説明

3次元形状測定装置

【課題】受光センサにて受光した反射光のスポットが欠けた場合であっても、精度良く測定対象物の3次元形状を測定できる3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供する。
【解決手段】受光信号の強度の閾値としてレベルL1を設ける。受光信号の強度が最も大きい受光素子の位置を基準位置P1(n)とする。基準位置P1(n)の両側から、受光信号の強度がレベルL1である受光素子又はレベルL1に最も近い受光素子の位置を1つずつ取得する。前記取得した2つの受光位置の中点と基準位置P1(n)とのずれ量D1が許容値以下であれば、基準位置P1(n)を反射光の結像位置P(n)と決定し、結像位置P(n)を用いて、その測定ポイントの3次元座標を算出する。ずれ量D1が許容値より大きければ、その測定ポイントの3次元座標を算出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にレーザ光を走査しながら照射し、その反射光である散乱光を受光センサで受光して、レーザ光の照射位置又は照射方向と、反射光の受光位置との関係から、3角測量の原理により、測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、測定対象物にレーザ光を走査しながら照射し、照射したレーザ光の照射位置又は照射方向と、測定対象物からの反射光(散乱光)の受光位置との関係から、3角測量の原理により、測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置は知られている。この3次元形状測定装置においては、受光センサとして、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Sensor)などの受光素子が一列に配置されたラインセンサを採用している。そして、ラインセンサの各受光素子が出力する受光光量に対応した受光信号の強度を検出することにより、ラインセンサにおける反射光の結像位置を検出している。この3次元形状測定装置においては、ラインセンサの各受光素子が出力する受光信号の強度をデジタルデータに変換し、各受光素子の位置データとともにコンピュータに入力している。そして、入力した受光信号の強度が最大である受光素子を検索し、前記検索した受光素子の位置を結像位置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−265005号公報
【発明の概要】
【0004】
各受光素子の位置を横軸とし、各受光素子が出力する受光信号の強度を縦軸として、受光信号の強度の分布を表した受光曲線は、図15A乃至図15Cに示すように、1つのピークを有する曲線である。図15Aに示すように、平面状の部分、起伏が緩やかな部分などにレーザ光を照射した場合は、受光曲線の波形は、破線で示した対称軸について左右対称である。しかし、図15B及び図15Cに示すように、測定対象物の縁部(互いに角度が異なる2つの面が交わる部分)にレーザ光を照射した場合、反射光のスポットが欠けるため、受光曲線の波形が左右対称にならない。測定対象物の縁部にレーザ光を照射したときの反射光のスポットの欠け方は、図16A乃至図16Cに示すように様々である。
【0005】
また、測定対象物の縁部にレーザ光を照射した場合のみならず、測定ポイントとは異なる他の部分によって反射光の一部が遮られることにより、反射光のスポットが欠けることもある。したがって、受光信号の強度が最大となる受光素子の位置を求めて結像位置として採用すると、前記採用した結像位置から算出した3次元座標が実際の測定対象物OBの座標からずれることがある。例えば、測定対象物OBにおいては平面状であるのに、前記算出した3次元座標によって表される形状が凸状又は凹状となる場合がある。逆に、測定対象物OBの形状は凸状又は凹状であるのに、前記算出した3次元座標によって表される形状が平面状となることもある。すなわち、受光信号の強度が最大となる受光素子の位置を求めて結像位置として採用しただけでは、反射光の結像位置としての精度が悪く、3次元形状測定の精度が低下することがあった。また、上記従来の3次元形状測定装置のように、受光強度の変化率のパターンマッチングにより測定対象物の縁部にレーザ光を照射したことを検出するためには、予め複数の受光強度の変化率のパターンを記憶しておかなければならないが、上記のように、反射光のスポットの欠け方は様々であるので、パターンとして大量のデータを記憶しておく必要があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、測定対象物にレーザ光を走査しながら照射し、測定対象物からの反射光を受光センサで受光して3角測量の原理により測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置において、測定対象物の縁部にレーザ光を照射したとき及び反射光が測定対象物の一部に遮られたとき、受光曲線の波形が基準を中心として左右対称でない場合でも、簡単かつ精度良く測定対象物の3次元形状を測定できる3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、測定対象物(OB)に照射するレーザ光を出射するレーザ光源(10)と、測定対象物の表面に形成されるレーザ光の光スポットの位置を変更する照射位置変更手段(14,30)と、照射位置変更手段を駆動して測定ポイントを変更する駆動手段(18,32)と、測定対象物の表面にて反射したレーザ光の反射光を受光して、受光光量に応じた強度の受光信号をそれぞれ出力する複数の受光素子を一列に配置した受光センサ(22)と、受光素子の配置順に受光信号の強度を表した受光曲線における受光強度の分布が対称であるか非対称であるかを判定する対称判定手段(S210,S616)と、前記対称判定手段によって対称であると判定されたとき、前記受光強度の分布の対称軸に相当する受光位置を用い、3角測量の原理に基づいて測定対象物までの距離を算出し、前記算出した測定対象物までの距離と駆動手段による照射位置変更手段の駆動量とを用いて、前記測定ポイントの3次元座標を表す3次元座標データを測定データとして算出し、前記対称判定手段によって非対称であると判定されたとき、3次元座標データを算出しない測定データ算出手段(S300〜S310)とを備えたことにある。
【0008】
上記のように構成した3次元形状測定装置においては、受光曲線において、受光強度の分布の対称性に応じて、3次元座標データを算出するか否かを決定するようにした。すなわち、受光曲線の波形が非対称である測定ポイントについては、レーザ光が測定対象物の縁部に照射されたこと、又は反射光の一部が測定対象物の他の部分に遮られたことによって、受光センサにて受光した反射光のスポットが欠けた状態と判断して、3次元座標データを算出せず、受光曲線の波形が対称である測定ポイントの3次元座標データのみを算出できる。これにより、測定精度が低下するのを防止できる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、対称判定手段は、受光素子の配置順に受光信号を入力し、前記入力した受光信号の強度が所定の第1強度以下である状態から第1強度より大きい状態に変化したときの受光素子の位置を第1受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が第1強度より大きい状態から第1強度以下である状態に変化したときの受光素子の位置を第2受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が第1強度よりも小さな第2強度以下である状態から第2強度より大きい状態に変化したときの受光素子の位置を第3受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が第2強度より大きい状態から第2強度以下である状態に変化したときの受光素子の位置を第4受光位置として検出する受光位置検出手段(514b,514c,515b,515c)と、第3受光位置から第1受光位置へ向かう受光信号の強度の傾きを表す第1の傾きと、第4受光位置から第2受光位置へ向かう受光信号の強度の傾きを表す第2の傾きを算出する傾き算出手段(S610,S612)と、第1の傾きと第2の傾きのずれ量を表す第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出手段(S614)と、第1ずれ量が所定の第1基準ずれ量以下であるとき、前記受光強度の分布が対称であると決定し、前記第1ずれ量が前記第1基準ずれ量より大きいとき、前記受光強度の分布が非対称であると決定する対称決定手段(S616)とを備えたことにある。
【0010】
上記のように構成した3次元形状測定装置においては、第1の傾き及び第2の傾きのずれ量を用いて受光曲線の波形の対称性を判定するようにした。この判定は、主に受光曲線の全体の波形の対称性の判定に相当する。第1の傾きは、第1受光位置及び第3受光位置を用いて算出でき、第2の傾きは、第3受光位置及び第4受光位置を用いて算出できる。したがって、第1乃至第4受光位置を取得するだけで全体の波形の対称性を判定できるので、簡単かつ高速に測定対象物の3次元形状を測定できる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、第1ずれ量が所定の第1基準ずれ量より大きいとき、第1受光位置と第2受光位置の中点を基準位置として取得する基準位置取得手段(S622)と、基準位置から第3受光位置までの距離と、基準位置から第4受光位置までの距離のうちの大きい方の距離を選択し、前記選択した距離と所定の基準距離とのずれ量を表す第2ずれ量を算出する第2ずれ量算出手段(S626,S634)と、第2ずれ量が所定の第2基準ずれ量以下である全ての測定ポイントについて、それぞれ前記基準位置を用いて3角測量の原理に基づいて測定対象物までの距離を算出し、前記算出した測定対象物までの距離と駆動手段による照射位置変更手段の駆動量を用いて3次元座標データを算出する3次元座標データ算出手段(S630,S636,S632,S620,S300〜S310)と、第2ずれ量が第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうち、受光センサに受光される反射光の光路内に、前記反射光を遮光する測定対象物の部分が存在しない測定ポイントの3次元座標データを測定データに追加する追加手段(S400〜S432)とを備えたことにある。この場合、追加手段は、第2ずれ量が第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうちの1つの測定ポイントを選択する測定ポイント選択手段(S402,S406,S430)と、3次元座標の原点から前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルと、前記選択した測定ポイントから見てレーザ光源側の所定の領域に位置する全ての測定ポイントから前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルとの間の角度をそれぞれ算出する角度算出手段(S418)と、全ての前記算出した角度が所定の基準角度より大きいとき、反射光の光路内に前記反射光を遮光する測定対象物の部分が存在しないと決定し、前記算出した角度のうち少なくとも1つの角度が前記所定の基準角度以下であるとき、前記反射光の光路内に前記反射光を遮光する測定対象物の部分が存在すると決定する遮光物存否決定手段(S410〜S426)とを備えるとよい。さらに、この場合、基準距離は、基準位置に応じて設定されているとよい。
【0012】
