説明

アクセルペダル誤操作対応装置およびアクセルペダル誤操作対応装置用のプログラム

【課題】アクセルペダル誤操作を検出して車輪にブレーキトルクを発生させる技術において、ドライバがステアリングを適切に操作できない場合でも、車両が危険領域に進入してしまう可能性を従来よりも低減する。
【解決手段】アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに車両が安全領域から逸脱すると判定した場合には、車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、左右の両制動輪にブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側にカーブする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダル誤操作対応装置およびアクセルペダル誤操作対応装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、間違ってアクセルペダルを踏み込んでしまう行為(アクセルペダル誤操作)を検出し、その検出に基づいて車輪にブレーキトルクを発生させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、アクセルペダル誤操作が発生する場面では、ドライバが混乱してしまい、ステアリングを適切に操作できなくなる可能性があることに着目した。このような場合、ステアリングを適切に操作できない故に、車輪に制動力を発生させても車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、アクセルペダル誤操作を検出して車輪に制動力を発生させる技術において、ドライバがステアリングを適切に操作できない場合でも、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入してしまう可能性を従来よりも低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両用のアクセルペダル誤操作対応装置であって、前記車両のドライバによるアクセルペダルの操作があったことに基づいて、アクセルペダル誤操作であるか否かを判定する誤操作判定手段(105)と、アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(110)が判定したことに基づいて、現在の操舵輪のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに前記車両が安全領域から逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段(115)と、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させるブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)と、を備えたアクセルペダル誤操作対応装置である。
【0007】
このように、アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに車両が安全領域から逸脱すると判定した場合には、車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、左右の両制動輪にブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側にカーブする。したがって、左右の両制動輪にブレーキトルクを発生した場合に比べ、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入する可能性が低下する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクセルペダル誤操作対応装置において、前記車両の進行方向の道路形状に応じた要求ヨーレートを算出する要求ヨーレート算出手段(110)と、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに前記要求ヨーレートを実現できるか否かを判定する要求ヨーレート実現可否判定手段(130)と、を備え、前記ブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)は、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定した場合、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに前記要求ヨーレートを実現できないと前記要求ヨーレート実現可否判定手段(130)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させると共に、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させることで、前記要求トルクを満たす制御を行うことを特徴とする。
【0009】
このように、タイヤ舵角を変化させずにブレーキトルクで前記要求ヨーレートを実現できない場合は、ドライバの操舵によらずに自動的にタイヤ舵角を変化させることで、ドライバが適切に操舵できない状況であっても、危険領域に進入する可能性をより低下させることができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のアクセルペダル誤操作対応装置において、前記ブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)は、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定した場合、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに前記要求ヨーレートを実現できないと前記要求ヨーレート実現可否判定手段(130)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させると共に、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させることで、前記要求トルクを満たす制御を行い、その際、前記タイヤ舵角の変化に前記車両のステアリングハンドルを連動させないことを特徴とする。
