説明

1−[3−[3−(4−クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]−ピペリジン一塩酸塩

1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの新規塩。本発明は、新規結晶1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩、各々の製造及び使用方法、並びにかかる化合物を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、その製造法、それを含む医薬組成物、及び内科的疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ヒスタミンH3受容体リガンド性及びその結果生じるその薬理学的活性を有する医薬品は、EP-980300に記載されている。開示されている医薬品の中で特に重要な生成物は、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンである。当該化合物は、遊離の塩基として及びシュウ酸塩として開示されている。
【0003】
遊離塩基としての1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの使用は、その油状性のために制限されている。対照的に、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン シュウ酸塩は、結晶性物質であるが、その低い水溶性(23℃で0.025 g/ml)はまた、医薬成分としての使用を制限する。
【0004】
次の特許EP-1100503及びEP-1428820は、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの特定の塩を記載する。しかしながら、具体的に記載されている唯一のものは、シュウ酸塩である。結晶性一塩酸塩は、記載されていない。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
我々は、現在、驚くべきことに、これまで記載されている遊離塩基及びシュウ酸塩に代わるものとして使用することができる、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの新規な塩を発見した。
【0006】
本発明の局面は、式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
で表される、結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン及びその薬学的に許容される水和物を含む溶媒和物を提供する。
【0009】
化合物(I)は、6±0.5%の最高水含量を有し、1112、1101、2936、2868、1455、2647、2551、1492及び802±5 cm-1に特徴的ピークを示す。
【0010】
本明細書に記載の結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンは、実施例3に含まれる実験データに示される特徴的ピーク(2θ):11.2°、19.9°、20.7℃及び34.1°(±0.2°)を有する、粉末X線回折パターンを有する。
【0011】
結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の水溶性(23℃で4 g/ml)は、予期しないことに、シュウ酸塩の水溶性よりも非常に高い。更に、一塩酸塩は、実施例4に含まれる実験データに示される他の塩よりも、酸化条件に対してより高い安定性プロファイルを示す。従って、結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンは、医薬成分として使用するためのより好適な塩であることが明らかになった。
【0012】
結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、変動する水含量を示すことがある。しかしながら、異なった試料から得られる粉末X線回折パターンは、実施例3の表2に示される異なった水含量に関連した小さな変化を除いて、試料の全てが同一の結晶構造に対応する、ことを示している。
【0013】
実験的研究によれば、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の結晶中の水含量は、微量から6±0.5%の範囲である。
【0014】
別の局面では、本発明は、好適な溶媒中で、遊離塩基生成物を、塩化水素及び塩酸から選ばれる反応物と反応させ、そして沈殿した最終生成物を単離することによる、結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の製造法を提供する。反応は室温でほとんど起こる。好ましくは、反応物は、塩化水素である。より好ましくは、塩化水素は、塩化水素ガスとして加えられる。
【0015】
好適な溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、水、酢酸エチル、i-プロパノール、ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ヘキサン、トルエン、t-ブチル-メチルエーテル、トリクロロエタン等、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる。好ましくは、溶媒は酢酸エチルである。
【0016】
最終生成物の沈殿は、質量反応を冷却することにより、達成することができる。この操作に好適な温度は、0〜-15℃である。
【0017】
沈殿した最終生成物は、有機化学で使用される様々な通常の技術により単離することができる。最も好ましいのは、濾過である。
【0018】
単離された最終生成物は、有機化学の様々な慣用的技術により精製することができる。最も好ましいのは、結晶化である。
【0019】
結晶化ステップで用いられる好適な溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、水、酢酸エチル、i-プロパノール、ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ヘキサン、トルエン、t-ブチル-メチルエーテル、トリクロロエタン等、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる。好ましくは、結晶化ステップで用いられる好適な溶媒は、酢酸エチルとi-プロパノールとの混合物である。
【0020】
別の局面によれば、本発明は、中枢神経系疾患、例えば、癲癇、アルツハイマー病、並びに注意欠陥障害、不眠障害及び記憶障害、高齢者の精神疾患、抑鬱状態及び無力状態における認識障害、並びに目眩及び乗り物酔いに罹っている人の治療方法であって、式(I)の結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の治療上有効量、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を当該患者に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明の局面は、代替的には、上記疾患の治療のための医薬の製造のための、結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの使用として述べることができる。
【0021】
別の局面では、本発明は、肥満の治療法であって、式(I)の結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の治療上有効量、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を当該患者に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明のこの局面は、代替的に、肥満の治療のための医薬の製造のための、結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの使用として述べることができる。
【0022】
別の局面では、本発明は、睡眠障害、睡眠時無呼吸、睡眠誘導無呼吸、日中の眠気、ストレス、片頭痛、頭痛、疼痛、心因性の障害、喘息、気管支炎、鼻炎、気管炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クーロン病、過敏性腸症候群、膀胱炎、子宮筋層炎、尿糞失禁、蕁麻疹、痒み、関節炎、結膜炎、月経前症候群、前立腺炎症、生殖障害、リウマチ様症状及び眼症状、唾液分泌過多、痙攣、鬱病、視床下部下垂体分泌性、脳循環性及び免疫系の障害を治療する方法であって、式(I)の結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の治療上有効量及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を当該患者に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明のこの局面は、代替的に、上記疾患の治療のための医薬の製造のための、結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の使用として述べることができる。
【0023】
本発明によれば、用語「治療」は、疾患又は病的症状の治療及び予防を包含する。
【0024】
別の局面によれば、本発明は、抗精神病薬又は抗鬱剤に関連する望ましくない副作用の抑制方法を提供する。抗精神病薬は、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン及びセルチンドール等を称し;抗鬱剤は、ミルタザピン、アミトリプチリン及びパロキセチン等を称する。精神病薬又は抗鬱剤に関連する望ましくない副作用は、体重増加、眠気及び認識障害を含む。
【0025】
本発明の組成物は、通常、経口投与に適しているが、非経口投与の溶解用製剤も、本発明の範囲内にある。
【0026】
本組成物は、通常、ヒト患者に、活性成分の1〜200 mg、より一般的には5〜100 mg、例えば10〜50 mg、例えば10、12.5、15、20、25、30又は40 mgを含む単位-用量組成物として提供される。より好ましくは、単位用量は、活性成分の20又は40 mgを含む。かかる組成物は、投与された活性剤の総量が活性成分の5〜400 mgの範囲内にあるように、通常、1日に1〜6回、例えば1日に2、3又は4回投与される。従って、好適な日量は、0.05〜6 mg/kgであり、より好ましくは0.14〜0.86 mg/kgである。
【0027】
好ましい単位投与形態は、錠剤、コート錠剤、カプセル剤及び経口液剤を含む。より好ましい形態はコート錠剤である。
【0028】
