説明

電極形成装置

【課題】PDPなどの基板上に形成する電極の電極幅を、意図するものに異ならせることのできる電極形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】電極材料層とレジスト材料が形成された基板を搬送する搬送部と、電極材料層およびレジスト材料を除去するためのエッチング液を基板の上方向から噴霧させるエッチング部とを備える。エッチング部は、基板の進行方向に対して垂直方向に長い形状であり、かつ基板にエッチング液を噴霧させるための複数個のスプレーノズルが設置され、そのスプレーノズルにエッチング液を供給する複数のノズル配管部材を備える。複数のノズル配管部材は、並列に所定の間隔を空けて配置され、基板がエッチング部の下方を進行するにつれて、所定の電極幅分布を持つような電極が形成されるように、特定のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルの個数および位置が設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電極形成装置に関し、特に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)の表示電極などをウェットエッチング工程を用いて形成するPDPの電極形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは、対向配置された前面基板と背面基板とから構成され、両基板の間に形成される多数の放電空間における放電により表示がおこなわれる。前面基板には、1対の走査電極と維持電極とからなる細長い表示電極が互いに平行に多数形成される。
また、背面基板には、複数の平行なアドレス電極が形成され、その上に平行に隔壁が形成され、隣接する隔壁の間に放電空間が形成される。
【0003】
このような電極(表示電極,アドレス電極)は、基板上に電極材料(たとえば、Cr,Cuなど)を積層し、レジストの塗布,フォトマスクを利用した露光,レジストおよび電極材料のパターンエッチングの各工程を実行することにより形成される。
ここで、一般に、良好な表示特性を示すためには電極の幅、隣接する電極間の距離は、すべて一定値となるように形成することが好ましい。
【0004】
一方、電極に対する書き込みマージンおよび駆動電力は電極幅に依存することが知られており、PDPのパネルの製造誤差等の原因によりパネル周辺部の表示品質が、パネル中央部よりも低下する場合がある。
そこで、そのような表示品質の低下を抑えるために、基板の周辺部の電極幅を、中央部の電極幅よりも広く設計するようにすることが提案されている(特許文献1)。
このように一つの基板内で電極幅を異ならせるためには、レーザ露光量の調節やフォトマスクのマスクパターン形状を変化させることにより行われる。
【特許文献1】特開2006−294542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般に均一な電極幅の電極を形成することができるようにフォトマスクが設計されているため、電極幅を異ならせるためには、意図した異なる電極幅を形成するための特別なパターンを持つフォトマスクを、その都度用意する必要がある。
【0006】
また、レジストと電極材料のエッチングをエッチング液の噴出により行うウェットエッチングでは、均一な電極幅の電極を形成することができるように、エッチング液を噴出させるスプレーノズルの配置、エッチング液の温度や濃度が管理されており、従来のウェットエッチングの方法をそのまま用いると上記のように周辺部と中央部の電極の電極幅を所望するように異ならせることは困難であり、局所的に意図しなかった電極幅のバラツキが発生するおそれがある。
【0007】
そこで、この発明は、ウェットエッチング工程において、エッチング液によりレジストおよび電極材料のエッチングを行う際、意図した電極幅分布を持つ電極が形成できるようにした電極形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、電極材料層とその上にレジスト材料が形成された基板を一方向に搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される基板に対して、電極材料層およびレジスト材料を除去するためのエッチング液を基板の上方向から噴霧させるエッチング部とを備え、前記エッチング部が、前記基板の進行方向に対して垂直方向に長い形状であり、かつ前記基板に前記エッチング液を噴霧させるための複数個のスプレーノズルが設置され、そのスプレーノズルに前記エッチング液を供給する複数のノズル配管部材を備え、前記複数のノズル配管部材が、前記基板の進行方向と同じ方向に並列に所定の間隔を空けて配置され、前記基板がエッチング部の下方を進行するにつれて、所定の電極幅分布を持つような電極が形成されるように、前記ノズル配管部材のうち特定のノズル配管部材に設置される前記スプレーノズルの個数および位置が設定されていることを特徴とする電極形成装置を提供するものである。
