駆動力源回転数制御装置
【課題】加速要求時に車速変化にエンジン回転数を連動させるCVTを備えた車両において走行抵抗増加などで車両が減速してもドライバーに違和感を生じさせないようにする。
【解決手段】加速要求時に車速SPDが減速状態であると判定された場合(S228でNO)は、加速状態であると判定された場合(S228でYES)よりも、車速SPD変化(Dnoutcvt)に対して連動するエンジン回転数の低下を抑制している(S232,S234)。この低下抑制は、目標入力軸回転数NINLINEの変化勾配を設定することで車速SPDに対する連動を実行するに際し、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)の絶対値より、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)の絶対値を小さくすることで連動を鈍化することで行われている。このことにより加速要求時に減速状態となってもエンジン回転数の低下が少なくなり、車両減速を助長することがないのでドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【解決手段】加速要求時に車速SPDが減速状態であると判定された場合(S228でNO)は、加速状態であると判定された場合(S228でYES)よりも、車速SPD変化(Dnoutcvt)に対して連動するエンジン回転数の低下を抑制している(S232,S234)。この低下抑制は、目標入力軸回転数NINLINEの変化勾配を設定することで車速SPDに対する連動を実行するに際し、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)の絶対値より、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)の絶対値を小さくすることで連動を鈍化することで行われている。このことにより加速要求時に減速状態となってもエンジン回転数の低下が少なくなり、車両減速を助長することがないのでドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動力源の出力を無段変速機を介して走行駆動力として出力する車両において、加速要求時に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させる駆動力源回転数制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機として無段変速機を搭載している車両において、要求出力量に対して十分に高い加速感が得られるように、加速要求時に車速の上昇に連動して内燃機関などの回転駆動力源の出力回転数を高める装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、加速時目標入力軸回転速度NINLINE(回転駆動力源の目標出力回転数)は、車速変化補正量NIN(spd)にて補正されることにより、アクセル踏み込み量に変化がなくても車速spdの上昇に連動して上昇するように制御されている。
【特許文献1】特開2006−51842号公報(第12頁、図7−12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし路面勾配の増加などの走行抵抗上昇により、加速要求時にても車速が低下する場合がある。このように車速が低下すると、上述したごとく回転駆動力源の出力回転数は車速に連動しているため、目標出力回転数は車速変化補正量NIN(spd)により減少側に補正されて低下することになる。
【0004】
このように走行抵抗による減速に加えて回転駆動力源出力回転数の低下も生じることから、駆動力不足を生じて車両減速を助長してしまう。このことによりドライバーに違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させている無段変速機を備えた車両において、走行抵抗増加などにより車両が減速してもドライバーに違和感を生じさせないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の駆動力源回転数制御装置は、回転駆動力源の出力を無段変速機を介して走行駆動力として出力する車両において、加速要求時に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させる駆動力源回転数制御装置であって、加速要求時に車両が加速状態にあるか減速状態にあるかを判定する加減速状態判定手段と、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、回転駆動力源回転数の低下を抑制する回転駆動力源回転数変化設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
このように回転駆動力源回転数変化設定手段により、車速が減速状態にあると判定された場合は加速状態にあると判定された場合よりも、車速変化に連動させる回転駆動力源回転数の低下を抑制している。このことにより、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。このことによりドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0008】
請求項2に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合は加速状態にあると判定された場合よりも、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動を鈍化させることを特徴とする。
【0009】
このように回転駆動力源回転数の低下抑制は、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動を鈍化させることにより実現できる。このことにより加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなるので、駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。こうしてドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0010】
請求項3に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項2において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、車速変化に対する回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて加速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値より、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値を小さく設定することを特徴とする。
【0011】
車速が加速状態にあると判定された場合の回転駆動力源回転数の変化勾配絶対値より、減速状態にあると判定された場合の変化勾配絶対値を小さく設定していることにより、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。こうしてドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0012】
請求項4に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、車速変化に前記回転駆動力源回転数を連動させないことを特徴とする。
【0013】
このように減速状態においては車速変化に回転駆動力源回転数を連動させないことにしても良い。すなわち車速変化に対する変化勾配で言えば、この変化勾配を0としても良い。このことにより加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数は車速に連動した低下はしなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。このことによりドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0014】
請求項5に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には前記回転駆動力源回転数の下限を設けることを特徴とする。
【0015】
このように回転駆動力源回転数の低下抑制は、下限を設けることで実現しても良い。このことにより加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が下限により停止されるので、駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。こうしてドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0016】
請求項6に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動は、回転駆動力源の目標回転数を車速変化に対して連動させることにより実行され、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合に前記目標回転数の調節により前記回転駆動力源回転数の低下を抑制することを特徴とする。
【0017】
回転駆動力源の目標回転数を、車速変化に連動させることにより、実際に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させることができる。そしてこの目標回転数の調節により前記回転駆動力源回転数の低下を抑制することとができる。
【0018】
請求項7に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、回転駆動力源回転数を、車速変化と共に出力要求量変化にも連動させていることを特徴とする。
【0019】
尚、このように回転駆動力源回転数は、車速変化と共に出力要求量変化にも連動させることで、ドライバーの要求に応じた円滑な回転駆動力源の制御が可能となる。
請求項8に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記回転駆動力源は内燃機関であることを特徴とする。
【0020】
回転駆動力源としてはガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関を挙げることができる。このような内燃機関を搭載した車両において、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても内燃機関回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがなく、ドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0021】
請求項9に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜8のいずれかにおいて、出力要求量と車速とに基づいて算出された目標駆動力を達成するように無段変速機の目標入力軸回転数及び回転駆動力源の目標出力トルクを算出し、該目標入力軸回転数に基づき、前記無段変速機の変速比が制御されていることを特徴とする。
【0022】
このように無段変速機の変速比が制御されている車両において、上述したごとくの制御により、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても内燃機関回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがなく、ドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された車両において、ベルト式無段変速機(以下CVTと称する)2を利用した動力伝達機構を表すブロック図である。走行用の回転駆動力源として内燃機関4を備えている。内燃機関4としてはガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどが挙げられるが、ここではガソリンエンジン(以下エンジンと称する)4として説明する。
【0024】
エンジン4の出力は、トルクコンバータ6から前後進切換装置8、CVT2、減速歯車10を介して差動歯車装置12に伝達され、左右の駆動輪14L,14Rへ分配される。
CVT2は、その入力軸16に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ2aと、その出力軸18に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ2bと、これらの可変プーリ2a,2bのV溝に巻き掛けられた伝動ベルト2cとを備えている。この構成により伝動ベルト2cと可変プーリ2a,2bのV溝内壁面との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。可変プーリ2a,2bはそれぞれのV溝幅すなわち伝動ベルト2cの掛かり径を変更するための入力側油圧シリンダ2d及び出力側油圧シリンダ2eを備えている。この構成により油圧シリンダ2d,2eに対する作動油の給排量が油圧制御回路20にて調節されることで、両可変プーリ2a,2bにおける伝動ベルト2cの掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転数NI/出力軸回転数NO)を連続的に変化することが可能となっている。
【0025】
マイクロコンピュータを中心として構成されている電子制御ユニット(以下ECUと称する)22には、シフトレバー24の操作位置を検出する操作位置検出センサ26からの操作位置PS信号が入力されている。更にスロットルアクチュエータ28により駆動されるスロットル弁30の開度を検出するスロットルセンサ32からスロットル開度TAを表す信号、アクセルペダル34の開度を検出するアクセル操作量センサ36からのアクセル開度ACCPを表す信号(ドライバーの出力要求量を反映する信号)が入力されている。更にエンジン回転数センサ38からエンジン回転数NEを表す信号、車速センサ(出力軸回転数センサとして出力軸18の回転数NOの検出も兼ねる)40からの車速SPDを表す信号、入力軸16の入力軸回転数を検出する入力軸回転数センサ42からの入力軸回転数NIを表す信号が入力されている。