別の局面では、本発明は、活性成分として、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩を含む組成物を提供する。別の局面では、本発明はまた、抗精神病薬又は抗鬱剤を更に含む組成物を提供する。代表的な抗精神病薬は、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン及びセルチンドールからなる群より選ばれ;代表的な抗鬱剤は、ミルタザピン、アミトリプチリン及びパロキセチンからなる群より選ばれる。
【0029】
抗精神病薬又は抗鬱剤及び本発明の化合物を含む組成物において、抗精神病薬又は抗鬱剤の量は、通常の治療的用量、それは、向精神薬療法の望ましくない副作用、すなわち体重増加、目眩及び記憶障害の少なくとも1つを抑制するために十分な用量の範囲の1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンを意味する。調製物の例は、約5〜約80 mgの用量の範囲の本発明の化合物、及びa) 約3〜約20 mgのオランザピン、b) 約0.5〜約10 mgのリスペリドン、c)約10〜約30 mgのアリピプラゾール、又はd) 約15〜約45 mgのミルタザピンを含む。
【0030】
本発明の組成物は、慣用的な混合法、例えば調合、充填、圧縮及びコーティングにより製剤化することができる。
【0031】
本発明で使用するための好適な担体は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑剤及び流動促進剤を含む。更に、組成物は、フィルムコーティングポリマーを含む。
【0032】
希釈剤は、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、無水ラクトース、スプレイ乾燥ラクトース、水和ラクトース、セルロース、スプレイ乾燥微晶性セルロース、微晶性セルロースとラクトースとを含むスプレイ乾燥された組み合わせ、ケイ化微晶性セルロース、カオリン、ベントナイト、マンニトール、デンプン、炭酸マグネシウム、ソルビトール、スクロース、イノシトール、圧縮性糖、スレアロース及びキシリトール、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。希釈剤の総重量は、20〜90%の範囲である。
【0033】
結合剤は、アカシア、微晶性セルロース、セルロース性溶液、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン溶液10〜20%、グルコース溶液20〜50%、ポリビニルピロリドン、デンプンペースト10〜20%、ソルビトール、トラガカント、ポリエチレングリコール、マルトデキストリン、ポリメタクリレート及びポビドン(povydone)及びそれらの混合物からなる群より選ばれる。結合剤の総最高重量は、約20%である。
【0034】
崩壊剤は、コーンスターチ、ポテトスターチ、メチルセルロース、セルロース、カルボキシメチルセルロース又はそれらの塩、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩、粘土鉱物粉末、ベントナイト/ビーガム(登録商標)、湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、超崩壊剤(必要とされる低濃度、すなわち2〜4%、により命名されている)、クロスカルメロース、クロスポピドン及びグリコール酸デンプンナトリウム、並びにそれらの混合物を含む群より選ばれる。崩壊剤の総重量は、2〜5%の範囲である。
【0035】
滑剤は、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、1%未満の濃度のステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素化植物油、タルク及びベヘン酸グリセリル、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる。滑剤の総最高重量は約5%である。
【0036】
流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、タルク及びコーンスターチ及びそれらの混合物からなる群より選ばれる。流動促進剤の総重量は、0.1〜1%の範囲にある。
【0037】
フィルムコートポリマーは、アクリル酸ポリマー、好ましくは基本的なブチル化メタクリレートコポリマー、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等、ポリビニルアルコール及びそれらと多糖との混合物、並びにそれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0038】
コーティングポリマー懸濁液の例は、基本的なブチル化メタクリレートコポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸及び精製水を含む。
【0039】
フィルムコーティングポリマーは、必要であれば、可塑剤、滑剤及び顔料も含む。
【0040】
顔料懸濁液の例は、タルク、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム及び精製水を含む。
【0041】
本説明及びクレームを通じて、用語「含む」及びその変形、例えば「含むこと」は、他の技術的特徴、添加剤、成分又はステップを排除する意図ではない。
【0042】
本発明の別の目的、利点及び特徴は、本説明の実験に際に当業者には明らかであるか、又は本発明の実施により確認することができる。以下の実施例は、説明のために提供するものであり、本発明を限定する意図ではない。
【0043】
具体的な実施態様の詳細な説明
実施例 1 : 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン
EP-982300の実施例78に開示されている方法によれば、3-ピペリジノプロパノレート(2.127 kg; 12.88 mol)、3-(4-クロロフェニル)プロピル メシレート (1.121 kg; 4.51 mol) 及び0.322 molの15-クラウン-5の4.5 kgの乾燥トルエンを、4時間リフラックスさせた。溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した (溶出液: メチレンクロリド/メタノール (90/10))。減圧(0.3〜0.7 mmHg)下に及び207〜210℃の加熱ジャケットを有する分留具中で、得られたオイルを蒸留した。180〜200℃のジャケット温度で0.001〜0.010 mmHgにおいて、主要分画及び蒸留分画を回収した。得られたオイル(1.0 kg; 3.38 mol)は、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンに対応する。収率75%。
【0044】
実施例 2: 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩
調製
蒸留した1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン(1.0 kg)及び無水酢酸エチル(4.5 kg)を、冷浴及びガス導入口を備えた10-Lガラス容器に移した。塩化水素ガスの蒸気を20〜25℃で反応混合物中でバブルさせた。
【0045】
溶液のpHを、反応混合物の0.5 mL試料を取り、5 mLの脱イオン水で希釈することによりチェックした。最終pHは、約3〜4である。
【0046】
混合物を-10℃(-12℃)に冷却し、この温度で1時間攪拌した。焼結ガラスフィルターを用いて沈殿を濾過し、予め0〜5℃に冷却した、0.5 Lの無水酢酸エチルで洗浄した。生成物を12時間の最少時間、50℃の真空オーブン中で乾燥した。得られた粗1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、1.10 kgの重量であった。
【0047】
精製
上記の粗生成物、3.98 kgの無水酢酸エチル及び0.35 kgのi-プロパノールの混合物を、加熱及び冷却装置を備えた10-Lガラス容器中で、55〜60℃でゆっくりと加熱した。溶液が完成したときに、熱絶縁焼結ガラスフィルターを通して濾過し、55〜60℃の温度を保持した。溶液を10 Lガラス容器に移し、内容物を約1時間、0〜5℃にゆっくりと冷却した。混合物をこの温度で1時間攪拌し、焼結ガラスフィルターを通して沈殿を濾過した。0〜5℃に冷却した、1.6 kgの無水酢酸エチル及び0.14 kgのi-プロパノールの混合物で、この固体を洗浄した。融点117〜119℃。収率80%。
IRスペクトル (KBr): 1112及び1101 (C-O エーテル/ St. asym)、2936及び2868 (アルカン CH(CH2)/ St.)、1455 (アルカン CH(CH2)/ Deform.)、2647及び2551 (アミン塩/ St.)、1492 (アミン/ St.)、802 (芳香族/ Deform.) cm-1のバンド。
【0048】
実施例 3: X-線回折試験
Nonius Kappa電荷結合素子装置を−158℃で用いて結晶データを得た。使用した波長は0.71073Åであった。結晶構造は、直接的な方法により解決し、WinGXパッケージ環境内のSHELX97の手段により精緻化した。
【0049】
結晶性1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩が、変動する水含量を示すことを発見した。しかしながら、全ての分析試料は、水含量に関係なく同一の結晶構造を示した。実験的試験によれば、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩中の水含量は、最高6±0.5%に到達することができる。
【0050】
2.7%の水含量を含む試料の結晶データ及びデータ改良パラメータの概要を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
水分子により部分的に占められる2つの部位は、非対称単位(2つの主要分子も含む)に存在する。
【0053】
各水分子に利用できる体積は約15Å3であり、通常の推定値40Å3よりも低い。
【0054】
競争的メカニズム(主要分子に結合する水の水素結合対水分子で得られる低空隙容積)に因り、結晶構造は部分的に無秩序であり、構造の安定性についての合理的根拠を生じ、構造を変えることなく異なった比率の水分子を提供する。結晶パッキングは、結合N1-H…C12…H-Ow-H…O1により安定化される。異なった水含量を有する試料の粉末X-線回折パターンの単位格子の当てはめから、表2に示すように、格子パラメータ(a、b、c、V)は構造中の水の比率が増えるに従い僅かに減少する、ことが観察された。
【0055】
【表2】