これにより、エッチング液を噴霧するスプレーノズルの個数および位置を設定するので、基板上に形成される複数の電極の電極幅を意図的に異ならせることができる。
【0009】
また、前記複数個のノズル配管部材のうち、特定のノズル配管部材に設置される複数個のスプレーノズルが、他のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルの個数よりも少なく、搬送される基板の特定の領域の上方にのみ配置されることを特徴とする。
これによれば、基板の特定の領域のエッチング時間と、その他の領域のエッチング時間とを異ならせることができ、その特定領域の上方のスプレーノズルの個数を適切に設定することにより、その特定の領域に所望の太さの電極幅を持つ電極を形成できる。
【0010】
また、前記特定のノズル配管部材が、2本以上であり、それらの特定のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルの個数が異なり、基板の進行方向に対して後方に位置するノズル配管部材の方が、段階的にスプレーノズルの個数が増加または減少するように設定されるようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記特定のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルは、そのスプレーノズルから噴霧されるエッチング液の噴霧方向が、基板へ向かう方向であって基板の進行方向と逆方向になるように取り付けるようにすることを特徴とする。
スプレーノズルから噴霧されるエッチング液の方向が、基板の進行方向と逆方向の場合、基板上を流れるエッチング液の流れが、逆方向のエッチング液によって止められるため、基板の特定の領域のエッチング時間が短くなり、エッチングは進行せず、その特定領域には比較的太い電極幅の電極が形成される。
【0012】
また、前記特定のノズル配管部材において、搬送される基板の所定の中央領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数が、基板の端部の領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数よりも多いことを特徴とする。
さらに、前記特定のノズル配管部材において、搬送される基板の所定の局所的な領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数が、基板の他の領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数よりも多いことを特徴とする。
【0013】
この発明の基板としては、PDPの基板、すなわち前面基板または背面基板を対象とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、エッチング液を噴霧させるスプレーノズルの個数および位置を設定するようにしているので、基板上の特定領域がエッチングされる時間を制御することができ、基板上に形成される電極の電極幅を意図したものに制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図に示す実施例に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではない。
<電極の形成工程の説明>
図1に、この発明のPDP基板上へ電極を形成する工程の一実施例の説明図を示す。
図1の形成工程は、PDPの前面基板へ表示電極を形成する場合も、背面基板上へアドレス電極を形成する場合も、利用できる。
【0016】
図1(a)は、基板100上に、3つの電極材料を積層し、さらにその上にレジストを塗布した状態を示している。ここで、基板100としては、たとえばガラス基板を用いることができる。ここでは、積層された3つの電極材料により、1つの表示電極が形成されるものとする。なお、表示電極には、以下のようなCr−Cu−Cr等の金属電極のみで形成されるもの、金属電極をバス電極として用いその下に幅広の透明電極(例えばITO)を設けて金属電極と透明電極とで形成されるものが知られている。
まず、基板100上に、第1の電極材料として第1のCr層101を形成する。この形成は、たとえば、スパッタリングにより行い、Cr層101の膜厚が500Å程度となるまで行う。
【0017】
次に、第1のCr層101の上に、膜厚3μm程度のCu層102を積層する。
さらに、Cu層102の上に、膜厚1000Å程度の第2のCr層103を積層する。
この3つの層(Cr−Cu−Cr)により、表示電極が構成される。ただしこれに限るものではなく、たとえば、Agからなる一層の電極として形成してもよい。