【0026】
これ以外に、ECU22は他のセンサ・スイッチ類からも信号を入力している。ここではCVT2内の作動油温度を表す信号、出力側可変プーリ2bのベルト挟圧力制御圧を表す信号、イグニションキーにより操作されるイグニションスイッチからのイグニションキーのオン操作を表す信号などである。
【0027】
ECU22は上述した検出データや内部メモリに記憶されているデータに基づいてプログラムに記載された演算処理を実行し、この演算結果に基づいて出力を実行している。ここでは好適な加速感及び燃費が得られるようにする車両のエンジン4の出力トルク制御及びCVT2の変速制御を実行している。この出力トルク制御では、予め記憶された関係からエンジン4の目標出力トルクTEが決定され、その目標出力トルクTEが得られるように、スロットル開度TAが調節されてエンジン4の出力トルクが制御される。変速制御では、予め記憶された関係から目標回転数NINTが決定され、その目標回転数NINTが実際の入力軸回転数NIと一致するように油圧制御回路20を作動させることにより、CVT2の変速比γが調節されている。
【0028】
この他、ECU22は、伝動ベルト2cを必要かつ十分な張力とするための挟圧力制御や、燃焼に必要な燃料量を各吸気ポートや各気筒内に供給するために燃料噴射弁4aの開弁時間を調節する燃料噴射制御などを実行している。
【0029】
ここでECU22が駆動力源回転数制御装置として実行する回転駆動力制御について説明する。図2はECU22が実行する目標値算出制御処理のフローチャートである。本処理は、一定の周期、例えば数十msの周期で繰り返し実行されるものである。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0030】
目標値算出制御処理(図2)が開始されると、まずアクセル操作状態判定のために、加速要求フラグFAがオンか否かが判定される(S102)。この加速要求フラグFAがオンであるときには、アクセルペダル34の操作状態が加速要求状態であると判定された場合を示している。
【0031】
加速要求フラグFA=オンであれば(S102でYES)、次に再加速要求フラグFAAがオンか否かが判定される(S104)。再加速要求フラグFAAがオンであるときには、アクセルペダル34の操作状態が再加速要求状態であると判定された場合を示している。
【0032】
再加速要求フラグFAA=オンでなければ(S104でNO)、次に減速要求フラグFBがオンか否かが判定される(S106)。減速要求フラグFBがオンであるときには、アクセルペダル34の操作状態が減速要求状態であると判定された場合を示している。
【0033】
これら加速要求フラグFA、再加速要求フラグFAA、減速要求フラグFBのオン・オフ設定は、割り込みなどにより並列的に実行される図3に示すフラグ設定処理によって実行される。
【0034】
フラグ設定処理(図3)について説明する。この処理では、まず次の3つの条件の論理積が判定される(S152)。
a.車速SPD(km/h)が予め設定された判定値A以上である。
【0035】
b.アクセル開度ACCP(%)が予め設定された判定値B以上である。
c.アクセル速度dACCP(%)が予め設定された判定値C以上である。
ここでアクセル速度dACCPは、単位時間当たりのアクセル開度ACCP変化量を表している。
【0036】
これらa.b.c.の全条件が成立していれば(S152でYES)、加速要求フラグFAがオンに設定される(S154)。
a.b.c.のいずれか1つでも条件が不成立である場合は(S152でNO)、車速SPDが予め設定された判定値Aよりも低いか、あるいはアクセル開度ACCPが予め設定された判定値(ここでは判定値Bよりも所定値D分低い値である「B−D」)よりも低いか否かが判定される(S156)。このいずれかの条件又は両条件が成立しているときは(S156でYES)、加速要求操作が終了したと判定されて加速要求フラグFAがオフに設定される(S158)。
【0037】
ステップS154又はステップS158の処理の後に、加速要求フラグFAがオンに設定されているか否かが判定される(S160)。加速要求フラグFA=オンであれば(S160でYES)、今回の制御周期が、加速要求フラグFAがオフからオンへ切り替えられたタイミングではないか否かが判定される(S162)。加速要求フラグFAがオフからオンへ切り替えられたタイミングではない場合には(S162でYES)、アクセル速度dACCPが予め設定された判定値E以上であり、かつ加速要求判定(S152)から時間F以上経過しているか否かが判定される(S164)。これら2つの条件が成立している場合には(S164でYES)、再加速要求フラグFAAがオンに設定される(S166)。しかしステップS162又はステップS164にてNOと判定された場合には、再加速要求フラグFAAがオフに設定される(S168)。
【0038】
前記ステップS156でNOの場合、あるいはステップS166又はステップS168の後に、アクセル速度dACCPが予め設定された判定値G(負の値)より低い状態が時間H以上継続したか、あるいはアクセル速度dACCPが予め設定された判定値I(<G)より低いか否かが判定される(S170)。このいずれかの条件が成立していると(S170でYES)、減速要求フラグFBがオンに設定される(S172)。いずれの条件も不成立であれば(S170でNO)、目標入力軸回転数NINLINEが過渡時の目標回転数NINT以上となっているか、あるいはアクセル開度ACCPが判定値(B−D)よりも低いか否かが判定される(S174)。このいずれかの条件が成立している場合は(S174でYES)、減速要求フラグFBがオフに設定される(S176)。いずれの条件も不成立であれば(S174でNO)、一旦本処理を出る。
【0039】
フラグ設定処理(図3)では上述したごとくの処理を周期的に繰り返すことにより各フラグFA,FAA,FBの設定を繰り返すことになる。
図2の説明に戻り、各フラグFA,FAA,FBの設定状態に基づいて、前述したステップS102〜S106の判定がなされることになる。まず加速要求フラグFAがオフである場合には(S102でNO)、図4の通常時目標値算出処理が実行される(S112)。
【0040】
通常時目標値算出処理(図4)では、まず、予め記憶されたマップMAPforceにより、式1に示すごとく、実際の車速SPD(出力軸18の回転数NOから算出)及びアクセル開度ACCPに基づいて通常時目標駆動力FORCEが算出される(S202)。
【0041】
[式1] FORCE ← MAPforce(ACCP,SPD)
この式1に示すマップMAPforceの関係は図5の特性曲線に示すごとくである。図5では目標駆動力FORCEを示す目標駆動力軸(縦軸)と車速SPDを示す車速軸(横軸)との直交二次元座標において、アクセル開度ACCPをパラメータとする双曲線状の複数本(図ではACCP1〜ACCP5)の特性曲線が並列的に設けられている。この内の実際のアクセル開度ACCPに対応する1本の特性曲線上において実際の車速SPDに対する目標駆動力軸上の値が実際の目標駆動力FORCEとして決定されることになる。
【0042】
次に式2により、上記目標駆動力FORCEと実際の車速SPDとに基づいて目標出力POWERが算出される(S204)。
[式2] POWER ← k1×FORCE×SPD
ここでk1は換算のための係数である。
【0043】
次にマップMAPninにより式3に示すごとく、上記通常時の目標出力POWERと実際の車速SPDとに基づいて通常時の目標入力軸回転数NIN(rpm)が算出される(S206)。
【0044】
[式3] NIN ← MAPnin( POWER,SPD)
尚、ここでは更に過渡時の目標回転数NINTにも通常時の目標入力軸回転数NINの値が設定される。
【0045】
この式3に示すマップMAPninの関係は、例えば図6の特性曲線に示されるごとくである。図6では、目標入力軸回転数軸(縦軸)と車速軸(横軸)との直交二次元座標上に、CVT2の最大変速比γmaxを示す線と最小変速比γminを示す線との間の扇状の領域内に、通常時目標出力POWERをパラメータとする複数本(図ではPOWER1〜POWER5)の特性曲線が並列的に設けられている。この内の実際の通常時目標駆動力POWERに対応する1本の特性曲線上において実際の車速SPDに対する目標入力軸回転数軸上の値が実際の目標入力軸回転数NINとして決定されることになる。尚、上記特性曲線POWER1〜POWER5は、エンジン4の作動点がエンジン回転数NEの上昇に伴って最適燃費曲線に沿って移動するように設定されている。
【0046】
次に式4により、上記通常時の目標出力POWERと上記通常時目標入力軸回転数NINとに基づいて目標出力トルクTEが算出される(S208)。
[式4] TE ← k2×POWER/NIN
ここでk2は換算のための係数である。
【0047】
このように通常時目標値算出処理(図4:S112)が終了すると、一旦、目標値算出制御処理(図2)を出る。以後、加速要求フラグFAがオフである限り(S102でNO)、通常時目標値算出処理(S112:図4)が繰り返し実行されることになる。
【0048】
加速要求フラグFAがオン(S102でYES)、再加速要求フラグFAAがオフ(S104でNO)、減速要求フラグFBがオフ(S106でNO)、更に車両走行路面が摩擦係数の低い走行路面(低μ路)でない場合(S108でNO)は、図7に示す加速要求時目標値算出処理が実行される(S110)。尚、低μ路である場合には(S108でYES)、加速時の制御は禁止される(S118)。
【0049】
加速要求時目標値算出処理(図7)について説明する。まず式5により車速変化補正値FORCEspd(車速積分項)が算出される(S222)。
[式5] FORCEspd ← 前回FORCEspd+α(SPD0,ACCP)×Dnoutcvt
ここで初期値としての車速SPD0は、加速要求フラグFAがオフ→オン切り替え時での車速である。すなわち車速変化補正値FORCEspdは、傾斜係数α(SPD0,ACCP)及び車速変化分Dnoutcvtに基づいて逐次積算(積分)的に算出される。この傾斜係数α(SPD0,ACCP)は加速要求判定が行われた直後の車速SPD0及びアクセル開度ACCPの関数であり、加速要求判定が行われた直後の車速SPD0が高くなるほど減少し、アクセル開度ACCPが大きくなるほど減少するように決定されている。車速変化分Dnoutcvtは出力軸18の回転数NO(車速SPDに比例)の一周期毎の変化であり、一周期単位での車両の加速度に対応した値である。
【0050】
そして式6に示すごとく、加速要求時目標駆動力FORCEACLが、加速要求初期駆動力値FORCE0、アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)、車速変化補正値FORCEspdに基づいて算出される(S224)。
【0051】
[式6] FORCEACL←FORCE0+ force(ACCP,SPD)+ FORCEspd
ここで加速要求初期駆動力値FORCE0は、例えば車両の走行抵抗に見合った前記図5の定速走行線(2点鎖線)上での値であり、加速要求判定直前の車速SPDに対応する値である。アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)は、加速要求時のアクセル開度(増量分)ACCP及び車速SPDに対応する値であり、図5及びそれを拡大した図8では、縦方向の破線の矢印の長さに対応する値である。図5から明らかなように、アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)は、加速要求時のアクセル開度ACCPが大きいほど増加し、加速要求時の車速SPDが高いほど減少する。
【0052】
前記式5にて算出される車速変化補正値FORCEspdは、加速要求時からの車速変化に応じて上記アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)をその初期値から一定に維持あるいは減少させるための項である。
【0053】
この結果、図5及びそれを拡大した図8において、実線の矢印に示すように、加速要求時目標駆動力FORCEACLがその初期値から一定に維持されるか、その初期値から所定の割合で減少させられる。
【0054】
次に、通常時の式2と同様の式である式7により、上記加速要求時目標駆動力FORCEACLと実際の車速SPDとに基づいて目標出力POWERが算出される(S226)。
【0055】
[式7] POWER ← k3×FORCEACL×SPD
ここでk3(ここでは前記k1と同じ値である)は換算のための係数である。
次に車速変化分Dnoutcvtが定速を含めた加速側か否かが判定される(S228)。ここで加速側、すなわち車速変化分Dnoutcvt≧0であれば(S228でYES)、次に式8に示すごとく車速変化補正値NINspdが、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と車速変化分Dnoutcvtとに基づいて逐次積算(積分)的に算出される(S230)。
【0056】
[式8] NINspd ← 前回NINspd+βa(SPD,ACCP)×Dnoutcvt
加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)は、加速状態での車速変化分Dnoutcvtに対応する車速変化補正値NINspdの増加勾配に相当するものであり、図9に示す構成のマップMAPβaから、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて算出される正の値である。すなわち等高線状に破線にて表しているごとく、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)は、車速SPDが高くなると小さく、車速SPDが低くなると大きくなる関係にあり、更にアクセル開度ACCPが大きくなると大きく、アクセル開度ACCPが小さくなると小さくなる関係にある。
【0057】
減速側、すなわち車速変化分Dnoutcvt<0であれば(S228でNO)、次に式9に示すごとく車速変化補正値NINspdが、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)と車速変化分Dnoutcvtとに基づいて逐次積算(積分)的に算出される(S232)。
【0058】
[式9] NINspd ← 前回NINspd+βb(SPD,ACCP)×Dnoutcvt
