説明

DLL回路及びこれを用いた半導体記憶装置、並びに、データ処理システム

【課題】FDLを調整するカウント信号のビット数を増加させても、高速に遅延量を確定させることが可能なDLL回路を提供する。
【解決手段】相対的に粗い調整ピッチでクロック信号を遅延させるディレイライン(CDL)10と、相対的に細かい調整ピッチでクロック信号を遅延させるディレイライン(FDL)20と、ディレイライン10,20の遅延量を制御する位相検知回路41,42及びカウンタ制御回路51,52とを備える。カウンタ制御回路51,52は、線形探索法によってディレイライン10を制御するとともに、二分探索法によってディレイライン20を制御する。これにより、ディレイライン20を調整するカウント信号のビット数を増加させても、高速に遅延量を確定させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDLL回路及びこれを用いた半導体記憶装置に関し、特に、調整ピッチの粗いCDL(Coarse Delay Line)と調整ピッチの細かいFDL(Fine Delay Line)を有するDLL回路及びこれを用いた半導体記憶装置に関する。また、本発明は、このような半導体記憶装置を用いたデータ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータなどのメインメモリとして、クロックに同期した動作を行うシンクロナスメモリが広く使用されている。中でも、DDR(Double Data Rate)型のシンクロナスメモリでは、入出力データを外部クロックに対して正確に同期させる必要があることから、外部クロックに同期した内部クロックを生成するためのDLL回路が必須である。
【0003】
DLL回路は、クロック信号を遅延させるディレイラインと、クロック信号の位相に基づいてディレイラインの遅延量を制御する制御部とを含んでいる。DLL回路は、より高速且つ正確に遅延量を確定させる必要があることから、調整ピッチの粗いCDLと調整ピッチの細かいFDLの両方が用いられることがある(特許文献1〜3参照)。このようなタイプのDLL回路においては、まずCDLを用いて遅延量を大まかに設定し、その後、FDLを用いて遅延量を正確に設定するという動作が行われる。これにより、高速性と正確性を両立することが可能となる。
【0004】
近年のシンクロナスメモリにおいては、非常に周波数の高いクロック信号が用いられることから、動作マージンの確保が非常に重要である。このため、DLL回路にも高い調整精度が要求されることになる。DLL回路の調整精度を高めるためには、FDLの調整ピッチをより小さくすることが有効である。例えば、4ビットのカウント信号でFDLを調整する場合には16段階(=2)の調整が可能であるが、5ビットのカウント信号でFDLを調整すれば、32段階(=2)の調整が可能となり、理論上2倍の調整精度を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開平11−88153号公報
【特許文献2】特開平11−186903号公報
【特許文献3】特開2003−32104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、FDLの調整ピッチを小さくすると、その分、遅延量を確定させるために必要な調整ステップ数が増加する。すなわち、FDLを調整するカウント信号をインクリメント又はデクリメントする線形探索法によって調整を行う場合、カウント信号のビット数が1ビット増えると、調整ステップ数が約2倍に増加し、調整に時間がかかるという問題があった。
【0006】
他方、FDLを調整するカウント信号のビット数を増やすと、理論的には調整精度が高くなるはずであるが、実際には、理論値ほどの調整精度が得られないことがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、改良されたDLL回路及びこれを用いた半導体記憶装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、FDLを調整するカウント信号のビット数を増加させても、高速に遅延量を確定させることが可能なDLL回路及びこれを用いた半導体記憶装置を提供することである。
【0009】
また、本発明のさらに他の目的は、FDLの調整精度が高められたDLL回路及びこれを用いた半導体記憶装置を提供することである。
