説明

アクチュエータの故障診断装置

【課題】 故障診断を正確に行い得るアクチュエータの故障診断装置を提供すること。
【解決手段】 可変ノズルベーン式ターボチャージャは、ノズルベーンと該ノズルベーンを駆動するDCモータとを備えている。DCモータの故障診断装置は、ノズルベーンがストッパに突き当たるようにDCモータを駆動し、その際にDCモータに過電流が流れなければ、該DCモータが故障(例えば作動コイルの断線や破損)であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動体を駆動するアクチュエータの故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関に備えられた可変ノズルベーン式ターボチャージャとしては、電気モータ(例えばDCモータ)をアクチュエータとして備え、該電気モータの駆動によって、排気通路上に配置された可変ノズル部を変位させる構成のものが存在する(例えば特許文献1参照)。また、電気モータの故障診断装置としては、電気モータ(作動コイル)の非通電を検出する手段を備え、通電されているはずの電気モータが非通電であった場合に、電気モータが故障(例えば作動コイルが断線)である旨の診断を下すものが存在する(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−293784号公報(第2図、第5頁)
【特許文献2】特開2001−173462号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1の技術と特許文献2の技術とを組み合わせたものにおいては、次のような問題がある。
可変ノズル部を変位させる際に電気モータを流れる電流は、該可変ノズル部の変位開始により急激に上昇した後、該変位開始後直ぐにゼロ付近にまで低下してしまう傾向を有しているため、該電流値のピーク値がよほど高い場合でないと(電流値の変動が明確でないと)、ノイズとの判別が困難となってしまう。したがって、例えば電気モータが非通電(故障)であるにもかかわらず、ノイズによって通電(正常)と判断されてしまうことがあり、電気モータが故障しているか否かを正確に診断できない問題があった。
【0004】
なお、このような問題(アクチュエータの故障を正確に診断できない)は、電気モータ以外のアクチュエータを用いた可変ノズルベーン式ターボチャージャでも同様に生じ得るし、可変ノズルベーン式ターボチャージャ以外にも例えばスロットル弁装置等においても同様に生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、故障診断を正確に行い得るアクチュエータの故障診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために請求項1の発明に係るアクチュエータの故障診断装置は、被駆動体を駆動するアクチュエータに過負荷が作用するように該アクチュエータを駆動する過負荷付与手段と、アクチュエータの過負荷を検出する過負荷検出手段と、過負荷付与手段によるアクチュエータの駆動時において、過負荷検出手段がアクチュエータの過負荷を検出しない場合に、アクチュエータが故障である旨の診断を下す診断手段とを備えている。
【0007】
このように、本発明においては、アクチュエータの故障診断を行う際に、該アクチュエータが過負荷となるような状況を意図的に作り出している。したがって、過負荷検出手段は、例えばノイズに紛れることなくアクチュエータの過負荷を正確に検出すること、言い換えればアクチュエータが過負荷でないことを正確に検出することができる。よって、診断手段は、アクチュエータの故障診断を正確に行うことができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の故障診断装置を適用するのに好適な一態様について言及するものである。すなわち、被駆動体は、内燃機関に備えられた可変ノズルベーン式ターボチャージャが有する可変ノズル部であって、アクチュエータは可変ノズル部を変位させるためのものである。
【0009】
請求項3の発明は請求項2において、過負荷付与手段は、内燃機関の停止時においてアクチュエータを駆動する。つまり、アクチュエータの故障診断は、内燃機関の停止時に行われる。したがって、過負荷付与手段による、アクチュエータに過負荷が作用するような可変ノズル部の変位(内燃機関の運転状態では該内燃機関の過給圧を変え得る変位)が、例えば内燃機関の運転に悪影響を与えることを確実に防止できる。
【0010】