受光曲線の全体の波形が非対称であるとしても、第1所定強度よりも大きな部分(以下、ピーク部分という)の波形は対称であって、3次元座標データを算出して測定データとして採用できる場合もある。ここで、受光曲線において、第1受光位置と第2受光位置の中点を境界としたとき、受光信号の強度の傾きが小さい側は、反射光のスポットが欠けていない状態とみなすことができる。そして、少なくともピーク部分の波形が対称であるならば、反射光のスポットが欠けていない状態とみなした側の第2所定強度の受光位置(すなわち、第3受光位置又は第4受光位置)と基準位置との間の距離は、予め設定された基準距離に近いはずである。なお、基準距離は、波形が全体として対称であるときの、第3受光位置と第4受光位置の距離から算出された距離である。そこで、第3受光位置から基準位置までの距離と第4受光位置から基準位置までの距離のうち大きい方(すなわち、受光信号の強度の傾きが小さい方)の距離を基準距離と比較し、両距離のずれ量を用いて、ピーク部分の波形が対称であるか否かを判定するようにした。そして、全体の波形が非対称であるとしても、ピーク部分の波形が対称であれば、基準位置を用いて3次元座標データを算出するようにした。さらに、ピーク部分の波形が対称であり、かつ波形全体としては非対称である場合に、反射光の一部が測定対象物に遮られたことによって、受光センサに形成される反射光のスポットが欠けているか否かを判定するようにした。すなわち、測定ポイントの周辺に大きく突出した凸部、高低差の大きい段差などが存在しないかを判定するようにした。そして、反射光の一部が測定対象物に遮られない測定ポイントの3次元座標データを測定データに追加するようにしたので、測定精度をさらに向上させることができる。全体の波形の対称性のみによって、3次元座標データを算出するか否か決定すると、測定対象物の縁部の測定ポイント数がかなり少なくなって、測定精度が低下することが考えられるが、上記のように構成した3次元形状測定装置によれば、測定対象物の縁部にレーザ光を照射した場合であって、反射光のスポットの欠け方が少ない場合の3次元座標データが測定データに加えられるので、縁部の測定ポイント数をある程度確保することができ、測定精度が低下することを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、対称判定手段は、受光信号の強度が最も大きな受光素子の位置を基準位置として取得する基準位置取得手段(S204)と、受光信号の強度が所定の第1強度である受光素子の位置又は受光信号の強度が第1強度に最も近い受光素子の位置を、基準位置の両側からそれぞれ第1受光位置及び第2受光位置として1つずつ検出する第1強度位置検出手段(S206)と、第1受光位置から基準位置までの距離と、第2受光位置から基準位置までの距離とのずれ量を表す第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出手段(S208)と、第1ずれ量が所定の第1基準値以下であるとき、前記受光強度の分布が対象であると決定し、第1ずれ量が第1基準値より大きいとき、前記受光強度の分布が非対称であると決定する対称決定手段(S210)とを備えたことにある。
【0014】
上記のように構成した3次元形状測定装置においては、基準位置、第1受光位置及び第2受光位置を取得して、前記取得した基準位置、第1受光位置及び第2受光位置の位置関係のみから受光曲線の波形の対称性を判定するようにしたので、第1受光位置と第2受光位置を検出する第1強度を大きくすれば、受光曲線の全体の波形が非対称でもピーク部分の波形が対称である場合の3次元座標データを測定データに残すことができる。すなわち、測定対象物の縁部の測定ポイント数をある程度確保できるので、測定精度が低下することを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、第1ずれ量が前記第1基準ずれ量以下であるとき、受光信号の強度が第1強度よりも小さな第2強度である受光素子の位置又は受光信号の強度が第2強度に最も近い受光素子の位置を、基準位置の両側からそれぞれ第3受光位置及び第4受光位置として1つずつ検出する第2強度位置検出手段(S214)と、第3受光位置から基準位置までの距離と、第4受光位置から基準位置までの距離とのずれ量を表す第2ずれ量を算出する第2ずれ量算出手段(S216)と、第2ずれ量が第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうち、受光センサに受光される反射光の光路内に、反射光を遮光する測定対象物の部分が存在する測定ポイントの3次元座標データを測定データから除外する除外手段(S400〜S432)とを備えたことにある。この場合、除外手段は、第2ずれ量が第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうちの1つの測定ポイントを選択する測定ポイント選択手段と、3次元座標の原点から前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルと、前記選択した測定ポイントから見てレーザ光源側の所定の領域に位置する全ての測定ポイントから前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルとの間の角度をそれぞれ算出する角度算出手段と、全ての前記算出した角度が所定の基準角度より大きいとき、反射光の光路内に反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しないと決定し、前記算出した角度のうち少なくとも1つの角度が前記所定の基準角度以下であるとき、反射光の光路内に反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在すると決定する遮光物存否決定手段(S410〜S426)とを備えるとよい。
【0016】
受光曲線において、ピーク部分の波形が対称であったとしても、全体の波形が非対称であることもある。すなわち、反射光のスポットが欠けていることもある。そこで、受光信号の強度が第1強度よりも小さい第2強度の受光素子の位置を第3受光位置及び第4受光位置として検出し、基準位置、第3受光位置及び第4受光位置の位置関係を用いて、全体の波形の対称性を判定するようにした。そして、全体の波形が非対称である場合に、反射光の一部が測定対象物に遮られたことによって、受光センサに形成される反射光のスポットが欠けているか否かを判定するようにした。すなわち、上記の所定の条件に該当する場合、その測定ポイントの3次元座標データを測定データから除外することで、測定対象物の縁部の測定ポイントは残したまま、反射光の一部が測定対象物に遮られた場合の測定ポイントの3次元座標データを除外することができるので、測定精度をさらに向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明の実施にあたっては、3次元形状測定装置の発明に限定されることなく、3次元形状測定方法の発明としても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る3次元形状測定装置の全体概略図である。
【図2】図1のセンサ信号取り込み回路の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】図1のコントローラが実行する3次元形状データ取り込み処理のフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係り、閾値及び受光位置を説明するための説明図である。
【図5】図2の演算回路が実行する波形判定処理を示すフローチャートである。
【図6】図1のコントローラが実行する3次元座標算出処理のフローチャートである。
【図7】図1のコントローラが実行する座標除外処理のフローチャートである。
【図8】座標除外処理における処理対象とする測定ポイントの範囲を説明するための説明図である。
【図9】図1のコントローラが実行する3次元形状表示処理のフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係り、センサ信号取り込み回路の具体的構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係り、閾値及び受光位置を説明するための説明図である。
【図12】図10の演算回路が実行する波形判定処理を示すフローチャートである。
【図13A】基準距離を定めたテーブルの概念図である。
【図13B】基準距離の設定方法についての説明図である。
【図14】本発明の変形例に係り、閾値及び受光位置を説明するための説明図である。
【図15A】受光曲線の波形が対称である状態を説明するための説明図である。
【図15B】受光曲線の波形が非対称である状態の一例を説明するための説明図である。
【図15C】受光曲線の波形が非対称である状態の他の例を説明するための説明図である。
【図16A】反射光のスポットが僅かに欠けた状態を説明するための説明図である。
【図16B】反射光のスポットが半分程度欠けた状態を説明するための説明図である。
【図16C】反射光のスポットがほとんど欠けた状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る3次元形状測定装置の全体構成について図1を用いて説明する。この3次元形状測定装置は、レーザ光を走査しながら測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの反射光(散乱光)を受光する3次元カメラCAを備えている。
【0020】
3次元カメラCAは、レーザ光源10、コリメートレンズ12、第1ミラー14、モータ16、第2ミラー18、結像レンズ20及び第1受光センサ22を備えた筐体30を有する。レーザ光源10から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ12及び第1ミラー14を介して測定対象物OBに照射される。そして、測定対象物OBからの反射光(散乱光)は、第2ミラー18及び結像レンズ20を介して、第1受光センサ22に導かれて受光される。また、筐体30は、第2受光センサ24も備えている。第2受光センサ24は、第1受光センサ22にて反射した測定対象物OBからの反射光(散乱光)を受光する。また、3次元カメラCAは、筐体30を回転させるモータ32及び減速装置34も有する。
【0021】
レーザ光源10は、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を測定するためのレーザ光をコリメートレンズ12に向けて出射する。コリメートレンズ12は、レーザ光源10から入射したレーザ光を平行光に変換する。コリメートレンズ12によって平行光に変換されたレーザ光は、第1ミラー14に入射する。第1ミラー14は、モータ16の駆動軸に組み付けられていて、モータ16の駆動軸周りに正転逆転駆動される。コリメートレンズ12によって平行光とされたレーザ光の光軸とモータ16の駆動軸は直交している。モータ16内には、モータ16の回転軸の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ16aが組み込まれている。この回転検出信号は、モータ16の回転軸の回転位置が基準回転位置に来るごとに発生されるz相信号φと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰り返す互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φ及びB相信号φからなるパルス列信号とからなる。コリメートレンズ12によって平行光に変換されたレーザ光は、第1ミラー14によって反射されて、筐体30の正面部に設けられた図示しない開口部から外側へ向けて出射され、測定対象物OBに照射される。以下の説明においては、モータ16の駆動軸をX軸と呼び、第1ミラー14に入射するレーザ光の光軸をY軸と呼ぶ。
【0022】
第2ミラー18は、第1ミラー14の下方にて、第1ミラー14と共通の駆動軸に組み付けられている。すなわち、第1ミラー14及び第2ミラー18は、モータ16によって、同時に、モータ16の駆動軸回りに正転逆転駆動される。第1ミラー14と第2ミラー18の向き(角度)は同一である。第2ミラー18は、モータ16の駆動軸方向に延設された長尺状に形成されている。第2ミラー18は、測定対象物OBからの反射光(散乱光)を結像レンズ20へ向けて反射する。結像レンズ20は、第2ミラー18からの反射光を第1受光センサ22上に結像させる。第1受光センサ22は、測定対象物OBからの反射光を第2ミラー18及び結像レンズ20を介して受光する。第1受光センサ22は、それぞれ受光量に応じた電気信号を出力する複数(mmax個)の受光素子を1列に配置したラインセンサである。各受光素子には、ラインセンサの一端部に配置された受光素子から他端部に配置された受光素子に向かって、その配列順に番号(「1」〜「mmax」)が付けられている。各受光素子の大きさは同一であり、各受光素子は互いに隣接して配置されているので、この受光素子の番号は、測定対象物OBからの反射光の受光位置に対応する。