減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、加速要求時に生じた減速状態での車速変化分Dnoutcvtに対する車速変化補正値NINspdの増加勾配に相当するものである。ここでは車速変化分Dnoutcvt<0であるので、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、実際には減少勾配に相当する。この減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、図10に示すマップMAPβbから、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて算出される正の値である。すなわち減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、車速SPDが高くなると小さく、車速SPDが低くなると大きくなる関係にあり、更にアクセル開度ACCPが大きくなると大きく、アクセル開度ACCPが小さくなると小さくなる関係にある。したがってこの大小関係については前記図9のマップMAPβaにて示した加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と同じである。ただし、全体的な値については同じ車速SPDとアクセル開度ACCPに対して、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)の方が小さくなる関係にある。尚、部分的には同一値が存在しても良い。特に値が小さい部分や最低値の部分では、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)の値と一致する領域が存在しても良い。
【0059】
ステップS230又はステップS232の次に式10で加速要求時初期目標回転数値NINLINE0、アクセル踏込補正値NIN(ACCP)、車速変化補正値NINspd、アクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)に基づき加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEが算出される(S234)。
【0060】
[式10] NINLINE←NINLINE0+NIN(ACCP)+NINspd+NIN(dACCP,ACCP)
上記加速要求時初期目標回転数値NINLINE0は、予め記憶された前記式3(図6)に示す関係から、加速要求判定が行われた直前の目標出力POWERと実際の車速SPDとに基づいて算出される基本目標回転数であって、通常時に用いられる値と同じである。上記アクセル踏込補正値NIN(ACCP)は、加速要求時のアクセル開度(増量分)ACCPに対応する値であり、図6では、縦方向の破線の矢印の長さに対応する値である。このアクセル踏込補正値NIN(ACCP)は、アクセル開度ACCPが大きくなるほど増加する関数であり、例えば図11に示す関係から実際のアクセル開度ACCPに基づいて決定される。上記アクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)は、アクセル速度dACCPが高くなるほど増加し、かつアクセル開度ACCPが大きくなるほど増加する関数であり、実際のアクセル速度dACCP及びアクセル開度ACCPに基づいて決定される。
【0061】
次に前記式4と同様の式11により、上記加速要求時での目標出力POWERと上記加速要求時目標入力軸回転数NINLINEとに基づいて目標出力トルクTEを算出する(S236)。
【0062】
[式11] TE← k4×POWER/NINLINE
ここでk4(ここでは前記k2と同じ値である)は換算のための係数である。
こうして一旦本処理を出て、更に目標値算出制御処理(図2)を出る。そして以後、目標値算出制御処理(図2)のステップS108でNOと判定されている限りは、上述した加速要求時目標値算出処理(図7)が繰り返されることになる。
【0063】
このことにより、図12に示すごとく、加速要求判定後(t0〜)に加速要求時目標値算出処理(図7)が実行されると、車速SPD(出力軸18の回転数NO)が上昇している場合には(t0〜t1)、車速SPDの上昇に対応したエンジン回転数NEの上昇が生じる。このエンジン回転数NEの上昇は、前記式8により加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)による勾配にて、車速変化補正値NINspdの増加が生じ、車速変化補正値NINspdが前記式10に反映されて、加速要求時目標入力軸回転数NINLINEが増加するためである。
【0064】
しかし車両が平坦路から登坂路に入ったり強い向かい風となったりして走行抵抗が上昇すると(t1〜)、アクセル開度ACCPが変化しなくても車速SPDは低下する。すなわち加速要求時であっても減速状態となる。このため前記式9が機能して減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)による別の勾配にて、車速変化補正値NINspdの減少が生じる。ところが減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)には加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)以下の値が全域に設定されている。このため車速変化補正値NINspdの減少の程度は、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)を用いた場合の、車速変化補正値NINspdの減少の程度より小さい。すなわち車速変化補正値NINspdの減少が抑制されている。
【0065】
したがって減速状態では、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)を用いた場合(図12の破線)に比較して、目標入力軸回転数NINLINEの減少が抑制され、これに伴って実際のエンジン回転数NEの減少の程度も、更に車速SPDの減少の程度も、実線のごとく抑制されることになる。
【0066】
加速要求フラグFAがオンであり(S102でYES)、再加速要求フラグFAAもオンである場合には(S104でYES)、図13に示す再加速要求時目標値算出処理が実行される。再加速要求時目標値算出処理(図13)では、まず前記加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS222〜S234までと同一の処理が実行される(S252)。すなわち加速状態に比較して減速状態では目標入力軸回転数NINLINEの減少が抑制されることになる。
【0067】
次に再加速要求フラグFAAがオフからオンに切り替わったタイミングか否かが判定される(S254)。このタイミングであれば(S254でYES)、式12に示す予め記憶された関係から、実際の上記式10から求められた目標入力軸回転数NINLINE及びアクセル速度補正値NIN(dACCPREACIO,SPD)に基づいて、再加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEが算出される(S256)。
【0068】
[式12] NINLINE ← NINLINE+NIN(dACCPREACIO,SPD)
ここでdACCPREACIOは再加速要求時初期アクセル速度である。アクセル速度補正値NIN(dACCPREACIO,SPD)は、再加速要求時初期アクセル速度dACCPREACIO及び車速SPDに基づいて算出される。例えば再加速要求時初期アクセル速度dACCPREACIO及び車速SPDが大きくなるほど増加する関係から算出される。
【0069】
そしてステップS254でNOと判定された場合あるいはステップS256の次に、上記加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS236と同様に、前記式11に示すごとく加速要求時での目標出力POWERと加速時目標入力軸回転数NINLINEとに基づき目標出力トルクTEを算出する(S258)。こうして本処理を一旦出て、更に、目標値算出制御処理(図2)を出る。
【0070】
この結果、再加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEは、当初は、前記式12によりアクセル速度補正値NIN(dACCPREACIO,SPD)が加速時目標入力軸回転数NINLINEに加えられて、再加速要求時での目標入力軸回転数NINLINEがステップ的に増加させられる。その後の目標入力軸回転数NINLINEは、加速要求時と同様であり、加速要求時目標値算出処理(図7)にて説明したごとく、車速変化補正値(車速積分項)NINspdに応じて増減される。この増減の際に、前述したごとく加速状態に比較して減速状態では目標入力軸回転数NINLINEの減少が抑制されることになる。
【0071】
また再加速要求時の加速要求時目標駆動力FORCEACLは、直前の値FORCE0として再加速要求時の値FORCEACLが採用され、それにアクセル踏込補正値FORCE(ACCP,SPD)が加えられる。このことにより加速要求時目標駆動力FORCEACLがステップ的に増加させられ、以後は加速要求時と同様に、車速変化補正値(車速積分項)FORCEspdの減少に応じて線型的に緩やかに減少させられる。
【0072】
加速要求フラグFAがオンであり(S102でYES)、再加速要求フラグFAAがオフであり(S104でNO)、減速要求フラグFBがオンの場合は(S106でYES)、図14に示す減速要求時目標値算出処理が実行される。再加速時目標値算出処理(図14)では、まず加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS222〜S226と同様な処理が行われる(S272)。このことにより減速要求時での加速時目標出力POWERが算出される。
【0073】
次に式13により加速要求時初期目標回転数値NINLINE0、アクセル踏込補正値NIN(ACCP)、及びアクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)に基づいて加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEが算出される(S274)。
【0074】
[式13] NINLINE←NINLINE0+NIN(ACCP)+NIN(dACCP,ACCP)
尚、上記式13は、前記式10とは車速変化補正値NINspdが存在しないのみである。
【0075】
次に加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS236と同様な処理により目標出力トルクTEを算出する(S276)。
こうして目標値算出制御処理(図2)においてステップS116が終了して、一旦、目標値算出制御処理(図2)を出る。
【0076】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU22が加減速状態判定手段及び回転駆動力源回転数変化設定手段に相当する。ECU22が実行する加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS228が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS232,S234が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。ECU22が実行する再加速要求時目標値算出処理(図13)においては、ステップS252内におけるステップS228に相当する処理が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS232,S234に相当する処理が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。
【0077】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).本実施の形態では、アクセル開度ACCPと車速SPDとに基づいて算出された目標出力POWERを達成するように、CVT2の目標入力軸回転数NINLINE及び目標出力トルクTEを算出し、この目標入力軸回転数NINLINEに基づき、CVT2の変速比が制御されている。このような車両において加速要求時目標値算出処理(図7)では、車速SPDが減速状態であると判定された場合(S228でNO)は、加速状態であると判定された場合(S228でYES)よりも、車速SPD変化(ここでは車速変化分Dnoutcvt)に対して連動するエンジン回転数NEの低下を抑制している。この低下抑制は、目標入力軸回転数NINLINEの変化勾配である傾斜係数を設定することで連動を実行するに際し、図9の加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)の絶対値より、図10の減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)の絶対値を小さくすることで連動を鈍化することで行われている。
【0078】
このことにより、図12にて示したごとく、加速要求時に走行抵抗増加により車両が減速状態となってもエンジン回転数NEの低下が少なくなる。このため加速時目標出力POWERの低下が抑制されて駆動力不足を生じにくくなり、車両減速を助長することがない。このことによりドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0079】
(ロ).エンジン回転数NEを、目標入力軸回転数NINLINEを介して、車速SPD変化と共に出力要求量変化(ここではアクセル開度ACCPの変化)にも連動させているので、ドライバーの要求に応じた円滑なエンジン4の制御が可能となる。
【0080】
[実施の形態2]
本実施の形態では、前記図7の代わりに図15に示す加速要求時目標値算出処理を実行する。図7と異なるのは、ステップS232の代わりにステップS332を実行している点である。他のステップは同一であり同一のステップ番号で示している。尚、図13についても図15と同様な変更がなされている。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
【0081】
ステップS332においては、前記式9の代わりに式14の計算を実行する。