【0011】
アクセルペダル誤操作が発生する場面では、ドライバが慌ててしまい、腕がこわばってステアリングハンドルを固定してしまう可能性がある。そのような場合に、タイヤ舵角を変化させ、それに連動してステアリングハンドルも変位させようとすると、ドライバの手に力が及ぼされてしまい、その結果、こわばっている腕に対して自動でステアリングハンドルが回転するために、ドライバに負傷を与える可能性がある。そこで、上記のように、タイヤ舵角の変化にステアリングハンドルを連動させないことで、ドライバが更に慌ててしまう要因を排除することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のアクセルペダル誤操作対応装置において、アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(105)が判定したことに基づいて、前記車両の周囲に警告報知を行うことを特徴とする。このようにすることで、車両の周囲の他車両のドライバは、より早く車両の異常を察知することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、車両用のアクセルペダル誤操作対応装置であって、
前記車両のドライバによるアクセルペダルの操作があったことに基づいて、アクセルペダル誤操作であるか否かを判定する誤操作判定手段(105)と、アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(110)が判定したことに基づいて、現在の操舵輪のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生させたときに前記車両が安全領域から逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段(115)と、前記車両が安全領域から逸脱しないと前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪および左側制動輪に前記第1の分配比率でブレーキトルクを発生させ、また、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪および左側制動輪の分配比率として前記第1の分配比率とは異なる第2の分配比率を採用して前記右側制動輪および前記左側制動輪のうち一方または両方にブレーキトルクを発生させるブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)と、を備えたアクセルペダル誤操作対応装置である。
【0014】
このように、アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生させたときに車両が安全領域から逸脱すると判定した場合には、第1の分配比率とは異なる第2の分配比率で、車両の右側制動輪および左側制動輪のうち一方または両方にブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、左右の両制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側にカーブする。したがって、第1の分配比率で左右の両制動輪にブレーキトルクを発生した場合に比べ、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入する可能性が低下する。
【0015】
また、請求項6、7に記載のように、請求項1、5に記載の発明の特徴は、プログラムの発明の特徴としても捉えることができる。
【0016】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成図である。
【図2】誤操作対応装置が実行する処理のフローチャートである。
【図3】車両の挙動例の概要を表す図である。
【図4】道路逸脱の判定基準を説明するための図である。
【図5】本発明の他の適用場面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。この車載システムは、車両に搭載され、誤操作対応装置1、アクセルペダルセンサ2、道路形状取得部3、車速センサ4、ヨーレートセンサ5、ブレーキアクチュエータ11、エンジンアクチュエータ12、操舵制御装置13、車両灯14等を有している。
【0019】
アクセルペダル誤操作対応装置1(以下、省略して誤操作対応装置1という)は、車両のドライバがブレーキペダルを踏むつもりで間違ってアクセルペダルを踏み込んでしまう行為(アクセルペダル誤操作)を検出し、その検出に基づいて車輪に制動力を発生させて車両を停止させ、車両の発進を禁止するための制御装置である。本実施形態では、この誤操作対応装置1は、CPU、RAM、ROM、I/O等を備えたマイクロコンピュータを用いて実現する。
【0020】
アクセルペダルセンサ2は、アクセルペダルの操作量(例えば、アクセル開度、アクセル開度変化量)を検出して誤操作対応装置1に出力する装置である。
【0021】
道路形状取得部3は、車両の進行方向(前進時は前方、後退時は後方)にある道路(例えば、自車両から50メートル以内の道路)の形状の情報を取得するための装置である。
【0022】
例えば、道路形状取得部3は、進行方向の地面を撮影する車載カメラであってもよいし、各地の道路の道路形状の情報(例えば、道路境界に沿った点列の位置座標)が記録された地図データ記憶媒体であってもよい。
【0023】
道路形状取得部3が上記のような車載カメラである場合、誤操作対応装置1は、その車載カメラが撮影した地面の撮影画像から、周知の画像認識技術を用いて道路境界の線(白線、カードレールの線)等を検出し、その線に基づいて、車両の進行方向の道路の境界の形状および当該道路の曲率半径を特定する。
【0024】
道路形状取得部3が上記のような地図データ記憶媒体である場合、誤操作対応装置1は、当該地図データ記憶媒体から、車両の進行方向の道路の境界の形状および当該道路の曲率半径を特定する。