【0010】
また、本発明のさらに他の目的は、このような半導体記憶装置を含むデータ処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によるDLL回路は、相対的に粗い調整ピッチでクロック信号を遅延させる第1のディレイラインと、相対的に細かい調整ピッチでクロック信号を遅延させる第2のディレイラインと、第1及び第2のディレイラインの遅延量を制御する制御部とを備え、制御部は、線形探索法によって第1のディレイラインを制御するとともに、二分探索法によって第2のディレイラインを制御することを特徴とする。
【0012】
本発明において、「線形探索法」とは、カウント値を連続的にインクリメント又はデクリメントすることによって、所望のカウント値をサーチする方法を指す。但し、インクリメント又はデクリメントは1ビットずつである必要はなく、例えば2ビットずつインクリメント又はデクリメントする場合も含まれる。一方、「二分探索法」とは、カウント値を上位ビットから順次確定させることによって、所望のカウント値をサーチする方法を指す。
【0013】
本発明の他の側面によるDLL回路は、相対的に粗い調整ピッチでクロック信号を遅延させる第1のディレイラインと、相対的に細かい調整ピッチでクロック信号を遅延させる第2のディレイラインと、クロック信号の位相を検知する位相検知回路と、位相検知回路の検知結果に基づいて、第1及び第2のディレイラインの遅延量をそれぞれ設定する第1及び第2カウンタ制御回路とを備え、第2のディレイラインは、カウンタ制御回路のカウント値をバイアス電圧に変換するバイアス回路と、バイアス電圧に応じてクロック信号の遅延量を変化させる補完回路とを有し、バイアス回路は、電源配線と補完回路との間にこの順に直列接続された第1及び第2のMOSトランジスタを含み、第1のMOSトランジスタのゲートには中間電位が供給され、第2のMOSトランジスタのゲートにはカウント値の所定のビットが供給されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明による半導体記憶装置は、上記のDLL回路を含むことを特徴とする。さらに、本発明によるデータ処理システムは、上記の半導体記憶装置を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によるDLL回路によれば、二分探索法によって第2のディレイラインを制御していることから、第2のディレイラインを調整するカウント信号のビット数を増加させても、高速に遅延量を確定させることが可能となる。一方、クロック信号の周波数が非常に高い場合には、クロック周期に対して第1のディレイラインの調整ピッチが粗すぎるため、第1のディレイラインを用いた調整は実質的に意味をなさないことがある。このため、第1のディレイラインを二分探索法によって制御すると、無駄な時間がかかってしまう。しかしながら、本発明では、第1のディレイラインについては線形探索法によって制御していることから、第1のディレイラインに対する制御を直ちに完了させることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の側面によるDLL回路によれば、カウント値の所定のビットが供給される第2のMOSトランジスタと電源配線との間に第1のMOSトランジスタが挿入されており、このトランジスタのゲートに中間電位が供給されていることから、第1のMOSトランジスタが飽和領域で導通した状態となる。このため、第2のMOSトランジスタのソースに供給される電流が一定値となることから、第2のディレイラインの調整精度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるDLL回路の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるDLL回路は、相補のクロック信号CLK,CLKBを受けて相補のクロック信号LCLKR,LCLKFを生成する入力レシーバ2と、相対的に粗い調整ピッチでクロック信号LCLKR,LCLKFを遅延させることによりクロック信号LCLKRC,LCLKFCを生成する第1のディレイライン10(CDL)と、相対的に細かい調整ピッチでクロック信号LCLKRC,LCLKFCを遅延させることによりクロック信号LCLKOET,LCLKOEBを生成する第2のディレイライン20(FDL)とを備えている。