[式14] NINspd ← 前回NINspd
すなわち加速要求時における減速時には(S228でNO)、車速変化補正値NINspdについては、変化させずにその値を維持する。尚、車速変化補正値NINspdは変化させていないので、ステップS332自体を省略して、ステップS228にてNOと判定された場合に直ちにステップS234に処理を移行しても良い。
【0082】
このような処理により、図16に示すごとく、加速要求判定後(t10〜)に、車速SPD(出力軸18の回転数NO)が上昇している場合には(t10〜t11)、前記実施の形態1にて説明したと同様に、車速SPDの上昇に対応したエンジン回転数NEの上昇が生じる。
【0083】
しかし車両の平坦路から登坂路に入ったり向かい風となったりして走行抵抗が上昇すると(t11〜)、アクセル開度ACCPが変化しなくても車速SPDが低下する。このとき、前記式14により車速変化補正値NINspdは低下しないように維持されるので、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)に基づく車速変化補正値NINspdによる場合のような減少は生じない。
【0084】
このため減速時も加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と同じ傾斜係数を用いた場合(図16の破線)とは異なり、実際のエンジン回転数NEの減少の程度、更に車速SPDの減少の程度も、実線のごとく抑制されることになる。
【0085】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU22が加減速状態判定手段及び回転駆動力源回転数変化設定手段に相当する。ECU22が実行する加速要求時目標値算出処理(図15)のステップS228が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS332,S234が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。ECU22が実行する再加速要求時目標値算出処理(図13)においても同様である。
【0086】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1と同様な効果を生じるが、特に、加速要求時に走行抵抗増加により車両が減速してもエンジン回転数NEの低下が生じなくなる。このため加速時目標出力POWERの低下が抑制されて駆動力不足を生じにくくなり、車両減速を助長することがない。このことにより更に効果的にドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0087】
[実施の形態3]
本実施の形態では、前記図7の代わりに図17に示す加速要求時目標値算出処理を実行する。図7と異なるのは、ステップS228〜S232の代わりに、ステップS428〜S436を実行している点である。他のステップは同一であり同一のステップ番号で示している。尚、図13についても図17と同様な変更がなされている。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
【0088】
ステップS226にて加速時目標出力POWERを算出すると、次に前記式8により車速変化補正値NINspdが算出される(S428)。そして次に車速変化分Dnoutcvt≧0か否かが判定される(S430)。ここでDnoutcvt≧0であれば(S430でYES)、次にステップS234にて目標入力軸回転数NINLINEが算出され、ステップS236にて目標出力トルクTEが算出されることになる。したがってDnoutcvt≧0であれば、すなわち定速も含めて実際に加速状態であれば前記図7の場合と同じ処理となる。
【0089】
Dnoutcvt<0の場合には(S430でNO)、次に減速当初、すなわちDnoutcvt≧0の状態からDnoutcvt<0の状態に変化してから最初の処理か否かが判定される(S432)。減速当初であれば(S432でYES)、次に式15により車速変化補正値NINspdの下限値LMTが、前回の制御周期時に求められた車速変化補正値(前回NINspd)に基づいて設定される(S434)。
【0090】
[式15] LMT ← 前回NINspd×K
係数Kはプラスの小数(0<K<1)である。例えばK=0.9である。
次に今回算出されている車速変化補正値NINspdと下限値LMTとに基づいて、式16により車速変化補正値NINspdが新たに算出される(S436)。
【0091】
[式16] NINspd ← MAX(NINspd,LMT)
ここでMAX()は()内の数値の大きい方を抽出する演算子である。
このことにより上記式16にて新たに設定される車速変化補正値NINspdは、LMTの値を下限とすることで、今回のステップS428にて算出された車速変化補正値NINspdの減少が抑制される。
【0092】
こうして下限値LMTにより減少が抑制された車速変化補正値NINspdにより、以下、ステップS234にて目標入力軸回転数NINLINEが算出され、ステップS236にて目標出力トルクTEが算出されることになる。
【0093】
以後の制御周期においてDnoutcvt<0(S430でNO)の状態が継続すると、ステップS432ではNOと判定されて、以後、固定された下限値LMTにて車速変化補正値NINspdの減少が抑制される。
【0094】
したがって図18に示すごとく、加速要求判定後(t20〜)に、車速SPD(出力軸18の回転数NO)が上昇している場合には(t20〜t21)、前記実施の形態1にて説明したと同様に、車速SPDの上昇に対応したエンジン回転数NEの上昇が生じる。
【0095】
しかし車両の平坦路から登坂路に入ったり向かい風となったりして走行抵抗が上昇すると(t21〜)、アクセル開度ACCPが変化しなくても車速SPDは低下する。ただし少しエンジン回転数NEが低下すると前記式16により車速変化補正値NINspdは下限値LMTに到達するので(t22)、以後、車速変化補正値NINspdは維持される。このため、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)による車速変化補正値NINspdにより減少されるよりも、目標入力軸回転数NINLINEの減少の程度は小さくなる。
【0096】
このため減速時も加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と同じ傾斜係数を用いた場合(図18の破線)とは異なり、実際のエンジン回転数NEの減少の程度、更に車速SPDの減少の程度も、実線のごとく抑制されることになる。
【0097】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU22が加減速状態判定手段及び回転駆動力源回転数変化設定手段に相当する。ECU22が実行する加速要求時目標値算出処理(図17)のステップS430が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS432〜S436,S234が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。ECU22が実行する再加速要求時目標値算出処理(図13)においても同様である。
【0098】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の場合と同様な効果を生じるが、特に、加速要求時に走行抵抗増加により車両が減速しても、少し低下するがその後はエンジン回転数NEの低下が生じなくなる。このため加速時目標出力POWERの低下が抑制されて駆動力不足を生じにくくなり、車両減速を助長することがない。このことにより、より効果的にドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0099】
[その他の実施の形態]
(a).前記各実施の形態において、前記式6の右辺のアクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)と車速変化補正値FORCEspdとのいずれか一方又は両方は、一定値でも良く、又は設けられていなくても良い。
【0100】
前記式10の右辺のアクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)についても一定値でも良く、又は設けられていなくても良い。
(b).前記各実施の形態においては、スロットル開度TAによりエンジン4の出力トルクが調節されていたが、燃料噴射量によりエンジン4の出力トルクを調節しても良い。
【0101】
前記各実施の形態において、車両にはガソリンエンジンが搭載されていたがディーゼルエンジンでも良く、この場合には燃料噴射量により出力トルクを調節することになる。
(c).目標値算出制御処理(図2)では低μ路の判定(S108)が存在したが、低μ路判定については特にここに設けなくても良い。
【0102】
(d).加速要求は、ドライバーが車両に要求する出力量を表すパラメータであり、前記各実施の形態においてはアクセルペダル34の踏込量を示すアクセル開度ACCPの状態で判定した。これ以外に、スロットル弁30の開度を示すスロットル開度TA、燃料噴射量、エンジンの吸気管により吸入される吸入空気量などの状態を判定しても良い。
【0103】
(e).前記各実施の形態では、無段変速機としてはベルト式無段変速機を用いていたが、他の構造の無段変速機、例えばトロイダル型無段変速機などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施の形態1において、CVTを利用した車両の動力伝達機構を表すブロック図。
【図2】実施の形態1のECUが実行する目標値算出制御処理のフローチャート。
【図3】同じくフラグ設定処理のフローチャート。
【図4】同じく通常時目標値算出処理のフローチャート。
【図5】マップMAPforceの構成を示すグラフ。
【図6】マップMAPninの構成を示すグラフ。
【図7】実施の形態1のECUが実行する加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図8】図5の関係を拡大して示したグラフ。
【図9】加速要求時に用いられるマップMAPβaの構成を示すグラフ。
【図10】加速要求時に用いられるマップMAPβbの構成を示すグラフ。
【図11】アクセル開度ACCPとアクセル踏込補正値NIN(ACCP)との関係を示すグラフ。
【図12】実施の形態1における加速要求時での制御の一例を示すタイミングチャート。
【図13】実施の形態1のECUが実行する再加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図14】同じく減速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図15】実施の形態2のECUが実行する加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図16】実施の形態2における加速要求時での制御の一例を示すタイミングチャート。
【図17】実施の形態3のECUが実行する加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図18】実施の形態3における加速要求時での制御の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0105】
2…CVT、2a,2b…可変プーリ、2c…伝動ベルト、2d,2e…油圧シリンダ、4…エンジン、4a…燃料噴射弁、6…トルクコンバータ、8…前後進切換装置、10…減速歯車、12…差動歯車装置、14L,14R…左右の駆動輪、16…入力軸、18…出力軸、20…油圧制御回路、22…ECU、24…シフトレバー、26…操作位置検出センサ、28…スロットルアクチュエータ、30…スロットル弁、32…スロットルセンサ、34…アクセルペダル、36…アクセル操作量センサ、38…エンジン回転数センサ、40…車速センサ(出力軸回転数センサ)、42…入力軸回転数センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動力源の出力を無段変速機を介して走行駆動力として出力する車両において、加速要求時に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させる駆動力源回転数制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機として無段変速機を搭載している車両において、要求出力量に対して十分に高い加速感が得られるように、加速要求時に車速の上昇に連動して内燃機関などの回転駆動力源の出力回転数を高める装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、加速時目標入力軸回転速度NINLINE(回転駆動力源の目標出力回転数)は、車速変化補正量NIN(spd)にて補正されることにより、アクセル踏み込み量に変化がなくても車速spdの上昇に連動して上昇するように制御されている。
【特許文献1】特開2006−51842号公報(第12頁、図7−12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし路面勾配の増加などの走行抵抗上昇により、加速要求時にても車速が低下する場合がある。このように車速が低下すると、上述したごとく回転駆動力源の出力回転数は車速に連動しているため、目標出力回転数は車速変化補正量NIN(spd)により減少側に補正されて低下することになる。
【0004】
このように走行抵抗による減速に加えて回転駆動力源出力回転数の低下も生じることから、駆動力不足を生じて車両減速を助長してしまう。このことによりドライバーに違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させている無段変速機を備えた車両において、走行抵抗増加などにより車両が減速してもドライバーに違和感を生じさせないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の駆動力源回転数制御装置は、回転駆動力源の出力を無段変速機を介して走行駆動力として出力する車両において、加速要求時に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させる駆動力源回転数制御装置であって、加速要求時に車両が加速状態にあるか減速状態にあるかを判定する加減速状態判定手段と、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、回転駆動力源回転数の低下を抑制する回転駆動力源回転数変化設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
