御対象装置に印加される電源電圧が変動した場合でも、適切な制御を行うことを可能とする電子制御装置及びフィードバック制御方法の提供を可能にしたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る電子制御装置及びフィードバック制御方法を、内燃機関の(以下、「エンジン」という)運転状態に適応して要求された適正量の空気を供給するようにしたスロットルバルブの電子制御装置に適用した実施の形態例として詳しく説明する。
【0016】
図1は、エンジンの燃焼室(図示せず)の吸気管(図示せず)に接続されるスロットルバルブ12とその吸気通路の開度を制御する本発明の電子制御装置11の接続関係を示す。図1は、本電子制御装置11をエンジンコントロールユニット(ECU)を構成する一つの要素とした場合の構成例を示しているが、このようなECUから独立して専らスロットルバルブを制御するスロットルバルブコントローラとしての電子制御装置と構成することも可能である。
【0017】
本電子制御装置(スロットルバルブコントローラ)11の制御対象は、エンジンの燃焼室に供給されるべき空気量であり、制御対象の目標値である要求空気量は、当該要求空気量又はこれに対応するスロットルバルブの目標開度として、エンジンを総合的に制御するエンジンコントロールユニット(ECU)からの入力データとして順次受信する。ECUから送信される要求空気量又はこれに対応する目標開度は、エンジンを搭載する車両のアクセルペダルの踏み込み量、内燃機関の運転状態及び排気ガス対策等に鑑みてECUにおいて総合的に決定される。また、本発明における制御対象の実測値とは、スロットルバルブ12の実開度であり、スロットルバルブ12に取り付けられた開度センサから入力されたデータを意味する。
【0018】
スロットルバルブ12は、エンジンへの吸気通路である吸気管内を流れる吸気量を調整するものである。このため、スロットルバルブ装置は、このスロットルバルブ12と、このスロットルバルブ12の開度を調整するための直流モータ13と、当該開度を検知する開度センサ14と、により構成されている。そして、直流モータ13と開度センサ14は、本電子制御装置11に接続されている。直流モータ13は、本電子制御装置11から駆動信号を受けてスロットルバルブ12を軸周りに回動させてその開度を変更させる。そして開度センサ14は、スロットルバルブ12の現在の実開度を検知し、これを本電子制御装置11に出力するようにしている。ここで、スロットルバルブ12の絞り弁は、直流モータ13の回転トルクでスロットルバルブ12を開く方向又は閉じる方向に動く。そして、リターンスプリング(図示せず)により、所定の力でスロットルバルブを、常時所定の開度に維持するようにしている。
【0019】
本電子制御装置11により制御される電子制御式のスロットルバルブ12は、従来の機械動作式のスロットルバルブのように、アクセルペダルとはワイヤ等の機械的手段を介しては直接的に連結されておらず、アクセルペダル踏み込み量とその他の各種車両パラメータ信号により、ECUがスロットルバルブの開度を決定し、本電子制御装置11が開度センサ11から入力される実開度とECUからの開度要求値(目標値)とから、直流モータ13に対する操作量を決定し、本電子制御装置11から当該決定された操作量に基づく駆動信号を直流モータ13に出力するようにしている。ここで、ECUに入力される各種車両パラメータとしては、アクセルペダルの踏み込み量のほか、エンジン冷却水温、エンジン回転数、自動変速機の変速状況等の各種信号を含むものである。
【0020】
図2は、本電子制御装置11の全体構成を示すものである。
図2に示すように、本電子制御装置(駆動信号制御手段)11は、プログラムや固定データを格納するROM21と、変動データ等を格納するRAM23と、A/D変換回路を含む入力インターフェース回路24と、D/A変換回路等を含む出力インターフェース25と、CPU22と、により構成される。本電子制御手段11として市販のいわゆるワンチッププロセッサを利用しても、またはASIC等の特注のプロセッサチップを使用してもよい。本電子制御装置11を構成するマイクロプロセッサは、予め外部から、伝達関数や制御定数等をROM21及びRAM23に格納しておき、開度センサ14から入力されるスロットルバルブ12の実開度の信号と、ECU側から入力されるスロットルバルブ12の要求開度の信号と、に基づいてスロットルバルブ12の開度調整を行う直流モータ13を操作するための駆動信号を算出し、直流モータ13を直接駆動する駆動回路26に駆動信号を出力する演算処理装置を構成する。
【0021】
後に詳しく説明するが、本電子制御手段11が駆動信号の作成のために参照する参照手段における参照データは、固定データとしてROM21に格納しても、経時的に更新可能な変動データとしてRAM23に格納するように構成してもよい。RAM23は、このような参照データを格納するほかに、プロセッサにおける演算処理の実行中に現れる数値やデータを一時的に記憶し随時読み出すためのバッファとしても使用される。
【0022】
図3は、本発明に係る電子制御装置及び方法の第1の構成例を示す。
本電子制御装置の第1の構成例においては、先に説明した、P(比例)制御と、I(積分)制御と、D(微分)制御を適切に組み合わせたPID制御によりスロットルバルブ12の開度制御を行おうとするものである。
【0023】
ところで、PID制御を含む制御関数を伝達関数で表わすことが行われている。伝達関数とは、全ての初期値を零とおいたときの制御系の出力と入力とのラプラス変換の比で表わされ、一般に、出力信号のラプラス変換をY(s)とし、入力信号のラプラス変換をU(s)とした場合、伝達関数G(s)は、Y(s)/U(s)と表される。本発明で使用する伝達関数では、時間領域の関数をラプラス変換、さらには、これをZ変換することによって離散信号の関数に変換するようにしている。そして、このような伝達関数は、制御系の特性や安定性を解析するのに好都合であることから、現在の各種の電子装置の制御において広く用いられている。
【0024】
図3に示す第1の構成例に係る本電子制御装置11は、開度センサ14(図1)から送られるスロットルバルブ12の実開度の信号と、ECUからの要求開度の信号との(プラス又はマイナスの符合を有する)偏差を算出し、この偏差に基づいて、比例項(P項)と積分項(I項)と微分項(D項)との和により直流モータへの駆動信号を算出するようにしている。ここで、本発明の特に主要な技術的特徴とするところは、PID制御における積分項Iに、スロットルバルブ12を駆動する直流モータ13に印加される電源電圧を入力する点にある。
【0025】
エンジンの最高回転が6000[rpm]の場合、エンジンの各シリンダは、少なくとも10ミリ秒毎に1回ずつ吸気工程を繰り返すので、本電子制御装置11の制御サイクル周期は各吸気工程毎にスロットルバルブの開度を制御しようとすれば10ミリ秒となる。この場合、本電子制御装置11は、外部のECUから少なくとも10ミリ秒毎に、スロットルバルブ12の実開度信号とECUからの要求開度信号である目標値を入力しその偏差を求める。このため、本制御における積分項は、同じ制御サイクル周期毎にスロットルバルブ12を駆動する直流モータ13に印加される電源電圧を入力する。但し、同一の吸気工程においてスロットルバルブの開度調整をきめ細かく何度も調整する場合は、この制御サイクル周期を例えば、数ミリ秒に短くすることとなる。
【0026】
しかし、本願発明においては、参照手段から得た伝達関数の補正値に基づいて当該伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、この補正された伝達関数に基づいて駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにした結果、偏差に対応して迅速且つ安定性に優れた応答制御を可能にしたことから、本発明の制御サイクル周期を従来技術の制御サイクル周期よりも長く設定することを可能にしたのである。
【0027】