【0056】
纏めると、異なった試料から得られたX-線回折パターンは、異なった水含量に関連する些細な変更を除いて、全ての試料が同一の結晶構造に対応することを示す。
【0057】
結晶構造の原子座標を表3に示す。結合の長さ及び角度を表4に示す。ねじれ角を表5に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
【表9】

【0065】
【表10】

【0066】
X-線回折パターンを図1に示す。結晶1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の特徴的ピーク(2θ)は、11.2°、19.9°、20.7°及び34.1°(±0.2°)であり:別の特徴的ピークは、11.2°、15.4°、16.3°、16.9°、17.8°、19.9°、20.7°、21.0°、21.8°、22.6°、24.5°、24.6°、25.0°、25.5°、26.3°、28.3°、30.3°、34.1°、35.8°、40.0°、46.0°(±0.2°)である。
【0067】
実施例 4: 結晶1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩及びマレイン酸塩の、溶解性及び酸化条件に対する安定性の決定
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩及びマレイン酸塩の溶解性は、様々な条件:室温、pH 4.5〜pH 7.4の水、これは胃媒体及び腸媒体を各々刺激するようである、で実行した。結果を表6に示す。
【0068】
【表11】

【0069】
結果は、一塩酸塩及びコハク酸塩の溶解性は、シュウ酸塩及びマレイン酸塩のそれよりも非常に高いことを示す。
【0070】
上記の塩の融点はまた、酸化条件に対するその安定性を確認するために窒素及び酸素大気下で決定した。
【0071】
4つの塩は、酸化条件とは関係なく、実質的にその融点が変わらなかった。そのため、4つの塩の全ては等しく安定である。
【0072】
それにもかかわらず、コハク酸塩及びマレイン酸塩の低融点は、低融点が中程度の温度での乾燥操作を困難にするため、一塩酸塩に比べて工業的適用に適応させなかった。結果を表7に示す。
【0073】
【表12】

