説明

電気光学装置および電子機器

【課題】 シール材によって覆われた配線の破損を防止する。
【解決手段】 第1基板10と第2基板とはシール材30によって貼り合わされる。第1配線51は、第1基板10のうち第2基板20と対向する面に形成される。第1絶縁層61は第1配線51を覆う。第2配線52は、第1絶縁層61の面上に形成される。この第2配線52は、シール材30によって覆われたシール領域As内に位置する第1部分521と、シール領域As以外の領域Aaにて第1絶縁層61を挟んで第1配線51と対向する第2部分522とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(Organic Light Emitting Diode)素子などの電気光学素子を利用した電気光学装置およびこの電気光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置においては、枠状のシール材によって貼り合わされた第1基板と第2基板との間隙にOLED素子や液晶などの電気光学素子が配置される。例えば、OLED素子を利用した電気光学装置においては、水分の付着などに起因したOLED素子の劣化を防止するために、OLED素子が配列された第1基板を覆うように第2基板が配置される。また、液晶を利用した電気光学装置(液晶装置)においては、第1基板と第2基板とシール材とによって囲まれた空間に液晶が注入される。これらの電気光学装置の第1基板には、電気光学素子を駆動するための信号を伝送する多数の配線が形成される。各配線は、シール材によって囲まれた領域(すなわち電気光学素子が配列された領域)からその外側の領域に至るように引き廻されて外部の機器に接続される(例えば特許文献1参照)。したがって、各配線はシール材と重なり合う部分を有する。
【特許文献1】特開2002−110343号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の電気光学装置においては、第1基板上の各配線がシール材によって押圧される場合がある。例えば、電気光学装置の製造工程においては、各配線が形成された第1基板に対してシール材を介して第2基板が圧着されるが、この圧着に際して各配線にはシール材による圧力が作用する。また、電気光学装置の製造後においても、第2基板に外力が作用することによって各配線にはシール材による圧力が作用し得る。こうして圧力が作用すると各配線は破損する可能性がある。特に、フィラーなどの微粒子がシール材に混入された構成においては、これらの微粒子が各配線を押圧することによって断線や短絡といった欠陥が発生し易い。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シール材によって覆われた配線の破損を防止するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の第1の特徴は、相互に対向する第1基板および第2基板と、第1基板と第2基板との間隙に介在して両基板を固定するシール材と、第1基板のうち第2基板と対向する面に形成された第1配線と、第1配線を覆う絶縁層(例えば各実施形態における第1絶縁層61)と、第1基板のうち第2基板に対向する面に形成された配線であって、シール材によって覆われたシール領域内に位置する第1部分と、シール領域以外の領域にて絶縁層を挟んで第1配線と対向する第2部分とを有する第2配線とを具備することにある(後述する第1ないし第3実施形態)。
この構成によれば、第1配線と第2配線とがシール領域以外の領域(例えば各実施形態における領域Aa)にて交差するから、第2配線の第1部分がシール材によって押圧された場合であっても、第1配線と第2配線との短絡は回避される。したがって、第1配線と第2配線とがシール領域内にて交差する構成と比較して歩留まりを向上させることができる。
【0005】
本発明の望ましい態様において、第1部分と第2部分とは絶縁層の面上に一体に形成される。この構成によれば、第2配線の構成が簡素化される。なお、この態様の具体例は第1実施形態として後述される。さらに他の態様において、第1部分は第1基板と絶縁層との間に介在し、第2部分は絶縁層の面上に形成されて第1部分に導通する。この態様によれば、第1部分とシール材との間に絶縁層が介在することになる。すなわち、第2配線のうちシール領域内に位置する第1部分が絶縁層によって保護されるから、シール材からの圧力に起因した第2配線の断線を防止することができる。なお、この態様の具体例は第2実施形態として後述される。
【0006】