PID制御においては、比例項(P項)、積分項(I項)及び微分項(D項)の間で重み付けを行うことにより、フィードバック制御における夫々の制御項の影響力の大小を設定することができる。この場合、例えば、PID制御関数を伝達関数として、当該伝達関数における比例項の係数を大きくし、その分だけ微分項の係数を小さくした場合には、当該フィードバック制御は、より多く比例制御と積分制御により行われることとなる。
【0028】
図3に示す本電子制御装置の第1の構成例では、積分項の制御係数を補正する例を示す。そして、本発明においては、伝達関数における制御係数の補正は、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータとする補正値を格納する参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにしているのである。この参照手段については、図8及び図9において詳しく説明する。
【0029】
図4は、本発明に係る電子制御装置及び方法の第2の構成例を示す。
図4に示す本電子制御装置の第2の構成例では、最初に、開度センサ14(図1)から送られるスロットルバルブ12の実開度の信号と、ECUからの要求開度の信号との(プラス又はマイナスの符合を有する)偏差を算出し、この偏差に基づいて、積分項(I項)の制御を優先して行い、当該積分制御の後に、比例項(P項)と微分項(D項)に基づく制御を並行して行い、その結果により直流モータへの駆動信号を算出するようにしている。
【0030】
ここで、本発明の当該第2の構成例における特に主要な技術的特徴とするところは、上記した第1の構成例と同様に、PID制御における積分項Iに、スロットルバルブ12を駆動する直流モータ13に印加される電源電圧を入力する点にある。このように、本発明においては、伝達関数における制御係数の補正は、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータする補正値を格納する参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにしているのである。
【0031】
図5は、図3及び図4において説明した本発明に係る電子制御における積分制御の第1の例(制御係数の補正)を示す。
本発明における積分制御の第1の例では、伝達関数の積分項の制御係数を補正するものであり、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の制御係数を補正するようにしている。
【0032】
図6は、本発明に係る電子制御における積分制御の第2の例(積分項の零点設定値の補正)を示す。
本発明における積分制御の第2の実施例では、伝達関数の積分項の零点指定値を補正するものであり、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の零点指定値を補正するようにしている。
【0033】
図7は、本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第1の例を示す。なお、図7及び図8に示す参照手段では、図面を理解し易くするために、電源電圧の種類を3とおり(電源電圧1、電源電圧2、電源電圧3)にして説明するが、実際には、マップ表示による参照であることから、それ以上の区分にしたり、又は無段階の電源電圧の変動に対応した参照マップとすることが可能である。
【0034】
図7において、当該参照手段は、伝達関数の係数制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の係数を補正する補正値を格納する手段である。
【0035】
図7に示すように、本発明の特徴として、制御関数式を構成する伝達関数における積分項の係数を補正する補正値は、駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsの値によって異なる補正値を取るようにしている。
【0036】
図7に示す参照手段の例では、電源電圧Vsに2つの閾値を設けて、検出された電源電圧Vsの値が第1の閾値を超えている場合には、図8に示す「電源電圧1」の係数補正曲線に基づいて、また、検出された電源電圧Vsの値が第1の閾値以下ではあるが第2の閾値を超えている場合には、図8に示す「電源電圧2」の係数補正曲線に基づいて、そして、検出された電源電圧Vsの値が第2の閾値以下の場合には、図7に示す「電源電圧3」の係数補正曲線に基づいて、使用する伝達関数における積分項のそれぞれの係数を補正する補正値を選択し採用するようにしている。
【0037】
ところで、このような参照手段は、図7に示すように、目標値と実測値の偏差と電源電圧Vsの値を変数として前記係数補正値を規定する三次元のマップとしてROM又はRAMに格納してもよいが、偏差を複数の区分(図8の場合は3区分)に分け、各区分における係数補正値の関数式として表すようにしても良い。
【0038】
図7に示すように、参照手段により規定される係数補正値は、目標値と実測値の偏差が大きい場合は小さい係数補正値が選択され、偏差が小さい場合は、大きい係数補正値が選択されるようにしているので、本電子制御装置及び方法においては、制御対象の目標値への高速応答を達成しつつ、オーバーシュートにより実開度が振動することなく装置の運転状態の安定性に優れた制御を可能にしたのである。
【0039】
さらに、本発明においては、参照手段により規定される係数補正値において、駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧Vsの変動に対応させて係数補正値を修正しているので、電源電圧Vsが低下した時でも、操作量が飽和することなく、スムーズなスロットルバルブの開度制御を可能とし、直流モータ13のギアートレイン等の負担を軽減させることを実現したのである。
【0040】
図7において、さらに注目すべきは、本発明の参照手段においては、制御対象の目標値と実測値の偏差が所定値以下の場合、係数補正値は、電源電圧値に依存しない点にある。
【0041】
図8は、本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第2の例を示す。
ここで、図8に示す参照手段は、伝達関数の係数制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の零点指定値を補正する補正値を格納する手段である。
【0042】
図8に示す参照手段においては、図8に示した伝達関数における積分項の係数を補正する補正値と同様に、制御関数式を構成する伝達関数における積分項の零点指定値を補正する補正値は、駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsの値によって異なる補正値を取るようにしている。図8においても、図7に示した参照手段の例と同様に、電源電圧Vsの値として3つの場合を示しているが、電源電圧Vsの区分けをより多くの場合に設定するようにしても良い。その他の説明は、図7の例と同様なので、ここでの説明は省略する。但し、図8に示す参照手段の例においても、制御対象の目標値と実測値の偏差が所定値以下の場合、係数補正値は、電源電圧値に依存しない点に注目すべきである。
【0043】
図9は、本発明に係る電子制御方法を説明するフローチャートを示す。
図9に示す本電子制御方法は、設定された所定の伝達関数に基づいて制御対象の実測値と目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値を取るようにフィードバック制御を行う方法である。
【0044】
最初に、本電子制御方法を実行する制御対象装置の電源が投入(例えば、車両のエンジン作動キーがオン)されると、制御装置がイニシャライズされて、装置を演算制御するための伝達関数や制御定数が設定される(S11)。
【0045】