【0025】
車速センサ4、ヨーレートセンサ5は、車両の走行速度およびヨーレートを検出する周知のセンサである。なお、本明細書において説明する、ヨーレート、モーメント、および慣性モーメントは、特に別記しない限り、車両の重心を中心とする量である。
【0026】
ブレーキアクチュエータ11は、車両の車輪に制動力を発生させるサービスブレーキの制動機構であり、液圧ブレーキ機構におけるバルブ、液圧ポンプを駆動するモータ等を含む。このブレーキアクチュエータ11は、通常は、ブレーキペダル踏み込み量に応じて決まる減速要求を満たすためにブレーキECU(図示背図)によって制御されるが、アクセルペダル誤操作時には、誤操作対応装置1が、そのブレーキECUの制御に重畳的に(つまり、ブレーキ圧を加算するように)介入してブレーキアクチュエータ5を制御する。
【0027】
なお、本実施形態のブレーキアクチュエータ11がブレーキトルク(車軸トルク)を発生させることが可能な車輪(すなわち、制動輪)は、右前輪および左前輪のみであってもよいし、右後輪および左後輪のみであってもよいが、左側の制動輪に発生させるブレーキトルクと右側の制動輪に発生させるブレーキトルクとを独立に制御することができる。
【0028】
また、本実施形態のブレーキアクチュエータ11の制動論は、右前輪、左前輪、右後輪、左後輪であってもよいが、その場合、各制動輪に発生させるブレーキトルクを独立に制御することができる。以下では、右前輪、左前輪、右後輪、左後輪の4輪であるとして説明する。
【0029】
エンジンアクチュエータ12は、車両の駆動力を発生する機構であるエンジンを制御するアクチュエータ群であり、燃料噴射装置、燃料点火装置、スロットルバルブ開閉装置等を含む。このエンジンアクチュエータ12は、通常は、アクセル開度に応じて決まる加速要求を満たすためにエンジンECUによって制御されるが、アクセルペダル誤操作時には、誤操作対応装置1が、そのエンジンECUの制御に対して加速度を低減するように介入してエンジンアクチュエータ12を制御する。
【0030】
操舵制御装置13は、車両のステアリングハンドルおよび操舵輪のタイヤ舵角を制御するアクチュエータである。通常時は、車両のステアリングハンドルと操舵輪のタイヤ舵角とは所定のギア比で連動する(ステアリングハンドルを右に回せば、操舵輪は右を向く)ようになっており、操舵制御装置13は、このギア比を車速等に応じて変化させることができるようになっている。
【0031】
また、操舵制御装置13は、操舵輪のタイヤ舵角を制御する第1モータと、ステアリングハンドルの角度を制御する第2モータとを備え、これら第1モータと第2モータの出力軸がリンク機構によって接続されており、誤操作対応装置1からタイヤ舵角およびステアリングハンドル角の指令を受けると、その指令に従ったタイヤ舵角およびステアリングハンドル角を実現するために、第1モータおよび第2モータを制御することができる。
【0032】
このような操舵制御装置13としては、例えば周知のVGRS(Variable Gear Ratio Steering:登録商標)装置を用いることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、右側前輪および左側前輪のみが操舵輪であるとするが、他の例としては、他の車輪が操舵輪であってもよい。
【0034】
車両灯14は、ハザードランプ、ブレーキランプ等の、車両の外部に報知を行うためのランプ類であり、誤操作対応装置1によって制御可能となっている。
【0035】
以下、この車載システムの作動について説明する。誤操作対応装置1は、ドライバによるアクセルペダルの操作があったことをアクセルペダルセンサ2からの検出信号に基づいて検出すると、所定のプログラムの実行を開始し、そのプログラムに従い、図2に示す処理を開始する。
【0036】
この図2の処理は、基本的には、アクセルペダル誤操作の発生時に車両に対して制動介入および加速制御を行って車両を停止させるための処理であるが、本実施形態では、それに加え、図3に示すような場面での安全確保にも使用する。
【0037】
図3に示すように、誤操作対応装置1を搭載した車両10がカーブに進入しようとする場面において、アクセルペダル誤操作が発生したとする。このとき、通常は、車両に対する制動介入および加速抑制の制御介入の開始までにタイムラグが生じ、その結果、踏み間違い地点から制動介入および加速抑制の制御介入の開始地点までの間に位置のずれDが存在する。この距離Dは、特に下り坂や高速カーブにおいて顕著である。このようなタイムラグおよびそれに起因する位置ずれD、車両が停止するまでの制動距離等が原因で、車両10に制動介入および加速抑制が働いても、点線のように車両10が進行してしまい、道路形状によっては車両10が位置10aで道路を逸脱してしまう可能性がある。
【0038】
このとき、ドライバがステアリングを右に切れば、車両が道路を逸脱する可能性は低くなるが、アクセルペダルを誤操作したときは、ドライバも混乱しており、ステアリングを適切に操作できなくなる可能性がある。このような場合、ステアリングを適切に操作できない故に、車輪に制動力を発生させても車両が危険領域に進入してしまう可能性がある。
【0039】
本実施形態の図2の処理では、このような事態を回避するべく、カーブ手前でアクセルペダル誤操作があった場合、車両が道路を逸脱しないよう、右側制動輪または左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させる。
【0040】
例えば、図3の例では、右側制動輪のみにブレーキトルクを発生させることで、図3の実線のように車両10を右に曲げ、車両10を道路から逸脱させず、位置10bにおいて停止させようとする。
【0041】
以下、このような作動を実現するための図2の処理について詳細に説明する。誤操作対応装置1は、図2の処理を開始すると、まずステップ105で、アクセルペダル誤操作があったか否かを判定する。例えば、アクセル開度変化量(すなわち、単位時間当たりのアクセル開度の増加量)と所定の誤操作判定閾値とを比較し、アクセル開度変化量が誤操作判定閾値を超えた場合に誤操作であると判定し、アクセル開度変化量が誤操作判定閾値を超えていない場合に誤操作でないと判定する。