本発明の望ましい態様において、複数の第2配線を具備し、シール材は複数の粒子を含み、各第2配線のうち第1部分の間隔(例えば図8の間隔D)は粒子の最小径よりも大きい。この態様によれば、相互に隣接する各第1部分の双方に粒子が接触してこれらの第1部分同士が短絡する事態が防止される。なお、この態様の具体例は第3実施形態として後述される。シール材に含められる粒子としては、例えばその強度や粘度を調整するためのフィラーや、第1基板の配線と第2基板の配線とを導通(いわゆる上下導通)させるための導電性粒子、あるいは第1基板と第2基板との間隙の寸法を維持するためのスペーサなどがある。なお、粒子の最小径とは、完全な球形でないひとつの粒子に着目したときに当該粒子の部位に応じた直径のうち最小の直径である。なお、シール材に分散された各粒子の直径がばらつく場合もあるが、この場合、第2配線のうちシール領域内に位置する部分の配線幅は、複数の粒子のうち最小の直径の粒子の最小径よりも大きい寸法とされる。
【0007】
また、本発明に係る電気光学装置の第2の特徴は、相互に対向する第1基板および第2基板と、第1基板と第2基板との間隙に介在して両基板を固定するシール材と、第1基板のうちシール材によって覆われたシール領域に形成された第1配線と、第1配線を覆う絶縁層と、シール領域内にて絶縁層を挟んで第1配線と対向するように形成されて当該第1配線と導通する第2配線とを具備することにある(後述する第4および第5実施形態)。
この構成によれば、第1配線と第2配線とがシール領域内にて交差するが、これらの配線は相互に導通して同電位となるから、シール材からの圧力に起因して第1配線と第2配線とが短絡したとしても、電気光学装置の動作には何らの影響もない。したがって、各々に別個の電位が供給される第1配線と第2配線とがシール領域内にて交差する構成と比較して、歩留まりを向上させることができる。
【0008】
第2の特徴に係る電気光学装置の望ましい態様において、第2配線は、絶縁層のうち第1配線に沿ってシール領域を挟む各位置に形成されたコンタクトホール(例えば図11に示されるコンタクトホールCH2)を介して第1配線に導通する。この態様によれば、シール材からの圧力に起因して第2配線が断線したとしても、ひとつのコンタクトホールから第1配線を介してもうひとつのコンタクトホールに至る経路は維持されるから、第2配線の断線の影響を低減して歩留まりを向上させることができる。さらに他の態様において、第2配線は、絶縁層のうちシール領域内の部分に形成された第1コンタクトホール(例えば図11に示されるコンタクトホールCH1)と、絶縁層のうちシール領域外の部分に形成された第2コンタクトホール(例えば図11に示されるコンタクトホールCH2)とを介して第1配線に導通する。これらの態様の具体例は第5実施形態として後述される。
【0009】
第1および第2の特徴に係る電気光学装置の望ましい態様において、シール材は複数の粒子を含み、第2配線のうちシール領域内に位置する部分の配線幅(例えば図1の配線幅WL)は粒子の最小径よりも大きい。この態様によれば、シール材に混入された粒子の衝突に起因した第2配線の断線を抑制することができるという利点がある。
【0010】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。このような電子機器としては、例えば、パーソナルコンピュータや携帯電話機がある。本発明に係る電気光学装置は、典型的には画像を表示する表示装置として使用されるが、このほかにも例えば光書込み型の画像形成装置(例えばプリンタやコピー機)におけるラインヘッドとしても使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図である。同図に示されるように、電気光学装置1は、所定の間隔をもって相互に対向するように配置された第1基板10と第2基板20とを有する。第1基板10と第2基板20とは、両者の間隙に介在するシール材30によって貼り合わされる。このシール材30は、画素領域Agを包囲するように略長方形の枠状に形成される。なお、図1においては、シール材30が形成された領域(以下「シール領域」という)Asに対して便宜的にハッチングが施されている。本実施形態におけるシール材30には、第1基板10と第2基板20との接着性の強化やシール材30の粘度の調整のために、フィラーが多数の微粒子として混入されている。
【0012】
画素領域Agには、X方向に延在する複数の走査線11とY方向に延在する複数のデータ線13とが形成される。走査線11とデータ線13との各交差に対応する位置には画素Pが配置される。したがって、これらの画素Pは、X方向およびY方向にわたって画素領域Ag内にマトリクス状に配列する。
【0013】
各画素Pは、電気光学素子たるOLED素子と、このOLED素子に供給される信号を制御するスイッチング素子とを含む(何れも図示略)。各スイッチング素子は、例えばドレイン電極がOLED素子の陽極に接続された薄膜トランジスタであり、そのゲート電極が走査線11に接続されるとともにソース電極がデータ線13に接続される。この構成のもと、走査線11に対する電圧の印加によってスイッチング素子がオン状態に遷移すると、そのときにデータ線13に供給されている信号がスイッチング素子を介してOLED素子に供給され、これによってOLED素子は所望の輝度にて発光する。もっとも、各画素Pの構成は任意に変更される。
【0014】