このように回転駆動力源回転数変化設定手段により、車速が減速状態にあると判定された場合は加速状態にあると判定された場合よりも、車速変化に連動させる回転駆動力源回転数の低下を抑制している。このことにより、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。このことによりドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0008】
請求項2に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合は加速状態にあると判定された場合よりも、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動を鈍化させることを特徴とする。
【0009】
このように回転駆動力源回転数の低下抑制は、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動を鈍化させることにより実現できる。このことにより加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなるので、駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。こうしてドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0010】
請求項3に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項2において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、車速変化に対する回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて加速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値より、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値を小さく設定することを特徴とする。
【0011】
車速が加速状態にあると判定された場合の回転駆動力源回転数の変化勾配絶対値より、減速状態にあると判定された場合の変化勾配絶対値を小さく設定していることにより、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。こうしてドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0012】
請求項4に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、車速変化に前記回転駆動力源回転数を連動させないことを特徴とする。
【0013】
このように減速状態においては車速変化に回転駆動力源回転数を連動させないことにしても良い。すなわち車速変化に対する変化勾配で言えば、この変化勾配を0としても良い。このことにより加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数は車速に連動した低下はしなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。このことによりドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0014】
請求項5に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には前記回転駆動力源回転数の下限を設けることを特徴とする。
【0015】
このように回転駆動力源回転数の低下抑制は、下限を設けることで実現しても良い。このことにより加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても回転駆動力源回転数の低下が下限により停止されるので、駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがない。こうしてドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0016】
請求項6に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動は、回転駆動力源の目標回転数を車速変化に対して連動させることにより実行され、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合に前記目標回転数の調節により前記回転駆動力源回転数の低下を抑制することを特徴とする。
【0017】
回転駆動力源の目標回転数を、車速変化に連動させることにより、実際に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させることができる。そしてこの目標回転数の調節により前記回転駆動力源回転数の低下を抑制することとができる。
【0018】
請求項7に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、回転駆動力源回転数を、車速変化と共に出力要求量変化にも連動させていることを特徴とする。
【0019】
尚、このように回転駆動力源回転数は、車速変化と共に出力要求量変化にも連動させることで、ドライバーの要求に応じた円滑な回転駆動力源の制御が可能となる。
請求項8に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記回転駆動力源は内燃機関であることを特徴とする。
【0020】
回転駆動力源としてはガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関を挙げることができる。このような内燃機関を搭載した車両において、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても内燃機関回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがなく、ドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0021】
請求項9に記載の駆動力源回転数制御装置では、請求項1〜8のいずれかにおいて、出力要求量と車速とに基づいて算出された目標駆動力を達成するように無段変速機の目標入力軸回転数及び回転駆動力源の目標出力トルクを算出し、該目標入力軸回転数に基づき、前記無段変速機の変速比が制御されていることを特徴とする。
【0022】
このように無段変速機の変速比が制御されている車両において、上述したごとくの制御により、加速要求時に走行抵抗増加などにより車両が減速しても内燃機関回転数の低下が少なくなる、あるいは低下しなくなる。このため駆動力不足を生じにくくなり、あるいは生じなくなり車両減速を助長することがなく、ドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された車両において、ベルト式無段変速機(以下CVTと称する)2を利用した動力伝達機構を表すブロック図である。走行用の回転駆動力源として内燃機関4を備えている。内燃機関4としてはガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどが挙げられるが、ここではガソリンエンジン(以下エンジンと称する)4として説明する。
【0024】
エンジン4の出力は、トルクコンバータ6から前後進切換装置8、CVT2、減速歯車10を介して差動歯車装置12に伝達され、左右の駆動輪14L,14Rへ分配される。
CVT2は、その入力軸16に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ2aと、その出力軸18に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ2bと、これらの可変プーリ2a,2bのV溝に巻き掛けられた伝動ベルト2cとを備えている。この構成により伝動ベルト2cと可変プーリ2a,2bのV溝内壁面との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。可変プーリ2a,2bはそれぞれのV溝幅すなわち伝動ベルト2cの掛かり径を変更するための入力側油圧シリンダ2d及び出力側油圧シリンダ2eを備えている。この構成により油圧シリンダ2d,2eに対する作動油の給排量が油圧制御回路20にて調節されることで、両可変プーリ2a,2bにおける伝動ベルト2cの掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転数NI/出力軸回転数NO)を連続的に変化することが可能となっている。
【0025】
マイクロコンピュータを中心として構成されている電子制御ユニット(以下ECUと称する)22には、シフトレバー24の操作位置を検出する操作位置検出センサ26からの操作位置PS信号が入力されている。更にスロットルアクチュエータ28により駆動されるスロットル弁30の開度を検出するスロットルセンサ32からスロットル開度TAを表す信号、アクセルペダル34の開度を検出するアクセル操作量センサ36からのアクセル開度ACCPを表す信号(ドライバーの出力要求量を反映する信号)が入力されている。更にエンジン回転数センサ38からエンジン回転数NEを表す信号、車速センサ(出力軸回転数センサとして出力軸18の回転数NOの検出も兼ねる)40からの車速SPDを表す信号、入力軸16の入力軸回転数を検出する入力軸回転数センサ42からの入力軸回転数NIを表す信号が入力されている。
【0026】
これ以外に、ECU22は他のセンサ・スイッチ類からも信号を入力している。ここではCVT2内の作動油温度を表す信号、出力側可変プーリ2bのベルト挟圧力制御圧を表す信号、イグニションキーにより操作されるイグニションスイッチからのイグニションキーのオン操作を表す信号などである。
【0027】
ECU22は上述した検出データや内部メモリに記憶されているデータに基づいてプログラムに記載された演算処理を実行し、この演算結果に基づいて出力を実行している。ここでは好適な加速感及び燃費が得られるようにする車両のエンジン4の出力トルク制御及びCVT2の変速制御を実行している。この出力トルク制御では、予め記憶された関係からエンジン4の目標出力トルクTEが決定され、その目標出力トルクTEが得られるように、スロットル開度TAが調節されてエンジン4の出力トルクが制御される。変速制御では、予め記憶された関係から目標回転数NINTが決定され、その目標回転数NINTが実際の入力軸回転数NIと一致するように油圧制御回路20を作動させることにより、CVT2の変速比γが調節されている。
【0028】
この他、ECU22は、伝動ベルト2cを必要かつ十分な張力とするための挟圧力制御や、燃焼に必要な燃料量を各吸気ポートや各気筒内に供給するために燃料噴射弁4aの開弁時間を調節する燃料噴射制御などを実行している。
【0029】
ここでECU22が駆動力源回転数制御装置として実行する回転駆動力制御について説明する。図2はECU22が実行する目標値算出制御処理のフローチャートである。本処理は、一定の周期、例えば数十msの周期で繰り返し実行されるものである。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0030】
目標値算出制御処理(図2)が開始されると、まずアクセル操作状態判定のために、加速要求フラグFAがオンか否かが判定される(S102)。この加速要求フラグFAがオンであるときには、アクセルペダル34の操作状態が加速要求状態であると判定された場合を示している。
【0031】
加速要求フラグFA=オンであれば(S102でYES)、次に再加速要求フラグFAAがオンか否かが判定される(S104)。再加速要求フラグFAAがオンであるときには、アクセルペダル34の操作状態が再加速要求状態であると判定された場合を示している。
【0032】
再加速要求フラグFAA=オンでなければ(S104でNO)、次に減速要求フラグFBがオンか否かが判定される(S106)。減速要求フラグFBがオンであるときには、アクセルペダル34の操作状態が減速要求状態であると判定された場合を示している。
【0033】
これら加速要求フラグFA、再加速要求フラグFAA、減速要求フラグFBのオン・オフ設定は、割り込みなどにより並列的に実行される図3に示すフラグ設定処理によって実行される。
【0034】
フラグ設定処理(図3)について説明する。この処理では、まず次の3つの条件の論理積が判定される(S152)。
a.車速SPD(km/h)が予め設定された判定値A以上である。
【0035】
b.アクセル開度ACCP(%)が予め設定された判定値B以上である。
c.アクセル速度dACCP(%)が予め設定された判定値C以上である。
ここでアクセル速度dACCPは、単位時間当たりのアクセル開度ACCP変化量を表している。
【0036】
これらa.b.c.の全条件が成立していれば(S152でYES)、加速要求フラグFAがオンに設定される(S154)。
a.b.c.のいずれか1つでも条件が不成立である場合は(S152でNO)、車速SPDが予め設定された判定値Aよりも低いか、あるいはアクセル開度ACCPが予め設定された判定値(ここでは判定値Bよりも所定値D分低い値である「B−D」)よりも低いか否かが判定される(S156)。このいずれかの条件又は両条件が成立しているときは(S156でYES)、加速要求操作が終了したと判定されて加速要求フラグFAがオフに設定される(S158)。
【0037】
ステップS154又はステップS158の処理の後に、加速要求フラグFAがオンに設定されているか否かが判定される(S160)。加速要求フラグFA=オンであれば(S160でYES)、今回の制御周期が、加速要求フラグFAがオフからオンへ切り替えられたタイミングではないか否かが判定される(S162)。加速要求フラグFAがオフからオンへ切り替えられたタイミングではない場合には(S162でYES)、アクセル速度dACCPが予め設定された判定値E以上であり、かつ加速要求判定(S152)から時間F以上経過しているか否かが判定される(S164)。これら2つの条件が成立している場合には(S164でYES)、再加速要求フラグFAAがオンに設定される(S166)。しかしステップS162又はステップS164にてNOと判定された場合には、再加速要求フラグFAAがオフに設定される(S168)。