【0023】
第2受光センサ24は、第1受光センサ22にて反射した反射光を受光する。第2受光センサ24は、第1受光センサ22と同程度の受光面を備え、受光した反射光の強度に相当する強度の受光信号を出力するフォトディテクタである。第1受光センサ22の反射率は一定であるので、第1受光センサ22にて反射した反射光の強度は、測定対象物OBからの反射光の強度に相当する。すなわち、第2受光センサ24が出力する受光信号の強度は、測定対象物OBからの反射光の強度に相当する。
【0024】
筐体30は、Y軸回りに回転可能に支持されている。筐体30は、減速装置34を介してモータ32の駆動軸に組み付けられていて、モータ32によってY軸回りに正転逆転駆動される。モータ32内には、エンコーダ16aと同様のエンコーダ32aが組み込まれている。
【0025】
また、この3次元カメラCAは、レーザ駆動回路40、ミラー駆動回路42、ミラー角度検出回路44、筐体駆動回路46、筐体角度検出回路48、センサ信号取り込み回路50、増幅回路52、レーザ光量調整回路54及びコントローラ56も備えている。
【0026】
レーザ駆動回路40は、コントローラ56から測定開始の指示を入力すると、予め設定された強度の駆動信号をレーザ光源10に供給する。そして、後述するレーザ光量調整回路54から供給されるレーザ強度調整信号を入力すると、このレーザ光量調整信号に基づいて、第2受光センサ24が出力する受光信号の強度が設定された強度になるよう、レーザ光源10に供給する駆動信号を制御する。具体的には、レーザ光量調整信号の強度が「0」になるように、レーザ光源10に供給する電圧及び電流を制御する。これにより、第1受光センサ22が受光する測定対象物OBからの反射光(散乱光)の強度を一定にできる。
【0027】
ミラー駆動回路42は、モータ16を駆動するための駆動信号を出力する。ミラー駆動回路42は、エンコーダ16aから入力した回転検出信号のうちのパルス列信号の所定時間あたりのパルス数が設定された値になるよう、モータ16の駆動信号を制御する。すなわち、モータ16の回転速度が一定になるよう、モータ16の駆動信号を制御する。また、コントローラ56からの指示と後述するミラー角度検出回路44から入力した回転角度に応じて、駆動軸の回転方向を反転させるよう、モータ16の駆動信号を制御する。これにより、第1ミラー14及び第2ミラー18は、3次元形状測定の開始から終了までの間に、回転方向が何度も反転する。ミラー角度検出回路44は、エンコーダ16aから回転検出信号を入力し、入力した回転検出信号のうちのパルス列信号を用いて、第1ミラー14及び第2ミラー18のX軸回りの回転角度θxを算出する。ミラー角度検出回路44は、コントローラ56から、第1ミラー14及び第2ミラー18の回転角度θxを出力するよう指示されると、前記算出した回転角度θxを表すデジタルデータをコントローラ56に出力する。また、前記算出した回転角度θxは、ミラー駆動回路42にも出力され、ミラー駆動回路42によるモータ16の回転駆動の制御にも利用される。
【0028】
筐体駆動回路46は、モータ32を駆動するための駆動信号を出力する。筐体駆動回路46は、エンコーダ32aから入力した回転検出信号のうちのパルス列信号の所定時間あたりのパルス数が設定された値になるよう、モータ32の駆動信号を制御する。すなわち、モータ32の回転速度が一定になるよう、駆動信号を制御する。モータ32は、筐体駆動回路46から駆動信号を供給されて一定の速度で回転し、減速装置34を介して筐体30を回転させる。これにより、筐体30は、3次元形状測定の開始から終了まで一定の回転速度で一定の方向へ回転する。筐体30の回転速度は、第1ミラー14の回転速度よりも遅い。筐体角度検出回路48は、エンコーダ32aから回転検出信号を入力し、入力した回転検出信号のうちのパルス列信号を用いて、筐体30のY軸回りの回転角度θyを算出する。筐体角度検出回路48は、コントローラ56から、筐体30の回転角度θyを出力するよう指示されると、前記算出した回転角度θyを表すデジタルデータをコントローラ56に出力する。また、前記算出した回転角度θyは、筐体駆動回路46にも出力され、筐体駆動回路46がモータ32の回転角度をコントローラ56から指示された角度(例えば初期角度)にする制御にも利用される。
【0029】
センサ信号取り込み回路50は、図2に示すように、制御回路501、信号取り出し回路502、A/D変換回路504及び演算回路505を備えている。制御回路501は、コントローラ56からの作動開始指示に応答して、信号取り出し回路502に、第1受光センサ22からの受光信号の取り込みを指示する信号を設定された周期ごとに出力する。信号取り出し回路502は、制御回路501から取り込み開始の指示を入力するごとに、第1受光センサ22に一定周期のパルス信号を出力する。第1受光センサ22は、信号取り出し回路502から入力したパルス信号の各パルスに同期して、第1受光センサ22の一端の受光素子から他端の受光素子に向かって順番に、各受光素子が受光した光量に応じた強度の受光信号を信号取り出し回路502に出力する。信号取り出し回路502は、入力した受光信号を増幅して、A/D変換回路504へ出力する。また、信号取り出し回路502は、A/D変換回路504に、入力した受光信号をデジタルデータに変換するタイミングを表す信号として、前述した一定周期のパルス信号を出力する。A/D変換回路504は、制御回路501から受光信号の取り込みを意味する信号を入力すると、信号取り出し回路502から入力したパルス信号に同期して入力した受光信号の強度(瞬時値)をデジタルデータに変換し、演算回路505に出力する。すなわち、第1受光センサ22の一端の受光素子から他端の受光素子に向かって順番(受光素子に付された番号順)に受光信号の強度をデジタルデータに変換して、演算回路505に出力する。演算回路505は、A/D変換回路504から入力した各受光素子の受光信号の強度を表すデジタルデータを、演算回路505が備えるメモリの所定の記憶領域に記憶する。すなわち、各受光素子に対応して予め定められたアドレスを指定して、前記入力した各受光信号の強度を表すデジタルデータを書き込む。各受光素子に付された番号順にそれぞれ対応するアドレスからデジタルデータを読み出して、前記読み出したデジタルデータを用いて受光信号の強度の分布をグラフ化すると、図4に示すような受光曲線が得られる。演算回路505は、詳しくは後述するように、コントローラ56からの取り込み指示があると、A/D変換回路504から入力したデジタルデータを用いて、第1受光センサ22における反射光の結像位置を取得するとともに、受光曲線の波形の対称性を判定して、演算結果をコントローラ56へ出力する。
【0030】
増幅回路52は、第2受光センサ24から出力された受光信号を増幅して、レーザ光量調整回路54に出力する。レーザ光量調整回路54は、第2受光センサ24から出力されて増幅回路52にて増幅された受光信号を入力し、この信号強度から予め記憶されている基準値を減算した強度の信号をレーザ光量調整信号としてレーザ駆動回路40に供給する。なお、レーザ光量調整回路54は、測定開始の前に予め、コントローラ56から第2受光センサ24が受光する反射光の強度の基準値を入力して記憶している。
【0031】
コントローラ56は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置58からの指示に従って、3次元形状測定処理を実行して、測定対象物OBの3次元画像データを作成して、測定対象物OBの3次元画像を表示装置60に表示する。
【0032】
つぎに、上記のように構成した3次元形状測定装置における3次元形状測定処理について説明する。作業者が、入力装置58を用いて測定開始を指示すると、コントローラ56は、図3に示す3次元形状データ取り込み処理を開始する。コントローラ56は、ステップS100にて、3次元形状データ取り込み処理を開始すると、ステップS102にて、各測定ポイントの番号を表す測定ポイント番号nを「1」に初期化する。
【0033】
つぎに、コントローラ56は、ステップS104にて、筐体30の回転角度を初期角度にセットする。つぎに、ステップS106にて、レーザ駆動回路48の作動を開始させる。つぎに、ステップS108にて、レーザ光量調整回路54の作動を開始させる。つぎにステップS110にて、センサ信号取り込み回路50の作動を開始させる。より詳しくは、センサ信号取り込み回路50内の制御回路502の作動を開始させる。つぎに、ステップS112にて、ミラー駆動回路42の作動を開始させる。つぎに、ステップS114にて、筐体駆動回路46の作動を開始させる。つぎに、ステップS116にて時間計測を開始する。
【0034】
つぎに、コントローラ56は、ステップS118にて、現在の時刻が測定ポイント番号nと所定の時間間隔Tとを乗算して算出される時刻nTを経過しているか否かを判定する。最初、測定ポイント番号nは「1」に初期化されているので、ステップS118において、現在の時刻がT(すなわち、1×T)を経過しているかを判定する。現在の時刻がTを経過していなければ、「No」と判定し、再びステップS118を実行する。すなわち、現在の時刻がTを経過するまでステップS118を繰り返し実行する。そして、現在の時刻がTを経過すると、ステップS118にて「Yes」と判定し、ステップS120に進む。
【0035】
つぎに、コントローラ56は、ステップS120にて、ミラー角度検出回路44から、第1ミラー14の回転角度θx(n)を取り込む。つぎに、コントローラ56は、ステップS122にて、筐体角度検出回路48から、筐体30の回転角度θy(n)を取り込む。つぎに、コントローラ56は、ステップS124にて、センサ信号取り込み回路50に、受光信号の強度を表すデジタルデータを取り込み、受光曲線の波形の対称性を判定して判定結果を表す波形対称性判定フラグE(n)をセットするとともに、受光センサ22における反射光の結像位置P(n)を算出するよう指示する。
【0036】
センサ信号取り込み回路50は、コントローラ56からの前記指示に応答して、信号取り出し回路502及びA/D変換回路504の協働により出力された第1受光センサ22を構成する各受光素子の出力する受光光量を表すデータである反射光の受光曲線データD(n,1)〜D(n,mmax)を、演算回路505に記憶させる。演算回路505は、受光曲線データD(n,1)〜D(n,mmax)を記憶すると、図5に示す波形判定処理を実行する。演算回路505は、ステップS200にて波形判定処理を開始すると、ステップS202にて、測定ポイント番号nについての対称性判定フラグE(n)を、対称性が良いことを表す「0」に初期化する。
【0037】
つぎに、演算回路505は、受光曲線のピーク部分の波形の対称性を判定する。まず、演算回路505は、ステップS204にて、受光曲線データD(n,1)〜D(n,mmax)の中から、強度が最も大きい受光曲線データを検索し、前記検索した受光曲線データに対応する受光素子の位置(受光素子の番号)を基準位置P1(n)として取得する。つぎに、演算回路505は、ステップS206にて、受光曲線データD(n,1)〜D(n,mmax)を用いて、受光曲線における基準位置P1(n)の左側及び右側に位置する受光素子のうち、受光強度がレベルL1である受光素子又はレベルL1に最も近い受光素子をそれぞれ1つずつ検索し、前記検索した受光素子の位置をそれぞれ受光位置T1a及び受光位置T1bとして取得する。
【0038】