【0042】
ドライバがアクセルペダルを踏もうとして実際にアクセルペダルを踏んだ場合は、アクセル開度変化量が誤操作判定閾値を超えることはほとんどない。したがって、この場合誤操作対応装置1は、ステップ105でアクセルペダル誤操作でないと判定してステップ105の判定を再度実行する。
【0043】
ドライバがブレーキペダルを踏もうとして、間違ってアクセルペダルを踏んだ場合、ブレーキペダルはアクセルペダルよりも強く速く踏み込みがちなので、アクセル開度変化量が誤操作判定閾値を超える場合が多い。以下では、ドライバがブレーキペダルを踏もうとして、間違ってアクセルペダルを踏み、その結果、誤操作対応装置1がステップ105でアクセルペダル誤操作であると判定したとする。
【0044】
すると誤操作対応装置1は、ステップ110に進み、ステップ110以降で、自動制動制御を開始する。具体的には、ブレーキアクチュエータ11に対して介入制御を行って制動力を発生させ、更に、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)に応じたエンジンECUによるエンジンアクチュエータ12の制御に介入し、アクセルペダル踏み込み量に応じた車両の加速を禁止する(例えば、スロットルバルブを全閉状態にする)。このような介入制御により、車両が走行していれば車両は制動力によって停止すると共に車両の発進が禁止される。
【0045】
以下、ステップ110以降の自動制動制御の詳細について説明する。まずステップ110では、車両の進行方向(前進時は前方、後退時は後方)の道路形状に応じたヨーレートを算出し、その算出結果のヨーレートを要求ヨーレートとする。
【0046】
道路形状に応じた要求ヨーレートは、その道路形状の道路を走行するために車両に要求されるヨーレートである。この要求ヨーレートωrの算出方法としては、例えば、道路形状取得部3から取得した車両の進行方向の道路の曲率半径(カーブ半径)Rrと、車速センサ4から取得した現在の車両の車速Vに基づいて、ωr=V/Rrという式を用いて算出するようになっていてもよい。
【0047】
続いてステップ115では、ドライバがステアリングを操作できない状態で、左右制動輪に所定のブレーキトルクを発生させたとしたら、その場合に車両が道路(安全領域に相当する)を逸脱するか否かを判定する。
【0048】
具体的には、現在の操舵輪のタイヤ舵角δ(図示しないタイヤ舵角センサによって検出する)が現在のまま変化しないと仮定し、更に、左前輪、左後輪、右前輪、左前輪の各制動輪に、ゼロより大きい所定のブレーキトルクを発生させると仮定して、車速Vおよびヨーレートωの時間変化をシミュレーションすることで、図4に示すように、車両の走行軌跡21、22を予想する。そして、その軌跡21、22の最終到達点(速度Vがゼロとなる地点)が、道路形状取得部3から取得した進行方向の道路の境界の内側(すなわち道路側)に収まれば、「逸脱しない」と判定し、収まらなければ「逸脱する」と判定する。
【0049】
ここで、各制動輪の所定のブレーキトルクとしては、ステップ120で算出されることになるブレーキトルクとする。例えば、すべての制動輪のブレーキトルクが同じになるように分配してもよいし、右前輪と左前輪のブレーキトルクは同じT1とし、右後輪と左後輪のブレーキトルクは同じT2とし、T1とT2は異なるようにしてもよい。これらの場合、右前輪と左前輪のブレーキトルクの分配比率(第1の分配比率に相当する)、および、右後輪と左後輪のブレーキトルクの分配比率(これも第1の分配比率に相当する)は、共に1:1になる。あるいは、各制動輪とも異なるブレーキトルクとしてもよい。
【0050】
また、右前輪と左前輪のブレーキトルクは同じゼロより大きい値とし、左前輪と右後輪のブレーキトルクをゼロとしてもよい。この場合、右前輪と左前輪のブレーキトルクの分配比率(これも第1の分配比率に相当する)および左前輪と右後輪のブレーキトルクの分配比率(これも第1の分配比率に相当する)は共に1:1になる。
【0051】
また、左前輪と右前輪のブレーキトルクは同じゼロより大きい値とし、右前輪と左後輪のブレーキトルクをゼロとしてもよい。この場合、左前輪と右前輪のブレーキトルクの分配比率(これも第1の分配比率に相当する)および右前輪と左後輪のブレーキトルクの分配比率(これも第1の分配比率に相当する)は共に1:1になる。
【0052】
また、車速Vおよびヨーレートωの時間変化のシミュレーションは、例えば、周知の2輪モデルの方程式(1)、(2)において、スリップ角に相当するβが常にゼロであると過程した式に従って実行する。
【0053】
【数1】

【0054】
【数2】

【0055】
なお、KfおよびKrは、それぞれ左右前輪および左右後輪のコーナーリングパワーであり、mおよびIは車両の質量および慣性モーメントであり、lf、lrは、車両重心から前輪車軸までの距離および後輪車軸までの距離であり、それぞれ、あらかじめ定められた値として誤操作対応装置1のROM等に記録されているものを用いる。また、MBRKは、制動輪に発生したブレーキトルクによって発生する車両重心モーメント(ブレーキモーメント)である。
【0056】
ステップ115で逸脱しないと判定した場合、続いてステップ120に進み、左右前輪および左右後輪の4輪すべてのブレーキトルクを算出する。このとき、算出するブレーキトルクは、ステップ115で用いた所定のブレーキトルクと同じである。ステップ120に続いてはステップ150に進み、直前のステップ120で算出した4輪のブレーキトルクをブレーキアクチュエータ11に要求する。これにより、ブレーキアクチュエータ11は、要求されたブレーキトルクを各輪で実現させる。この場合、操舵輪のタイヤ舵角が0°(すなわち直進状態)となっていても、車両は道路内で停止する可能性が非常に高い。なお、ステップ150では、エンジンアクチュエータ12に対しても、スロットルバルブ全閉等の加速抑制の介入制御を行う。
【0057】
ステップ150に続いては、ステップ155で、車両が停止したか否かを車速センサ4の検出結果に基づいて判定し、車両が停止していなければ、再度ステップ110に戻り、停止していれば、図2の処理を終了する。