第1基板10のうち第2基板20の周縁から張り出した領域(以下「張出領域」という)A1には、X方向に配列された複数の接続端子15が形成される。これらの接続端子15には、張出領域A1に接合されたフレキシブル配線基板(図示略)の配線が接続される。このフレキシブル基板には、各走査線11に信号を供給する走査線駆動回路や各データ線13に信号を供給するデータ線駆動回路といった各種の駆動回路が実装される。
【0015】
次に、図2は、シール材30の近傍を拡大して示す平面図であり、図3は、図2におけるIII−III線からみた断面図である。これらの図に示されるように、第2基板20のうち第1基板10との対向面は、第2基板20の周縁から所定幅にわたる部分201がその内側の部分202よりも第1基板10側に突出した形状となっている。シール材30は部分201のうち第1基板10と対向する面に形成される。一方、部分202は、第2基板20の表面に垂直な方向からみると画素領域Agを包含する形状となっている。各画素PのOLED素子は、部分201の内壁面201aと部分202と第1基板10とによって囲まれた空間Rに配置される。この空間にRは吸湿性を備えた物質が封止され、水分の付着に起因したOLED素子の劣化が防止される。
【0016】
一方、第1基板10のうち第2基板20と対向する面には第1配線51が形成される。この第1配線51は、第1基板10のうちシール領域Asの内周縁よりも内側(画素領域Ag側)の領域Aaに形成される。第1配線51は、画素Pのスイッチング素子のゲート電極や走査線11と同一の材料からなる配線であり、これらの要素と共通の工程において単一の膜体から形成される。すなわち、第1配線51は、第1基板10の全面を覆う導電性の膜体をフォトリソグラフィ技術やエッチング技術によって選択的に除去するときにゲート電極や走査線11とともに一括的に形成される。
【0017】
図3に示されるように、第1配線51が形成された第1基板10は第1絶縁層61によって覆われる。この第1絶縁層61は、画素Pのスイッチング素子のゲート電極とソース電極やドレイン電極との間に介挿される層間絶縁層と一体をなす膜体である。この第1絶縁層61の面上には複数の第2配線52が形成される。この第2配線52は、画素Pのスイッチング素子のソース電極およびドレイン電極やデータ線13と同一の材料によって共通の工程にて形成される。
【0018】
各第1配線51および各第2配線52は、シール領域Asの内周縁よりも内側の領域Aa内(特に画素領域Ag内)内から、シール領域Asと当該シール領域Asの外周縁よりも外側の領域Abとを通過して張出領域A1まで引き廻され、この張出領域A1に至った端部が接続端子15に導通する。第1配線51および第2配線52は、例えば、接続端子15に入力された信号を走査線11やデータ線13に供給する配線、または接続端子15に印加された電源電位を各OLED素子に供給する配線である。
【0019】
各第2配線52が形成された第1絶縁層61の表面は第2絶縁層62によって覆われる。この第2絶縁層62は、各画素Pのスイッチング素子のソース電極やドレイン電極とOLED素子との間に介挿される層間絶縁層と一体をなす膜体である。第1絶縁層61や第2絶縁層62は、酸化シリコンや窒化シリコンといった絶縁性の材料によって形成される。図3に示されるように、第2基板20における部分201と第2絶縁層62とにシール材30が接触することによって第1基板10と第2基板20とが相互に固定される。
【0020】
図2および図3に示されるように、第2配線52は、シール領域As内に位置する第1部分521と、領域Aa内に位置する第2部分522とを有する。第1基板10に垂直な方向からみると、第2配線52は、シール領域Asの内周縁よりも内側の領域Aaに位置する第2部分522のみにおいて、第1絶縁層61を挟んで第1配線51と重なり合う。すなわち、第2配線52のうちシール領域As内に位置する第1部分521は第1配線51と交差しない。
【0021】
このように、本実施形態においては、第1配線51と第2配線52とがシール領域Asにおいては交差しないから、第1配線51と第2配線52との短絡を防止することができる。この効果について詳述すると以下の通りである。
【0022】
図4は、第1配線51と第2配線52とがシール領域As内にて交差する構成を本実施形態との対比のために示す平面図であり、図5は、図4におけるV−V線からみた断面図である。これらの図に示される構成においては、第2基板20に第1基板10側への圧力が作用すると、図5に矢印にて示されるように、シール材30に混入されているフィラーが第2絶縁層62を突き破って第2配線52に至る場合がある。そして、さらに過大な圧力が作用すると、フィラーが第2配線52を押圧して第1絶縁層61をも破損させる可能性がある。この場合には第2配線52とその直下に位置する第1配線51とが短絡することになるから、電気光学装置1の適正な動作が阻害されることになる。
【0023】