【0074】
結論として、一塩酸塩は、他の塩(シュウ酸塩及びマレイン酸塩)よりも優れた溶解性プロファイルを示すだけでなく、コハク酸塩及びマレイン酸塩よりも酸化条件に対して優れた安定性を示す。そのため、これらの性質の全ての組み合わせは、予測できないことに、一塩酸塩を医薬成分としての使用に好ましくさせた。
【0075】
実施例 5: ヒスタミンH3受容体での主な薬理学的作用
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、高度に選択されたかつ強力なヒトH3-受容体(H3R)逆アゴニスト(アンタゴニスト)である。そのプロファイルは、特定の受容体であるH3受容体逆アゴニスト性を確立するための、様々なin vitroアッセイを用いて、研究されてきた。H3R (G-タンパク質-結合受容体) は、野生型及び組換え受容体アッセイ系において、アゴニストの非存在下に自発的に起こる活性である構成的活性を有する(Rouleau et al., Brit. J. Pharmacol., 2002, 135: 383-392)。内因性リガンド又はアゴニストの非存在下で、受容体群のある割合は、自然発生的なアロステリック転移を経て、G-タンパク質に結合することができる構造をとる。H3R構成的活性は、ヒスタミン放出を減少させることによりヒスタミン感作性神経活性を制御する。機能性アッセイを用いて、原型的アンタゴニスト、例えばチオペラミド及びシプロキシファンは実際に逆アゴニストとして作用する、ことが判明した。逆アゴニストは、活性状態を犠牲にして受容体の不活性状態を安定化することによりその効果を達成する。従って、それらは構成的受容体活性のレベルを下げ、ヒスタミン感作性神経を活性化する。対照的に、中性のアンタゴニストは、受容体の2つの構造と等しく混合し、基本的な活性に影響を与えない。
【0076】
ヒスタミンH3受容体結合
H3Rに対する1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の親和定数の決定は、マウス脳皮質膜及び様々な動物で発現される組換えヒトH3受容体で行った。表8は、様々な系で観察されたKi値を纏める。
【0077】
【表13】

【0078】
これらの結果から、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、同一の試験系において、マウスH3Rに比べて、ヒトH3Rでは約6倍超の効力であることが判明した。
【0079】
ヒスタミン受容体での1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の選択性
H3Rでの親和性と他のヒスタミン受容体での親和性との間には、3オーダーの大きさの差が示された(表9)。
【0080】
【表14】