【0058】
したがって、ステップ155で逸脱しないと判定している限り、ステップ110、115、120、150、155の処理が、車両停止まで繰り返され、その間、制動輪である4輪に、ブレーキトルクが発生する。
【0059】
次に、ステップ115で逸脱すると判定した場合について説明する。この場合、続いてステップ125に進み、ステップ110で算出した要求ヨーレートωrを実現するための各制動輪のブレーキトルクを算出する。このとき、算出するブレーキトルクがゼロより大きいのは、要求ヨーレートωrに従って曲がる側(右折なら右側)の制動輪のうち1つ(前輪または後輪)のみであり、残りの3つの制動輪のブレーキトルクはゼロとする。
【0060】
例えば、右前輪のみにゼロより大きいブレーキトルクを算出する場合、右前輪と左前輪の制動トルクの分配比率(第2の分配比率に相当する)は、1:0になり、ステップ120における分配比率とは異なる。以下、ゼロでないブレーキトルクを算出する制動輪を対象制動輪という。
【0061】
対象制動輪のブレーキトルクの算出方法は、例えば、以下の通りであってもよい。すなわち、対象制動輪のみにブレーキトルクを発生させた場合に実現するヨーレートの値と、当該ブレーキトルクの値との対応マップを、車速および操舵輪のタイヤ舵角の組み合わせ毎にあらかじめ誤操作対応装置1のROMに記録しておき、現在の車速およびタイヤ舵角に合致した対応マップを用いて、要求ヨーレートωrの値を実現するブレーキトルクを算出する。
【0062】
続いてステップ130では、ステップ125で算出した対象制動輪のブレーキトルクが、タイヤの非ロック範囲(ロックしない範囲)内であるか否かを判定する。なお、対象制動輪のブレーキトルクの非ロック範囲は、現在の車速およびタイヤ舵角毎にあらかじめ決めて誤操作対応装置1のROMに記録しておいたデータを採用する。このデータの作成時には、路面μ、車両重量等のパラメータは一定値として計算される。
【0063】
非ロック範囲内であると判定した場合、すなわち、ステップ125で算出した対象制動輪のブレーキトルクを実現してもタイヤがロックしない可能性が非常に高いので、ステップ150に進み、直前のステップ125で算出した対象制動輪のブレーキトルクをブレーキアクチュエータ11に要求する。これにより、ブレーキアクチュエータ11は、要求されたブレーキトルクを対象制動輪で実現させ、かつ、他の制動輪には、ブレーキトルクを発生させない。なお、ステップ150では、エンジンアクチュエータ12に対しても、スロットルバルブ全閉等の加速抑制の介入制御を行う。
【0064】
ステップ150に続いては、ステップ155で、車両が停止したか否かを車速センサ4の検出結果に基づいて判定し、車両が停止していなければ、再度ステップ110に戻り、停止していれば、図2の処理を終了する。
【0065】
したがって、ステップ155で逸脱すると判定し、ステップ130で非ロック範囲内であると判定している限り、ステップ110、115、125、130、150、155の処理が、車両停止まで繰り返され、その間、対象制動輪にのみ、ブレーキトルクが発生する。
【0066】
このように誤操作対応装置1は、アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに車両が道路(安全領域)から逸脱すると判定した場合には、車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみ(図3の例では前者)にブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、ステップ120で制動輪に左右均等にブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側(図3の例では前者)にカーブする。したがって、ステップ120のように左右の両制動輪にブレーキトルクを発生した場合に比べ、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入する可能性が低下する。
【0067】
また誤操作対応装置1は、アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生させたときに車両が安全領域から逸脱すると判定した場合には、第1の分配比率とは異なる第2の分配比率で、車両の右側制動輪および左側制動輪のうち一方または両方にブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、左右の両制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側にカーブする。したがって、第1の分配比率で左右の両制動輪にブレーキトルクを発生した場合に比べ、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入する可能性が低下する。
【0068】
また誤操作対応装置1は、車両の進行方向の道路形状に沿って走行するための要求ヨーレートを算出し、操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに要求ヨーレートを実現できるか否かを判定し(ステップ130)、操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに要求ヨーレートを実現できると判定したことに基づいて、操舵輪のタイヤ舵角を維持したまま、対象制動輪のみにブレーキトルクを発生させることで、要求ヨーレートを実現する。
【0069】
次に、ステップ130で、非ロック範囲内でない(非ロック範囲外である)と判定した場合について説明する。この場合、ブレーキトルクのみで要求ヨーレートを実現しようとするとタイヤがロックするので、ブレーキトルクと操舵輪のタイヤ舵角制御を併用して、要求ヨーレートを実現する。
【0070】
このため、非ロック範囲内でないと判定した場合、続いてステップ135に進み、現在のタイヤ舵角を維持して非ロック範囲内で対象制動輪の最大ブレーキトルクを対象制動輪のみに発生させた場合、どのような値のヨーレートが実現するかを算出する。算出したヨーレートをヨーレートω1とする。このヨーレートω1は、ステップ125で説明した対応マップのうち、現在の車速およびタイヤ舵角に合致した対応マップを用いて、上記最大ブレーキトルクで実現するヨーレートを特定してヨーレートω1とする。