【0020】
生成されたクロック信号LCLKOET,LCLKOEBは、出力バッファ4に供給される。出力バッファ4は、クロック信号LCLKOET,LCLKOEBに同期してデータを外部に出力する。
【0021】
また、クロック信号LCLKOET,LCLKOEBは、出力バッファ4と実質的に同じ構成を有するレプリカドライバ31,32にも供給され、その出力である参照クロック信号LRCLK,LFCLKがそれぞれ位相検知回路41,42に供給される。位相検知回路41は、クロック信号CLKの立ち上がりエッジ(クロック信号CLKBの立ち下がりエッジ)に基づいて位相を判定する回路であり、位相検知回路42は、クロック信号CLKの立ち下がりエッジ(クロック信号CLKBの立ち上がりエッジ)に基づいて位相を判定する回路である。
【0022】
位相検知回路41は、クロック信号CLK,CLKBに対して参照クロック信号LRCLKの位相が進んでいるか遅れているかを判定し、位相が進んでいれば、参照クロック信号LRCLKを遅らせるべく、検出信号RUPをローレベルとし、位相が遅れていれば、参照クロック信号LRCLKを速めるべく、検出信号RUPをハイレベルとする。同様に、位相検知回路42は、クロック信号CLK,CLKBに対して参照クロック信号LFCLKの位相が進んでいるか遅れているかを判定し、位相が進んでいれば、参照クロック信号LFCLKを遅らせるべく、検出信号FUPをローレベルとし、位相が遅れていれば、参照クロック信号LFCLKを速めるべく、検出信号FUPをハイレベルとする。
【0023】
検出信号RUP,FUPは、カウンタ制御回路51,52に供給される。カウンタ制御回路51,52は、ディレイライン10,20の遅延量を制御する回路であり、制御信号LDLLRESETが発行された場合に起動される。制御信号DLLRESETは、入力レシーバ6を介して外部から供給されたコマンドCMDが、コマンドデコーダ8によって所定のコマンドであることが検出された場合に生成される。所定のコマンドとは、電源投入時に発行されるコマンドや、セルフリフレッシュモードから復帰する際に発行されるコマンドなどが挙げられる。
【0024】
このように、位相検知回路41,42とカウンタ制御回路51,52は、ディレイライン10,20の遅延量を制御する回路であり、本発明においては、これらをまとめて「制御部」と呼ぶことがある。
【0025】
図2は、カウンタ制御回路51の構成を示すブロック図である。カウンタ制御回路52の構成はカウンタ制御回路51とほぼ同じであることから、重複する説明は省略する。
【0026】
図2に示すように、カウンタ制御回路51は、分周回路110、セレクタクロック制御回路120、シーケンス制御回路130、CDLセレクタ回路140及びFDLセレクタ回路150によって構成されている。
【0027】
分周回路110は、クロック信号LCLKRを分周してサイクル信号CYCを生成する回路であり、生成されたサイクル信号CYCは、セレクタクロック制御回路120及びシーケンス制御回路130に供給される。セレクタクロック制御回路120は、サイクル信号CYCに基づいて、CDLセレクタ回路140の動作クロックCDLCLKと、FDLセレクタ回路150の動作クロックFDLCLKを生成する回路である。シーケンス制御回路130は、検出信号RUP,FUP及びサイクル信号CYCに基づいて、ストローブ信号RST0B〜RST4Bを生成する回路である。
【0028】
また、CDLセレクタ回路140は、CDLである第1のディレイライン10の遅延量を設定する第1のカウンタ回路として機能し、動作クロックCDLCLK及び検出信号RUPに基づいて動作する。FDLセレクタ回路150は、FDLである第2のディレイライン20の遅延量を設定する第2のカウンタ回路として機能し、動作クロックFDLCLK、検出信号RUP及びストローブ信号RST0B〜RST4Bに基づいて動作する。
【0029】
図3は、シーケンス制御回路130の回路図である。
【0030】
図3に示すように、シーケンス制御回路130は、2つのNANDゲートG1,G2間にラッチ回路Lが接続されてなる5つの回路セットS4〜S0がカスケード接続された構造を有している。
【0031】
各回路セットS4〜S0に含まれるラッチ回路Lのリセット端には、制御信号LDLLRESETが供給されている。したがって、制御信号LDLLRESETが活性化すると、全てのラッチ回路Lにはローレベルがラッチされる。
【0032】