【0081】
ヒスタミンH3受容体-介在反応
[3H]アラキドン酸のA23187イオノフォア-誘導放出:
300〜400 fmol/mgタンパク質の濃度でラット又はヒトH3Rを発現するCHO細胞からのイオノフォアA23187-誘導[3H]アラキドン酸(AA)放出に対する、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の最大効果は、Morisset et al. (Nature, 2000, 408, 860-864)に従って試験した。
【0082】
ラット組換え系では、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(1μM)は、A23187-誘導[3H]AA放出を40%減少させた(1μM濃度のシプロキシファンにより奏されるのと同一である)。ヒト組換え系では、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(1μM)は、A23187-誘導[3H]AA放出を20%減少させた(すなわち、1μM濃度のシプロキシファンにより奏される減少と同程度である)。
【0083】
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の強力な効果は、2つの実験において、その強力な逆アゴニスト活性を証明した。
【0084】
ヒトH3受容体への[35S]GTPγS特異的結合:
様々な濃度でヒトH3Rを発現するCHO細胞からの膜調製物への[35S]GTPγS特異的結合に対する、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の効果も試験した。410 fmol/mgタンパク質の濃度では、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、1.5±0.1 nMのEC50値を有する[35S]GTPγSの特異的結合を濃度-依存的に減少させ、最高で25%減少させた。1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、逆アゴニストアナログであるシプロキシファンにより誘導される阻害よりもより強力な最大阻害を引き起こした(1μM; 17%減少)。
【0085】
より高い受容体発現濃度(1000〜1100 fmol/mgタンパク質)では、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、同様の効果を示した。1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩 (10 nM) は、[35S]GTPγS特異的結合において22%減少を誘導し、これは、1μMシプロキシファンにより起こる16%の現象よりも明らかに高い効果である。このことは、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩が、高い固有活性を有する強力な逆アゴニストとして働くことを示している。
【0086】
加えて、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、[35S]GTPγS特異的結合におけるH3アゴニストであるイメチット-誘導増加を、ヒトH3R(#1000 fmol/mgタンパク質)を安定的に発現するHEK293膜に転じる。従って、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、高い効力の競争的H3Rアンタゴニストの性質を示す(0.31 nMのKB値)。
【0087】
従って、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、EC50、Emax及びKB値の点から、ヒトH3Rでの極めて強力な逆アゴニスト/アンタゴニストである。
【0088】
実施例 6: 抗癲癇活性の薬理学的評価
癲癇における、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の潜在的な利点は、ラット及びマウスにおける異なった痙攣モデルで評価した。痙攣の発症及び期間、並びに脳電図(EEG)記録上の出現を測定した。
【0089】
方法:3種の痙攣動物モデル(全身性非痙攣発作、全身性強直性間代性発作、及び側頭葉発作)を以下のように使用した。
【0090】
1. GAERSラットの欠伸発作 [Danober at al., Prog. Neurobio., 1998, 55, 27-57]
自発的な全身性非痙攣発作(欠伸発作)を有するウィスターラット血統をStrasbourg (Strasbourgの全身性欠伸発作ラット又はGAERS)で開発した。発作は、行動停止を伴う、EEG上の、大脳両側からの同期性の棘徐波放電(spike-and-wave discharges)(7〜9Hz)により特徴付けられる。これらの放電は、動物が覚醒状態にあるときに、一般的に、約20秒間続き、ずっと自発的に起こる。このモデルの薬理学的反応性は、ヒト欠伸発作に類似する(例えば、バルプロエート及びエトスクシミドは保護的である)。回復期間の後に、20分超の参照期間、移植ラット(皮質及び海馬EEG電極)を記録した。次いで、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(5 mg又は20 mg/kg、i.p.)又は生理食塩水を投与し(1群当たりn=8)、EEG記録を60分間続けた。ラットは、1週間後に別の処置を施した。2つの処置期間中、20分間、欠伸発作の累積期間を測定した。EEG記録の高速フーリエ変換分析は、発作期及び発作間欠期の間の律動変動の検出を可能にした(バックグランド活性)。
【0091】
2. マウスにおける電気ショック [Swinyard et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1952, 106, 319-330]
強直性間代性痙攣を、短い電気ショック(50 Hz、80 mA強度、0.2秒期間)により齧歯動物の耳に引き起こした。マウスは、脚及び体の強直性伸展及び/又は強直性屈曲を示し、15〜20秒間、間代発作を起こした。小さい振幅を伴い、強直期間、皮質のEEG上に高周波振幅(activity)が観察された。電気ショック-誘導発作は、患者の強直性発作と同一の反応性を有し、抗痙攣薬(AED)、例えばフェニトイン、フェノバリビタール、カルバマゼピン、ベンゾジアゼピン及びバルプロエートにより抑制される。マウス(1群当たりn=8)に、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(100 mg/kg、p.o.)又は生理食塩水を与えた。注射中に電気ショック試験60分間適用し、各発作の期間を測定した。
【0092】
3. マウスにおけるカイネート(kainate)-誘導側頭葉発作 [Riban et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 2002, 112, 101-111]
マウスの海馬背面へのカイニン酸(1 nmolの50 ml溶液)の片側注射は、2〜3週間後に自発的な再発性の焦点性発作を起こす、非痙攣発作を誘導した。発作(休眠マウスで1時間当たり5〜20回)は、行動停止及び/又は常同症、更に注射された海馬において記録される同期性棘徐波放電を伴うことにより特徴付けられる。このモデルにおいて試験されたAEDの全て(バルプロエート、カルバマゼピン、フェニトイン、レベチラセタム)は、一時的に発作を抑制するベンゾジアゼピンを除いて、顕著な効果を奏しなかった。このモデルは、ヒトにおいて通常、薬物-耐性である痙攣の形態である、近心側頭葉痙攣の、行動性、EEG、薬理学的及び組織学的特徴を再発する。回復期間の後、移植マウス(EEG記録用)にカイニン酸を注射した。マウスは、一致した海馬発作を有する動物の選択用の注射の後少なくとも3週間、EEGを記録した。次いで、20分の参照記録期間の後、選択されたマウスに、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(10又は20 mg/kg、i.p.)又は生理食塩水のいずれかを与え、60分間記録を継続した。カウンタ・バランス・オーダーで、処置を施した(2つの処置の間の1週間のウォシュアウト期間後)。
【0093】
痙攣モデルにおける1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の概要:
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、生成物(20 mg/kg、i.p.)の投与後20、40及び60分に、GAERSラットにおける棘徐波放電の数及び累積期間を顕著に減少させた。棘徐波放電の累積期間は、生理食塩水と比べて、それぞれ、5及び20 mg/kgの用量で25及び77%減少した(<0.05、対生理食塩水)。
【0094】
最大の電気ショック痙攣モデルでは、完全な保護が観察された。
【0095】
マウスにおけるカイナイト(kianite)-誘導海馬痙攣では、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(10 mg/kg、i.p.)は、投与後最初の40分間、海馬放電の累積期間及び数を減少させた(<0.05、対生理食塩水)。20 mg/kg i.p.の用量では、海馬放電の累積期間も減少した(60分で<0.05)。
【0096】
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の抗痙攣効果は、発作間欠期のスペクトル分析により明らかであるように、EEGバッググラウンド活性での顕著な変化に関連しなかった。
【0097】
実施例 7: 抗痙攣薬(AED)との薬理学的相互作用
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンの臨床的兆候は、痙攣であるので、抗痙攣薬(AED)との薬理学的相互作用を試験した。
【0098】
マウスにおけるrotarod試験に対するAED相互作用
本試験の目的は、運動協調性の標準化モデル、すなわちマウスのrotarod試験における、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩と、様々な抗痙攣薬及び他のGABA-作用薬との共投与の後の、可能な薬効学的相互作用を試験することである。
【0099】
方法: 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(10 mg/kg)、カルバマゼピン(25 mg/kg)、バロプロン酸ナトリウム (200 mg/kg)、フェニトイン (25 mg/kg)、ジアゼパム (2 mg/kg)及びフェノバルビタール (15 mg/kg)を単回用量処置で、単独で、及び1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩と組み合わせて、腹腔内投与した。AEDの投与15分前に、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の共投与を行った。動物の1群を対照として用い、ビヒクルのみを注射した。
【0100】
結果は、対照動物に比較して処置群では、運動協調性障害は検出されなかった、ことを示した。更に、これらの実験条件下では、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、上記の化合物を投与したときに運動協調性障害を導く薬理学的相互作用を誘導しない。
【0101】
結論: 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の共投与は、抗痙攣薬及びGABA-作用薬について報告されている運動行動のパターンの変化を含まない、と結論できる。
【0102】
実施例8: 睡眠/覚醒、並びに脳電図(EEG)及び筋電図(EMG)効果
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の、睡眠-覚醒周期制御に対する効果は、自由に動くネコ及びマウスにおいて研究されている。
【0103】
方法: 同様な実験手法をネコ及びマウス試験において使用した。動物は、皮質及び筋肉電極を慢性的に移植し、EEG及びEMGをそれぞれ記録して、その睡眠-覚醒周期をモニターした。手術の回復後に、動物を、防音記録室に個別に飼育し、12時間の明/暗周期で、好適な周囲温度で維持した。各動物における睡眠-覚醒制御の参照的な定性的かつ定量的データを収集するために、4日間、ポリグラフィック記録を行った。次いで、24時間に渡って薬理学的評価を行い、連続して30秒間分析した。ネコについて上記のようにして、覚醒及び睡眠状態を同定した [Petitjean et al., Brain Res., 1975, 88: 439-53] and mice [Valatx and Bugat, Brain Res., 1974, 69: 315-30]。