そして、外部のECUから目標値の入力(又は、駆動制御開始の指令信号の入力)を受けると(S12)、ECUから制御対象の目標値(要求量)を入力する(S13)。ここで、制御対象の実測値(開度センサ14からの入力)と前記目標値の偏差を求める(S14)。さらに、ここで、制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値を検知し(S15)、S14において求めた偏差と当該電源電圧値とをパラメータとして、使用する伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正する補正値を求めるのである(S16)。
【0046】
ところで、本発明の実際の制御としては、このような伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)の補正は、異なる要因により求められた他の補正値を組み合わせるようにしても良い。例えば、前回要求値と今回要求値の差による補正値をさらに乗算して求めた補正値を最終的な補正値として使用することも可能である。
【0047】
そして、このようにして求めた補正値に基づいて当該伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正し(S17)、この補正された伝達関数に基づいて前記制御対象に係る駆動装置へ出力される駆動信号を決定し(S18)、当該決定された駆動信号に基づいて前記駆動装置を駆動するのである(S19)。そして、当該制御は、装置が停止される(即ち、目標値の入力が無くなるまで)まで継続されるのである(S21)。
【0048】
ところで、このようなフィードバック制御を行う伝達関数は、積分動作制御を含み、上記したS16における伝達関数の積分項の零点設定値は、当該積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものである。
【0049】
また、S16において、使用する伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正する補正値は、当該補正値を規定している参照手段を参照することにより行うことができる。そして、この参照手段は、前記した偏差と電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段とすると便利である。
【0050】
ところで、本電子制御方法の制御対象は、その具体的適用の例として、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、上記した駆動装置は、スロットルバルブの開度を調整する駆動モータとすることができる。
【0051】
図10は、本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例を示すものである。図10に示すように、本発明においては、上記のように制御することにより、制御対象の目標値への高速応答を達成しつつ、駆動装置を制御のオーバーシュートにより急停車等させることなく装置の運転状態の安定性に優れた制御を実現したのである。これにより、本発明においては、駆動装置におけるギアートレインの負担を大きく軽減させることを実現したのである。
【0052】
図11は、従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例を示すものである。従来技術においては、本発明同様に、目標値と実測値の偏差が大きい場合は小さい係数補正値が選択され、偏差が小さい場合は、大きい係数補正値が選択することにより制御対象の高速応答を実現しようと企図しているものの、図12に示すように、駆動装置の操作量が飽和したり又は操作量がオーバーシュートすることにより、駆動装置が急停止するような事態が生じていたのである。
【0053】
図12は、本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例を示すものである。図12に示されているように、本発明においては、制御のアンダーシュートをなくし且つ実開度が振動することなく、制御対象の目標値への高速応答を達成しつつ、装置の運転状態の安定性に優れた制御を実現したのである。
【0054】
図13は、従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例を示すものである。図13に示されているように、従来技術においては、駆動装置の操作量が制御の過程においてアンダーシュートすることから駆動装置の動作に歪みやガタツキが生じ、制御の高速応答性と安定性において支障が生じていたのである。
【0055】
以上詳しく説明したように、本発明においては、制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数(及び/又は前記伝達関数の積分項の零点設定値)を補正する補正値を格納する参照手段を備え、当該参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにしたので、制御の高速応答性及び制御の安定性を飛躍的に向上させること実現したのである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、制御対象の目標値を順次入力して設定された所定の伝達関数に基づいて当該制御対象の実測値と前記目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値になるようにフィードバック制御する電子制御装置及び制御方法に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】エンジンの燃焼室(図示せず)に接続される吸気管(図示せず)に接続されるスロットルバルブ12とその吸気通路の開度を制御する本発明の電子制御装置11の接続関係を示す。
【図2】本電子制御装置11の全体構成を示すものである。
【図3】本発明に係る電子制御装置及び方法の第1の構成例を示す。
【図4】本発明に係る電子制御装置及び方法の第2の構成例を示す。
【図5】本発明に係る電子制御における積分制御の第1の例(制御係数の補正)を示す。
【図6】本発明に係る電子制御における積分制御の第2の例(積分項の零点設定値の補正)を示す。
【図7】本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第1の例を示す。
【図8】本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第2の例を示す。
【図9】本発明に係る電子制御方法を説明するフローチャートを示す。
【図10】本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例を示す。
【図11】従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例(制御のオーバーシュート)を示す。
【図12】本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例を示す。
【図13】従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例(制御のアンダーシュート)を示す。
【符号の説明】
【0058】
11:電子制御装置(駆動信号制御手段)
12:スロットルバルブ
13:直流モータ
14:開度センサ
21:ROM
22:CPU
23:RAM
24:入力インターフェース
25:出力インターフェース
26:駆動回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の実測値と目標値との偏差を入力し、制御対象が目標値をとるようにフィードバック制御する電子制御装置及びフィードバック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の物理量が要求目標値になるように制御する技術的手法の一つとしてPID制御がある。ここで、PID制御とは出力値を入力側に帰還させるフィードバック制御の一種であって、制御対象の物理量の制御を、現在入力値と目標値との偏差、その積分及び微分の3つの制御要素(制御項)の適切な組み合わせにより行うものであり、現在、種々の電子制御装置に対する主力の制御方法となっている。