【0071】
続いてステップ140では、要求ヨーレートωrとヨーレートω1との差ωr−ω1を補うタイヤ舵角を算出する。これは、上述の2輪モデルの式(1)(ただし、βはゼロとする)に表されるωとδの線形の関係式を用いれば算出可能である。そして、算出したタイヤ舵角を、操舵制御装置13への指令に含める。
【0072】
続いてステップ145では、現在のステアリングハンドル角を(図示しないステアリングハンドル角センサから)取得し、取得したステアリングハンドル角を維持するため、操舵制御装置13に出力するステアリングハンドル角を、操舵制御装置13への指令に含める。
【0073】
続いてステップ150では、ステップ135で算出した非ロック範囲内の対象制動輪の最大ブレーキトルクを、対象制動輪のブレーキトルクとして、ブレーキアクチュエータ11に要求する。これにより、ブレーキアクチュエータ11は、要求されたブレーキトルクを対象制動輪で実現させ、かつ、他の制動輪には、ブレーキトルクを発生させない。なお、ステップ150では、エンジンアクチュエータ12に対しても、スロットルバルブ全閉等の加速抑制の介入制御を行う。
【0074】
更にステップ150では、ステップ140、145でタイヤ舵角およびステアリングハンドル角を含めた指令を、操舵制御装置13に出力する。これにより、操舵制御装置13は、第1モータおよび第2モータを制御して、当該指令に従ったタイヤ舵角およびステアリングハンドル角を実現する。
【0075】
ステップ150に続いては、ステップ155で、車両が停止したか否かを車速センサ4の検出結果に基づいて判定し、車両が停止していなければ、再度ステップ110に戻り、停止していれば、図2の処理を終了する。
【0076】
したがって、ステップ155で逸脱すると判定し、ステップ130で非ロック範囲外であると判定している限り、ステップ110、115、125、130、135、140、145、150、155の処理が、車両停止まで繰り返され、その間、対象制動輪にのみブレーキトルクが発生すると共に、カーブの曲がる方向に操舵輪が切られ、その結果、要求ヨーレートが満たされる。
【0077】
しかもその際、ステアリングハンドルは現在の角度が維持される。アクセルペダル誤操作が発生する場面では、ドライバが慌ててしまい、腕がこわばってステアリングハンドルを固定してしまう可能性がある。そのような場合に、タイヤ舵角を変化させ、それに連動してステアリングハンドルも変位させようとすると、ドライバの手に力が及ぼされてしまい、その結果、こわばっている腕に対して自動でステアリングハンドルが回転するために、ドライバに負傷を与える可能性がある。そこで、上記のように、タイヤ舵角の変化にステアリングハンドルを連動させず、ステアリングハンドル角を維持することで、ドライバが更に慌ててしまう要因を排除することができる。
【0078】
以上のように、誤操作対応装置1は、アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに車両が道路(安全領域)から逸脱すると判定した場合には、車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみ(図3の例では前者)にブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、ステップ120で制動輪に左右均等にブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側(図3の例では前者)にカーブする。したがって、ステップ120のように左右の両制動輪にブレーキトルクを発生した場合に比べ、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入する可能性が低下する。
【0079】
また誤操作対応装置1は、アクセルペダルの誤操作を検出したとき、現在のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生させたときに車両が安全領域から逸脱すると判定した場合には、第1の分配比率とは異なる第2の分配比率で、車両の右側制動輪および左側制動輪のうち一方または両方にブレーキトルクを発生させる。これにより車両は、左右の両制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生したときの軌跡よりも、右側または左側にカーブする。したがって、第1の分配比率で左右の両制動輪にブレーキトルクを発生した場合に比べ、車両が安全領域を逸脱して危険領域に進入する可能性が低下する。
【0080】
また誤操作対応装置1は、車両の進行方向の道路形状に沿って走行するための要求ヨーレートを算出し、操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに要求ヨーレートを実現できるか否かを判定し(ステップ130)、操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに要求ヨーレートを実現できないと判定したことに基づいて、対象制動輪のみにブレーキトルクを発生させると共に、操舵輪のタイヤ舵角を変化させることで、要求トルクを満たす制御を行う。このように、タイヤ舵角を変化させずにブレーキトルクで要求ヨーレートを実現できない場合は、ドライバの操舵によらずに自動的にタイヤ舵角を変化させることで、ドライバが適切に操舵できない状況であっても、危険領域に進入する可能性をより低下させることができる。
【0081】
また、誤操作対応装置1は、自車が曲がり急制動することを後続車に知らせるために、ステップ105でアクセルペダル誤操作であると判定した直後、かつ、ステップ150の前に、車両灯14のハザードランプまたはブレーキランプを点灯(例えば急速点滅)させるようになっていてもよい。あるいは、ステップ115で逸脱すると判定した直後、かつ、ステップ150の前に、車両灯14のハザードランプまたはブレーキランプを点灯(例えば急速点滅)させるようになっていてもよい。
【0082】