【0104】
1. ネコの睡眠-覚醒周期試験
手術7日後に、ポリグラフィック記録を開始した。睡眠-覚醒記録基準は、覚醒(W)、軽徐波睡眠(SWS1)、深SWS(SWS2)及び逆説睡眠(PS)を含んだ。EEGのスペクトル解析は、0.8〜2.5 Hz (δ徐波)、8〜15 Hz (スピンドル) 及び20〜45 Hz (β及びγ高速波)の周波数バンドにおいて、高速フーリエ変換により行った。1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩化合物を5又は10 mg/kgの用量で経口的に投与した。
【0105】
2. マウスの睡眠-覚醒周期試験
手術15日(5日間の回復に加えて記録ワイヤーへの10日間の順応)後に、ポリグラフィック記録を開始した。睡眠-覚醒記録基準は、覚醒(W)、軽徐波睡眠(SWS1)、及び逆説睡眠(PS)を含んだ。EEGのスペクトル解析は、0.8〜2.5 Hz、8〜15 Hz及び30〜60 Hzの周波数バンドにおいて、高速フーリエ変換により行った。1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩化合物を2.5、5、10又は20 mg/kgで経口的に投与した。
【0106】
結果
ネコでは、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の経口投与は、SWS、特にSW2及びPSを使って覚醒を用量-依存的に増加させた。10 mg/kgでは、処置後の最初の時間に早々と、覚醒効果が起こり、動物は、6〜12時間、ほとんど変わらずに目が覚めていた。生成物の覚醒効果の効力を、新皮質EEGのスペクトル分析で確認した。実際に、徐波(δ 0.8〜2.5 Hz)及び8〜15 Hzの減少/抑制が観察された。処置後に動物の主な変化は認められなかった。
【0107】
マウスでは、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の経口投与は、覚醒(W)の同様な用量-依存的増加を引き起こした。この効果は、SWS及びPSを使って得られた。この効果は、徐δ波及び8〜15 Hzのスピンドルの減少/抑制、及びEEGスペクトル分析の高速律動(β及びγ周波数)の強力な増加により確認した。処置マウスでは行動変化は認められなかった。
【0108】
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩で処置した2つのマウス種では、W期間に顕著な増加が認められた。ネコでは、10 mg/kgの生成物は、6時間の記録期間中のW期間に79%増加を引き起こした(p<0.01)。10及び20 mg/kgの生成物によって処置されたマウスでは、同様な結果が観察された(それぞれ29及び69%増加、p<0.01)。
【0109】
結論:
これらの結果は、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩が、2つの動物種で覚醒期間を顕著に増加させた、ことを証明した。更に、EEGの結果は、本化合物が、例えば、目立つ行動的変化のない状態で、覚醒及び注意のレベルを強化することにより、覚醒の質を改善することができたことを示唆する。
【0110】
実施例 9: 学習に対する効果
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の向認識(procognitive)効果を2つの-試行対象認識範例で、マウスで試験した。この学習及び記憶範例は、齧歯動物の自発的な探索活動に基づき、加齢及びコリン作用性機能障害の効果に敏感であることが明らかになっている[Scali et al., Neurosci. Lett., 1994, 170, 117-120; Bartolini et al., Biochem. Nehav., 1996, 53, 277-283]。
【0111】
1. スコポラミン-誘導学習障害に対する1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の効果
方法:マウスを、2つの対象の存在下で30分間、ボックスを探索させた。翌日に、60分間隔で2つの試行にマウスを供した。第一試行(T1)の間、マウスを、2つの同一対象を含むボックス内にマウスを置き、対象検索の20秒を終了するために各動物により必要とされる時間を測定した。探索は、対象から2 cmより近い距離に鼻を向け、及び/又は対象に触れることであると考えた。第二試行(T2)については、第一試行で提供された対象の1つを未知の新規な対象と入れ換えた。マウスを5分間ボックス内に置き、自発運動量と共に各対象の探索を測定した。以下のパラメータを測定した:T1において、対象探索の20秒を達成するために必要とされる時間、T2において、親しみのある対象の探索の達成に費やされる時間、T2において、新規対象の活動的な探索に費やされる時間、T2における自発運動量。
【0112】
スコポラミン(0.3 mg/kg, i.p.、チャレンジ前の30分)によって誘導される実験的記憶喪失を覆す、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(5及び15 mg/kg、i.p.、チャレンジ前の40分)の能力を試験した。
【0113】
結果:スコポラミン-誘導記憶喪失は、15 mg/kgの用量で、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩により顕著に(p=0.0056)逆転した。より低用量 (5 mg/kg) では、逆転傾向は、著しくなかった。加えて、スコポラミン-処置マウスで観察された自発運動量の増加は、生成物により著しく変更しなかった。5 mg/kg用量は、マウスが第一試行の学習基準に到達するための時間を変更しなかったが、より高用量ではこの時間は著しく増加した。
【0114】
2. 「自然」忘却に対する1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の効果
方法:マウスを第一試行(T1)に供し、2つの同一対象を含むボックス内に入れ、対象探索の8秒を終了するために各動物により必要とされる時間を測定した。探索は、対象から2 cmより近い距離に鼻を向け、及び/又は対象に触れることであると考えた。第一試行の後直ちに、マウスをビヒクル及びタクリンで処置した (0.25 mg/kg、i.p.)。3時間後に、未知の新規な対象と入れ代った第一試行内に提供された対象の1つを有するボックス内にマウスを入れて、第二試行(T2)を行った。マウスを5分間ボックス内に置き、自発運動量と共に各対象の探索を測定した。
【0115】
以下のパラメータを測定した:T1において、対象探索の8秒を達成するために必要とされる時間、T2において、親しみのある対象の活動的な探索に費やされる時間、T2において、新規対象の活動的な探索に費やされる時間、T2における自発運動量。
【0116】
タクリン処置の存在又は非存在下で自然忘却を調節するための、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(15 mg/kg、i.p.、T1前の30分)の能力を試験した。
【0117】
結果:取得期(T1)の期間は、対象探索の8秒に減少した、一方、スコポラミン-誘導記憶喪失モデルにおいては、この期(20秒)の期間は保持された。これらの条件下では、処置マウスのT1の期間は、対照マウスに比べて顕著に増加した。より短い取得期であるにもかかわらず、「自然」忘却は、アセチルコリンエステラーゼインヒビターがH3受容体アンタゴニスト/逆アゴニストに関連するときに、タクリンの効果が変化することなく、15 mg/kg用量の1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩、及びタクリンにより顕著に減少する。加えて、処置マウスでは、自発運動量の僅かな増加が認められた。
【0118】
スコポラミンにより誘発される「自然」忘却及び学習障害の、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩により生じる逆転のこれらの観察は、原型的な薬物、チオペラミドを含む他のH3受容体アンタゴニスト/逆アゴニストにより提供される非常に多数の観察と一致する。
【0119】
実施例10:動物毒性及び安全薬理学
マウス及びラットにおける急性毒性
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の急性毒性は、マウス及びラットの経口及び静脈内経路により評価されている。
【0120】
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、齧歯動物の良好な安全プロファイルを証明した。マウスでは、効果がない用量は、経口的には> 30 mg/kg、> 5 mg/kg i.v.であり、最大非致死量は100 mg/kgであった。最小致死量は150 mg/kg p.o.及び10 mg/kg, i.v.であった。ラットでは、効果がない用量は、経口的には> 50 mg/kgであり、> 12 mg/kg i.v.であり、最大非致死量は100 mg/kg(単回投与で示す)であった。
【0121】
ラット及びモンキーにおける反復経口投薬試験
ラットでは、13-週反復投薬試験は、最高30 mg/kg/日の1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の十分な寛容性を示した。これは、ラットのNOAEL(無毒性量)として定義され得る用量である。
【0122】
モンキーでは、13-週反復投薬試験は、最高5 mg/kg/日の1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の十分な寛容性を示した。この用量は、モンキーのNOAELとして定義された。
【0123】
安全薬理学
ラット及びモンキーの反復-用量試験で定義されたNOAELと、薬理学的に活性な用量とのの比は、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩が十分な安全限界を有する薬物として働くことができる、ことを示唆する。
【0124】
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩は、in vitro又はin vivoにおいて遺伝毒性が見出されなかった。
【0125】
実施例 11 : 痙攣における臨床的有効性
光敏感性は、刺激列を長引かせる断続的光刺激(IPS)に対する全身性癲癇様反応として定義されているが、癲癇患者の約5%に見られる[Kasteleijn-Nolst Trenite DGA. Acta Neurol. Scand., 1989; 80: 1-149]。ほとんどの他の癲癇とは異なり、光敏感性癲癇は、反射性癲癇であり、癲癇様放電は、研究室ではIPSによりいつでも再現することができる。上限感受性及び下限感受性(フラッシュ当たりの周波数)の決定により、いわゆる光感受性範囲は決定することができる。範囲は、患者の日常生活における発作障害に関連する。この光感受性範囲は、患者では比較的安定であり、抗癲癇薬により減じられ又は取り除かれる。従って、光感受性範囲を用いる技術は、ヒトの実験的薬剤の単回投与の癲癇性を研究するための優れたモデルであることが判明した。
【0126】
従って、この単盲検試験の目標は、全身性欠伸発作を予測する当該ヒトモデルにおける、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩(単回投与)の抗痙攣効果を評価することであった。単盲検デザインは、2日目の、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩による投与、及び1日目のプラシーボ評価による処置の後に観察されるIPS応答の比較バイアスを減少させるために選択した。
【0127】
12患者を登録した。4患者は20 mgの用量を受けた。これらの患者の中で、1患者は、6時間続く光発作性応答(PPR)の全体的抑制を示した。4患者は40 mgの用量を受けた。これらの患者の中で、1患者は、PPRの部分的抑制及びPPRの全体的抑制を示した。4患者は60 mgの用量を受け、4患者全てにおいて臨床的応答が見られた。更に、2患者は、PPRの全体的抑制を示した。効果は、投与後1〜2時間に現れ、8時間超、最高36時間続いた(1患者、表10)。
【0128】
【表15】