この後、第2のCr層103の上にレジスト(たとえばネガ型レジスト材料)を、基板全面に塗布する。
【0018】
図1(b)において、表示電極を形成したい位置に光を照射することのできるフォトマスクを、図1(a)の状態の基板上に配置し、その上方から、光(たとえば、λ=405nm、照度10mW/cm2の平行光)を35秒程度照射する。これにより、電極を形成したい位置のレジストが露光される。
また、ここで利用するフォトマスクとしては、基板全体にわたり設計値どおりの均一な電極幅を持つ電極を形成するための従来と同じフォトマスクを用いればよい。
たとえば基板の中央部の電極の電極幅が太くなり、端部の電極の電極幅が細くなるような露光をするための特別なフォトマスクを用いる必要はない。
【0019】
図1(c)において、表面が露光された基板をウェットエッチング装置へ搬送し、第2のCr層103をエッチングするためのエッチング液を、レジストが形成された基板表面に噴霧させる。これにより、露光されなかった領域のレジストとその直下の第2のCr層103とが除去される。
ここで、たとえばエッチング液としては、塩酸が用いられる。
このエッチングにより、電極形成領域ではない部分に、Cu層102が露出する。
【0020】
また、この発明では、後述するように、エッチング液を噴霧するときに、たとえば基板の中央部および端部とで、エッチング液が噴霧される時間が異なるようにする。
あるいは、基板上に形成する電極の電極幅の分布が意図した分布となるように、エッチング液が噴霧される時間を局所的に異なるようにする。
たとえば、エッチング液が噴霧される時間が長い領域は、エッチング時間が長くなるので、電極材料のエッチングがより進行し電極の電極幅が小さくなる。逆に、エッチング液が噴霧される時間が短いと、エッチング時間が短くなるので、電極幅は太くなる。
【0021】
あるいは、エッチング液を噴霧する時間の他に、エッチング液の流量,濃度,温度などを、局所的に異なるようにしてもよい。
また、エッチング液を噴霧する時間を局所的に異ならせるために、スプレーノズルの数,密度,エッチング液を噴霧する角度と方向などを異ならせてもよい。
このように、基板表面がエッチング液にさらされる時間などを異ならせるようにすれば、電極材料がエッチングされる量を局所的に異ならせることができ、1つの基板内における電極の電極幅を意図的に制御することができる。
【0022】
図1(d)において、Cu層102をエッチングするためのエッチング液を噴霧させる。これにより、レジスト104および第2のCr層103が存在しない領域部分のCu層102が除去される。すなわち、電極となるべき位置の第2のCr層103とCu層102とが形成される。
ここでも、局所的にエッチング液が噴霧される時間等を意図的に制御することにより、局所的に電極幅を異ならせた所望の電極幅分布を持つCu層102を形成することができる。
【0023】
さらに、図1(e)において、基板100上の第1のCr層101をエッチングするためのエッチング液を噴霧させる。これにより、残ったレジスト104がない領域部分の第1のCr層101が除去され、Cr−Cu−Crの3層からなる表示電極の形成が完了する。
なお、図1(e)で残ったレジスト104は、たとえば水酸化ナトリウムにより除去すればよい。
ここでも、エッチング液の噴霧時間等を制御することにより、局所的に電極幅を異ならせた所望の電極幅分布を持つ電極を形成することができる。
【0024】
たとえば、基板の中央部の電極群を形成する領域よりも、基板の端部(たとえば端面から100mm程度の領域)の電極群を形成する領域に噴霧するエッチング液の噴霧時間を約2秒短くしたとすると、その端部に形成される電極の幅を中央部の電極の幅よりも、0.8μm程度太くすることができる。
逆に、基板端部に噴霧するエッチング液の噴霧時間を、中央部に噴霧するエッチング液の噴霧時間よりも約2秒長くすると、端部の電極の幅を、中央部に形成される電極の電極幅よりも、0.8μm程度細くすることができる。
【0025】
<この発明のウェットエッチング工程の説明>
以下に、この発明の電極材料のエッチング工程の装置構成などについて説明する。
一般に、図1(a)および(b)の工程を実施した基板は、フォトマスクを除去した後、所定の速度で移動する搬送台の上に搭載されて、ウェットエッチング装置の中に搬送される。
以下、図1(a)のように、基板100の上に電極材料等(101〜104)が形成された基板を、基板20とする。ここで、基板20に形成されるべき電極の長手方向が、基板20の搬送方向と平行になるように搬送台に搭載される。また、搬送台が、前記した搬送部に相当し、ウェットエッチング装置が前記したエッチング部に相当する。
【0026】
図2に、ウェットエッチング工程の一実施例の説明図を示す。
図2において、ウェットエッチング装置は、左側の入り口から右側の出口までのいくつかの工程を実行するための装置であり、基板20は左側の入り口部分から搬入され、右方向に向かって進行させられる。ここでは、主として3つのエッチング工程からなる。