【0003】
ここで、PID制御におけるP(比例)制御項は、入力値を出力値と目標値の偏差の一次関数として制御するものである。また、PID制御におけるI(積分)制御項は、入力値を出力値と目標値の偏差の積分値(蓄積量)に比例して制御するものであり、D(微分)制御項は、入力値を出力値と目標値の偏差の微分値(変化率)に比例して制御しようとするものである。
【0004】
このようなPID制御を、内燃機関(エンジン)のスロットルバルブ(絞り弁装置)の制御に適用した例として、特開平7−293284号公報(特許文献1)及び特許第3356945号公報(特許文献2)が挙げられる。
【0005】
特許文献1に記載の制御装置は、内燃機関の絞り弁の制御にPID制御を適用し、制御弁の開度位置(実開度)と指令開度(目標値)の偏差が小さい時でも、比例項だけでも精密な空気供給制御を可能にするべく、開度位置(実開度)と指令開度(目標値)の偏差が小さい時には、比例項の制御係数を大きく設定するようにしている。
【0006】
また、特許文献2は、スロットルバルブの要求開度と実開度の偏差に応じて、小さい偏差に対しては大きい値の制御係数を用いることにより制御の応答性の改善を図ると共に、大きい偏差に対しては小さい値の偏差を用いることにより制御のオーバーシュートを回避するようにしたスロットルバルブ制御装置を開示している。
【特許文献1】特開平7−293284号公報
【特許文献2】特許第3356945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された制御装置では、偏差が小さい時には応答性に優れた制御が可能となるものの、偏差が大きい場合には制御がオーバーシュートする傾向を有し、実開度が無用に振動することとなるので装置の運転状態の安定性に欠けるとの欠点を有する。
【0008】
また、引用文献2に記載のスロットルバルブ制御装置は、スロットルバルブを駆動する直流モータに印加される電源電圧が変動した場合、使用する直流モータの駆動トルクに充分な余裕が無いことが多いので操作量が過不足の状態となって制御が不安定になることがある。特に、電源電圧が低下した時には、操作量が飽和してしまい、制御対象のスロットルバルブの実開度が要求開度に近づいた際にブレーキを掛ける必要があり、この場合、直流モータのギアートレイン等の負担が過大となる。また、制御のサイクル時間が長い場合には、装置への制御量がオーバーシュート又はアンダーシュートとなって制御が不安定化することがある。
【0009】
本発明は、制御のサイクルタイムが長い場合でも、制御装置(CPU)の負担を軽減させると共に、制御対象装置に印加される電源電圧が変動した場合でも、適切な制御を行うことを可能とする電子制御装置及びフィードバック制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、制御対象の目標値を順次入力し、設定された所定の伝達関数に基づいて当該制御対象の実測値と前記目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値になるようにフィードバック制御する電子制御装置であって、前記制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を格納する参照手段を備え、当該参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定する駆動信号制御手段を有することを特徴とする電子制御装置を提供するものである。
【0011】
ここで、前記フィードバック制御は、少なくとも積分動作制御を含み、前記伝達関数における積分項の零点設定値は、前記積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものであることを特徴とする。また、前記参照手段は、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値の補正値を規定するようにしている。そして、前記参照手段は、前記偏差と前記電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段としている。また、前記参照手段において、前記偏差が所定値以下の場合、前記補正値は前記電源電圧値に依存しない。
【0012】
そして、本電子制御装置の制御対象は、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、前記駆動装置は、前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータである。
【0013】
さらに、本発明は、設定された所定の伝達関数に基づいて制御対象の実測値と目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値を取るようにフィードバック制御を行う方法であって、(a)前記制御対象の前記目標値を順次入力するステップと、(b)前記制御対象の実測値と前記目標値の偏差を求めるステップと、(c)前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値を検知するステップと、(d)前記偏差と前記電源電圧値とをパラメータとして前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を求めるステップと、(e)前記補正値に基づいて前記伝達関数を補正するステップと、(f)前記補正された伝達関数に基づいて前記制御対象に係る駆動装置へ出力される駆動信号を決定するステップと、(g)前記駆動信号に基づいて前記駆動装置を駆動するステップと、の各ステップを有することを特徴とする電子制御装置のフィードバック制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
これにより、本発明は、制御対象装置の制御サイクルタイムが長い場合でも、制御装置の負担を軽減させると共に、制御対象装置に印加される電源電圧が変動した場合でも、適切な制御を行うことを可能とする電子制御装置及びフィードバック制御方法の提供を可能にしたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る電子制御装置及びフィードバック制御方法を、内燃機関の(以下、「エンジン」という)運転状態に適応して要求された適正量の空気を供給するようにしたスロットルバルブの電子制御装置に適用した実施の形態例として詳しく説明する。
【0016】
図1は、エンジンの燃焼室(図示せず)の吸気管(図示せず)に接続されるスロットルバルブ12とその吸気通路の開度を制御する本発明の電子制御装置11の接続関係を示す。図1は、本電子制御装置11をエンジンコントロールユニット(ECU)を構成する一つの要素とした場合の構成例を示しているが、このようなECUから独立して専らスロットルバルブを制御するスロットルバルブコントローラとしての電子制御装置と構成することも可能である。
【0017】
本電子制御装置(スロットルバルブコントローラ)11の制御対象は、エンジンの燃焼室に供給されるべき空気量であり、制御対象の目標値である要求空気量は、当該要求空気量又はこれに対応するスロットルバルブの目標開度として、エンジンを総合的に制御するエンジンコントロールユニット(ECU)からの入力データとして順次受信する。ECUから送信される要求空気量又はこれに対応する目標開度は、エンジンを搭載する車両のアクセルペダルの踏み込み量、内燃機関の運転状態及び排気ガス対策等に鑑みてECUにおいて総合的に決定される。また、本発明における制御対象の実測値とは、スロットルバルブ12の実開度であり、スロットルバルブ12に取り付けられた開度センサから入力されたデータを意味する。
【0018】