【0129】
【表16】

【0130】
実施例 12: オランザピンとの相互作用:主観的満腹(subjective satiety)の分析
6ボランティアの主観的満腹を評価するために、単一センターで、非盲検の、プラシーボ-制御第I相試験を行った。この試験に登録したボランティアは、1日に5つの投与期間を受けた。ボランティアは、期間1でプラシーボ、期間2でオランザピン5 mg、期間3で1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩60 mg、期間4でオランザピン5 mg及び1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩60 mg、そして期間5でオランザピン2.5 mg及び1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩60 mgを受けた。
【0131】
飢餓感、食欲及び予測消費に顕著な治療効果が認められた。
【0132】
プラシーボと比べて、主観的満腹は、5 mgのオランザピンの後に顕著に減少した。この効果は、オランザピンで治療された患者の確立された体重増加と相関し得る。1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩60 mg対プラシーボの後の主観的満腹の比較は、著しく増加した。満腹減少程度は、用量-依存的関係を示す。従って、主観的満腹は、2つの処置、すなわち、オランザピン5 mgと、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩60 mgとでは統計的に異なる。より重要なことには、オランザピン5 mgと1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩60 mgとの組み合わせは、この化合物がオランザピンの効果を弱めることができ、その結果、主観的満腹をプラシーボに重ね合わせる、ことを示す。
【0133】
実施例 13: 覚醒(awakening)及び覚醒(vigilance)
に対する効果
単一のセンターで、二重盲検の無作為にプラシーボ-制御した、単一の上昇(ascending)用量で、36ボランティアで脳波計試験を行った。対象を群1〜6(1、5、10、20、40又は60 mg)に連続的に登録した。各用量群の全ての対象を、1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩又はプラシーボのいずれかを受けるように、例えば、5対象が生成物を受け、1対象がプラシーボを受けるように、無作為に設計した。
【0134】
処置前に行ったEEGスペクトル分析から、試験対象をマイクロボルト(microvolted)(66%)、及びノーマル(normo)又はグランドボルト(grandvolted)(33%)に階層化した。30〜40%の低活性及び20〜25%の高速活性(マイクロボルト)を有する対象と、10%の低活性(ノーマルボルト(normovolted))又は60〜80%のα-活性(グランドボルト)を有する対象との分配は、薬物投与の前に、2〜30 Hz及び30〜40 Hz活性について有意差が認められたことを説明している。
【0135】
1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の40 mg及び60 mgの単回経口投与の2時間後に、迅速活性(先リード上の20〜30 Hz、及び後リード上の16〜40 Hz)の統計的に有意な増加が認められた。常に、中央のピーク位置(MPP)は、10から15〜17 Hz及び11から13〜15 Hzの周波数軸の上でシフトした。迅速活性の増加は、後リード上のα-活性に依拠した。投与4時間後に、迅速活性の増加(20〜30 Hz)は依然として存在し、一方、α-活性はプレ-用量値に戻らなかった。結局、先の動物の発見と一致するこれらの変更は、覚醒及び認識活性を改善する薬物活性のプロファイルを特徴付ける。
【0136】
可能な障害を評価するための本試験において、精神測定的及び覚醒試験も行った。結局、睡眠の自己認識(LEEDS)、覚醒、満足及び平静沈着(Bond-Lader VAS)、並びに反応時間の選択(CRT)に対する統計的に有意な薬物効果は存在しなかった。加えて、本試験は、何の傾向もなく、またARCI 49に対する統計的に有意な薬物効果もないことが明らかとなった。
【0137】
対照的に、プラシーボの投与後よりも、60 mgの1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の単回投与後に高かった、フリッカー閾値、融合閾値及びフリッカー融合閾値(CFF)に対する統計的に有意な薬物効果が存在した。これらの結果は、生成物の60 mgの単回経口投与が対象の覚醒を増加させたことを示している。
【0138】
結局、これらの結果は、本試験の条件において、40 mg及び60 mgの1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩の単回経口投与が、フリッカー-融合試験の結果とし起こる対象の覚醒の増加を常に有するEEGの高速活性の増加を誘導した、ことを示している。
【0139】
実施例14:20 mgコート錠剤
【表17】