各回路セットS4〜S0に含まれるNANDゲートG1は、一方の入力端に前段の回路セットの出力が供給され、他方の入力端にラッチ回路Lの反転出力が供給されている。初段の回路セットS4のNANDゲートについては、検出信号RUP,FUPのNAND信号が供給される。
【0033】
各回路セットS4〜S0に含まれるNANDゲートG2は、一方の入力端にラッチ回路Lの出力が供給され、他方の入力端に検出信号RUP又はその反転信号が供給されている。より具体的には、回路セットS3,S1のNANDゲートG2には検出信号RUPが供給され、回路セットS4,S2,S0のNANDゲートG2には検出信号RUPの反転信号が供給される。
【0034】
そして、回路セットS4〜S0の反転出力が、それぞれストローブ信号RST0B〜RST4Bとして用いられる。
【0035】
このような回路構成により、制御信号LDLLRESETが活性化するとストローブ信号RST0B〜RST4Bは全てハイレベルとなり、その後、検出信号RUP,FUPの変化に応じてストローブ信号RST4B〜RST0Bの順にローレベルとなる。つまり、ラッチ回路Lは、制御信号LDLLRESETの活性化に応答して全てローレベルとなるが、一端ハイレベルに変化すると、再び制御信号LDLLRESETが活性化するまでローレベルには戻らない。後段のラッチ回路Lは、前段のラッチ回路Lがハイレベルとならない限り反転せず、したがって、ストローブ信号は、RST4B〜RST0Bの順にしか変化することができない。
【0036】
そして、FDLセレクタ回路150は、ストローブ信号RST4B〜RST0B等に基づいて、カウント値SELR4〜0を生成する。
【0037】
図4は、第2のディレイライン20のブロック図である。
【0038】
図4に示すように、FDLである第2のディレイライン20は、カウンタ制御回路51,52のカウント値をそれぞれバイアス電圧に変換するバイアス回路210,220と、バイアス電圧に応じてクロック信号LCLKRC,LCLKFCの遅延量を変化させる補完回路230,240によって構成されている。図4に示すように、クロック信号LCLKRCは、2つの信号LCLKRC_EとLCLKRC_Oによって構成され、クロック信号LCLKFCは、2つの信号LCLKFC_EとLCLKFC_Oによって構成されている。
【0039】
バイアス回路210には、カウンタ制御回路51のカウント値SELR4〜0と定電流源250によって生成される中間電位BIASPが供給されており、これらに基づいてバイアス信号BIASR_E,BIASR_Oを生成する。同様に、バイアス回路220には、カウンタ制御回路52のカウント値SELF4〜0と中間電位BIASPが供給されており、これらに基づいてバイアス信号BIASF_E,BIASF_Oを生成する。
【0040】
図5は、第2のディレイライン20の構成をより詳細に示す回路図であり、バイアス回路210、補完回路230及び定電流源250からなる部分を示している。バイアス回路220及び補完回路240の回路構成については、図5に示すバイアス回路210及び補完回路230とほぼ同じであることから省略する。
【0041】
図5に示すように、バイアス回路210は、電源配線VDDとバイアス信号BIASR_Eが供給される配線211との間に、直列接続された2つのPチャンネルMOSトランジスタが複数個並列接続され、電源配線VDDとバイアス信号BIASR_Oが供給される配線212との間に、直列接続された2つのPチャンネルMOSトランジスタが複数個並列接続された構成を有している。これらPチャンネルMOSトランジスタのうち、トランジスタP0〜P9のゲートにはカウント値SELR4〜0の対応するビットが供給され、トランジスタP10〜P19のゲートには中間電位BIASPが共通に供給されている。
【0042】
また、配線211と接地配線VSSとの間には、ダイオード接続されたNチャンネルMOSトランジスタ213、プリチャージ信号に同期してオンするNチャンネルMOSトランジスタ214及び定電流源C1が直列接続され、配線211と電源配線VDDとの間には、プリチャージ信号に同期してオンするPチャンネルMOSトランジスタ215が接続されている。同様に、配線212と接地配線VSSとの間には、ダイオード接続されたNチャンネルMOSトランジスタ216、プリチャージ信号に同期してオンするNチャンネルMOSトランジスタ217及び定電流源C2が直列接続され、配線212と電源配線VDDとの間には、プリチャージ信号に同期してオンするPチャンネルMOSトランジスタ218が接続されている。