【0038】
前記ステップS156でNOの場合、あるいはステップS166又はステップS168の後に、アクセル速度dACCPが予め設定された判定値G(負の値)より低い状態が時間H以上継続したか、あるいはアクセル速度dACCPが予め設定された判定値I(<G)より低いか否かが判定される(S170)。このいずれかの条件が成立していると(S170でYES)、減速要求フラグFBがオンに設定される(S172)。いずれの条件も不成立であれば(S170でNO)、目標入力軸回転数NINLINEが過渡時の目標回転数NINT以上となっているか、あるいはアクセル開度ACCPが判定値(B−D)よりも低いか否かが判定される(S174)。このいずれかの条件が成立している場合は(S174でYES)、減速要求フラグFBがオフに設定される(S176)。いずれの条件も不成立であれば(S174でNO)、一旦本処理を出る。
【0039】
フラグ設定処理(図3)では上述したごとくの処理を周期的に繰り返すことにより各フラグFA,FAA,FBの設定を繰り返すことになる。
図2の説明に戻り、各フラグFA,FAA,FBの設定状態に基づいて、前述したステップS102〜S106の判定がなされることになる。まず加速要求フラグFAがオフである場合には(S102でNO)、図4の通常時目標値算出処理が実行される(S112)。
【0040】
通常時目標値算出処理(図4)では、まず、予め記憶されたマップMAPforceにより、式1に示すごとく、実際の車速SPD(出力軸18の回転数NOから算出)及びアクセル開度ACCPに基づいて通常時目標駆動力FORCEが算出される(S202)。
【0041】
[式1] FORCE ← MAPforce(ACCP,SPD)
この式1に示すマップMAPforceの関係は図5の特性曲線に示すごとくである。図5では目標駆動力FORCEを示す目標駆動力軸(縦軸)と車速SPDを示す車速軸(横軸)との直交二次元座標において、アクセル開度ACCPをパラメータとする双曲線状の複数本(図ではACCP1〜ACCP5)の特性曲線が並列的に設けられている。この内の実際のアクセル開度ACCPに対応する1本の特性曲線上において実際の車速SPDに対する目標駆動力軸上の値が実際の目標駆動力FORCEとして決定されることになる。
【0042】
次に式2により、上記目標駆動力FORCEと実際の車速SPDとに基づいて目標出力POWERが算出される(S204)。
[式2] POWER ← k1×FORCE×SPD
ここでk1は換算のための係数である。
【0043】
次にマップMAPninにより式3に示すごとく、上記通常時の目標出力POWERと実際の車速SPDとに基づいて通常時の目標入力軸回転数NIN(rpm)が算出される(S206)。
【0044】
[式3] NIN ← MAPnin( POWER,SPD)
尚、ここでは更に過渡時の目標回転数NINTにも通常時の目標入力軸回転数NINの値が設定される。
【0045】
この式3に示すマップMAPninの関係は、例えば図6の特性曲線に示されるごとくである。図6では、目標入力軸回転数軸(縦軸)と車速軸(横軸)との直交二次元座標上に、CVT2の最大変速比γmaxを示す線と最小変速比γminを示す線との間の扇状の領域内に、通常時目標出力POWERをパラメータとする複数本(図ではPOWER1〜POWER5)の特性曲線が並列的に設けられている。この内の実際の通常時目標駆動力POWERに対応する1本の特性曲線上において実際の車速SPDに対する目標入力軸回転数軸上の値が実際の目標入力軸回転数NINとして決定されることになる。尚、上記特性曲線POWER1〜POWER5は、エンジン4の作動点がエンジン回転数NEの上昇に伴って最適燃費曲線に沿って移動するように設定されている。
【0046】
次に式4により、上記通常時の目標出力POWERと上記通常時目標入力軸回転数NINとに基づいて目標出力トルクTEが算出される(S208)。
[式4] TE ← k2×POWER/NIN
ここでk2は換算のための係数である。
【0047】
このように通常時目標値算出処理(図4:S112)が終了すると、一旦、目標値算出制御処理(図2)を出る。以後、加速要求フラグFAがオフである限り(S102でNO)、通常時目標値算出処理(S112:図4)が繰り返し実行されることになる。
【0048】
加速要求フラグFAがオン(S102でYES)、再加速要求フラグFAAがオフ(S104でNO)、減速要求フラグFBがオフ(S106でNO)、更に車両走行路面が摩擦係数の低い走行路面(低μ路)でない場合(S108でNO)は、図7に示す加速要求時目標値算出処理が実行される(S110)。尚、低μ路である場合には(S108でYES)、加速時の制御は禁止される(S118)。
【0049】
加速要求時目標値算出処理(図7)について説明する。まず式5により車速変化補正値FORCEspd(車速積分項)が算出される(S222)。
[式5] FORCEspd ← 前回FORCEspd+α(SPD0,ACCP)×Dnoutcvt
ここで初期値としての車速SPD0は、加速要求フラグFAがオフ→オン切り替え時での車速である。すなわち車速変化補正値FORCEspdは、傾斜係数α(SPD0,ACCP)及び車速変化分Dnoutcvtに基づいて逐次積算(積分)的に算出される。この傾斜係数α(SPD0,ACCP)は加速要求判定が行われた直後の車速SPD0及びアクセル開度ACCPの関数であり、加速要求判定が行われた直後の車速SPD0が高くなるほど減少し、アクセル開度ACCPが大きくなるほど減少するように決定されている。車速変化分Dnoutcvtは出力軸18の回転数NO(車速SPDに比例)の一周期毎の変化であり、一周期単位での車両の加速度に対応した値である。
【0050】
そして式6に示すごとく、加速要求時目標駆動力FORCEACLが、加速要求初期駆動力値FORCE0、アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)、車速変化補正値FORCEspdに基づいて算出される(S224)。
【0051】
[式6] FORCEACL←FORCE0+ force(ACCP,SPD)+ FORCEspd
ここで加速要求初期駆動力値FORCE0は、例えば車両の走行抵抗に見合った前記図5の定速走行線(2点鎖線)上での値であり、加速要求判定直前の車速SPDに対応する値である。アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)は、加速要求時のアクセル開度(増量分)ACCP及び車速SPDに対応する値であり、図5及びそれを拡大した図8では、縦方向の破線の矢印の長さに対応する値である。図5から明らかなように、アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)は、加速要求時のアクセル開度ACCPが大きいほど増加し、加速要求時の車速SPDが高いほど減少する。
【0052】
前記式5にて算出される車速変化補正値FORCEspdは、加速要求時からの車速変化に応じて上記アクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)をその初期値から一定に維持あるいは減少させるための項である。
【0053】
この結果、図5及びそれを拡大した図8において、実線の矢印に示すように、加速要求時目標駆動力FORCEACLがその初期値から一定に維持されるか、その初期値から所定の割合で減少させられる。
【0054】
次に、通常時の式2と同様の式である式7により、上記加速要求時目標駆動力FORCEACLと実際の車速SPDとに基づいて目標出力POWERが算出される(S226)。
【0055】
[式7] POWER ← k3×FORCEACL×SPD
ここでk3(ここでは前記k1と同じ値である)は換算のための係数である。
次に車速変化分Dnoutcvtが定速を含めた加速側か否かが判定される(S228)。ここで加速側、すなわち車速変化分Dnoutcvt≧0であれば(S228でYES)、次に式8に示すごとく車速変化補正値NINspdが、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と車速変化分Dnoutcvtとに基づいて逐次積算(積分)的に算出される(S230)。
【0056】
[式8] NINspd ← 前回NINspd+βa(SPD,ACCP)×Dnoutcvt
加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)は、加速状態での車速変化分Dnoutcvtに対応する車速変化補正値NINspdの増加勾配に相当するものであり、図9に示す構成のマップMAPβaから、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて算出される正の値である。すなわち等高線状に破線にて表しているごとく、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)は、車速SPDが高くなると小さく、車速SPDが低くなると大きくなる関係にあり、更にアクセル開度ACCPが大きくなると大きく、アクセル開度ACCPが小さくなると小さくなる関係にある。
【0057】
減速側、すなわち車速変化分Dnoutcvt<0であれば(S228でNO)、次に式9に示すごとく車速変化補正値NINspdが、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)と車速変化分Dnoutcvtとに基づいて逐次積算(積分)的に算出される(S232)。
【0058】
[式9] NINspd ← 前回NINspd+βb(SPD,ACCP)×Dnoutcvt
減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、加速要求時に生じた減速状態での車速変化分Dnoutcvtに対する車速変化補正値NINspdの増加勾配に相当するものである。ここでは車速変化分Dnoutcvt<0であるので、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、実際には減少勾配に相当する。この減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、図10に示すマップMAPβbから、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて算出される正の値である。すなわち減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)は、車速SPDが高くなると小さく、車速SPDが低くなると大きくなる関係にあり、更にアクセル開度ACCPが大きくなると大きく、アクセル開度ACCPが小さくなると小さくなる関係にある。したがってこの大小関係については前記図9のマップMAPβaにて示した加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と同じである。ただし、全体的な値については同じ車速SPDとアクセル開度ACCPに対して、減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)の方が小さくなる関係にある。尚、部分的には同一値が存在しても良い。特に値が小さい部分や最低値の部分では、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)の値と一致する領域が存在しても良い。
【0059】
ステップS230又はステップS232の次に式10で加速要求時初期目標回転数値NINLINE0、アクセル踏込補正値NIN(ACCP)、車速変化補正値NINspd、アクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)に基づき加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEが算出される(S234)。
【0060】
[式10] NINLINE←NINLINE0+NIN(ACCP)+NINspd+NIN(dACCP,ACCP)
上記加速要求時初期目標回転数値NINLINE0は、予め記憶された前記式3(図6)に示す関係から、加速要求判定が行われた直前の目標出力POWERと実際の車速SPDとに基づいて算出される基本目標回転数であって、通常時に用いられる値と同じである。上記アクセル踏込補正値NIN(ACCP)は、加速要求時のアクセル開度(増量分)ACCPに対応する値であり、図6では、縦方向の破線の矢印の長さに対応する値である。このアクセル踏込補正値NIN(ACCP)は、アクセル開度ACCPが大きくなるほど増加する関数であり、例えば図11に示す関係から実際のアクセル開度ACCPに基づいて決定される。上記アクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)は、アクセル速度dACCPが高くなるほど増加し、かつアクセル開度ACCPが大きくなるほど増加する関数であり、実際のアクセル速度dACCP及びアクセル開度ACCPに基づいて決定される。
【0061】
次に前記式4と同様の式11により、上記加速要求時での目標出力POWERと上記加速要求時目標入力軸回転数NINLINEとに基づいて目標出力トルクTEを算出する(S236)。
【0062】
[式11] TE← k4×POWER/NINLINE
ここでk4(ここでは前記k2と同じ値である)は換算のための係数である。
こうして一旦本処理を出て、更に目標値算出制御処理(図2)を出る。そして以後、目標値算出制御処理(図2)のステップS108でNOと判定されている限りは、上述した加速要求時目標値算出処理(図7)が繰り返されることになる。
【0063】
このことにより、図12に示すごとく、加速要求判定後(t0〜)に加速要求時目標値算出処理(図7)が実行されると、車速SPD(出力軸18の回転数NO)が上昇している場合には(t0〜t1)、車速SPDの上昇に対応したエンジン回転数NEの上昇が生じる。このエンジン回転数NEの上昇は、前記式8により加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)による勾配にて、車速変化補正値NINspdの増加が生じ、車速変化補正値NINspdが前記式10に反映されて、加速要求時目標入力軸回転数NINLINEが増加するためである。