また、第1基板10とシール材30との間に付着した異物によっても同様の問題が引き起こされる。ここで、第2基板20における部分202の窪みは、第2基板20のうち第1基板10と対向する面に対して選択的にサンドブラスト処理を施すことによって形成される。このサンドブラスト処理にて飛散したガラス片が第1基板10とシール材30との間に付着すると、フィラーについて上述したのと同様の作用により、第1配線51と第2配線52との短絡が引き起こされる場合がある。
【0024】
これに対し、本実施形態における第1配線51と第2配線52とはシール領域Asにて交差しないから(すなわち第2配線52の直下に第1配線51は存在しないから)、たとえ第2基板20に圧力が作用してフィラーや異物が第2絶縁層62および第2配線52を押圧したとしても、この第2配線52が第1配線51に短絡することはない。したがって、第1配線51と第2配線52との短絡を防止して製造過程における歩留まりを向上させることができる。
【0025】
ところで、第1配線51と第2配線52との短絡が防止されるとは言っても、フィラーによる圧力が作用することによって第2配線52が断線する可能性はある。この断線を防止するために、第2配線52のうちシール領域As内に位置する第1部分521の配線幅WLは、フィラーの粒子の直径よりも大きい寸法とされる。ただし、フィラーは完全な球形ではないから、その着目する部位によって直径が相違する。図2に示される配線幅WLは、ひとつのフィラーの粒子における最小の直径よりも大きい寸法とされる。さらに望ましい態様において、配線幅WLは、ひとつのフィラーの粒子における最大の直径よりも大きい寸法とされる。これらの態様によれば、第2配線52の第1部分521がフィラーによって押圧されたとしても、その配線幅WLの全体にわたって破損する事態は回避されるから、第2配線52の完全な断線を抑制することができるという利点がある。
【0026】
なお、シール材30に分散されるフィラーの各粒子の直径は区々である場合が多い。そこで、配線幅WLは、多数のフィラーの粒子のうち最小の粒子の直径よりも大きい寸法とされ、より好ましくは、多数のフィラーの粒子のうち最大の粒子の直径よりも大きい寸法とされる。これらの態様によれば、フィラーからの圧力に起因した第2配線52の断線が抑制される。
【0027】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電気光学装置1の構成を説明する。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。以下の各実施形態においても同様である。
【0028】
図6は、本実施形態に係る電気光学装置1のうちシール材30の近傍を拡大して示す平面図(図2に対応する図)であり、図7は、図6におけるVII−VII線からみた断面図である。第1実施形態においては、第2配線52の第1部分521と第2部分522とが第1絶縁層61の面上に一体に形成された構成を例示した。これに対し、本実施形態における第2配線52は、図6および図7に示されるように、第1部分521と第2部分522とが別個の膜体として構成されている。
【0029】
第2配線52のうち第1部分521は、第1基板10に形成されて第1絶縁層61によって覆われる。この第1部分521は、第1配線51と共通の工程において単一の膜体から形成された部分である。一方、第2配線52の第2部分522は、第1絶縁層61の面上に形成された部分である。第2部分522は、第1絶縁層61をその厚さ方向に貫通するコンタクトホールCH1を介して第1部分521に導通する。
【0030】
本実施形態においても、第1配線51と第2配線52とがシール領域As内にて交差しないから、第1実施形態と同様の作用および効果が奏される。さらに、本実施形態においては、第2配線52のうちシール領域Asに位置する第1部分521とシール材30との間に第1絶縁層61と第2絶縁層62とが介在するから、第1実施形態と比較して、第2配線52の断線を有効に防止することができるという利点がある。すなわち、第1実施形態においては、第2配線52の第1部分521とシール材30との間に第2絶縁層62が介在するのみであるから(図3参照)、フィラーや異物によって第2絶縁層62が破損すると第2配線52も断線する可能性が高い。これに対し、本実施形態においては、フィラーや異物によって第2絶縁層62が破損したとしても、これに加えて第1絶縁層61によって被覆された第1部分521の破損は防止される。
【0031】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係る電気光学装置1のうちシール材30の近傍の構成を拡大して示す平面図(図2や図6に対応する図)である。同図に示されるように、相互に隣接する第2配線52の第1部分521は間隔Dをあけて配列される。本実施形態においては、この間隔Dが、シール材30に分散されたフィラーの粒子よりも大きい寸法とされる。すなわち、間隔Dは、ひとつのフィラーの粒子における最小の直径よりも大きい寸法とされ、より好ましくは、ひとつのフィラーの粒子における最大の直径よりも大きい寸法とされる。また、シール材30に分散されるフィラーの各粒子の直径がばらつくことを考慮すると、間隔Dは、多数のフィラーの粒子のうち最小の粒子の直径よりも大きい寸法とされ、より好ましくは、多数のフィラーの粒子のうち最大の粒子の直径よりも大きい寸法とされる。