【0043】
トランジスタP0〜P9のW/L比(チャネル幅とチャネル長の比)は、2のべき乗で重み付けがされている。具体的には、トランジスタP0,P1のW/L比を1WLと定義すると、トランジスタP2,P3のW/L比は2WL、トランジスタP4,P5のW/L比は4WL、トランジスタP6,P7のW/L比は8WL、トランジスタP8,P9のW/L比は16WLに設定されている。これにより、バイアス信号BIASF_E,BIASF_Oは、32段階(=2)の電圧レベルに調整することができる。
【0044】
このようにして生成されたバイアス信号BIASF_E,BIASF_Oは、補完回路230に含まれるNチャンネルMOSトランジスタ231,232のゲートにそれぞれ供給される。
【0045】
図5に示すように、トランジスタ231と接地配線VSSとの間にはクロック信号LCLKRC_Eに同期してオンするNチャンネルMOSトランジスタ233が接続され、トランジスタ232と接地配線VSSとの間にはクロック信号LCLKRC_Oに同期してオンするNチャンネルMOSトランジスタ234が接続されている。さらに、トランジスタ231,232と電源配線VDDとの間には、クロック信号LCLKRC_E,LCLKRC_Oのオア信号に同期してオンするPチャンネルMOSトランジスタ235が接続されている。
【0046】
このような回路構成により、補完回路230の出力であるクロック信号LCLKOETの位相は、バイアス信号BIASF_E,BIASF_Oの電圧に応じて、32段階に微調整される。
【0047】
また、トランジスタP10〜P19に中間電位BIASPを供給する定電流源250は、直列接続されたPチャンネルMOSトランジスタ251と抵抗252によって構成されている。トランジスタ251のゲートとドレインは短絡されており、トランジスタ251のゲート電位が中間電位BIASPとして取り出される。つまり、定電流源250はカレントミラー回路の入力側を構成し、トランジスタP10〜P19はカレントミラー回路の出力側を構成することになる。
【0048】
このような構成により、トランジスタP10〜P19は飽和領域で動作し、そのドレイン電流はカレントミラー回路によって規定される所定の電流量に制限される。その結果、カウント値SELR4〜0によってオン/オフするトランジスタP0〜P9のドレイン電流は、ドレイン電圧とほぼ無関係な所定値となることから、バイアス信号BIASF_E,BIASF_Oの調整ピッチをほぼ均一とすることが可能となる。
【0049】
これに対し、トランジスタP10〜P19を削除し、トランジスタP0〜P9のソースを電源配線VDDに直接接続した場合には、これらトランジスタP0〜P9が非飽和領域で動作することから、ドレイン電流がドレイン電圧によって変化してしまう。このため、バイアス信号BIASF_E,BIASF_Oの調整ピッチが均一とならず、その結果、カウント値SELRのビット数を増やしても調整精度が十分に高くならない。
【0050】
図6は、定電流源250の効果を説明するためのグラフであり、カウント値を1つ変化させた場合に得られるクロック信号の変化量、つまり、調整ピッチを示している。また、(a)はトランジスタP10〜P19を削除した場合、(b)はトランジスタP10〜P19のゲートに中間電位BIASPを与えた場合を示している。
【0051】
図6(a)に示すように、トランジスタP10〜P19を削除した場合、カウント値が大きくなると調整ピッチが拡大していることが分かる。このため、カウント値SELRのビット数を4ビットから5ビットに増加させても、調整精度があまり高くならないという問題が生じる。
【0052】
しかしながら、図6(b)に示すように、トランジスタP10〜P19のゲートに中間電位BIASPを与えた場合、カウント値に関わらず調整ピッチがほぼ一定となることが分かる。このため、カウント値SELRのビット数を4ビットから5ビットに増加させると、これに応じて調整精度を高めることが可能となる。
【0053】
次に、本実施形態によるDLL回路の動作について説明する。
【0054】
図7は、本実施形態によるDLL回路の大まかな動作を説明するためのフローチャートである。
【0055】
