説明

電池システム

【課題】磁束の漏出や騒音の発生を防止するとともに、負荷側の設計仕様によらず、所望の直流電力を安定的に出力可能で、かつ可搬性および実装容易性に優れた電池システムを提供すること。
【解決手段】電池システム1は、電池(バッテリ)2と、電池2からの出力を開閉するリレー3と、電池2からの電圧を昇圧する昇圧回路4と、電池2の状態をモニターするとともに、リレー3および昇圧回路4の動作を制御する制御部5と、これらの収納するケース(筐体)6とを有する。また、昇圧回路4は、スイッチ、コンデンサ、ダイオードおよびリアクトルを備えている。また、リアクトルの磁心は、アモルファス磁性粉末を、圧粉体密度が5〜6Mg/mになるように圧粉成形した後、非還元性雰囲気中において、400〜500℃の温度で10〜30分間の熱処理を施すことにより作製されたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池車、電気自動車、ハイブリッド自動車等のいわゆる低公害車の開発が進められている。特に、ハイブリッド自動車は、国内外で普及が進みつつある。
例えば、ハイブリッド自動車は、駆動源として内燃機関(エンジン)と、電気モータとを併用することにより、燃料の消費率を低減し、低燃費を実現可能な自動車である。
このようなハイブリッド自動車については、近年、低燃費を実現するのみでなく、走行性能を高めることにも市場の要求が拡大している。このため、電気モータの出力向上を図ることによって走行性能を高めるべく、電気モータを駆動する電圧の高電圧化が望まれている。
そこで、搭載されたバッテリの電圧を昇圧することにより、電気モータに高電圧を印加することができる昇圧回路を備えたハイブリッド自動車が実用化されている。この昇圧回路は、バッテリと、車両駆動用モータに交流電力を供給するインバータとの間に設けられている。
【0003】
このような昇圧回路は、リアクトル、コンデンサ、ダイオードおよびスイッチを備えている。そして、スイッチがONのときには、バッテリのエネルギーをリアクトルに蓄え、スイッチがOFFのときには、リアクトルに蓄えられたエネルギーをバッテリのエネルギーに重畳させて、バッテリの電圧より高い電圧をコンデンサとインバータとに出力することができる。
【0004】
しかしながら、ハイブリッド自動車における電気モータの出力の大きさは、ハイブリッド自動車の車種や設計仕様によって異なっている。このため、従来、自動車メーカーでは、ハイブリッド自動車に用いる電気モータの出力の大きさに応じて、昇圧回路の設計を変更している。このような昇圧回路の設計変更には、多大な手間とコストを要している。したがって、ハイブリッド自動車の車種や設計仕様によらずに搭載することのできる蓄電手段が求められている。
【0005】
ところで、このような昇圧回路が有するリアクトルの磁心として、例えば、Fe−Si系の軟磁性粉末とバインダとを加圧成形してなる圧粉成形体で構成された圧粉磁心が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような従来の圧粉磁心には、一般に、結晶質の軟磁性粉末が用いられている。
しかしながら、スイッチングの周波数が高くなると、リアクトルの磁心に渦電流が発生する。磁心に渦電流が流れると、ジュール熱による発熱を生じ、リアクトルの温度が急激に上昇する。このため、リアクトルの温度が高くなり過ぎて、磁心の磁気特性が低下するばかりでなく、磁心が変質・劣化し、リアクトルとしての機能が損なわれるおそれがある。
例えば、Fe−Si系の結晶質の軟磁性粉末で構成された磁心では、比抵抗が小さいため、渦電流が増大し、発熱が大きいという問題がある。
【0006】
したがって、従来の昇圧回路では、この発熱を考慮して、定期的に通電を止めることによって、リアクトルの温度が耐熱温度以上にならないよう制御されている。このため、インバータに対して、高電圧を連続的に印加することができないという問題がある。
また、このような圧粉成形された磁心の他に、帯状の珪素鋼板(Fe−Si系材料)を複数枚積層することにより形成した磁心が知られている。
【0007】
しかしながら、珪素鋼板は、最大透磁率が非常に高いという特徴を有する。このため、珪素鋼板を複数枚積層して磁心を形成した場合、低磁場側では優れた特性を示すものの、中磁場または高磁場側では、珪素鋼板の透磁率が極めて低くなり、優れた特性が得られないという問題がある。
そこで、高磁場側でも高い透磁率が得られるよう、磁心にギャップを設けたギャップ付き磁心が提案されている。
【0008】
しかしながら、磁心のギャップにおいて磁束が漏れ出るおそれがあり、漏れ出た磁束が他の電子部品の誤作動を招いたり、鉄損の増大を招くおそれがある。
さらに、帯状のアモルファス金属(アモルファスリボン)を複数枚積層することにより形成した磁心も知られている。
このようなアモルファスリボンは、厚さが10〜30μmと非常に薄いため、複数枚のアモルファスリボンを緻密に積層する必要があり、多大な手間とコストを要している。また、リアクトルに通電したとき、アモルファスリボンの層間において、電磁騒音が発生するという問題もある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−288983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、磁束の漏出や騒音の発生を防止するとともに、負荷側の設計仕様によらず、所望の直流電力を安定的に出力可能で、かつ可搬性および実装容易性に優れた電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電池システムは、電池と、
スイッチ、コンデンサ、ダイオードおよびリアクトルを備え、前記電池の電圧を昇圧する昇圧回路と、
筐体とを有し、
前記リアクトルの磁心は、アモルファス軟磁性粉末を、圧粉体密度が5.0〜6.0Mg/mになるように圧粉成形した後、非還元性雰囲気中において、400〜500℃の温度で10〜30分間の熱処理を施すことにより作製されたものであり、
前記電池および前記昇圧回路が、前記筐体内に一体的に収納されていることを特徴とする。
これにより、磁束の漏出や騒音の発生を防止するとともに、負荷側の設計仕様によらず、所望の直流電力を安定的かつ連続的に出力可能で、かつ可搬性および実装容易性に優れた電池システムが得られる。
【0012】
本発明の電池システムでは、前記昇圧回路は、昇圧比可変のチョッパ方式の昇圧回路であることが好ましい。
これにより、幅広い電圧を出力し得る電池システムが得られる。
本発明の電池システムでは、さらに、前記筐体内に設けられ、前記スイッチの開閉動作を制御する機能を有する制御手段を有し、
該制御手段は、自発的に、または、当該電池システムの外部からの情報に基づいて、前記スイッチの開閉動作を制御することにより、前記昇圧回路の昇圧比を決定するよう構成されていることが好ましい。
これにより、電池システムが出力する電圧を自発的または外部からの情報に基づいて制御することができ、負荷にとって最適な電圧を出力することができる。
【0013】
本発明の電池システムでは、駆動用モータに交流電力を供給するインバータ部に接続して使用されるものであり、
前記制御手段は、前記駆動用モータが発生すべき出力に応じて、前記昇圧回路の昇圧比を決定するよう構成されていることが好ましい。
これにより、駆動用モータが発生すべき出力に応じて、駆動用モータに電力を供給する電源として最適な電池システムを提供することができる。
【0014】
本発明の電池システムでは、前記アモルファス磁性粉末は、Fe−Si−B系アモルファス金属を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、磁心が、飽和磁束密度が高く、かつ、低磁場から高磁場まで比較的高い透磁率を示すものとなる。これにより、磁心およびリアクトルをより小型化することができる。
本発明の電池システムでは、前記アモルファス磁性粉末の粒径は、150μm以下であることが好ましい。
これにより、磁心において、渦電流が流れる経路を特に短縮することができるため、渦電流損失のさらなる低減を図ることができる。
【0015】
本発明の電池システムでは、前記磁心は、200Aの直流を重畳したときのインダクタンスが、直流を重畳しなかったときのインダクタンスの5〜20%となるものであることが好ましい。
これにより、直流重畳特性に特に優れた磁心が得られる。そして、このような磁心を備えた昇圧回路は、高電流であっても、確実に昇圧可能なものとなる。
【0016】
本発明の電池システムでは、前記磁心は、100kHzの交流を印加したときの透磁率が、50Hzの交流を印加したときの透磁率の70%以上となるものであることが好ましい。
これにより、磁心は、低周波から高周波まで安定した透磁率を示すものとなる。したがって、このような磁心を備えた昇圧回路では、スイッチング周波数の設定値の幅を広くしても、確実に昇圧することができる。
【0017】
本発明の電池システムでは、前記電池の電圧を、時間的に連続して昇圧可能であることが好ましい。
これにより、通電を休止することなく、時間的に連続して電池の電圧を昇圧して出力することができる。その結果、例えば、電池システムを、ハイブリッド自動車の車両駆動用モータに電力を供給する電源に適用した場合、車両駆動用モータを長時間にわたって連続駆動することができる。
【0018】
本発明の電池システムでは、前記スイッチを開閉する際の周波数を5〜100kHzに設定して使用されることが好ましい。