つぎに、演算回路505は、ステップS208にて、受光位置T1aと基準位置P1(n)の間の受光素子の数(以下、距離waという)及び受光位置T1bと基準位置P1(n)の間の受光素子の数(以下、距離wbという)を算出する。そして、受光位置T1aと基準位置P1(n)の距離と受光位置T1bと基準位置P1(n)の距離のずれ量を表すずれ量D1をD1=|(wa−wb)/(wa+wb)|の演算によって算出する。ずれ量D1は、言い換えれば、基準位置P1(n)が、受光位置T1aと受光位置T1bの中点からどれくらいずれているかを表す。本実施形態においては、第1ずれ量D1が小さいほど、受光曲線のピーク部分(強度がレベルL1よりも大きい部分)の波形の対称性が良いとみなす。すなわち、基準位置P1(n)を対称軸として左右対称である状態に近いとみなす。そこで、演算回路505は、ステップS210にて、ずれ量D1と予め設定された許容値TL1とを比較する。ずれ量D1が、許容値TL1よりも大きい場合、「No」と判定する。すなわち、ピーク部分の波形が基準位置P1(n)を対称軸として非対称なので、基準位置P1(n)を、測定対象物OBの測定ポイント番号nに対応する座標を算出するためのデータとして採用できないと判定する。この場合、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)をコントローラ56に出力することなく、後述のステップS224に進む。
【0039】
一方、ずれ量D1が、許容値TL1以下である場合、ステップS210にて、「Yes」と判定する。すなわち、ピーク部分の波形が対称であるので、基準位置P1(n)を、測定対象物OBの測定ポイント番号nに対応する座標を算出するためのデータとして採用できる可能性があると判定する。この場合、演算回路505は、ステップS212にて、基準位置P1(n)を第1受光センサ22における反射光の結像位置P(n)として決定し、コントローラ56に出力する。
【0040】
つぎに、演算回路505は、受光曲線の波形全体の対称性を判定する。まず、ステップS214にて、受光曲線データD(n,1)〜D(n,mmax)を用いて、基準位置P1(n)の左側及び右側に位置する受光素子のうち、受光強度が、レベルL1よりも小さなレベルL2である受光素子又はレベルL2に最も近い受光素子をそれぞれ1つずつ検索し、前記検索した受光素子の位置をそれぞれ受光位置T2a及び受光位置T2bとして取得する。
【0041】
つぎに、演算回路505は、ステップS216にて、受光位置T2aと基準位置P1(n)の間の受光素子の数(以下、距離wcという)及び受光位置T2bと基準位置P1(n)の間の受光素子の数(以下、距離wdという)を算出する。そして、受光位置T2aと基準位置P1(n)の距離と受光位置T2bと基準位置P1(n)の距離のずれ量を表すずれ量D2をD2=|(wc−wd)/(wc+wd)|の演算によって算出する。ずれ量D2は、言い換えれば、基準位置P1(n)が、受光位置T2aと受光位置T2bの中点からどれくらいずれているかを表す。本実施形態においては、ずれ量D2が小さいほど、受光曲線の全体(強度がレベルL2より大きい部分)の波形の対称性が良いとみなす。すなわち、基準位置P1(n)を対称軸として左右対称である状態に近いとみなす。そこで、演算回路505は、ステップS218にて、ずれ量D2と予め設定された許容値TL2とを比較する。ずれ量D2が、許容値TL2以下である場合、「Yes」と判定する。すなわち、受光曲線の全体の波形が基準位置P1(n)を対称軸として対称であると判定する。この場合、波形対称性判定フラグE(n)を変更することなく(すなわち、「0」のまま)、ステップS222にてコントローラ56に出力し、ステップS224にて、波形判定処理を終了する。
【0042】
一方、ずれ量D2が許容値TL2より大きい場合、ステップS218において、「No」と判定する。すなわち、受光曲線の全体の波形が基準位置P1(n)を対称軸として非対称であると判定する。この場合、演算回路505は、ステップS220にて、波形対称性フラグE(n)を、受光曲線の全体の波形が左右対称でないことを表す「1」にセットして、ステップS222にて、コントローラ56に出力し、ステップS224にて波形判定処理を終了する。
【0043】
ふたたび、図3の3次元データ取り込み処理の説明に戻る。コントローラ56は、ステップS124にて、センサ信号取り込み回路50から、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)を取り込むと、ステップS126に進む。ただし、上記のように、センサ信号取り込み回路50から、結像位置P(n)及び波形対称性フラグE(n)が供給されない場合がある。したがって、コントローラ56は、センサ信号取り込み回路50に、受光信号の強度を表すデジタルデータを取り込み、受光曲線の波形の対称性を判定するとともに結像位置P(n)を算出するよう指示してから、所定の時間が経過しても、結像位置P(n)及び波形対称性フラグE(n)が供給されない場合は、そのままステップS126に進む。
【0044】
つぎに、コントローラ56は、ステップS126にて、前記ステップS122において取り込んだ回転角度θy(n)が、予め設定された限界角度よりも大きいか否かを判定する。限界角度とは、筐体30が回転可能な最大の角度よりもやや小さい角度である。回転角度θy(n)が限界角度以下である場合は、ステップS128に進んで、測定ポイント番号nをインクリメントする。最初、測定ポイント番号nは「1」に初期化されているので、コントローラ56は、ステップS128において、測定ポイント番号nを「2」にセットする。つぎに、コントローラ56は、ステップS118に戻り、現在の時刻が2T(すなわち、2×T)を経過しているかを判定する。現在の時刻が2Tを経過していなければ、「No」と判定し、再びステップS118を実行する。すなわち、現在の時刻が2Tを経過するまでステップS118を繰り返し実行する。そして、現在の時刻が2Tを経過すると、ステップS118にて「Yes」と判定し、上記のステップS120乃至ステップS126を実行する。このように、コントローラ56は、回転角度θy(n)が限界角度に達するまで、ステップS120乃至ステップS128を繰り返し実行する。筐体30の回転速度は、第1ミラー14の回転速度よりも遅く、第1ミラー14は、モータ16により正転逆転駆動される。すなわち、筐体30の回転角度θy(n)が限界角度に達するまで上記ステップS120乃至ステップS128を繰り返している間に、第1ミラー14の回転方向は何回か反転する。このように、コントローラ56は、レーザ光を走査しながら測定対象物OBに照射して、ステップS120乃至ステップS128からなる処理を繰り返し実行し、一定の時間間隔Tで回転角度θx(n)、回転角度θy(n)、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)を取り込んで、コントローラ56が備えるメモリに記憶する。ただし、結像位置P(n)及び波形対称性フラグE(n)が供給されない場合は、回転角度θx(n)及び回転角度θy(n)のみをメモリに記憶する。
【0045】
そして、筐体30の回転角度θy(n)が限界角度に達すると、コントローラ56は、ステップS126にて、「Yes」と判定し、ステップS130に進み、レーザ駆動回路40の作動を停止させる。つぎに、ステップS132にて、ミラー駆動回路42の作動を停止させる。つぎに、ステップS134にて、筐体駆動回路46の作動を停止させる。つぎに、ステップS136にて、レーザ光量調整回路54の作動を停止させる。つぎに、ステップS138にて、センサ信号取り込み回路50の作動を停止させる。そして、ステップS140にて、3次元形状データ取り込み処理を終了する。以下の説明においては、この3次元形状データ取り込み処理の終了時の測定ポイント番号nの値を最大ポイント番号nmaxとする。
【0046】
上記の3次元形状データ取り込み処理が終了すると、コントローラ56は、図6に示す3次元座標算出処理を実行する。コントローラ56は、ステップS300にて、3次元座標算出処理を開始すると、ステップS302にて、処理対象の測定ポイント番号nを「1」に初期化する。つぎに、ステップS304にて、メモリに記憶されている結像位置P(n)を用いて、3角測量の原理に基づいて、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を表す距離データL(n)を算出する。そして、メモリに記憶されている回転角度θx(n)、及び回転角度θy(n)並びに前記算出した距離データL(n)を用いて、測定ポイント番号nについての3次元座標(xn,yn,zn)を算出する。ただし、前述の波形判定処理のステップS210にて「No」と判定されて、結像位置P(n)がコントローラ56に供給されなかった測定ポイントについては、3次元座標(xn,yn,zn)を算出しない。
【0047】
つぎに、コントローラ56は、ステップS306にて、現在の測定ポイント番号nを最大ポイント番号nmaxと比較する。最初、測定ポイント番号nは「1」に初期化されているので「No」と判定し、ステップS308に進み、測定ポイント番号nをインクリメントして、ステップS304に戻る。このようにして、ステップS304乃至ステップS308からなる処理を繰り返し、結像位置P(n)が供給されなかった測定ポイントを除くすべての測定ポイントについて3次元座標(xn,yn,zn)を算出すると、ステップS306にて「Yes」と判定し、ステップS310にて3次元座標算出処理を終了する。
【0048】
上記のように、レーザ光の反射光の一部が、レーザ光を照射した測定ポイントの周りの他の部分(例えば、凸状の部分)に遮られて、受光曲線の波形の対称性が悪化することがある。そこで、コントローラ56は、レーザ光の反射光の一部が、測定対象物OBの他の部分に遮られて、受光曲線の波形の対称性が悪化したために、波形対称性フラグE(n)が「1」にセットされた測定ポイントの3次元座標を測定データから除外するため、図7に示す座標除外処理を実行する。
【0049】
コントローラ56は、ステップS400にて、座標除外処理を開始すると、ステップS402にて、波形対称性フラグE(n)が「1」である全ての測定ポイントを抽出する。つぎに、コントローラ56は、ステップS404にて、波形対称性フラグE(n)が「1」である測定ポイントが存在するか否かを判定する。波形対称性フラグE(n)が「1」である測定ポイントが存在しない場合には、「No」と判定し、後述のステップS432に進む。一方、波形対称性フラグE(n)が「1」である測定ポイントが存在すれば、「Yes」と判定し、ステップS406に進む。以下の説明では、ステップS402において抽出した測定ポイント数がsmax個であるとする。
【0050】
つぎに、コントローラ56は、ステップS406にて、前記ステップS402にて抽出した測定ポイントに、測定ポイント番号nが小さい順に、抽出ポイント番号s(s=1、2・・・smax)をそれぞれ割り当てる。以下のステップS410〜S426は、抽出ポイント番号sごとに順番に処理する。まず、ステップS408にて、処理対象の抽出ポイント番号sを「1」に初期化する。なお、以下の説明において、抽出ポイント番号sが付された測定ポイントの結像位置、第1ミラー14の回転角度及び筐体30の回転角度を、それぞれ結像位置P(s)、回転角度θx(s)及び回転角度θy(s)と表記する。つぎに、コントローラ56は、ステップS410にて、図8に示すように、各測定ポイントのうち、抽出ポイント番号sが付された処理対象の測定ポイントAに対して、3次元カメラCA側の所定の範囲(図8の斜線の範囲)に含まれる測定ポイントを全て抽出する。具体的には、処理対象の測定ポイントA以外の測定ポイントの中から、結像位置P(n)が、結像位置P(s)の値より小さいP(s)−ΔPから、結像位置P(s)までの間にあり、回転角度θx(n)が、回転角度θx(s)を中心とした所定の角度の範囲θx(s)±Δθxに含まれ、かつ回転角度θy(n)が、回転角度θy(s)を中心とした所定の角度の範囲θy(s)±Δθyに含まれる測定ポイントを全て抽出する。
【0051】