【0032】
本実施形態によれば、たとえフィラーの粒子が第2絶縁層62を突き破って第2配線52に到達したとしても、相互に隣接する2本の第1部分521にわたって粒子が接触することはない。したがって、フィラーに起因した第2配線52同士の短絡は有効に防止される。なお、図8においては第2実施形態の構成のもとで間隔Dをフィラーの粒子よりも大きい寸法とした構成を例示したが、第1実施形態の構成においても、同様の条件が満たされるように各第2配線52の間隔Dが決定される。
【0033】
<D:第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1および第2実施形態においては、第1配線51と第2配線52とがシール領域As内においては交差しない構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、第1配線51と第2配線52とがシール領域As内にて交差する一方、第1配線51と第2配線52とに同電位が印加される構成となっている。
【0034】
図9は、本実施形態に係る電気光学装置1のうちシール材30の近傍を拡大して示す平面図であり、図10は、図9におけるX−X線からみた断面図である。これらの図に示されるように、本実施形態における第1配線51と第2配線52とは、シール領域As内にて第1絶縁層61を挟んで重なり合う。
【0035】
図9に示されるように、第1配線51は、第2配線52が延在する方向に沿って分岐した部分(以下「導通部」という)511を有する。第2配線52は、第1絶縁層61を厚さ方向に貫通するコンタクトホールCH1を介して第1配線51の導通部511に接触する。したがって、第1配線51と第2配線52とは同電位となる。
【0036】
この構成においては、第1配線51と第2配線52とが相互に導通して同電位とされるから、フィラーや異物によって第1配線51と第2配線52とが導通したとしても、電気光学装置1の動作には何らの影響も生じない。なお、本実施形態における第1配線51や第2配線52は、典型的には、画素領域Agに電源を供給するための電源線として使用される。
【0037】
<E:第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る電気光学装置1の構成を説明する。図11は、本実施形態に係る電気光学装置1のうちシール材30の近傍を拡大して示す平面図であり、図12は、図11におけるXII−XII線からみた断面図である。これらの図に示されるように、本実施形態における第1配線51は、第2配線52と同方向に延在する配線である。さらに詳述すると、第1配線51は、シール領域Asの外周縁よりも外側の領域Abからシール領域Asを通過してその内周縁よりも内側の領域Aaに至るように直線状に延在する。第1配線51と第2配線52とは第1絶縁層61を挟んで重なり合う。
【0038】
第1絶縁層61のうち第1基板10の表面と垂直な方向からみて第1配線51および第2配線52と重なり合う部位には2個のコンタクトホールCH1と2個のコンタクトホールCH2とが形成される。各コンタクトホールCH1は、シール領域As内にて第1絶縁層61を貫通する小孔である。一方、各コンタクトホールCH2は、シール領域As以外の領域にて第1絶縁層61を貫通する小孔である。さらに詳述すると、ひとつのコンタクトホールCH2は、シール領域Asの外周縁よりも外側の領域Abに形成され、もうひとつのコンタクトホールCH2は、シール領域Asの内周縁よりも内側の領域Aaに形成される。換言すると、2個のコンタクトホールCH2は、第1配線51に沿ってシール領域Asを挟む位置に形成される。第1絶縁層61の面上に形成された第2配線52は、各コンタクトホールCH1および各コンタクトホールCH2に入り込んで第1配線51に接触する。すなわち、本実施形態においては、第4実施形態と同様に、第1配線51と第2配線52とが相互に導通して同電位となる。
【0039】
この構成によっても、第4実施形態と同様の作用および効果が奏される。さらに、本実施形態においては、シール領域As内に形成されたコンタクトホールCH1とシール領域As外に形成されたコンタクトホールCH2とを介して第1配線51と第2配線52とが導通するから、たとえフィラーや異物からの圧力によって第2配線52が断線したとしても、第1配線51によって配線としての機能は維持される。特に、本実施形態においては、シール領域Asを挟む各位置にコンタクトホールCH2が形成されているから、シール領域As内の何れの位置にて第2配線52が断線したとしても、ひとつのコンタクトホールCH2から第1配線51を経由してもうひとつのコンタクトホールCH2に至る電気的な経路は維持される。したがって、フィラーや異物に起因した第2配線52の断線の影響を低減することができるという利点がある。