スロットルバルブ12は、エンジンへの吸気通路である吸気管内を流れる吸気量を調整するものである。このため、スロットルバルブ装置は、このスロットルバルブ12と、このスロットルバルブ12の開度を調整するための直流モータ13と、当該開度を検知する開度センサ14と、により構成されている。そして、直流モータ13と開度センサ14は、本電子制御装置11に接続されている。直流モータ13は、本電子制御装置11から駆動信号を受けてスロットルバルブ12を軸周りに回動させてその開度を変更させる。そして開度センサ14は、スロットルバルブ12の現在の実開度を検知し、これを本電子制御装置11に出力するようにしている。ここで、スロットルバルブ12の絞り弁は、直流モータ13の回転トルクでスロットルバルブ12を開く方向又は閉じる方向に動く。そして、リターンスプリング(図示せず)により、所定の力でスロットルバルブを、常時所定の開度に維持するようにしている。
【0019】
本電子制御装置11により制御される電子制御式のスロットルバルブ12は、従来の機械動作式のスロットルバルブのように、アクセルペダルとはワイヤ等の機械的手段を介しては直接的に連結されておらず、アクセルペダル踏み込み量とその他の各種車両パラメータ信号により、ECUがスロットルバルブの開度を決定し、本電子制御装置11が開度センサ11から入力される実開度とECUからの開度要求値(目標値)とから、直流モータ13に対する操作量を決定し、本電子制御装置11から当該決定された操作量に基づく駆動信号を直流モータ13に出力するようにしている。ここで、ECUに入力される各種車両パラメータとしては、アクセルペダルの踏み込み量のほか、エンジン冷却水温、エンジン回転数、自動変速機の変速状況等の各種信号を含むものである。
【0020】
図2は、本電子制御装置11の全体構成を示すものである。
図2に示すように、本電子制御装置(駆動信号制御手段)11は、プログラムや固定データを格納するROM21と、変動データ等を格納するRAM23と、A/D変換回路を含む入力インターフェース回路24と、D/A変換回路等を含む出力インターフェース25と、CPU22と、により構成される。本電子制御手段11として市販のいわゆるワンチッププロセッサを利用しても、またはASIC等の特注のプロセッサチップを使用してもよい。本電子制御装置11を構成するマイクロプロセッサは、予め外部から、伝達関数や制御定数等をROM21及びRAM23に格納しておき、開度センサ14から入力されるスロットルバルブ12の実開度の信号と、ECU側から入力されるスロットルバルブ12の要求開度の信号と、に基づいてスロットルバルブ12の開度調整を行う直流モータ13を操作するための駆動信号を算出し、直流モータ13を直接駆動する駆動回路26に駆動信号を出力する演算処理装置を構成する。
【0021】
後に詳しく説明するが、本電子制御手段11が駆動信号の作成のために参照する参照手段における参照データは、固定データとしてROM21に格納しても、経時的に更新可能な変動データとしてRAM23に格納するように構成してもよい。RAM23は、このような参照データを格納するほかに、プロセッサにおける演算処理の実行中に現れる数値やデータを一時的に記憶し随時読み出すためのバッファとしても使用される。
【0022】
図3は、本発明に係る電子制御装置及び方法の第1の構成例を示す。
本電子制御装置の第1の構成例においては、先に説明した、P(比例)制御と、I(積分)制御と、D(微分)制御を適切に組み合わせたPID制御によりスロットルバルブ12の開度制御を行おうとするものである。
【0023】
ところで、PID制御を含む制御関数を伝達関数で表わすことが行われている。伝達関数とは、全ての初期値を零とおいたときの制御系の出力と入力とのラプラス変換の比で表わされ、一般に、出力信号のラプラス変換をY(s)とし、入力信号のラプラス変換をU(s)とした場合、伝達関数G(s)は、Y(s)/U(s)と表される。本発明で使用する伝達関数では、時間領域の関数をラプラス変換、さらには、これをZ変換することによって離散信号の関数に変換するようにしている。そして、このような伝達関数は、制御系の特性や安定性を解析するのに好都合であることから、現在の各種の電子装置の制御において広く用いられている。
【0024】
図3に示す第1の構成例に係る本電子制御装置11は、開度センサ14(図1)から送られるスロットルバルブ12の実開度の信号と、ECUからの要求開度の信号との(プラス又はマイナスの符合を有する)偏差を算出し、この偏差に基づいて、比例項(P項)と積分項(I項)と微分項(D項)との和により直流モータへの駆動信号を算出するようにしている。ここで、本発明の特に主要な技術的特徴とするところは、PID制御における積分項Iに、スロットルバルブ12を駆動する直流モータ13に印加される電源電圧を入力する点にある。
【0025】
エンジンの最高回転が6000[rpm]の場合、エンジンの各シリンダは、少なくとも10ミリ秒毎に1回ずつ吸気工程を繰り返すので、本電子制御装置11の制御サイクル周期は各吸気工程毎にスロットルバルブの開度を制御しようとすれば10ミリ秒となる。この場合、本電子制御装置11は、外部のECUから少なくとも10ミリ秒毎に、スロットルバルブ12の実開度信号とECUからの要求開度信号である目標値を入力しその偏差を求める。このため、本制御における積分項は、同じ制御サイクル周期毎にスロットルバルブ12を駆動する直流モータ13に印加される電源電圧を入力する。但し、同一の吸気工程においてスロットルバルブの開度調整をきめ細かく何度も調整する場合は、この制御サイクル周期を例えば、数ミリ秒に短くすることとなる。
【0026】
しかし、本願発明においては、参照手段から得た伝達関数の補正値に基づいて当該伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、この補正された伝達関数に基づいて駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにした結果、偏差に対応して迅速且つ安定性に優れた応答制御を可能にしたことから、本発明の制御サイクル周期を従来技術の制御サイクル周期よりも長く設定することを可能にしたのである。
【0027】
PID制御においては、比例項(P項)、積分項(I項)及び微分項(D項)の間で重み付けを行うことにより、フィードバック制御における夫々の制御項の影響力の大小を設定することができる。この場合、例えば、PID制御関数を伝達関数として、当該伝達関数における比例項の係数を大きくし、その分だけ微分項の係数を小さくした場合には、当該フィードバック制御は、より多く比例制御と積分制御により行われることとなる。
【0028】
図3に示す本電子制御装置の第1の構成例では、積分項の制御係数を補正する例を示す。そして、本発明においては、伝達関数における制御係数の補正は、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータとする補正値を格納する参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにしているのである。この参照手段については、図8及び図9において詳しく説明する。
【0029】
図4は、本発明に係る電子制御装置及び方法の第2の構成例を示す。
図4に示す本電子制御装置の第2の構成例では、最初に、開度センサ14(図1)から送られるスロットルバルブ12の実開度の信号と、ECUからの要求開度の信号との(プラス又はマイナスの符合を有する)偏差を算出し、この偏差に基づいて、積分項(I項)の制御を優先して行い、当該積分制御の後に、比例項(P項)と微分項(D項)に基づく制御を並行して行い、その結果により直流モータへの駆動信号を算出するようにしている。
【0030】