図7に示すように、DLL回路のリセットが指示されると(ステップS10)、シーケンス制御回路130は、線形探索法を用いたCDLシーケンスを実行し(ステップS20)、さらに、二分探索法を用いたFDLシーケンスを実行すると(ステップS30)、DLL回路がロックする。尚、DLL回路のリセットは、上述の通り、電源投入時やセルフリフレッシュモードから復帰時に実行され、これに応答して制御信号LDLLRESETが活性化する。
【0056】
図8は、CDLシーケンス(ステップS20)をより詳細に示すフローチャートである。
【0057】
CDLシーケンスにおいては、まず、位相検知回路41,42がUP判定を行うまで、ディレイライン10を用いて遅延量を1ピッチずつ上昇させる(ステップS21,S22)。ここで「UP判定」とは、クロック信号CLK,CLKBに対して参照クロック信号LRCLK,LFCLKの位相が遅れているために、参照クロック信号LRCLK,LFCLKを速める必要がある場合を指す。
【0058】
次に、位相検知回路41,42がUP判定を行うと、位相検知回路41,42がDOWN判定を行うまで、ディレイライン10を用いて遅延量を1ピッチずつ上昇させる(ステップS23,S24)。ここで「DOWN判定」とは、クロック信号CLK,CLKBに対して参照クロック信号LRCLK,LFCLKの位相が進んでいるために、参照クロック信号LRCLK,LFCLKを遅らせる必要がある場合を指す。
【0059】
そして、位相検知回路41,42がDOWN判定を行うとCDLシーケンスが終了し、次にFDLシーケンスに移る。このように、CDLシーケンスでは、線形探索法を用いて遅延量を1ピッチずつ変化させていることから、クロック信号の周波数が非常に高い場合、ディレイライン10に対する制御は直ちに完了する。
【0060】
図9は、FDLシーケンス(ステップS30)をより詳細に示すフローチャートである。また、図10は、FDLシーケンスの実行中におけるシーケンス制御回路130の動作波形図である。
【0061】
FDLシーケンスは、図10に示すように、検出信号RUP,FUPがいずれもハイレベル(UP判定)となった後(符号X1参照)、検出信号RUPがローレベル(DOWN判定)に変化したこと(符号X2参照)に応答して起動される。これにより、ストローブ信号RST4Bがローレベルに変化し、カウント値SELR4〜0に含まれる最上位ビットSELR4が反転する。これにより、ディレイライン20によって遅延量が16ピッチ低下する(ステップS31b)。
【0062】
そして、検出信号RUPがハイレベル(UP判定)に変化すると(符号X3参照)、今度はストローブ信号RST3Bがローレベルに変化し、カウント値SELR4〜0に含まれる2番目のビットSELR3が反転する。これにより、ディレイライン20によって遅延量が8ピッチ上昇する(ステップS32a,S32b)。
【0063】
さらに、検出信号RUPがローレベル(DOWN判定)に変化すると(符号X4参照)、今度はストローブ信号RST2Bがローレベルに変化し、カウント値SELR4〜0に含まれる3番目のビットSELR2が反転する。これにより、ディレイライン20によって遅延量が4ピッチ低下する(ステップS33a,S33b)。
【0064】
さらに、検出信号RUPがハイレベル(UP判定)に変化すると(符号X5参照)、今度はストローブ信号RST1Bがローレベルに変化し、カウント値SELR4〜0に含まれる4番目のビットSELR1が反転する。これにより、ディレイライン20によって遅延量が2ピッチ上昇する(ステップS34a,S34b)。
【0065】
さらに、検出信号RUPがローレベル(DOWN判定)に変化すると(符号X6参照)、今度はストローブ信号RST0Bがローレベルに変化し、カウント値SELR4〜0に含まれる最下位ビットSELR0が反転する。これにより、ディレイライン20によって遅延量が1ピッチ低下する(ステップS35a,S35b)。
【0066】
その後、UP判定がなされると(符号X7参照)、ディレイライン20によって遅延量が1ピッチ上昇し(ステップS36a,S36b)、FDLシーケンスが終了する。このように、FDLシーケンスでは、DOWN判定がされるまで遅延量を上昇させる動作と、UP判定がされるまで遅延量を低下させる動作とを交互に行うことによって、カウント値を上位ビットから確定させていることから、ディレイライン20を調整するカウント信号のビット数を増加させても、高速に遅延量を確定させることが可能となる。
【0067】
本実施形態によるDLL回路は、クロックに同期した動作を行う半導体記憶装置、特に、DDR型のDRAMに用いることが最も好適である。