基板20が右方向に進行させられる間に、まず、レジスト104の直下の第2のCr層103をエッチングする第1エッチング工程が行われ、次にCu層102をエッチングする第2エッチング工程が行われ、最後に基板100上の第1のCr層101をエッチングする第3エッチング工程が行われる。
【0027】
各エッチング工程(第1,第2,第3)では、それぞれの入口と出口との間に、3つの工程を実行する。
3つの工程は、所定の電極材料(CrまたはCu)のエッチング(除去)工程と、基板20上の残留エッチング液を純水により除去する水洗工程と、エアーブローにより基板20上の残留純水を除去する液切り工程とからなり、この順序で行われる。
ここで、水洗と液切り工程とは、いずれのエッチング工程でも同じ処理を行う。ただし、各除去工程では、除去すべき材料が異なるので、エッチング液や処理時間、処理温度等が異なる。
例えば、第1エッチング工程の第2Cr層103の除去工程では、塩酸からなるエッチング液を用いる。また、Cu層102の除去工程では、塩化第二鉄からなるエッチング液を用いる。また、第1Cr層101の除去工程では、過マンガン酸カリウムからなるエッチング液を用いる。
【0028】
また、各電極材料の除去工程では、一定速度で進行してくる基板20に対して、基板20の電極材料およびレジスト104が形成された表面の上方から、エッチング液を噴霧させる。
エッチング液の噴霧は、多数のスプレーノズルを基板の進行方向に対して垂直な方向に配列し、各スプレーノズルから所定の流量のエッチング液を基板上に噴出させることにより行う。複数のスプレーノズルを所定間隔で配列し、かつエッチング液をスプレーノズルに供給する配管を、スプレーノズル配管部材又はノズル配管部材と呼ぶ。
【0029】
図3に、従来のエッチング工程で利用されているスプレーノズルの配置例の説明図を示す。
図3は、基板およびスプレーノズルの上方から見た図である。ここで、4つのスプレーノズル配管部材(1〜4)が所定間隔で配置され、1つのノズル配管部材には、たとえば、基板全体の幅をおおう範囲にエッチング液が噴霧されるように、複数個のスプレーノズルが等間隔(たとえば110mm)で設置されている。
各ノズル配管部材は、基板の進行方向(矢印方向)に対して垂直な方向に長い形状である。
また、複数個のノズル配管部材は、基板の進行方向と同じ方向に並列に配置される。
【0030】
また、中央のノズル配管部材(2,3)の、スプレーノズルの向きは、基板へ向かう方向(下向き)で基板に対して上方から垂直にエッチング液が噴出される方向である。
ノズル配管部材1のノズルの向きは、下向きであるが基板の進行方向と同じ方向である右方向に向いている。たとえば、垂直下方向から45〜85度程度の角度で右方向を向くように、各ノズルが設置されている。これは、基板上の液の逆流を防止するためである。
また、ノズル配管部材4のノズルの向きは、基板の進行方向と逆向きである左方向を向いており、垂直下方向に対して60〜85度程度の角度で設置されている。これは、基板上の液が次の槽にもちこまれないようにするためである。
【0031】
このような4つのスプレーノズル配管部材が配置された下方空間領域を、基板20が右方向(矢印方向)へ進行することにより、電極材料のエッチングが行われる。ここで、従来の装置では、スプレーノズル配管部材の間隔や、1つの配管に設置される各ノズルの間隔および数は、基板全体に対して均一な電極幅分布を持つ電極が形成されるように設計されている。
【0032】
一方、この発明では、基板の中央部や端部に形成される電極の電極幅の分布が異なるように、電極材料のエッチング量を異ならせるが、所望の電極幅分布を形成するために、スプレーノズル配管部材の位置,設置本数,および各配管部材に設置する各ノズルの位置や数を設定することを特徴とする。
たとえば、後述するように、特定のノズル配管部材に対しては、基板全体の幅を覆うようにエッチング液を噴出するのではなく、基板の中央部分のみにエッチング液を噴出するように、従来よりも少ない数のノズルを持つノズル配管部材とする。さらに、この特定のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルから出るエッチング液の噴出方向を、基板の進行方向と逆方向にする。この場合は、この特定のノズル配管部材に設けられたノズルから噴出されるエッチング液により、基板上のエッチング液の流れが止められるので、基板の中央部分の電極材料のエッチングが進行せず、基板の中央部の電極の幅を、端部の電極幅よりも太くすることができる。
【0033】
図4に、この発明のウェットエッチング工程を実施するウェットエッチング装置の一実施例の説明図を示す。
図4では、6つのスプレーノズル配管部材(11〜16)を設置した例を示している。
ここで、ノズル配管部材11,12,13および16は、図3に示した従来のスプレーノズル配管部材(1〜4)の配置と同じものであり、ノズル配管部材の各ノズルも同一間隔で配置されているものとする。