請求項4の発明は請求項1〜3のいずれか一項において、被駆動体はストッパによって決められた範囲内で変位される。過負荷付与手段は、被駆動体がストッパに突き当たるようにアクチュエータを駆動する。被駆動体がストッパに当たってそれ以上変位できないと、アクチュエータには過負荷が作用されることとなる。このように、被駆動体の変位範囲を決めるストッパを利用してアクチュエータに過負荷を作用させることができるため、例えばアクチュエータに過負荷を作用させるための故障診断専用の構成を必要とせず、故障診断装置の構成を簡素化することができる。
【0011】
なお、「被駆動体がストッパに突き当たる」とは、被駆動体がストッパに直接当接することに限定されるものではなく、例えば被駆動体とアクチュエータとの間を連結する機構やアクチュエータの動作部分がストッパに直接当接することで、被駆動体がストッパによって間接的に位置決めされるようなものも含む。
【0012】
請求項5の発明は請求項4において、過負荷付与手段は、ストッパに突き当たる位置を超えた位置を被駆動体の変位目標としてアクチュエータを駆動する。つまり、過負荷付与手段は、被駆動体がストッパに強く突き当たるようにアクチュエータを駆動する。したがって、アクチュエータに作用する過負荷をさらに大きくすることができ、ノイズとの差がさらに明確となって、アクチュエータの故障診断をさらに正確に行うことができる。
【0013】
請求項6の発明は請求項1〜5のいずれか一項において、好適な一態様について言及するものである。すなわち、アクチュエータは電気モータであって、過負荷付与手段は電気モータに過電流が流れるように該電気モータを駆動し、過負荷検出手段は電気モータの過電流を検出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アクチュエータの故障を正確に診断することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、車載の内燃機関に備えられる可変ノズルベーン式ターボチャージャに適用した一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
まず、可変ノズルベーン式ターボチャージャの概要について説明する。
【0016】
図1に示すように、内燃機関(以下「エンジン」と表記する)1における吸気通路2の上流部分、及び排気通路3の下流部分は、それぞれ可変ノズルベーン式ターボチャージャ(以下「ターボチャージャ」と表記する)4に繋がっている。このターボチャージャ4は、吸気通路2の下流側へ空気を送り出すためのコンプレッサホイール5と、排気通路3を通過する排気の吹き付けに基づいて回転するタービンホイール6とを備えている。そして、タービンホイール6が回転すると、それと一体にコンプレッサホイール5が回転し、これによりエンジン1の吸入空気量が増加してエンジン1の出力を向上させることが可能となる。
【0017】
ターボチャージャ4において、タービンホイール6に排気を吹き付けるための排気経路上には可変ノズル機構7が設けられている。この可変ノズル機構7は、前記排気経路の排気流通面積を変更すべく開閉動作する弁機構であって、その排気流通面積の変更によってタービンホイール6に吹き付けられる排気の流速を可変とするものである。このように排気の流速を可変とすることで、ターボチャージャ4の回転速度が変更され、エンジン1の過給圧(吸気圧)が調整されるようになる。
【0018】
可変ノズル機構7を動作させるためのアクチュエータとしては、電子制御装置であるコントローラ8を通じて駆動制御される、電気モータとしての直流(DC)モータ9が採用されている。このDCモータ9を駆動することにより(詳しくはDCモータ9が備える作動コイル9aの通電を制御することにより)、可変ノズル機構7に設けられた被駆動体としてのノズルベーン(可変ノズル部)10が開閉される。例えば、ノズルベーン10が閉じ側に変位すると、タービンホイール6に吹き付けられる排気の流速が大きくなって、ターボチャージャ4の回転速度が高くなり、エンジン1の過給圧は上昇する。逆に、ノズルベーン10が開き側に変位すると、タービンホイール6に吹き付けられる排気の流速が小さくなって、ターボチャージャ4の回転速度が低くなり、エンジン1の過給圧は低下する。
【0019】