つぎに、ステップS412にて、前記ステップS410の条件に該当する測定ポイントが存在するか否かを判定する。前記条件に該当する測定ポイントが存在しなければ、「No」と判定し、後述のステップS428に進む。一方、前記ステップS410の条件に該当する測定ポイントが存在すれば、「Yes」と判定して、ステップS414に進む。以下の説明では、ステップS410において抽出した測定ポイント数がkmax個であるとする。コントローラ56は、ステップS414にて、前記ステップS410において抽出した測定ポイントに、測定ポイント番号nが小さい順に、抽出ポイント番号k(k=1、2・・・kmax)をそれぞれ割り当てる。以下のステップS418〜S422は、抽出ポイント番号kごとに順番に処理する。
【0052】
まず、ステップS416にて、処理対象の抽出ポイント番号kを「1」に初期化する。つぎに、コントローラ56は、ステップS418にて、抽出ポイント番号kが付された測定ポイントBから抽出ポイント番号sが付された処理対象の測定ポイントAに向かうベクトルBAと、3次元座標の原点O(すなわち、3次元カメラCAからのレーザ光の出射点)から前記測定ポイントAに向かうベクトルOAとのなす角度θkを算出する。測定ポイントAの座標を(xs,ys,zs)とし、測定ポイントBの座標を(xk,yk,zk)とすると、ベクトルBA(xs−xk,ys−yk,zs−zk)とベクトルOA(xs,ys,zs)のなす角度θkは、内積の定義から次のように算出される。θk=cos−1[{xs・(xs−xk)+ys・(ys−yk)+zs・(zs−zk)}/√{xs+ys+zs}・√{(xs−xk)+(ys−yk)+(zs−zk)}]
【0053】
つぎに、コントローラ56は、ステップS420にて、前記ステップS418において算出した角度θkの大きさを基準値θkbと比較する。この基準値θkbは、次のようにして予め設定されている。3次元カメラCAからの距離が遠く、測定可能範囲の限界位置にある物体にレーザ光を照射したとき、前記照射したレーザ光の光軸と第1受光センサ22に入射する反射光の光軸がなす角度が最小となる。この最小の角度から基準値θkbを定める。ただし、結像位置P(n)ごとに基準値θkbを定めてもよい。前記算出した角度θkの大きさが、基準値θkbよりも小さければ、「Yes」と判定して、ステップS422に進み、コントローラ56は、ステップS422にて、前記算出した測定ポイントAの3次元座標(xs,ys,zs)を測定データから除外する。すなわち、測定ポイントAにて反射した反射光は、測定対象物OBの他の部分に遮られていると判定して、前記算出した3次元座標(xs,ys,zs)を除外する。そして、ステップS424に進む。
【0054】
一方、前記算出した角度θkの大きさが基準値θkb以上であれば、「No」と判定する。すなわち、測定ポイントAにて反射した反射光は、測定対象物OBの他の部分に遮られていないと判定する。そして、ステップS424に進む。
【0055】
つぎに、コントローラ56は、ステップS424にて、前記ステップS410において抽出したすべての測定ポイントについて、ステップS418以降の処理を実行したか否かを判定する。すなわち、現在の処理対象の抽出ポイント番号kと最大値kmaxを比較する。最初、処理対象の抽出ポイント番号kは、「1」に初期化されているので、「No」と判定して、ステップS426に進み、ステップ426にて、処理対象の抽出ポイント番号kをインクリメントして、ステップS418に戻る。このようにして、ステップS418乃至ステップS426からなる処理を繰り返し、前記ステップS410において抽出したすべての測定ポイントについてステップS418以降の処理を実行したとき、現在の処理対象の抽出ポイント番号kが最大値kmaxと一致するので、ステップS424にて「Yes」と判定し、ステップS428に進む。
【0056】
つぎに、コントローラ56は、ステップS428にて、前記ステップS402において抽出した全ての測定ポイントについて、ステップS410乃至ステップS424の処理を実行したか否かを判定する。すなわち、現在の処理対象の抽出ポイント番号sと最大値smaxを比較する。最初、処理対象の抽出ポイント番号sは「1」に初期化されているので、「No」と判定して、ステップS430にて、処理対象の抽出ポイント番号sをインクリメントして、ステップS410に戻る。このようにして、ステップS410乃至ステップS430からなる処理を繰り返し、前記ステップS402において抽出した全ての測定ポイントについてステップS410乃至ステップS424の処理を実行したとき、現在の処理対象の抽出ポイント番号sは最大値smaxと一致するので、ステップS428にて「Yes」と判定して、ステップS432に進み、ステップS432にて座標除外処理を終了する。
【0057】
つぎに、コントローラ56は、図9に示す3次元画像表示処理を実行する。コントローラ56は、ステップS500にて、3次元画像表示処理を開始すると、ステップS502にて、前述の座標除外処理によって除外されることなく残った3次元座標(xn,yn,zn)を用いて3次元画像データを作成する。そして、ステップS504にて、前記3次元画像データを表示装置60に供給し、表示装置60は、前記供給された3次元画像データに従って、測定対象物OBの3次元画像を表示する。そして、ステップS506にて、3次元画像表示処理を終了し、3次元形状測定を終了する。
【0058】
上記のように構成した第1実施形態に係る3次元形状測定装置においては、ピーク部分の波形の対称性を判定して、対称であると判定した測定ポイントについてのみ、3次元座標データを算出するようにしたので、測定対象物OBの縁部の測定ポイントのうち、反射光のスポットの欠け方が少ない場合のみ、3次元座標データを算出することができ、3次元形状測定の測定精度を向上させることができる。さらに、ピーク部分の波形が対称であると判定した場合に、全体の波形の対称性を判定するようにした。全体の波形が対称であると判定したときは、算出した3次元座標(xn,yn,zn)を測定データとして採用するが、非対称であると判定したときは、その測定ポイントAと測定ポイントAに近接する他の測定ポイントBとの位置関係を、ベクトルOAとベクトルBAのなす角度θkを用いて評価し、測定ポイントAからの反射光が測定対象物OBの他の部分に遮られる可能性があるときは、測定ポイントAの3次元座標(xs,ys,zs)を測定データから除外するようにした。これにより、測定精度をさらに向上させることができる。また、基準位置P1(n)、受光位置T1a及び受光位置T1bの位置関係によって、ピーク部分の波形の対称性を判定し、基準位置P1(n)、受光位置T2a及び受光位置T2bの位置関係によって全体の波形の対称性を判定するので、簡単かつ高速に受光曲線の波形の対称性を判定できる。
【0059】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態においては、第1実施形態のセンサ信号取り込み回路50に代えて、センサ信号取り込み回路50Aを備えている。他の構成は、第1実施形態と同様である。センサ信号取り込み回路50Aは、図10に示すように、制御回路511、信号取り出し回路512、フィルタ回路513、第1レベル受光位置検出回路514、第2レベル受光位置検出回路515及び演算回路516を備えている。第1レベル受光位置検出回路514は、第1比較回路514a、第1カウント回路514b及び第2カウント回路514cからなる。また、第2レベル受光位置検出回路515は、第2比較回路515a、第3カウント回路515b、第4カウント回路515cからなる。
【0060】
制御回路511は、コントローラ56からの作動開始の指示に応答して、信号取り出し回路512に、第1受光センサ22からの受光信号の取り込みを指示する信号を設定された周期ごとに出力する。また、制御回路511は、受光信号の取り込みを指示する信号と同じタイミングで、第1カウント回路514a、第2カウント回路514b、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cに、カウント値を「0」にリセットするリセット信号を出力する。信号取り出し回路512は、制御回路511から取り込みを指示する信号を入力するごとに、第1受光センサ22、第1カウント回路514a、第2カウント回路514b、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cに共通の一定周期のパルス信号を出力する。第1受光センサ22は、第1実施形態と同様に、信号取り出し回路512から入力したパルス信号の各パルスに同期して、第1受光センサ22の一端の受光素子から他端の受光素子に向かって順番に、各受光素子が受光した光量に応じた受光信号を信号取り出し回路512に出力する。
【0061】
フィルタ回路513は、ローパスフィルタであり、入力した受光信号に含まれる高周波成分をカットして、図11に示すような1つのピークを有する信号を出力する。第1比較回路514aは、受光信号の強度のレベルL1を閾値として、フィルタ回路513から入力した受光信号を2値化する。すなわち、フィルタ回路513から入力した受光信号の強度が、レベルL1よりも小さい場合は、受光信号をローレベルに設定し、レベルL1以上である場合は、受光信号をハイレベルに設定する。そして、第1比較回路514aは、2値化した受光信号がローレベルからハイレベルに変化すると、第1カウント回路514bに、第1検出信号を出力する。また、第1比較回路514aは、2値化した受光信号がハイレベルからローレベルに変化すると、第2カウント回路514cに第2検出信号を出力する。第1カウント回路514b及び第2カウント回路514cは、制御回路511からリセット信号を入力すると、カウント数を「0」にリセットして、信号取り出し回路512から入力したパルス信号のパルス数をカウントする。そして、第1比較回路514aからそれぞれ第1検出信号及び第2検出信号を入力すると、それぞれカウントを終了して、カウント値に相当するデジタルデータを演算回路516に出力する。
【0062】
第2比較回路515aは、第1比較回路514aの閾値をレベルL1よりも小さなレベルL2に設定した回路で、他の構成は第1比較回路514aと同様である。また、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cも、それぞれ第1カウント回路514b及び第2カウント回路514cと同様の構成である。上記の第1カウント回路514b、第2カウント回路514c、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cから演算回路516に出力されるカウント値は、それぞれ第1受光センサ22の受光素子の番号、すなわち、受光位置T1a、受光位置T1b、受光位置T2a及び受光位置T2bに相当する。
【0063】
上記のように構成した第2実施形態に係る3次元形状測定装置において、作業者が、入力装置58を用いて測定対象物OBの3次元形状測定の開始を指示すると、コントローラ56は、第1実施形態と同様に、図3の3次元形状データ取り込み処理を実行するが、この3次元形状データ取り込み処理のステップS124において、演算回路516は、コントローラ56からの指示に応答して、各カウント回路514b,514c,515b,515cから次に入力するカウント値(受光位置T1a,T1b,T2a,T2b)を記憶するとともに、図12に示す波形判定処理を実行する。演算回路516は、ステップS600にて、波形判定処理を開始すると、ステップS602にて、波形対称性判定フラグE(n)を「0」に初期化する。
【0064】