これにより、スイッチング周波数を前記範囲のような高い周波数に設定したとしても、リアクトルの温度上昇を確実に抑制し得る電池システムが得られる。その結果、出力する電圧の調整をより高速かつ高精度に行うことのできる高性能の電池システムが得られる。
【0019】
本発明の電池システムでは、前記電池の電圧は、100V以上であることが好ましい。
これにより、100V以上の高電圧を出力可能な電池システムが得られる。その結果、電池システムを、例えばハイブリッド自動車のような高電圧を必要とする機器に組み込むことが可能になり、電池システムの用途の拡大を図ることができる。
本発明の電池システムでは、前記スイッチを開閉する際のONデューティは、95%以下に設定されることが好ましい。
これにより、直流電源の電圧を、より幅広い昇圧比で安定的に昇圧することができる。
本発明の電池システムでは、前記昇圧回路は、前記負荷の大きさによらず、前記直流電源の電圧を連続発振モードで昇圧可能になっていることが好ましい。
これにより、直流電源の電圧を、負荷に対して安定的かつ連続的に高電圧を印加することができる。
【0020】
本発明の電池システムでは、前記リアクトルのインダクタンスは、0.01〜5mHであることが好ましい。
これにより、負荷に対してより大電力を供給することができる。例えば、電池システムを、ハイブリッド自動車の車両駆動用モータに電力を供給する電源に適用した場合、より大電力を車両駆動用モータに供給することができ、ハイブリッド自動車の走行性能を高めることができる。
【0021】
本発明の電池システムでは、前記リアクトルの通電中の温度を、−40℃以上150℃以下に維持することができる。
これにより、磁心の磁気特性が著しく低下するのを防止するとともに、熱による磁心の変質・劣化を確実に防止することができる。その結果、直流電源の電圧を、時間的に連続して昇圧可能な昇圧回路が得られる。
【0022】
本発明の電池システムでは、前記磁心は、トロイダル形状をなしていることが好ましい。
これにより、磁束の漏れが少ない磁心が得られる。その結果、漏れ出た磁束が隣接する電子部品に悪影響を及ぼしたり、鉄損が増大したりするのを防止することができる。
本発明の電池システムでは、前記磁心は、全体を一体的に成形することにより作製されたものであることが好ましい。
これにより、磁心は、内部にギャップを有しないギャップレス構造となり、磁束の漏れをより確実に防止することができる。
【0023】
本発明の電池システムでは、前記筐体は、その少なくとも一部が金属材料で構成されていることが好ましい。
金属材料は、熱伝導性に優れているため、ケースのうち、金属材料で構成された部位から、ケース内の熱を効率よく外部に放出することができる。これにより、ケース内が著しく高温になるのを防止することができる。その結果、ケース内の電池や昇圧回路等が熱による影響で故障したり、機能が低下したりするのを確実に防止することができる。
【0024】
本発明の電池システムでは、前記筐体は、前記昇圧回路から発生した熱を、前記筐体の外部に放出するためのヒートシンクの機能を有することが好ましい。
昇圧回路は、発熱量が特に大きいため、筐体がヒートシンクの機能を有することにより、ケース内の温度上昇を特に効果的に抑制することができる。これにより、ケース内の電池や昇圧回路等が熱による影響で故障したり、機能が低下したりするのを確実に防止することができる。
本発明の電池システムでは、前記電池は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池であることが好ましい。
これにより、簡単に充電可能であるとともに、エネルギー密度が特に高い高性能の電池システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の電池システムについて、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<電池システム>
図1は、本発明の電池システムの実施形態を示す概略図(平面図)、図2は、本発明の電池システムが備える昇圧回路の実施形態を示す回路図、図3は、図2に示す昇圧回路が有するリアクトルを説明するための概略図である。
【0026】
図1に示す電池システム1は、電池(バッテリ)2と、電池2からの出力を開閉するリレー3と、電池2からの電圧を昇圧する昇圧回路4と、電池2の状態をモニターするとともに、リレー3および昇圧回路4の動作を制御する制御部(制御手段)5と、これらを収納するケース(筐体)6とを有する。
すなわち、図1に示す電池システム1は、電池2と昇圧回路4とを同一のケース6内に同梱してなるものである。
【0027】
また、昇圧回路4は、図2に示すように、スイッチング素子(スイッチ)42、コンデンサ43、ダイオード44およびリアクトル45を備えるチョッパ方式の昇圧回路である。このうち、リアクトル45の磁心は、アモルファス磁性粉末を、圧粉体密度が5.0〜6.0Mg/mになるように圧粉成形した後、非還元性雰囲気中において、400〜500℃の温度で10〜30分間の熱処理を施すことにより作製されたものである。
このような電池システム1は、電池2の電圧を昇圧回路4によって昇圧し、昇圧された電圧を負荷に対して出力することができる。
【0028】
以下、電池システム1の各部の構成について順次詳述する。
電池2は、直流電源となり得る電池であれば、いかなるものでもよく、例えば、アルカリ電池、マンガン電池、リチウム電池、酸化銀電池のような一次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池のような二次電池、燃料電池、太陽電池等が挙げられる。
このうち、リチウムイオン電池やニッケル水素電池は、簡単に充電可能であるとともに、エネルギー密度が特に高いことから、高性能の電池システム1を実現し得る電池2として好適に用いられる。
【0029】
リレー3は、電池2と昇圧回路4との間に設けられている。
このようなリレー3は、電池2から昇圧回路4への出力を開閉するものである。電池システム1内にリレー3を設けることにより、例えば、短絡等によって電池2から昇圧回路4に向けて想定以上の高電圧が出力された場合でも、この高電圧が昇圧回路4に供給されるのを防止することができる。これにより、昇圧回路4や電池システム1に接続された機器が、想定以上の高電圧が供給されることによって破壊されるのを防止することができる。
このようなリレー3としては、直流電流を短時間に遮断し得る機器であればよく、例えば、各種開閉器、各種遮断器等で置き換えてもよい。
なお、リレー3は必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
昇圧回路4は、前述したように、スイッチング素子42、コンデンサ43、ダイオード44およびリアクトル45を備えている。
なお、昇圧回路4については、後に詳述する。
【0030】
制御部5は、電池2の状態(例えば、電圧、温度等)をモニターするとともに、リレー3および昇圧回路4の動作を制御する。
このような制御部5は、例えば、IC、LSI等の集積回路で構成される。
このような制御部5は、内蔵するプログラムに応じて、すなわち自発的に、リレー3の開閉や、昇圧回路4の動作を制御することにより、昇圧回路4による昇圧比を制御し、昇圧回路4に所望の電圧を出力させることができる。
【0031】
また、制御部5は、電池システム1の外部に設けられた機器と接続されていてもよい。これにより、外部機器からの情報に基づいて、電池システム1が出力する電圧を制御し、負荷にとって最適な電圧を出力することができる。
さらに、制御部5は、電池2の状態に応じて、リレー3や昇圧回路4の動作を制御することができる。このため、例えば、電池2が短絡を生じたり、電池2の温度が高くなり過ぎたりしても、そのような電池2の状態を検出して、リレー3を切断したり、昇圧回路4の昇圧比を下げたりすることにより、電池システム1や外部機器に悪影響が及ぶのを防止することができる。
なお、制御部5は、必ずしもケース6内に設けられなくてもよく、ケース6の外表面に設けたり、ケース6の外部に設けられた同等の機能を有する機器で代替することもできる。
【0032】
ケース6は、図1に示すように、電池2、リレー3、昇圧回路4および制御部5を収納する筐体である。
このようなケース6の形状は、電池2、リレー3、昇圧回路4および制御部5を同梱し得るような内容積を有する形状であればよく、例えば、直方体形状、立方体形状、球形状、柱状等の各種立体形状とされる。
【0033】
また、ケース6を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼のようなFe系、チタン系、アルミニウム系、銅系、ニッケル系、マグネシウム系、亜鉛系のような各種金属材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0034】
なお、ケース6の少なくとも一部が金属材料で構成されているのが好ましく、全部が金属材料で構成されているのがより好ましい。金属材料は、熱伝導性に優れているため、この金属材料で構成された部位から、ケース6内の熱を効率よく外部に放出することができる。これにより、ケース6内が著しく高温になるのを防止することができる。