コントローラ8には、ノズルベーン10の位置を検出するノズル位置センサ11からの信号が入力されるとともに、DCモータ9(作動コイル9a)の電流値を検出する電流検出回路8aが設けられている。このコントローラ8は、エンジン1の運転を制御するためのエンジン用電子制御装置(エンジンECU)12に対して接続され、エンジンECU12から通信により指令を受ける構造となっている。エンジンECU12には、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ13からの信号、及び車両の運転者によってエンジン1の始動や停止のための操作がなされるイグニッションスイッチ14からの信号が入力される。
【0020】
次に、可変ノズル機構7の詳細な構造について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は可変ノズル機構7をコンプレッサホイール5側(図1の上側)から見た正面図であり、図3は図2の可変ノズル機構7を矢印A−A方向から見た側断面図である。
【0021】
図2及び図3に示すように、可変ノズル機構7は、リング状に形成されたノズルバックプレート21を備えている。ノズルバックプレート21には、複数の軸22がノズルバックプレート21の円心を中心として等角度毎に設けられている。各軸22は、ノズルバックプレート21をその厚さ方向に貫通して回動可能に支持されている。これら軸22の一端部(図3の下端部)には、ノズルベーン10が固定されている。また、軸22の他端部(図3の上端部)には、軸22と直交してノズルバックプレート21の外縁部へ延びる開閉レバー23が固定されている。
【0022】
各開閉レバー23とノズルバックプレート21との間には、ノズルバックプレート21と重なるように環状のリングプレート24が設けられている。このリングプレート24は、DCモータ9の駆動に基づき周方向に回動するようになっている。また、リングプレート24には、その円心を中心として等角度毎に複数のピン25が設けられている。それらピン25は、各開閉レバー23に対して回動可能に連結されている。
【0023】
そして、DCモータ9の駆動によりリングプレート24がその円心を中心に回動すると、各ピン25が各開閉レバー23をリングプレート24の回動方向へと押す。その結果、それら開閉レバー23は軸22を回動させることとなり、この軸22の回動に伴い各ノズルベーン10は軸22を中心にして各々同期した状態で開閉動作する。こうした隣合うノズルベーン10の開閉動作に基づき、各ノズルベーン10間の隙間の大きさ、すなわちタービンホイール6に排気を吹き付けるための排気経路の排気流通面積が変化し、該排気の流速が可変とされるようになる。
【0024】
ノズルベーン10の開閉範囲は、ノズルバックプレート21においてその円心を中心とする等角度毎に設けられた合計三つのストッパ26によって決められる。これらストッパ26は、図4に示すように、隣合う開閉レバー23の間に位置している。そして、ノズルベーン10を最大限に開き側に変位させると、隣合う開閉レバー23のうちの一方(図中においては下側のもの)が、実線で示すようにストッパ26に突き当てられる。また、ノズルベーン10を最大限に閉じ側に変位させると、隣合う開閉レバー23のうちの他方(図中においては上側のもの)が、二点鎖線で示すようにストッパ26に突き当てられる。
【0025】
このようにストッパ26によってノズルベーン10の開閉範囲が決められるようになり、当該開閉範囲内で、通常のエンジン運転時におけるノズルベーン10の開度制御が行われるようになる。ノズルベーン10の開度制御は、エンジンECU12から出力された開度指令値とノズル位置センサ11からの信号とに基づき、コントローラ8によってDCモータ9がフィードバック駆動制御されることで実現される。前記開度指令値は、通常のエンジン運転時には0%〜100%の間で変更される値であって、ノズルベーン10を開き側に制御しようとするほど0%寄りの値とされ、ノズルベーン10を閉じ側に制御しようとするほど100%寄りの値とされる。
【0026】
なお、開度指令値が100%とされたときであっても、開閉レバー23がストッパ26に突き当たるまでノズルベーン10が閉じ側に変位させられることはない。また、開度指令値が0%とされたときであっても、開閉レバー23がストッパ26に突き当たるまでノズルベーン10が開き側に変位させられることはない。したがって、通常のエンジン運転時におけるノズルベーン10の開度制御においては、開度指令値が0%〜100%の間で変化することから、ノズルベーン10が全開直前の位置と全閉直前の位置との間で変位させられる。
【0027】
そして、開度指令値が100%に保持されたときには、ノズルベーン10の位置が開閉レバー23を閉じ側へとストッパ26に突き当てるときの直前の位置、すなわち前記全閉直前の位置に保持されることとなる。また、開度指令値が0%に保持されたときには、ノズルベーン10の位置が開閉レバー23を開き側へとストッパ26に突き当てるときの直前の位置、すなわち前記全開直前の位置に保持されることとなる。