【0068】
図11は、本発明の好ましい実施形態による半導体記憶装置を用いたデータ処理システム300の構成を示すブロック図であり、本実施形態による半導体記憶装置がDRAMである場合を示している。
【0069】
図11に示すデータ処理システム300は、データプロセッサ320と、本実施形態による半導体記憶装置(DRAM)330が、システムバス310を介して相互に接続された構成を有している。データプロセッサ320としては、例えば、マイクロプロセッサ(MPU)、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)などを含まれるが、これらに限定されない。図11においては簡単のため、システムバス310を介してデータプロセッサ320とDRAM330とが接続されているが、システムバス310を介さずにローカルなバスによってこれらが接続されていても構わない。
【0070】
また、図11には、簡単のためシステムバス310が1組しか描かれていないが、必要に応じ、コネクタなどを介しシリアルないしパラレルに設けられていても構わない。また、図11に示すメモリシステムデータ処理システムでは、ストレージデバイス340、I/Oデバイス350、ROM360がシステムバス310に接続されているが、これらは必ずしも必須の構成要素ではない。
【0071】
ストレージデバイス340としては、ハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、フラッシュメモリなどが挙げられる。また、I/Oデバイス350としては、液晶ディスプレイなどのディスプレイデバイスや、キーボード、マウスなどの入力デバイスなどが挙げられる。また、I/Oデバイス350は、入力デバイス及び出力デバイスのいずれか一方のみであっても構わない。さらに、図11に示す各構成要素は、簡単のため1つずつ描かれているが、これに限定されるものではなく、1又は2以上の構成要素が複数個設けられていても構わない。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0073】
例えば、上記実施形態では、いわゆる単相式のDLLを例に説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではなく、多相式(二相式など)のDLL回路に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるDLL回路の構成を示すブロック図である。
【図2】カウンタ制御回路51の構成を示すブロック図である。
【図3】シーケンス制御回路130の回路図である。
【図4】第2のディレイライン20のブロック図である。
【図5】第2のディレイライン20の構成をより詳細に示す回路図である。
【図6】定電流源250の効果を説明するためのグラフであり、(a)はトランジスタP10〜P19を削除した場合、(b)はトランジスタP10〜P19のゲートに中間電位BIASPを与えた場合を示している。
【図7】本発明の好ましい実施形態によるDLL回路の大まかな動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】CDLシーケンスをより詳細に示すフローチャートである。
【図9】FDLシーケンスをより詳細に示すフローチャートである。
【図10】FDLシーケンスの実行中におけるシーケンス制御回路130の動作波形図である。
【図11】本発明の好ましい実施形態によるデータ処理システム300の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0075】
2,6 入力レシーバ
4 出力バッファ
8 コマンドデコーダ
10 ディレイライン(CDL)
20 ディレイライン(FDL)
31,32 レプリカドライバ
41,42 位相検知回路
51,52 カウンタ制御回路
110 分周回路
120 セレクタクロック制御回路
130 シーケンス制御回路
140 CDLセレクタ回路
150 FDLセレクタ回路
210,220 バイアス回路
211,212 配線
213〜218 トランジスタ
230,240 補完回路
231〜235 トランジスタ
250 定電流源
251 トランジスタ
252 抵抗
300 データ処理システム
310 システムバス
320 データプロセッサ
340 ストレージデバイス