また、金属材料で構成された部位は、ケース6のうち、昇圧回路4の近傍に設けられているのが好ましく、リアクトル45の近傍に設けられているのがより好ましい。これにより、ケース6は、昇圧回路4やリアクトル45から発生した熱を、ケース6の外部に放出するためのヒートシンクとしての機能を有するものとなる。すなわち、昇圧回路4は、電池2やリレー3等に比べて発熱量が大きく、昇圧回路4の中でもリアクトル45の発熱量は特に大きいため、ケース6がヒートシンクとしての機能を有していることにより、ケース6内の温度上昇を特に効果的に抑制することができる。その結果、電池2、リレー3、昇圧回路4および制御部5等が、熱による影響で故障したり、機能が低下したりするのを確実に防止することができる。
【0035】
また、ケース6には、昇圧回路4の出力側とケース6の外部とを接続するためのコネクタ61を備えている。このコネクタ61は、外部機器に導通する端子(図示せず)を有する雄コネクタ611と、この雄コネクタ611が嵌合することにより、外部機器と昇圧回路4との導通をとり得る雌コネクタ612とで構成されており、これらは、着脱自在である。すなわち、コネクタ61によれば、雄コネクタ611と雌コネクタ612とを結合し、昇圧回路4と外部機器とを簡単に導通したり、雄コネクタ611と雌コネクタ612とを分離し、昇圧回路4と外部機器とを簡単に分離したりすることができる。
【0036】
ここで、昇圧回路4について詳しく説明する。
図2に示す昇圧回路4は、前述したように、スイッチング素子42、コンデンサ43、ダイオード44およびリアクトル45を備えるチョッパ方式の昇圧回路である。
図2に示すスイッチング素子42は、電池2に対して並列に接続されている。すなわち、スイッチング素子42は、電池2の正極側に接続された正極側ライン401と、電池2の負極側に接続された負極側ライン402とを介して、電池2に接続されている。そして、このようなスイッチング素子42は、正極側ライン401から負極側ライン402への電流のON/OFF制御を担っている。
このようなスイッチング素子42には、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなバイポーラトランジスタ、金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)のような電界効果トランジスタ(FET)、サイリスタ、SCR等を用いることができる。
【0037】
また、スイッチング素子42には、特に、IGBTまたはMOSFETを用いるのが好ましい。これらのスイッチング素子によれば、比較的大きな電力のスイッチングを高速で行うことができる。このため、昇圧回路4に流れる電流の制御をより高速かつ高精度に行うことができる。
また、本実施形態にかかる昇圧回路4は、スイッチング素子42を跨ぐように設けられたコンデンサ425を有している。
【0038】
コンデンサ43は、スイッチング素子42の負荷側に設けられ、電池2に対して並列に接続されている。コンデンサ43は、負荷に供給される電力の一部を一時的に充電し、スイッチング素子42のON/OFF制御に応じて放電することにより、充電していた電力を負荷に供給する。
このようなコンデンサ43には、例えば、図2に示すような電界コンデンサの他、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ等を用いることができる。
【0039】
ダイオード44は、正極側ライン401上のスイッチング素子42とコンデンサ43との間に、直列に接続されている。このとき、ダイオード44のアノードが電池2側に、カソードが負荷側に、それぞれ接続されている。ダイオード44は、正極側ライン401上の電流の方向を制御し、負荷側から電池2側への電流を阻止する。
このようなダイオード44は、特に限定されず、整流作用のある各種素子で代替することもできる。
【0040】
リアクトル45は、正極側ライン401上の電池2とスイッチング素子42との間に、直列に接続されている。リアクトル45は、電池2からの電流を、スイッチング素子42によってON/OFF制御されることによって発生する自己誘導起電力を充電する。そして、スイッチング素子42のON/OFF制御に応じて放電することにより、充電していた電力を負荷に供給する。
【0041】
以下、リアクトル45について詳述する。
図3に示すリアクトル45は、圧粉磁心(コア)451と、圧粉磁心451の外周に沿って螺旋状に巻き回された導線(コイル)452とを有する。
このうち、圧粉磁心451は、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末4510をバインダ4511で結着してなる加圧成形体で構成されている。アモルファス金属は保磁力が小さいため、軟磁性粉末4510を含む圧粉磁心451は、ヒステリシス損失の小さいものとなる。
【0042】
具体的には、(a)アモルファス金属で構成された圧粉磁心451と、(b)Fe−Si系の結晶金属材料で構成された従来の圧粉磁心とについて、磁気特性(B−H特性)を評価すると、圧粉磁心451は、図4に示すように、従来の圧粉磁心に比べて、ヒステリシス損失を低減することができる。なお、図4は、前記(a)、(b)における磁化曲線(B−H特性)を示すグラフである。
【0043】
また、アモルファス金属は、結晶金属に比べて比抵抗が大きいため、軟磁性粉末4510に渦電流が生じ難くなる。これにより、圧粉磁心451の渦電流損失を低減することもできる。
さらに、圧粉磁心451では、軟磁性粉末4510の各粒子間にバインダ4511が介在しているので、粒子間が確実に絶縁される。その結果、圧粉磁心451では、発生する渦電流が各粒子間で分断されることとなるため、リアクトル45全体において渦電流損失のさらなる低減を図ることができる。
【0044】
以上のことから、圧粉磁心451において、主にヒステリシス損失と渦電流損失とからなる鉄損を低減することができる。
なお、鉄損の小さい圧粉磁心451によれば、リアクトル45において、鉄損に伴うジュール熱の発生を抑制することができる。これにより、圧粉磁心451の温度上昇を抑制することができる。その結果、温度上昇に伴う電池2、リレー3、昇圧回路4および制御部5等の故障、機能低下を確実に防止することができる。
【0045】
また、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末4510を有する圧粉磁心451は、飽和磁束密度が高く、かつ、低磁場から高磁場まで比較的高い透磁率を示すものとなる。これにより、圧粉磁心451およびリアクトル45をより小型化することができる。
また、圧粉磁心451は、その全体が一体的に成形されて作製されている。これにより、圧粉磁心451は、内部にギャップを有しないギャップレス構造となり、磁束の漏れをより確実に防止することができる。
【0046】
また、従来、帯状のアモルファス金属(アモルファスリボン)を複数枚積層してなる磁心や、珪素鋼板を積層してなる磁心等が用いられていたが、これらの磁心は、層間において電磁騒音が発生するという問題を抱えていた。これに対して、圧粉磁心451は、層間が存在しないため、電磁騒音の発生を確実に防止することができる。したがって、加圧成形体で構成された圧粉磁心451は、より低騒音のものとなる。
【0047】
また、圧粉磁心451は、その平面視形状が、好ましくは図3に示すようなトロイダル形状とされる。トロイダル形状の磁心は、その他の形状の磁心に比べて磁束の漏れが少ない。このため、漏れ出た磁束が隣接する電子部品に悪影響を及ぼしたり、鉄損が増大するのを防止することができる。
ここで、本発明の電池システムが備える圧粉磁心451は、前述したように、軟磁性粉末4510を、圧粉体密度が5.0〜6.0Mg/mになるように圧粉成形した後、非還元性雰囲気中において、400〜500℃の温度で10〜30分間の熱処理を施すことにより作製されたものであるという特徴を有する。
【0048】
以下、圧粉磁心451の製造方法について説明する。
圧粉磁心451は、軟磁性粉末4510とバインダ4511との混合物を、各種成形方法を用いて成形することにより作製することができるが、この成形方法としては、例えば、プレス成形法、射出成形法、押出成形法等が挙げられる。
ここでは、一例として、プレス成形法により圧粉磁心451を作製する方法について説明する。
【0049】
[1]まず、軟磁性粉末4510とバインダ4511とを用意する。そして、軟磁性粉末4510の各粒子の表面をバインダ4511で被覆する。
ここで、軟磁性粉末4510を構成するアモルファス金属としては、例えば、Fe−Si−B系、Fe−B系、Fe−Si−B−C系、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B−Cr−C系、Fe−Co−Si−B系、Fe−Zr−B系、Fe−Ni−Mo−B系、Ni−Fe−Si−B系等の各アモルファス金属が挙げられる。
これらの中でも、特に、Fe−Si−B系アモルファス金属が好ましい。Fe−Si−B系アモルファス金属は、保磁力が特に小さいものである。このため、圧粉磁心451のヒステリシス損失の低減を図ることができる。
【0050】
また、このようなFe−Si−B系アモルファス金属は、Feを主成分とし、Siを4〜9重量%程度の含有率で含みBを1〜5重量%程度の含有率で含むものが好ましく、Feを主成分とし、Siを4.5〜8.5重量%程度の含有率で含み、Bを2〜4重量%程度の含有率で含むものがより好ましい。このような組成のFe−Si−B系アモルファス金属は、保磁力が特に小さいため、圧粉磁心451のヒステリシス損失を特に小さくすることができる。