【0040】
<F:変形例>
各実施形態に対しては様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以上に説明した各実施形態や以下に示す各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0041】
(1)各実施形態においては、走査線駆動回路やデータ線駆動回路といった駆動回路がフレキシブル配線基板に実装された構成を例示したが、これらの駆動回路は、ICチップの形態にて張出領域A1に実装されてもよいし、第1基板10に形成されたスイッチング素子(薄膜トランジスタ)によって構成されてもよい。第1基板10に作り込まれたスイッチング素子によって駆動回路が形成される構成(以下「駆動回路内蔵型」という)において、第1配線51は、この駆動回路を構成するスイッチング素子のゲート電極と同一の材料によって共通の工程にて形成され、第2配線52は、駆動回路を構成するスイッチング素子のソース電極やドレイン電極と同一の材料によって共通の工程にて形成される。
【0042】
また、駆動回路内蔵型の電気光学装置1においては、これらの駆動回路にて使用される各種の制御信号や電源電位が第1配線51や第2配線52によって伝送される。この制御信号としては、例えば、走査線駆動回路のシフトレジスタに入力されるスタートパルスや当該シフトレジスタから出力されるエンドパルス、データ線駆動回路に入力される画像信号、あるいはこれらの駆動回路の動作のタイミングを規定するクロック信号などがある。
【0043】
(2)各実施形態においては、第2基板20の部分201の全域にわたってシール材30が形成された構成を例示した。この構成においては、部分201とシール領域Asとは略一致することになる。しかしながら、第2基板20に対するシール材30の関係はこれに限られない。例えば、第2基板20の部分201の一部のみにシール材30が形成された構成としてもよい。また、第2基板20のうち第1基板10との対向面をその全域にわたって窪みのない平面としてもよい。本発明におけるシール領域Asとはシール材30が形成された領域であり、第2基板20の形態や第2基板20に対するシール材30の位置は任意に変更される。
【0044】
(3)各実施形態においてはアクティブマトリクス方式の電気光学装置1を例示したが、各画素Pがスイッチング素子を持たないパッシブマトリクス方式の電気光学装置にも本発明は適用される。また各実施形態においては電気光学素子としてOLED素子を利用した電気光学装置1を例示したが、これ以外の電気光学素子を利用した電気光学装置にも本発明は適用される。例えば、液晶を利用した液晶装置、無機EL素子を利用した表示装置、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、表面導電型電子放出ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display)、弾道電子放出ディスプレイ(BSD:Ballistic electron Surface emitting Display)、発光ダイオードを利用した表示装置といった各種の電気光学装置に対して各実施形態と同様の構成が採用される。
【0045】
<F:応用例>
次に、本発明に係る電気光学装置を適用した電子機器について説明する。図13は、各実施形態に係る電気光学装置1を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての電気光学装置1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この電気光学装置1はOLED素子を用いるので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0046】
図14に、実施形態に係る電気光学装置1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての電気光学装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置1に表示される画面がスクロールされる。
【0047】
図15に、実施形態に係る電気光学装置1を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての電気光学装置1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置1に表示される。
【0048】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図13から図15に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の電気光学装置は使用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図である。