つぎに、第1カウント回路514b、第2カウント回路514c、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cからそれぞれ受光位置T1a、受光位置T1b、受光位置T2a及び受光位置T2bを入力したか否かを判定する。未だ、全ての受光位置の入力を終了していない場合は、「No」と判定して、ステップS606に進み、ステップS606にて、コントローラ56からの終了指示の有無を判断する。なお、本実施形態においては、コントローラ56は、図3の3次元形状データ取り込み処理のステップS124において、設定された時間以上、後述する結像位置P(n)及び波形対称性フラグE(n)が供給されない場合は、演算回路516に終了指令を出力する。これは、測定対象物OBの反射率が極めて小さく、レーザ光の強度を制御しても、受光曲線のピーク位置がレベルL2より下になってしまう場合、演算回路516にはデータが入力されないので、図12の波形判定処理を強制的に終了させる必要があるためである。コントローラ56から終了指令があった場合には「Yes」と判定して、ステップS608に進み、波形判定処理を終了する。一方、終了指令がない場合には、「No」と判定し、ステップS604を再度実行する。そして、受光位置T1a,T1b,T2a,T2bを入力すると、ステップS604にて「Yes」と判定して、ステップS610に進む。演算回路516は、ステップS610にて、受光位置T2aと受光位置T1aの間の受光素子の数(T1a−T2a)を算出する。図11の受光曲線における、点A(T2a,L2)及び点B(T1a,L1)を通る直線を直線aとすると、ステップS610にて算出した受光素子の数(T1a−T2a)は、直線aの傾きSLaに相当する。つぎに、演算回路516は、ステップS612にて、受光位置T1bと受光位置T2bの間の受光素子の数(T2b−T1b)を算出する。図11の受光曲線における、点C(T1b,L1)及び点D(T2b、L2)を通る直線を直線bとすると、ステップS612にて算出した受光素子の数は、直線bの傾きSLbに相当する。
【0065】
つぎに、演算回路516は、ステップS614にて、傾きSLaと傾きSLbのずれ量を表すずれ量D3を、D3=|(SLa−SLb)/(SLa+SLb)|の演算によって算出する。本実施形態においては、ずれ量D3が小さいほど、受光曲線の全体の波形の対称性が良いとみなす。すなわち、左右対称である状態に近いとみなす。そこで、演算回路516は、ステップS616にて、ずれ量D3と予め設定された許容値TL3とを比較する。ずれ量D3が、許容値TL3以下である場合、「Yes」と判定する。すなわち、受光曲線の全体の波形が左右対称であると判定する。そして、演算回路516は、ステップS618にて、直線aと直線bの交点の横軸成分を基準位置P1(n)として算出する。つぎに、演算回路516は、ステップS620にて、この基準位置P1(n)を結像位置P(n)として決定する。そして、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)をコントローラ56に出力する。なお、波形対称性判定フラグE(n)は、ステップS602にて「0」に初期化されているので、ステップS616にて「Yes」と判定した場合にコントローラ56に出力される波形対称性フラグE(n)の値は「0」である。そして、演算回路516は、ステップS608にて、波形判定処理を終了する。
【0066】
一方、ずれ量D3が、許容値TL3よりも大きい場合、ステップS616にて、「No」と判定する。すなわち、受光曲線の波形は、全体として左右対称でないと判定する。この場合、受光曲線の波形は全体としては、左右対称ではないが、基準位置P2(n)を算出し、前記算出した基準位置P2(n)を測定対象物OBまでの距離を算出するための結像位置P(n)として採用できることがある。そこで、演算回路516は、ステップS622にて、受光位置T1aと受光位置T1bの中点を基準位置P2(n)=(T1b−T1a)/2)として設定する。つぎに、ステップS624にて、図13Aに概念的に示すテーブルTBLを用いて、基準位置P2(n)に対応する基準距離WLを設定する。基準距離WLは、受光曲線の波形が全体として左右対称である場合の、受光位置T2aと受光位置T2bの距離の半分の距離を表す。テーブルTBLには、基準位置P2(n)と基準距離WLの関係が記録されている。図13Bに示すように、第1受光センサ22における受光位置によって、反射光の光軸と集光レンズ20の光軸とのずれに応じて、第1受光センサ22に形成されるスポットの受光素子の配列方向の径が異なる。すなわち、図13Bに実線で示すように、反射光の光軸が集光レンズ20の光軸と一致しているときは、第1受光センサ22に形成される反射光のスポットの径が最も小さいので、受光位置T2aと受光位置T2bの距離が最も小さい。一方、図13Bに破線で示すように、反射光の光軸と集光レンズ20の光軸とがずれているときは、そのずれが大きいほど、第1受光センサ22に形成される反射光のスポットの径が大きくなるので、受光位置T2aと受光位置T2bの距離も大きくなる。したがって、基準距離WLは、基準位置P2(n)が第1受光センサ22の中央に位置するとき最も小さく、基準位置P2(n)が第1受光センサ22の端部に近付くに従って大きくなる。
【0067】
第2実施形態においては、直線aと直線bの傾きを比較して、傾きが小さい側の波形を正常とみなす。すなわち、反射光のスポットが欠けていない状態とみなす。例えば、図11においては、基準位置P2(n)の左側の波形を正常とみなす。もし、少なくともレベルL1より受光強度が大きい部分の波形の対称性が良ければ、波形が正常とみなした側の受光素子であって、強度がレベルL2である受光素子又はレベルL2に最も近い受光素子の位置(すなわち、図11の例においては、受光位置T2a)と基準位置P2(n)との距離は、基準距離WLに近いはずである。そこで、演算回路516は、まず、ステップS626にて、傾きSLaと傾きSLbの大きさを比較し、傾きSLaが傾きSLbより小さければ、「Yes」と判定して、ステップS628に進む。この場合、基準位置P2(n)と受光位置T2aの距離の方が、基準位置P2(n)と受光位置T2bの距離よりも大きい。演算回路516は、ステップS628にて、基準位置P2(n)と受光位置T2aの距離w2と基準距離WLのずれ量D4をD4=|1−w2/WL|の演算により算出する。そして、演算回路516は、ステップS630にて、ずれ量D4と予め設定された許容値TL4とを比較し、ずれ量D4が許容値TL4以下であれば、「Yes」と判定して、ステップS632に進む。
【0068】
つぎに、演算回路516は、ステップS632にて、波形対称性判定フラグE(n)を「1」に設定する。そして、基準位置P2(n)を結像位置P(n)として決定する。演算回路516は、ステップS620にて、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)をコントローラ56に出力し、ステップS608にて、波形判定処理を終了する。一方、ステップS630において、ずれ量D4が許容値TL4よりも大きい場合は、「No」と判定して、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)をコントローラ56に出力することなく、ステップS608に進み、波形判定処理を終了する。
【0069】
また、ステップS626における傾きSLaと傾きSLbとの比較の結果、傾きSLaが傾きSLbより大きければ、「No」と判定して、ステップS634に進む。この場合、基準位置P2(n)と受光位置T2bの距離の方が、基準位置P2(n)と受光位置T2aの距離よりも大きい。演算回路516は、ステップS634にて、基準位置P2(n)と受光位置T2bの距離w2と基準距離WLのずれ量D5をD5=|1−w2/WL|の演算により算出する。そして、演算回路516は、ステップS636にて、ずれ量D5と予め設定された許容値TL4と比較し、ずれ量D5が許容値TL4以下であれば、「Yes」と判定して、ステップS632に進む。そして、上記のステップS632及びS620を実行し、ステップS608にて、波形判定処理を終了する。一方、ステップS636において、ずれ量D5が許容値TL4よりも大きい場合は、「No」と判定して、結像位置P(n)及び波形対称性判定フラグE(n)をコントローラ56に出力することなく、ステップS608に進み、波形判定処理を終了する。以降、第1実施形態と同様に、3次元座標算出処理、座標除去処理及び3次元形状表示処理を実行して、3次元形状測定処理を終了する。なお、基準距離WLを、受光曲線の波形が全体として左右対称である場合の、受光位置T2aと受光位置T2bの距離としてもよい。この場合、ずれ量D4をD4=|1−2×w2/WL|と算出し、ずれ量D5をD5=|1−2×w2/WL|と算出するとよい。
【0070】
上記のように構成した第2実施形態に係る3次元形状測定装置においては、全体の波形の対称性を判定して、対称であると判定した測定ポイントについては、3次元座標データを測定データとして算出するようにした。さらに、全体の波形が非対称であると判定した測定ポイントについては、ピーク部分の波形の対称性を判定し、対称であると判定した測定ポイントについても、3次元座標データを算出するようにした。全体の波形の対称性のみによって、3次元座標データを測定データとして算出するか否かを決定すると、測定データを取得できる測定対象物OBの縁部の測定ポイント数がかなり少なくなり、測定精度が低下することが考えられる。しかし、上記のように、全体の波形が非対称であっても、ピーク部分の波形が対称であれば、3次元座標データを算出しておき、第1実施形態と同様に、図7の座標除外処理を実行して、所定の条件に該当する3次元座標データを測定データから除外するようにした。すなわち、測定対象物OBの縁部にレーザ光を照射した場合であって、反射光のスポットの欠け方が少ない場合は、3次元座標データを測定データに残すようにした。したがって、測定精度をさらに向上させることができる。所定の条件に該当する3次元座標データを測定データから除外する処理は、言い換えれば、前記所定の条件に該当しない3次元座標データを測定データとして追加する処理である。すなわち、図12のステップS622以降の処理及び図7の座標除外処理は、全体の波形が非対称である場合に、所定の条件に該当しなかった3次元座標データを測定データとして追加する処理に相当する。また、受光位置T1a、受光位置T1b、受光位置T2a及び受光位置T2bを第1カウント回路514b、第2カウント回路514c、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cによって求めるようにしたので、第1実施形態の演算回路505に比べて、演算回路516の負荷を軽減できる。すなわち、演算回路505は、受光曲線データD(n,1)〜D(n,mmax)を全て取り込んで、受光位置T1a、受光位置T1b、受光位置T2a及び受光位置T2bを取得する処理を実行する必要があったが、演算回路516は、その必要がない。したがって、3次元形状測定を高速化できる。また、演算回路516の構成を簡単にでき、コストダウンできる。
【0071】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、上記第1実施形態において、ずれ量D1が許容値TL1以下であればその測定ポイント3次元座標データを測定データとして採用し、ずれ量D1が許容値TL1より大きければ、その測定ポイントの3次元座標データを測定データとして採用しないようにしてもよい。この場合、図5の波形判定処理のステップS214からステップS222及び図7の座標除外処理を省略すればよい。また、ずれ量D1が許容値TL1以下であるが、ずれ量D2が許容値TL2より大きいとき、反射光が測定対象物OBの他の部分に遮られているか否かを判定せずに、その測定ポイントの3次元座標データを測定データから除外するようにしてもよい。この場合、図7の座標除外処理のステップS406〜S430に代えて、波形対称性フラグE(n)が「1」である測定ポイントの3次元座標データを測定データから除外するステップを設ければよい。
【0073】
また、上記第2実施形態において、ずれ量D3が許容値TL3以下であればその測定ポイントの3次元座標データを測定データとして採用し、ずれ量D3が許容値TL3より大きければ、その測定ポイントの3次元座標データを測定データとして採用しないようにしてもよい。この場合、図12の波形判定処理のステップS622〜ステップS636及び図7の座標除外処理を省略すればよい。また、ずれ量D3が許容値TL3より大きく、かつずれ量D4又はずれ量D5が許容値TL4以下のとき、反射光が測定対象物の他の部分に遮られているか否かを判定せずに、その測定ポイントの3次元座標データを測定データとして追加するようにしてもよい。この場合、図7の座標除外処理を実行しないようにすればよい。これらのように構成すれば、上記第1実施形態及び上記第2実施形態に比べると測定精度が多少低下するが、演算回路505,516及びコントローラ56が実行する処理の量を減らすことができるので、3次元形状測定を高速化できる。また、演算回路505,516及びコントローラ56の構成を簡単にできるので、コストダウンできる。