なお、軟磁性粉末4510を構成するアモルファス金属は、その他の成分、例えば、製造過程で不可避的に混入する成分(不可避不純物)を含んでいてもよい。その場合、その他の成分の含有率の総和は、1重量%以下とするのが好ましい。
【0051】
このような軟磁性粉末4510は、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法、冷却ロール法等の方法で製造されたものを用いることができる。
このうち、圧粉磁心451に用いる軟磁性粉末4510としては、アトマイズ法で製造されたものが好ましく用いられる。
アトマイズ法は、溶融物(溶湯)を、冷却媒(液体やガス等)に衝突させることにより粉末化する方法である。溶湯は、噴霧されたり、冷却媒と衝突させることにより、微細な液滴となるとともに、この液滴が冷却媒と接触することにより急速に冷却され固化する。このとき、液滴の冷却が極めて急速に行われるため、各原子が液体状態の無秩序な原子配置を保存したまま急速に固化に至る。その結果、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末4510を効率よく製造することができる。
なお、アトマイズ法としては、例えば、水アトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法、ガスアトマイズ法、真空溶解ガスアトマイズ法、ガス−水アトマイズ法、超音波アトマイズ法等が挙げられる。
【0052】
また、軟磁性粉末4510の粒径は、その組成や製造条件によって多少は異なるが、150μm以下であるのが好ましく、53μm以下であるのがより好ましい。軟磁性粉末4510の粒径を前記範囲内とすることにより、渦電流が流れる経路を特に短縮することができるため、圧粉磁心451における渦電流損失のさらなる低減を図ることができる。
さらに、軟磁性粉末4510の粒径が前記範囲内であれば、負荷が軽くなったとき、リアクトル45のインダクタンスがより大きくなるので、高周波リップルの高さをより低くすることができる。
【0053】
なお、軟磁性粉末4510の下限値は、特に限定されないが、好ましくは25μmとされる。軟磁性粉末4510がこの下限値未満の粒径の粉末のみで構成されていると、軟磁性粉末4510を加圧成形する際に、軟磁性粉末4510の圧縮性が著しく悪化するおそれがある。このため、得られる圧粉体の密度が著しく低下し、最終的に得られる圧粉磁心451のインダクタンスの絶対値が小さくなりすぎるおそれがある。
【0054】
一方、バインダ4511としては、例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸カドミウムのようなリン酸塩、ケイ酸ナトリウムのようなケイ酸塩(水ガラス)、酸化ケイ素等の無機バインダ、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等の有機バインダ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、バインダ4511としては、特に、無機バインダを用いるのが好ましい。これにより、圧粉磁心451の耐熱性および絶縁性を高めることができる。
【0055】
なお、バインダ4511の重量は、バインダ4511の組成に応じて若干異なるが、軟磁性粉末4510の重量1kg当たり0.5〜50g程度であるのが好ましく、10〜30g程度であるのがより好ましい。
また、軟磁性粉末4510の各粒子の表面をバインダ4511で被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、軟磁性粉末4510とバインダ4511との混合物を、ボールミルのような各種混合法で混合したり、噴霧法、転動法、転動流動法のような各種造粒法等を用いて造粒したりする方法が挙げられる。
【0056】
[2]次に、プレス成形装置のキャビティ内に、表面をバインダ4511で被覆した軟磁性粉末4510を投入し、プレス成形する。これにより、圧粉体を得る。
ここで、プレス成形の際の荷重は、プレス成形後の圧粉体の密度が5.0〜6.0Mg/mになるように調整されるのが好ましい。この場合、事前に、荷重を何段階かに変えてプレス成形を行い、得られた圧粉体の密度を測定することにより、プレス成形の荷重と圧粉体の密度との関係を把握しておけばよい。
【0057】
プレス成形の荷重を前記範囲内とすることにより、例えば、80000A/mの高磁場においても、磁束密度が飽和しない圧粉磁心451が得られる。これにより、低磁場側から高磁場側まで、比較的高い透磁率を示す圧粉磁心451が得られる。このような特性は、圧粉磁心451の内部に適度な量の気孔が分散していることにより得られるものである。そして、このような圧粉磁心451を備えた昇圧回路4は、電池2の電圧を、より安定的に昇圧可能なものとなる。
なお、圧粉体の密度が前記下限値を下回った場合、圧粉磁心451の透磁率が全体的に低くなりすぎるおそれがある。一方、圧粉体の密度が前記上限値を上回った場合、高磁場側において圧粉磁心451の磁束密度が飽和してしまい、透磁率が小さくなるおそれがある。
【0058】
[3]次に、得られた圧粉体に対し、非還元性雰囲気中において熱処理を施す。これにより、圧粉磁心451が得られる。
この熱処理の条件は、温度が400〜500℃で、10〜30分間程度であるのが好ましい。このような条件で圧粉体に熱処理を施すことにより、ヒステリシス現象をほとんど示さない圧粉磁心451が得られる。したがって、このような圧粉磁心451は、ヒステリシス損失が特に抑制されたものとなる。
【0059】
なお、熱処理の温度や時間が前記下限値を下回ると、プレス成形による歪みの除去が不十分となり、圧粉磁心451のヒステリシス損失が増大するおそれがある。一方、熱処理の温度や時間が前記上限値を上回ると、圧粉体の結晶化が始まり、圧粉磁心451のヒステリシス損失が増大するおそれがある。
また、熱処理を行う雰囲気は、前述したように、非還元性雰囲気中とされるが、この非還元性雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性雰囲気、大気(空気)、酸素ガスのような酸化性雰囲気等が挙げられる。
以上のようにして、圧粉磁心451を作製することができる。
【0060】
このような方法で製造した圧粉磁心451を備えていることにより、昇圧回路4は、下記のような優れた性能(効果)を発揮する。
まず、前述したように、低鉄損のリアクトル45(圧粉磁心451)を用いることにより、通電時における昇圧回路4の発熱量を小さくすることができる。
また、圧粉磁心451が、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末4510を有することにより、圧粉磁心451の小型化を図ることができる。
【0061】
このような性能を有する昇圧回路4は、ケース6内に収納されても高い信頼性を発揮し得るものとなる。すなわち、昇圧回路4の発熱量が小さいため、昇圧回路4がケース6内に収納されたことによって放熱性が低下したとしても、ケース6内の温度上昇を抑制することができる。これにより、昇圧回路4をケース6内に収納しても、電池2、リレー3、昇圧回路4および制御部5が、熱による影響で故障したり、機能が低下したりするのを確実に防止することができる。
【0062】
また、圧粉磁心451が小さければ、昇圧回路4全体の小型化を図ることができる。これにより、昇圧回路4をケース6内に容易に収納することができる。その結果、ケース6のサイズ、ひいては電池システム1の小型化を図ることができ、電池システム1の可搬性、実装容易性を高めることができる。
また、圧粉磁心451は、リアクトル45の導線(コイル)452に200Aの直流を重畳したときのインダクタンスが、直流を重畳しなかったときのインダクタンスの20%以上であるのが好ましい。このような直流磁気特性を示す圧粉磁心451は、高電流の直流重畳に対して安定したインダクタンスを示すものであり、直流重畳特性に優れたものとなる。したがって、このような圧粉磁心451を備えた昇圧回路4は、高電流であっても、確実に昇圧可能なものとなる。
【0063】
また、圧粉磁心451は、リアクトル45の導線(コイル)452に100kHzの交流を印加したときの透磁率が、50Hzの交流を印加したときの透磁率の70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。このような交流磁気特性を示す圧粉磁心451は、低周波から高周波まで安定した透磁率を示すものとなる。したがって、このような圧粉磁心451を備えた昇圧回路4では、スイッチング周波数の設定値の幅を広くしても、確実に昇圧することができる。
【0064】
また、リアクトル45のインダクタンスは、好ましくは0.01〜5mH程度とされる。このような大きなインダクタンスのリアクトル45であれば、例えば、昇圧回路4を、ハイブリッド自動車の車両駆動用モータに電力を供給する電池システム1内に設けられる昇圧回路に適用した場合、より大電力を車両駆動用モータに供給することができ、ハイブリッド自動車の走行性能を高めることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、圧粉磁心451の形状がトロイダル形状である場合について説明したが、これに限定されず、圧粉磁心451の形状は、例えば、平面視で、楕円形、長円形のような閉磁路形状のほか、略I字状、略T字状、略E字状、略U字状等の形状であってもよい。