【図2】シール材の近傍の構成を拡大して示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線からみた断面図である。
【図4】第1配線と第2配線とがシール領域にて交差する構成を示す平面図である。
【図5】図4におけるV−V線からみた断面図である。
【図6】第2実施形態に係る電気光学装置のうちシール材の近傍の構成を示す平面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線からみた断面図である。
【図8】第3実施形態に係る電気光学装置のうちシール材の近傍の構成を示す平面図である。
【図9】第4実施形態に係る電気光学装置のうちシール材の近傍の構成を示す平面図である。
【図10】図9におけるX−X線からみた断面図である。
【図11】第5実施形態に係る電気光学装置のうちシール材の近傍の構成を示す平面図である。
【図12】図11におけるXII−XII線からみた断面図である。
【図13】本発明を適用したパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図14】本発明を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明を適用した携帯型情報端末の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1……電気光学装置、Ag……画素領域、As……シール領域、P……画素、10……第1基板、20……第2基板、30……シール材、51……第1配線、52……第2配線、521……第1部分、522……第2部分、61……第1絶縁層、62……第2絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間隙に介在して両基板を固定するシール材と、
前記第1基板のうち前記第2基板と対向する面に形成された第1配線と、
前記第1配線を覆う絶縁層と、
前記第1基板のうち前記第2基板に対向する面に形成された配線であって、前記シール材によって覆われたシール領域内に位置する第1部分と、前記シール領域以外の領域にて前記絶縁層を挟んで前記第1配線と対向する第2部分とを有する第2配線と
を具備することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1部分と前記第2部分とは前記絶縁層の面上に一体に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1部分は前記第1基板と前記絶縁層との間に介在し、前記第2部分は前記絶縁層の面上に形成されて前記第1部分に導通する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
複数の第2配線を具備し、
前記シール材は複数の粒子を含み、
前記各第2配線のうち前記第1部分の間隔は前記粒子の最小径よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項5】
相互に対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間隙に介在して両基板を固定するシール材と、
前記第1基板のうち前記シール材によって覆われたシール領域に形成された第1配線と、
前記第1配線を覆う絶縁層と、
前記シール領域内にて前記絶縁層を挟んで前記第1配線と対向するように形成されて当該第1配線と導通する第2配線と
を具備することを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
前記第2配線は、前記絶縁層のうち前記第1配線に沿って前記シール領域を挟む各位置に形成されたコンタクトホールを介して第1配線に導通する
ことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第2配線は、前記絶縁層のうち前記シール領域内の部分に形成された第1コンタクトホールと、前記絶縁層のうち前記シール領域外の部分に形成された第2コンタクトホールとを介して前記第1配線に導通する
ことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記シール材は複数の粒子を含み、
前記第2配線のうち前記シール領域内に位置する部分の配線幅は前記粒子の最小径よりも大きい
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の電気光学装置を具備する電子機器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−208903(P2006−208903A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22690(P2005−22690)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】