説明

電子部品の外観検査方法

【課題】シールド用の蓋体を設けた電子部品において、蓋体と回路を実装した基板との接合状態を高精度に検査することが可能な外観検査方法を提供する。
【解決手段】部品が実装された基板2と、この基板2の少なくとも一面を覆うとともに前記基板2に設けた電極4に半田5を介して接合、保持された金属製の蓋体3とからなる電子部品の検査方法であって、前記蓋体3と基板2の接続部6の裏面より一定照度の光を照射することによりハレーションを発生させて、蓋体3と基板2との間の凹部20を他の部分より暗く浮かび上がらせることで不良箇所を検出する電子部品の外観検査方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の検査方法に関するものであり、特にチューナ部品などの、シールド用の金属製蓋体を備えた電子部品の外観検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ受信機能を有する携帯電話には、テレビ電波を受信、復調するためのチューナ部品が搭載されている。このチューナ部品は、通話などによる電波干渉を防止するために、主要な回路部分を金属製の蓋体で覆い接地した構造となっている。蓋体は、金属の薄板をプレス加工で折り曲げることで係止部を形成するものであり、この係止部を、チューナ回路を実装した基板の四隅に設けたスルーホールや切欠き部分に挿入、嵌合した後、これらスルーホールや切欠き部に隣接して設けた電極に半田や導電性接着剤などを介して接合、固定するものである。
【0003】
チューナ部品製造の最終工程で、蓋体が基板と確実に接合、固定されているかどうかを外観状態で判断する必要があり、接合用の半田などの表面荒れやうねりを不良として誤検出しないように、通常は波長や入射角などの異なる複数の落斜照明を検査用の光源として用い、画像処理により良否を判定していた。
【0004】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−198231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法は、基板の直上と斜め上からの二種類の入射角の照明を用いる。被検査物の凹凸を強調するためには、凹凸に応じて照明の入射角を調整する必要がある。そのため、凹凸が安定している場合は高い精度で検出が可能であるが、凹凸にばらつきがある場合、検出精度が低下するという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、簡素な構造で検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そしてこの目的を達成するために本発明は、部品が実装された基板と、この基板の少なくとも一面を覆うとともに前記基板に設けた電極に半田を介して接合、保持された金属製の蓋体とからなる電子部品の検査方法であって、前記蓋体と基板の接続部を、その裏面より一定照度の光で照明することによりハレーションを発生させ、蓋体と基板との間の凹部を他の部分より暗く浮かび上がらせることで不良箇所を検出するものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電子部品の外観検査方法は、金属製の蓋体と基板とを接続、固定している接続部を、その裏面(背面)側より一定照度の光で照明することにより、ハレーションを発生させるものである。このハレーションにより、蓋体と基板側に設けた電極とを接合、固定している半田表面の凹凸による陰影を消去するとともに、蓋体と基板との深い凹部のみを暗く浮かび上がらせることで、高精度に蓋体と基板との接合不良を検出することができる作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の一実施の形態について図を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明の検査方法を用いる被検査物である電子部品の一例を説明するための斜視図であり、携帯電話などに搭載されているテレビ受信用のチューナ部品である。
【0011】
被検査物1は、セラミックあるいは樹脂で形成された多層基板などからなる基板2の少なくとも一面に、ICやチップ部品などの電子部品が実装されており、これらの電子部品によりTV電波を受信、変調、復調させるための回路が形成されている。そして、携帯電話の通話用電波との干渉を防止するため、これらの回路は金属製の蓋体3で覆い接地されている。
【0012】
この蓋体3は、金属の薄板をプレス加工等で折り曲げて形成するものであり、一面を開口部として係止部3aを有する筐体形状である。この係止部3aを、図2に示すように、基板2の角部等に設けたスルーホールや切欠き部に挿入や嵌合、あるいは側面に沿って係止した後、これらスルーホールや切欠き部近傍に設けた基板2の電極4と半田5などを用いて接合、固定することで接続部6を形成する。
【0013】
蓋体3の係止部3aと隣接する電極4とで良好なフィレットが形成されない場合、蓋体3の接合強度は低下し、実装時や搭載された携帯電話などの落下の際に蓋体3が基板2から外れるなどの不良が発生することとなる。したがって、検査工程では、蓋体3と基板2との接合状態をその外観で検査し良否を判定する必要がある。