【0140】
実施例15:20 mgコート錠剤
【0141】
【表18】

【0142】
実施例16:40 mgコート錠剤
【0143】
【表19】

【0144】
実施例17:40 mgコート錠剤
【0145】
【表20】

【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、結晶1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩のX-線回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で表される、結晶性 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩、又はその薬学的に許容される水和物を含む溶媒和物。
【請求項2】
11.2°、19.9°、20.7°及び 34.1°±0.2°に特徴的ピーク(2θ)を含むX-線回折を有する、請求項1記載の結晶性 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩。
【請求項3】
11.2°、15.4°、16.3°、16.9°、17.8°、19.9°、20.7°、21.0°、21.8°、22.6°、24.5°、24.6°、25.0°、25.5°、26.3°、28.3°、30.3°、34.1°、35.8°、40.0°、46.0°±0.2°に特徴的ピーク(2θ)を含むX-線回折を有する、請求項1又は2記載の結晶性 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩。
【請求項4】
a) 1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジンを、好適な溶媒中で、塩化水素又は塩酸から選ばれる反応物と反応させ、沈殿した1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩を単離し;及び
b) 当該沈殿した1-[3-[3-(4-クロロフェニル)プロポキシ]プロピル]-ピペリジン一塩酸塩を好適な溶媒中で結晶化すること、
を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の製造法。
【請求項5】
前記反応物が塩化水素である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記塩化水素を、塩化水素ガスとして加える、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の好適な溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、水、酢酸エチル、i-プロパノール、ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ヘキサン、トルエン、t-ブチル-メチルエーテル、トリクロロエタン、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記好適な溶媒が、酢酸エチルである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ステップb)の好適な溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、水、酢酸エチル、i-プロパノール、ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ヘキサン、トルエン、t-ブチル-メチルエーテル、トリクロロエタン、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記好適な溶媒が、酢酸エチルとi-プロパノールとの混合物である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
中枢神経系疾患を治療するための医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
癲癇を治療するための医薬の製造のための、請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記中枢神経系疾患が、アルツハイマー病、並びに注意欠陥障害、不眠障害及び記憶障害からなる群より選ばれる、請求項11記載の使用。
【請求項14】
前記中枢神経系疾患が、精神疾患における認識障害からなる群より選ばれる、請求項11記載の使用。
【請求項15】
前記中枢神経系疾患が、高齢者の疾患、抑鬱状態及び無力状態からなる群より選ばれる、請求項11記載の使用。
【請求項16】
前記中枢神経系疾患が、目眩及び乗り物酔いからなる群より選ばれる、請求項11記載の使用。
【請求項17】
肥満の治療のための医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項18】
心因性の障害、呼吸性アレルギー症状、炎症症状、心臓病、胃腸病、泌尿生殖器系の症状、及び皮膚系の症状を治療するための医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項19】
睡眠障害、睡眠時無呼吸、睡眠誘導無呼吸、日中の眠気、ストレス、片頭痛、頭痛、疼痛、心因性の障害、喘息、気管支炎、鼻炎、気管炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クーロン病、過敏性腸症候群、膀胱炎、子宮筋層炎、尿糞失禁、蕁麻疹、痒み、関節炎、結膜炎、月経前症候群、前立腺炎症、生殖障害、リウマチ様症状及び眼症状、唾液分泌過多、痙攣、鬱病、視床下部下垂体分泌性、脳循環性及び免疫系の障害を治療するための医薬の製造のための、請求項18記載の化合物の使用。
【請求項20】
抗精神病薬又は抗鬱剤により生じる望ましくない副作用を抑制するための医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項21】
前記抗精神病薬が、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン及びセルチンドールからなる群より選ばれる、請求項20記載の使用。
【請求項22】
前記抗鬱剤が、ミルタザピン、アミトリプチリン及びパロキセチンからなる群より選ばれる、請求項20記載の使用。
【請求項23】
前記の抗精神病薬又は抗鬱剤により生じる望ましくない副作用が、体重増加、眠気及び記憶障害から選ばれる少なくとも1つである、請求項20記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれか1項で定義された化合物の治療上有効量、及び薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項25】
抗精神病薬を更に含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記抗精神病薬が、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン及びセルチンドールからなる群より選ばれる、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
抗鬱剤を更に含む、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
前記抗鬱剤が、ミルタザピン、アミトリプチリン及びパロキセチンからなる群より選ばれる、請求項27記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−530050(P2008−530050A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554541(P2007−554541)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050703
【国際公開番号】WO2006/084833
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(501379856)
【Fターム(参考)】