【0064】
しかし車両が平坦路から登坂路に入ったり強い向かい風となったりして走行抵抗が上昇すると(t1〜)、アクセル開度ACCPが変化しなくても車速SPDは低下する。すなわち加速要求時であっても減速状態となる。このため前記式9が機能して減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)による別の勾配にて、車速変化補正値NINspdの減少が生じる。ところが減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)には加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)以下の値が全域に設定されている。このため車速変化補正値NINspdの減少の程度は、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)を用いた場合の、車速変化補正値NINspdの減少の程度より小さい。すなわち車速変化補正値NINspdの減少が抑制されている。
【0065】
したがって減速状態では、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)を用いた場合(図12の破線)に比較して、目標入力軸回転数NINLINEの減少が抑制され、これに伴って実際のエンジン回転数NEの減少の程度も、更に車速SPDの減少の程度も、実線のごとく抑制されることになる。
【0066】
加速要求フラグFAがオンであり(S102でYES)、再加速要求フラグFAAもオンである場合には(S104でYES)、図13に示す再加速要求時目標値算出処理が実行される。再加速要求時目標値算出処理(図13)では、まず前記加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS222〜S234までと同一の処理が実行される(S252)。すなわち加速状態に比較して減速状態では目標入力軸回転数NINLINEの減少が抑制されることになる。
【0067】
次に再加速要求フラグFAAがオフからオンに切り替わったタイミングか否かが判定される(S254)。このタイミングであれば(S254でYES)、式12に示す予め記憶された関係から、実際の上記式10から求められた目標入力軸回転数NINLINE及びアクセル速度補正値NIN(dACCPREACIO,SPD)に基づいて、再加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEが算出される(S256)。
【0068】
[式12] NINLINE ← NINLINE+NIN(dACCPREACIO,SPD)
ここでdACCPREACIOは再加速要求時初期アクセル速度である。アクセル速度補正値NIN(dACCPREACIO,SPD)は、再加速要求時初期アクセル速度dACCPREACIO及び車速SPDに基づいて算出される。例えば再加速要求時初期アクセル速度dACCPREACIO及び車速SPDが大きくなるほど増加する関係から算出される。
【0069】
そしてステップS254でNOと判定された場合あるいはステップS256の次に、上記加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS236と同様に、前記式11に示すごとく加速要求時での目標出力POWERと加速時目標入力軸回転数NINLINEとに基づき目標出力トルクTEを算出する(S258)。こうして本処理を一旦出て、更に、目標値算出制御処理(図2)を出る。
【0070】
この結果、再加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEは、当初は、前記式12によりアクセル速度補正値NIN(dACCPREACIO,SPD)が加速時目標入力軸回転数NINLINEに加えられて、再加速要求時での目標入力軸回転数NINLINEがステップ的に増加させられる。その後の目標入力軸回転数NINLINEは、加速要求時と同様であり、加速要求時目標値算出処理(図7)にて説明したごとく、車速変化補正値(車速積分項)NINspdに応じて増減される。この増減の際に、前述したごとく加速状態に比較して減速状態では目標入力軸回転数NINLINEの減少が抑制されることになる。
【0071】
また再加速要求時の加速要求時目標駆動力FORCEACLは、直前の値FORCE0として再加速要求時の値FORCEACLが採用され、それにアクセル踏込補正値FORCE(ACCP,SPD)が加えられる。このことにより加速要求時目標駆動力FORCEACLがステップ的に増加させられ、以後は加速要求時と同様に、車速変化補正値(車速積分項)FORCEspdの減少に応じて線型的に緩やかに減少させられる。
【0072】
加速要求フラグFAがオンであり(S102でYES)、再加速要求フラグFAAがオフであり(S104でNO)、減速要求フラグFBがオンの場合は(S106でYES)、図14に示す減速要求時目標値算出処理が実行される。再加速時目標値算出処理(図14)では、まず加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS222〜S226と同様な処理が行われる(S272)。このことにより減速要求時での加速時目標出力POWERが算出される。
【0073】
次に式13により加速要求時初期目標回転数値NINLINE0、アクセル踏込補正値NIN(ACCP)、及びアクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)に基づいて加速要求時の目標入力軸回転数NINLINEが算出される(S274)。
【0074】
[式13] NINLINE←NINLINE0+NIN(ACCP)+NIN(dACCP,ACCP)
尚、上記式13は、前記式10とは車速変化補正値NINspdが存在しないのみである。
【0075】
次に加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS236と同様な処理により目標出力トルクTEを算出する(S276)。
こうして目標値算出制御処理(図2)においてステップS116が終了して、一旦、目標値算出制御処理(図2)を出る。
【0076】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU22が加減速状態判定手段及び回転駆動力源回転数変化設定手段に相当する。ECU22が実行する加速要求時目標値算出処理(図7)のステップS228が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS232,S234が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。ECU22が実行する再加速要求時目標値算出処理(図13)においては、ステップS252内におけるステップS228に相当する処理が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS232,S234に相当する処理が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。
【0077】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).本実施の形態では、アクセル開度ACCPと車速SPDとに基づいて算出された目標出力POWERを達成するように、CVT2の目標入力軸回転数NINLINE及び目標出力トルクTEを算出し、この目標入力軸回転数NINLINEに基づき、CVT2の変速比が制御されている。このような車両において加速要求時目標値算出処理(図7)では、車速SPDが減速状態であると判定された場合(S228でNO)は、加速状態であると判定された場合(S228でYES)よりも、車速SPD変化(ここでは車速変化分Dnoutcvt)に対して連動するエンジン回転数NEの低下を抑制している。この低下抑制は、目標入力軸回転数NINLINEの変化勾配である傾斜係数を設定することで連動を実行するに際し、図9の加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)の絶対値より、図10の減速状態傾斜係数βb(SPD,ACCP)の絶対値を小さくすることで連動を鈍化することで行われている。
【0078】
このことにより、図12にて示したごとく、加速要求時に走行抵抗増加により車両が減速状態となってもエンジン回転数NEの低下が少なくなる。このため加速時目標出力POWERの低下が抑制されて駆動力不足を生じにくくなり、車両減速を助長することがない。このことによりドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0079】
(ロ).エンジン回転数NEを、目標入力軸回転数NINLINEを介して、車速SPD変化と共に出力要求量変化(ここではアクセル開度ACCPの変化)にも連動させているので、ドライバーの要求に応じた円滑なエンジン4の制御が可能となる。
【0080】
[実施の形態2]
本実施の形態では、前記図7の代わりに図15に示す加速要求時目標値算出処理を実行する。図7と異なるのは、ステップS232の代わりにステップS332を実行している点である。他のステップは同一であり同一のステップ番号で示している。尚、図13についても図15と同様な変更がなされている。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
【0081】
ステップS332においては、前記式9の代わりに式14の計算を実行する。
[式14] NINspd ← 前回NINspd
すなわち加速要求時における減速時には(S228でNO)、車速変化補正値NINspdについては、変化させずにその値を維持する。尚、車速変化補正値NINspdは変化させていないので、ステップS332自体を省略して、ステップS228にてNOと判定された場合に直ちにステップS234に処理を移行しても良い。
【0082】
このような処理により、図16に示すごとく、加速要求判定後(t10〜)に、車速SPD(出力軸18の回転数NO)が上昇している場合には(t10〜t11)、前記実施の形態1にて説明したと同様に、車速SPDの上昇に対応したエンジン回転数NEの上昇が生じる。
【0083】
しかし車両の平坦路から登坂路に入ったり向かい風となったりして走行抵抗が上昇すると(t11〜)、アクセル開度ACCPが変化しなくても車速SPDが低下する。このとき、前記式14により車速変化補正値NINspdは低下しないように維持されるので、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)に基づく車速変化補正値NINspdによる場合のような減少は生じない。
【0084】
このため減速時も加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と同じ傾斜係数を用いた場合(図16の破線)とは異なり、実際のエンジン回転数NEの減少の程度、更に車速SPDの減少の程度も、実線のごとく抑制されることになる。
【0085】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU22が加減速状態判定手段及び回転駆動力源回転数変化設定手段に相当する。ECU22が実行する加速要求時目標値算出処理(図15)のステップS228が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS332,S234が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。ECU22が実行する再加速要求時目標値算出処理(図13)においても同様である。
【0086】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1と同様な効果を生じるが、特に、加速要求時に走行抵抗増加により車両が減速してもエンジン回転数NEの低下が生じなくなる。このため加速時目標出力POWERの低下が抑制されて駆動力不足を生じにくくなり、車両減速を助長することがない。このことにより更に効果的にドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0087】
[実施の形態3]
本実施の形態では、前記図7の代わりに図17に示す加速要求時目標値算出処理を実行する。図7と異なるのは、ステップS228〜S232の代わりに、ステップS428〜S436を実行している点である。他のステップは同一であり同一のステップ番号で示している。尚、図13についても図17と同様な変更がなされている。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
【0088】
ステップS226にて加速時目標出力POWERを算出すると、次に前記式8により車速変化補正値NINspdが算出される(S428)。そして次に車速変化分Dnoutcvt≧0か否かが判定される(S430)。ここでDnoutcvt≧0であれば(S430でYES)、次にステップS234にて目標入力軸回転数NINLINEが算出され、ステップS236にて目標出力トルクTEが算出されることになる。したがってDnoutcvt≧0であれば、すなわち定速も含めて実際に加速状態であれば前記図7の場合と同じ処理となる。
【0089】
Dnoutcvt<0の場合には(S430でNO)、次に減速当初、すなわちDnoutcvt≧0の状態からDnoutcvt<0の状態に変化してから最初の処理か否かが判定される(S432)。減速当初であれば(S432でYES)、次に式15により車速変化補正値NINspdの下限値LMTが、前回の制御周期時に求められた車速変化補正値(前回NINspd)に基づいて設定される(S434)。
【0090】
[式15] LMT ← 前回NINspd×K
係数Kはプラスの小数(0<K<1)である。例えばK=0.9である。
次に今回算出されている車速変化補正値NINspdと下限値LMTとに基づいて、式16により車速変化補正値NINspdが新たに算出される(S436)。
【0091】
[式16] NINspd ← MAX(NINspd,LMT)
ここでMAX()は()内の数値の大きい方を抽出する演算子である。