ここで、本発明の当該第2の構成例における特に主要な技術的特徴とするところは、上記した第1の構成例と同様に、PID制御における積分項Iに、スロットルバルブ12を駆動する直流モータ13に印加される電源電圧を入力する点にある。このように、本発明においては、伝達関数における制御係数の補正は、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータする補正値を格納する参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにしているのである。
【0031】
図5は、図3及び図4において説明した本発明に係る電子制御における積分制御の第1の例(制御係数の補正)を示す。
本発明における積分制御の第1の例では、伝達関数の積分項の制御係数を補正するものであり、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の制御係数を補正するようにしている。
【0032】
図6は、本発明に係る電子制御における積分制御の第2の例(積分項の零点設定値の補正)を示す。
本発明における積分制御の第2の実施例では、伝達関数の積分項の零点指定値を補正するものであり、制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の零点指定値を補正するようにしている。
【0033】
図7は、本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第1の例を示す。なお、図7及び図8に示す参照手段では、図面を理解し易くするために、電源電圧の種類を3とおり(電源電圧1、電源電圧2、電源電圧3)にして説明するが、実際には、マップ表示による参照であることから、それ以上の区分にしたり、又は無段階の電源電圧の変動に対応した参照マップとすることが可能である。
【0034】
図7において、当該参照手段は、伝達関数の係数制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の係数を補正する補正値を格納する手段である。
【0035】
図7に示すように、本発明の特徴として、制御関数式を構成する伝達関数における積分項の係数を補正する補正値は、駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsの値によって異なる補正値を取るようにしている。
【0036】
図7に示す参照手段の例では、電源電圧Vsに2つの閾値を設けて、検出された電源電圧Vsの値が第1の閾値を超えている場合には、図8に示す「電源電圧1」の係数補正曲線に基づいて、また、検出された電源電圧Vsの値が第1の閾値以下ではあるが第2の閾値を超えている場合には、図8に示す「電源電圧2」の係数補正曲線に基づいて、そして、検出された電源電圧Vsの値が第2の閾値以下の場合には、図7に示す「電源電圧3」の係数補正曲線に基づいて、使用する伝達関数における積分項のそれぞれの係数を補正する補正値を選択し採用するようにしている。
【0037】
ところで、このような参照手段は、図7に示すように、目標値と実測値の偏差と電源電圧Vsの値を変数として前記係数補正値を規定する三次元のマップとしてROM又はRAMに格納してもよいが、偏差を複数の区分(図8の場合は3区分)に分け、各区分における係数補正値の関数式として表すようにしても良い。
【0038】
図7に示すように、参照手段により規定される係数補正値は、目標値と実測値の偏差が大きい場合は小さい係数補正値が選択され、偏差が小さい場合は、大きい係数補正値が選択されるようにしているので、本電子制御装置及び方法においては、制御対象の目標値への高速応答を達成しつつ、オーバーシュートにより実開度が振動することなく装置の運転状態の安定性に優れた制御を可能にしたのである。
【0039】
さらに、本発明においては、参照手段により規定される係数補正値において、駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧Vsの変動に対応させて係数補正値を修正しているので、電源電圧Vsが低下した時でも、操作量が飽和することなく、スムーズなスロットルバルブの開度制御を可能とし、直流モータ13のギアートレイン等の負担を軽減させることを実現したのである。
【0040】
図7において、さらに注目すべきは、本発明の参照手段においては、制御対象の目標値と実測値の偏差が所定値以下の場合、係数補正値は、電源電圧値に依存しない点にある。
【0041】
図8は、本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第2の例を示す。
ここで、図8に示す参照手段は、伝達関数の係数制御対象(スロットルバルブの開度)の目標値(例えばECUからの要求値)と実測値(開度センサ14の検出値)との偏差と制御対象に係る駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsとをパラメータ(変動要因)として、当該伝達関数における積分項の零点指定値を補正する補正値を格納する手段である。
【0042】
図8に示す参照手段においては、図8に示した伝達関数における積分項の係数を補正する補正値と同様に、制御関数式を構成する伝達関数における積分項の零点指定値を補正する補正値は、駆動装置(直流モータ13)に印加される電源電圧値Vsの値によって異なる補正値を取るようにしている。図8においても、図7に示した参照手段の例と同様に、電源電圧Vsの値として3つの場合を示しているが、電源電圧Vsの区分けをより多くの場合に設定するようにしても良い。その他の説明は、図7の例と同様なので、ここでの説明は省略する。但し、図8に示す参照手段の例においても、制御対象の目標値と実測値の偏差が所定値以下の場合、係数補正値は、電源電圧値に依存しない点に注目すべきである。
【0043】
図9は、本発明に係る電子制御方法を説明するフローチャートを示す。
図9に示す本電子制御方法は、設定された所定の伝達関数に基づいて制御対象の実測値と目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値を取るようにフィードバック制御を行う方法である。
【0044】
最初に、本電子制御方法を実行する制御対象装置の電源が投入(例えば、車両のエンジン作動キーがオン)されると、制御装置がイニシャライズされて、装置を演算制御するための伝達関数や制御定数が設定される(S11)。
【0045】
そして、外部のECUから目標値の入力(又は、駆動制御開始の指令信号の入力)を受けると(S12)、ECUから制御対象の目標値(要求量)を入力する(S13)。ここで、制御対象の実測値(開度センサ14からの入力)と前記目標値の偏差を求める(S14)。さらに、ここで、制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値を検知し(S15)、S14において求めた偏差と当該電源電圧値とをパラメータとして、使用する伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正する補正値を求めるのである(S16)。
【0046】
ところで、本発明の実際の制御としては、このような伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)の補正は、異なる要因により求められた他の補正値を組み合わせるようにしても良い。例えば、前回要求値と今回要求値の差による補正値をさらに乗算して求めた補正値を最終的な補正値として使用することも可能である。
【0047】
そして、このようにして求めた補正値に基づいて当該伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正し(S17)、この補正された伝達関数に基づいて前記制御対象に係る駆動装置へ出力される駆動信号を決定し(S18)、当該決定された駆動信号に基づいて前記駆動装置を駆動するのである(S19)。そして、当該制御は、装置が停止される(即ち、目標値の入力が無くなるまで)まで継続されるのである(S21)。
【0048】