このように、アクセルペダル誤操作であると判定したことに基づいてまた、車両が安全領域から逸脱すると判定したことに基づいて、車両の周囲に警告報知を行うことで、車両の周囲の他車両のドライバは、より早く車両の異常を察知することができる。
【0083】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0084】
(1)上記実施形態では、誤操作対応装置1は、ステップ110で道路形状に応じた要求ヨーレートを算出し、ステップ115で逸脱すると判定した場合、その要求ヨーレートを実現するようブレーキトルクを発生させ、必要ならばタイヤ舵角を変化させている。
【0085】
しかし、ブレーキトルクは、必ずしも道路形状に応じた要求ヨーレートを実現させるものでなくともよい。例えば、図5に示すように、誤操作対応装置1を搭載した車両10が車外の障害物を検知する障害物センサ(例えば、ソナーセンサ、レーザーセンサ)を備えており、アクセルペダル誤操作が発生したとき、この障害物センサが、車両の進行方向に障害物20を検出したとする。この場合、誤操作対応装置1は、ステップ105と同じ処理でアクセルペダル誤操作が発生したと判定すると、続いてステップ110をバイパスしてステップ115と同等の処理で、安全領域を逸脱するか否かを判定する。ただし、この場合は、安全領域とは、障害物20の範囲外に相当する。そして、逸脱する(つまり、10cのように障害物にぶつかる)と判定した場合、あらかじめ決められた対象制動輪(例えば、右前輪)のみに制動力を発生させることで、実線に示すように車両10の軌跡を曲げ、10dのように車両10を障害物20から逸らせる。このようにしても、本発明の目的は達成される。
【0086】
(2)上記実施形態では、対象制動輪は、要求ヨーレートに従って右に曲がる場合は右前輪のみ、左に曲がる場合は左前輪のみとなっているが、右に曲がる場合は右後輪のみ、左に曲がる場合は左後輪のみとなっていてもよいし、右に曲がる場合は右前後輪のみ、左に曲がる場合は左前後輪のみとなっていてもよい。ただし、前後輪両方を対象制動輪とする場合よりも、どちらか一方のみを対象制動輪とする方が、要求ヨーレートを実現し易い。
【0087】
(3)上記実施形態では、ステップ140、145、150で、タイヤ舵角を変化させた場合も、ステアイングハンドル角を維持するよう制御している。しかし、ステアイングハンドル角を維持するのではなく、タイヤ舵角とステアリングハンドルの結合を解除し、タイヤ舵角に関わらずステアリングハンドル角を制御せず、それにより、ステアリングハンドルがドライバの操作のままに動くことを許可するようになっていてもよい。つまり、ステップ140、145、150では、ステアリングハンドル角がタイヤ舵角に連動しないようにすればよい。
【0088】
(4)上記実施形態では、ステップ120における右前輪と左前輪のブレーキトルクの分配比率(第1の分配比率に相当する)、および、右後輪と左後輪のブレーキトルクの分配比率(これも第1の分配比率に相当する)は、同じでなくともよい。実際、走行方向の道路のカーブに応じて左右の制動輪の分配比率が異なるように制御するようになっていてもよい。その場合も、ステップ125における右前輪と左前輪の分配比率(第2の分配比率に相当する)と異なっていれば、つまり、第1の分配比率と比べ、要求ヨーレートに従って曲がる側の制動輪の方がトルク配分が多ければ、本発明の目的は達成する。
【0089】
(5)上記実施形態では、制動輪にブレーキトルクを発生させるために、サービスブレーキのブレーキアクチュエータ11のみを用いていたが、制動輪にブレーキトルクを発生させるために、回生ブレーキ機構(制動輪にブレーキトルクを発生させると共に、ブレーキトルクを利用してバッテリに充電を行う機構)を主体としてブレーキトルクを発生させ、それでも必要なブレーキトルクに足りない場合のみ、サービスブレーキによって足りない分のブレーキトルクを発生させるようになっていてもよい。ただし、上記実施形態では、制動輪のうち、対象制動輪のみにブレーキトルクを発生させる場合があるので、回生ブレーキ機構は、制動輪毎に別々に設けるようにする。
【0090】
また、上記の実施形態において、誤操作対応装置1がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 誤操作対応装置
2 アクセルペダルセンサ
3 道路形状取得部
10 車両
11 ブレーキアクチュエータ
12 エンジンアクチュエータ
13 操舵制御装置
14 車両灯
20 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のアクセルペダル誤操作対応装置であって、
前記車両のドライバによるアクセルペダルの操作があったことに基づいて、アクセルペダル誤操作であるか否かを判定する誤操作判定手段(105)と、
アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(110)が判定したことに基づいて、現在の操舵輪のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに前記車両が安全領域から逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段(115)と、
前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させるブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)と、を備えたアクセルペダル誤操作対応装置。
【請求項2】
前記車両の進行方向の道路形状に応じた要求ヨーレートを算出する要求ヨーレート算出手段(110)と、
前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに前記要求ヨーレートを実現できるか否かを判定する要求ヨーレート実現可否判定手段(130)と、を備え、