このことにより上記式16にて新たに設定される車速変化補正値NINspdは、LMTの値を下限とすることで、今回のステップS428にて算出された車速変化補正値NINspdの減少が抑制される。
【0092】
こうして下限値LMTにより減少が抑制された車速変化補正値NINspdにより、以下、ステップS234にて目標入力軸回転数NINLINEが算出され、ステップS236にて目標出力トルクTEが算出されることになる。
【0093】
以後の制御周期においてDnoutcvt<0(S430でNO)の状態が継続すると、ステップS432ではNOと判定されて、以後、固定された下限値LMTにて車速変化補正値NINspdの減少が抑制される。
【0094】
したがって図18に示すごとく、加速要求判定後(t20〜)に、車速SPD(出力軸18の回転数NO)が上昇している場合には(t20〜t21)、前記実施の形態1にて説明したと同様に、車速SPDの上昇に対応したエンジン回転数NEの上昇が生じる。
【0095】
しかし車両の平坦路から登坂路に入ったり向かい風となったりして走行抵抗が上昇すると(t21〜)、アクセル開度ACCPが変化しなくても車速SPDは低下する。ただし少しエンジン回転数NEが低下すると前記式16により車速変化補正値NINspdは下限値LMTに到達するので(t22)、以後、車速変化補正値NINspdは維持される。このため、加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)による車速変化補正値NINspdにより減少されるよりも、目標入力軸回転数NINLINEの減少の程度は小さくなる。
【0096】
このため減速時も加速状態傾斜係数βa(SPD,ACCP)と同じ傾斜係数を用いた場合(図18の破線)とは異なり、実際のエンジン回転数NEの減少の程度、更に車速SPDの減少の程度も、実線のごとく抑制されることになる。
【0097】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU22が加減速状態判定手段及び回転駆動力源回転数変化設定手段に相当する。ECU22が実行する加速要求時目標値算出処理(図17)のステップS430が加減速状態判定手段としての処理に、ステップS432〜S436,S234が回転駆動力源回転数変化設定手段としての処理に相当する。ECU22が実行する再加速要求時目標値算出処理(図13)においても同様である。
【0098】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の場合と同様な効果を生じるが、特に、加速要求時に走行抵抗増加により車両が減速しても、少し低下するがその後はエンジン回転数NEの低下が生じなくなる。このため加速時目標出力POWERの低下が抑制されて駆動力不足を生じにくくなり、車両減速を助長することがない。このことにより、より効果的にドライバーに違和感を生じさせないようにできる。
【0099】
[その他の実施の形態]
(a).前記各実施の形態において、前記式6の右辺のアクセル踏込補正値force(ACCP,SPD)と車速変化補正値FORCEspdとのいずれか一方又は両方は、一定値でも良く、又は設けられていなくても良い。
【0100】
前記式10の右辺のアクセル速度補正値NIN(dACCP,ACCP)についても一定値でも良く、又は設けられていなくても良い。
(b).前記各実施の形態においては、スロットル開度TAによりエンジン4の出力トルクが調節されていたが、燃料噴射量によりエンジン4の出力トルクを調節しても良い。
【0101】
前記各実施の形態において、車両にはガソリンエンジンが搭載されていたがディーゼルエンジンでも良く、この場合には燃料噴射量により出力トルクを調節することになる。
(c).目標値算出制御処理(図2)では低μ路の判定(S108)が存在したが、低μ路判定については特にここに設けなくても良い。
【0102】
(d).加速要求は、ドライバーが車両に要求する出力量を表すパラメータであり、前記各実施の形態においてはアクセルペダル34の踏込量を示すアクセル開度ACCPの状態で判定した。これ以外に、スロットル弁30の開度を示すスロットル開度TA、燃料噴射量、エンジンの吸気管により吸入される吸入空気量などの状態を判定しても良い。
【0103】
(e).前記各実施の形態では、無段変速機としてはベルト式無段変速機を用いていたが、他の構造の無段変速機、例えばトロイダル型無段変速機などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施の形態1において、CVTを利用した車両の動力伝達機構を表すブロック図。
【図2】実施の形態1のECUが実行する目標値算出制御処理のフローチャート。
【図3】同じくフラグ設定処理のフローチャート。
【図4】同じく通常時目標値算出処理のフローチャート。
【図5】マップMAPforceの構成を示すグラフ。
【図6】マップMAPninの構成を示すグラフ。
【図7】実施の形態1のECUが実行する加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図8】図5の関係を拡大して示したグラフ。
【図9】加速要求時に用いられるマップMAPβaの構成を示すグラフ。
【図10】加速要求時に用いられるマップMAPβbの構成を示すグラフ。
【図11】アクセル開度ACCPとアクセル踏込補正値NIN(ACCP)との関係を示すグラフ。
【図12】実施の形態1における加速要求時での制御の一例を示すタイミングチャート。
【図13】実施の形態1のECUが実行する再加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図14】同じく減速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図15】実施の形態2のECUが実行する加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図16】実施の形態2における加速要求時での制御の一例を示すタイミングチャート。
【図17】実施の形態3のECUが実行する加速要求時目標値算出処理のフローチャート。
【図18】実施の形態3における加速要求時での制御の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0105】
2…CVT、2a,2b…可変プーリ、2c…伝動ベルト、2d,2e…油圧シリンダ、4…エンジン、4a…燃料噴射弁、6…トルクコンバータ、8…前後進切換装置、10…減速歯車、12…差動歯車装置、14L,14R…左右の駆動輪、16…入力軸、18…出力軸、20…油圧制御回路、22…ECU、24…シフトレバー、26…操作位置検出センサ、28…スロットルアクチュエータ、30…スロットル弁、32…スロットルセンサ、34…アクセルペダル、36…アクセル操作量センサ、38…エンジン回転数センサ、40…車速センサ(出力軸回転数センサ)、42…入力軸回転数センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力源の出力を無段変速機を介して走行駆動力として出力する車両において、加速要求時に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させる駆動力源回転数制御装置であって、
加速要求時に車両が加速状態にあるか減速状態にあるかを判定する加減速状態判定手段と、
加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、回転駆動力源回転数の低下を抑制する回転駆動力源回転数変化設定手段と、
を備えたことを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合は加速状態にあると判定された場合よりも、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動を鈍化させることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項3】
請求項2において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、車速変化に対する回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて加速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値より、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値を小さく設定することを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項4】
請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、車速変化に前記回転駆動力源回転数を連動させないことを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項5】
請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には前記回転駆動力源回転数の下限を設けることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動は、回転駆動力源の目標回転数を車速変化に対して連動させることにより実行され、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合に前記目標回転数の調節により前記回転駆動力源回転数の低下を抑制することを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、回転駆動力源回転数を、車速変化と共に出力要求量変化にも連動させていることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記回転駆動力源は内燃機関であることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、出力要求量と車速とに基づいて算出された目標駆動力を達成するように無段変速機の目標入力軸回転数及び回転駆動力源の目標出力トルクを算出し、該目標入力軸回転数に基づき、前記無段変速機の変速比が制御されていることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項1】
回転駆動力源の出力を無段変速機を介して走行駆動力として出力する車両において、加速要求時に車速変化に回転駆動力源の回転数を連動させる駆動力源回転数制御装置であって、
加速要求時に車両が加速状態にあるか減速状態にあるかを判定する加減速状態判定手段と、
加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、回転駆動力源回転数の低下を抑制する回転駆動力源回転数変化設定手段と、
を備えたことを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合は加速状態にあると判定された場合よりも、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動を鈍化させることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項3】
請求項2において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、加速要求時に車速変化に回転駆動力源回転数を連動させるために、車速変化に対する回転駆動力源回転数の変化勾配を設定することで前記連動を実行するに際して、前記加減速状態判定手段にて加速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値より、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合の前記変化勾配の絶対値を小さく設定することを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項4】
請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には、車速変化に前記回転駆動力源回転数を連動させないことを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項5】
請求項1において、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合には前記回転駆動力源回転数の下限を設けることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、車速変化に対する回転駆動力源回転数の連動は、回転駆動力源の目標回転数を車速変化に対して連動させることにより実行され、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、前記加減速状態判定手段にて減速状態にあると判定された場合に前記目標回転数の調節により前記回転駆動力源回転数の低下を抑制することを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記回転駆動力源回転数変化設定手段は、回転駆動力源回転数を、車速変化と共に出力要求量変化にも連動させていることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記回転駆動力源は内燃機関であることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、出力要求量と車速とに基づいて算出された目標駆動力を達成するように無段変速機の目標入力軸回転数及び回転駆動力源の目標出力トルクを算出し、該目標入力軸回転数に基づき、前記無段変速機の変速比が制御されていることを特徴とする駆動力源回転数制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−121394(P2009−121394A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298067(P2007−298067)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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