【0074】
また、上記第1実施形態においては、信号取り込み回路50の演算回路505が、結像位置P(n)を算出するとともに波形対称性フラグE(n)の値をセットするようにした。しかし、これに代えて、信号取り込み回路50に演算回路505を設けることなく、A/D変換回路504から出力された受光データD(n,1)〜D(n,mmax)をコントローラ56に入力し、コントローラ56が、前記入力した受光データD(n,1)〜D(n,mmax)を用いて、結像位置P(n)を算出するとともに波形対称性フラグE(n)をセットするようにしてもよい。上記第2実施形態においても、信号取り込み回路50Aに演算回路516を設けることなく、第1カウント回路514b、第2カウント回路514c、第3カウント回路515b及び第4カウント回路515cのカウント値をコントローラ56に入力し、コントローラ56が、前記入力したカウント値を用いて、結像位置P(n)を算出するとともに波形対称性フラグE(n)の値をセットするようにしてもよい。これによれば、信号取り込み回路50,50Aの構成を簡単にできる。
【0075】
また、上記第2実施形態においては、受光信号の強度の閾値としてレベルL1及びレベルL2を設定し、受光信号の強度と2つの閾値をそれぞれ比較して、受光信号を2値化しておき、2値化した受光信号がローレベルからハイレベルに切り替わるときの受光位置T1a,T2aと、ハイレベルからローレベルに切り替わるときの受光位置T1b,T2bを取得するようにした。しかし、さらに多くの閾値を設定してもよい。すなわち、図14に示すように、閾値として、レベルLi(i=1,2・・・imax)を設定する。レベルL1からレベルLimaxに向かって順に閾値としての値が小さくなるように設定する。この場合、第1レベル受光位置検出回路514及び第2レベル受光位置検出回路515と同様の構成の受光位置検出回路を、設定した閾値に対応させて設ければよい。そして、取得した複数の受光位置を用いて、基準位置P1(n)の左側及び右側における直線a及び直線bの傾きを最小二乗法により算出すればよい。
【0076】
この場合、設定した閾値のうちで最も大きいレベルL1に対応する受光位置T1a及び受光位置T1bの中点を基準位置P2(n)とするのが望ましい。また、基準位置P2(n)から、設定した閾値のうちで最も小さいレベルLimaxに対応する受光位置Timaxa及び受光位置Timaxbまでの距離のうち大きい方の距離を基準距離WLと比較するのが望ましい。しかし、必ずしもこのように構成する必要はなく、レベルL1とレベルLimaxの中間のレベルLiに対応する受光位置Tia及び受光位置Tibを用いて基準位置P2(n)を算出してもよい。この場合、基準位置P2(n)から、レベルLiよりも小さなレベルLjに対応する受光位置Tja及び受光位置Tjbまでの距離のうち大きい方の距離を基準距離WLと比較すればよい。これによれば、受光曲線における受光強度の変化率としての直線a及び直線bの傾きを、精度良く算出できるので、波形の対称性の判定の精度を向上させることができ、3次元形状測定の精度を向上させることができる。
【0077】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、受光曲線の波形の対称性を評価して、測定対象物OBの縁部に照射した場合であって反射光のスポットの欠け方が大きい場合、及び反射光が測定対象物OBの他の部分に遮られている場合、その測定ポイントの3次元座標データを測定データとして採用しないようにした。そこで、測定データとして採用しなかった測定ポイントの3次元座標を、その測定ポイントの周辺の測定ポイントの3次元座標データを用いて補間演算により求めるようにしてもよい。
【0078】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、筐体30を第1ミラー14によるレーザ光の走査方向に対して直角方向に回転させてレーザ光を2次元的に走査するように構成しているが、第1ミラー14によるレーザ光の走査方向とは直角方向にレーザ光を走査できれば、どのような構造を採用してもよい。例えば、Y軸方向を回転軸とする長尺のミラーを第1ミラー14の正面側に設け、第1ミラー14で反射したレーザ光をさらに下方へ反射させる。そして、筐体30の下面側に開口部を設けておき、この長尺のミラーにて反射したレーザ光を測定対象物OBに照射する。そして、測定対象物OBからの反射光を、この長尺のミラー、第2ミラー18及び結像レンズ20を介して第1受光センサ22及び第2受光センサ24で受光してもよい。また、筐体30をY軸回りに回転させるのではなく、X軸方向に3次元カメラCAを平行移動させてもよい。また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、測定対象物OBからの反射光を第2ミラー18及び結像レンズ20を介して第1受光センサ22にて受光するようにした。しかし、第2ミラー18を設けずに、測定対象物OBからの反射光を結像レンズ20のみを介してエリアセンサにて受光するようにしてもよい。この場合、反射光をすべて受光可能な程度の受光面積を備えたエリアセンサを用いればよい。そして、第2受光センサを、前記エリアセンサで反射した反射光を全て受光可能な程度の受光面積を備えたセンサにすればよい。
【符号の説明】
【0079】
10…レーザ光源、14…第1ミラー、16…モータ、18・・・第2ミラー、22…第1受光センサ、30…筐体、32…モータ、40…レーザ駆動回路、42…ミラー駆動回路、44…ミラー角度検出回路、46…筐体駆動回路、48…筐体角度検出回路、50,50A・・・センサ信号取り込み回路、56…コントローラ、OB…測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に照射するレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記測定対象物の表面に形成される前記レーザ光の光スポットの位置を変更する照射位置変更手段と、
前記照射位置変更手段を駆動して測定ポイントを変更する駆動手段と、
前記測定対象物の表面にて反射した前記レーザ光の反射光を受光して、受光光量に応じた強度の受光信号をそれぞれ出力する複数の受光素子を一列に配置した受光センサと、
前記受光素子の配置順に前記受光信号の強度を表した受光曲線における受光強度の分布が対称であるか非対称であるかを判定する対称判定手段と、
前記対称判定手段によって対称であると判定されたとき、前記受光強度の分布の対称軸に相当する受光位置を用い、3角測量の原理に基づいて前記測定対象物までの距離を算出し、前記算出した前記測定対象物までの距離と前記駆動手段による前記照射位置変更手段の駆動量とを用いて、前記測定ポイントの3次元座標を表す3次元座標データを測定データとして算出し、前記対称判定手段によって非対称であると判定されたとき、前記3次元座標データを算出しない測定データ算出手段と
を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元形状測定装置において、
前記対称判定手段は、
前記受光素子の配置順に前記受光信号を入力し、前記入力した受光信号の強度が所定の第1強度以下である状態から前記第1強度より大きい状態に変化したときの受光素子の位置を第1受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が前記第1強度より大きい状態から前記第1強度以下である状態に変化したときの受光素子の位置を第2受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が前記第1強度よりも小さな第2強度以下である状態から前記第2強度より大きい状態に変化したときの受光素子の位置を第3受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が前記第2強度より大きい状態から前記第2強度以下である状態に変化したときの受光素子の位置を第4受光位置として検出する受光位置検出手段と、
前記第3受光位置から前記第1受光位置へ向かう前記受光信号の強度の傾きを表す第1の傾きと、前記第4受光位置から前記第2受光位置へ向かう前記受光信号の強度の傾きを表す第2の傾きを算出する傾き算出手段と、
前記第1の傾きと前記第2の傾きのずれ量を表す第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出手段と、
前記第1ずれ量が所定の第1基準ずれ量以下であるとき、前記受光強度の分布が対称であると決定し、前記第1ずれ量が前記第1基準ずれ量より大きいとき、前記受光強度の分布が非対称であると決定する対称決定手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元形状測定装置において、
前記第1ずれ量が所定の第1基準ずれ量より大きいとき、前記第1受光位置と前記第2受光位置の中点を基準位置として取得する基準位置取得手段と、
前記基準位置から前記第3受光位置までの距離と、前記基準位置から前記第4受光位置までの距離のうちの大きい方の距離を選択し、前記選択した距離と所定の基準距離とのずれ量を表す第2ずれ量を算出する第2ずれ量算出手段と、
前記第2ずれ量が所定の第2基準ずれ量以下である全ての測定ポイントについて、それぞれ前記基準位置を用いて3角測量の原理に基づいて前記測定対象物までの距離を算出し、前記算出した測定対象物までの距離と前記駆動手段による前記照射位置変更手段の駆動量を用いて3次元座標データを算出する3次元座標データ算出手段と、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうち、前記受光センサに受光される反射光の光路内に、前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しない測定ポイントの前記3次元座標データを前記測定データに追加する追加手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元形状測定装置において、
前記追加手段は、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうちの1つの測定ポイントを選択する測定ポイント選択手段と、
前記3次元座標の原点から前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルと、前記選択した測定ポイントから見て前記レーザ光源側の所定の領域に位置する全ての測定ポイントから前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルとの間の角度をそれぞれ算出する角度算出手段と、
全ての前記算出した角度が所定の基準角度より大きいとき、反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しないと決定し、前記算出した角度のうち少なくとも1つの角度が前記所定の基準角度以下であるとき、前記反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在すると決定する遮光物存否決定手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の3次元形状測定装置において、
前記基準距離は、前記基準位置に応じて設定されていることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の3次元形状測定装置において、
前記対称判定手段は、
受光信号の強度が最も大きな受光素子の位置を基準位置として取得する基準位置取得手段と、
受光信号の強度が所定の第1強度である受光素子の位置又は受光信号の強度が前記第1強度に最も近い受光素子の位置を、前記基準位置の両側からそれぞれ第1受光位置及び第2受光位置として1つずつ検出する第1強度位置検出手段と、
前記第1受光位置から前記基準位置までの距離と、前記第2受光位置から前記基準位置までの距離とのずれ量を表す第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出手段と、