前記ブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)は、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定した場合、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに前記要求ヨーレートを実現できないと前記要求ヨーレート実現可否判定手段(130)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させると共に、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させることで、前記要求トルクを満たす制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル誤操作対応装置。
【請求項3】
前記ブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)は、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定した場合、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させずに前記要求ヨーレートを実現できないと前記要求ヨーレート実現可否判定手段(130)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させると共に、前記操舵輪のタイヤ舵角を変化させることで、前記要求トルクを満たす制御を行い、その際、前記タイヤ舵角の変化に前記車両のステアリングハンドルを連動させないことを特徴とする請求項2に記載のアクセルペダル誤操作対応装置。
【請求項4】
アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(105)が判定したことに基づいて、前記車両の周囲に警告報知を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のアクセルペダル誤操作対応装置。
【請求項5】
車両用のアクセルペダル誤操作対応装置であって、
前記車両のドライバによるアクセルペダルの操作があったことに基づいて、アクセルペダル誤操作であるか否かを判定する誤操作判定手段(105)と、
アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(110)が判定したことに基づいて、現在の操舵輪のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生させたときに前記車両が安全領域から逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段(115)と、
前記車両が安全領域から逸脱しないと前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪および左側制動輪に前記第1の分配比率でブレーキトルクを発生させ、また、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪および左側制動輪の分配比率として前記第1の分配比率とは異なる第2の分配比率を採用して前記右側制動輪および前記左側制動輪のうち一方または両方にブレーキトルクを発生させるブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)と、を備えたアクセルペダル誤操作対応装置。
【請求項6】
車両用のアクセルペダル誤操作対応装置に用いるプログラムであって、
前記車両のドライバによるアクセルペダルの操作があったことに基づいて、アクセルペダル誤操作であるか否かを判定する誤操作判定手段(105)と、
アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(110)が判定したことに基づいて、現在の操舵輪のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪にブレーキトルクを発生させたときに前記車両が安全領域から逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段(115)と、
前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪のみまたは左側制動輪のみにブレーキトルクを発生させるブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)と、として、誤操作対応装置を機能させるプログラム。
【請求項7】
車両用のアクセルペダル誤操作対応装置に用いるプログラムであって、
前記車両のドライバによるアクセルペダルの操作があったことに基づいて、アクセルペダル誤操作であるか否かを判定する誤操作判定手段(105)と、
アクセルペダル誤操作であると前記誤操作判定手段(110)が判定したことに基づいて、現在の操舵輪のタイヤ舵角で左側制動輪および右側制動輪に第1の分配比率でブレーキトルクを発生させたときに前記車両が安全領域から逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段(115)と、
前記車両が安全領域から逸脱しないと前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪および左側制動輪に前記第1の分配比率でブレーキトルクを発生させ、また、前記車両が安全領域から逸脱すると前記逸脱判定手段(115)が判定したことに基づいて、前記車両の右側制動輪および左側制動輪の分配比率として前記第1の分配比率とは異なる第2の分配比率を採用して前記右側制動輪および前記左側制動輪のうち一方または両方にブレーキトルクを発生させるブレーキトルク発生制御手段(120、135〜150)と、として、誤操作対応装置を機能させるプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−176731(P2012−176731A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41852(P2011−41852)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】