また、本実施形態では、圧粉磁心451の全体が一体的に成形されている場合について説明したが、圧粉磁心451は、複数個に分割されていて、これらが互いに接触または接着されたものでもよい。
この場合、例えば、2個の略U字状の磁心または2個の略E字状の磁心を、リング状になるように、または、8の字状になるように、それぞれ組み合わせることにより、閉磁路を形成するのが好ましい。このようにすれば、磁束が漏れ出るのを抑制することができ、圧粉磁心451の鉄損の低減を図ることができる。
【0066】
次に、昇圧回路4の動作(作用)について説明する。
図5は、図2に示す昇圧回路の動作原理を説明するための図である。
図5に示す昇圧回路4で、電池2の電圧Vを昇圧して負荷Lに印加する場合、まず、スイッチング素子42を、所定の周波数でONとOFFとを繰り返すように操作する。
まず、スイッチング素子42をONにすると、図5(a)に示すように、昇圧回路4の正極側ライン401と正極側ライン402とが短絡し、リアクトル45を流れる電流が急激に立ち上がる。この電流は、リアクトル45に、逆方向への電流を増加させるように、逆起電力Vを誘起する。これにより、リアクトル45にエネルギーが蓄積される。
【0067】
このタイミングで、スイッチング素子42をOFFすると、図5(b)に示すように、リアクトル45に蓄積されたエネルギーが、負荷Lに供給される。この際、リアクトル45に誘起された逆起電力Vは、電池2の電圧Vに加わることとなるため、負荷Lに印加される電圧は、電池2の電圧Vより、リアクトル45に誘起された逆起電力Vの分だけ高い電圧V+Vとなる。
また、それとともに、電圧V+Vで、コンデンサ43が充電される。
その後、再び、スイッチング素子42をONにすると、リアクトル45に流れる電流が再び急激に立ち上がり、リアクトル45にエネルギーが蓄積される。
また、それとともに、図5(c)に示すように、コンデンサ43に充電されたエネルギーが、負荷Lに供給される。これにより、負荷Lには、電圧V+Vが印加される。
【0068】
以上のようにして、スイッチング素子42を所定の周波数でON/OFFすると、負荷Lには、常時、電池2の電圧Vを昇圧した電圧V+Vが印加されることとなる。なお、スイッチング素子42をON/OFFするための信号は、制御部5から供給される。
また、昇圧回路4において、スイッチング素子42のONとOFFとを繰り返す周波数、すなわち、スイッチング周波数)は、好ましくは5〜100kHzとされる。このような高い周波数でスイッチング素子42をON/OFFすると、リアクトル45の圧粉磁心451には、短時間で変化する磁束が生じることとなる。
【0069】
このような磁束の短時間での変化は、従来のリアクトルでは、磁心に大きな渦電流を発生させ、この渦電流によるジュール熱によって磁心の発熱を招いていた。そして、磁心の温度が高温になると、磁心の磁気特性が低下するばかりでなく、磁心が変質・劣化し、リアクトルとしての機能が損なわれるという問題が発生していた。
これに対し、本発明では、前述したように、リアクトル45の圧粉磁心451を、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末4510をバインダ4511で結着してなる加圧成形体で構成することとした(図3参照)。
【0070】
このような圧粉磁心451では、軟磁性粉末4510の各粒子間の絶縁を確保したことと、軟磁性粉末4510の比抵抗が小さいことにより、たとえ前述したような高い周波数で使用されたとしても、渦電流損失によるジュール熱の発生を確実に抑制することができる。その結果、圧粉磁心451の温度上昇を確実に抑制することができる。
また、スイッチング周波数を前述のような範囲に設定することにより、電流の制御を高速かつ高精度に行うことができる。これにより、昇圧回路4の昇圧比の調整を、より高速かつ高精度に行うことができるようになるため、高性能の電池システム1が得られる。
なお、スイッチング素子42を開閉する際の周波数は、好ましくは20〜50kHz程度とされる。
【0071】
また、スイッチング周波数が前記範囲のように大きいと、ON時間が短くなり、圧粉磁心451における磁束密度の変化量も小さくなる。そして、圧粉磁心451のヒステリシス損失を低減することができる。したがって、これらの作用により、昇圧回路4の無駄な電力消費を低減することができる。
以上のように、圧粉磁心451は、スイッチング周波数を高くしても、渦電流損失およびヒステリシス損失が著しく増大するのを防止することができる。すなわち、圧粉磁心451は、鉄損の小さいものとなる。
【0072】
ここで、図6は、圧粉磁心451と、Fe−Si系の結晶金属材料粉末で構成された圧粉磁心(従来の磁心)と、珪素鋼板で構成された磁心(従来の磁心)とについて、印加する交流の周波数に対する各磁心の鉄損を示すグラフである。
図6によれば、特に高い周波数領域において、圧粉磁心451の鉄損が、従来の磁心に比べて著しく小さくなっていることが認められる。
【0073】
ところで、スイッチング素子42を前述したような周波数で開閉したとき、リアクトル45に流れる電流の波形は、直流電流の波形に、前記周波数でON/OFFしたときの高周波リップルが重畳した波形となる。
ここで、図7(a)は、図2に示す昇圧回路4が備えるスイッチング素子42を前記範囲の周波数で開閉したときに、リアクトル45に流れる電流波形の一例を示している。
また、図7(b)は、図2に示すリアクトル45を、複数枚のアモルファスリボンを積層することにより形成した磁心を備えたリアクトルで置き換えた昇圧回路(従来の昇圧回路)のスイッチング素子を、前記範囲の周波数で開閉したときに、リアクトル45に流れる電流波形の一例を示している。
【0074】
このうち、従来の昇圧回路の場合、昇圧回路4を流れる平均電流が大きければ、すなわち、負荷が重負荷であれば、図7(b)に示すように、リアクトルに流れる電流は途切れることなく流れ続ける。これに対し、昇圧回路4が流れる平均電流が小さい場合、すなわち、負荷が軽負荷であれば、リアクトルに流れる電流が、図7(b)に示すように、一時的に0になる時間帯が生じる。
リアクトルに流れる電流が、このような断続的な電流になると、従来の昇圧回路では間欠発振モードになってしまい、安定的に昇圧することができないという問題があった。
【0075】
これに対し、図7(a)に示す昇圧回路の場合、昇圧回路4を流れる平均電流の大きさによらず、すなわち、負荷が重負荷および軽負荷にかかわらず、リアクトル45に流れる電流は途切れることなく流れ続けることができる。これは、軟磁性粉末4510を含む圧粉磁心451を有するリアクトル45では、負荷が軽くなるにつれて、そのインダクタンスが大きくなる現象が発現するためである。リアクトル45のインダクタンスが大きくなると、リアクトル45に流れる電流の波形に重畳していた高周波リップルの高さが低くなる。このため、電流が一時的に0になる時間帯がなくなって、昇圧回路4は連続発振モードを維持することができる。
したがって、昇圧回路4では、電池2の電圧を、連続発振モードで昇圧し、負荷に対して安定的かつ連続的に高電圧を印加することができる。
なお、上記の重負荷とは、例えば、負荷の最大負荷の50%以上のことを言い、上記の軽負荷とは、例えば、負荷の最大負荷の50%未満のことを言う。
【0076】
また、スイッチング素子42を開閉する際の周波数を、前述したような比較的高い周波数に設定すれば、スイッチング素子42のON時間およびOFF時間をそれぞれ短くすることができ、それに伴って高周波リップルの時間幅を小さくすることができる。これにより、高周波リップルの高さが小さくなる。このような作用によっても、昇圧回路4が間欠発振モードに移行するのが防止され、連続発振モードを確実に維持することができる。
【0077】
なお、スイッチング素子42を開閉する際の周波数(スイッチング周波数)が、前記下限値を下回った場合、昇圧回路4が間欠発振モードになるおそれがある。一方、スイッチング周波数が前記上限値を上回った場合、鉄損が著しく増大し、リアクトル45の温度上昇が顕著になるおそれがある。したがって、スイッチング周波数が前記範囲内であれば、昇圧回路4が間欠発振モードになるのを防止しつつ、リアクトル45の温度上昇を最小限に抑えることができる。
【0078】
また、このようなスイッチング素子42の周波数と高周波リップルの高さとの関係を考慮すると、昇圧回路4では、軽負荷のときに、リアクトル45のインダクタンスが大きくなり、間欠発振モードになり難くなるので、その分、スイッチング素子42を開閉する際の周波数を低下させることもできる。これにより、圧粉磁心451に発生する渦電流損失を低減することができる。その結果、昇圧回路4の効率を高め、消費電力の低減を図るとともに、圧粉磁心451の温度上昇を抑制することができる。
【0079】
また、スイッチング素子42を開閉する際のONデューティは、95%以下に設定するのが好ましく、90%以下に設定するのがより好ましい。昇圧回路4は、チョッパ方式の昇圧回路であるため、スイッチング素子42を開閉する際のONデューティに応じて、昇圧比を制御することができる。そして、昇圧回路4では、スイッチング素子42を開閉する際のONデューティを前記範囲のような広い範囲に設定しても、安定的に昇圧を行うことができる。すなわち、電池2の電圧を、より幅広い昇圧比で安定的に昇圧することができる。その結果、幅広い電圧を出力し得る電池システム1が得られる。