【0028】
次に、エンジンECU12により実行される処理のうち、DCモータ9に対して過負荷を積極的に付与する処理(本実施形態ではノズルベーン10の突当て処理に具体化されている)について、図5に従って説明する。この処理は、例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0029】
まず、イグニッションスイッチ14が始動操作(オン)されている場合でかつエンジン1が停止されている場合(例えば回転速度センサ13が検出するエンジン回転速度がゼロの場合)に、言い換えれば運転者がエンジン1を始動しようとする際に(S101:YES)、ノズルベーン10を開き側に突き当てるためのS102以降の処理が開始される。この処理は、ノズルベーン10の突当てによってDCモータ9(作動コイル9a)に過電流が流れるように(DCモータ9に過負荷が作用するように)、DCモータ9を駆動するものである。
【0030】
すなわち、S102においては、開度指令値を0%よりも開き側の値(例えば−10%)とすることにより、開閉レバー23がストッパ26に突き当たるまでノズルベーン10を開き側に変位させる。S103においては、突当て処理中であるか否かを示すフラグFが「1」つまり「突当て処理中」に設定される。
【0031】
S104においては、ノズルベーン10の開き側への突当てが完了されたか否かが判断される。この突当て完了の旨の判断は、S102にて開度指令値を0%よりも開き側の値としてから所定時間が経過されたことに基づいてなされる。この所定時間は、例えば全閉状態のノズルベーン10が開き側へ突当てられる以上に十分な時間が設定されている。ノズルベーン10の開き側への突当てが完了された場合(S104:YES)には、S105においてDCモータ9を過負荷状態から離脱させる(開度指令値を0%から100%の値(例えば0%)に変更する)とともに、突当て処理フラグFが「0」に設定され、本処理が一旦終了される。
【0032】
次に、コントローラ8により実行される処理のうち、DCモータ9の故障(例えば作動コイル9aの断線や破損(断線寸前の状態))を診断する処理(診断処理)について、図6に従って説明する。この診断処理は、例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0033】
エンジンECU12による突当て処理(図5参照)の実行中においては(詳しくは突当て処理フラグFが「1」に設定されている場合には(S201:YES))、コントローラ8(電流検出回路8a)を介してDCモータ9の電流値I(x)が監視されている(S202)。
【0034】
そして、前記突当て処理中において、DCモータ9の電流値I(x)が所定値I(set)を越えて大きくなった場合には(DCモータ9に過電流が流れた場合には(S202:YES))、開閉レバー23がストッパ26に強く突き当たるまでノズルベーン10が開き側に変位された(DCモータ9が正常に動作している)と判断し、ターボチャージャ4が正常である旨の診断が下され(S203)、この診断結果がエンジンECU12へと送信される。
【0035】
したがって、図示しないが、エンジン1の始動後においてエンジンECU12は、前述した始動前の診断にてターボチャージャ4が正常であることから、エンジン1の運転状態に応じた開度指令値(0%から100%の値)をコントローラ8に指令する制御、つまり通常の開度制御を行う。
【0036】
逆に、DCモータ9の電流値I(x)が所定値I(set)以下を推移する場合には(DCモータ9に過電流が流れない場合には(S202:NO))、開閉レバー23がストッパ26に強く突き当たるまでノズルベーン10が開き側に変位されていない(DCモータ9が正常に動作していない)と判断し、ターボチャージャ4が故障である旨の診断が下され(S204)、この診断結果がエンジンECU12へと送信される。
【0037】
したがって、図示しないが、エンジン1の始動後においてエンジンECU12は、前述した始動前の診断にてターボチャージャ4が故障であることから、エンジン1の運転状態に応じたノズルベーン10の開度制御(通常の開度制御)は行わず、一定の開度指令値(例えば0%)をコントローラ8に指令して過大な過給圧がエンジン1に作用しないようにするとともに、例えば運転者が要求する(操作する)アクセル開度を無視して、一定でかつ低いアクセル開度が要求されているとの仮定の下で、エンジン1の運転状態を緊急避難的に制御する。