また、ノズル配管部材14と15は、それぞれ設置されたスプレーノズルの個数が他のノズル配管部材(11,12,13,16)よりも少なく、ノズル配管部材14のノズルの個数は、基板の進行方向に対して後方に位置するノズル配管部材15のノズル数よりも少ないものとする。
【0034】
また、ノズル配管部材(14,15)のノズルは、基板へ向かう方向(下方向)ではあるが、基板の進行方向と逆方向(左方向)を向くように取りつける。すなわち、ノズル配管部材(14,15)のノズルは、ノズル配管部材(11,12,13)から噴霧されたエッチング液の流れを止める働きをするものである。
さらに、ノズル配管部材14と15のスプレーノズルは、搬送される基板の特定の領域(図4では基板の中央部分)の上方にのみ配置される。
この実施例では、このような2つのノズル配管部材14と15を設けることが特徴的な構成であるが、これに限るものではない。
【0035】
図4(a)は、左方向から基板20を搬入し始め、ノズル配管部材14の直前まで搬送されたときの状態を示している。
このとき、基板20は、ノズル配管部材(11,12,13)によって従来と同様に、基板全体にわたって、ほぼ均一な電極幅分布となるように、電極材料がエッチングされる。
【0036】
次に、図4(b)のように、基板20が右方向に進行させられると、ノズル配管部材14のノズルからエッチング液が基板との進行方向と逆向き(左方向)に噴霧されるので、ノズル配管部材14が存在する基板中央部分では、電極材料のエッチングの進行が止められる。
【0037】
図5に、図4のノズル配管部材14と基板との関係を、基板の進行方向から見た説明図を示す。
図5(a)では、基板100の上に電極材料(101,102,103)とレジスト104とを形成した基板の上方に、ノズル配管部材14を配置した状態を示している。
ここで、ノズル配管部材14には4つのスプレーノズル140が設置され、各ノズル140から、エッチング液21が基板方向でかつ基板の進行方向と逆方向に向かって噴出される。
【0038】
エッチング液21は各ノズル140からやや広がりをもって霧状に噴霧される。また、図4では、ノズル配管部材14は、進行してくる基板に対して、ほぼその中央部分の領域の上方に、4つのノズル140が設置されているので、エッチング液21が噴霧される領域であって露光されなかった電極材料およびレジスト104の部分が除去され、露光された部分のレジストと電極材料とが残る。このノズル140が存在する領域では、エッチング液の流れが止められるので、エッチングが進行しにくくなる。
図5(b)は、仮にこのノズル配管部材14のみによってエッチングが進行したと仮定した場合の基板状態の一実施例を示したものである。
図5(b)では、基板中央部分のエッチングが進行しにくくなり、基板端部ではエッチングが進行することを示すために、表面状態をやや誇張して図示している。
【0039】
図4(b)では、基板の中央部分は、基板の進行方向と逆方向にエッチング液を噴出する4つのノズルによりエッチングの進行が止められるが、それよりも外側の部分にはこのようなノズルがないので、エッチング液が流れつづけ、エッチングが進行する。なお、エッチング液は液体なのでやや外側に向かって流れ、4つのノズルが存在する領域よりも外側の領域にエッチング液が流れエッチングが進行する。
【0040】
このとき、4つのノズルによってエッチングが行われた中央部の電極は、エッチング時間が短くなるので、その電極の電極幅は、それよりも外側にある電極の電極幅よりも太くなる。
図4では、説明のために、ノズル配管部材14のノズルの数は4つとして図示しているが、これに限るものではなく、ノズル配管部材13などよりも少ない数であって、所望の領域のエッチングが行われるような適切な数が設定される。
【0041】
さらに、図4(c)のように、基板が右方向に進行させられると、ノズル配管部材15に設置されたノズルによるエッチングが行われる。
図4(c)では、ノズル配管部材15のノズル数は5つであるとして図示しているが、この5つのノズルから基板の進行方向と逆方向に噴霧されたエッチング液により、この5つのノズルが存在する基板の中央部分のエッチングの進行が止められる。
このとき、ノズル配管部材15のノズル数は、ノズル配管部材14よりも多いので、より広い領域の電極に対するエッチングの進行が止められる。
したがって、図4(c)の実施例の場合、ノズル配管部材14と15によってエッチングされた領域の電極と、ノズル配管部材15によってエッチングされた領域の電極と、ノズル配管部材14および15によってはエッチングされない最も外側の領域の電極との間で、異なる電極幅を持つ3種類の電極が形成される。この場合、中央部の電極の電極幅が最も太く、そのやや外側の電極の電極幅はやや細く、さらに外側の領域の電極の電極幅が最も細くなる。
【0042】