なお、前記ONデューティが前記上限値を上回った場合、スイッチング素子42を流れる電流量が大きい場合には、スイッチング素子42をONからOFFに切り替えた際に、電流を確実に遮断することができなくなるおそれがある。
【0080】
また、ONデューティを0%に設定した場合、昇圧回路4の昇圧比は0となり、実質的に昇圧機能が発現されない。
また、昇圧回路4は、電圧が100V以上であるような高電圧を発生させる電池2に接続されて使用されるのが好ましい。すなわち、電池2の電圧は、100V以上であるのが好ましい。これにより、高電圧の出力が可能な電池システム1が得られる。その結果、電池システム1を、例えばハイブリッド自動車のような高電圧を必要とする機器に組み込むことが可能になり、その用途の拡大を図ることができる。
【0081】
ここで、従来の昇圧回路では、電池2の電圧を前記範囲のように高くした場合、渦電流が大きくなるため、渦電流損失が著しく増大するという問題があった。このため、例えば、珪素鋼板のように、複数枚の金属板を積層して形成された従来の磁心では、金属板の厚さを薄くすることによって渦電流損失を低減する試みがなされていた。しかしながら、金属板の機械的強度および加工技術の限界から、金属板の厚さを十分に薄くすることができなかった。このため、珪素鋼板で構成された磁心に、前記範囲のような高電圧を印加した場合、リアクトルが極めて高温になってしまうという問題があった。
【0082】
リアクトルが高温になると、磁心の磁気特性が著しく低下するとともに、磁心中のバインダが変質・劣化してしまい、磁心としての機能が損なわれる。
このような問題点を考慮して、従来の昇圧回路では、定期的に通電を止めることによって、リアクトルの温度が耐熱温度以上にならないよう制御されていた。このため、従来の昇圧回路では、時間的に連続して昇圧を行うことができなかった。
【0083】
これに対し、昇圧回路4では、前述したように、圧粉磁心451の作用により鉄損を低減することができる。このため、前記範囲のような高電圧で使用されても、リアクトル45の温度が著しく上昇するのを防止することができる。その結果、昇圧回路4では、通電を止めることなく、時間的に連続して昇圧を行うことができる。
なお、電池2の電圧は、好ましくは150V以上とされる。また、電池2の電圧の上限値は、特に限定されないが、好ましくは1000V以下とされる。
【0084】
また、昇圧回路4によれば、通電中のリアクトル45の温度を、好ましくは−40℃以上150℃以下に維持することができ、より好ましくは0℃以上100℃以下に維持することができる。リアクトル45の温度を前記範囲内に維持するようにすれば、たとえ昇圧回路4をケース6内に収納したとしても、圧粉磁心451の磁気特性が著しく低下するのを防止するとともに、熱による圧粉磁心451の変質・劣化を確実に防止することができる。そして、昇圧回路4は、通電を定期的に休止する必要がなくなり、電池2の電圧を、時間的に連続して昇圧することができる。
すなわち、このような昇圧回路4を用いることによってはじめて、昇圧回路4をケース6内に収納するとともに、電池2の電圧を時間的に連続して昇圧可能な電池システム1を構築することができる。
【0085】
以上説明したような電池システム1は、電池2と昇圧回路4とがケース6内に一体的に収納されているため、電池システム1は、優れた可搬性を有するものとなる。
また、電池システム1を機器に組み込む(実装する)場合、機器にケース6を固定しさえすれば、電池2や昇圧回路4等を簡単に組み込むことができる。すなわち、電池システム1は、実装容易性に優れたものである。
なお、昇圧回路は、図8に示すようなノイズフィルタを備えていてもよい。
【0086】
図8は、本発明の電池システムが備える昇圧回路の他の構成例を示す回路図である。
図8に示す昇圧回路4’は、図2に示す昇圧回路4の電池2側に、ノイズフィルタ8を追加してなる回路である。
以下、ノイズフィルタ8について詳述する。
このようなノイズフィルタ8は、2つのコンデンサ81、82と、コモンモードチョークコイル83と、ノーマルモードチョークコイル84とを有している。
【0087】
このうち、2つのコンデンサ81、82は、電池2と並列に接続されている。
また、コモンモードチョークコイル83は、2つのコンデンサ81、82の電池2側に、電池2と並列に接続されている。
さらに、ノーマルモードチョークコイル84は、正極側ライン401のうち、コンデンサ81とコンデンサ82との間に直列に接続されている。
このようなノイズフィルタ8は、電池2から出力される電流のノイズを除去するものである。
【0088】
そして、昇圧回路4’がノイズフィルタ8を備えていることにより、昇圧回路4’は、例えば、電池2からスパイク成分を含む電流が供給された場合でも、このスパイク成分によってスイッチング素子42が破壊されたり、昇圧回路4’の発振が不安定になるのを防止することができる。また、図8に示す構成のノイズフィルタ8によれば、簡単な構成で、確実なフィルタリング作用を示す。
以上説明したような電池システムは、例えば、ハイブリッド自動車、燃料電池車のような各種自動車、電車、電動自転車、航空機、船舶、エレベータ、フォークリフト、工作機械、人工衛星、太陽光発電システム、コージェネレーションシステム、自家発電装置等の機器に組み込むことができる。
【0089】
<ハイブリッド自動車>
ここでは、電池システム1を組み込む機器の一例として、電池システム1を備えるハイブリッド自動車について説明する。
図9は、電池システム1を備えるハイブリッド自動車の実施形態を示す概略図(平面図)である。なお、ハイブリッド自動車とは、駆動源として内燃機関(エンジン)と、電気モータとを併用することにより、燃料の消費率を低減し得る自動車である。
図9に示すハイブリッド自動車200は、電池システム1と、2つの前輪201、201と、これらを連結する車軸203と、2つの後輪202、202と、これらを連結する車軸204とを有している。
【0090】
また、ハイブリッド自動車200は、それぞれ車両前部に設けられた、電池システム1の出力先であるインバータ210と、車両駆動用モータ220と、エンジン230とを有している。そして、車両駆動用モータ220およびエンジン230の駆動力は、ギア240を介して、車軸203に伝達される。これにより、ハイブリッド自動車200が駆動される。
ここで、本実施形態では、電池システム1がハイブリッド自動車200の車両後部に設けられている。そして、電池システム1の出力は、配線260と車両前部にインバータ210とを介して、車両駆動用モータ220に供給されるよう構成されている。
【0091】
また、ハイブリッド自動車200は、ECU(電子式制御装置:Electronic Control Unit)250を有している。このECU250は、インバータ210およびエンジン230に電気的に接続されており、ハイブリッド自動車200の車両駆動用モータ220の駆動を制御する。
また、ECU250は、電池システム1の制御部5と電気的に接続されている。これにより、電池システム1の出力を、ECU250によって制御することが可能である。
【0092】
このようなハイブリッド自動車200では、走行状態やアクセルの開度等の情報に基づいて、ECU250から、電池システム1の制御部5を介して、電池システム1の出力電圧等を制御することができる。これにより、ECU250によって、エンジン230の出力と車両駆動用モータ220の出力とを協調して制御することができる。このため、エンジン230と車両駆動用モータ220のそれぞれの特性を活かし、両者の駆動力の配分を最適化することによって、ハイブリッド自動車200の燃料消費率の低減を図ることができる。
【0093】
ところで、電池システム1では、負荷の大きさ、すなわち、本実施形態では車両駆動用モータ220が発生すべき出力の大きさに応じて、求められる電圧が異なる。具体的には、電池システム1が出力する電圧は、ハイブリッド自動車200の車種や設計仕様によって異なる。このため、従来では、新型のハイブリッド自動車を開発するたびに、自動車メーカーでは、電池の種類を変えたり、昇圧回路の設計を変更したりしていた。このため、電池の調達や昇圧回路の設計変更に多大な手間とコストを要していた。
【0094】
これに対し、本発明の電池システムでは、車両駆動用モータ220が発生すべき出力の大きさに応じて、電池システム1の電圧を電気的に設定しさえすれば、この車両駆動用モータ220に電力を供給する電源として、電池システム1を簡単に最適化することができる。これにより、本発明の電池システムは、ハイブリッド自動車200に、車種や設計仕様を問わず搭載することができる。その結果、電池の調達や昇圧回路の設計変更に要していた手間やコストを削減し、ハイブリッド自動車200の製造コストの大幅な削減を図ることができる。
【0095】
また、電池2と昇圧回路4とを同一のケース6内に同梱したことから、必然的に、電池2と昇圧回路4との間の配線7の長さを短くすることができる。これにより、配線7の重量を抑え、ハイブリッド自動車200の車両重量を減少させることができる。
さらに、昇圧回路4をケース6内に収納したことにより、圧粉磁心451からの磁束の漏れや、圧粉磁心451から発生する騒音が、ケース6の外部に及ぶのを防止することができる。
【0096】
また、電池システム1が備える昇圧回路4は、前述したように、通電を止めることなく、電池2の電圧を時間的に連続して昇圧することができる。このため、例えば、車両駆動用モータ220が長時間にわたって高出力を連続して発生させる必要がある状況でも、電池システム1によれば、車両駆動用モータ220に十分な電力を供給することができる。