【0038】
なお、図示しないが、エンジン1の運転時においてコントローラ8は、DCモータ9に過電流が流れた場合(例えば電流値I(x)が所定値I(set)を超えた場合)には、可変ノズル機構7が故障した(例えばノズルベーン10が固着したりノズルベーン10とDCモータ9との間の連結機構部分に摺動不良が生じた)と判断し、ターボチャージャ4が故障である旨の診断を下す。そして、エンジンECU12は、この診断結果に基づいて、エンジン1の運転状態に応じたノズルベーン10の開度制御(通常の開度制御)は行わず、一定の開度指令値(例えば0%)をコントローラ8に指令するとともに、エンジン1の運転状態の制御を運転者の要求に応じた通常のものから前述した緊急避難的なものへと変更する。
【0039】
前記構成のDCモータ9の故障診断装置においては次のような効果を奏する。
(1)DCモータ9の故障診断を行う際には、DCモータ9に過電流が流れるような状況を意図的に作り出している。したがって、例えばノイズに紛れることなくDCモータ9に過電流が流れることを正確に検出すること、言い換えればDCモータ9に過電流が流れていないことを正確に検出することができる。よって、DCモータ9の故障診断を正確に行うことができる。
【0040】
(2)DCモータ9の故障診断を行う際には、ノズルベーン10(開閉レバー23)がストッパ26に突き当たるようにDCモータ9を駆動する。つまり、ノズルベーン10の変位範囲を決めるストッパ26を利用してDCモータ9に過負荷を作用させるようにしており、例えばDCモータ9に過負荷を作用させるための故障診断専用の構成を必要とせず、故障診断装置の構成を簡素化することができる。
【0041】
(3)DCモータ9の故障診断を行う際には、ストッパ26に突き当たる位置を超えた位置をノズルベーン10の変位目標としてDCモータ9を駆動する。したがって、ノズルベーン10をストッパ26に強く突き当てることができ、DCモータ9を流れる過電流をさらに大きくすることができてノイズとの差がさらに明確となり、DCモータ9の故障診断をさらに正確に行うことができる。
【0042】
(4)DCモータ9の故障診断はエンジン1の停止時に行われる。したがって、この故障診断におけるノズルベーン10の変位(DCモータ9に過負荷を作用させるための変位。エンジン1の運転状態ではエンジン1の過給圧を変え得る変位)が、例えばエンジン1の運転に悪影響を与えることを確実に防止できる。
【0043】
(5)DCモータ9の故障診断は、DCモータ9に過電流が流れているか否かに基づいて、つまりエンジン1の運転時における可変ノズル機構7の故障診断と同様なパラメータを用いて行われる(なお、前者と後者とではターボチャージャ4が正常と判定される条件と故障と判定される条件とが逆である)。したがって、DCモータ9の故障診断を行うための構成と可変ノズル機構7の故障診断を行うための構成とで、例えば電流検出回路8aを共用することができ、故障診断装置の構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
なお、前記実施形態に係るアクチュエータの故障診断装置は、本発明の一実施形態を示すものにすぎず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で変形することが可能である。例えば、以下に記すように変形することも可能であり、また、各変形例を、互いに矛盾しない範囲内で適宜組み合わせて実施することも可能である。
【0045】
○前記実施形態の突当て処理において図5のS102の処理を、次のように変更すること。開度指令値を100%よりも閉じ側の値(例えば110%)とすることにより、開閉レバー23がストッパ26に強く突き当たるまでノズルベーン10を閉じ側に変位させる。
【0046】
○DCモータ9の故障診断処理を、エンジン1の運転中において行うこと。この場合、DCモータ9に過負荷を作用させること(突当て処理)が、例えばターボチャージャ4やエンジン1に過負荷を作用させることや、乗員に違和感を感じさせないように配慮するとよい。例えば、この故障診断処理を車両の減速時に行う等である。
【0047】
○DCモータ9の過大な発熱(過負荷)を温度センサによって検出するようにし、ノズルベーン10の突当て処理中において温度センサが過大な発熱を検出しない場合に、DCモータ9が故障である旨の診断を下すようにすること。
【0048】
○DCモータ9の過大な出力トルク(過負荷)をトルクセンサによって検出するようにし、ノズルベーン10の突当て処理中においてトルクセンサが過大な出力トルクを検出しない場合に、DCモータ9が故障である旨の診断を下すようにすること。