たとえば、図4の場合において、基板20の搬送速度を、3130mm/minとし、ノズル配管部材14と15との間隔を105mmとすると、2つのノズル配管部材(14,15)のノズルによってエッチングされたより中央部分の領域Aと、ノズル配管部材15のノズルのみによってエッチングされた上記中央部分のすぐ外側の領域Bとでは、エッチングされる時間に約2.0秒の差が生じる。ここで、外側の領域Bの方が、領域Aよりもエッチング時間が長い。
【0043】
ここで、エッチング時間に2秒の差が生じると、これらの2つの領域(AとB)に形成される電極の電極幅の差は、約0.8μmとなる。すなわち、エッチング時間の短い中央部分の領域Aに存在する電極の電極幅の方が、エッチング時間の長いその外側の領域Bの電極の電極幅よりも0.8μm程度太くなる。
以上より、エッチング液が噴霧される時間(すなわちエッチング時間)が長いほど、エッチングがより進行するため、形成される電極の電極幅は小さくなることがわかる。
【0044】
図6に、この発明において、エッチング時間と、表示電極の電極幅との関係を示すグラフの一実施例を示す。
ここで、横軸が、電極形成領域においてエッチング液が噴霧される時間(エッチング時間)を示し、縦軸が電極材料の1つであるCu層102の電極幅を示している。
図6のグラフによれば、両者の関係は、ほぼ一つの直線上にのるような関係となり、エッチング時間が長くなればなるほど、Cu層の電極幅が細くなることがわかる。
したがって、図4に示したように、ノズル配管部材(14,15)のように、ノズルの数を他のノズル配管部材と異ならせた配管部材を、所定の位置に配置することにより、局所的に所望の電極幅を持つ電極を形成することができる。
【0045】
図4に示したノズル配管部材(14,15)の配置は、基板の中央部分に、2種類の異なる電極幅を持つ電極であって、基板の中央部に形成される電極の電極幅を端部よりも太くした電極を形成するための一つの実施例であり、これに限るものではない。
図4では、2本のノズル配管部材(14,15)のうち、基板の進行方向に対して後方に位置するノズル配管部材15の方のスプレーノズルの個数を多くし、段階的にスプレーノズルの個数が増加するようにしていた。逆に、後方に位置するノズル配管部材15の方のスプレーノズルの個数を少なくし、段階的にスプレーノズルの個数が減少するようにしてもよい。
【0046】
図7に、基板の端部の電極の電極幅を、中央部の電極幅よりも太くするためのノズル配管部材(14,15)およびノズルの配置図の一実施例を示す。
ここでは、ノズル配管部材14において、基板の2つの端部の上方にのみ1つずつノズルを設け、このノズルから基板の進行方向と逆方向に噴出されるエッチング液により、電極材料を除去を抑制し、端部の電極幅を太くする。また、ノズル配管部材15においては、この2つの端部とそのすぐ内側に、それぞれ2つずつの合計4つのノズルを設けている。これにより、基板中央部の電極の電極幅は比較的細くなるが、端部の電極の電極幅が最も太く、端部よりもやや内側では端部よりもやや細い電極幅の電極が形成される。この場合も、3種類の太さの異なる電極幅を持つ電極が形成される。
【0047】
また、上記実施例のように、ノズル数を異ならせたノズル配管部材の数は2つに限るものではなく、1つでもよく、あるいは3つ以上にしてもよい。
これにより、異ならせる電極幅の太さの種類を3種類だけでなく、2種類あるいは4種類以上にすることもできる。
さらに、1つのノズル配管部材において、ノズルを設ける位置を基板の中央部や端部の上方にするのではなく、電極幅を異ならせたい所望の局所的な領域の上方に配置することにより、意図した局所的な位置に存在する電極の電極幅を制御することもできる。
また、局所的な領域の上方に配置するノズルの個数を、他の領域に配置されるノズルの個数よりも多くしたり、少なくしてもよい。
【0048】
また、1つのノズル配管部材のノズルの位置を局所的な位置とするのではなく、1つのノズル配管部材において複数のノズルを基板の幅全体にわたって配置するが、局所的にノズルの数の多い部分やノズルの数の少ない部分を作ってもよい。
たとえば、図8に示すように、基板20の中央部分において、より多数のノズルを設置し、端部では比較的少ない数のノズルを配置するようにしてもよい。
【0049】
図8では、ノズル配管部材17において、基板20の中央部分のノズルの数が端部よりも多いので、中央部分により高密度で多量のエッチング液21が噴霧されることになる。このエッチング液は、基板の進行方向と逆方向に噴霧されるので、中央部分の電極材料のエッチングの進行がより進みにくくなり、比較的太い電極幅の電極が形成される。
逆に、図9に示すように、1つのノズル配管部材18において、基板20の端部のノズル数を中央部分のノズル数よりも多くした場合、端部により多量の基板の進行方向と逆方向のエッチング液21が供給され、中央部分の電極の方がより長時間エッチングされ、端部の電極はエッチングされにくい状態になるので、基板20の端部の電極の電極幅を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の電極形成工程の一実施例の説明図である。