さらに、電池システム1によれば、車両駆動用モータ220を低出力で駆動する場合、すなわち、軽負荷に対して電力供給を行う場合では、昇圧回路4が間欠発振モードに陥ることなく、安定的に駆動することができる。
以上により、電池システム1によれば、ハイブリッド自動車200の走行性能をより高めることができる。
【0097】
ここで、従来は、ハイブリッド自動車において、電池と昇圧回路とが別々に配置されていた。例えば、車両後部に電池が設けられ、車両前部に昇圧回路が設けられる例が多かった。このため、電池と昇圧回路との間の配線長さが必然的に長くなり、車両重量の増大を招いていた。また、この配線に流れる電圧は昇圧前の低い電圧であるため、外径の大きな配線を用いる必要があり、車両重量のさらなる増大を招いていた。
また、電池と昇圧回路との間にノイズを含む電流が流れることになるため、このノイズが、配線の途中に接続された補機類や、補機類向けに電圧を降圧するためのコンバータに悪影響を及ぼしていた。
【0098】
これに対し、電池システム1によれば、昇圧回路4においてノイズが除去または抑制されるため、配線260にノイズを含む電流が流れるのを抑制することができる。その結果、配線260の途中に接続された補機類(図示せず)やコンバータ(図示せず)が、ノイズの影響によって故障するのを確実に防止することができる。
また、昇圧回路4を介することにより、補機類やコンバータに印加する電圧のバラツキを抑制することができる。これにより、補機類やコンバータを安定に動作させることができる。
また、配線260には、電池2の電圧を昇圧した後の高電圧の電流が流れるため、外径の小さい配線260を用いても、損失の増加を防止することができる。したがって、外径が小さくなった分だけ、配線260の重量を削減することができる。
【0099】
また、電池システム1によれば、電池2と昇圧回路4とをケース6内に同梱したことから、従来、車両前部(例えば、エンジンルーム内)に設けられていた昇圧回路を、車両後部に設けることができるようになる。これにより、昇圧回路4の分だけ、エンジンルーム内のスペースを節約することができる。その結果、ハイブリッド自動車200のエンジン230や車両駆動用モータ220の設計自由度を高めることができる。
【0100】
また、これにより、昇圧回路4の分だけ、ハイブリッド自動車200の重心を後方に移動することができる。その結果、ハイブリッド自動車200の駆動性能をより高めることができる。
さらに、エンジン230のような発熱量の大きな機器から、昇圧回路4を離間させることができるので、昇圧回路4の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0101】
以上、本発明の電池システムについて、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の電池システムが備える昇圧回路は、前記実施形態にかかる回路構成に加え、任意の電子部品(ダイオード、コンデンサ、コイル、スイッチング素子等)を、1つ以上追加されたものであってもよい。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.圧粉磁心の成形条件の評価
1.1 圧粉磁心の作製
(サンプル1A)
<1>まず、Si:5.3重量%、B:3重量%、およびFe:残部と、不可避不純物とを含む組成であり、粒径が53μm以下のFe−Si−B系アモルファス磁性粉末(軟磁性粉末)を用意し、このアモルファス磁性粉末の表面を酸化ケイ素(SiO)で被覆する処理を行った。
【0103】
<2>次いで、処理後のアモルファス磁性粉末を、プレス成形装置のキャビティ内に投入し、常温にてプレス成形を行った。これにより、内径φ20mm×外径φ30mm×厚さ(高さ)5mmのトロイダル形状をなす試験片(圧粉体)を作製した。なお、試験片の密度は、4.8Mg/mであった。
<3>次いで、得られた試験片に対し、大気雰囲気中で熱処理を施した。これにより、圧粉磁心を得た。なお、熱処理の条件は、450℃で20分間とした。
<4>次いで、得られた圧粉磁心に、導線を巻き回し、サンプル1Aのリアクトルを得た。
【0104】
(サンプル2A〜5A)
前記サンプル1Aの製造時に、試験片の密度が、それぞれ、5.0Mg/m、5.5Mg/m、6.0Mg/m、6.2Mg/mとなるように成形条件を設定した以外は、前記サンプル1Aと同様にして、サンプル2A〜5Aのリアクトルを得た。
【0105】
1.2 成形条件の評価
サンプル1A〜5Aのリアクトルについて、それぞれの磁化曲線(B−H特性)を評価した。評価結果を図10に示す。
図10から明らかなように、サンプル2A〜4Aのリアクトルは、80000A/mの高磁場においても、磁束密度が飽和せず、低磁場から高磁場まで安定した透磁率を示した。
一方、サンプル1Aのリアクトルは、透磁率が全体的に低くなり過ぎた。
また、サンプル5Aのリアクトルは、低磁場側での透磁率は高くなるものの、高磁場側では、磁束密度が飽和して透磁率が小さくなる。
【0106】
2.リアクトルの磁気特性の評価
2.1 リアクトルの作製
(サンプル1B)
<1>まず、Si:5.3重量%、B:3重量%、およびFe:残部と、不可避不純物とを含む組成であり、粒径が53μm以下のFe−Si−B系アモルファス磁性粉末(軟磁性粉末)を用意し、このアモルファス磁性粉末の表面を酸化ケイ素(SiO)で被覆する処理を行った。
【0107】
<2>次いで、処理後のアモルファス磁性粉末を、プレス成形装置のキャビティ内に投入し、常温にてプレス成形を行った。これにより、内径φ20mm×外径φ30mm×厚さ(高さ)5mmのトロイダル形状をなす試験片(圧粉体)を作製した。なお、試験片の密度は、5.2Mg/mであった。
<3>次いで、得られた試験片に対し、大気雰囲気中で熱処理を施した。これにより、圧粉磁心を得た。なお、熱処理の条件は、450℃で20分間とした。
<4>次いで、得られた圧粉磁心に、導線を巻き回し、サンプル1Bのリアクトルを得た。
【0108】
(サンプル2B〜7B)
Fe−Si−B系アモルファス磁性粉末として、表1に示す粒径の粉末をそれぞれ用い、圧粉体の密度が表1に示す値になるように、プレス成形の荷重を調整してそれぞれプレス成形をした以外は、前記サンプル1Bの場合と同様にして、サンプル2B〜7Bのリアクトルを得た。
【0109】
【表1】

【0110】
(サンプル8B)
Fe−Si系の結晶質磁性粉末を用いた以外は、前記サンプル5Bの場合と同様にして、サンプル8Bのリアクトルを得た。
(サンプル9B)
圧粉磁心に代えて、珪素鋼板の磁心を用いた以外は、前記サンプル5Bの場合と同様にして、サンプル9Bのリアクトルを得た。
【0111】
2.2 磁気特性の評価
2.2.1 直流重畳特性の評価
次に、作製したサンプル1B〜9Bのリアクトルに対し、直流重畳特性を測定した。
この直流重畳特性の測定では、まず、各リアクトルのコイル(導線)に100kHzの交流を印加するとともに、200Aの直流電流を重畳した。そして、各リアクトルのインダクタンスを測定することにより、直流重畳特性を評価した。
評価結果を図11のグラフに示す。なお、図11のグラフの横軸は、直流重畳電流を示し、縦軸は、直流電流を重畳しない場合のインダクタンスを100%としたときの、インダクタンスの変化率を示している。
【0112】
図11から明らかなように、比較例に相当するサンプル8B〜9Bのリアクトルでは、それぞれ、コイルに200Aの直流重畳電流を流したときのインダクタンスが、直流電流を重畳しない場合の5〜10%程度と低かった。これに対し、実施例に相当するサンプル1B〜7Bのリアクトルでは、それぞれ、コイルに200Aの直流重畳電流を流したときのインダクタンスが、直流電流を重畳しない場合の15%以上と高かった。特に、サンプル1B〜6Bのリアクトルでは、それぞれ、20%以上であった。したがって、サンプル1B〜7Bのリアクトルは、低磁場から高磁場まで優れた直流重畳特性を示すことが認められた。
また、サンプル1B〜7Bにおいては、アモルファス磁性粉末の粒径が小さいほど、また、圧粉磁心の密度が低いほど、それぞれ高電流側でのインダクタンスの低下率が小さく、インダクタンスの安定性がより優れていた。
【0113】
2.2.2 透磁率−周波数特性の評価
次に、作製したサンプル1B〜9Bのリアクトルに対し、透磁率−周波数特性を測定した。
この透磁率−周波数特性の測定では、各リアクトルのコイルに印加する交流の周波数を変化させたときの透磁率の変化を測定した。
測定結果を図12のグラフに示す。なお、図12のグラフの横軸は、コイルに印加する交流の周波数を示し、縦軸は、コイルに印加する交流の周波数が50Hzのときの透磁率を100%としたときの、透磁率の変化率を示している。
【0114】
図12から明らかなように、比較例に相当するサンプル8B〜9Bのリアクトルでは、周波数が1kHzを超えると透磁率が急激に低下した。これに対し、実施例に相当するサンプル1B〜7Bのリアクトルでは、それぞれ、周波数が100kHzと高くても、透磁率は50Hzのときの70%以上であった。特に、サンプル1B〜6Bのリアクトルでは、それぞれ、80%以上であった。
【0115】
したがって、サンプル1B〜7Bのリアクトルでは、低周波から高周波まで安定して高い透磁率を示すことが認められた。