【0049】
○ストッパとして、ノズルベーンに直接当接する構成のものを採用すること。或いは、ストッパとして、DCモータ9の動作部分に直接当接する構成のものを採用すること。
○アクチュエータとして流体圧シリンダを採用したものにおいて、本発明を具体化すること。この場合、過負荷付与手段は、流体圧シリンダに供給される流体圧が過大となるように該流体圧シリンダを駆動し、過負荷検出手段は、流体圧シリンダに供給される流体圧が過大であることを検出する。
【0050】
○本発明の故障診断装置を、例えば内燃機関のスロットル弁装置において、スロットル弁を駆動するアクチュエータの故障診断に用いること。また、本発明の故障診断装置を、例えば内燃機関のスワールコントロール弁装置において、スワールコントロール弁を駆動するアクチュエータの故障診断に用いること。
【0051】
○本発明を、車載以外(例えば船舶)の内燃機関に用いられる可動装置に適用すること。
○本発明を、内燃機関以外に用いられる可動装置に適用すること。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】可変ノズルベーン式ターボチャージャを備えたエンジンの模式図。
【図2】可変ノズル機構の正面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】図2においてストッパ付近を拡大して示す部分図。
【図5】ノズルベーンの突当て処理を示すフローチャート。
【図6】DCモータの故障を診断する処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
1…内燃機関としてのエンジン、3…排気通路、4…可変ノズルベーン式ターボチャージャ、8…コントローラ(a…電流検出回路)、9…アクチュエータ(電気モータ)としてのDCモータ(a…作動コイル)、10…被駆動体(可変ノズル部)としてのノズルベーン、12…エンジンECU、13…回転速度センサ、14…イグニッションスイッチ、26…ストッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体を駆動するアクチュエータの故障診断装置において、
前記アクチュエータに過負荷が作用するように該アクチュエータを駆動する過負荷付与手段と、
前記アクチュエータの過負荷を検出する過負荷検出手段と、
前記過負荷付与手段による前記アクチュエータの駆動時において、前記過負荷検出手段が前記アクチュエータの過負荷を検出しない場合に、前記アクチュエータが故障である旨の診断を下す診断手段と
を備えたことを特徴とするアクチュエータの故障診断装置。
【請求項2】
前記被駆動体は、内燃機関に備えられた可変ノズルベーン式ターボチャージャが有する可変ノズル部であって、前記アクチュエータは前記可変ノズル部を変位させるためのものである請求項1に記載のアクチュエータの故障診断装置。
【請求項3】
前記過負荷付与手段は、前記内燃機関の停止時において前記アクチュエータを駆動する請求項2に記載のアクチュエータの故障診断装置。
【請求項4】
前記被駆動体はストッパによって決められた範囲内で変位され、前記過負荷付与手段は、前記被駆動体が前記ストッパに突き当たるように前記アクチュエータを駆動する請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクチュエータの故障診断装置。
【請求項5】
前記過負荷付与手段は、前記ストッパに突き当たる位置を超えた位置を前記被駆動体の変位目標として前記アクチュエータを駆動する請求項4に記載のアクチュエータの故障診断装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは電気モータであって、前記過負荷付与手段は前記電気モータに過電流が流れるように該電気モータを駆動し、前記過負荷検出手段は前記電気モータの過電流を検出する請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクチュエータの故障診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−70781(P2006−70781A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254404(P2004−254404)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】