350 I/Oデバイス
C1,C2 定電流源
G1,G2 NANDゲート
L ラッチ回路
P0〜P19 トランジスタ
S0〜S4 回路セット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に粗い調整ピッチでクロック信号を遅延させる第1のディレイラインと、相対的に細かい調整ピッチで前記クロック信号を遅延させる第2のディレイラインと、前記第1及び第2のディレイラインの遅延量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、線形探索法によって前記第1のディレイラインを制御するとともに、二分探索法によって前記第2のディレイラインを制御することを特徴とするDLL回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記クロック信号の位相を検知する位相検知回路と、前記位相検知回路の検知結果に基づいて、前記第1及び第2のディレイラインの遅延量を設定するカウンタ制御回路とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のDLL回路。
【請求項3】
前記位相検知回路は、前記クロック信号の位相が進んでいるか遅れているかを判定し、
前記カウンタ制御回路は、前記第1のディレイラインの遅延量を設定する第1のセレクタ回路と、前記第2のディレイラインの遅延量を設定する第2のセレクタ回路と、前記第1及び第2のセレクタ回路のカウント値を変化させるシーケンス制御回路とを有し、
シーケンス制御回路は、前記第1のセレクタ回路のカウント値を変化させる第1の調整シーケンスと、前記第2のカウンタ回路のセレクタ値を変化させる第2の調整シーケンスを実行可能であり、
前記第1の調整シーケンスにおいては、前記判定の結果に基づいて前記第1のセレクタ回路のカウント値をインクリメント又はデクリメントし、前記第2の調整シーケンスにおいては、前記判定の結果に基づいて前記第2のセレクタ回路のカウント値を上位ビットから確定させることを特徴とする請求項2に記載のDLL回路。
【請求項4】
前記第2の調整シーケンスにおいては、前記位相検知回路により前記クロック信号の位相が進んでいると判定されるまで前記クロック信号の位相を進める第1の動作と、前記位相検知回路により前記クロック信号の位相が遅れていると判定されるまで前記クロック信号の位相を遅らせる第2の動作とを交互に行うことによって、前記第2のセレクタ回路のカウント値を上位ビットから確定させることを特徴とする請求項3に記載のDLL回路。
【請求項5】
前記第2のディレイラインは、前記カウンタ制御回路のカウント値をバイアス電圧に変換するバイアス回路と、前記バイアス電圧に応じて前記クロック信号の遅延量を変化させる補完回路とを有し、
前記バイアス回路は、電源配線と前記補完回路との間にこの順に直列接続された第1及び第2のMOSトランジスタを含み、
前記第1のMOSトランジスタのゲートには中間電位が供給され、前記第2のMOSトランジスタのゲートには前記カウント値の所定のビットが供給されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項6】
前記中間電位は、定電流源によって生成されることを特徴とする請求項5に記載のDLL回路。
【請求項7】
前記定電流源はカレントミラー回路の入力側を構成し、前記第1のMOSトランジスタは前記カレントミラー回路の出力側を構成することを特徴とする請求項6に記載のDLL回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のDLL回路を含む半導体記憶装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体記憶装置と、データプロセッサと、ROMと、ストレージデバイスと、I/Oデバイスとを備え、これらがシステムバスにより相互に接続されていることを特徴とするデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−21706(P2009−21706A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181360(P2007−181360)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】