また、サンプル1B〜7Bのうち、アモルファス磁性粉末の粒径が106μm以下であるリアクトル(サンプル1B〜4B)では、それぞれ、100kHzにおける透磁率が、50Hzにおける透磁率の98%以上と特に高い値を示した。
【0116】
3.電池システムの作製・評価
3.1 電池システムの作製
(実施例1)
次に、作製したサンプル1Bのリアクトルを、図8に示す回路中のリアクトルとして用いることにより、昇圧回路を得た。
また、得られた昇圧回路の入力側に電圧200Vのバッテリ(電池)を接続した。
これらの昇圧回路および電池を、ケース内に収納し、図1に示す電池システムを得た。
なお、スイッチング素子には、IGBTを用いた。
また、リアクトルのインダクタンスは、0.5mHであった。
さらに、ケースとして、アルミニウム製のケースを用いた。
【0117】
(実施例2〜7)
サンプル2B〜7Bのリアクトルを用いた以外は、それぞれ、前記実施例1と同様にして、電池システムを得た。
(比較例1〜2)
サンプル8B〜9Bのリアクトルを用いた以外は、それぞれ、前記実施例1と同様にして、電池システムを得た。
【0118】
3.2 電池システムの評価
次に、各実施例および各比較例で得られた電池システムの出力側にインバータと交流モータをこの順で接続した。そして、30kHzの繰り返し周波数でIGBTのON/OFFを行い、各電池システムにより交流モータを回転させることにより、各電池システムについて評価した。
なお、この評価は、リアクトルに流れる電流が20Aになるよう運転した場合(重負荷)と、3Aになるよう運転した場合(軽負荷)とで、交流モータの回転の安定性と、リアクトルの表面温度とについて評価した。
【0119】
その結果、各実施例で得られた電池システムでは、負荷の大きさによらず、交流モータを安定的に回転させることができた。また、運転中のリアクトルの表面温度は、いずれも150℃以下であった。特に、アモルファス磁性粉末の粒径が小さいほど、リアクトルの表面温度が低かった。
一方、各比較例で得られた電池システムでは、軽負荷のときに、交流モータの回転が不安定になった。また、運転中のリアクトルの表面温度が急激に上昇し、いずれも150℃を超えた。
通電終了後、リアクトルを確認したところ、磁心に変色が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の電池システムの実施形態を示す概略図(斜視図)である。
【図2】本発明の電池システムが備える昇圧回路の実施形態を示す回路図である。
【図3】図2に示す昇圧回路が有するリアクトルを説明するための概略図である。
【図4】(a)アモルファス金属で構成された圧粉磁心と、(b)従来の圧粉磁心とにおける磁化曲線(B−H特性)とをそれぞれ示すグラフである。
【図5】図2に示す昇圧回路の動作原理を説明するための図である。
【図6】アモルファス金属で構成された圧粉磁心と、従来の圧粉磁心と、珪素鋼板で構成された従来の磁心とについて、印加する交流の周波数に対する各磁心の鉄損を示すグラフである。
【図7】(a)図2に示す昇圧回路のリアクトルに流れる電流波形の一例と、(b)図2に示すリアクトルを、複数枚のアモルファスリボンを積層してなる磁心を備えたリアクトルで置き換えた昇圧回路(従来の昇圧回路)のリアクトルに流れる電流波形の一例とをそれぞれ示すグラフである。
【図8】本発明の電池システムが備える昇圧回路の他の構成例を示す回路図である。
【図9】本発明の電池システムを有するハイブリッド自動車の実施形態を示す概略図(平面図)である。
【図10】サンプル1A〜5Aのリアクトルの各磁化曲線(B−H特性)を示すグラフである。
【図11】サンプル1B〜9Bのリアクトルの直流重畳特性を示すグラフである。
【図12】サンプル1B〜9Bのリアクトルの透磁率−周波数特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0121】
1……電池システム 2……電池 3……リレー 4……昇圧回路 401……正極側ライン 402……負極側ライン 42……スイッチング素子 425……コンデンサ 43……コンデンサ 44……ダイオード 45……リアクトル 451……圧粉磁心(コア) 4510……軟磁性粉末 4511……バインダ 452……導線(コイル) 5……制御部 6……ケース 61……コネクタ 611……雄コネクタ 612……雌コネクタ 7……配線 8……ノイズフィルタ 81、82……コンデンサ 83……コモンモードチョークコイル 84……ノーマルモードチョークコイル 200……ハイブリッド自動車 201……前輪 202……後輪 203、204……車軸 210……インバータ 220……車両駆動用モータ 230……エンジン 240……ギア 250……ECU 260……配線 L……負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
スイッチ、コンデンサ、ダイオードおよびリアクトルを備え、前記電池の電圧を昇圧する昇圧回路と、
筐体とを有し、
前記リアクトルの磁心は、アモルファス軟磁性粉末を、圧粉体密度が5.0〜6.0Mg/mになるように圧粉成形した後、非還元性雰囲気中において、400〜500℃の温度で10〜30分間の熱処理を施すことにより作製されたものであり、
前記電池および前記昇圧回路が、前記筐体内に一体的に収納されていることを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記昇圧回路は、昇圧比可変のチョッパ方式の昇圧回路である請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
さらに、前記筐体内に設けられ、前記スイッチの開閉動作を制御する機能を有する制御手段を有し、
該制御手段は、自発的に、または、当該電池システムの外部からの情報に基づいて、前記スイッチの開閉動作を制御することにより、前記昇圧回路の昇圧比を決定するよう構成されている請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
駆動用モータに交流電力を供給するインバータ部に接続して使用されるものであり、
前記制御手段は、前記駆動用モータが発生すべき出力に応じて、前記昇圧回路の昇圧比を決定するよう構成されている請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記アモルファス磁性粉末は、Fe−Si−B系アモルファス金属を主材料として構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の電池システム。
【請求項6】
前記アモルファス磁性粉末の粒径は、150μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の電池システム。
【請求項7】
前記磁心は、200Aの直流を重畳したときのインダクタンスが、直流を重畳しなかったときのインダクタンスの5〜20%となるものである請求項1ないし6のいずれかに記載の電池システム。
【請求項8】
前記磁心は、100kHzの交流を印加したときの透磁率が、50Hzの交流を印加したときの透磁率の70%以上となるものである請求項1ないし7のいずれかに記載の電池システム。
【請求項9】
前記電池の電圧を、時間的に連続して昇圧可能である請求項1ないし8のいずれかに記載の電池システム。
【請求項10】
前記スイッチを開閉する際の周波数を5〜100kHzに設定して使用される請求項1ないし9のいずれかに記載の電池システム。
【請求項11】
前記電池の電圧は、100V以上である請求項1ないし10のいずれかに記載の電池システム。
【請求項12】
前記スイッチを開閉する際のONデューティは、95%以下に設定される請求項1ないし11のいずれかに記載の電池システム。
【請求項13】
前記昇圧回路は、前記負荷の大きさによらず、前記直流電源の電圧を連続発振モードで昇圧可能になっている請求項1ないし12のいずれかに記載の電池システム。
【請求項14】
前記リアクトルのインダクタンスは、0.01〜5mHである請求項1ないし13のいずれかに記載の電池システム。
【請求項15】
前記リアクトルの通電中の温度が、−40℃以上150℃以下に維持される請求項1ないし14のいずれかに記載の電池システム。
【請求項16】
前記磁心は、トロイダル形状をなしている請求項1ないし15のいずれかに記載の電池システム。
【請求項17】
前記磁心は、全体を一体的に成形することにより作製されたものである請求項1ないし16のいずれかに記載の電池システム。
【請求項18】
前記筐体は、その少なくとも一部が金属材料で構成されている請求項1ないし17のいずれかに記載の電池システム。
【請求項19】
前記筐体は、前記昇圧回路から発生した熱を、前記筐体の外部に放出するためのヒートシンクの機能を有する請求項18に記載の電池システム。
【請求項20】
前記電池は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池である請求項1ないし19のいずれかに記載の電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−118553(P2009−118553A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285535(P2007−285535)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】