ところで、このようなフィードバック制御を行う伝達関数は、積分動作制御を含み、上記したS16における伝達関数の積分項の零点設定値は、当該積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものである。
【0049】
また、S16において、使用する伝達関数の制御係数(又は積分項の零点設定値)を補正する補正値は、当該補正値を規定している参照手段を参照することにより行うことができる。そして、この参照手段は、前記した偏差と電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段とすると便利である。
【0050】
ところで、本電子制御方法の制御対象は、その具体的適用の例として、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、上記した駆動装置は、スロットルバルブの開度を調整する駆動モータとすることができる。
【0051】
図10は、本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例を示すものである。図10に示すように、本発明においては、上記のように制御することにより、制御対象の目標値への高速応答を達成しつつ、駆動装置を制御のオーバーシュートにより急停車等させることなく装置の運転状態の安定性に優れた制御を実現したのである。これにより、本発明においては、駆動装置におけるギアートレインの負担を大きく軽減させることを実現したのである。
【0052】
図11は、従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例を示すものである。従来技術においては、本発明同様に、目標値と実測値の偏差が大きい場合は小さい係数補正値が選択され、偏差が小さい場合は、大きい係数補正値が選択することにより制御対象の高速応答を実現しようと企図しているものの、図12に示すように、駆動装置の操作量が飽和したり又は操作量がオーバーシュートすることにより、駆動装置が急停止するような事態が生じていたのである。
【0053】
図12は、本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例を示すものである。図12に示されているように、本発明においては、制御のアンダーシュートをなくし且つ実開度が振動することなく、制御対象の目標値への高速応答を達成しつつ、装置の運転状態の安定性に優れた制御を実現したのである。
【0054】
図13は、従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例を示すものである。図13に示されているように、従来技術においては、駆動装置の操作量が制御の過程においてアンダーシュートすることから駆動装置の動作に歪みやガタツキが生じ、制御の高速応答性と安定性において支障が生じていたのである。
【0055】
以上詳しく説明したように、本発明においては、制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数(及び/又は前記伝達関数の積分項の零点設定値)を補正する補正値を格納する参照手段を備え、当該参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定するようにしたので、制御の高速応答性及び制御の安定性を飛躍的に向上させること実現したのである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、制御対象の目標値を順次入力して設定された所定の伝達関数に基づいて当該制御対象の実測値と前記目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値になるようにフィードバック制御する電子制御装置及び制御方法に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】エンジンの燃焼室(図示せず)に接続される吸気管(図示せず)に接続されるスロットルバルブ12とその吸気通路の開度を制御する本発明の電子制御装置11の接続関係を示す。
【図2】本電子制御装置11の全体構成を示すものである。
【図3】本発明に係る電子制御装置及び方法の第1の構成例を示す。
【図4】本発明に係る電子制御装置及び方法の第2の構成例を示す。
【図5】本発明に係る電子制御における積分制御の第1の例(制御係数の補正)を示す。
【図6】本発明に係る電子制御における積分制御の第2の例(積分項の零点設定値の補正)を示す。
【図7】本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第1の例を示す。
【図8】本発明を構成する駆動信号制御手段が、駆動装置(直流モータ13)へ出力する駆動信号を決定する際に参照する参照手段の第2の例を示す。
【図9】本発明に係る電子制御方法を説明するフローチャートを示す。
【図10】本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例を示す。
【図11】従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第1の例(制御のオーバーシュート)を示す。
【図12】本発明に係る電子制御装置から出力される駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例を示す。
【図13】従来技術に基づく駆動装置(直流モータ13)へ出力される駆動信号の出力波形(PWM操作量)の第2の例(制御のアンダーシュート)を示す。
【符号の説明】
【0058】
11:電子制御装置(駆動信号制御手段)
12:スロットルバルブ
13:直流モータ
14:開度センサ
21:ROM
22:CPU
23:RAM
24:入力インターフェース
25:出力インターフェース
26:駆動回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の目標値を順次入力し、設定された所定の伝達関数に基づいて当該制御対象の実測値と前記目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値になるようにフィードバック制御する電子制御装置であって、
前記制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を格納する参照手段を備え、
前記参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定する駆動信号制御手段を有することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御は、少なくとも積分動作制御を含み、
前記伝達関数における積分項の零点設定値は、前記積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記参照手段は、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値の補正値を規定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記参照手段は、前記偏差と前記電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段であることを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記参照手段において、前記偏差が所定値以下の場合、前記補正値は前記電源電圧値に依存しないことを特徴とする請求項1又は4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記制御対象は、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、
前記駆動装置は、前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータであることを特徴とする請求項1乃至5に記載の電子制御装置。