前記第1ずれ量が所定の第1基準値以下であるとき、前記受光強度の分布が対象であると決定し、前記第1ずれ量が前記第1基準値より大きいとき、前記受光強度の分布が非対称であると決定する対称決定手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の3次元形状測定装置において、
前記第1ずれ量が前記第1基準ずれ量以下であるとき、受光信号の強度が前記第1強度よりも小さな第2強度である受光素子の位置又は受光信号の強度が前記第2強度に最も近い受光素子の位置を、前記基準位置の両側からそれぞれ第3受光位置及び第4受光位置として1つずつ検出する第2強度位置検出手段と、
前記第3受光位置から前記基準位置までの距離と、前記第4受光位置から前記基準位置までの距離とのずれ量を表す第2ずれ量を算出する第2ずれ量算出手段と、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうち、前記受光センサに受光される反射光の光路内に、前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在する測定ポイントの前記3次元座標データを前記測定データから除外する除外手段を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の3次元形状測定装置において、
前記除外手段は、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうちの1つの測定ポイントを選択する測定ポイント選択手段と、
前記3次元座標の原点から前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルと、前記選択した測定ポイントから見て前記レーザ光源側の所定の領域に位置する全ての測定ポイントから前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルとの間の角度をそれぞれ算出する角度算出手段と、
全ての前記算出した角度が所定の基準角度より大きいとき、反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しないと決定し、前記算出した角度のうち少なくとも1つの角度が前記所定の基準角度以下であるとき、前記反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在すると決定する遮光物存否決定手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項9】
測定対象物に照射するレーザ光をレーザ光源から出射するレーザ光出射ステップと、
前記測定対象物の表面に形成される前記レーザ光の光スポットの位置を変更する照射位置変更手段を駆動手段によって駆動して測定ポイントを変更する測定ポイント変更ステップと、
前記測定対象物の表面にて反射した前記レーザ光の反射光を受光して、受光光量に応じた強度の受光信号をそれぞれ出力する複数の受光素子を一列に配置した受光センサの前記受光素子の配置順に、前記受光信号の強度を表した受光曲線における受光強度の分布が対称であるか非対称であるかを判定する対称判定ステップと、
前記対称判定ステップによって対称であると判定されたとき、前記受光強度の分布の対称軸に相当する受光位置を用い、3角測量の原理に基づいて前記測定対象物までの距離を算出し、前記算出した前記測定対象物までの距離と前記駆動手段による前記照射位置変更手段の駆動量とを用いて、前記測定ポイントの座標を表す3次元座標データを測定データとして算出し、前記対称判定ステップによって非対称であると判定されたとき、前記3次元座標データを算出しない測定データ算出ステップと
を含むことを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の3次元形状測定方法において、
前記対称判定ステップは、
前記受光素子の配置順に前記受光信号を入力し、前記入力した受光信号の強度が所定の第1強度以下である状態から前記第1強度より大きい状態に変化したときの受光素子の位置を第1受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が前記第1強度より大きい状態から前記第1強度以下である状態に変化したときの受光素子の位置を第2受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が前記第1強度よりも小さな第2強度以下である状態から前記第2強度より大きい状態に変化したときの受光素子の位置を第3受光位置として検出し、前記入力した受光信号の強度が前記第2強度より大きい状態から前記第2強度以下である状態に変化したときの受光素子の位置を第4受光位置として検出する受光位置検出ステップと、
前記第3受光位置から前記第1受光位置へ向かう前記受光信号の強度の傾きを表す第1の傾きと、前記第4受光位置から前記第2受光位置へ向かう前記受光信号の強度の傾きを表す第2の傾きを算出する傾き算出ステップと、
前記第1の傾きと前記第2の傾きのずれ量を表す第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出ステップと、
前記第1ずれ量が所定の第1基準ずれ量以下であるとき、前記受光強度の分布が対称であると決定し、前記第1ずれ量が前記第1基準ずれ量より大きいとき、前記受光強度の分布が非対称であると決定する対称決定ステップとを含むことを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の3次元形状測定方法において、
前記第1ずれ量が所定の第1基準ずれ量より大きいとき、前記第1受光位置と前記第2受光位置の中点を基準位置として取得する基準位置取得ステップと、
前記基準位置から前記第3受光位置までの距離と、前記基準位置から前記第4受光位置までの距離のうちの大きい方の距離を選択し、前記選択した距離と所定の基準距離とのずれ量を表す第2ずれ量を算出する第2ずれ量算出ステップと、
前記第2ずれ量が所定の第2基準ずれ量以下である全ての測定ポイントについて、それぞれ前記基準位置を用いて3角測量の原理に基づいて前記測定対象物までの距離を算出し、前記算出した測定対象物までの距離と前記駆動手段による前記照射位置変更手段の駆動量を用いて3次元座標データを算出する3次元座標データ算出ステップと、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうち、前記受光センサに受光される反射光の光路内に、前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しない測定ポイントの前記3次元座標データを前記測定データに追加する追加ステップとを含むことを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の3次元形状測定方法において、
前記追加ステップは、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうちの1つの測定ポイントを選択する測定ポイント選択ステップと、
前記3次元座標の原点から前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルと、前記選択した測定ポイントから見て前記レーザ光源側の所定の領域に位置する全ての測定ポイントから前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルとの間の角度をそれぞれ算出する角度算出ステップと、
全ての前記算出した角度が所定の基準角度より大きいとき、反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しないと決定し、前記算出した角度のうち少なくとも1つの角度が前記所定の基準角度以下であるとき、前記反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在すると決定する遮光物存否決定ステップとを含むことを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の3次元形状測定方法において、
前記基準距離は、前記基準位置に応じて設定されていることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項14】
請求項9に記載の3次元形状測定方法において、
前記対称判定ステップは、
受光信号の強度が最も大きな受光素子の位置を基準位置として取得する基準位置取得ステップと、
受光信号の強度が所定の第1強度である受光素子の位置又は受光信号の強度が前記第1強度に最も近い受光素子の位置を、前記基準位置の両側からそれぞれ第1受光位置及び第2受光位置として1つずつ検出する第1強度位置検出ステップと、
前記第1受光位置から前記基準位置までの距離と、前記第2受光位置から前記基準位置までの距離とのずれ量を表す第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出ステップと、
前記第1ずれ量が所定の第1基準値以下であるとき、前記受光強度の分布が対象であると決定し、前記第1ずれ量が前記第1基準値より大きいとき、前記受光強度の分布が非対称であると決定する対称決定ステップとを含むことを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項15】
請求項14に記載の3次元形状測定方法において、
前記第1ずれ量が前記第1基準ずれ量以下であるとき、受光信号の強度が前記第1強度よりも小さな第2強度である受光素子の位置又は受光信号の強度が前記第2強度に最も近い受光素子の位置を、前記基準位置の両側からそれぞれ第3受光位置及び第4受光位置として1つずつ検出する第2強度位置検出ステップと、
前記第3受光位置から前記基準位置までの距離と、前記第4受光位置から前記基準位置までの距離とのずれ量を表す第2ずれ量を算出する第2ずれ量算出ステップと、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうち、前記受光センサに受光される反射光の光路内に、前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在する測定ポイントの前記3次元座標データを前記測定データから除外する除外ステップとを含むことを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項16】
請求項15に記載の3次元形状測定方法において、
前記除外ステップは、
前記第2ずれ量が前記第2基準ずれ量以下である測定ポイントのうちの1つの測定ポイントを選択する測定ポイント選択ステップと、
前記3次元座標の原点から前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルと、前記選択した測定ポイントから見て前記レーザ光源側の所定の領域に位置する全ての測定ポイントから前記選択した測定ポイントへ向かうベクトルとの間の角度をそれぞれ算出する角度算出ステップと、
全ての前記算出した角度が所定の基準角度より大きいとき、反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在しないと決定し、前記算出した角度のうち少なくとも1つの角度が前記所定の基準角度以下であるとき、前記反射光の光路内に前記反射光を遮光する前記測定対象物の部分が存在すると決定する遮光物存否決定ステップとを備えたことを特徴とする3次元形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【公開番号】特開2012−137313(P2012−137313A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287995(P2010−287995)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】