【図2】この発明のウェットエッチング工程の一実施例の説明図である。
【図3】従来のエッチング工程で利用されるスプレーノズルの配置例の説明図である。
【図4】この発明のウェットエッチング工程を実施するエッチング装置の一実施例の説明図である。
【図5】この発明のノズル配管部材と基板との関係を示した一実施例の説明図である。
【図6】この発明において、エッチング時間と、表示電極の電極幅との関係の一実施例を示すグラフである。
【図7】この発明のノズル配管部材と、それに設置されるノズルの配置図の一実施例である。
【図8】この発明におけるノズル配管部材およびノズルの他の実施例の配置図である。
【図9】この発明におけるノズル配管部材およびノズルの他の実施例の配置図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ノズル配管部材
2 ノズル配管部材
3 ノズル配管部材
4 ノズル配管部材
11 ノズル配管部材
12 ノズル配管部材
13 ノズル配管部材
14 ノズル配管部材
15 ノズル配管部材
16 ノズル配管部材
17 ノズル配管部材
18 ノズル配管部材
20 基板
21 エッチング液
100 基板
101 第1のCr層
102 Cu層
103 第2のCr層
104 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極材料層とその上にレジスト材料が形成された基板を一方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される基板に対して、電極材料層およびレジスト材料を除去するためのエッチング液を基板の上方向から噴霧させるエッチング部とを備え、
前記エッチング部が、前記基板の進行方向に対して垂直方向に長い形状であり、かつ前記基板に前記エッチング液を噴霧させるための複数個のスプレーノズルが設置され、そのスプレーノズルに前記エッチング液を供給する複数のノズル配管部材を備え、
前記複数のノズル配管部材が、前記基板の進行方向と同じ方向に並列に所定の間隔を空けて配置され、前記基板がエッチング部の下方を進行するにつれて、所定の電極幅分布を持つような電極が形成されるように、前記ノズル配管部材のうち特定のノズル配管部材に設置される前記スプレーノズルの個数および位置が設定されていることを特徴とする電極形成装置。
【請求項2】
前記複数個のノズル配管部材のうち、特定のノズル配管部材に設置される複数個のスプレーノズルが、他のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルの個数よりも少なく、搬送される基板の特定の領域の上方にのみ配置されることを特徴とする請求項1の電極形成装置。
【請求項3】
前記特定のノズル配管部材が、2本以上であり、それらの特定のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルの個数が異なり、基板の進行方向に対して後方に位置するノズル配管部材の方が、段階的にスプレーノズルの個数が増加または減少するように設定されていることを特徴とする請求項2の電極形成装置。
【請求項4】
前記特定のノズル配管部材に設置されるスプレーノズルは、そのスプレーノズルから噴霧されるエッチング液の噴霧方向が、基板へ向かう方向であって基板の進行方向と逆方向になるように取り付けられていることを特徴とする請求項2の電極形成装置。
【請求項5】
前記特定のノズル配管部材において、搬送される基板の所定の中央領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数が、基板の端部の領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数よりも多いことを特徴とする請求項2の電極形成装置。
【請求項6】
前記特定のノズル配管部材において、搬送される基板の所定の局所的な領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数が、基板の他の領域の上方に配置されるスプレーノズルの個数よりも多いことを特徴とする請求項2の電極形成装置。
【請求項7】
前記基板は、プラズマディスプレイパネルの基板であることを特徴とする請求項1乃至6の電極形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−73875(P2010−73875A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239423(P2008−239423)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】