【請求項7】
設定された所定の伝達関数に基づいて制御対象の実測値と目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値を取るようにフィードバック制御を行う方法であって、
(a)前記制御対象の前記目標値を順次入力するステップと、
(b)前記制御対象の実測値と前記目標値の偏差を求めるステップと、
(c)前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値を検知するステップと、
(d)前記偏差と前記電源電圧値とをパラメータとして前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を求めるステップと、
(e)前記補正値に基づいて前記伝達関数を補正するステップと、
(f)前記補正された伝達関数に基づいて前記制御対象に係る駆動装置へ出力される駆動信号を決定するステップと、
(g)前記駆動信号に基づいて前記駆動装置を駆動するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする電子制御装置のフィードバック制御方法。
【請求項8】
前記フィードバック制御は、少なくとも積分動作制御を含み、
前記伝達関数における積分項の零点設定値は、前記積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものであることを特徴とする請求項7に記載のフィードバック制御方法。
【請求項9】
前記ステップ(d)において、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値は、当該補正値を規定している参照手段を参照することにより得ることを特徴とする請求項7又は8に記載のフィードバック制御方法。
【請求項10】
前記参照手段は、前記偏差と前記電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段であることを特徴とする請求項9に記載のフィードバック制御方法。
【請求項11】
前記参照手段において、前記偏差が所定値以下の場合、前記積分項の零点設定値は前記電源電圧値の変動に依存しないことを特徴とする請求項7又は10に記載のフィードバック制御方法。
【請求項12】
前記制御対象は、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、
前記駆動装置は、前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータであることを特徴とする請求項7乃至11に記載のフィードバック制御方法。
【請求項1】
制御対象の目標値を順次入力し、設定された所定の伝達関数に基づいて当該制御対象の実測値と前記目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値になるようにフィードバック制御する電子制御装置であって、
前記制御対象の前記目標値と実測値との偏差と前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値とをパラメータとして、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を格納する参照手段を備え、
前記参照手段から得た前記伝達関数の補正値に基づいて前記伝達関数の制御係数及び又は積分項の零点設定値を補正し、当該補正された伝達関数に基づいて前記駆動装置へ出力される駆動信号を決定する駆動信号制御手段を有することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御は、少なくとも積分動作制御を含み、
前記伝達関数における積分項の零点設定値は、前記積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記参照手段は、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値の補正値を規定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記参照手段は、前記偏差と前記電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段であることを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記参照手段において、前記偏差が所定値以下の場合、前記補正値は前記電源電圧値に依存しないことを特徴とする請求項1又は4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記制御対象は、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、
前記駆動装置は、前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータであることを特徴とする請求項1乃至5に記載の電子制御装置。
【請求項7】
設定された所定の伝達関数に基づいて制御対象の実測値と目標値との偏差から前記制御対象が前記目標値を取るようにフィードバック制御を行う方法であって、
(a)前記制御対象の前記目標値を順次入力するステップと、
(b)前記制御対象の実測値と前記目標値の偏差を求めるステップと、
(c)前記制御対象に係る駆動装置に印加される電源電圧値を検知するステップと、
(d)前記偏差と前記電源電圧値とをパラメータとして前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値を求めるステップと、
(e)前記補正値に基づいて前記伝達関数を補正するステップと、
(f)前記補正された伝達関数に基づいて前記制御対象に係る駆動装置へ出力される駆動信号を決定するステップと、
(g)前記駆動信号に基づいて前記駆動装置を駆動するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする電子制御装置のフィードバック制御方法。
【請求項8】
前記フィードバック制御は、少なくとも積分動作制御を含み、
前記伝達関数における積分項の零点設定値は、前記積分動作制御に係る伝達関数項の零点を設定するものであることを特徴とする請求項7に記載のフィードバック制御方法。
【請求項9】
前記ステップ(d)において、前記伝達関数の制御係数及び/又は前記伝達関数における積分項の零点設定値を補正する補正値は、当該補正値を規定している参照手段を参照することにより得ることを特徴とする請求項7又は8に記載のフィードバック制御方法。
【請求項10】
前記参照手段は、前記偏差と前記電源電圧値を変数として前記補正値を規定するマップ手段であることを特徴とする請求項9に記載のフィードバック制御方法。
【請求項11】
前記参照手段において、前記偏差が所定値以下の場合、前記積分項の零点設定値は前記電源電圧値の変動に依存しないことを特徴とする請求項7又は10に記載のフィードバック制御方法。
【請求項12】
前記制御対象は、内燃機関に必要な空気量を供給するためのスロットルバルブの開度であり、
前記駆動装置は、前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータであることを特徴とする請求項7乃至11に記載のフィードバック制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−204125(P2008−204125A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38808(P2007−38808)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】
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