【0014】
図3は、上記の検査工程に用いる外観検査装置の構成の一例を示す側面図である。
【0015】
本実施の形態における外観検査装置は、複数の光源7、8、9、10とカメラ11などからなる光学部12と、カメラ11などで撮像した画像を処理して良否を判定するための判定部13から構成されている。
【0016】
まず初めに光学部12であるが、被検査物1を載置、固定するためのステージ14上に、拡散光を照射するための第一、第二、第三の落斜光源8、9、10、そして撮像用のカメラ11を同軸上に配置している。さらに、ステージ14にはその内部に透過光源7を有しており、透過照明用の光源として、半透明のアクリル板15を介してステージ上の被検査物1をその裏面から一定照度で照明するものである。
【0017】
これら落斜光源8、9、10および透過光源7と、カメラ11は共に制御部を介して、モニタ、パソコンなどからなる判定部13へ接続されている。本実施の形態における外観検査装置が複数の光源7、8、9、10を備えるのは、検査項目に応じてこれらの光源7、8、9、10を適宜切り替え、あるいは複数組合せて最適な選択することで、欠けや傷、半田不足など複数の検査項目を一台で実施するためである。(表1)に検査項目と、選択する光源の一例を示す。
【0018】
【表1】

【0019】
上記の検査項目は、全て図2に示す基板2の底面側(外部接続端子16側)を上方にして被検査物1をステージ14上に載置して行う。
【0020】
(表1)に示す検査の内容を以下に説明する。
【0021】
まず初めに、基板2の一面に電子部品を実装した被検査物1を、外部接続端子16側を上面としてステージ14上に搬送、載置する。次に、ステージ14内の透過光源7を点灯させ被検査物1をその裏面側より照明し、その画像より輪郭を抽出する。そしてこの抽出した輪郭から外形精度、すなわち各部の寸法を測定し、その測定結果と割れ、欠けなどの有無から良否を判定する。このように、輪郭抽出時は、透過光源7を選択することにより、被検査物1とステージ14からなる背景とのコントラストや明度の差を利用し、判定部13で二値化処理などを用いて輪郭を検出するものである。
【0022】
尚、アクリル板15は、被検査物1と補色関係にある色を選択することで、被測定物1と背景とのコントラストを大きくすることができるので、輪郭をより容易にかつ高精度に検出することが可能となる。また、今回は安価であるという点でアクリル板15を選択したが、色付の半透明ガラスなどでも同様の効果が得られる。
【0023】
次に、接続不良を防止するため、主に外部接続端子16の異物付着などによる汚れを検査する。外部接続端子16の少なくとも最表面は、金やニッケル、錫などで形成されているため、その他の部分、すなわち樹脂やセラミックの部分に対して十分なコントラストを得ることができる。そのため、照明は被測定物1の直上、同軸照明に近いものを選択すればよく、本実施の形態では、最も被検査物1から高い位置に配設されている第三の落斜光源10を選択する。
【0024】
次に、外部接続端子16側における基板2表面の欠けの検査である。この場合は、欠けが全体にわたるのではなく、被検査物1の表面における一部の欠けや割れの検査であるので、その陰影を強調させるため、同軸照明ではなく、できるだけ被検査物1に対して浅い角度から照明を行なう。そのため、被検査物1上の最も低い位置に配設されている第一の落斜光源8を選択する。
【0025】
尚、このとき透過光源7は消灯し、アクリル板15は被検査物1と補色関係にあるものやシボ加工など表面の反射率を低くすることで、検査の精度を高めることができる。
【0026】
次に、表面の傷の検査である。傷は、割れや欠けと異なり幅が狭くかつ深さが浅いものである。そのため、上記の第一の落斜光源8を点灯させて被検査物1に対して浅い角度から照明することにより、散乱光により傷を強調させるものである。さらに、このとき透過光源7を点灯させることで検査の精度を高めることができる。これは、背景の明度を高めることで、被検査物1の明度を低くするためである。このようにすることで、被検査物1は暗く表示され、傷による散乱光はさらに強調されるものである。
【0027】
最後に本発明のポイントである蓋体3と基板2との接続部の検査について説明する。
【0028】
通信用の電波とTV用電波の干渉を防止するための蓋体3は、最終工程で、回路を形成した基板2の側面に設けた切欠き、あるいはスルーホールなどに一旦係止された後、外部接続端子16側に設けた電極4に半田5あるいは導電性ペーストを用いて接続、保持される。
【0029】
このときの状態を図4に示す。図4は、図2のA−AA断面図であり、蓋体3の接続状態、特に蓋体3と電極4との接続状態を説明する断面図である。
【0030】
接続部17は、良品状態であり、接続部18は不良時の一例である。良品である接続部17では、蓋体3と被検査物1上の電極4とともにその間隙部19にも十分に半田5が供給されている状態にある。一方で不良である接続部18では、十分な半田5が供給されていない。そのため、接続部18には、蓋体3と被検査物1との間隙が、深い凹部20として表面に露出した状態となっている。これは、間隙19内に十分な半田5が供給されておらず、被検査物1と蓋体3との接合強度が低いことを示している。この接続部18表面に露出する凹部20を検出して、蓋体3と被検査物1との接続状態の良否を判断するものである。
【0031】
この接続部18における深い凹部20を検出するため、以下の検査方法を用いる。まず、照明であるが、透過光源7とともに、第二、第三の落斜光源9、10も同時に点灯させる。さらに、透過光源7は、低い照度ではなく、カメラ11にハレーションを生じさせる高い照度で照明する。
【0032】
ここで図5に、カメラ11にハレーションを生じさせたときの検査画像の一例を示す。図5より、矢印Bに示す接続部では、係止部3aとともに、半田5も白く表示されるとともに、不良である深い凹部20のみを黒く浮かび上がらせるものである。ここで重要なのが、透過光源7によるハレーションのみでなく、第二、第三の落斜光源9、10も同時に点灯させることである。半田5の表面には微小な凹凸が形成されているが、この微小な凹凸を不良として検出することなく、深い凹部20のみを不良として検出するため、第二、第三の落斜光源9、10を同時に点灯しこれら微小な凹凸を背景とともに白く消し去るものである。
【0033】
上記のようにハレーションを利用することにより、反射率の高い材料であっても凹凸形状を安定してかつ正確に検出できるとともに、画像処理を用いた検出時間を短くすることができる。
【0034】
図6は、図2の接続部6の拡大図である。従来の検査方法では、不良部とその周囲とのコントラストを利用するため、判定領域21を必ず電極4の内側に設定する必要がある。これは、電極4の外部が樹脂やセラミックであるため、その明度の差で不良と誤判定するのを防止するためである。
【0035】
上述した実施の形態では、透過光源7、第一、第二、第三の落斜光源8、9、10の全ての光源を同じ波長を有するものとして説明したが、それぞれを異なる波長としても良い。異なる波長の光源とすることで、被検査物1表面の反射率をさらに高めて不良箇所の検出をより高精度に行なうことができる。また、樹脂やセラミックなど、品種切り替えにより被検査物1の色が異なる場合、これら波長の異なる複数の光源を適宜組合せて照明することにより、照明の色を変更、調整することができる。その結果、特にカラー撮影可能なカメラ11を用いた場合、被検査物1との補色関係により、輪郭などの検出精度を高めることができる。さらに、透過光源7の照明光を、アクリル板15を介して混色させることにより、アクリル板15の色すなわち被検査物1の背景色を変更、調整することができるので、被検査物1とのコントラストや明度の差を高めて検査の精度を高めるとともに、多種の色の被検査物1に対し光源を変更することなく対応することができるので、検査工程の生産性を高めることができる。
【0036】
上述したように、本実施の形態では、電極4とともにその周辺をハレーションで白く消去するため、判定領域がずれても同じ明度となり誤判定は発生することが無い。そのため、上述した外形精度の検査時に予め被測定物1の位置を計測しておくことで、容易に検査領域22を決定することができ、また、検査領域22を適宜広く設定しておくことで、検査項目間で多少の位置ズレが発生した場合であっても、不良を検出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る電子部品の外観検査方法は、金属製の蓋体と基板とを接続、固定している接続部の裏面(背面)側より一定照度の光を照射することにより、ハレーションを発生させるものである。このハレーションにより、蓋体と基板側に設けた電極とを接合、固定している半田表面の凹凸を消去するとともに、蓋体の接合不良である基板との凹部を暗く浮かび上がらせて高精度に不良を検出することができる作用効果を奏するので、特にシールド用の金属製蓋体を備えた電子部品の外観検査方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の検査方法を用いる被検査物の一例を説明する斜視図
【図2】図1の被検査物の底面図
【図3】本実施の形態における検査装置の構成の一例を説明する図
【図4】図2のA−AA断面図
【図5】本実施の形態における検査方法を用いた検査画像の一例を示す図
【図6】本実施の形態における検査方法の検査領域の一例を説明する図
【符号の説明】
【0039】
2 基板
3 蓋体
4 電極
5 半田
6 接続部
20 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が実装された基板と、この基板の少なくとも一面を覆うとともに前記基板に設けた電極に半田を介して接合、保持された金属製の蓋体とからなる電子部品の外観検査方法であって、前記蓋体と基板の接続部を、その裏面より一定照度の光で照明することによりハレーションを発生させ、蓋体と基板との間の凹部を他の部分より暗く浮かび上がらせることで不良箇所を検出する電子部品の外観検査方法。
【請求項2】
蓋体と基板の接合部を、波長の異なる複数の光で照明する請求項1に記載の電子部品の外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−198182(P2009−198182A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36825(P2008−36825)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】